JP2015192124A - 太陽電池モジュール用の封止材シート - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の封止材シートの製造に用いる封止材組成物(以下、単に「封止材組成物」とも言う)は、それぞれMFRが異なるポリエチレン系樹脂からなる3種類の組成物材料を含んでなる。3種類の組成物材料とは、耐熱組成物材料、密着組成物材料、及び、相溶化組成物材料である。
封止材組成物を構成するポリエチレン系樹脂のうち相対的にMFRが最も低い樹脂からなる耐熱組成物材料は、本発明の封止材シートにおいては、主に、その耐熱性向上に寄与する耐熱樹脂となる。
封止材組成物を構成するポリエチレン系樹脂のうち相対的にMFRが最も高い樹脂からなる密着組成物材料は、本発明の封止材シートにおいては、主に、その密着性向上に寄与する密着樹脂となる。又、封止材の溶融形成時における製膜性を良好に保つことにも寄与する。
封止材組成物を構成するポリエチレン系樹脂のうち中間的なMFR範囲にある相溶化組成物材料は、本発明の封止材シートにおいては、主に、封止材組成物を構成する複数種のポリエチレン系樹脂の相溶性を高めることにより、封止材シートの完成品段階における密着耐久性向上に寄与する相溶化樹脂となる。
(シラン変性ポリエチレン系樹脂)
耐熱組成物材料及び密着組成物材料、及び相溶化組成物材料の各封止材組成物材料には、いずれについても、適宜、シラン変性ポリエチレン系樹脂を含有させることができる。但し、封止材シートと他部材との密着性を効率よく高めるためには、密着組成物材料への重点的な同樹脂の添加がとりわけ好ましい。シラン変性ポリエチレン系樹脂は、主鎖となる直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)等に、エチレン性不飽和シラン化合物を側鎖としてグラフト重合してなるものである。このようなグラフト共重合体は、接着力に寄与するシラノール基の自由度が高くなる。これにより、封止材シートの他部材への密着性を向上させることができる。
封止材組成物には、上記組成物材料の他、適宜、架橋剤を含有させることができる。架橋剤は公知のものが使用でき特に限定されず、例えば公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類;ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、t‐ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐パーオキシ)ヘキシン‐3等のジアルキルパーオキサイド類;ビス‐3,5,5‐トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、o‐メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4‐ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシピバレート、t‐ブチルパーオキシオクトエート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、ジ‐t‐ブチルパーオキシフタレート、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン‐3、t‐ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート等のパーオキシエステル類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等の有機過酸化物、又は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジクミルパーオキサイド、といったシラノール縮合触媒等を挙げることができる。
封止材組成物には、架橋助剤として、炭素−炭素二重結合及び/又はエポキシ基を有する多官能モノマーを添加することができる。架橋助剤としてより好ましくは、多官能モノマーの官能基がアリル基、(メタ)アクリレート基、ビニル基であるものが用いられる。このような架橋助剤の添加により、低密度ポリエチレンの結晶性を低下させ、低温柔軟性に優れる架橋済みの封止材シートを得ることができる。
封止材組成物には、適宜、密着性向上剤を添加することにより、更に、他基材との密着耐久性を高めることができる。密着性向上剤としては、公知のシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤は特に限定されないが、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤等を好ましく用いることができる。尚、これらは単独で又は2種以上を混合して使用することもできる。
封止材組成物に、ラジカル重合開始剤となる上記の架橋助剤と、それをクエンチするラジカル吸収剤とを併用することにより、架橋の程度を更に微細に調整することができる。このようなラジカル吸収剤としては、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤や、ヒンダードアミン系の耐候安定化等が例示できる。架橋温度付近でのラジカル吸収能力が高い、ヒンダードフェノール系のラジカル吸収剤が好ましい。ラジカル吸収剤の使用量は、封止材組成物の全樹脂成分に対して0.01質量%以上3質量%以下含まれることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下の範囲である。
封止材組成物には、更にその他の成分を含有させることができる。例えば、本発明の封止材組成物の組合せセットを用いて製造された封止材シートに耐候性を付与するための耐候性マスターバッチ、各種フィラー、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の成分が例示される。これらの含有量は、その粒子形状、密度等により異なるものではあるが、それぞれの封止材組成物の全樹脂成分に対して0.001質量%以上5質量%以下の範囲内であることが好ましい。これらの添加剤を含むことにより、封止材シートに対して、長期に亘って安定した機械強度や、黄変やひび割れ等の防止効果等を付与することができる。
本発明の封止材シートの製造方法は、上記の封止材組成物を溶融形成してシート化した後に、電離放射線の照射による架橋処理を行い、架橋度の進行程度を適切に制御して、封止材シートに含有される各樹脂のMFR値を上記の所定範囲内に最適化する方法である。
封止材組成物の溶融成形は、通常の熱可塑性樹脂において通常用いられる成形法、即ち、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形、回転成形等の各種成形法により行われる。多層シートとしての成形方法としては、一例として、2種以上の溶融混練押出機による共押出により成形する方法が挙げられる。
上記のシート化工程後の未架橋の封止材シートに対して、電離放射線による架橋処理を施す架橋工程を、シート化工程の終了後、且つ、封止材シートを他の部材と一体化する太陽電池モジュール一体化工程の開始前に行う。この架橋処理によってゲル分率が2%以上80%以下となる封止材シートとする。
本発明の製造方法によって得ることができる封止材シート(以下、単に「封止材シート」とも言う)は、上記の3種類の封止材組成物材料、即ち、耐熱組成物材料、密着組成物材料、及び、相溶化組成物材料を含んでなる封止材組成物を溶融形成してシート化した後、更に当該未架橋の樹脂シートに架橋処理を施すことによって得ることができる。
次に、本発明の太陽電池モジュールの好ましい一実施形態について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態である太陽電池モジュール1について、その層構成の一例を示す断面図である。太陽電池モジュール1は、透明ガラス基板2、前面封止材層3、太陽電池素子4、背面封止材層5、及び裏面保護シート6が順に積層されている。本発明の太陽電池モジュール1は、少なくとも前面封止材層3に本発明の封止材シートを用いるものである。背面封止材層5については、前面封止材層3と同じく本発明の封止材シートを用いてもよいが、必須ではない。例えば、光反射性に優れる白色の封止材シートを用いる等、適宜最適な封止材シートを選択することができる。
以下において説明する各組成物材料を下記表1の割合(質量部)で混合し、各実施例及び比較例の封止材シートを製造するための封止材組成物とした。各封止材組成物をφ30mm押出し機、200mm幅のTダイを有するフィルム成形機を用いて、押出し温度210℃、引き取り速度1.1m/分でシート化して、実施例及び比較例の封止材シートとするための未架橋の樹脂シートとした。各樹脂シートの厚さは、いずれも400μmとした。
耐熱組成物材料1(表1にて「耐熱1」と表記、以下同様):密度0.880g/cm3、融点60℃であり、MFRが3.5g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M−LLDPE)。
耐熱組成物材料2(表1にて「耐熱2」と表記、以下同様):0.885g/cm3、融点60℃であり、MFRが3.6g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M−LLDPE)。
密着組成物材料1(「密着1」):密度0.880g/cm3、MFRが30g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.15質量部とを混合し、200℃で溶融、混練して得たシラン変性ポリエチレン系樹脂。密度0.880g/cm3、MFR13.0g/10分。融点60℃。
密着組成物材料2(「密着2」):密度0.880g/cm3、MFRが35.0g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.15質量部とを混合し、200℃で溶融、混練して得たシラン変性ポリエチレン系樹脂。密度0.881g/cm3、MFR24.0g/10分。融点60℃。
相溶化組成物材料1(「相溶化1」):密度0.880g/cm3、融点60℃であり、MFRが8.0g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M−LLDPE)。
相溶化組成物材料2(「相溶化2」):密度0.880g/cm3、融点60℃であり、MFRが12.0g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M−LLDPE)。
UV吸収剤:ケミプロ化成株式会社製、商品名KEMISORB12。実施例、比較例の各封止材組成物に、0.3質量部添加。
耐候安定剤:BASF株式会社製、商品名Tinuvin622SF。実施例、比較例の各封止材組成物に、いずれも0.2質量部添加。
酸化防止剤:チバ・ジャパン株式会社製、商品名Irganox1076。実施例、比較例の各封止材組成物に、いずれも0.05質量部添加。
MFR比1:相溶化樹脂組成物のうち最もMFRの低い樹脂のMFR/耐熱樹脂組成物のMFR(但し、相溶化樹脂組成物を含有しない比較例1〜3については、密着樹脂組成物のMFRと耐熱樹脂組成物とのMFR比をこの値とした。)
MFR比2:密着樹脂組成物のMFR/相溶化樹脂組成物のうち最もMFRの高い樹脂のMFR(但し、相溶化樹脂組成物を含有しない比較例1〜3については、密着樹脂組成物のMFRと耐熱樹脂組成物とのMFR比をこの値とした。)
MFR比3:相溶化樹脂組成物を2種含む実施例1、3について、相溶化樹脂組成物2のMFR/相溶化樹脂組成物1のMFR(いずれも、相溶化樹脂組成物2のMFR>相溶化樹脂組成物1のMFR、とする)
ガラス基板上(白板フロート半強化ガラス JPT3.2 75mm×50mm×3.2mm)に、15mm幅にカットした実施例及び比較例の各封止材シートを積層し、150℃、18分で、真空加熱ラミネータで処理を行い、それぞれの実施例及び比較例について耐熱性評価用試料を得た。これらの耐熱性評価用試料について、下記の試験条件において、それぞれ、耐熱性を測定して評価した。結果を表2に示す。
7.5×5.0cmにカットした実施例、比較例の封止材シートを、ガラス基板(白板フロート半強化ガラス JPT3.2 150mm×150mm×3.2mm)上に2枚重ね置き、その上からガラス基板(白板フロート半強化ガラス JPT3.2 75mm×50mm×3.2mm)を重ね置き、下記の熱ラミネート条件(a)〜(d)により、真空加熱ラミネータ処理を行い、それぞれの実施例、比較例について耐熱性評価用サンプルを得た。これらの耐熱性評価用サンプルについて、下記の試験条件における耐熱クリープ試験を行い、耐熱性を評価した。
測定は、上記の各耐熱性評価用サンプルを垂直に置き、120℃で12時間放置し、放置後のガラス基板(白板フロート半強化ガラス JPT3.2 75mm×50mm×3.2mm)の移動距離を計測することにより行い、測定結果を、以下の評価基準A〜Dにより評価した。
(熱ラミネート条件) (a)真空引き:4.0分
(b)加圧(0kPa〜100kPa):1.5分
(c)圧力保持(100kPa):7.0分
(d)温度150℃
(評価基準) A:2.6mm未満
B:2.6mm以上3.6mm未満
C:3.6mm以上4.6mm未満
D:4.6mm以上
先ず、実施例、比較例の各封止材シートをガラス基板(白板フロート半強化ガラス JPT3.2 75mm×50mm×3.2mm)に密着させて、150℃、12分で真空加熱ラミネータ処理を行い密着性評価用試料を作成した。そして、この密着性評価用試料において、ガラス基板上に密着している封止材シートを15mm幅にカットし、剥離試験機(テンシロン万能試験機 RTF−1150−H)にて垂直剥離(50mm/min)試験を行い、ガラス密着強度を測定した。その測定結果を「初期密着強度」として表2に記す。
(評価基準) A:35.0N/15mm以上
B:30.0N/15mm以上35.0N/15mm未満
C:25.0N/15mm以上30.0N/15mm未満
D:25.0N/15mm未満
次に、上記の各密着性評価用試料について、下記ダンプヒート(D.H.)試験後のガラス密着強度維持率を測定した。D.H.試験は、JIS C8917に準拠し、試験槽内温度85℃、湿度85%の条件下で評価用試料の耐久性試験を500時間行った。試験後の評価用試料について、上記と同一の試験方法でガラス密着強度を再測定し、初期ガラス密着強度に対する密着強度の維持率(%)を算出した。結果を「密着強度維持率」として表2に記す。
(評価基準) A:80%以上
B:76%以上80%未満
C:71%以上76%未満
D:71%未満
2 透明ガラス基板
3 前面封止材層
4 太陽電池素子
5 背面封止材層
6 裏面保護シート
Claims (6)
- 太陽電池モジュール用の封止材シートの製造方法であって、
密度0.880g/cm3以上0.940g/cm3以下で、JIS K7210に準拠して測定した190℃、荷重2.16kgにおけるMFRが2.0g/10分以上4.0g/10分以下であるポリエチレン系樹脂からなる耐熱組成物材料と、密度0.870g/cm3以上0.910g/cm3以下で、前記MFRが11.0g/10分以上25.0g/10分以下であるポリエチレン系樹脂からなる密着組成物材料と、密度0.870g/cm3を超えて0.940g/cm3未満である1種又はMFRの異なる2種以上のポリエチレン系樹脂からなる相溶化組成物材料と、を含んでなる封止材組成物を溶融成形して、未架橋の封止材シートを得るシート化工程と、
前記未架橋の封止材シートを、電離放射線の照射によって架橋処理して架橋済みの封止材シートを得る架橋工程と、を備え、
前記相溶化組成物材料のうち前記MFRが最も低い組成物材料の前記MFRが、前記耐熱組成物材料の前記MFRよりも高く、且つ、該MFRの3倍以下であって、
前記密着組成物材料の前記MFRが、前記相溶化組成物材料のうち前記MFRが最も高い組成物材料の前記MFRよりも高く、且つ、該MFRの3倍以下である封止材シートの製造方法。 - 前記相溶化組成物材料が2種以上のポリエチレン系樹脂からなり、前記相溶化組成物材料を構成する一のポリエチレン系樹脂と、該一のポリエチレン系樹脂に前記MFRが最も近い前記相溶化組成物材料を構成する他のポリエチレン系樹脂との間における前記MFRの比が、全ての前記相溶化組成物材料を構成するポリエチレン系樹脂について2以下となる請求項1に記載の封止材シートの製造方法。
- 前記相溶化組成物材料を構成するポリエチレン系樹脂のうち前記MFRが最も低いポリエチレン系樹脂の前記MFRが、前記耐熱組成物材料のMFRの2.5倍以下であって、
前記密着組成物材料のMFRが、前記相溶化組成物材料を構成するポリエチレン系樹脂のうち前記MFRが最も高いポリエチレン系樹脂の前記MFRよりも高く、且つ、該MFRの2.5倍以下である、請求項1又は2に記載の封止材シートの製造方法。 - 前記相溶化組成物材料は、MFRの異なる少なくとも2種以上のポリエチレン系樹脂からなる請求項1から3のいずれかに記載の封止材シートの製造方法。
- 前記封止材組成物に含まれる組成物材料が、いずれもメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンをベース樹脂とするものである請求項1から4のいずれかに記載の封止材シートの製造方法。
- 前記封止材組成物に含まれる組成物材料のうち、少なくとも前記密着組成物材料は、α−オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物とをコモノマーとして共重合してなるシラン共重合体を含有する樹脂である請求項1から5のいずれかに記載の封止材シートの製造方法。
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