JP2015184184A - 表面質感評価装置 - Google Patents
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このように構成された本発明においては、揺動手段によって揺動(言い換えると回動)されている対象物の表面を所定時間撮影した画像を画像処理して輝度ヒストグラム時間変化パターンを生成し、この輝度ヒストグラム時間変化パターンと、所定の対象物(例えば評価の対象となっている対象物が模擬しようとしている物)を用いて予め生成された基準輝度ヒストグラム時間変化パターンとを比較することにより、対象物の表面の質感を評価する。そのため、人間が用いる評価手法を模擬した評価を行うことができる、つまり人間の感性評価に近い評価を行うことができる。よって、対象物の表面の質感を的確に評価することができる。
このように構成された本発明においては、頻度が最大となる輝度のばらつき度合いに基づいて対象物の表面の質感を評価するので、例えば対象物の表面における「仕上がり感」を評価することができる。
このように構成された本発明においては、高輝度成分値のばらつき度合いに基づいて対象物の表面の質感を評価するので、例えば、黒の蝋色漆を模した対象物について、この対象物の表面における「漆黒感」を評価することができる。
このように構成された本発明においては、頻度が最大となる輝度の平均値に基づいて対象物の表面の質感を評価するので、例えば対象物の表面における「艶感」を評価することができる。
図1に示すように、本実験では、黒の蝋色漆が塗られた板と、黒の蝋色漆を模すようにPC(ポリカーボネート)やPTT(ポリトリメチレンテレフタレート)などで作られた板とを含む複数の対象物1を、漆の専門家に評価してもらった。本実験では、専門家の視線方向をカメラ2で撮影した。その他にも、図1には図示していなが、専門家の視線軌跡を計測する装置や、専門家の音声を録音する装置や、各種装置とデータの授受を行い所定の処理を行うPC(パーソナルコンピュータ)などを用いた。また、本実験は、蛍光灯の光と曇天時の自然光とが照らされた環境下で行われた。
なお、「艶が上がる」とは、漆独特の黒の艶があることを意味する。また、「白け感」は、漆独特の艶やかな黒色(漆黒)からかけ離れた感じであり、プラスチック感と同義である。この「漆黒」は、黒漆塗りの漆器のように艶やかな黒色を指し、無彩色でありながら、光の反射による微妙な彩りを否定しないものである。また、「顔料感」は、内部の塗料などの存在が感じられることを意味し、突き当たり感と同義である。
このように、本発明の発明者らは、「艶感」、「仕上がり感」及び「漆黒感」を定義して、これらを対象物1を評価するための指標として用いることとした。
なお、輝度ヒストグラム時間変化パターンは、カメラ2によって所定時間撮影された複数フレームの画像の各々について、専門家の焦点近傍の範囲内の画像をグレースケール化(輝度成分化)し、黒を主成分とする範囲(0〜100)の間の輝度成分についての頻度分布を求めることで生成された。また、専門家がじっくり対象物1を観察している時間帯について求められた輝度成分の頻度分布を、輝度ヒストグラム時間変化パターンに用いた。
図2(A)は、黒の蝋色漆が施された対象物1を用いた実験より生成された輝度ヒストグラム時間変化パターンを示し、図2(B)は、PCで作られた対象物1を用いた実験より生成された輝度ヒストグラム時間変化パターンを示し、図2(C)は、PTTで作られた対象物1を用いた実験より生成された輝度ヒストグラム時間変化パターンを示している。
なお、ここでは、黒の蝋色漆の対象物1についての輝度ヒストグラム時間変化パターンと比較的大きな差が生じた、PC及びPTTの対象物1についての輝度ヒストグラム時間変化パターンを例として挙げている。実験では、PC及びPTTの対象物1以外にも、黒の蝋色漆を模した種々の対象物1を用いたものとする。
符号A1に示すように、黒の蝋色漆の対象物1と、それ以外の対象物1とでは、頻度が最大となる輝度の大きさやばらつきに関して差があることがわかる。また、符号A2に示すように、黒の蝋色漆の対象物1と、それ以外の対象物1とでは、高輝度成分値(典型的にはスパイク状の波形を有する)に関して差があることがわかる。
したがって、本発明の発明者らは、頻度が最大となる輝度の平均値、頻度が最大となる輝度の標準偏差、及び高輝度成分値の標準偏差が、「艶感」、「仕上がり感」及び「漆黒感」を示す物理量に相当するものと考えた。具体的には、本発明の発明者らは、頻度が最大となる輝度の平均値を「艶感」を表す物理量として考え、頻度が最大となる輝度の標準偏差を「仕上がり感」を表す物理量として考え、高輝度成分値の標準偏差を「漆黒感」を表す物理量として考えることとした。
図3(A)では、グラフG11、G12、G13は、それぞれ、黒の蝋色漆の対象物1、PCの対象物1及びPTTの対象物1についての頻度が最大となる輝度の時間変化を示している。また、グラフG14、G15、G16は、それぞれ、黒の蝋色漆の対象物1、PCの対象物1及びPTTの対象物1についての頻度が最大となる輝度の平均値を示している。符号B1に示すように、PCの対象物1と黒の蝋色漆の対象物1との頻度が最大となる輝度の平均値が近いため、PCの対象物1から、「艶が上がる」といった「艶感」が得られたものと考えられる。他方で、符号B2に示すように、PTTの対象物1と黒の蝋色漆の対象物1との頻度が最大となる輝度の平均値が離れているため、PTTの対象物1から、黒の蝋色漆の対象物1とは異なる「艶感」が得られたものと考えられる。
図3(B)では、グラフG21、G22は、それぞれ、黒の蝋色漆の対象物1及びPTTの対象物1についての頻度が最大となる輝度の時間変化を示している。また、グラフG23、G24は、それぞれ、黒の蝋色漆の対象物1及びPTTの対象物1についての頻度が最大となる輝度の平均値を示している。また、グラフG25、G26は、それぞれ、黒の蝋色漆の対象物1についての、頻度が最大となる輝度の平均値に標準偏差を加算した値、及び頻度が最大となる輝度の平均値から標準偏差を減算した値を示しており、グラフG27、G28は、それぞれ、PTTの対象物1についての、頻度が最大となる輝度の平均値に標準偏差を加算した値、及び頻度が最大となる輝度の平均値から標準偏差を減算した値を示している。符号B3に示すように、黒の蝋色漆の対象物1では、頻度が最大となる輝度の標準偏差が小さいため、輝度ムラが小さいと言え、「仕上がり感」として「鏡面仕上げ感」が得られたものと考えられる。他方で、符号B4に示すように、PTTの対象物1では、頻度が最大となる輝度の標準偏差が大きいため、「仕上がり感」として「顔料感」が得られたものと考えられる。
図3(C)では、グラフG31、G32、G33は、それぞれ、黒の蝋色漆の対象物1、PCの対象物1及びPTTの対象物1についての、輝度値が所定値以上である高輝度成分値の時間変化を示している。また、グラフG34、G35、G36は、それぞれ、黒の蝋色漆の対象物1、PCの対象物1及びPTTの対象物1についての高輝度成分の標準偏差を示している。グラフG34に示すように、黒の蝋色漆の対象物1では、高輝度成分の標準偏差が小さいために、「漆黒感」として「漆独特の風合い」が得られたものと考えられる。他方で、グラフG35に示すように、PCの対象物1では、高輝度成分の標準偏差が大きいために、「漆黒感」として「白け感」が得られたものと考えられる。
(1)「艶感」:頻度が最大となる輝度の平均値が所定値(最適値)であると「艶が上がる感じ」が得られ、頻度が最大となる輝度の平均値が当該所定地値から離れると「漆とは遠い感じ」が得られる。
(2)「仕上がり感」:頻度が最大となる輝度の標準偏差が小さいと「仕上がり感」として「鏡面仕上げ感」が得られ、頻度が最大となる輝度の標準偏差が大きいと「仕上がり感」として「顔料感」が得られる。
(3)「漆黒感」:高輝度成分値の標準偏差が小さいと「漆黒感」として「漆に近い感じ」が得られ、高輝度成分値の標準偏差が大きいと「漆黒感」として「白け感」が得られる。
図4に示すように、本実施形態による表面質感評価装置10は、表面の質感を評価する対象である対象物(図示せず)の表面に光を照射する照明手段としての光源用ディスプレイ4と、この対象物を保持し、対象物を揺動(言い換えると回動)させるように動作する揺動手段としての揺動機構5と、光源用ディスプレイ4によって光が照射され、且つ揺動機構5によって揺動されている対象物の表面を撮影する撮影手段としてのカメラ6と、種々の処理を行うPC(パーソナルコンピュータ)7と、を有する。
PC7は、CPU、CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのROMやRAMの如き内部メモリを備えるコンピュータ装置である。PC7は、光源用ディスプレイ4及び揺動機構5に制御信号を供給して、光源用ディスプレイ4及び揺動機構5を制御する。また、PC7は、カメラ6の撮影によって生成された画像に対応する画像データ信号を取得して、画像処理を行う。
更に、PC7は、機能的には、カメラ6によって所定時間撮影された画像を画像処理することにより、輝度成分の頻度分布の時間変化を示す輝度ヒストグラム時間変化パターンを生成する生成部7aと、生成手段7aによって生成された輝度ヒストグラム時間変化パターンと、所定の対象物(例えば評価の対象となっている対象物が模擬しようとしている物)を用いて予め生成された、基準となる輝度成分の頻度分布の時間変化を示す基準輝度ヒストグラム時間変化パターンとを比較することにより、対象物の表面の質感を評価する評価部7bと、を有する。
具体的には、対象物11としては、上述した実験と同様に、黒の蝋色漆が塗られた板と、黒の蝋色漆を模すようにPCやPTTなどで作られた板を用いる。対象物11は、揺動機構5のクリップ部分にて保持され、PC7の制御の元で、揺動機構5内のモータ(クリップ部分を回転可能に構成されている)によって矢印C1に示すように揺動される。例えば、揺動機構5は、対象物11を±1度程度揺動させるように動作する。このように揺動機構5によって対象物11を揺動させるのは、専門家が対象物1を評価する際に対象物1をわずかな角度だけ揺動させながら観察していたためである。
また、カメラ6は、揺動機構5に保持された対象物11が撮影範囲に含まれるように配置される。加えて、カメラ6は、焦点に応じた距離だけ、揺動機構5に保持された対象物11と離間して配置される。例えば、カメラ6は、30フレーム/秒で5秒間撮影を行い、時間的に連続する150フレームの画像を生成する。
また、光源用ディスプレイ4は、例えば白色光源であり、自然光と同等の波長及び照度を有する光を対象物11に向けて照射する。1つの例では、光源用ディスプレイ4は、PC7の制御の元で、図6に示すような表示パターンを表示させる。
次いで、ステップS2において、PC7は、対象物11を揺動させるように揺動機構5を制御する。例えば、PC7は、対象物11を±1度程度揺動させるように揺動機構5を制御する。
次いで、ステップS3において、PC7は、カメラ6が撮影により生成した画像を、カメラ6から取得する。
なお、高輝度成分値を規定する所定値は、予め定めた固定値であってもよいし、輝度ヒストグラム時間変化パターンに応じて変動する値であってもよい。後者の変動する値としては、例えば、頻度が最大となる輝度の平均値よりも少なくとも大きな値(頻度が最大となる輝度の平均値に対して一定値を加算した値など)を用いるとよい。
例えば、評価手段7bは、輝度ヒストグラム時間変化パターンから求めた、頻度が最大となる輝度の平均値が所定範囲内である場合には、「艶感」として「艶が上がる感じ」が得られると評価する。これに対して、評価手段7bは、輝度ヒストグラム時間変化パターンから求めた、頻度が最大となる輝度の平均値が所定範囲外である場合には、「艶感」として「漆とは遠い感じ」が得られると評価する。ここで、頻度が最大となる輝度の平均値を判定するための所定範囲は、基準輝度ヒストグラム時間変化パターンにおいて頻度が最大となる輝度の平均値に基づいて設定される。例えば、基準輝度ヒストグラム時間変化パターンにおける頻度が最大となる輝度の平均値に対して一定値を加算及び減算することで得られた範囲が用いられる。このような所定範囲を用いることで、求められた頻度が最大となる輝度の平均値と、基準輝度ヒストグラム時間変化パターンにおける頻度が最大となる輝度の平均値とを比較する。
また、評価手段7bは、例えば、輝度ヒストグラム時間変化パターンから求めた、頻度が最大となる輝度の標準偏差が所定値未満である場合には、「仕上がり感」として「鏡面仕上げ感」が得られると評価する。これに対して、評価手段7bは、輝度ヒストグラム時間変化パターンから求めた、頻度が最大となる輝度の標準偏差が所定値以上である場合には、「仕上がり感」として「顔料感」が得られると評価する。ここで、頻度が最大となる輝度の標準偏差を判定するための所定値は、基準輝度ヒストグラム時間変化パターンにおいて頻度が最大となる輝度の標準偏差に基づいて設定される。例えば、基準輝度ヒストグラム時間変化パターンにおける頻度が最大となる輝度の標準偏差に対して一定値を加算することで得られた値が用いられる。このような所定値を用いることで、求められた頻度が最大となる輝度の標準偏差と、基準輝度ヒストグラム時間変化パターンにおける頻度が最大となる輝度の標準偏差とを比較する。
また、評価手段7bは、例えば、輝度ヒストグラム時間変化パターンから求めた高輝度成分値の標準偏差が所定値未満である場合には、「漆黒感」として「漆に近い感じ」が得られると評価する。これに対して、評価手段7bは、輝度ヒストグラム時間変化パターンから求めた高輝度成分値の標準偏差が所定値以上である場合には、「漆黒感」として「白け感」が得られると評価する。ここで、高輝度成分値の標準偏差を判定するための所定値は、基準輝度ヒストグラム時間変化パターンにおける高輝度成分値の標準偏差に基づいて設定される。例えば、基準輝度ヒストグラム時間変化パターンにおける高輝度成分値の標準偏差に対して一定値を加算することで得られた値が用いられる。このような所定値を用いることで、求められた高輝度成分値の標準偏差と、基準輝度ヒストグラム時間変化パターンにおける高輝度成分値の標準偏差とを比較する。
2 カメラ
4 光源用ディスプレイ
5 揺動機構
6 カメラ
7 PC(パーソナルコンピュータ)
10 表面質感評価装置
11 対象物
Claims (4)
- 対象物の表面の質感を評価する表面質感評価装置であって、
対象物の表面に光を照射する照明手段と、
上記対象物を保持し、この対象物を揺動させるように動作する揺動手段と、
上記照明手段によって光が照射され、且つ上記揺動手段によって揺動されている対象物の表面を撮影する撮影手段と、
上記撮影手段によって所定時間撮影された画像を画像処理することにより、輝度成分の頻度分布の時間変化を示す輝度ヒストグラム時間変化パターンを生成する生成手段と、
上記生成手段によって生成された輝度ヒストグラム時間変化パターンと、所定の対象物を用いて予め生成された、基準となる輝度成分の頻度分布の時間変化を示す基準輝度ヒストグラム時間変化パターンとを比較することにより、上記対象物の表面の質感を評価する評価手段と、
を有することを特徴とする表面質感評価装置。 - 上記評価手段は、上記生成手段によって生成された輝度ヒストグラム時間変化パターンに基づいて、頻度が最大となる輝度のばらつき度合いを示す値を求め、このばらつき度合いを示す値と、上記基準輝度ヒストグラム時間変化パターンにおいて頻度が最大となる輝度のばらつき度合いを示す値とを比較することにより、上記対象物の表面の質感を評価する、請求項1に記載の表面質感評価装置。
- 上記評価手段は、上記生成手段によって生成された輝度ヒストグラム時間変化パターンに基づいて、輝度値が所定値以上である高輝度成分値のばらつき度合いを示す値を求め、このばらつき度合いを示す値と、上記基準輝度ヒストグラム時間変化パターンにおいて輝度値が上記所定値以上である高輝度成分値のばらつき度合いを示す値とを比較することにより、上記対象物の表面の質感を評価する、請求項1又は2に記載の表面質感評価装置。
- 上記評価手段は、上記生成手段によって生成された輝度ヒストグラム時間変化パターンに基づいて、頻度が最大となる輝度の平均値を求め、この平均値と、上記基準輝度ヒストグラム時間変化パターンにおいて頻度が最大となる輝度の平均値とを比較することにより、上記対象物の表面の質感を評価する、請求項1乃至3の何れか1項に記載の表面質感評価装置。
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