JP2015191777A - 蓄電システム及び電池パックの運転方法 - Google Patents

蓄電システム及び電池パックの運転方法 Download PDF

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圭佑 小笠原
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圭佑 小笠原
博人 西口
Hiroto Nishiguchi
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Abstract

【課題】従来の蓄電システムにあっては、あらかじめ設定した上限電流値だけで温度上昇を抑えようとしているが、実際には、同じ電流であっても周囲温度の高低によって放熱量が変化するため、蓄電デバイスの温度を制御することは難しいという問題があった。【解決手段】蓄電デバイスの周囲温度と温度センサ設置箇所の許容上限温度との温度差と、その箇所の放熱抵抗から許容発熱量を計算し、さらに許容発熱量と発熱箇所の電気抵抗から許容充放電電流を計算し、以後の充放電で、所定の時間区間の電流センサの出力値から計算した充放電実効電流が、許容充放電電流を超えないように充放電電流を制御する。【選択図】図1

Description

この発明は、蓄電システムに関し、特定的には、リチウムイオン電池など充電可能な蓄電デバイスを搭載したシステムの温度制御および充放電制御に関するものである。
リチウムイオン電池に代表される充放電可能な二次電池を搭載した蓄電デバイスは、その大容量化・高出力化にともない従来の携帯電話やノート型PCのような小型の携帯機器のほかに、電気自動車(EV)やハイブリッド車、鉄道、航空機の補助電源など大形システムへの適用が拡大している。蓄電デバイスは、内部抵抗による発熱で電池温度が上昇する。特に高出力タイプの電池では、大電流での充放電が頻繁に行われるため、蓄電デバイスの温度が上限を超えないように、充放電電流を制御する必要がある。
例えば、リチウムイオン電池は許容温度が上昇すると、劣化の進行速度が速くなり、機器寿命を縮めるなどの原因となる。
そこで、蓄電デバイスの温度の上昇を抑える方法として、あらかじめ蓄電デバイス(キャパシタ)が上限温度に達する上限実効電流をあらかじめ記憶しておき、充放電の実効電流が上限に達した場合に、充放電を休止したり、ファンを動作させたりする方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
特開2012−170205号公報
特許文献1のような蓄電システムにあっては、温度センサを使用せずあらかじめ設定した上限実効電流値だけで温度上昇を抑えようとしているが、実際には、同じ実効電流であっても周囲温度の高低によって放熱量が変化するため、蓄電デバイスの温度を制御することは難しいという問題があった。
また、充放電が一定の周期(周波数)で繰り返されるような充放電パターンでは、実効電流は一義的に決定できるが、不規則な充放電パターンでは、どの時間区間の幅で定義するかで実効電流の値が異なる。そのため、実効電流を求める時間区間の幅を適切に定義したうえで制御に用いる必要があり、実効電流を一義的に定義することができず、蓄電デバイスの温度を精密に制御できないという問題があった。
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、蓄電デバイスの温度を精密に制御できるシステムを提供することを目的としている。
この発明に係る蓄電池のシステムは、蓄電デバイスの温度管理が必要な所定の箇所の許容上限温度Tmaxとその放熱に係る周囲温度Tatmの温度差ΔTmaxと、所定箇所の放熱の熱抵抗RHから現在の許容発熱量Hmaxを計算し、さらに、許容発熱量Hmaxと当該所定箇所の電気抵抗REから許容充放電電流Imaxを計算し、蓄電デバイスの充放電において、所定の時間区間の電流値から計算した充放電実効電流Irmsが、許容充放電電流Imaxを超えないように、充放電電流を制御することを特徴とするとするものである。
この発明に係る蓄電池のシステムにおいては、上述のように構成したので、電デバイスの温度を精密に制御することが可能となる。
この発明の実施の形態に係る蓄電システムを示す構成図である。 この発明の実施の形態に係る蓄電システム運転方法の上限実効電流を計算するためのフロー図である。 この発明の実施の形態に係る電システム運転方法の実効電流の平均区間の計算と、充放電電流パターンの実効電流の採用可否を判断するためのフロー図である。
実施の形態1.
はじめに、この発明の蓄電システムの構成について、図面を参照しながら説明する。なお、図は模式的なものであり、機能や構造を概念的に説明するものである。また、図は示された構成要素の正確な大きさなどを反映するものではない。特記する場合を除いて、電源システムの基本構成は全ての実施の形態において共通である。また、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通する。
図1は、本形態に係る蓄電システムの構成を模式的に示した構成図である。図1を参照しつつ、本形態に係る蓄電システムを以下説明する。
図1において、電池パック1は、単電池を積層した二次電池モジュール2、電池の充放電電流を監視するための電流センサ3、電池パック周辺の温度を監視するための周囲温度センサ4、許容される充放電電流を計算する許容電流演算手段5、現在の実効電流を計算する実効電流演算手段6で構成されている。電池パック1の外部には、電池パック1を充放電する機器7とその充放電電流を制御する充放電電流制御手段8があり、それぞれ電池パック1と接続されている。
二次電池モジュール2を構成する単電池としては、リチウムイオン電池やニッケル水素電池や鉛蓄電池などの二次電池、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタのような電気化学キャパシタなど、充電および放電を繰り返し実行することができる蓄電デバイスが適用できる。
電流センサ3には、磁電変換素子であるホール素子を利用したホール式電流センサ、オーム損から電流値を算出するシャント式電流センサなど直流・交流両方測定可能な電流センサが適用できる。
周囲温度センサ4には、熱電対やサーミスタ、ICタイプの温度センサなどが適用可能である。
許容電流演算手段5および実効電流演算手段6は、一般的には電池状態を一括管理するバッテリ管理ユニットBMU(図示せず)に実装することが可能である。
なお、本形態では、許容電流演算手段5および実効電流演算手段6等を電池パック1に内蔵した形態を示したが、電池パック1の外部にこれらを設置することももちろん可能である。
充放電機器7は、電池パック1に充電する機器と、電池パックの電力を消費する放電機器で構成される。具体的な機器は用途によって異なるが、例えば自動車に搭載する場合は、充電機器としては、車載充電器、急速充電器、発電機など、放電機器としては、駆動モーター、車内電装機器、電子制御機器などが代表例である。
なお、充放電機器7は、バッテリ管理ユニットBMUの上位の電子制御ユニット(ECU)に内蔵されるが、設置構成には制約はなく、任意に設置可能である。
図2は本発明の実施の形態1による蓄電システムのうち、許容電流演算手段5の動作を説明するためのフロー図である。許容電流演算手段5では、充放電電流が流れることにより温度が上昇する可能性のある部分(温度管理部9を配置した部分)のうち、上限温度を管理する必要がある部分の温度が、充放電により上限を超えないようにために上限を計算する。以下、その手順について説明する。
蓄電デバイスの温度管理部9としては、代表例には二次電池モジュール2で温度が最も高くなる箇所があげられる。ただし、温度管理が必要な箇所は他にも考えられ、例えば図示していないが、電流経路に使われる電流を遮断する半導体リレーやヒューズなど、充放電電流値の大小により温度変化し、かつ機器として温度に上限があるものを温度管理部9として扱ってもよい。
まず、温度管理部9の温度が上昇し放熱して熱が拡散する周囲の温度(Tatm)を測定し(S001工程)、予め設定(S002工程)した温度管理部9の許容上限温度(Tmax)から測定(S001)した周囲温度(Tatm)を差し引いて許容上限温度差(ΔTmax)を計算する(S003工程)。
ΔTmax = Tmax - Tatm (式1)
周囲温度(Tatm)を測定するために設置された周囲温度センサ4の位置は、電池パック1の内外に限定はされないが、温度管理部9の放熱に直接関係する位置の温度を測定することが好ましい。
次に、温度管理部9の位置での二次電池モジュール2と周囲温度センサ4間の放熱の熱抵抗の値(RH)で前述の許容上限温度差(ΔTmax)を除して許容上限発熱(Hmax)を計算する(S005工程)。なお、熱抵抗の値(RH)は予め計算される(S004工程)。
Hmax = RHΔTmax (式2)
温度管理部9の位置での二次電池モジュール2の充放電による発熱(H)は、温度管理部9の位置での充放電経路の電気抵抗(RE)と充放電電流値(I)によって次の式(式3)によって決まる。充放電により発生する熱量が許容上限発熱以下であれば、周囲温度(Tatm)や熱抵抗(RH)に変化がなければ、温度管理部9の温度が許容上限温度(Tmax)を超えることはない。逆にいえば、許容上限温度(Tmax)を超えないように充放電を制御する。なお、電気抵抗(RE)は予め計算される(S006工程)。
H = I2RE (式3)
温度管理部9がリチウムイオン電池やニッケル水素電池などの電気化学反応による二次電池の場合には、充放電により、式3のジュール熱Hだけでなく、化学反応のエントロピー変化にともなう反応熱もあるため、式3で計算される熱量からはずれる場合がある。例えば、ニッケル水素電池は充電反応が発熱、放電反応が吸熱、リチウムイオン電池は充電反応が吸熱、放電反応が発熱である。そのため、充放電パターンが、充電や放電のどちらかに偏っている場合には、反応熱による補正が必要となる。ただし、充電と放電がほぼ同じ割合の充放電、例えば、ハイブリッド自動車の回生アシスト充放電などでは、充放電による発熱吸熱は相殺されるため、式3のジュール熱Hのみを考えることで発熱を計算することができる。
式3に許容上限発熱(Hmax)と温度管理部9の電気抵抗(RE)を代入することで、温度管理部9の許容上限電流(Imax)が計算される。
Imax = Hmax / RE (式4)
充放電電流が許容上限発熱以下であれば、周囲温度(Tatm)や熱抵抗(RH)に変化がなければ、温度管理部9の温度が許容上限温度(Tmax)を超えることはない。
温度管理部9の電気抵抗REが温度による変化が小さい場合は、予め求めておいた値をそのまま利用することができるが、温度管理部9がリチウムイオン電池やニッケル水素電池などの電気化学反応による二次電池の場合、その部分の温度により電気抵抗の値は大きく変化するため、温度に応じた補正することが好ましい。具体的には、上限温度での抵抗値を採用したり、現在の温度から上限温度の間の抵抗の平均値を用いたりすることが考えられる。
式4で計算した許容上限電流Imaxは、この直流電流を流した場合に許容上限発熱を発生することを意味するが、実際の充放電、特に回生アシストのための充放電では、一定電流で充放電することはほとんどない。交流など電流値が時間で変化する場合には、電流値として実効電流を用いる(S007工程)。
実効電流(Irms)は、以下の式5で定義される。
Irms = (√∫I2 dt)/t (式5)
なお、I は瞬時電流値、t は時間である。
さらに、実際の制御には、アナログ値ではなく離散化されたデジタル値を用いるため、式5の変わりに式6が用いられる。
Irms = (√ΣIN 2)/N (式6)
なお、IN はサンプリングN番目での電流値、N はサンプリングデータ総数である。
ここで、例えば特許文献1では、一定周期の正弦波や三角波や矩形波でのキャパシタの発熱は、この実効電流とキャパシタの内部抵抗で決定されることが記載されている。
一般的な交流の場合、電流値は同じ周期、振幅の正弦波のため、式5の積分区間、式6の平均区間を変えても実効値に変化はない。そのため、交流電流の実効値は積分区間(平均区間)によらず一義的に定義される。
ところが、蓄電システムの充放電は充放電の振幅、周期とも一定ではなく、ある時刻の実効電流を一義的に定義するためには、実効電流の積分区間、平均区間を決める必要がある。そのためには、温度管理部9の温度変化と最も相関のある実効電流となる平均区間を設定することが必要となる。
そこで、充放電電流の振幅、周期とも一定ではない充放電において、種々の平均区間で実効電流を求め、電池パックの温度との相関を鋭意検討した結果、正弦波等の周期的な交流と同様に実効電流と電池の発熱、温度に高い相関関係があることを確認した。ただし、温度と相関の高い実効電流は、温度測定部分の状態により最適な電流平均区間が異なることが明らかとなった。
まず、温度管理部9の温度と相関の高い実効電流値の求め方について説明する。
温度管理部9の温度上昇は、過去の電流値よりも、直前の電流値の影響の方がより大きい。過去の発熱は、温度管理部9の熱容量や放熱により時間が経過するほど緩和される。そのため、実効電流も、運転開始からすべての電流値を平均(rms)するのではなく、直近の所定の時間区間での電流値の移動平均から計算するのが適当である。
移動平均の区間は、温度管理部9の充放電電流に対する温度変化の敏感度で決定される。電流値が大きくなると敏感に温度上昇し、電流値が小さくなると温度が低下する、つまり直近の電流値に敏感な場合には、移動平均の区間幅は小さく設定すべきである。反対に、電流値が大きくなったり小さくなったりしても、直ちには温度が追随しない、つまり直近の温度上昇に鈍感で過去の温度履歴に影響される場合には、移動平均の区間幅を大きく取る必要がある。
温度管理部9の発熱に対する温度の敏感さは、温度管理部9の熱容量(単位J/K)と放熱抵抗(K/W)の積で計算される時定数(秒)で表現される。温度管理部9の熱容量が大きいかあるいは放熱抵抗が大きい(放熱が悪い)場合、時定数は大きくなり温度変化に時間がかかることがわかる。反対に、熱容量が小さいか、放熱抵抗が小さい(放熱がよい)場合は時定数が小さくなり、温度変化が速いことがわかる。
検討の結果、この温度管理部9の放熱の時定数に近い時間間隔を平均区間として計算した実効電流が、温度管理部9の発熱や温度変化の挙動に対し相関性が高いことがわかった。
図3は本発明の実施の形態1による蓄電システムのうち、充放電電流制御手段5の動作を示したフロー図である。上記説明のとおり、まず温度管理部9の有効熱容量と放熱抵抗(RH)を掛け合わせて時定数を求める(S013工程)。有効熱容量や放熱抵抗(RH)は、実験や解析であらかじめ求めることができる(S011工程、S004工程)。ただし、実際には温度管理部9が明確に他の部分と分けることができなかったり、放熱経路が複数あったりして数値化が難しい場合が多い。その場合は温度管理部9を実際に発熱させたり放熱させたりしてそのときの温度緩和から時定数を求め、実験や解析で求めた熱容量や熱抵抗が妥当かを検証するのがよい。
実効電流の平均区間としては、この時定数をそのまま用いてもよいが、定数倍した値を用いるのがよい。検討の結果、実効電流平均区間としては、時定数の1〜5倍の時間を実効電流の平均区間するのが好ましく、時定数の2〜3倍の時間を実効電流の平均区間とするのがさらに好ましいことがわかった。
続いて、今後の想定される充放電パターンにより、温度管理部9の温度が許容上限温度を超えるか否かを判定する方法について説明する。
まず、今後想定されている充放電パターンを設定し(S021工程)、この電流パターンに対し、上記平均区間で実効電流に換算した充放電パターンを計算する(S022工程)。
このとき、図2で求めた許容上限実効電流(S007工程)を超える実効電流がないかを確認する(S023工程)。ない場合は充放電電流が機器の充放電電流を超えていないを確認し(S024工程)、問題なければ図1の充放電機器7に対し、充放電電流制御手段8から充放電(電流値、時間)を指示する(S026工程)。充放電パターンに問題がある場合は、許容上限実効電流や機器許容電流を越えないように充放電パターンを再設定(S021工程へ)したのち、充放電指示を出す(S026工程)。
充放電指示後の実際の充放電の実効電流は、電流センサ3で検知した電流値を実効電流演算手段6に送り、同じ平均区間で実効電流を演算して、許容上限実効電流を超えないかを充放電電流制御手段8が確認する。
周囲温度が変化したり、セル温度が上昇し内部抵抗が変化したりした場合には、これまでのプロセスを再度実行し、充放電パターンを更新するのがよい。更新周期については、温度管理部9の温度と許容上限温度との温度差の余裕度や制御機器の演算の余裕度に応じて任意に設定可能である。なお、プロセスの再実行は充放電電流制御手段8が制御するが、充放電電流制御手段8とは別の制御手段を設けて一連のプロセスを統括してもよい。
以上のように、あらかじめ許容上限実効電流を算出してから、充放電パターンを最適化することで、あらかじめ予期せずに充放電した場合に発生する可能性のある充放電したいときに温度制限で充放電できないといった事象を避けることができるというメリットが得られる。
上述した本実施の形態を要約すると、蓄電システムは、放電充電が可能な蓄電デバイス2と、蓄電デバイス2に流れる電流を検知する電流センサ3と、蓄電デバイスの温度を検知する温度センサ4を有する電池パック1と、電池パック1に充電又は放電をさせる充放電機器6と、充放電を制御する制御手段(許容電流演算手段5,実効電流演算手段6,充放電電流制御手段8の何れかに組込まれた機能、又はこれらを組合せた機能)とから構成される蓄電システムにおいて、制御手段(5,6,8)により、蓄電デバイス2の温度管理が必要な所定の箇所9の許容上限温度Tmaxとその放熱に係る周囲温度Tatmとの温度差ΔTmaxと、所定箇所9の放熱の熱抵抗RHとから現在の許容発熱量Hmaxを計算し、さらに、許容発熱量Hmaxと所定箇所9の電気抵抗REとから許容充放電電流Imaxを計算し、蓄電デバイス2の充放電において、所定の時間区間の電流値から計算した充放電実効電流Irmsが、許容充放電電流Imaxを超えないように、充放電電流を制御するものである。そのため、蓄電デバイスの温度を精密に制御できる。
また、電池パック1の運転方法においては、蓄電デバイス2の温度管理が必要な所定の箇所9の許容上限温度Tmaxとその放熱に係る周囲温度Tatmとの温度差ΔTmaxと、所定箇所9の放熱の熱抵抗RHとから現在の許容発熱量Hmaxを計算し、さらに、許容発熱量Hmaxと所定箇所9の電気抵抗REとから許容充放電電流Imaxを計算し、蓄電デバイス2の充放電において、所定の時間区間の電流値から計算した充放電実効電流Irmsが、許容充放電電流Imaxを超えないように、充放電電流を制御するものである。そのため、蓄電デバイスの温度を精密に制御できる。
なお、本実施の形態では、温度管理部9が上限温度を超えないように充放電電流パターンを決定したが、温度管理部9を所定の目標温度に調整するために実効電流を決定することも可能である。
実施の形態2.
実施の形態1では、実効電流を計算するために、時定数の定数倍の時間を平均区間として移動平均により区間の実効電流を計算した。実際に機器に組み込んで実効電流を求める場合には移動平均区間の電流値をメモリに格納してこれを平均し、新たに電流値をサンプリングした場合、一番古い電流値を捨てて再度平均して実効電流を算出するのは、メモリや演算回数の観点からあまり最良ではない。そのため、新しく得られた電流値から逐次移動平均による実効電流が計算される方法が好ましい。
なお、装置構成は上述の実施の形態1と同様である。説明の煩雑さを避けるために以下の説明では本形態特有の構成を中心に説明する。
本実施の形態では、以下の計算方法で逐次的に実効電流計算した。
逐次的に平均値を計算する方法としては以下の式が用いられる。
μn = (1-α)μn-1 + αXn (式7)
μnはn番目の平均値、Xnはn番目のサンプリング値、αは係数である。
実効電流を求める逐次式は以下のようになる。
Irms_n= √{(1-α)Iμn-1+αIn} (式8)
αは忘却係数で、0〜1の値をとる。この値を定数とすると式7は移動平均の式として使える。αが大きい(1に近づく)と直前の電流値だけに重みを持たせた平均値となり、αが小さい(0に近づく)と過去の電流値まで重みを持たせた平均値となる。
現在よりk回前のデータに対する重みづけは、(1-α)αkである。αは1以下の正の数のため、過去にさかのぼるほど指数関数的に重みづけは減衰する。つまり過去のデータほど忘れやすく、現在の平均値に対しその影響は小さくなることを意味している。この挙動は実際の現象と一致している。重みづけを変えない移動平均よりも、忘却係数を定数とした逐次平均の方が、演算が簡単なうえ、実際の現象を表現するためには優れている。
忘却係数αは、実施の形態1で求めた時定数のおおよそ逆数の関係にある。検討の結果、忘却係数αを以下の式で定義すると、実効電流と温度管理部9の発熱および温度と相関性が高かった。
α=b/τΔs (式9)
τは温度管理部9の時定数(s)、Δsは単位時間当たりの電流サンプリング数(s-1)である。 bは定数で、通常はb=1として問題ない。ただし、実際の温度データとの整合性を高めるために、0.1〜10の範囲、より好ましくは0.3〜3の範囲で適宜調整することもできる。
上述した本実施の形態を要約すると、蓄電デバイス2の温度管理が必要な箇所9の放熱の熱抵抗RHと当該箇所9の熱容量により定まる時定数の逆数の定数倍を忘却係数αとして、逐次平均により計算された電流値の二乗平均平方根を実効電流Irmsとして制御することを特徴とする。
つまり、本実施の形態に係る実効電流は、忘却係数を組み込んだ逐次移動平均による実効電流を採用する。したがって、温度変化の時定数の異なる温度監視対象に対し、適切な実効電流値が設定できるため、メモリが少なくて済み、演算回数も過剰にならず、しかも実際の現象を表現するためには優れている。
なお、実施の形態1および2では、一つの温度管理部に対し実効電流を計算し、充放電パターンを決定したが、許容温度や時定数の異なる温度管理部が複数ある場合は、それぞれに対し、許容上限実効電流を算出し、すべての許容上限実効電流を満たすように充放電パターンを決定するのがよい。例えば、時定数30分の長い温度管理部と、他の時定数30秒の短い温度管理部が存在した場合。時定数に対応した平均区間で実効電流を二種類計算し、それぞれの実効値が、各許容値を超えないかを判断する。
つまり、蓄電デバイス2の温度管理をする箇所9を複数個所設定し、前記箇所の全てについて許容充放電電流Imaxを超えないように充放電電流を制限することを特徴とする。そのため、複数の温度管理対象すべてに対し、充放電が制御でき、かつ運転領域を最大限に活用することができる。
また、上述した実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと解されるべきである。この発明の範囲は、上述した実施形態の範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
1 電池パック、2 二次電池モジュール、3 電流センサ、4 周囲温度センサ、5 許容電流演算手段、6 実効電流演算手段、7 充放電機器、8 充放電電流制御手段、9 温度管理部。

Claims (6)

  1. 放電充電が可能な蓄電デバイスと、前記蓄電デバイスに流れる電流を検知する電流センサと、前記蓄電デバイスの温度を検知する温度センサを有する電池パックと、
    前記電池パックに充電又は放電をさせる充放電機器と、
    充放電を制御する制御手段とから構成される蓄電システムにおいて、
    前記制御手段により、
    前記蓄電デバイスの温度管理が必要な所定の箇所の許容上限温度とその放熱に係る周囲温度の温度差と、前記所定箇所の放熱の熱抵抗とから現在の許容発熱量を計算し、
    さらに、前記許容発熱量と前記所定箇所の電気抵抗から許容充放電電流を計算し、
    前記蓄電デバイスの充放電において、所定の時間区間の電流値から計算した充放電実効電流が、前記許容充放電電流を超えないように、充放電電流を制御することを特徴とする蓄電システム。
  2. 蓄電デバイスの温度管理が必要な箇所の放熱の熱抵抗と当該箇所の熱容量により定まる時定数の逆数の定数倍を忘却係数として、逐次平均により計算された電流値の二乗平均平方根を充放電実効電流として制御することを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
  3. 蓄電デバイスの温度管理をする箇所を複数個所設定し、前記箇所の全てについて許容充放電電流を超えないように充放電電流を制限することを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
  4. 放電充電が可能な蓄電デバイスと、前記蓄電デバイスに流れる電流を検知する電流センサと、前記蓄電デバイスの温度を検知する温度センサを有する電池パックにおいて、
    前記蓄電デバイスの温度管理が必要な所定の箇所の許容上限温度とその放熱に係る周囲温度の温度差と、前記所定箇所の放熱の熱抵抗とから現在の許容発熱量を計算し、
    さらに、前記許容発熱量と前記所定箇所の電気抵抗から許容充放電電流を計算し、
    前記蓄電デバイスの充放電において、所定の時間区間の電流値から計算した充放電実効電流が、前記許容充放電電流を超えないように、充放電電流を制御することを特徴とすることを特徴とする電池パックの運転方法。
  5. 蓄電デバイスの温度管理が必要な箇所の放熱の熱抵抗と当該箇所の熱容量により定まる時定数の逆数の定数倍を忘却係数として、逐次平均により計算された電流値の二乗平均平方根を充放電実効電流として制御することを特徴とする請求項4に記載の電池パックの運転方法。
  6. 蓄電デバイスの温度管理をする箇所を複数個所設定し、前記箇所の全てについて許容充放電電流を超えないように充放電電流を制限することを特徴とする請求項4に記載の電池パックの運転方法。
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