以下、本発明の実施の形態による車両制御装置を鉄道車両に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図1ないし図7は本発明の第1の実施の形態を示している。図1および図2において、鉄道車両1(車両)は、例えば乗客、乗員等が乗車する第1移動体としての車体2と、車体2の下側に設けられた前側および後側の台車3F,3Rとを備えている。これらの台車3F,3Rは、それぞれ第2移動体を構成し、車体2の前部側と後部側とに離間して配置される。台車3F,3Rと車体2とは、互いに相対移動する。
また、各台車3F,3Rには、車軸の両端に車輪4が設けられた輪軸が2個ずつ取付けられる。このため、各台車3F,3Rには、それぞれ4個の車輪4が設けられている。鉄道車両1は、各車輪4が左,右のレール5上を回転することにより、レール5に沿って走行駆動する。なお、以下では、前側の台車3Fおよび後側の台車3Rを総称するときには、台車3iという。
車体2と各台車3F,3Rとの間には、それぞれの台車3i上で車体2を弾性的に支持する複数の枕ばね6と、各枕ばね6と並列関係をなすように配置された複数の減衰力調整式ダンパ71〜74(以下、ダンパ71〜74という)とが設けられている。以下では、ダンパ71〜74を総称するときには、ダンパ7iという。
ダンパ7iは、車体2の上下方向の振動を抑えるための制御力を発生させる。ダンパ71,72は、前側の台車3Fの左側と右側にそれぞれ位置して、車体2と台車3Fとの間に設けられる。ダンパ73,74は、後側の台車3Rの左側と右側にそれぞれ位置して、車体2と台車3Rとの間に設けられる。このように、ダンパ7iは、車両の左前側、右前側、左後側、右後側にそれぞれ配置され、1車両当り合計4箇所に設けられている。
ここでは、ダンパ71が配置された車体2の左前側の上下方向の軸を1軸とし、ダンパ72が配置された車体2の右前側の上下方向の軸を2軸とし、ダンパ73が配置された車体2の左後側の上下方向の軸を3軸とし、ダンパ74が配置された車体2の右後側の上下方向の軸を4軸とする。但し、1軸〜4軸の配置関係は、これらに限るものではなく、適宜入れ換えてもよい。また、以下では、自軸とは、例えばダンパ71に対する1軸のように、自己の軸のことをいう。他軸とは、例えばダンパ71に対する2軸〜4軸のように、自己以外の他の軸のことをいう。
図3に示すように、ダンパ7iは、減衰力を調整可能なシリンダ装置8(例えば、セミアクティブダンパと呼ばれる減衰力調整式の油圧緩衝器)と、減衰力を切換え可能なアクチュエータとしてのソレノイド9(比例ソレノイド)と、ソレノイド9によってシリンダ装置8内の油液の流通を調整する制御バルブ10と、上下方向の振動を計測する加速度センサ11と、加速度センサ11からの計測値に基づきソレノイド9の制御指令(制御量)を演算して制御するマイクロコンピュータ等からなる制御部12とを有する。ここで、加速度センサ11は、制御部12に設けられている。
制御部12には、例えばスカイフック制御、H∞制御等の各種の制御則に基づいて決定された演算式と、この演算式を実行するための制御ゲイン等のような予め設定されたパラメータとが格納されている。制御部12は、演算式およびパラメータに基づいて、車体2の振動を抑制するための制御量としての自軸の制御指令(例えば制御指令S11)を算出する。ソレノイド9には、制御部12からの制御指令に応じた駆動電流が供給される。ソレノイド9は制御指令に応じて制御バルブ10を動作させるから、制御バルブ10は、制御指令に応じてシリンダ装置8内の油液の流通を調整する。これにより、車体2の振動を低減するため減衰力特性は、ハードな特性とソフトな特性との間で任意な特性に調整される。
シリンダ装置8、ソレノイド9、制御バルブ10、加速度センサ11および制御部12は、一体化されてダンパ7iを構成している。ダンパ7iには、ケーブル13が接続して設けられ、このケーブル13内には、電力を供給する電源線(図示せず)と各ダンパ7i間で相互に通信するための通信線14とが収容されている。ダンパ7iは、通信手段としてのCAN15(Controller Area Network)によって接続され、相互の情報が交換可能な状態になっている。
図4にCAN15によるネットワーク全体の概念図を示す。ダンパ71〜74の制御部12は、通信線14を介してCAN15に接続され、自軸の加速度センサ11から加速度情報が入力されると共に、CAN15から他軸の加速度情報が入力される。制御部12は、演算式およびパラメータに基づいて、これらの加速度情報から自軸の制御指令(例えば制御指令S11)と他軸の制御指令(例えば制御指令S12,S13,S14)を算出する。そして、制御部12は、算出した自軸の制御指令を自軸のソレノイド9に向けて出力する。
また、ダンパ71〜74の制御部12は、他軸の加速度情報に加えて、他軸が算出した他軸の制御指令と、他軸が判断した自軸のパラメータ異常情報(ダンパ異常情報)とを、CAN15から受信する。さらに、ダンパ71〜74の制御部12は、自軸の加速度情報と、自軸が算出した自軸の制御指令と、自軸が判断した他軸のパラメータ異常情報とを、CAN15へ送信する。
具体的に説明すると、例えば1軸のダンパ71の制御部12は、全軸の加速度G1〜G4を用いて、各軸の制御指令S11,S12,S13,S14を算出し、自軸の制御指令S11を自軸のソレノイド9に向けて出力する。
また、ダンパ71の制御部12は、他軸の加速度G2,G3,G4、他軸の算出した他軸の制御指令S22,S33,S44、他軸が判断した自軸のパラメータ異常情報F2,F3,F4を、受信する。さらに、ダンパ71の制御部12は、自軸の加速度G1、自軸が算出した自軸の制御指令S11、自軸が判断した他軸のパラメータ異常情報F1を、送信する。
同様に、2軸のダンパ72の制御部12は、加速度G1〜G4を用いて各軸の制御指令S21,S22,S23,S24を算出すると共に、他軸の加速度G1,G3,G4、他軸の制御指令S11,S33,S44、自軸のパラメータ異常情報F1,F3,F4を受信し、自軸の加速度G2、自軸の制御指令S22、他軸のパラメータ異常情報F2を送信する。
3軸のダンパ73の制御部12は、加速度G1〜G4を用いて各軸の制御指令S31,S32,S33,S34を算出すると共に、他軸の加速度G1,G2,G4、他軸の制御指令S11,S22,S44、自軸のパラメータ異常情報F1,F2,F4を受信し、自軸の加速度G3、自軸の制御指令S33、他軸のパラメータ異常情報F3を送信する。
4軸のダンパ74の制御部12は、加速度G1〜G4を用いて各軸の制御指令S41,S42,S43,S44を算出すると共に、他軸の加速度G1,G2,G3、他軸の制御指令S11,S22,S33、自軸のパラメータ異常情報F1,F2,F3を受信し、自軸の加速度G4、自軸の制御指令S44、他軸のパラメータ異常情報F4を送信する。
次に、制御部12の具体的な構成について、1軸のダンパ71を例に挙げて、図5を参照しつつ説明する。2軸〜4軸のダンパ72〜74も1軸のダンパ71とほぼ同様に構成されるため、ダンパ72〜74の制御部12については、その詳細な説明を省略する。
制御部12は、取得処理部20、CAN受信処理部21、振動モード分離部22、制御指令演算部23、フィルタ処理部24,25、比較処理部26、多数決判定処理部28等を備える。
取得処理部20は、加速度センサ11から出力される信号にノイズ等を除去するフィルタ処理を施すことによって、加速度G1を取得する。CAN受信処理部21は、他軸の加速度G2,G3,G4と、他軸の制御指令S22,S33,S44と、他軸が算出した自軸のパラメータ異常情報F2,F3,F4とを、CAN15から受信する。CAN受信処理部21は、例えばフィルタ処理、誤り訂正処理等の各種の信号処理も併せて行う。
振動モード分離部22は、取得処理部20から出力される自軸の加速度G1と、CAN受信処理部21から出力される他軸の加速度G2,G3,G4とに基づいて、車体2の振動状態を求める。具体的には、振動モード分離部22は、4軸の加速度G1〜G4に基づいて、例えばバウンス、ロール、ピッチの3つの振動モードに分解し、これらを算出する。
制御指令演算部23は、振動モード分離部22から出力された振動モードに基づいて、全軸の制御指令S11〜S14を算出する。この制御指令演算部23は、4軸の加速度G1〜G4に基づいて、車体2の振動を抑制するフィードバック制御器を構成している。このとき、制御指令演算部23には、ソレノイド9の制御量に対応した制御指令S11〜S14を演算する演算式が格納されている。制御指令演算部23は、この演算式に基づいて、振動モードから制御指令S11〜S14を算出する。
なお、制御指令演算部23は、4軸の加速度G1〜G4から振動モードを算出した後に、振動モードに基づいて制御指令S11〜S14を算出するものとした。しかし、本発明はこれに限らず、制御指令演算部23は、4軸の加速度G1〜G4に基づいて、直接的に制御指令S11〜S14を算出してもよい。
1軸(ダンパ71)の制御指令演算部23によって算出された他軸(2軸〜4軸)の制御指令S12,S13,S14は、低域通過フィルタからなるフィルタ処理部24によって低周波成分が抽出される。フィルタ処理部24から出力された制御指令S12,S13,S14は、比較処理部26に入力される。
一方、2軸〜4軸(ダンパ72〜74)の制御指令演算部23によって算出された他軸(2軸〜4軸)の制御指令S22,S33,S44は、低域通過フィルタからなるフィルタ処理部25によって低周波成分が抽出される。このとき、フィルタ処理部25は、カットオフ周波数等のフィルタ特性がフィルタ処理部24とほぼ同じ特性に設定される。フィルタ処理部25から出力された制御指令S22,S33,S44は、比較処理部26に入力される。
比較処理部26は、自軸が算出した他軸の制御指令S12,S13,S14と、他軸が算出した他軸の制御指令S22,S33,S44とを比較する判定手段を構成する。このとき、他軸が算出した他軸の制御指令S22,S33,S44は、CAN15の伝送等に伴う遅延が生じ、制御指令S22,S33,S44と制御指令S12,S13,S14とは互いの高周波成分が相違し易い傾向がある。このため、比較処理部26は、制御指令S22,S33,S44の低周波成分と制御指令S12,S13,S14の低周波成分とを比較する。
具体的には、比較処理部26は、2軸の制御指令S12と制御指令S22とを比較して両者の誤差が大きいか否かを判定する。同様に、比較処理部26は、3軸の制御指令S13と制御指令S33とを比較して両者の誤差が大きいか否かを判定し、4軸の制御指令S14と制御指令S44とを比較して両者の誤差が大きいか否かを判定する。そして、比較処理部26は、誤差が大きい軸があれば、その軸番号をパラメータ異常情報F1に含めて出力する。
パラメータ異常情報F1としては、例えば4ビット情報が適用される。このとき、各ビットが1軸〜4軸にそれぞれ対応している。また、ビットが「0」のときは異常なしに相当し、ビットが「1」のときは異常ありに相当する。
このような4ビット情報を用いた場合、制御指令S12,S13,S14と制御指令S22,S33,S44との誤差が全軸とも小さいときには、比較処理部26は、異常のあるダンパ72〜74はないと判断し、パラメータ異常情報F1は「0000」とする。一方、制御指令S12,S13,S14と制御指令S22,S33,S44との誤差が大きいときには、比較処理部26は、誤差が大きい軸番号をパラメータ異常情報F1とする。例えば、1軸のダンパ71において、2軸との誤差が大きいと判断した場合、パラメータ異常情報F1は「0100」となる。1軸のダンパ71において、1軸以外の全軸との誤差が大きいと判断した場合、パラメータ異常情報F1は「0111」となる。
なお、誤差が大きいか否かは、例えば一方の制御指令S12,S13,S14に対して他方の制御指令S22,S33,S44が予め百分率によって決められた範囲内か否かによって判定する。これに限らず、誤差が大きいか否かは、制御指令S12,S13,S14と制御指令S22,S33,S44との誤差の大きさ(絶対値)が予め決めた一定の閾値よりも大きいか否かによって判定してもよい。
CAN送信処理部27は、取得処理部20から出力された自軸の加速度G1と、制御指令演算部23から出力された自軸の制御指令S11と、比較処理部26から出力されたパラメータ異常情報F1とを、CAN15に向けて送信する。これにより、加速度G1、制御指令S11、パラメータ異常情報F1は、CAN15を通じて他軸のダンパ72〜74の制御部12に伝送される。
多数決判定処理部28は、評価手段を構成し、CAN15から得た他軸が判定したパラメータ異常情報F2〜F4に基づいて、自軸の異常判定を行う。この多数決判定処理部28は、パラメータ異常情報F2〜F4のうち過半数が自軸に異常があると判定したか否かに基づいて、自軸が異常か否かを判定する。そして、多数決判定処理部28は、自軸の異常を判定したときに、自軸(1軸)の制御指令S11の出力を禁止するための出力禁止指令INHを出力する。
自軸の異常判定について、図7に示す2軸〜4軸の判定結果の一例を参照しつつ、詳細に説明する。自軸の異常判定の組み合わせは、図7に示すように、(1)自軸が異常であると判定した軸が3つある場合、(2)2つの軸に異常があると判断された軸が2つある場合、(3)それ以外の場合の3通りがある。
(1)の場合、他軸の判定結果は全て自軸が異常と判定しているから、自軸に異常があることは明らかである。そのため、多数決判定処理部28は、出力禁止指令INHを出力し、制御指令S11による自軸の制御を止める。
(2)の場合、2つ以上の軸が異常である可能性が高いが、どの軸が異常であるか判断することは難しい。即ち、図7に例示した判定結果では、1軸と3軸に異常があるのか、2軸と4軸に異常があるのか特定することができない。そのため、この場合は全軸の制御を止める。即ち、全軸の多数決判定処理部28で出力禁止指令INHを出力する。
(3)の場合は、他軸の判定結果は全て自軸に異常なしと判定しているか、図7に示すように、2軸〜4軸のうちの1つで自軸が異常であると判定していることになる。前者は、自軸に異常がないことが明らかであるため、制御指令S11による自軸の制御を行う。一方、後者は、自軸の異常を判定した軸自身(図7の例では2軸)が異常である可能性が高い。このため、後者でも、制御指令S11による自軸の制御を行う。
なお、異常判定は、前述した3軸の多数決によるものに限らない。例えば、予め閾値を定めておき、異常が発生した回数が閾値を超えた場合に異常と診断するようにしてもよい。
電流出力処理部29は、制御指令演算部23で算出した制御指令S11に基づいてソレノイド9に出力する電流値を演算して出力する。ソレノイド9は、電流出力処理部29から出力された電流値となった駆動電流が供給されて駆動し、ダンパ71の減衰力特性を制御指令S11に応じて調整する。一方、多数決判定処理部28が出力禁止指令INHを出力したときには、電流出力処理部29は、制御指令S11による制御を停止し、ダンパ71が受動型の緩衝器して機能するための電流値を出力する。
第1の実施の形態による制御部12は、上述の如き構成を有するもので、次に、パラメータ異常判定処理について、図6を参照しつつ説明する。ここでは、1軸の制御部12を例に挙げて説明するが、2軸〜4軸の制御部12でも同様である。
ステップ1では、CAN受信処理部21によってCAN15から他軸が算出した他軸の制御指令S22,S33,S44を読込む。ステップ2では、フィルタ処理部25によって制御指令S22,S33,S44から低周波成分を抽出する。ステップ3では、フィルタ処理部24によって自軸が算出した他軸の制御指令S12,S13,S14から低周波成分を抽出する。
ステップ4では、比較処理部26によって、フィルタ処理後の自軸算出の制御指令S12,S13,S14と、フィルタ処理後の他軸算出の制御指令S22,S33,S44とを比較する。具体的には、制御指令S12と制御指令S22との差の絶対値を誤差ΔS21として算出し、制御指令S13と制御指令S33との差の絶対値を誤差ΔS31として算出し、制御指令S14と制御指令S44との差の絶対値を誤差ΔS41として算出する。
続くステップ5では、誤差ΔS21〜ΔS41がそれぞれ予め決められた基準値Aよりも小さいか否かを判定する。全軸で誤差ΔS21〜ΔS41が基準値Aよりも小さいときには、異常のあるダンパ72〜74はない。このため、ステップ5で「YES」と判定し、ステップ6に移行する。ステップ6では、異常な軸は存在しないから、パラメータ異常情報F1は「0000」となる。
一方、誤差ΔS21〜ΔS41のうち少なくともいずれか1つが基準値Aよりも大きいときには、異常のあるダンパ72〜74が存在する。このため、ステップ5で「NO」と判定し、ステップ7に移行する。ステップ7では、誤差ΔS21〜ΔS41のうち基準値Aよりも大きい軸番号のビットを「1」として、パラメータ異常情報F1を設定する。例えば、2軸の誤差ΔS21が大きいと判断した場合には、パラメータ異常情報F1は「0100」となり、1軸以外の全軸の誤差ΔS21〜ΔS41が大きいと判断した場合、パラメータ異常情報F1は「0111」となる。
本実施の形態によるパラメータ異常判定処理は、演算ステップ毎に演算する必要はなく、例えば車両1が低速で安定走行したときのように、走行中のある時間帯に1度、行えばよい。
かくして、本実施の形態によれば、加速度センサ11による計測値および制御部12による制御指令を各制御部12間で相互に伝送することによって、パラメータに異常のあるダンパ7iを検出することができる。この結果、例えば4軸のうち1軸だけでパラメータの更新に不備があったときでも、このようなパラメータに異常のあるダンパ7iを、制御に必要な信号のみの少ない情報量のやり取りで検出することができ、最適な制御を行うことができていないダンパ7iの制御を止めることができる。
また、制御部12は、自軸が算出した他軸の制御指令(例えば、制御指令S12,S13,S14)と、他軸が算出した他軸の制御指令(例えば、制御指令S22,S33,S44)とを比較することによって、他軸の制御部12が異常であるか否かを判定する。さらに、制御部12は、他軸のパラメータ異常情報(例えば、パラメータ異常情報F2〜F4)に基づいて、自軸のパラメータが異常か否かを判定する。このように、制御指令の比較やパラメータ異常情報の多数決のような簡易な処理で、他軸や自軸のパラメータ異常を判定できるから、別途に異常状態を自己診断するロジックや異常状態の制御部12を特定するロジックを必要としない。この結果、制御部12の構成を簡略化することができると共に、制御部12での演算処理の負荷を軽減することができる。これに加えて、全軸の制御部12が正常なときには、制御部12には、自軸が算出した他軸の制御指令(例えば、制御指令S12,S13,S14)とほぼ同じ制御指令(例えば、制御指令S22,S33,S44)を3つの他軸が返すので、データ化けに強くなる。
また、制御部12は、比較処理部26によって自軸が算出した他軸の制御指令(例えば、制御指令S12,S13,S14)と他軸が算出した他軸の制御指令(例えば、制御指令S22,S33,S44)とが異なると判定されたときに、パラメータ異常情報(例えば、パラメータ異常情報F1)を送信し、制御指令が異なった他軸の制御部12に対して異常を通知する。このため、複数の制御部12で相手方の異常状態か否かを相互に監視することができ、例えば自軸の制御部12だけが異常状態となったときには、自軸の制御を停止し、複数の制御部12が異常状態となったときには、全軸の制御を停止することができる。
さらに、加速度センサ11は制御部12に設けられるから、加速度センサ11と制御部12とを接続するためのケーブルを省くことができ、製造コストを低下させることができる。また、ケーブル断線がなくなるから、装置全体の信頼性を高めることができる。
次に、図8ないし図10は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、自軸が異常ありと判定したときに、他軸が算出した制御指令を用いて自軸を代理制御することにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
図8に示すように、第2の実施の形態による減衰力調整式ダンパ311〜314(以下、ダンパ311〜314という)は、CAN15によって相互に接続されると共に、第1の実施の形態によるダンパ71〜74とほぼ同様に構成される。このため、ダンパ311〜314は、ソレノイド9、加速度センサ11、制御部32等を備える。以下では、ダンパ311〜314を総称するときには、ダンパ31iという。
ダンパ31iは、加速度センサ11から得た自軸の加速度情報とCAN15から得た他軸の加速度情報とを用いて、制御部32によって各軸の制御指令を算出し、自軸の制御指令をソレノイド9に向けて出力する。
但し、第2の実施の形態では、制御部32は、CAN15から他軸の加速度、他軸が算出した自軸の制御指令を受信し、自軸の加速度、自軸が算出した他軸の制御指令を送信する。これに加え、制御部32は、自軸が異常ありと判定したときに、他軸が算出した制御指令を用いて自軸を代理制御する。これらの点で、第2の実施の形態による制御部32は、第1の実施の形態による制御部12とは異なる。
次に、制御部32の具体的な構成について、1軸のダンパ311を例に挙げて、図9を参照しつつ説明する。2軸〜4軸のダンパ312〜314も1軸のダンパ311とほぼ同様に構成されるため、ダンパ312〜314の制御部32については、その詳細な説明を省略する。
制御部32は、第1の実施の形態による制御部12とほぼ同様に、取得処理部20、CAN受信処理部21、振動モード分離部22、制御指令演算部23を備える。このため、制御部32は、取得処理部20によって自軸(1軸)の加速度G1を取得し、CAN受信処理部21によって他軸(2軸〜4軸)の加速度G2〜G4を取得する。振動モード分離部22は、これらの加速度G1〜G4に基づいて、バウンス、ロール、ピッチの3つの振動モードに分解し、制御指令演算部23は、これらの振動モードから全軸の制御指令S11〜S14を算出する。
また、制御部32は、フィルタ処理部33,34、比較処理部35、多数決判定処理部37、代理制御指令演算部38等を備える。
フィルタ処理部33,34は、第1の実施の形態によるフィルタ処理部24,25とほぼ同様に構成される。このフィルタ処理部33は、自軸の制御指令演算部23によって算出された自軸の制御指令S11から、低周波成分を抽出する。フィルタ処理部34は、2軸〜4軸(ダンパ312〜314)の制御指令演算部23によって算出された自軸(1軸)の制御指令S21,S31,S41から、低周波成分を抽出する。フィルタ処理部33,34から出力された制御指令S11,S21,S31,S41は、比較処理部35に入力される。
比較処理部35は、判定手段を構成するものであり、第1の実施の形態による比較処理部26とほぼ同様に構成される。但し、第1の実施の形態による比較処理部26は、自軸が算出した他軸の制御指令S12,S13,S14と、他軸が算出した他軸の制御指令S22,S33,S44とを比較する。これに対し、第2の実施の形態による比較処理部35は、自軸が算出した自軸の制御指令S11と、他軸が算出した自軸の制御指令S21,S31,S41とを比較する。この点で、第1の実施の形態による比較処理部35は、第1の実施の形態による比較処理部26とは異なる。
このため、比較処理部35は、制御指令S11と制御指令S21とを比較して両者の誤差が大きいか否かを判定する。同様に、比較処理部35は、制御指令S11と制御指令S31とを比較して両者の誤差が大きいか否かを判定し、制御指令S11と制御指令S41とを比較して両者の誤差が大きいか否かを判定する。誤差が大きいか否かの判定基準は、例えば第1の実施の形態による比較処理部26と同様である。そして、比較処理部35は、誤差が大きい軸があれば、その軸番号をパラメータ異常情報F1に含めて出力する。
CAN送信処理部36は、取得処理部20から出力された自軸の加速度G1と、制御指令演算部23から出力された他軸の制御指令S12〜S14と、比較処理部35から出力されたパラメータ異常情報F1とを、CAN15に向けて送信する。これにより、加速度G1、制御指令S12〜S14、パラメータ異常情報F1は、CAN15を通じて他軸のダンパ312〜314の制御部32に伝送される。
多数決判定処理部37は、評価手段を構成し、比較処理部35によるパラメータ異常情報F1と、CAN15から得た他軸が判定したパラメータ異常情報F2〜F4とに基づいて、自軸の異常判定を行う。この多数決判定処理部37は、パラメータ異常情報F1〜F4のうち過半数が自軸に異常があると判定したか否かに基づいて、自軸が異常か否かを判定する。そして、多数決判定処理部37は、自軸の異常を判定したときに、自軸異常判定としての1軸異常判定Eを出力する。即ち、自軸が異常であると判定した軸が3つある場合に、多数決判定処理部37は、1軸異常判定Eを出力する。これにより、制御部32は、後述の1軸代理制御指令S01によって自軸の制御を行う。
また、多数決判定処理部37は、2つの軸に異常があると判定したときには、制御を停止するための出力禁止指令INHを出力する。即ち、2つの軸に異常があると判断された軸が2つある場合には、多数決判定処理部37は、出力禁止指令INHを出力する。これにより、制御部32は、自軸の制御を停止する。
上述以外の場合には、自軸に異常がないことが明らかであるため、多数決判定処理部37は、1軸異常判定Eおよび出力禁止指令INHを出力しない。このため、制御部32は、制御指令S11によって自軸の制御を行う。
なお、第2の実施の形態では、多数決判定処理部37は、自軸が判定したパラメータ異常情報F1を考慮して、自軸の異常判定や複数軸の異常判定を行った。しかし、本発明はこれに限らず、多数決判定処理部37は、第1の実施の形態による多数決判定処理部28と同様に、自軸が判定したパラメータ異常情報F1を省き、他軸が判定したパラメータ異常情報F2〜F4に基づいて、自軸の異常判定や複数軸の異常判定を行ってもよい。
代理制御指令演算部38は、フィルタ処理部34から出力された制御指令S21,S31,S41の低周波成分に基づいて、自軸代理制御指令としての1軸代理制御指令S01を演算し、出力する。具体的には、代理制御指令演算部38は、例えば制御指令S21,S31,S41の低周波成分の平均値を、1軸代理制御指令S01として出力する。
多数決判定処理部37が1軸異常判定Eを出力しない正常時には、電流出力処理部39は、制御指令演算部23で算出した制御指令S11に基づいてソレノイド9に出力する電流値を演算して出力する。一方、多数決判定処理部37が1軸異常判定Eを出力した異常時には、電流出力処理部39は、1軸代理制御指令S01に基づいてソレノイド9に出力する電流値を演算して出力する。ソレノイド9は、電流出力処理部39から出力された電流値となった駆動電流が供給されて、駆動する。このため、ダンパ311の減衰力特性は、正常時には制御指令S11に応じて調整され、1軸だけの異常時には1軸代理制御指令S01に応じて調整される。また、複数軸の異常時には、ダンパ311の減衰力特性は調整されず、ダンパ311は受動型の緩衝器として機能する。
第2の実施の形態による制御部32は、上述の如き構成を有するもので、次に、パラメータ異常判定および代理制御の処理について、図10を参照しつつ説明する。ここでは、1軸の制御部32を例に挙げて説明するが、2軸〜4軸の制御部32でも同様である。
ステップ11では、CAN受信処理部21によってCAN15から他軸が算出した自軸の制御指令S21,S31,S41を読込む。ステップ12では、フィルタ処理部34によって制御指令S21,S31,S41から低周波成分を抽出する。ステップ13では、フィルタ処理部33によって自軸が算出した自軸の制御指令S11から低周波成分を抽出する。
ステップ14では、比較処理部35によって、フィルタ処理後の自軸算出の制御指令S11と、フィルタ処理後の他軸算出の制御指令S21,S31,S41とを比較する。具体的には、制御指令S11と制御指令S21との差の絶対値を誤差ΔS12として算出し、制御指令S11と制御指令S31との差の絶対値を誤差ΔS13として算出し、制御指令S11と制御指令S41との差の絶対値を誤差ΔS14として算出する。
続くステップ15では、誤差ΔS12〜ΔS14がそれぞれ予め決められた基準値Aよりも小さいか否かを判定する。全軸で誤差ΔS12〜ΔS14が基準値Aよりも小さいときには、異常のあるダンパ312〜314はない。このため、ステップ15で「YES」と判定し、ステップ16に移行する。ステップ16では、異常な軸は存在しないから、パラメータ異常情報F1は「0000」となる。
一方、誤差ΔS12〜ΔS14のうち少なくともいずれか1つが基準値Aよりも大きいときには、異常のあるダンパ312〜314が存在する。このため、ステップ15で「NO」と判定し、ステップ17に移行する。ステップ17では、誤差ΔS12〜ΔS14のうち基準値Aよりも大きい軸番号のビットを「1」として、パラメータ異常情報F1を設定する。
続くステップ18では、多数決判定処理部37によって、他軸のパラメータ異常情報F2〜F4を比較する。具体的には、2つの軸に異常があると判断された軸数、および自軸が異常であると判定した軸数を算出する。
そして、ステップ19では、2つの軸に異常があると判断された軸が2つ以上あるか否かを判定する。ステップ19で「YES」と判定したときには、2つ以上の軸が異常である可能性が高いが、どの軸が異常であるか判断することは難しい。このため、ステップ20に移行して、全軸の多数決判定処理部37が出力禁止指令INHを出力し、全軸の制御を止める。
ステップ19で「NO」と判定したときには、ステップ21に移行して、自軸が異常であると判定した軸が3つか否かを判定する。ステップ21で「YES」と判定したときには、他軸の判定結果は全て自軸が異常と判定しているから、自軸に異常がある可能性が高い。このため、ステップ22に移行して、他軸が算出した自軸の制御指令S21〜S41に基づいて自軸代理制御指令(1軸代理制御指令S01)を算出し、この自軸代理制御指令を用いてダンパ311を制御する。
一方、ステップ21で「NO」と判定したときには、自軸に異常がないと考えられるため、ステップ23に移行して、自軸が算出した自軸の制御指令S11を用いてダンパ311を制御する。
本実施の形態によるパラメータ異常判定および代理制御の処理は、演算ステップ毎に演算する必要はなく、例えば車両1が低速で安定走行したときのように、走行中のある時間帯に1度、行えばよい。
かくして、第2の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、第2の実施の形態では、例えば制御部32にパラメータ(制御ゲイン)の書込みができず、期待する制御が行えない場合でも、他軸が算出する制御指令を用いて制御を行う。このとき、パラメータの書込みが問題ない場合と比べると制御性能は落ちるが、制御しない場合よりも制振性能を高めることができる。
なお、第2の実施の形態では、自軸が算出した他軸の制御指令と他軸が算出した他軸の制御指令とを比較して、パラメータ異常判定を行う構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、第1の実施の形態と同様に、自軸が算出した自軸の制御指令と他軸が算出した自軸の制御指令とを比較して、パラメータ異常判定を行う構成としてもよい。さらに、第1の実施の形態によるパラメータ異常判定と第2の実施の形態によるパラメータ異常判定とを組み合わせる構成としてもよい。
次に、図4は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、所定の通信サイクル毎に自軸と他軸との間で加速度の計測値および制御指令の演算値を情報交換することにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
図4に示すように、第3の実施の形態による減衰力調整式ダンパ411〜414(以下、ダンパ411〜414という)は、CAN15によって相互に接続されると共に、第1の実施の形態によるダンパ71〜74とほぼ同様に構成される。このため、ダンパ411〜414は、ソレノイド9、加速度センサ11、制御部42等を備える。以下では、ダンパ411〜414を総称するときには、ダンパ41iという。
制御部42も、第1の実施の形態による制御部12とほぼ同様に構成される。第1の実施の形態による制御部12は、加速度の計測値および制御指令の演算値を送受信するタイミングが決められていない。これに対し、第3の実施の形態による制御部42は、所定の通信サイクル毎に自軸と他軸との間で加速度の計測値および制御指令の演算値を送受信する。この点で、第3の実施の形態による制御部42は、第1の実施の形態による制御部12とは異なる。
具体的には、第1の通信サイクルでは、制御部42は、通信経路となるCAN15を介して、自軸の加速度センサ11の計測値(例えば、加速度G1)を送信すると共に、他軸の加速度センサの計測値(例えば、加速度G2,G3,G4)を受信する。これにより、制御部42は、自軸の加速度センサ11の計測値と、他軸の加速度センサ11の計測値とに基づき、自軸と他軸の制御指令(例えば、制御指令S11,S12,S13,S14)を算出する。
第2の通信サイクルでは、制御部42は、CAN15を介して、自軸による自軸の制御指令の演算値(例えば、制御指令S11)を送信すると共に、他軸による他軸の制御指令(例えば、制御指令S22,S33,S44)を受信する。これにより、制御部42は、自軸が算出した他軸の制御指令の演算値(例えば、制御指令S12,S13,S14)と、第2の通信サイクルで他軸から取得(受信)した他軸の制御指令の演算値(例えば、制御指令S22,S33,S44)とに基づいて、他軸のダンパ41i(例えばダンパ412〜414)の状態を判定する。
第3の通信サイクルでは、制御部42は、自己が算出した他軸の制御指令の演算値(例えば、制御指令S12,S13,S14)と、第2の通信サイクルで他軸から取得した他軸の制御指令の演算値(例えば、制御指令S22,S33,S44)とに相違があったときに、他軸のダンパ41i(例えばダンパ412〜414)に異常ありと判別する。その後、複数のダンパ41i間で、パラメータ異常情報を交換する。
かくして、第3の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、第3の実施の形態では、予め決められた所定の通信サイクル毎に自軸と他軸との間で加速度の計測値および制御指令の演算値を交換するから、制御部42の演算途中において、通信が混線する問題を回避することができる。
なお、第3の実施の形態では、第1の実施の形態に適用した場合を例に挙げて説明したが、第2の実施の形態に適用してもよい。
次に、図11ないし図13は本発明の第4の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、自軸と他軸との間で制御部にパラメータを書込んだパラメータ書込み日時を比較し、パラメータ異常のある軸を判定することにある。なお、第4の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
図11に示すように、第4の実施の形態による減衰力調整式ダンパ511〜514(以下、ダンパ511〜514という)は、CAN15によって相互に接続されると共に、第1の実施の形態によるダンパ71〜74とほぼ同様に構成される。このため、ダンパ511〜514は、ソレノイド9、加速度センサ11、制御部52等を備える。以下では、ダンパ511〜514を総称するときには、ダンパ51iという。
制御部52も、第1の実施の形態による制御部12とほぼ同様に構成される。但し、制御部52は、例えば制御ゲイン等のようなパラメータが書込まれたパラメータ書込み日時がメモリ53に記憶されている。そして、制御部52は、メモリ53に格納された自軸のパラメータ書込み日時と、CAN15から得られる他軸のパラメータ書込み日時とを比較して、自軸のパラメータに異常があるか否かを判定する。この点で、第3の実施の形態による制御部52は、第1の実施の形態による制御部12とは異なる。
次に、制御部52の具体的な構成について、1軸のダンパ511を例に挙げて、図12を参照しつつ説明する。2軸〜4軸のダンパ512〜514も1軸のダンパ511とほぼ同様に構成されるため、ダンパ512〜514の制御部52については、その詳細な説明を省略する。
制御部52は、第1の実施の形態による制御部12とほぼ同様に、取得処理部20、CAN受信処理部21、振動モード分離部22、制御指令演算部23を備える。このため、制御部52は、取得処理部20によって自軸(1軸)の加速度G1を取得し、CAN受信処理部21によって他軸(2軸〜4軸)の加速度G2〜G4を取得する。振動モード分離部22は、これらの加速度G1〜G4に基づいて、バウンス、ロール、ピッチの3つの振動モードに分解し、制御指令演算部23は、これらの振動モードから自軸の制御指令S11を算出する。
また、制御部52は、書込み異常判定処理部54を備える。書込み異常判定処理部54は、メモリ53に格納された自軸のパラメータ書込み日時D1と、CAN受信処理部21を通じてCAN15から取得した他軸のパラメータ書込み日時D2〜D4とを比較する。そして、書込み異常判定処理部54は、自軸のパラメータ書込み日時D1が他軸のパラメータ書込み日時D2〜D4のいずれに対しても例えば1時間程度の基準値D0以内であれば、パラメータが正常であると判定する。一方、書込み異常判定処理部54は、自軸のパラメータ書込み日時D1が他軸のパラメータ書込み日時D2〜D4のうち少なくともいずれか1つに対して基準値D0よりも前であれば、パラメータは異常であると判定する。そして、書込み異常判定処理部54は、自軸のパラメータに異常があると判定したときには、自軸の制御を停止するための出力禁止指令INHを出力する。
電流出力処理部29は、制御指令演算部23で算出した制御指令S11に基づいてソレノイド9に出力する電流値を演算して出力する。ソレノイド9は、電流出力処理部29から出力された電流値となった駆動電流が供給されて駆動し、ダンパ511の減衰力特性を制御指令S11に応じて調整する。一方、書込み異常判定処理部54が出力禁止指令INHを出力したときには、電流出力処理部29は、制御指令S11による制御を停止し、ダンパ511が受動型の緩衝器して機能するための電流値を出力する。
第4の実施の形態による制御部52は、上述の如き構成を有するもので、次に、書込み異常判定処理について、図13を参照しつつ説明する。ここでは、1軸の制御部52を例に挙げて説明するが、2軸〜4軸の制御部52でも同様である。
ステップ31では、CAN受信処理部21によってCAN15から他軸のパラメータ書込み日時D2〜D4の情報を読込む。ステップ32では、書込み異常判定処理部54によって、メモリ53に格納された自軸のパラメータ書込み日時D1と、CAN15からの他軸のパラメータ書込み日時D2〜D4とを比較する。具体的には、パラメータ書込み日時D1とパラメータ書込み日時D2との時間差ΔD12を算出し、パラメータ書込み日時D1とパラメータ書込み日時D3との時間差ΔD13を算出し、パラメータ書込み日時D1とパラメータ書込み日時D4との時間差ΔD14を算出する。
続くステップ33では、自軸と他軸との間の時間差ΔD12〜ΔD14がそれぞれ予め決められた基準値D0よりも小さい(ΔD12〜ΔD14<D0)か否かを判定する。基準値D0は、全軸のパラメータの書込み作業に必要な時間等を考慮して設定され、例えば1時間程度の値になっている。そして、時間差ΔD12〜ΔD14がいずれも基準値D0よりも小さいときには、自軸の制御部52に書込まれたパラメータは最新のものであり、自軸のパラメータは正常であると考えられる。このため、ステップ33で「YES」と判定し、ステップ34に移行する。ステップ34では、自軸が算出した自軸の制御指令S11を用いてダンパ511を制御する。
一方、時間差ΔD12〜ΔD14のうち少なくともいずれか1つが基準値D0よりも大きく、自軸のパラメータ書込み日時D1が他軸のパラメータ書込み日時D2〜D4よりも基準値D0よりも前だったときには、自軸のパラメータは、例えばデータが更新されていない等の原因より、異常であると考えられる。このため、ステップ33で「NO」と判定し、ステップ35に移行する。ステップ35では、書込み異常判定処理部54が出力禁止指令INHを出力し、自軸の制御を止める。
本実施の形態によるパラメータ異常判定処理は、演算ステップ毎に演算する必要はなく、例えば車両1の起動時に1度、行えばよい。
かくして、第4の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、第4の実施の形態では、制御部52にパラメータを書込んだ日時を比較するから、パラメータが更新されたか否かは例えば制御部52に電源を入れた時に比較すればよく、書込み忘れなどを容易に発見し、例えば古いパラメータを用いることによって最適ではない制御を行うような事態を防ぐことができる。
なお、第4の実施の形態では、自軸のパラメータが異常であるときには、自軸の制御を停止するものとした。しかし、本発明はこれに限らず、自軸のパラメータが異常であるときには、第2の実施の形態と同様に、他軸が算出した自軸の制御指令に基づいて代理制御指令を演算し、この代理制御指令を用いて自軸のダンパを制御してもよい。
また、図14に示す変形例によるパラメータ更新処理を実行し、自軸のパラメータ書込み日時が最新でない場合には、他軸から最新のパラメータを取得する構成としてもよい。
このパラメータ更新処理では、ステップ41で、CAN受信処理部21によってCAN15から他軸のパラメータ書込み日時D2〜D4の情報を読込み、ステップ42で、メモリ53に格納された自軸のパラメータ書込み日時D1の情報を読込み、自軸のパラメータ書込み日時D1と他軸のパラメータ書込み日時D2〜D4とを比較する。この点は、前述した図12中のステップ31,32と同様である。
続くステップ43では、自軸のパラメータ書込み日時D1が他軸のパラメータ書込み日時D2〜D4に対して最新か否かを判定する。ステップ43で「YES」と判定したときには、自軸のパラメータが最新のものである。このため、ステップ44に移行して、自軸のパラメータ書込み日時D1と他軸のパラメータ書込み日時D2〜D4との時間差ΔD12〜ΔD14が全軸で基準値D0よりも小さい(ΔD12〜ΔD14<D0)か否かを判定する。ステップ44で「YES」と判定したときには、全軸のパラメータは正常であるから、そのまま終了する。一方、ステップ44で「NO」と判定したときには、ステップ45に移行して、時間差ΔD12〜ΔD14が基準値D0以上である軸に自軸のパラメータを転送する。
また、ステップ43で「NO」と判定したときには、他軸のうちいずれかが最新のパラメータを有している。このため、ステップ46に移行して、他軸のパラメータ書込み日時D2〜D4のうち最新のもの(例えば、パラメータ書込み日時D2)と、自軸のパラメータ書込み日時D1との時間差(例えば、時間差ΔD12)が基準値D0よりも小さい(例えば、ΔD12<D0)か否かを判定する。ステップ46で「YES」と判定したときには、全軸のパラメータは正常であるから、そのまま終了する。一方、ステップ46で「NO」と判定したときには、ステップ47に移行して、パラメータ書込み日時D2〜D4のうち最新となった軸から、その軸のパラメータを自軸に転送する。以上では、1軸のパラメータ更新処理を例に挙げて説明したが、2軸〜4軸でも同様である。
これにより、書込み日時が最新となった制御部のパラメータを、書込み日時が古い制御部に書込むことができる。このため、1軸毎にパラメータを書込む必要がなくなり、パラメータ更新に関する作業工数を削減することができる。
前記各実施の形態では、加速度センサ11は制御部12,32,42,52に設ける構成としたが、制御部とは別個の位置に加速度センサを設けてもよい。また、加速度センサ11は、上下方向の加速度を検出するものとしたが、左右方向の加速度を検出してもよい。さらに、車体2のような制振対象の振動を計測するものであれば、加速度センサに限らず、例えば速度センサ、角速度センサ、変位センサ等でもよい。
前記各実施の形態では、制御バルブ10の駆動を制御するアクチュエータとしてソレノイド9を例に挙げて説明したが、電流等の電気信号に応じて制御バルブを駆動させる各種のアクチュエータが適応可能である。
前記各実施の形態では、ダンパ7i,31i,41i,51iによって車体2の上下方向の振動を低減するように構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えばダンパによって車体の左右方向の振動を低減するように構成してもよく、車体のピッチング、ヨーイング、ローリング等を低減するように構成してもよい。
前記各実施の形態では、ダンパ7i,31i,41i,51iはセミアクティブダンパによって構成したが、アクティブダンパによって構成してもよい。
前記各実施の形態では、車体2と揺れ枕吊り式の台車3F,3Rの枕ばね6と並列にダンパ7i,31i,41i,51i(減衰力調整式緩衝器)を設ける構成を例に挙げて説明した。しかし、本発明は、これに限らず、例えば車体と台車との間にある空気ばねと並列に減衰力調整式緩衝器を設ける構成としてもよく、第1移動体としての台車と第2移動体としての輪軸との間に軸ばねと並列に減衰力調整式緩衝器を設ける構成としてもよい。
次に、前記各実施の形態に含まれる発明について記載する。本発明によれば、前記各減衰力調整式緩衝器は、減衰力を切換え可能なアクチュエータと、前記振動を計測するセンサと、前記センサからの計測値に基づき前記アクチュエータの制御量を演算して制御する制御部と、をそれぞれ有し、前記各制御部間は、通信手段を介して接続され、前記一の減衰力調整式緩衝器の制御部には、前記一の減衰力調整式緩衝器および前記他の減衰力調整式緩衝器の制御量を演算する演算式が格納され、前記一の減衰力調整式緩衝器の制御部で演算した一の制御量と、前記他の減衰力調整式緩衝器の制御部で演算した他の制御量とを比較する判定手段と、前記判定手段が前記一の制御量と前記他の制御量とが異なると判定したときに、前記一の減衰力調整式緩衝器の制御部または前記他の減衰力調整式緩衝器の制御部が異常であると判定する評価手段と、を備える構成とした。
このため、センサによる計測値および制御部による制御量を各制御部間で相互に伝送することによって、パラメータに異常のある減衰力調整式緩衝器を検出することができる。この結果、制御に必要な信号のみの少ない情報量のやり取りで、パラメータに異常のある減衰力調整式緩衝器を検出し、最適な制御を行うことができていない減衰力調整式緩衝器の制御を止めることができる。また、判定手段は、一の減衰力調整式緩衝器の制御部で演算した一の制御量と、他の減衰力調整式緩衝器の制御部で演算した他の制御量とを比較することによって制御部が異常であるか否かを判定する。このため、別途に異常状態を自己診断するロジックや、異常状態の制御部を特定するロジックを必要としないから、制御部の構成を簡略化することができると共に、制御部での演算処理の負荷を軽減することができる。
本発明によれば、前記判定手段が前記一の制御量と前記他の制御量とが異なると判定したときに、制御量が異なった前記他の減衰力調整式緩衝器の制御部に対して異常を通知する構成とした。このため、他の減衰力調整式緩衝器の制御部が異常か否かを一の減衰力調整式緩衝器の制御部によって監視することができ、相手方の異常状態を相互に監視して車両制御装置全体の制御動作を決めることができる。
本発明によれば、前記各制御部間は、第1の通信サイクルで、前記一の減衰力調整式緩衝器のセンサが計測した計測値と前記他の減衰力調整式緩衝器のセンサが計測した計測値とを交換して、前記一の減衰力調整式緩衝器および前記他の減衰力調整式緩衝器の制御量を前記演算式から算出し、第2の通信サイクルで、前記一の減衰力調整式緩衝器の制御部で演算した前記一の制御量と、前記他の減衰力調整式緩衝器の制御部で演算した前記他の制御量とを交換して、前記一の制御量と前記他の制御量とを前記判定手段によって比較し、第3の通信サイクルで、前記判定手段が前記一の制御量と前記他の制御量とが異なると判定したときに、前記評価手段が前記一の減衰力調整式緩衝器の制御部または前記他の減衰力調整式緩衝器の制御部が異常であると判定する構成とした。このように構成することにより、制御部の演算途中において、通信が混線する問題を回避することができる。
本発明によれば、前記センサは前記制御部に設けられるから、センサと制御部とを接続するためのケーブルを省くことができ、製造コストを低下させることができる。また、ケーブル断線がなくなるから、装置全体の信頼性を高めることができる。
また、本発明では、
互いに相対移動する第1移動体および第2移動体の間に配置され、振動を制御する少なくとも一の減衰力調整式緩衝器と他の減衰力調整式緩衝器とを使用した車両制御装置において、
前記各減衰力調整式緩衝器は、減衰力を調整する制御バルブと、制御量に応じて前記制御バルブを駆動させるアクチュエータと、前記制御量を算出して前記アクチュエータを制御する制御部と、をそれぞれ有し、
前記各制御部間は、通信手段を介して接続され、
前記各制御部は、前記制御量を算出するための互いに共通するパラメータを、それぞれ有し、
前記一の減衰力調整式緩衝器の制御部に前記パラメータを書込んだ一のパラメータ書込み日時と、前記他の減衰力調整式緩衝器の制御部に前記パラメータを書込んだ他のパラメータ書込み日時とを比較する書込み日時判定手段と、
前記書込み日時判定手段が前記一のパラメータ書込み日時と前記他のパラメータ書込み日時とが異なると判定したときに、前記一の減衰力調整式緩衝器の制御部または前記他の減衰力調整式緩衝器の制御部が異常であると判定する評価手段と、を備えている。
この場合、パラメータが更新されたか否かは、制御部に電源を入れた起動時に比較すればよいから、車両の走行前にパラメータの書込み忘れ等を容易に発見することができ、不適な制御動作を防止することができる。