JP2015195248A - 光源装置および周波数安定化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な構成で、周波数発生器の周波数確度の影響を低減し、高精度に周波数を安定化することが可能な光源装置を提供する。【解決手段】周波数安定化光源(光源装置)100は、光源101から出射される光の周波数を吸収セル105の吸収線の周波数を基準として安定化させるものであって、光源101からの光が吸収セル105を透過することによって強度変調された光を復調する復調信号を、同期検波により生成する同期検波器108と、吸収セル105における圧力の変化に対応した吸収線の中心周波数の変化量を求め、該変化量に対応した補正信号を算出する演算部110と、復調信号を補正信号で補正し、補正された復調信号によって光源101から出射される光の周波数を制御する制御部111とを有する。【選択図】図1
Description
本発明は、光源からの光の周波数を安定化させる光源装置、および周波数安定化方法に関する。
近年の高密度波長多重光伝送システムや高精度な光波干渉計測システムにおいて、これらに用いられる光源から出射する光は、定められた周波数に安定化される必要がある。一般に、基準周波数としてガスセルのガス吸収線を用いた場合、吸収線の中心周波数は、セル内のガス圧力に依存する。また、セル内のガス圧力は、ガスの温度に依存する。このため、使用するガスセルの温度が変化すると、吸収線の中心周波数が変化し、その結果、光源から出射する光の周波数も変化してしまう。そこで、特許文献1は、ガスセルの温度を一定に制御する方式の他に、ガスセルの温度を測定し、予め用意された温度と中心周波数の相関から、中心周波数の変化を補償するように可変周波数発生器を制御する方式を開示している。特許文献2は、基準周波数を光干渉フィルタとし、光干渉フィルタの温度に応じて、出力比算出手段から出力される出力比の目標値を補正する方法を開示している。
しかしながら、特許文献1に示す周波数安定化光源(波長安定化光源)は、3台の周波数発生器を必要とし、しかも、吸収セル(ガスセル)の温度を一定に制御する場合には、温調装置を必要とする。また、温調装置を使用せずに、温度変化に応じた周波数変化を補償する場合、吸収セルの温度に応じて2台の周波数発生器の出力周波数の差を一定に保ったまま制御する必要がある。このため、特許文献1の周波数安定化光源では、装置が複雑化し、装置の製造費用が高くなる。また、特許文献1においては、周波数発生器によって周波数オフセットさせた光を安定化光としている。そのため、周波数発生器の周波数確度が、直接、安定化光の周波数確度に影響し、高精度に周波数を安定化することができない。また、特許文献2の周波数安定化光源は、光干渉フィルタのスロープ部を周波数弁別器として制御する方式であり、高い周波数弁別ゲインが得られないため、十分な周波数安定度を実現できない。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、例えば、簡易な構成で、周波数発生器の周波数確度の影響を低減し、高精度に周波数を安定化することが可能な光源装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、光源から出射される光の周波数を吸収セルの吸収線の周波数を基準として安定化させる光源装置であって、光源からの光が吸収セルを透過することによって強度変調された光を復調する復調信号を、同期検波により生成する同期検波器と、吸収セルにおける圧力の変化に対応した吸収線の中心周波数の変化量を求め、該変化量に対応した補正信号を算出する演算部と、復調信号を補正信号で補正し、補正された復調信号によって光源から出射される光の周波数を制御する制御部とを備える、ことを特徴とする。
本発明によれば、例えば、簡易な構成で、周波数発生器の周波数確度の影響を低減し、高精度に周波数を安定化することが可能な光源装置を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について図面などを参照して説明する。
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る光源装置について説明する。図1は、本実施形態における光源装置としての周波数安定化光源100の構成を示す概略図である。周波数安定化光源100は、一例として、光源から出射される光の周波数(波長)を吸収セルの吸収線の周波数(波長)を基準として同期させることで安定化させる周波数安定化光源とする。周波数安定化光源100は、安定化される元の光源としての光源101と、光変調器103と、吸収セル105と、同期検波器108と、フィードバック回路109とを備える。
まず、本発明の第1実施形態に係る光源装置について説明する。図1は、本実施形態における光源装置としての周波数安定化光源100の構成を示す概略図である。周波数安定化光源100は、一例として、光源から出射される光の周波数(波長)を吸収セルの吸収線の周波数(波長)を基準として同期させることで安定化させる周波数安定化光源とする。周波数安定化光源100は、安定化される元の光源としての光源101と、光変調器103と、吸収セル105と、同期検波器108と、フィードバック回路109とを備える。
光源101は、一例として、連続発振のレーザー光を発生させるレーザー光源とする。光変調器103は、光源101からの光に変調を与え、吸収セル105は、光変調器103から変調された光を透過させることによって強度変調された光を出力する。吸収セル105としては、例えば、エタロンや、単一気体(純気体)または混合気体の光透過物質が封入されたガスセルが用いられる。同期検波器108は、吸収セル105から出力される強度変調された光を復調するための復調信号を同期検波により生成する。フィードバック回路109は、同期検波器108から出力される復調信号が0になるよう、光源101から出射される光の周波数を制御する。この構成により、吸収セル105の光透過物質の吸収線の中心周波数を基準周波数として利用し、光源101から出力される光の周波数を基準周波数に同期させることで、光源101から出射される光の周波数を安定化させることができる。
ところが、基準周波数とする吸収線の中心周波数は、上述したように吸収セル105における圧力の変化によって変動することがある。例えば、吸収セル105の温度が変化すると、圧力も変化するため、吸収線の中心周波数も変動する。そのため、基準周波数に同期する光源101から出射される光の周波数も変動してしまう。そこで、本実施形態に係る周波数安定化光源100は、吸収セル105における圧力の変化に対応した吸収線の中心周波数の変化量Wを求め、その変化量Wに応じて復調信号を補正する。これにより、圧力の変化の影響を取り除いた復調信号に基づき、光源101からの光の周波数を安定化することができ、吸収セル105の温度や圧力が変化したとしても、光源101から出力される光への影響を低減することができる。具体的には、周波数安定化光源100は、吸収セル105の圧力変化による吸収線の中心周波数の変化量Wに対応した補正信号Vを算出する演算部110と、この補正信号Vにより同期検波器からの復調信号を補正する補正信号制御部111とをさらに備える。
演算部110は、吸収セル105の圧力と、予め取得した吸収セル105の吸収線の中心周波数の圧力に対する敏感度Bとによって、吸収セル105における圧力の変化に対応した吸収線の中心周波数の変化量Wを求める。この場合、吸収セル105の圧力は、吸収セル105の温度と、予め取得した吸収セル105の温度に対する圧力の敏感度Aとにより算出することができる。そこで、周波数安定化光源100は、図1に示すように、吸収セル105に、その温度を検出する少なくとも1つの温度計測器106を設ける。演算部110は、温度計測器106により検出される温度から吸収セル105の吸収線の中心周波数の変化量Wを算出する。補正信号制御部111は、演算部110で得られた中心周波数の変化量Wに対応した補正信号Vを生成し、同期検波器108から出力される復調信号に加減算(加算または減算)する。この構成により、補正された復調信号を使用して、光源101から出射される光の周波数を制御することができる。
次に、周波数安定化光源100の具体的構成例について説明する。ここでは、光源101として分布帰還型レーザーダイオード(DFB LD:distributed feedback laser diode)を用いる。光分波器102としては、−10dBファイバカプラの光分波器を使用し、光源101により発生したレーザーのパワーの一部を分離させる。光変調器103としては、LiNbO3位相変調器を使用する。周波数発生器104で発生する周波数は、光変調器103に印加される。吸収セル105としては、13C2H2ガスが封入された、窓部を有する円筒状のアセチレンガスセルを使用する。温度計測器106としては、吸収セル105の円筒部の側面または窓部側面に取り付けられる温度センサを使用する。なお、ここで、吸収セル105から出力される強度変調された光は、光検出器(フォトディテクタ)107で受光および検出され、その検出信号をI/Vアンプ(電流電圧変換アンプ)112でAD変換した上で、同期検波器108に入力する。同期検波器108としては、例えば、ロックインアンプを使用する。また、フィードバック回路109からの出力は、制御信号として、周波数変換器113に入力される。周波数変換器113は、光源101内の駆動素子、およびその駆動電流と動作温度とを任意に選択および設定することが可能なLDドライバである。周波数変換器113により、光源101から出射される光の周波数は、補正された復調信号に基づいて変換(変更)される。温度計測器106に、複数の温度センサを使用しても良く、演算部110は、複数の温度センサで測定される温度の平均から吸収セル105の吸収線の中心周波数の変化量Wを求めても良い。補正信号制御部111は、演算部110で得られた中心周波数の変化量Wに対応した補正信号Vを生成し復調信号に補正信号Vを加減算することにより、復調信号を補正する。
周波数安定化光源100は、一例として、13C2H2ガスが封入された吸収セル105の吸収線の一つを利用し、1.5μm帯に安定化された光を出力させる。図2(a)は、吸収セル105のガス圧力の変化による、吸収線の変化を示すグラフである。図2(a)において、実線で示す吸収線の波形X1は、吸収セル105が圧力変化の影響を受ける前の吸収線の例を示し、点線で示す吸収線の波形X2は、吸収セル105が圧力変化の影響を受けた後の吸収線の例を示す。吸収セル105のガス圧力が上昇すると、吸収線の波形X1は、吸収線の波形X2のように変化する。例えば、外気温の変化により吸収セル105のガス圧力が上昇すると、図2(a)に示すように、吸収セル105の吸収線は、中心周波数が低くなる。図2(b)は、吸収セル105のガス圧力の変化による、復調信号の変化を示すグラフである。図2(b)において、実線の波形Y1は、吸収セル105が圧力変化の影響を受ける前の復調信号を示し、点線の波形Y2は、吸収セル105が圧力変化の影響を受けた後の復調信号を示す。鎖線で示す吸収線の波形Y3は、圧力変化の影響を受けた後に演算部110によって算出された補正信号Vを用いて補正した後の復調信号を示す。図2(b)に示すように、吸収セル105の吸収線がX1からX2へ変化(変化量W)すると、その変化に伴い復調信号もY1からY2へと低周波側へ変化する。そのため、吸収セル105の吸収線のピークに同期(ロック)された光源101の発振周波数は、ガス圧力が変化する前と比較して、低くなる。ここで、吸収セル105の光透過物質として用いられる13C2H2は、セル圧力10Torrにおいて、吸収線の中心周波数の変化に対し、500kHz/Torrの敏感度を有している。なお、この吸収線の中心周波数に対する圧力の敏感度Bは、吸収線、中心周波数およびガスの種類により異なる。
演算部110は、予め取得した温度に対する圧力の敏感度Aと、吸収線の中心周波数に対する圧力の敏感度Bとを有している。演算部110は、これらの敏感度と、温度計測器106の計測値(相対値)である吸収セル105の平均温度Tとを用いて、以下の式(1)を用いて圧力変化による吸収線の中心周波数の変化量(周波数シフト量)Wを算出する。
W[Hz]=平均温度T[K]×A[Torr/K]×B[Hz/Torr]
・・・(1)
・・・(1)
ここで、吸収線の中心周波数の温度に対する敏感度Cを予め取得している場合を想定する。この場合、演算部110は、以下の式(2)を用いて圧力変化による中心周波数の変化量Wを算出することができる。
W[Hz]=平均温度T[K]×C[Hz/K] ・・・(2)
補正信号制御部111は、式(1)または式(2)により算出した中心周波数の変化量Wと、復調信号のゼロクロス点近傍の傾き(以下、周波数弁別ゲインと称する。)とを適用した以下の式(3)を用いて、補正信号Vを生成する。
補正信号V[V]=W[Hz]×周波数弁別ゲイン[V/Hz] ・・・(3)
補正信号Vと、I/Vアンプ112からの復調信号とを加減算し、図2(b)の鎖線(吸収線の波形Y3)で示す復調信号のように、オフセットさせた信号をフィードバック回路109へ入力する。この構成により、圧力変化を受ける前の周波数に同期(ロック)することができる。
次に、周波数安定化光源100の動作について説明する。光源101から出力されたレーザー光は、光分波器102により、出力光と、この出力光の周波数を安定化するために光変調器103へ入射する光とへ分波される。光変調器103へ入射した光は、周波数発生器104の出力により100MHzに周波数変調され、その変調出力光は、基準周波数となる吸収線を有する吸収セル105に入射する。吸収セル105を通過し強度変調された光は、光検出器107で電気信号に変換され、I/Vアンプ112を介して同期検波器108へ供給される。周波数発生器104の出力も同期検波器108へ供給される。同期検波器108は、周波数発生器104の出力を用いて、I/Vアンプ112の出力から変調周波数1f成分を同期検波する。変調周波数1f成分で同期検波された同期検波器108からの出力は、図2(b)で示すような曲線となり、誤差信号としてフィードバック回路109を通じて周波数変換器113へ帰還する。同期検波器108からの出力は、図2(a)に示す吸収線を1次微分した曲線になる。一方、吸収セル105近傍の温度が変化すると、演算部110は、式(1)または式(2)に基づき、温度変化量に対応した圧力変化による吸収線の中心周波数の変化量Wを算出する。例えば、吸収セル105の光透過物質として用いられる13C2H2(R7)20Torrでは、吸収セル105近傍の温度が1K増加した場合、中心周波数は25kHz程度低くなる。
次に、補正信号制御部111は、式(3)に基づき、圧力変化による中心周波数の変化量Wに対応した補正信号Vを生成する。例えば、吸収線の吸収率を57%、吸収セル105への入射光量を1mW、周波数発生器104の出力信号の周波数を100MHz、振幅を光変調器103のVπ相当とする。また、光検出器107とI/Vアンプ112との総合ゲインは、10000V/Wとする。この場合の周波数弁別ゲインは、4.6×10−8V/Hzである。したがって、1Kの温度変化による中心周波数の変化量Wが25kHzである場合の補正信号Vは、1.1mVとなる。補正信号Vを復調信号に減算した信号をフィードバック回路109へ入力することにより、光源101から出射される光の周波数は、圧力変化を受ける前の周波数に安定化される。
本実施形態では、図2(b)における中心周波数近傍の復調信号のスロープ部分であれば任意の場所に周波数を安定化することができる。しかしながら、吸収線の中心周波数から遠い部分ほど、周波数弁別ゲインは、低下する。したがって、例えば、最大の傾きに対して0.1%までの低下を許容範囲とした場合、周波数にして±3.8MHzの範囲に相当する。吸収線の中心周波数の敏感度Cは、25kHz/Kであるため、温調機構なしでも、±152Kの範囲の温度変化に対応することができる。周波数安定化光源100においては、光源101の光出力における周波数確度は、吸収線ピークの周波数確度と制御回路の確度にのみ依存する。そのため、上述した周波数発生器を利用する従来の周波数安定化光源と比べ、周波数発生器自体の周波数確度による光源101の光出力への影響を低減することができ、高精度に周波数を安定化することが可能になる。
周波数安定化光源100は、吸収セル105近傍の温度から圧力を求め、その圧力に基づいて吸収線の中心周波数の変化量Wを算出する。そして、算出した吸収線の中心周波数の変化量Wに基づいて復調信号を補正することにより、圧力変化の影響を低減することができる。この構成により、光源101から出射される光の周波数を、圧力変化を受ける前の周波数に安定化することが可能となる。本実施形態によれば、従来のような吸収セル温調機構が不要になることに加え、高周波の周波数発生器も不要になる。そのため、従来よりも簡易な構成で高精度に周波数を安定化することが可能な周波数安定化光源を提供することができる。
なお、本実施形態において、吸収セル105の圧力は、吸収セル105近傍の温度変化量から算出されるが、これに限られるものではない。例えば、吸収セル内に直接、ガス圧力計などの圧力測定器を設けて、測定される圧力を用いて吸収線の中心周波数の変化量Wを求める構成としてもよい。また、本実施形態では、吸収線の中心周波数の変化量Wは、吸収セル105の温度を検出し、式(1)または式(2)を用いて算出されるが、これに限られるものではない。例えば、吸収セル105の吸収線においては、圧力変動に伴って中心周波数が変動するだけではなく、吸収線の透過率やその検出信号の振幅も変動する。そのため、圧力変動に伴う吸収線の変動特性を用いて吸収線の中心周波数の変化量Wを算出する構成としてもよい。この構成により、温度検出器も不要とすることができるため、より簡易な構成で、高精度に周波数を安定化することが可能な周波数安定化光源を提供することができる。これら透過率や振幅の変動を用いて、吸収線の中心周波数の変化量Wを算出する場合の具体例については後述する。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る光源装置について説明する。ここでは、上記した吸収線の中心周波数の変化量Wを、吸収線の透過率変化量に基づいて算出する場合を例に挙げる。図3は、本実施形態に係る光源装置としての周波数安定化光源200の構成を示す概略図である。なお、本実施形態において第1実施形態と同様の構成については既に使用した符号を用いることによって、それらの詳細な説明を省略する。図3に示すように、周波数安定化光源200において、図1に示すものと異なるのは、温度計測器106を無くした点と、I/Vアンプ112からの出力が演算部110へ入力される点である。周波数安定化光源200の演算部110は、吸収セル105の平均温度Tの代わりに、光検出器107にて検出された信号のDC成分の変化量を算出する。そして、演算部110は、このDC成分の変化量から吸収セル105の圧力を算出する。補正信号制御部111は、第1実施形態同様、演算部110で得られた中心周波数の変化量Wに対応した補正信号Vを生成し、同期検波器108から出力される復調信号に加減算する。
次に、本発明の第2実施形態に係る光源装置について説明する。ここでは、上記した吸収線の中心周波数の変化量Wを、吸収線の透過率変化量に基づいて算出する場合を例に挙げる。図3は、本実施形態に係る光源装置としての周波数安定化光源200の構成を示す概略図である。なお、本実施形態において第1実施形態と同様の構成については既に使用した符号を用いることによって、それらの詳細な説明を省略する。図3に示すように、周波数安定化光源200において、図1に示すものと異なるのは、温度計測器106を無くした点と、I/Vアンプ112からの出力が演算部110へ入力される点である。周波数安定化光源200の演算部110は、吸収セル105の平均温度Tの代わりに、光検出器107にて検出された信号のDC成分の変化量を算出する。そして、演算部110は、このDC成分の変化量から吸収セル105の圧力を算出する。補正信号制御部111は、第1実施形態同様、演算部110で得られた中心周波数の変化量Wに対応した補正信号Vを生成し、同期検波器108から出力される復調信号に加減算する。
次に、周波数安定化光源200の具体的構成例について図4を参照して説明する。図4は、吸収セル105のガス圧力変化に伴う吸収線と光検出器107で検出される信号波形の変化の関係を示すグラフである。図4において、点線で示す波形X2は、圧力が変化する前の吸収線の波形であり、実線で示す波形X1は、圧力が変化した後の吸収線の波形である。なお、吸収線の波形は、実際には図2(a)に示すように圧力変化によって中心周波数がシフトするが、図4では透過率の変化(例えば、ピーク透過率の変化)が分かり易いように、圧力変化の前後の波形については、中心周波数を重ねて表現している。本実施形態においても、第1実施形態と同様、光源101としては、分布帰還型レーザーダイオードを用い、吸収セル105としては、13C2H2ガスが封入されたアセチレンガスセルを使用する。その他の具体的構成についても第1実施形態と同様とする。周波数安定化光源200では、吸収線の中心周波数近傍にて、変調周波数fで周波数変調された光が吸収セル105を透過すると、変調周波数のほぼ2倍の周波数2fで強度変調された信号が、光検出器107で検出される。このとき、吸収セル105のガス圧力が上昇すると、吸収線のピーク透過率は、上昇する。光検出器107で検出される信号は、点線で示す波線X2から実線で示す波形X1のようになる。ここで、吸収セル105の光透過物質として用いられる13C2H2は、ガス圧20Torrでガス圧力に対するピーク透過率は2%/Torrの敏感度を有している。なお、このガス圧力に対する透過率の敏感度は、吸収線およびガスの種類により異なる。図4に示すように、吸収セル105のガス圧力に応じて光検出器107で検出される信号のDC成分(ピーク透過率)は、変化する。なお、DC成分として用いる値は、光検出器107で検出される信号の最下点であってもよく、平均値であってもよい。
本実施形態において、演算部110は、以下の式(4)により、圧力変化に対応した中心周波数の変化量Wを算出する。ここで、透過率変化量は、光検出器107の検出信号のDC成分の変化量である。また、演算部110は、予め取得した光検出器107の検出信号のDC成分に対するガス圧力の敏感度D(検出信号に対するガス圧力の敏感度)と、吸収線の中心周波数に対するガス圧力の敏感度Bとを有している。
W[Hz]=透過率変化量[V]×D[Torr/V]×B[Hz/Torr]
・・・(4)
・・・(4)
補正信号制御部111は、式(3)を使用して、式(4)により算出した圧力変化による中心周波数の変化量Wと、周波数弁別ゲインから、圧力変化による中心周波数の変化量Wに対応した補正信号Vを生成する。
次に、周波数安定化光源200の動作について説明する。吸収セル105においてガスの温度が上昇しガス圧力が0.1Torr上昇すると、吸収線のピーク透過率は、0.2%上昇する。そのため、ガスセル入力光量を1mW、光検出器107とI/Vアンプ112のゲインを10000V/Wとした場合、光検出器107の検出信号のDC成分(ここではピーク透過率である最下点)は、20mV高くなる。したがって、演算部110は、光検出器107の検出信号のDC成分20mVの変化量を検出し、式(4)を用いて圧力変化による中心周波数の変化量Wを算出し、式(3)に基づき、補正信号Vを生成する。補正信号制御部111にて復調信号に補正信号Vを加算または減算することにより、光源101から出射される光の周波数に対する圧力変化の影響を低減することができる。この構成により、光源101の出力光を圧力変化する前の周波数に安定化することができる。またさらに、本実施形態によれば、吸収セル105の温度を測定することなく、圧力を算出できる。そのため、温度計測器106が不要となるので、第1実施形態よりもさらに簡易な構成の周波数安定化光源200を実現できる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る光源装置について説明する。本実施形態では、上記した吸収線の中心周波数の変化量Wを、吸収線の振幅変化量に基づいて算出する場合を例に挙げる。本実施形態に係る光学装置の構成は、第2実施形態の周波数安定化光源200と同様であるため、その詳細な説明を省略する。上述した図4に、光検出器107で検出される信号の振幅の変化を示す。図4において、波形Z0(f)は、吸収線の中心周波数近傍における変調周波数fの波形である。波形Z1(2f)および波形Z2(2f)は、変調周波数のほぼ2倍の周波数2fで強度変調された信号である。波形Z2(2f)は、圧力変化前の波形であり、波形Z1(2f)は、圧力変化後の波形である。図4に示すように、ガス圧力に応じて光検出器107で検出される信号の振幅は、変化するため、本実施形態における演算部110は、以下の式(5)により、圧力変化に対応した中心周波数変化量Wを算出する。ここで、振幅率変化量は、光検出器107の検出信号の振幅変化量である。また、演算部110は、予め取得した光検出器107の検出信号の振幅に対するガス圧力の敏感度Eと、吸収線の中心周波数に対するガス圧力の敏感度Bとを有している。
次に、本発明の第3実施形態に係る光源装置について説明する。本実施形態では、上記した吸収線の中心周波数の変化量Wを、吸収線の振幅変化量に基づいて算出する場合を例に挙げる。本実施形態に係る光学装置の構成は、第2実施形態の周波数安定化光源200と同様であるため、その詳細な説明を省略する。上述した図4に、光検出器107で検出される信号の振幅の変化を示す。図4において、波形Z0(f)は、吸収線の中心周波数近傍における変調周波数fの波形である。波形Z1(2f)および波形Z2(2f)は、変調周波数のほぼ2倍の周波数2fで強度変調された信号である。波形Z2(2f)は、圧力変化前の波形であり、波形Z1(2f)は、圧力変化後の波形である。図4に示すように、ガス圧力に応じて光検出器107で検出される信号の振幅は、変化するため、本実施形態における演算部110は、以下の式(5)により、圧力変化に対応した中心周波数変化量Wを算出する。ここで、振幅率変化量は、光検出器107の検出信号の振幅変化量である。また、演算部110は、予め取得した光検出器107の検出信号の振幅に対するガス圧力の敏感度Eと、吸収線の中心周波数に対するガス圧力の敏感度Bとを有している。
W[Hz]=振幅変化量[V]×E[Torr/V]×B[Hz/Torr]
・・・(5)
・・・(5)
補正信号制御部111は、式(3)を用いて、式(5)により算出した圧力変化による中心周波数の変化量Wと、周波数弁別ゲインから、圧力変化による中心周波数の変化量Wに対応した補正信号Vを生成する。
次に、本実施形態に係る周波数安定化光源200の動作について説明する。吸収セル105においてガスの温度が上昇し、ガス圧力が0.1Torr上昇すると、吸収線のピーク透過率は、0.2%上昇する。そのため、ガスセル入力光量を1mW、光検出器107とI/Vアンプ112とのゲインを10000V/Wとした場合、検出信号の振幅は、20mV低下する。そこで、演算部110は、検出信号振幅20mVの変化量を検出し、式(5)を用いて圧力変化による吸収線の中心周波数の変化量Wを算出し、式(3)に基づき補正信号Vを生成する。補正信号制御部111が、復調信号に補正信号Vを加算または減算することにより、圧力変化の影響を低減することができる。この構成により、光源101の出力光の周波数を圧力変化する前の周波数に安定化することができる。また、さらに、本実施形態によれば、第2実施形態と同様に吸収セル105の温度を測定することなく、圧力を算出できる。そのため、本実施形態においても、図1に示す温度計測器106が不要となるので、第1実施形態よりもさらに簡易な構成の周波数安定化光源200を実現できる。
なお、本発明において、吸収セル105は、光透過物質として13C2H2を封入したガスセルとしたが、これに限られるものではなく、H13CNなど他のガスを封入するガスセルであってもよい。吸収セル105に封入されるガスは、必要な吸収線の性能特性に合わせて最適なガスが選択される。また、吸収セル105に封入される光透過物質としては、ガスに限られず、液体であってもよい。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
100 光源装置
101 光源
105 吸収セル
108 同期検波器
110 演算部
111 補正信号制御部
101 光源
105 吸収セル
108 同期検波器
110 演算部
111 補正信号制御部
Claims (6)
- 光源から出射される光の周波数を吸収セルの吸収線の周波数を基準として安定化させる光源装置であって、
前記光源からの光が前記吸収セルを透過することによって強度変調された光を復調する復調信号を、同期検波により生成する同期検波器と、
前記吸収セルにおける圧力の変化に対応した吸収線の中心周波数の変化量を求め、該変化量に対応した補正信号を算出する演算部と、
前記復調信号を前記補正信号で補正し、補正された復調信号によって前記光源から出射される光の周波数を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする光源装置。 - 前記演算部は、前記吸収セルの圧力と、予め取得した前記吸収セルの吸収線の中心周波数の圧力に対する敏感度とにより、前記吸収セルにおける圧力の変化に対応した吸収線の中心周波数の変化量を求めることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
- 前記吸収セルの圧力は、前記吸収セルに設けられた温度計測器から計測される温度と、予め取得した吸収セルの温度に対する圧力の敏感度とにより算出されることを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
- 前記吸収セルの圧力は、前記吸収セルを透過して強度変調された光を光検出器に通して得られる検出信号から取得した透過率変化量と、予め取得した前記検出信号に対する圧力の敏感度とにより算出されることを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
- 前記吸収セルの圧力は、前記吸収セルを透過して強度変調された光を光検出器に通して得られる検出信号から取得した振幅変化量と、予め取得した前記検出信号に対する圧力の敏感度とにより算出されることを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
- 光源から出射される光の周波数を、吸収セルの吸収線の周波数を基準として安定化させる光源装置の周波数安定化方法であって、
前記光源からの光が前記吸収セルを透過することによって強度変調された光を復調する復調信号を、同期検波により生成し、
前記吸収セルにおける圧力の変化に対応した吸収線の中心周波数の変化量を求め、該変化量に対応した補正信号を算出し、
前記調信号を前記補正信号により補正し、補正された復調信号によって前記光源から出射される光の周波数を制御することを特徴とする周波数安定化方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014071561A JP2015195248A (ja) | 2014-03-31 | 2014-03-31 | 光源装置および周波数安定化方法 |
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP (1) | JP2015195248A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022176896A1 (ja) * | 2021-02-19 | 2022-08-25 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 | 波長制御装置、波長制御方法、差分吸収ライダー装置 |
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2014
- 2014-03-31 JP JP2014071561A patent/JP2015195248A/ja active Pending
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WO2022176896A1 (ja) * | 2021-02-19 | 2022-08-25 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 | 波長制御装置、波長制御方法、差分吸収ライダー装置 |
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