以下に、本願発明を具体化した実施形態について、作業車両であるトラクタを例に挙げて図面に基づき説明する。
まず始めに、図1〜図10を参照しながら、トラクタ1の概要について説明する。実施形態におけるトラクタ1の走行機体2は、走行部としての左右一対の前車輪3と同じく左右一対の後車輪4とで支持されている。走行機体2の前部に搭載した動力源としてのコモンレール式のディーゼルエンジン5(以下、単にエンジンという)で後車輪4及び前車輪3を駆動することによって、トラクタ1が前後進走行するように構成されている。エンジン5はボンネット6にて覆われている。走行機体2の上面にはキャビン7が設置され、該キャビン7の内部には、操縦座席8と、かじ取りすることによって前車輪3の操向方向を左右に動かすようにした操縦ハンドル(丸ハンドル)9とが配置されている。キャビン7の左右下部には、オペレータが乗降するステップ10が設けられている。キャビン7の底部より下側には、エンジン5に燃料を供給する燃料タンク11が設けられている。
走行機体2は、前バンパー12及び前車軸ケース13を有するエンジンフレーム14と、エンジンフレーム14の後部に着脱自在に固定した左右の機体フレーム15とにより構成されている。前車軸ケース13の左右両端側から外向きに、前車軸16を回転可能に突出させている。前車軸ケース13の左右両端側に前車軸16を介して前車輪3を取り付けている。機体フレーム15の後部には、エンジン5からの回転動力を適宜変速して前後四輪3,3,4,4に伝達するためのミッションケース17を連結している。左右の機体フレーム15及びミッションケース17の下面側には、左右外向きに張り出した底面視矩形枠板状のタンクフレーム18をボルト締結している。実施形態の燃料タンク11は左右二つに分かれている。タンクフレーム18の左右張り出し部の上面側に、左右の燃料タンク11を振り分けて搭載している。ミッションケース17の左右外側面には、左右の後車軸ケース19をから外向きに突出するように装着している。左右の後車軸ケース19には左右の後車軸20を回転可能に内挿している。ミッションケース17に後車軸20を介して後車輪4を取り付けている。左右の後車輪4の上方は左右のリヤフェンダー21によって覆われている。
ミッションケース17の後部上面には、例えばロータリ耕耘機といった作業機を昇降動させる油圧式昇降機構22を着脱可能に取り付けている。ロータリ耕耘機等の作業機は、左右一対のロワーリンク23及びトップリンク24からなる3点リンク機構を介してミッションケース17の後部に連結される。ミッションケース17の後側面には、ロータリ耕耘機等の作業機にPTO駆動力を伝達するためのPTO軸25を後ろ向きに突設している。
エンジン5の後側面から後ろ向きに突設するエンジン出力軸(図示省略)には、フライホイル26を直結するように取り付けている。両端に自在軸継手を有する動力伝達軸29を介して、フライホイル26から後ろ向きに突出した主動軸27と、ミッションケース17前面側から前向きに突出した主変速入力軸28とを連結している(図1、図7及び図10参照)。ミッションケース17内には、油圧無段変速機、前後進切換機構、走行副変速ギヤ機構及び後輪用差動ギヤ機構を配置している。エンジン5の回転動力は、主動軸27及び動力伝達軸29を経由してミッションケース17の主変速入力軸28に伝達され、油圧無段変速機及び走行副変速ギヤ機構によって適宜変速される。そして、当該変速動力が後輪用差動ギヤ機構を介して左右の後車輪4に伝達される。
ミッションケース17の前面下部から前向きに突出した前車輪出力軸30には、前車輪駆動軸31を介して、前輪用差動ギヤ機構(図示省略)を内蔵する前車軸ケース13から後向きに突出した前車輪伝達軸(図示省略)を連結している。ミッションケース17内の油圧無段変速機及び走行副変速ギヤ機構による変速動力は、前車輪出力軸30、前車輪駆動軸31及び前車輪伝達軸から前車軸ケース13内の前輪用差動ギヤ機構を経由して、左右の前車輪3に伝達される。
次に、図1〜図4を参照しながら、キャビン7内部の構造について説明する。キャビン7内における操縦座席8の前方にステアリングコラム32を配置している。ステアリングコラム32は、キャビン7内部の前面側に配置したダッシュボード33の背面側に埋設するような状態で立設している。ステアリングコラム32上面から上向きに突出したハンドル軸の上端側に、平面視略丸型の操縦ハンドル9を取り付けている。
ステアリングコラム32の右側には、ロータリ耕耘機等の作業機を最上昇位置や最下降位置に強制的に移動させるワンタッチ昇降レバー34と、走行機体2を制動操作するための左右一対のブレーキペダル35とを配置している。ステアリングコラム32の左側には、走行機体2の進行方向を前進と後進とに切り換え操作するための前後進切換レバー36(リバーサレバー)と、動力継断用のクラッチ(図示省略)を遮断操作するためのクラッチペダル37とを配置している。
ステアリングコラム32の左側で前後進切換レバー36の下方には、前後進切換レバー36に沿って延びる誤操作防止体38(リバーサガード)を配置している。接触防止具である誤操作防止体38を前後進切換レバー36下方に配置することによって、トラクタ1に乗降する際に、オペレータが前後進切換レバー36に不用意に接触するのを防止している。ダッシュボード33の背面上部側には、液晶パネルを内蔵した操作表示盤39を設けている。
キャビン7内にある操縦座席8前方の床板40においてステアリングコラム32の右側には、エンジン5の回転速度又は車速を制御するアクセルペダル41を配置している。なお、床板40上面の略全体は平坦面に形成している。操縦座席8を挟んで左右両側にはサイドコラム42を配置している。操縦座席8と左サイドコラム42との間には、左右両後車輪4を制動状態に維持する操作を実行するための駐車ブレーキレバー43と、トラクタ1の走行速度(車速)を強制的に大幅に低減させる超低速レバー44(クリープレバー)と、ミッションケース17内の走行副変速ギヤ機構の出力範囲を切り換えるための副変速レバー45と、PTO軸25の駆動速度を切り換え操作するためのPTO変速レバー46とを配置している。操縦座席8の下方には、左右両後車輪4の差動駆動をオンオフするためのデフロックペダル47を配置している。操縦座席8の後方左側には、PTO軸25を逆転駆動させる操作を実行する逆転PTOレバー48を配置している。
操縦座席8と操縦座席8と左サイドコラム42との間には、操縦座席8に着座したオペレータの腕や肘を載せるためのアームレスト49を設けている。アームレスト49は、操縦座席8とは別体に構成すると共に、トラクタ1の走行速度を増減速させる主変速レバー50と、ロータリ耕耘機といった作業機の高さ位置を手動で変更調節するダイヤル式の作業部ポジションダイヤル51(昇降ダイヤル)とを備えている。なお、アームレスト49は、後端下部を支点として複数段階に跳ね上げ回動可能な構成になっている。
左サイドコラム42には、前側から順に、エンジン5の回転速度を設定保持するスロットルレバー52と、PTO軸25からロータリ耕耘機等の作業機への動力伝達を継断操作するPTOクラッチスイッチ53と、ミッションケース17の上面側に配置する油圧外部取出バルブ(サブコントロールバルブ、図示省略)を切換操作するための複数の油圧操作レバー54(SCVレバー)とを配置している。ここで、油圧外部取出バルブは、トラクタ1に後付けされるフロントローダといった別の作業機に作動油を供給制御するためのものである。実施形態では、油圧外部取出バルブの数(4連)に合わせて、油圧操作レバー54を4つ配置している。
次に、図11〜図27を参照しながら、キャビン7の詳細構造について説明する。走行機体2上にある操縦座席8を覆うキャビン7は骨組を構成するキャビンフレーム300を
備えている。キャビンフレーム300は、操縦座席8の前方に位置する左右一対の前支柱301と、操縦座席8の後方に位置する左右一対の後支柱302と、前支柱301同士の上端部間を連結する前梁部材303と、後支柱302同士の上端部間を連結する後梁部材304と、前後に並ぶ前支柱301と後支柱302との上端部間を連結する左右の側梁部材305とを備えた略箱枠状のものである。キャビンフレーム301の上端側、すなわち前梁部材303、後梁部材304及び左右の側梁部材305で構成した矩形枠上には屋根体306を着脱可能に取り付けている。
各前支柱301の下端側には、左右内向きに延びる前下部プレート板307の左右外端側を連結している。左右両前下部プレート板307の左右内端側に、ダッシュボード33を固定支持する縦長のボード支持板308を連結し、左右両前支柱301の間にボード支持板308を立設している。一方、左右両後支柱302の下端部間には、後梁部材304と平行状に延びる後中間梁部材309を連結している。後中間梁部材309には、下向きに延びる左右一対の後下部フレーム310の上端側を連結している。前後に並ぶ前下部プレート板307と後下部フレーム301の下端側とには、前後に延びる底フレーム311の長手方向各端部を連結している。
各後支柱302の下端側には、リヤフェンダー21の形状に沿わせて側面視で前方且つ上方に膨らむように湾曲したフェンダフレーム312の後端上部側を連結している。各フェンダフレーム312の前端下部側は、対応する前支柱301の下部から後向きに突出したサイドフレーム313の後端側に連結している。各サイドフレーム313には、前下部プレート板307の左右外端側も連結している。各フェンダフレーム312の左右外面側及びこれに対応する後下部フレーム310の左右外面側に、左右のリヤフェンダー21を取り付けている。
後中間梁部材309と左右の後下部フレーム310とには、後中間梁部材309及び左右の後下部フレーム310で囲まれた領域を覆う後カバー板314を取り付けている。後カバー板314の下端側と左右の底フレーム311とには、側面視L字板状の座席支持板315を取り付けている。座席支持板315上に操縦座席8が配置される。左右のフェンダフレーム312、後下部フレーム310及び底フレーム311には、後車輪4の前部内面側に沿わせた膨出形状のフェンダ内板316を取り付けている。左右のフェンダ内板316上にサイドコラム42が配置される。左右の前下部プレート板307、底フレーム311の前部側、サイドフレーム313及び座席支持板315の前端側に床板支持プレート317を取り付けて支持している。左右の床板支持プレート317上に床板40が配置される。左右のフェンダフレーム312の前端下部側とこれに対応する底フレーム311の前後中途部とは、左右横長の補助フレーム318で連結している。
キャビンフレーム300の前面側、すなわち左右の前支柱301、前梁部材303及び左右の前下部プレート板307で囲まれる領域には、フロントガラス321を配置している。キャビンフレーム300の後面側、すなわち左右の後支柱302、後梁部材304及び後中間梁部材309で囲まれる領域には、リヤガラス322を配置している。キャビンフレーム300の左右側面側、すなわち前後に並ぶ前支柱及び後支柱、側梁部材、フェンダフレーム及びサイドフレームで囲まれる領域には、透明なガラスによって構成したサイドドア323を配置している。各サイドドア323は、対応する後支柱302に上下一対のヒンジ324を介して開閉可能に取り付けている。
図24〜図27に示すように、左右の前下部プレート板307の前部側は、防振部材としての前防振ゴム体98を介して、左右の機体フレーム15に取り付けた前部支持台96に連結している。また、左右の後下部フレーム310と底フレーム311との連結部には、左右外向きに張り出したベースブラケット327を設けている。左右のベースブラケッ
ト327は、防振部材としての後防振ゴム体99を介して、左右の後車軸ケース19上に取り付けた後部支持台97に連結している。従って、走行機体2は、複数の防振ゴム体98,99を介してキャビン7を防振支持している。
図11〜図27に示すように、キャビンフレーム300には、灯具部材取付け用の各種支持ステー331,335,338,343を設けている。すなわち、前梁部材303の長手中途部には、左右一対の前上段支持ステー331を溶接固定している。各前上段支持ステー331は前方斜め上向きに突出した薄板状のものである。各前上段支持ステー331には、前方下向きに延びる前取付け片332を介して、灯具部材の一例である前上段作業灯333を取り付けている。左右の前上段作業灯333は、トラクタ1の前方を照らすものである。左右の前上段作業灯333は、オペレータの前方視界を妨げないように、正面視で前梁部材303と重なるように位置させている。屋根体306の前部側には、各前上段作業灯333が嵌まるように上向きに凹んだ凹み部334(膨出部ともいえる)を形成している。キャビンフレーム301の上端側に屋根体306を取り付ける際は、前部側の各凹み部334に前上段作業灯333が収まるため、屋根体306と各前上段作業灯333とが干渉することはない。
一方、左右の後支柱302の上端側には、オペレータの前方視界を妨げないように、平面視で後梁部材304及び左右の側梁部材305の両方から遠ざかる左右外向きの後方に突出した後上段支持ステー335の基端側を溶接固定している。各後上段支持ステー335の先端側に、後向きに延びる後取付け片336を介して、灯具部材の一例である後上段作業灯337を取り付けている。左右の後上段作業灯337は、トラクタ1の後方(作業機等)を照らすものである。実施形態では、後梁部材304ではなく各後支柱302の上端側に後上段支持ステー335を設けることによって、オペレータの後方視界を良好に確保しながら、左右の後上段支持ステー335の間に、屋根体306の後部側の配置スペース(空気調和機364を収容する後部カバー363の配置スペース)を確保している。
左右の前支柱301の上下中途部には、前中段支持ステー338の基端側を溶接固定している。各前中段支持ステー338の先端側に、灯具部材の一例である前複合灯339及び前中段作業灯340を取り付けている。各前中段支持ステー338は、前複合灯339及び前中段作業灯340がオペレータの前方視界を妨げないように、平面視で前梁部材303及び左右の側梁部材305の両方から遠ざかる左右外向きの前方に突出し、長手中途部から前向きに延びるように湾曲している。前複合灯339は、トラクタ1の前方にいる車や人に対してトラクタ1の車幅及び左右回動等の意思を示すものであり、実施形態の前複合灯339は方向指示灯と車幅灯とで構成している。左右の前中段作業灯340はトラクタ1の前方を照らすものである。実施形態では、各前中段支持ステー338の先端側に上下長手の取付けブラケット341を設け、取付けブラケット341の前面側に前複合灯339を取り付けている。取付けブラケット341の上端側に前中段作業灯340を取り付けている。なお、左右の前支柱301において前中段支持ステーより上方には、ミラーステー341を介してサイドミラー342を取り付けている。ミラーステー341も、オペレータの前方視界を妨げないように、平面視で前梁部材303及び左右の側梁部材305の両方から遠ざかる左右外向きの前方に延びている。
左右の後支柱302の下部には、上下長手の後下段支持ステー343の前面側を溶接固定している。各後下段支持ステー343の後面側に、灯具部材の一例である後複合灯344及び後下段作業灯345を取り付けている。各後下段支持ステー343は、後複合灯344及び後下段作業灯345がオペレータの後方視界を妨げないように、背面視で左右の後支柱302から左右外向きに張り出させている。後複合灯344は、トラクタ1の後方にいる車や人に対してトラクタ1の減速、停止、後退及び左右回動等の意思を示すものであり、実施形態の後複合灯344は尾灯と制動灯と後退灯と方向指示灯とで構成している
。左右の後下段作業灯345はトラクタ1の左右側方を照らすものである。実施形態では、各後下段支持ステー343の前面側に後複合灯344を取り付けている。後下段支持ステー343の上端側に後下段作業灯345を取り付けている。前複合灯339と後複合灯とはほぼ同程度の上下高さ位置に設定している。
なお、詳細は図示していないが、実施形態ではキャビンフレーム300を中空状に形成し、当該中空状の内部をケーブル類挿通用の配線通路に構成している。そして、各支柱301,302、梁部材303,304及び支持ステーに形成した切欠き穴(図示省略)からケーブルを引き出し、当該ケーブルを各灯具部材333,337,339,340,344,345に接続している。
上記の記載並びに図11〜図27から明らかなように、走行機体2上にある操縦座席8を覆うキャビン7を備え、前記キャビン7は、骨組を構成するキャビンフレーム300と、前記キャビンフレーム300の上端側に配置した屋根体306とを有する作業車両1において、灯具部材333,337,339,340,344,345を取り付ける支持ステー331,335,338,343を前記キャビンフレーム300に設けているから、前記キャビンフレーム300に前記灯具部材333,337,339,340,344,345を直接取り付けできる。このため、製造ラインでの組付け作業性向上に寄与して、コストダウンを図れる。
また、前記キャビンフレーム300は、左右一対の前支柱301と、左右一対の後支柱302と、前記前支柱301同士の上端部間を連結する前梁部材303と、前記後支柱302同士の上端部間を連結する後梁部材304と、前後に並ぶ前記前支柱301と前記後支柱302との上端部間を連結する側梁部材305とを備え、前記各前支柱301の上下中途部に設けた前記支持ステー338に、前記灯具部材としての前複合灯339及び前中段作業灯340を取り付け、前記各後支柱302の下部に設けた支持ステー343には、前記灯具部材としての後複合灯344及び後下段作業灯345を取り付けているから、前記各前支柱301側の支持ステー338には、前複合灯339及び前中段作業灯340をまとめて取り付けでき、前記各後支柱302側の支持ステー343には、後複合灯344及び後下段作業灯345をまとめて取り付けできる。すなわち、前記各支持ステー338,343を前記複数の灯具部材339,340,344,345に対する支持部材として兼用でき、部品点数の削減に寄与できる。また、前記複数の灯具部材339,340,344,345に対するケーブル類の取り回しも簡単化できる。前記キャビン7内からの前後左右の視界の確保も容易である。
上記の記載並びに図11〜図27から明らかなように、走行機体2上にある操縦座席8を覆うキャビン7を備え、前記キャビン7は、骨組を構成するキャビンフレーム300と、前記キャビンフレーム300の上端側に配置した屋根体306とを有する作業車両1において、前記キャビンフレーム300は、左右一対の前支柱301と、左右一対の後支柱302と、前記前支柱301同士の上端部間を連結する前梁部材303と、前記後支柱302同士の上端部間を連結する後梁部材304と、前後に並ぶ前記前支柱301と前記後支柱302との上端部間を連結する側梁部材305とを備え、前記前梁部材303の長手中途部に設けた左右一対の支持ステー331に前上段作業灯333をそれぞれ取り付ける一方、前記各後支柱302の上端側に設けた支持ステー335には後上段作業灯337を取り付けているから、前記前梁部材303に前記前上段作業灯333を直接取り付けできると共に、前記後梁部材304に前記後上段作業灯337を直接取り付けできる。このため、製造ラインでの組付け作業性向上に寄与して、コストダウンを図れる。しかも、前記屋根体306に前記各上段作業灯333,337を取り付けたりケーブル類を引き回したりする必要がないから、前記キャビンフレーム300に対する前記屋根体306の組付け作業も簡素化できる。この点においても製造ラインでの組付け作業性向上に貢献する。
また、前記各前上段作業灯333を正面視で前記前梁部材303と重なるように位置させているから、前記操縦座席8に着座したオペレータの前方視界を前記各前上段作業灯333が遮るおそれを格段に低減でき、オペレータの前方視界を良好に確保できる。
次に、図11〜図23を参照しながら、キャビン7の左右下部に設けたステップ10の詳細構造について説明する。図11〜図23に示すように、前後に並ぶ前車輪3と後車輪4との間でキャビン7の左右下部側には、オペレータが乗降するステップ10を吊り下げて設けている。実施形態のステップ10は、複数の踏板段部351(実施形態では二段)と、これら踏板段部351に連結する前後の側板部352,353とを備えている。複数の踏板段部351は、下段に行くほど後車輪4から遠ざかるように前後方向に互いの位置をずらしている。実施形態では、下段側の踏板段部351の方が上段側の踏板段部351よりも前方にずれた位置にある。
この場合、前側板部352は正面視で略L字状に形成している。前側板部352における縦長部354の上端側は、各前支柱301の下端側に溶接固定したブラケット片355にボルト締結している。前側板部352における縦長部354の上下中途箇所には、上段側の踏板段部351の前端側を固定している。前側板部352の下端水平部356には、下段側の踏板段部351の前端側を固定している。前側板部352の下端水平部356は縦長部よりも前方に張り出している。
後側板部353の上端側は、左右のフェンダフレーム312と底フレーム311とをつなぐ補助フレーム318にボルト締結している。後側板部353の上下中途部には、上段側の踏板段部351の後端側を固定している。後側板部353の下端側には、下段側の踏板段部351の後端側を固定している。後側板部353は前方斜め下向きに傾斜していて上下中途部付近で更に前向きに屈曲している。このように構成すると、キャビン7に乗車するオペレータの移動方向を操縦座席8に向かう後方斜め上向きに向け易くなる(各踏板段部351のずらし配置によってオペレータの動線を操縦座席8に向けることが可能になる)。従って、キャビン7への乗降性を格段に向上できる。
図13、図19、図22及び図23に示すように、後側板部353の左右方向の幅は前側板部352(縦長部354)の左右方向の幅よりも広く設定している。このように構成すると、オペレータが各踏板段部351に足を載せる際に前側板部352(縦長部354)の存在が邪魔にならず、この点でもキャビン7への乗降性向上に貢献する。また、後側板部353が幅広であるから、後側板部353の存在によって後車輪4の泥はねを効果的に抑制できる。
上記の記載並びに図11〜図23から明らかなように、エンジン5を搭載した走行機体2と、前記走行機体2を支持する左右一対の前車輪3及び後車輪4と、前記走行機体2上にある操縦座席8を覆うキャビン7と、前記キャビン7内に乗降するためのステップ10とを備える作業車両1において、前後に並ぶ前記前車輪3と前記後車輪4との間で前記キャビン7の左右下部側に、前記ステップ10を吊り下げて設けた構造であって、前記ステップ10は、複数の踏板段部351と、これら踏板段部351に連結する前後の側板部352,353とを備え、前記複数の踏板段部351は、下段に行くほど前記後車輪4から遠ざかるように前後方向に互いの位置をずらしているから、前記キャビン7内外に向かうオペレータの動線に沿って前記各踏板段部351を位置させることになり、前記キャビン7への乗降性を格段に向上できる。
また、前記後側板部353の左右方向の幅を前記前側板部352(縦長部354)の左右方向の幅よりも広く設定しているから、オペレータが前記各踏板段部351に足を載せ
る際に前記前側板部352の存在が邪魔にならず、この点でも前記キャビン7への乗降性向上に貢献する。また、前記後側板部353が幅広であるから、前記後側板部353の存在によって前記後車輪4の泥はねを効果的に抑制できる。
次に、図1、図2、図11、図14、図28及び図29を参照しながら、屋根体306内外の空調構造について説明する。キャビンフレーム301の上端側に取り付けた屋根体306は、外装であるアウタールーフ361と、キャビン7の天井を構成するインナールーフ362と、後梁部材304よりも後方に突出した後部カバー363を備えている。インナールーフ362及び後部カバー363をアウタールーフ361で上方から覆うことによって、屋根体306内部を中空状に構成している。従って、アウタールーフ361の後部側も後梁部材304より後方に延びている。各前上段作業灯333が嵌まる凹み部334(膨出部)はアウタールーフ361の前部側に形成している。
屋根体306内部は、インナールーフ362と後部カバー363とによって前後二室に区画している。インナールーフ362側の空間が前室に相当し、後部カバー363側の空間が後室に相当する。屋根体306内部の後室側(後部カバー363側)には、キャビン7内の空調を管理する空気調和機364を収容している。空気調和機364は、エンジン5の冷却水を利用した暖房や、エンジンによって駆動するコンプレッサ、コンデンサ及びエバポレータ等を利用した冷房によって、キャビン7内の空調(室内温度)を調節するものである。空気調和機364を後梁部材304よりも後方に突出した後部カバー363側に配置することによって、キャビン7の全高が必要以上に高くなるのを防いでいる。特に実施形態では、後梁部材304ではなく各後支柱302の上端側に後上段支持ステー335を設けることによって、オペレータの後方視界を良好に確保しながら、左右の後上段支持ステー335の間に、屋根体306の後部側の配置スペース(空気調和機364を収容する後部カバー363の配置スペース)を確保している。
後部カバー363はキャビンフレーム300の後梁部材304に連結している。従って、後部カバー363及び空気調和機364はキャビンフレーム300の後梁部材304で支持している。後部カバー363の周縁部にはシール材365を取り付けている。インナールーフ362及び後部カバー363上にアウタールーフ361を被せて取り付けた状態では、アウタールーフ361の内面側にシール材365が密着し、屋根体306内部の後室側(後部カバー363側)が密閉状になる。
アウタールーフ361の左右側部は、左右内側に向かう斜め下向きに切り落としたように傾斜している。アウタールーフ361の左右側部のうちエンジン5の排気ガスを外部に放出するテールパイプ229(図1〜図10参照)と反対側の側部には、屋根体306内部の後室側(後部カバー363側)を外部と連通させる外気取入れ口366を形成している。この場合、テールパイプ229は、キャビン7の前方右側において下方から上方に向けて延びるように立設している(右前支柱301に沿って延びている)。これに対して外気取入れ口366はアウタールーフ361左側部の後部側(後部カバー363と対応する箇所)に形成している。外気取入れ口366は、後部カバー363の左側壁部に形成した連通口(図示省略)を介して、後部カバー363内の空気調和機364に左側方から臨ませている。外気取入れ口366には、格子状の通気枠体367を装着している。詳細な図示は省略するが、後部カバー363の左側壁部に形成した連通口には除塵フィルタを取り付けている。一方、操縦座席8に着座したオペレータの後頭部に対峙するインナールーフ362の後部側には、後部カバー363内とキャビン7内とを連通させる内気取入れ口368を形成している。内気取入れ口368には格子状の通気枠体369を装着している。
後部カバー363内には、後部カバー363の左側壁部に形成した連通口を開閉する内外気切換シャッター板370を配置している。内外気切換シャッター板370はアクチュ
エータ371の駆動によって開閉回動するように構成している。内外気切換シャッター板370を開放動させると、後部カバー363の連通口が開放され、後部カバー363内の空気調和機364の駆動によって、外気取入れ口366から連通口を経て後部カバー363内に外部空気が導かれる。内外気切換シャッター板370を閉止動させると、後部カバー363の連通口が閉止されて外気取入れ口366から外部空気が入らなくなり、空気調和機364の駆動によって、内気取入れ口368から後部カバー363内にキャビン7内の空気が導かれる。実施形態では、内外気切換シャッター板370の開度(開閉程度)によって、後部カバー363内の空気調和機364に導かれる外気と内気との割合を調節できる。
空気調和機364の前面側に形成した調整空気放出口372には、後室側(後部カバー363側)から前室側(インナールーフ362側)に調整空気を案内する平面視二股状の空調ダクト373の上流側を接続している。空調ダクト373の上流側は、内気取入れ口368の上方に位置していて、後部カバー363の前面側とインナールーフ362の後面側とを貫通してから左右に二股状に分岐している。空調ダクト373の二股状のダクト部374は、前梁部材303、後梁部材304及び左右の側梁部材305で構成した矩形枠に沿って平面視矩形状に延びている。空調ダクト373の各ダクト部374の中途部分には、インナールーフ362の左右両側部に設けた冷暖房用吹出し口375とダクト部374との連通状態を調節する調節シャッター板376を配置している。左右の調節シャッター板376はアクチュエータ377及びプッシュプルワイヤー378によって連動して回動するように構成している。空調ダクト373の各ダクト部374の下流側は、インナールーフ362の前部に設けた曇り取り用吹出し口379に連通している。各吹出し口375,379には、空気調和機364からの調整空気の風量や風向を変更調節するフィン(図示省略)を設けている。
左右両調節シャッター板376によって、各ダクト部374の下流側への流れ(各曇り取り用吹出し口379への流れ)を塞ぐと、空気調和機364からの調整空気は、左右の冷暖房用吹出し口375だけからキャビン7内に吹き出す。左右両調節シャッター板376によって、左右の冷暖房用吹出し口375への流れを塞ぐと、空気調和機364からの調整空気は、左右の曇り取り用吹出し口379だけからキャビン7内に吹き出す。左右両調節シャッター板376の回動角度に応じて、冷暖房用吹出し口375からの調整空気の風量と、曇り取り用吹出し口379からの調整空気の風量とを調節できる。
上記の記載並びに図1、図2、図11、図14、図28及び図29から明らかなように、走行機体2上にある操縦座席8を覆うキャビン7を備え、前記キャビン7は、骨組を構成するキャビンフレーム300と、前記キャビンフレーム300の上端側に配置した屋根体306とを有する作業車両1において、前記走行機体2に搭載したエンジン5の排気ガスを外部に放出するテールパイプ135を前記走行機体2の左右一方に備え、前記屋根体306の内部を前後二室に区画し、後室363側に空気調和機364を収容し、前記屋根体306の左右側部のうち前記テールパイプ229と反対側に、前記後室363を外部と連通させる外気取入れ口366を形成しているから、前記テールパイプ229からの排気ガスを前記外気取入れ口366に取り込むおそれを格段に防止できる。
また、前記キャビンフレーム300は、左右一対の前支柱301と、左右一対の後支柱302と、前記前支柱301同士の上端部間を連結する前梁部材303と、前記後支柱302同士の上端部間を連結する後梁部材304と、前後に並ぶ前記前支柱301と前記後支柱302との上端部間を連結する側梁部材305とを備え、前記屋根体306の後室363を前記後梁部材304よりも後方に突出させ、前記後室363を前記後梁部材304で支持し、前記各後支柱302の上端側に設けた支持ステー335に後上段作業灯337を取り付けているから、前記キャビン7の全高を高くすることなく前記屋根体306内部
に前記空気調和機364を配置できると共に、前記屋根体306の前室362に前記空気調和機364を収容したためにオペレータの前方視界を制限するという問題を回避できる。また、前記各後支柱302の上端側に設けた支持ステー335に後上段作業灯337を取り付けることで、前記屋根体306の後室363側の配置スペースを前記両後上段作業灯337用の前記支持ステー335の間に形成できると共に、オペレータの後方視界も良好に確保できる。
図30〜図36は別実施形態のトラクタ380を示している。ここで、以下に示す別実施形態のトラクタ380において構成及び作用が先の実施形態と同様なものには、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。別実施形態では、走行機体2の後部を後車輪4で支持するのに代えて、走行クローラ装置381で支持するようにした点で、先の実施形態と相違している。
この場合、左右の後車軸ケース19から左右外向きに突出した後車軸20に、駆動輪体382と、後車軸20回りに前後揺動可能な揺動リンク383とを取り付けている。揺動リンク383の下部側に、前後方向に延びるトラックフレーム384を設けている。後車軸20に揺動リンク383を介してトラックフレーム384を前後揺動可能に連結している。トラックフレーム384の前端側にテンション調節機構385を介して前従動輪体386を取り付けている。トラックフレーム384の後端側に後従動輪体387を支持軸388にて取り付けている。駆動輪体382と前従動輪体386と後従動輪体387との三者には、履帯である合成ゴム製の走行クローラ389を略三角形状に巻き掛けている。駆動輪体382(後車軸20)を適宜速度で正回転又は逆回転させて、走行クローラ389を正回転又は逆回転駆動することによって、トラクタ1が前進走行又は後退走行するように構成している。なお、トラックフレーム384には複数の転動輪390を回転可能に設けている。
前後に並ぶ前車輪3と走行クローラ装置381との間でキャビン7の左右下部側には、オペレータが乗降するステップ391を吊り下げて設けている。別実施形態のステップ10は、複数の踏板段部392(実施形態では二段)と、これら踏板段部392を支持する前後の側板部393,394とを備えている。複数の踏板段部392は、下段に行くほど走行クローラ装置381から遠ざかるように前後方向に互いの位置をずらしている。実施形態では、下段側の踏板段部392の方が上段側の踏板段部392よりも前方にずれた位置にある。
この場合、前側板部393の上端側は、各前支柱301の下端側に溶接固定したブラケット片355にボルト締結している。前側板部393の上下中途部に、上段側の踏板段部392の前端側を固定している。前側板部393の下端側には、下段側の踏板段部392の前後中途部を固定している。別実施形態の後側板部394は、踏板段部392の数に合わせて上下二つに分割されている。上段側の後側板部394aの上端側は、左右のフェンダフレーム312と底フレーム311とをつなぐ補助フレーム318にボルト締結している。上段側の後側板部394aの下端側には、上段側の踏板段部392の後端側を固定している。下段側の後側板部394bの上端側は、上段側の踏板段部392の下面に固定している。下段側の後側板部394bの下端側には、下段側の踏板段部392の後端側を固定している。従って、下段側の踏板段部392は前側板部393及び下段側の後側板部394bで片持ち梁状に支持されている。
このように構成すると、キャビン7に乗車するオペレータの移動方向を操縦座席8に向かう後方斜め上向きに向け易くなる(各踏板段部351のずらし配置によってオペレータの動線を操縦座席8に向けることが可能になる)。従って、キャビン7への乗降性を格段に向上できる。また、ステップ391に対する走行クローラ装置381(走行クローラ3
89)の干渉を確実に回避できる利点もある。
図36に示すように、上下両後側板部394a,394bの左右方向の幅は前側板部393の左右方向の幅よりも広く設定している。このように構成すると、オペレータが各踏板段部392に足を載せる際に前側板部393の存在が邪魔にならず、この点でもキャビン7への乗降性向上に貢献する。また、上下両後側板部394a,394bが幅広であるから、上下両後側板部394a,394bの存在によって走行クローラ装置381の泥はねを効果的に抑制できる。
図30及び図31に示すように、キャビン7の底部より下側に配置した左右二つの燃料タンク11のうち左側の燃料タンク11は、平面視でキャビン7よりも前方に突出している。当該左側の燃料タンク11の突出部分は、走行機体2(左機体フレーム15)と下段側の踏板段部392との間に位置している。そして、突出部分の上部側に、上向きに突出する給油口283を設けている。このため、給油口283のそばに下段側の踏板段部392が位置することになり、下段側の踏板段部392上に給油容器を載置した状態で燃料タンク11に給油できる。給油容器を高く持ち上げる必要がなく、労力を軽減して給油し易くなる。また、燃料タンク11側面に何らかの障害物が接触・衝突するおそれをステップ391(下段側の踏板段部392)の存在によって抑制できる。
上記の記載並びに図30〜図36から明らかなように、エンジン5を搭載した走行機体2と、前記走行機体2の前部を支持する左右一対の前車輪3と、前記走行機体2の後部を支持する左右一対の走行クローラ装置381と、前記走行機体2上にある操縦座席8を覆うキャビン7と、前記キャビン7内に乗降するためのステップ391とを備える作業車両380において、前後に並ぶ前記前車輪3と前記走行クローラ装置381との間で前記キャビン7の左右下部側に、前記ステップ391を吊り下げて設けた構造であって、前記ステップ391は、複数の踏板段部392と、これら踏板段部392を支持する側板部393,394(394a,394b)とを備え、前記複数の踏板段部392は、下段に行くほど前記走行クローラ装置381から遠ざかるように前後方向に互いの位置をずらし、下段側の踏板段部392を前記側板部393,394(394b)で片持ち梁状に支持しているから、前記キャビン7内外に向かうオペレータの動線に沿って前記各踏板段部392を位置させることになり、前記キャビン7への乗降性を格段に向上できる。前記ステップ391に対する前記走行クローラ装置381の干渉を確実に回避できる利点もある。
また、前記キャビン7の左右下方に燃料タンク11を配置し、前記走行機体2と前記下段側の踏板段部392との間に前記燃料タンク11の給油口283を設けているから、前記給油口283のそばに前記下段側の踏板段部392が位置することになり、前記下段側の踏板段部392上に給油容器を載置した状態で前記燃料タンク11に給油できる。前記給油容器を高く持ち上げる必要がなく、労力を軽減して給油し易くなる。また、前記燃料タンク11側面に何らかの障害物が干渉するおそれを前記ステップ391の存在によって抑制できる。
なお、本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。