JP2015187298A - 歯車の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】母材の表面に低硬度の被覆層を設けるとともに、その母材と被覆層とが剥離することを抑制することができる歯車の製造方法を提供する。
【解決手段】母材1の表面に被覆層2を設けた歯車の製造方法において、前記母材1の表面に研削加工または真空浸炭処理を行う第1工程と、前記母材1の表面の面粗さを粗くする第2工程と、前記母材1の表面を該母材1の表面の硬度よりも低い硬度の材料により被覆する第3工程とを備えている。
【選択図】図1

Description

この発明は、母材の表面に被覆層を設けた歯車の製造方法に関するものである。
特許文献1には、歯面の強度を向上させるために、浸炭処理を行った歯面に一次ショットピーニング加工を行い、その後に、歯面を研削してから二次ショットピーニング加工を行って形成された歯車が記載されている。このように歯車を形成することにより、歯面深くまで圧縮残留応力を付与することができるため、疲労強度を向上させることができるとともに、歯面が平滑化される。なお、一次ショットピーニング加工に使用されるショット粒は、0.6から0.8mmの粒径で、かつ二次ショットピーニング加工に使用されるショット粒は、0.05から0.2mmの粒径であることが好ましい、とされている。
特許文献2には、歯切加工などにより形成された母材の表面にニッケルメッキを施し、その後に、熱処理を行い、更にその後に、メッキ層の表面に球状の粒子を吹き付けて形成された歯車が記載されている。このようにニッケルメッキを施すことにより耐摩耗性や耐焼き付き性を向上させることができ、またメッキ層を形成した後に熱処理を行いさらに球状の粒子を吹き付けることにより母材の表面とメッキ層との密着性を向上させることができる。
特許文献3には、歯面を熱処理することに伴って不可避的に生じる不完全焼き入れ層を高硬度粒材を吹き付けて剥離させ、その不完全焼き入れ層が剥離された歯面にショットピーニング加工を行うことで圧縮残留応力を付与して形成された歯車が記載されている。
特開平8−277417号公報 特開平8−39432号公報 特開2002−166366号公報
ところで、歯切加工および熱処理を施した母材に研削加工を行った後に、または歯切加工を行った母材に真空浸炭処理を行った後に、更に母材の表面に圧縮残留応力を付与するためのショットピーニング加工を行うと、ショットピーニング加工を行わない場合と比較してトルクの伝達効率が低下する。図6は、研削加工のみを行った歯車のトルクの伝達効率と、研削加工後にショットピーニング加工を行った歯車のトルクの伝達効率とを比較した結果を示しており、横軸は歯車を形成した直後の歯面の面粗度パラメータを示し、縦軸は所定時間運転した後の歯車の伝達効率を示している。なお、図6における破線で囲われた部分が、研削加工後にショットピーニング加工を行った歯車のトルクの伝達効率を示している。
歯車のトルクの伝達効率は、噛み合い損失に起因するものであり、その噛み合い損失は、摩擦係数μと、歯面に作用する荷重と、トルク伝達時に歯面で生じる滑り速度との積に応じたものとなる。また、油膜を介してトルクを伝達する歯車の摩擦係数μは、金属同士が接触する割合αと、油膜を介して接触する割合(1−α)とに応じて変化する。具体的には、以下に示す式により求めることができる。
μ=(1−α)μL+αμS
α=Alog(D)
D=ΣR/hEHL
なお、上式におけるμLは油膜と金属とが接触する際の摩擦係数、μSは金属同士が接触する際の摩擦係数であり、Aは定数(0.5)、ΣRは合成粗さ、hEHLは最小油膜厚さである。一般的に、金属同士が接触する際の摩擦係数μSは、油膜と金属とが接触する際の摩擦係数μLよりも大きいので、歯面の面粗さが粗く金属同士が接触する割合αが大きいと、歯車の噛み合いにおける摩擦係数μが大きくなり、その結果、噛み合い損失が増大する。したがって、図6に実線で示すように歯面の面粗さの増大に比例してトルクの伝達効率が低下する。
一方、ショットピーニング加工は、ショット粒を歯面に吹き付けて圧縮残留応力を付与するので、歯面が塑性変形する。そのため、歯面の面粗さが粗くなるとともに、塑性変形して凹凸形状になった表面のうちの凸部の硬度はショットピーニング加工前の歯面の硬度よりも高くなる。そのため、所定時間運転した後であっても、相手側の歯車の歯面に合わせて面粗さが是正されにくく、トルクの伝達効率が悪化する場合がある。図6に示す例では、同一の面粗さであっても、研削加工のみを行った歯車よりも、研削加工後にショットピーニング加工を行った歯車の方がトルクの伝達効率が低くなっている。
上述したように研削加工を行うと、歯面に形成された不完全焼き入れ層などの軟質な表面層が削り取られ、または真空浸炭処理を行うと不完全焼き入れ層などの軟質な表面層が形成されにくいので、ショットピーニング加工により生じる凸部の硬度が高くなりやすい。そのため、研削加工された母材の表面または真空浸炭処理された母材の表面を、その母材の表面の硬度よりも低い硬度の材料により被覆し、その後にショットピーニング加工を行うことが考えられる。しかしながら、母材の表面の硬度と被覆層の硬度とが異なると、トルク伝達時における母材と被覆層との界面部分での母材の撓み量と被覆層の撓み量とに差が生じるので、母材と被覆層との耐剥離性が低下する可能性がある。
この発明は上述した事情を背景としてなされたものであって、母材の表面に低硬度の被覆層を設けるとともに、その母材と被覆層とが剥離することを抑制することができる歯車の製造方法を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、母材の表面に被覆層を設けた歯車の製造方法において、前記母材の表面に研削加工または真空浸炭処理を行う第1工程と、前記母材の表面の面粗さを粗くする第2工程と、前記母材の表面を該母材の表面の硬度よりも低い硬度の材料により被覆する第3工程とを備えていることを特徴とする歯車の製造方法である。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記第2工程における面粗さは、トルク伝達に伴う荷重が大きい領域で前記荷重が小さい領域よりも粗いことを特徴とする製造方法である。
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記第3工程により前記母材を被覆して形成された被覆層の表面に、ショットピーニング加工を行う第4工程を更に備えていることを特徴とする製造方法である。
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記第2工程は、前記母材の表面にショットピーニング加工を行って該母材の表面の面粗さを粗くする工程を含み、前記第4工程は、前記第1工程のショットピーニング加工におけるショット粒の粒径よりも、大きい粒径のショット粒を使用したショットピーニング加工を行う工程を含むことを特徴とする製造方法である。
この発明によれば、母材の表面に研削加工または真空浸炭処理を行い、更に母材の表面の面粗さを粗くする。そして、母材の表面の硬度よりも低い硬度の材料により母材の表面を被覆する。そのため、母材の表面とその母材の表面を被覆して形成される被覆層との接触面積を大きくすることができるので、歯面に荷重が作用することに伴って母材の表面と被覆層との界面部分での撓み量に差が生じたときに、その界面部分に生じるせん断方向の荷重を受ける面積を増大させることができる。その結果、母材と被覆層とが剥離することを抑制することができる。
また、トルク伝達に伴う荷重が大きい領域でその荷重が小さい領域よりも母材の表面の面粗さを粗くする。したがって、大きな荷重が作用することに伴って低硬度の被覆層の撓み量が大きくなる場合であっても、その接触面積を大きくすることにより、界面部分に生じるせん断方向の荷重を受ける面積を増大させることができるので、より効果的に母材と被覆層とが剥離することを抑制することができる。
さらに、被覆層の表面にショットピーニング加工を行って圧縮残留応力を付与することにより、形成された歯車の歯面強度を向上させることができる。
そして、母材の表面の面粗さを粗くするためにショットピーニング加工を行うことにより、母材の表面の面粗さを粗くするとともに、母材の表面に圧縮残留応力を付与することができる。さらに、母材の表面に行うショットピーニング加工におけるショット粒よりも粒径が大きいショット粒を使用して被覆層にショットピーニング加工を行う。そのため、母材の表面に行われるショットピーニング加工により付与される圧縮残留応力の最大値の深さ方向での位置と、被覆層の表面に行われるショットピーニング加工により付与される圧縮残留応力の最大値の深さ方向での位置とが干渉することにより、意図した歯面強度にならないことを抑制することができ、歯面強度が低下することを抑制することができる。
この発明に係る歯車の製造方法により製造された歯車の歯面形状の一例を示す断面図である。 被覆層を形成する前の母材の表面の面粗さを示す断面図である。 被覆層を形成した状態を示す断面図である。 はすば歯車の歯面に作用する荷重の分布を示す作用平面図である。 母材の表面の面粗さを粗くする第1領域および第2領域の範囲を示す図である。 研削加工のみを行った歯車の歯車の伝達効率と、研削加工後にショットピーニング加工を行った歯車の伝達効率との比較結果を示す図である。
この発明に係る歯車の製造方法は、研削加工または真空浸炭処理を行って形成された母材の表面を、その母材の表面の硬度よりも低い硬度の材料により被覆して歯車を製造する方法である。したがって、研削加工または真空浸炭処理を行う前の工程は特に限定されず、鋳造などにより歯型を形成していてもよい。一般的な歯車は、まず、素材に旋削加工を行うことによりブランク品を成形し、そのブランク品に歯切加工を行うことで歯が成形される。また、そのように成形された歯の表面の硬度を向上させるために、熱処理を行う。この熱処理では、熱処理時間を短縮するために真空浸炭処理が行われる場合がある。なお、真空浸炭処理が行われた歯面には、不完全焼き入れ層が形成されにくいので、真空浸炭処理された歯面の硬度は比較的高くなる。ついで、熱処理後の歯の形状を整えるために研削加工が行われる場合がある。研削加工は、熱処理された歯車を回転させながら歯面を削るので、熱処理されて歯面に形成された不完全焼き入れ層が削り取られる。一般的に、不完全焼き入れ層の硬度は、歯の硬度よりも低いので、研削加工を行った後の歯面の硬度および熱処理として真空浸炭処理を行った後の歯面の硬度は、比較的高くなる。なお、研削加工後に焼後旋削加工を行ってもよい。
また、歯面の強度、より具体的には、ピッチング強度を向上させるために、歯面に微小の粒子(以下、ショット粒と記す。)を吹き付けて圧縮残留応力を付与するショットピーニング加工を、研削加工が行われた歯面または真空浸炭処理が行われた歯面に行う場合がある。ショットピーニング加工は、上記のように歯面にショット粒を吹き付けるので、歯面の面粗さが不可避的に粗くなり、硬度の高い凸部などが歯面に生じてトルクの伝達効率が低下する可能性がある。そのため、この発明に係る歯車の製造方法は、研削加工を行って形成され、または真空浸炭処理を行った母材の表面を、その母材の表面の硬度よりも低い硬度の材料で被覆するように構成されている。
一方、母材の表面の硬度と被覆層の硬度とに差があると、トルク伝達時には、母材と被覆層との界面部分における母材の撓み量と被覆層の撓み量とに差が生じる。そのため、この発明に係る歯車の製造方法では、母材と被覆層との接触面積を増大させて耐剥離性または密着性を向上させるために、研削加工を行って形成されまたは真空浸炭処理を行った母材の表面の面粗さを粗くする。そのように母材の表面の面粗さを粗くする方法の一例としては、研削加工を行って形成され、または真空浸炭処理を行った母材にショットピーニング加工を行う。なお、母材の表面の面粗さを粗くするための方法は、ショットピーニング加工に限定されず、従来知られている転造加工やバニシング加工などの他の方法によって母材の表面の面粗さを粗くしてもよい。
さらに、はすば歯車など所定の捩じれ角を有する歯車は、従来知られているように噛み合い位置に応じていずれか一つの歯のみが接触してトルクを伝達するときや、複数の歯が同時に接触してトルクを伝達するときがある。そのため、歯同士が接触する噛み合い位置に応じて歯面に作用する荷重が変化する。図4は、はすば歯車同士が噛み合ってトルクを伝達する際の作用平面図を示している。作用平面は、互いに噛み合う双方の歯車の基礎円筒の外周面に接触する平面であって、その作用平面上で互いの歯車が噛み合ってトルクを伝達する。なお、図4における縦軸は互いに噛み合う歯車の基礎円筒の外周面の接線方向(作用線方向)であり、横軸は歯幅方向である。したがって、図4に示す下側は一方の歯車の歯元側でかつ他方の歯車の歯先側であり、上側は一方の歯車の歯先側でかつ他方の歯車の歯元側である。以下の説明では、便宜上、図4における下側を歯元側、上側を歯先側と称す。
図4に示す例では、はすば歯車同士が噛み合ってトルクを伝達する際の作用平面を示しているので、噛み合いが進行する方向は、作用平面における対角線方向になる。具体的には、歯幅方向における一方の歯元側から他方の歯先側、または他方の歯先側から一方の歯元側に向けて噛み合いが進行する。また、歯車がトルクを伝達するときには、歯面が撓み変形する。具体的には、噛み合いが進行する方向に長手方向が交差するように接触部が楕円状に撓み変形する。以下の説明では、その楕円状になった接触部の長手方向を接触線方向と称す。
上述したようなはすば歯車は、一般的に、歯幅方向における中央部に作用する荷重が大きくなる。また、歯が接触した部分を中心に歯面が撓み変形するので、接触線方向における中央部に作用する荷重が大きくなる。そのため、図4に示すように歯幅方向における中央部および歯たけ方向における中央部から離れるにつれて荷重が小さくなる。したがって、母材と被覆層との界面部分に作用する荷重も歯幅方向における中央部および歯たけ方向における中央部が大きくなり、その位置から離れるにつれて小さくなる。
そのため、この発明における歯車の製造方法では、歯面に作用する荷重に応じて母材の表面の面粗さを定めている。具体的には、研削加工または真空浸炭処理を行った母材の形状を測定し、その測定された母材の形状に基づいて歯面に作用する荷重の分布をCAE解析や接触シミュレーションなどにより算出する。ついで、被覆層が母材から剥離しない荷重の上限値(以下、耐荷重と記す。)が、算出された歯面に作用する荷重と安全率とを積算した値以上になるように、母材の表面の面粗さの分布を定める。つまり、耐荷重Hと歯面に作用する荷重Gとの比(H/G)が、安全率を考慮した値以下になるように母材の表面の面粗さの分布を定める。
なお、上記耐荷重は、トルク伝達時における被覆層と母材との界面部分で生じる撓み量の差と界面部分の接触面積とに基づいて算出することができる。また、界面部分での接触面積は、母材の表面の面粗さに基づいて算出することができる。したがって、被覆層が母材から剥離しない荷重の上限値が、歯面に作用する荷重と安全率とを積算した値以上になればよいので、母材の表面の面粗さの分布は、歯面に作用する荷重の分布と同一の傾向になるようにしてもよく、例えば、図5に示すように中央部を含む所定範囲の第1領域Aを上記条件を満たすように面粗さを粗くし、その第1領域Aの外側の第2領域Bを上記条件を満たす範囲内でかつ第1領域Aの面粗さよりも小さくして形成してもよい。なお、上記のように耐荷重と歯面に作用する荷重との比が、安全率を考慮した値以下になるように定めることが好ましいが、安全率を考慮せずに母材の表面の面粗さの分布を定めてもよい。そのように安全率を考慮しない場合には、耐荷重と歯面に作用する荷重との比が、「1」になり、安全率を考慮した場合には、耐荷重と歯面に作用する荷重との比が、「1」未満になる。
ついで、上述したように算出された母材の表面の面粗さに基づいて、図2に示すように母材1にショットピーニング加工を行う。具体的には、図2に示すように歯幅方向における中央部の面粗さを粗くし、その端部側に向かうにつれて面粗さを小さくする。同様に、歯たけ方向における中央部の面粗さを粗くし、歯先側および歯元側に向かうにつれて面粗さを小さくする。すなわち、トルク伝達時に歯面に作用する荷重が高い領域の母材1の表面の面粗さを、トルク伝達時に歯面に作用する荷重が低い領域の母材1の表面の面粗さよりも粗くする。なお、図2における左右方向は、歯幅方向を示しており、上下方向は歯厚方向を示している。
そのようにショットピーニング加工により面粗さを変化させる方法の一例について説明する。ショットピーニング加工は、ショット粒の運動エネルギーが大きいほど、そのショット粒が衝突する部分の面粗さが粗くなるので、まず、上述したように算出された面粗さに応じて、ショット粒の粒径や速度などを定める。
ついで、ショット粒が噴出されるノズルを歯幅方向および歯たけ方向における中央部に向けてショットピーニング加工を行う。なお、ノズルからの距離が長いほど、母材1の表面に接触する時点でのショット粒の運動エネルギーが小さくなり、ショット粒は、ノズルの先端から母材1の表面に向けて広がりながら噴出される。そのため、母材1の表面におけるノズルが向けられている部分から放射状に離れるにつれてノズルからの距離が長くなるので、ショット粒が衝突する時点での運動エネルギーが小さくなる。その結果、上記のようにノズルを歯幅方向および歯たけ方向における中央部に向けて、すなわち歯面に作用する荷重が最も大きくなる部分に向けてショットピーニング加工を行うことにより、中央部の面粗さが最も粗くなり、歯幅方向または歯たけ方向に離れるにつれて面粗さが小さくなる。このようにショットピーニング加工を行うことにより母材1の表面の面粗さを徐々に変化させることができる。なお、上述したように母材1の表面の面粗さを段階的に変化させる場合や、加工精度を向上させるためには、加工対象とする母材1の表面の一部以外をマスキングしてショットピーニング加工を行えばよい。
そして、上述したようにショットピーニング加工を行った後に、母材1の表面に形成された最も窪んだ部分と最も突出した部分との差(最大高さ粗さ)を測定する。より具体的には、母材1の表面の面粗さが最も粗くなる領域、すなわちトルク伝達時に最も大きな荷重が作用する領域の最大高さ粗さRzを測定する。ついで、なじみ運転などにより歯面の面粗さが相手側の歯面に合わせて是正されたときに母材1の表面が歯面に露出しないように最大高さ粗さよりも厚く被覆層2を形成する。具体的には、母材1の表面に形成された最も窪んだ部分からの厚さが、最大高さ粗さRzよりも厚くなるように被覆層2を形成する。図3には、母材1の表面に被覆層2が形成された状態を模式的に示しており、図3における左右方向が歯幅方向、上下方向が歯厚方向である。なお、図3に示す例では、被覆層2の表面が平滑に形成されているが、通常、被覆層2は極薄く形成されるので、被覆層2の表面は母材1の表面の形状に沿った形状になる。
この被覆層2は、一例として、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜、より具体的には、炭化物生成金属を添加したMe−DLC被膜やイオン化蒸着により形成されるDLC被膜、あるいはアルミニウム溶射やステンレス溶射などにより形成された被膜であり、被覆層2を形成する時間などにより被覆層2の厚さを設定することができる。なお、母材1の材料が、クロムモリブデン鋼鋼材(SCM)やクロム鋼鋼材(SCr)あるいはニッケルクロム鋼鋼材(SNC)である。また、母材1の表面の面粗さを粗くするためにショットピーニング加工を行った場合には、母材1の表面の硬度は、一般的に約700Hv以上になる。したがって、上記のように形成される被覆層2の硬度は、不完全焼き入れ層が母材1の表面に形成されたときの母材1の表面の硬度に相当する150Hv以上で、かつ母材1の表面の硬度(700Hv)よりも低いことが好ましい。
上述したように母材1の表面の面粗さを粗くした後に、母材1の表面の硬度よりも低い硬度の被覆層2を形成することにより、母材1と被覆層2との接触面積を増大させることができるので、母材1と被覆層2との界面部分に生じるせん断方向の荷重を受ける面積を増大させることができる。その結果、母材1と被覆層2との耐剥離性を向上させることができる。また、歯面に作用する荷重に応じて母材1の表面の面粗さを定めることにより、大きな荷重が作用することに伴って低硬度の被覆層の撓み量が大きくなる場合であっても、その接触面積を大きくすることにより、界面部分に生じるせん断方向の荷重を受ける面積を増大させることができるので、より効果的に母材と被覆層とが剥離することを抑制することができる。さらに、母材1にショットピーニング加工を行って母材1の表面の面粗さを粗くすることにより、母材1に圧縮残留応力を同時に付与することができ、歯面強度を向上させることができる。またさらに、歯面に作用する荷重が最も高い位置にノズルを向けてショット粒を吹き付けることにより、一度のショットピーニング加工により母材1の表面全体の面粗さを粗くすることができ、加工工数やコストの増加を抑制することができる。そして、上述したように母材1の最大高さ粗さRzよりも被覆層2を厚く形成することにより、相手側の歯車と噛み合ってトルクを伝達して、被覆層2の表面が摩耗したときに、母材1が被覆層2から露出することを抑制することができる。母材1の硬度は、被覆層2の硬度よりも高いので、上記のように被覆層2から母材1が露出することを抑制することにより、歯面が偏摩耗することを抑制することができる。
上述した例では、母材1にショットピーニング加工を行うときには、その母材1の表面の面粗さに基づいてショット粒の粒径や速度などを定めている。したがって、要求される圧縮残留応力が付与されない場合、または、圧縮残留応力が最大になる深さが、要求される深さにならない場合がある。また、ショットピーニング加工以外の手段により母材1の表面の面粗さを粗くした場合には、母材1に圧縮残留応力が付与されない。そのため、この発明に係る歯車の製造方法では、被覆層2を形成した後に、図1に示すように母材1に圧縮残留応力を付与するためのショットピーニング加工が行われる。なお、図1における左右方向が歯幅方向であり、上下方向が歯厚方向である。
ショットピーニング加工により付与される圧縮残留応力が最大になる深さは、従来知られているようにショット粒の運動エネルギーに応じて変化する。すなわち、ショット粒の粒径が大きい程、圧縮残留応力が最大になる深さが深くなる。したがって、この発明に係る歯車の製造方法では、圧縮残留応力が最大になる深さが、被覆層2よりも深い位置、つまり、母材1の内部になるようにショットピーニング加工を行う。具体的には、母材1に付与するべき圧縮残留応力の深さに被覆層2の厚みを加算した深さに基づいてショット粒の粒径を定めてショットピーニング加工を行う。
なお、母材1に圧縮残留応力を付与するべき深さは、設計により要求される歯車の強度から定められる。また、被覆層2の厚さは、上述したように母材1の最大高さ粗さRzに基づいて定められるので母材1に行うショットピーニング加工の条件に応じて変動するが、被覆層2を形成した後のショットピーニング加工で使用するショット粒の粒径は、0.2mmから1.2mmであることが好ましく、かつ母材1に行うショットピーニング加工で使用するショット粒の粒径よりも大きいことが好ましい。これは、母材1に行うショットピーニング加工により付与された圧縮残留応力の最大値の深さ方向での位置と、被覆層2に行うショットピーニング加工により付与される圧縮残留応力の最大値の深さ方向での位置とが干渉することにより、意図した歯面強度にならないことを抑制するためである。言い換えると、歯面強度が低下することを抑制するためである。
上述したように被覆層2を形成した後にショットピーニング加工を行うことにより、その被覆層2の表面の面粗さが粗くなったとしても、被覆層2の硬度が低いので、相手側の歯車の歯面に合わせて被覆層2の表面の面粗さが迅速に是正され、トルクの伝達効率が低下することを抑制することができる。また、圧縮残留応力が最大値になる深さが母材1の内部になるように、被覆層2にショットピーニング加工を行うことにより歯面強度を向上させることができる。さらに、被覆層2が形成される前に行うショットピーニング加工のショット粒の粒径よりも、被覆層2が形成された後に行うショットピーニング加工のショット粒の粒径を大きくすることにより、圧縮残留応力が最大になる深さが干渉することを抑制することができるので、歯面強度が低下することを抑制することができる。
1…母材、 2…被覆層、 A…(面粗さが粗い)第1領域、 B…(第1領域よりも面粗さが小さい)第2領域。

Claims (4)

  1. 母材の表面に被覆層を設けた歯車の製造方法において、
    前記母材の表面に研削加工または真空浸炭処理を行う第1工程と、
    前記母材の表面の面粗さを粗くする第2工程と、
    前記母材の表面を該母材の表面の硬度よりも低い硬度の材料により被覆する第3工程と
    を備えていることを特徴とする歯車の製造方法。
  2. 前記第2工程における面粗さは、トルク伝達に伴う荷重が大きい領域で前記荷重が小さい領域よりも粗いことを特徴とする請求項1に記載の歯車の製造方法。
  3. 前記第3工程により前記母材を被覆して形成された被覆層の表面に、ショットピーニング加工を行う第4工程を更に備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の歯車の製造方法。
  4. 前記第2工程は、前記母材の表面にショットピーニング加工を行って該母材の表面の面粗さを粗くする工程を含み、
    前記第4工程は、前記第1工程のショットピーニング加工におけるショット粒の粒径よりも、大きい粒径のショット粒を使用したショットピーニング加工を行う工程を含む
    ことを特徴とする請求項3に記載の歯車の製造方法。
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