JP2015199199A - インモールド成形品とインモールド成形用フィルムおよびインモールド成形品の製造方法 - Google Patents

インモールド成形品とインモールド成形用フィルムおよびインモールド成形品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性、伸び性に優れたインモールド成形用フィルムを提供する。
【解決手段】インモールド成形用フィルムの転写層5は、2液硬化性樹脂層12aを熱可塑性樹脂層11a,13aが挟んで形成されているため、成形樹脂による転写層内での熱流を防止し、金型への賦形時に、金型からの伝熱により軟化しやすく伸び性も向上する。
【選択図】図1

Description

本発明は、表面に転写フィルムを有するインモールド成形品とその成形に使用するインモールド成形用フィルムに関する。
インモールド成形とは、金型内で転写フィルムと射出成形樹脂とを一体成形して、表面に転写フィルムを有する成形品を製造する方法であり、例えば、成形品の表面を様々な絵柄で装飾するために用いられる。
これは図9のように、固定側の第1金型1と可動側の第2金型2の間にインモールド成形用フィルム3を挟み込み、インモールド成形用フィルム3の転写層を成形品に転写させることで、樹脂の射出成形と表面の加飾を同時に行う工法である。
インモールド成形用フィルム3の基本構成を図10に示す。
インモールド成形用フィルム3は、成形品に転写されない基材シート4と、成形品に転写される転写層5で構成される。
基材シート4は、ベースフィルム6と、ベースフィルム6から転写層5を剥離させるための剥離層7とで構成される。
転写層5は、ハードコート層8と、プライマー層9と、第1着色層11と、第2着色層12、接着層13とで構成される。
ハードコート層8は、インモールド成形品の最表面で傷、ゴミ等から転写層5を守る役割を果たす。プライマー層9は、ハードコート層8と第1着色層11を繋ぐ役割を果たす。第1着色層11と第2着色層12は、成形品の表面に色、絵柄、模様等の意匠を付与する役割を果たす。接着層13は、射出された成形樹脂に転写層5を接着させる役割を果たす。
図11(a)〜(h)はインモールド成形工程を示している。
図11(a)では、着色層が表現する色、絵柄、模様等の所定の意匠が、第1金型1と第2金型2との間の所定の位置に配置されるように、図9に示した箔送り装置14A,14Bによりインモールド成形用フィルム3を送る。このとき、インモールド成形用フィルム3は基材シート4が第2金型2と対向し、接着層13が第1金型1と対向するように矢印FO方向に搬送させる。インモールド成形用フィルム3は成形前に図9に示した予備加熱器15によって所定の温度に予め温められ、次工程でフィルムが金型に十分に賦形するような伸縮性を持たせる。
図11(b)では、インモールド成形用フィルム3の使用する区間が第1金型1と第2金型2との間に到着した後、第2金型2のキャビティ面に開口されている吸引穴16からインモールド成形用フィルム3を吸引して、第2金型2のキャビティ面にインモールド成形用フィルム3を密着させる。これにより、キャビティ面がインモールド成形用フィルム3で賦形される。また、このとき、環状のフィルム押さえ部材17によりインモールド成形用フィルム3を固定して位置決めする。
図11(c)では、第2金型2を動かして、第1金型1と第2金型2を型締めする。この際、フィルム押さえ部材17は、第1金型1に形成されている収納凹部18に収納される。
図11(d)では、第1金型1と第2金型2を型締めすることによって形成されたキャビティ内に、第1金型1のゲート19よりインモールド成形用フィルム3の接着層13に向けて溶融した成形樹脂20を射出注入する。これにより、溶融した成形樹脂20をキャビティ内に充填する。
図11(e)では、キャビティ内の成形樹脂20を所定の温度まで冷却して固化させる。
図11(f)では、第2金型2を動かして、第1金型1と第2金型2を型開きする。この際、固化して成形された成形樹脂20の表面に接着された転写層5が、基材シート4から剥がれる。これにより、表面に転写層5のみが転写されたインモールド成形品21を得ることができる。得られたインモールド成形品21は、転写層5のハードコート層8で覆われた状態となる。
図11(g)では、第1金型1から突き出しピン22を押し出して、インモールド成形品21を取り出す。
インモールド成形品21の取り出し完了後の図11(h)では、次の成形サイクルに備えて、第2金型2の吸引穴16からの吸引による基材シート4のキャビティ面への吸着を止め、箔送り装置14A,14Bによりインモールド成形用フィルム3を搬送する。その際に予備加熱器15において所定の温度に温められたインモールド成形用フィルム3の次の成形に使用する色、絵柄、模様等の所定の意匠が、第1金型1と第2金型2との間の所定の位置に配置される。
以上の動作を繰り返してインモールド成形品9を連続して製造している。
従来のインモールド成形用フィルム3には、溶融した成形樹脂20からの熱や、溶融した成形樹脂8の圧力等に起因する着色層からのインキ流れやインキ飛び等の射出成形時に起こる不良を防止する目的で、第1着色層11、第2着色層12を形成するインキに、耐熱性が高く、塗膜硬度が硬い2液硬化性のインキを使用しているものがある。
特開2013−6280号公報
常温で延伸性の大きい基材シート4を用いる場合、ロール状のこの基材シート4に着色層を印刷する際に、基材シート4の伸びを制御することが難しく、結果的に着色層の印刷精度がばらついてしまい、高品位なインモールド成形品21に必要な印刷精度を維持することは困難である。
また、転写層5には、常温時に軟化性の高い熱可塑性樹脂を使用する伸縮性フィルムを使用するため、成形樹脂20は低温樹脂に限定されてしまい、成形条件の調整幅も非常に狭くなり、高温成形樹脂であるポリカーボネートやガラスフィラー入りのポリカーボネート等で構成される幅広い製品への展開が困難である。
また、熱可塑性樹脂のみで転写層5を形成した場合、射出成形工程でゲート19近傍の着色層が流れてしまうインク流れ(ゲ―トマーク)が発生してしまい、成形不良となり高品位な成形品を得ることは出来ない。一方、2液硬化性樹脂で転写層5を形成したインモールド成形用フィルムでは、2液硬化性樹脂を軟化させるための加熱に時間を要し、成形タクトが長くなってしまうだけでなく、一部アフターキュアタイプのハードコート層が加熱により硬化促進され、伸び性が悪化して金型吸引時にハードコート層に割れが発生してしまい、更に成形品形状が深絞りの場合、金型吸引時にフィルムが金型のキャビティの面に追従しにくく、特に、成形品端面にシワが発生し成形不良となり、高品位な成形品を得ることは困難である。
本発明は、高品位なインモールド成形品に必要な印刷精度を維持することができ、高温成形樹脂の成形品を加飾することができ、成形品の端面に皺のない高品位な加飾を実現できる、インモールド成形用フィルムとそれを使用して成形されたインモールド成形品およびインモールド成形品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明のインモールド成形品は、表面に転写層を有するインモールド成形品において、前記転写層に2液硬化性樹脂層と熱可塑性樹脂層が形成されており、熱可塑性樹脂層が前記2液硬化性樹脂層を挟んでいる、ことを特徴とする。
また、本発明のインモールド成形用フィルムは、基材シートの上に転写層を配置したインモールド成形用フィルムにおいて、前記転写層に2液硬化性樹脂層と熱可塑性樹脂層が形成されており、熱可塑性樹脂層が前記2液硬化性樹脂層を挟んでいる、ことを特徴とする。
また、本発明のインモールド成形品の製造方法は、熱可塑性樹脂層が2液硬化性樹脂層を挟んでいる転写層を基材シートの上に配置したインモールド成形用フィルムを、第1金型と第2金型の間に配置し、前記第1金型と前記第2金型を型締めして形成したキャビティに樹脂を流し込み、前記キャビティに流し込まれた前記樹脂を冷却し、前記第1金型と前記第2金型を型開きして、前記インモールド成形用フィルムの前記基材シートから前記転写層を剥がし、表面に前記転写層を有する成形品を取り出すことを特徴とする。
本発明によれば、インモールド成形用フィルムの転写層が、熱可塑性樹脂層が2液硬化性樹脂層を挟んでいる層構成であるため、インモールド成形品の転写層内に亀裂が発生しない。2液硬化性樹脂層が上下の熱可塑性樹脂層によってコーティングされた状態になり、たとえ2液硬化性樹脂層内でクラックが発生したとしても、熱可塑性樹脂層との界面においてクラックの進展は止まる。
加熱時に熱可塑性樹脂層が軟化するため、2液硬化性樹脂層を含むインモールド成形用フィルムであっても金型吸引時にキャビティ面への追従性が良好になり、転写性が良好で高品位なインモールド成形品を得ることができる。
更に射出成形時の樹脂熱と射出圧力で熱可塑性樹脂層が軟化し流動化したとしても、熱可塑性樹脂層を挟んだ2液硬化性樹脂層により樹脂層の流動化が抑えられて、インク流れ、すなわち、ゲートマーク等の成形不良が発生せず高品位なインモールド成形品が得られる。
このように、本発明によれば、インモールド成形用フィルムの転写層が、柔軟性の高い熱可塑性樹脂層が耐熱性の高い2液硬化性樹脂層を挟んでいる層構成であるため、従来技術で発生しやすかった成形樹脂の熱による転写層内での熱流を防止でき、インモールド成形用フィルムの金型賦形時にも事前の僅かな加熱で軟化しやすいように、伸び性も向上化できる。更に延伸された基材を用いながら転写層に耐熱性と可とう性を併せ持った高伸縮加飾フィルムが提供可能となり、比較的成形温度の高い樹脂や金型のゲート構造のマージンを広げることが可能となり、成形樹脂がポリカーボネート、ガラスフィラー入りのポリカーボネート等の幅広い製品用途への展開が可能となる。
本発明のインモールド成形用フィルムの断面図 同実施例のインモールド成形品の断面図 (a)〜(c)同実施例においてクラック発生が進展しないメカニズムを示すインモールド成形工程の要部の断面図 (d)〜(f)比較例においてクラック発生が進展するメカニズムを示すインモールド成形工程の要部の断面図 本発明の別の実施例における熱可塑性樹脂層に挟まれた2液硬化性樹脂層内にフィラーを含有させた場合のインモールド成形工程を示す断面図 本発明の更に別の実施例における熱可塑性樹脂層に挟まれた2液硬化性樹脂層内にナノカーボン粒子を含有させた場合のインモールド成形工程を示す断面図 本発明の更に具体的な実施例のインモールド成形用フィルムの断面図 同実施例のインモールド成形品の断面図 インモールド成形用金型の構成図 従来のインモールド成形用フィルムの断面図 (a)〜(h)インモールド成形の工程図
以下、本発明の実施の形態を各実施例に基づいて説明する。
図1と図2および図3(a)〜(c)は、本発明の実施例を示す。図4(d)〜(f)は比較例の説明図である。
図1は、本発明の実施例におけるインモールド成形用フィルム3aの層構成を示している。このインモールド成形用フィルム3aは、基材シート4の上に転写層5が形成された帯状体である。
基材シート4は、PETやアクリルフィルム等からなるベースフィルム6と、その上に形成された剥離層7とで構成される。ベースフィルム6の膜厚は20μm〜100μmの間から選択される。この実施例では、50μmの膜厚のものを使用した。剥離層7は、乾燥後に膜厚が0.1μm〜3μmとなるようにベースフィルム6上に形成した。
転写層5は、ハードコート層8、プライマー層9a、第1着色層11a、第2着色層12a、接着層13aが、基材シート4の剥離層404の上に順に形成して構成されている。転写層5は、2μm〜50μmの膜厚を有するように構成される。この実施例では、乾燥後の膜厚の最も厚い層厚が10μmとなるように転写層5を構成した。印刷工法としては、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷を用いる。標準的な膜厚はグラビア印刷では1層あたり、0.1〜2μm、スクリーン印刷では1層あたり0.5〜3μm、インクジェット印刷については1層あたり0.5〜10μmである。本発明では1層あたりの膜厚は0.1〜10μmと限定している。1層あたり0.1μm未満の膜厚では所望の色が実現できないため加飾用途としては不適である。また1層あたり10μmを越える場合は転写層の膜厚が厚くなることを意味しており、それによって成形時に型のパートライン上での箔切れ性が悪化する。箔切れ性が悪くなることによってインモールド成形品の端部の外観品位が悪化する。よって、この実施例では1層あたりの膜厚範囲を限定している。
本発明による層構成は前記の印刷工法単体であっても複数組み合わせても良い。詳しくは、転写層5を構成する各層の乾燥後の平均膜厚が、ハードコート層8については5μm、プライマー層9aについては2μm、第1着色層11aについては10μm、第2着色層12aについて2μm、接着層13aについては2μmとなるように、各層を形成した。ハードコート層8には、UVアフターキュアタイプを使用した。
プライマー層9aは2液硬化性樹脂で出来ており、順に第1着色層11aは熱可塑性樹脂、第2着色層12aは2液硬化性樹脂、接着層13aは熱可塑性樹脂で出来ている。
このように層構成されたインモールド成形用フィルム3aを、図9に示したインモールド成形用金型の第1金型1と第2金型2の間に配置して、図11(a)〜(h)に示した工程でインモールド成形品を製造する。
図2は、図11(e)で成形樹脂20を注入し、図11(f)で型開きするまでの間のインモールド成形用フィルム3aと成形樹脂20の積層状態を示している。成形樹脂20はポリカーボネート、ガラスフィラー入りのポリカーボネートやポリアミド、ガラスフィラー入りのポリアミド等である。
ここでは、インモールド成形用フィルム3aの転写層5の層構成を、熱可塑性樹脂の層/2液硬化性樹脂の層/熱可塑性樹脂の層の層構成にした場合に、2液硬化性樹脂の層内で発生した微小クラックが進展しないことについて説明する。
図3(a)は、図2において仮想線Pで囲んだ第1着色層11a、第2着色層12a、接着層13aの部分の、溶融した成形樹脂が金型のキャビティ内に充填される前の状態を拡大している。2液硬化性樹脂層の第2着色層12aが、熱可塑性樹脂層の第1着色層11aと熱可塑性樹脂層の接着層13aによって挟まれている。
図3(b)は、溶融した成形樹脂が金型のキャビティ内に充填されるときの状態を示している。このときには、成形樹脂の射出圧力(注入圧力)がインモールド成形用フィルムに加わって、それによる引張り応力Fが第1着色層11a、第2着色層12a、接着層13aの各層に発生する。さらに詳しくは、溶融した成形樹脂が金型のキャビティ内に射出して注入される前の図3(a)段階では、可動型のキャビティ面にインモールド成形用フィルムが密着しておらず、そこでは、可動型のキャビティ面とインモールド成形用フィルムとの間に隙間が空いている。そのため、成形樹脂の射出圧力によって引張り応力が発生することと、可動型のキャビティ面とインモールド成形用フィルムとの間に隙間が空いていることが相俟って、溶融した成形樹脂の射出時に、インモールド成形用フィルムに大きな伸びが発生する。したがって、インモールド成形用フィルムに負荷がかかる。
このように、成形樹脂の射出時に、インモールド成形用フィルムに負荷がかかる。そのため、熱可塑性のインキに比べて伸縮性が劣る2液硬化性インキを用いると、インモールド成形用フィルムにかかる負荷に第2着色層12aを形成するインキが耐えきれず、第2着色層12a内に微小クラック23が発生する。
しかし、この実施例のインモールド成形用フィルム3aでは、微小クラック23が発生する2液硬化性樹脂層の第2着色層12aが、熱可塑性樹脂層の第1着色層11aと接着層13aによって挟まれた状態になっているため、図3(c)のように微小クラック23が、第1着色層11aと第2着色層12aとの接触面、第2着色層12aと接着層13aとの接触面で停止して進展せず、インク割れ等の成形不良を防止することができる。
これは2液硬化性樹脂層を挟み込む熱可塑性樹脂層内の分子構造に起因しており、主に硬度、耐熱性に起因する3次元架橋密度が2液硬化性樹脂層内に含有される3次元架橋密度よりも少なく、且つ伸びに起因する鎖状構造部位が2液硬化性樹脂層よりも多いため、2液硬化性樹脂層よりも熱可塑性樹脂層の伸縮性が高い分子構造であることに起因する。
また、逆に2液硬化性樹脂層は熱可塑性樹脂層よりも3次元架橋密度が高いため硬度、耐熱性が高いため射出成形時に、射出樹脂熱による軟化が起こり難く、従来の熱可塑性樹脂層のみで構成されるインモールド箔と違い、熱可塑性樹脂層の間に2液硬化性樹脂層を設けるため、2液硬化性樹脂層を挟み込む熱可塑性樹脂層が射出樹脂熱、射出圧により射出樹脂影響され流動化され易くても、2液硬化性樹脂層は流動化され難いため、2液硬化性樹脂層を挟み込む熱可塑性樹脂層も動き難くなり、成形樹脂熱及び射出樹脂圧によるゲート部で起こり易い着色層等が流れてしまうインキ流れが起こり難い。
また、熱可塑性樹脂層と2液硬化性樹脂層のTg点(=ガラス転移点)は熱可塑性樹脂層のTg点をTg1とし2液硬化性樹脂層のTg点をTg2とするとTg2−Tg1が+20℃〜+200℃の範囲内であることが望ましい。Tg2−Tg1が+20℃より小さいと2液硬化性樹脂層は熱可塑性樹脂層と耐熱性の点で大差が無くなり、射出成形時に耐熱性の点で特段の効果を得ることが難しく、ゲートマーク等の成形不良を発生させてしまう。またTg2−Tg1が+200℃を超えるまでに2液硬化性樹脂層内の3次元架橋密度を高めると、2液硬化性樹脂層を形成する分子構造内に鎖状構造部位が少なくなり、熱可塑性樹脂層との伸び量の差が大きくなる状態になり、インモールド成形時に2液硬化性樹脂層が射出成形時の伸びに追従せずクラックが進展し易くなる。
熱可塑性樹脂層は、1液型の溶剤系インク、水系インクまたは紫外線硬化型インク等で形成される。
以上説明したように、インモールド成形品の製造プロセスにおいて2液硬化性樹脂の第2着色層12aに微小クラックが発生するが、この第2着色層12aを、2液硬化性樹脂のインクに比べて伸縮性が良好な熱可塑性樹脂の層である第1着色層11aと接着層13aによって挟むことによって、2液硬化性樹脂層内に微小クラックが発生しても、第2着色層12aを貫通するクラックは発生しない。よって、熱可塑性樹脂層との界面においてクラックの進展は止まり大きなクラックにはならず人間の目で見た時に微小クラックは判別できない。
また、加熱時に熱可塑性樹脂の層が軟化し、2液硬化性樹脂の層を含むインモールド成形用フィルムであっても、金型吸引時に金型への追従性が良好になり、転写性が良好で高品位なインモールド成形品を得ることができる。更に、射出成形時の成形樹脂20からの熱と射出圧力よって熱可塑性樹脂層である第1着色層11aが軟化し流動化するおそれがあるが、この第1着色層11aを、2液硬化性樹脂の層である第2着色層12aと、2液硬化性樹脂の層であるプライマー層9aとで挟んでいるため、第1着色層11aの流動化が抑えられて、インク流れ、すなわち、ゲートマーク等の成形不良が発生せず高品位なインモールド成形品が得られる。
(比較例)
これに対して図4(d)〜(f)は、第1着色層,第2着色層,接着層の全部を、2液硬化性樹脂層の第1着色層11b,第2着色層12b,接着層13bで構成した比較例を示す。成形時の条件は図3(a)〜(c)と同じである。
図4(d)は、図3(a)の場合と同じように、溶融した成形樹脂が金型のキャビティ内に充填される前の第1着色層11b,第2着色層12b,接着層13bを示している。
この比較例のインモールド成形用フィルムの場合には、溶融した成形樹脂が金型のキャビティ内に充填されると、引張り応力Fが各層に発生して、図4(e)に示すように、第1着色層11b,第2着色層12b,接着層13bの全部にクラック23が発生し、時間経過とともに図4(f)に示すように、それらのクラック23が進展し、クラック同士がつながって大きなクラック24となり、結果としてインク割れに発展する。
なお、図1に示したインモールド成形用フィルムの第2着色層12aに、フィラーを含有させることによって、更なる改善を期待できる。
図5(a)〜(c)は、熱可塑性樹脂の層に挟まれた2液硬化性樹脂の層内にフィラーを含有させた場合のインモールド成形品の成形工程の一部を示している。
図5(a)は、図2において仮想線Pで囲んだ部分の、溶融した成形樹脂が金型のキャビティ内に充填される前の状態を拡大している。第2着色層12a内に加えるフィラー25には、射出成形前の第2着色層12aの最も薄い箇所の膜厚以下の大きさの平均粒子径を有するものを含有させた。フィラー25の形状にもよるが、フィラー25の大きさは、第2着色層12a内で十分に分散できる平均粒子径の小さいものがより効果的である。これは、第2着色層12a内でフィラー25を十分に分散できないと、成形品の第2着色層12aに微小クラックの進展を防止するのに必要な量のフィラー25が存在できないおそれがあるためである。フィラー25の第2着色層12a内での分散性を考慮すると、例えば、乾燥後の第2着色層12aの平均膜厚が10μmの場合、球状のフィラー25であれば平均粒子径が0.2μm〜2μmの範囲のものが好ましい。但し、射出成形時に第2着色層12a内で発生する微小クラックの進展を抑えることができれば、フィラー25の平均粒子径は特に限定されるものではない。
フィラー25の種類は、半透明でインキの色に対して影響の少ないシリカ、タルク等が有効であるが、射出成形時に第2着色層12a内で発生する微小クラックの進展を防止してインク割れ等の成形不良の発生を抑えることができるものであればよく、特に限定されるものではない。
また、フィラー25の製造方法も、射出成形時に第2着色層12a内で発生するマイクロクラックの進展を防止してインク割れ等の成形不良の発生を抑えることができるフィラーを製造できる方法であればよく、特に限定されるものではない。例えばシリカを例にすると、加工方法の違いによって、シリカにも球状シリカやコロイダルシリカ、粉砕シリカ、多孔質シリカ等の種類があるが、シリカの加工方法は、射出成形時に第2着色層12a内で発生する微小クラックの進展を防止してインク割れ等の成形不良の発生を抑えることができるシリカを製造できる方法であればよく、特に限定されるものではない。
ここでは、フィラー25として平均粒子径が0.2μmの球状シリカをインキに分散させて、乾燥後の平均膜厚が10μmとなる第2着色層12aを形成した。第2着色層12aを形成するインキには、熱可塑性樹脂に、ウレタンタイプの2液硬化剤を添加して調製した、ウレタンタイプの2液硬化性のインキを使用した。詳しくは、フィラー25を重量比でインキ100重量部に対して5重量部の割合でインキに分散させた後、スクリーン印刷で、少なくとも所定の意匠を保てる程度の硬度を有する未硬化状態の第2着色層12aを形成した。
フィラー25の添加量は、射出成形時に第2着色層12a内で発生する微小クラックの進展を防止してインク割れ等の成形不良の発生を抑えることができれば、特に限定されるものではないが、同じ添加量でも、インキの種類とフィラー25の平均粒子径の大きさによってインキの粘性が変わることを考慮して選択する。高粘性のインキは印刷または塗工時の取り扱いが難しくなるためである。フィラー25の添加量が多くなれば、インキが高粘性になる傾向がある。フィラー25として、平均粒子径が0.2μmの球状シリカを用いた場合は、インキ100重量部に対して0.5重量部〜30重量部の添加量で球状シリカをインキに分散させるのが粘性の点で好ましいことがわかった。なお、粘度調整の観点から平均粒子径が異なるフィラーを分散させてもよい。
インキの主材料の樹脂についても特に限定されるものではなく、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂などの第2着色層12aに隣接する層に使用される材料との相性に合わせて選定すればよい。
フィラーを分散させたインキを用いて着色層を形成する方法についても特に限定されるものではなく、着色層または着色層以外の層を形成する一般的な方法と同様に、スクリーン印刷機、グラビア印刷機、インクジェット印刷機、コーターなどを用いて形成することができる。なお、着色層を形成する方法の違いによってインキの粘性の好適な範囲が異なるので、着色層を形成する方法に合わせて、インキの種類やフィラー25の添加量等を選定して、インキの粘度調整を行うのがよい。
以上説明したインモールド成形用フィルムを用いてインモールド成形品を製造するプロセスは、図11に示すインモールド成形品の製造プロセスと同様であり、第1金型1と、第2金型2との間に配置するインモールド成形用フィルムに、インモールド成形用フィルム図10に代えて、第2着色層12a内にフィラー25を加えたインモールド成形用フィルム3aを用いている点のみが異なるので、その説明は省略する。図5(b)は、溶融した成形樹脂が金型のキャビティ内に充填されるときの状態を示している。
なお、インモールド成形品の製造プロセスにおいては、そのプロセスの条件によって、上記した成形樹脂の充填工程以外の他の工程、例えば、成形樹脂20を冷却する工程等でも第2着色層12a内に微小クラック23が発生する可能性があるが、いずれの工程で微小クラックが発生しても、その微小クラックの成長はフィラー25によって止められるので、2液硬化性樹脂層、つまり第2着色層12aを貫通するクラックは発生しない。その後、微小クラックが発生し続けても、図5(c)に示すようにフィラー25によって微小クラック23の進展を防止することができ、微小クラック23が第2着色層12aを貫通するクラックへ進展しなかった。
なお、図5(a)〜(c)の説明では第2着色層12aにフィラー25として平均粒子径が0.2μmの球状シリカをインキに分散させて微小クラック23の進展を防止したが、フィラー25の一部をカーボン材料にすることによって、更なる改善を期待できる。
図6(a)は、図2において仮想線Pで囲んだ第1着色層、第2着色層、接着層の部分の、溶融した成形樹脂が金型のキャビティ内に充填される前の状態を拡大している。熱可塑性樹脂層に挟まれた2液硬化性樹脂層としての第2着色層12aのインキに、フィラーとして球状シリカ25aとナノカーボン粒子25bを分散させた。
図6(b)は、溶融した成形樹脂が金型のキャビティ内に充填されるときの状態を示している。熱伝導性の高いナノカーボン25b等の微粒子を含有させることにより前記のクラック23の進展防止以外の効果として、第2着色層12aのナノカーボンが熱伝導の媒体となり熱伝導特性が向上し、結果として第2着色層12aの可撓特性が発現し、熱可塑性樹脂の第1着色層11a、接着層13aの伸びに近づくため、クラックの発生そのものが抑制される。
このナノカーボン粒子25bの形状は球形でも、麟片状でも柱状でも構わない。射出成形時に熱可塑性樹脂層に挟まれた2液硬化性樹脂の第2着色層12a内では、ナノカーボン粒子の含有により、ナノカーボン25bを介して熱伝導26が生じて熱伝導性が良化し、ナノカーボン粒子がないときよりも2液硬化性樹脂層の温度が上昇しやすく、その結果、2液硬化性樹脂層が伸びやすくなる。そのため微小クラックの発生を大幅に削減する。
これは微小クラックが発生するが、それを最小限に抑制していたフィラーの働きに加え、2液硬化樹脂層を熱可塑性樹脂層並に伸ばす特性を付与することで、微小クラックの発生そのものを抑制できる。
ナノカーボン粒子25bの寸法は、1μm未満である。またナノカーボン粒子なのでミクロンサイズの粒子に見られるような黒色は付いておらず、透明粒子である。よって着色層にナノカーボン粒子を含有させたことによる色への影響は全く無いといえる。
図7は更に具体的な実施例のインモールド成形用フィルムを示している。このインモールド成形用フィルムを使用して成形したインモールド成形品21を図8に示す。
上記の各実施例では転写層5が、ハードコート層8,プライマー層9a,第1着色層11a,第2着色層12a,接着層13aによって構成されていたが、この実施例では、第2着色層12aと接着層13aの間に、隠蔽層27と耐熱層28が介装されている。
隠蔽層27は、第1,第2着色層11a,12aだけでは、色が透けてしまい、所望の色が実現できないので、第2着色層12aと接着層13aの間に介装されている。色の隠蔽と耐熱の役目を果たすために、この隠蔽層27には硬化剤を入れて2液硬化性樹脂の層としている。隠蔽層27の隠蔽色は、白色、グレー色、シルバー色を主に使う。
耐熱層28は、硬化剤を入れて2液硬化性樹脂の層とすることで、高温の成形樹脂20が隠蔽層27に入らないようにしている。
色合いを出すために第1着色層11aの使用インク量が増える。それに伴って第1着色層11aが厚膜になるが、隠蔽層27と耐熱層28を第2着色層12aと接着層13aの間に介装することによって、厚膜になっている第1着色層11aの流動化をより確実に防止できる。
以上説明したように、本発明によれば、成形樹脂による転写層内での熱流を防止することができ、金型への賦形時インモールド成形用フィルムの伸び性も向上し、2液硬化性樹脂層内の微小クラックは進展せず、インク割れ等の成形不良を防ぐことが出来る。
また、本発明は、上記の各実施例で説明した層構成のインモールド成形用フィルムに限定されて適用されるものではない。上記の各実施例とは層構成が異なる各種のインモールド成形用フィルムにも適用できる。
本発明は、耐熱性、伸縮性を兼ね備えた加飾成形品を提供できるためポリカーボネートやガラス入りポリカーボネートを使用する製品用途への適用が可能となり、家電製品、自動車の内外装品、携帯電話装置などの各種の外装成形品に適用できる。
1 第1金型
2 第2金型
3a インモールド成形用フィルム
4 基材シート
5 転写層
6 ベースフィルム
7 剥離層
8 ハードコート層
9a プライマー層
11a 第1着色層
12a 第2着色層
13a 接着層
F 成形時のフィルム伸び
20 成形樹脂
21 インモールド成形品
23 クラック
24 層間をまたがる進展したクラック
25 フィラー
25a 球状シリカ
25b ナノカーボン粒子
26 熱伝導
27 隠蔽層
28 耐熱層

Claims (10)

  1. 表面に転写層を有するインモールド成形品において、
    前記転写層に2液硬化性樹脂層と熱可塑性樹脂層が形成されており、熱可塑性樹脂層が前記2液硬化性樹脂層を挟んでいる、
    インモールド成形品。
  2. 前記転写層の2液硬化性樹脂層の分子内には、2次元の鎖状構造と3次元の架橋構造が混在しており、2液硬化性樹脂内の3次元架橋密度が前記熱可塑性樹脂層の3次元架橋密度よりも大きいことを特徴とする、
    請求項1に記載のインモールド成形品。
  3. 前記転写層の2液硬化性樹脂層のTg点が、
    熱可塑性樹脂層のTg点よりも高いことを特徴とする、
    請求項1または2のいずれかに記載のインモールド成形品。
  4. 前記転写層の2液硬化性樹脂層内にフィラーが含有されていることを特徴とする、
    請求項1〜3のいずれかに記載のインモールド成形品。
  5. 前記転写層の2液硬化性樹脂層内に含有されるフィラーの一部がカーボン材料であることを特徴とする、
    請求項4に記載のインモールド成形品。
  6. 前記転写層は、
    ベースフィルム上の片側に第1層である剥離層が形成され、
    前記剥離層上に第2層であるアフターキュアタイプのハードコート層が形成され、
    前記ハードコート層の上に第3層であるプライマー層が形成され、
    前記プライマー層の上に第4層である意匠に関する着色層が複数層形成され、
    更に前記着色層よりも成形樹脂に最も近い層である接着層が形成して構成され、
    前記第4層の1層目が熱可塑性樹脂で形成され、前記第4層の2層目は2液硬化性樹脂で形成され、前記接着層が熱可塑性樹脂で形成されていることを特徴とする、
    請求項1〜5のいずれかに記載のインモールド成形品。
  7. 前記第4層及び前記接着層を形成する各樹脂層の膜厚が0.1μm以上、10μm以下で形成されることを特徴とする、
    請求項1〜6のいずれかに記載のインモールド成形品。
  8. 前記第4層の2層目中に微小クラックが存在し、前記微小クラックの進展が熱可塑性樹脂層と2液硬化性樹脂層との接触面で停止していることを特徴とする、
    請求項1〜7のいずれかに記載のインモールド成形品。
  9. 基材シートの上に転写層を配置したインモールド成形用フィルムにおいて、
    前記転写層に2液硬化性樹脂層と熱可塑性樹脂層が形成されており、熱可塑性樹脂層が前記2液硬化性樹脂層を挟んでいる、
    インモールド成形用フィルム。
  10. 熱可塑性樹脂層が2液硬化性樹脂層を挟んでいる転写層を基材シートの上に配置したインモールド成形用フィルムを、第1金型と第2金型の間に配置し、
    前記第1金型と前記第2金型を型締めして形成したキャビティに樹脂を流し込み、
    前記キャビティに流し込まれた前記樹脂を冷却し、
    前記第1金型と前記第2金型を型開きして、前記インモールド成形用フィルムの前記基材シートから前記転写層を剥がし、表面に前記転写層を有するインモールド成形品を取り出すことを特徴とする、
    インモールド成形品の製造方法。
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