JP2015184018A - 赤外吸収スペクトル作成方法、検量線作成方法、ならびにこれらを用いた溶液濃度定量方法および溶液濃度測定装置 - Google Patents

赤外吸収スペクトル作成方法、検量線作成方法、ならびにこれらを用いた溶液濃度定量方法および溶液濃度測定装置 Download PDF

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翔太 泉
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Abstract

【課題】複数の成分が含まれる多成分混合溶液に含まれる各成分物質の濃度を赤外線吸収スペクトルの測定結果から定量するに際し、各成分物質に適した条件で赤外線吸収スペクトルを測定することで精度よく濃度を定量する方法を提供する。【解決手段】既知の物質を1種類以上含み、これら既知の物質に由来する特性吸収帯が2つ以上存在する溶液中の、これら既知の物質の濃度を赤外線の吸光度情報から測定するに際し、それぞれの既知の物質に適した条件で測定した赤外線吸収スペクトルから作成した2次スペクトル情報にケモメトリクスを適用して得られた検量線を用いて各既知の物質の濃度を算出する。【選択図】図1

Description

本発明は、赤外分光分析により多成分混合溶液に含まれる各成分物質の濃度を精度よく測定する技術に関する。
分光分析は、成分の定量的および定性的な特性を非破壊的に調べる方法である。
赤外吸収スペクトルは,それぞれの化合物に固有な吸収ピークのパターンを示し,事前に既知の物質の吸収ピークのパターンを登録しておけば各種物質の定性、定量分析ができることから、赤外分光分析は特に有機化合物の分析に適している。
また、ランベルト−ベールの法則により、溶液の吸光度Aはその光路長Lおよび濃度Cに比例することが知られている。溶液に入射する一定波長の光の強さをIとし、透過してくる光の強さをIとするとき、 I/I=T を透過率と言う。この透過率Tの常用対数をとり、その負値、すなわち −logT=−log(I/I)=log(I/I)=A を吸光度とすると、吸光度A、濃度C、光路長Lの関係は次式で表わされる。
(式1) A=μCL
ここで、μは吸光係数と呼ばれる物質ごとに固有の定数である。
この関係式を利用して、赤外吸収スペクトルの吸収ピークにおける吸光度の値から溶液中の物質の濃度を決定することができる。つまり、既知濃度の溶液で、吸収ピークにおける吸光度と濃度の関係を事前に取得しておき、未知濃度溶液の吸収ピークにおける吸光度を測定することにより、未知濃度の溶液の濃度を知ることができる。
赤外分光分析では、溶液中の濃度を測定する際には、濃度変化にともなう吸収ピークにおける透過率Tの変化が大きくなるように測定環境を整えておくことが重要であり、吸光度Aが0.43付近(透過率Tでは0.37付近)になるようにすることが望ましいとされている。
このような観点から、光路長を可変とすることで注目する吸収ピークの吸光度が0.43付近となる赤外吸収スペクトルを得ることができる赤外分光分析装置が提案されている(特許文献1参照)。また、必要な光路長を確保することによって小型化しても測定精度が確保された赤外分光分析装置が提案されている(特許文献2参照)。
また、赤外分光分析では、定量、定性分析を行うためにいわゆるケモメトリクスと呼ばれる手法が知られている。これは多変量解析手法や統計解析手法を用いて化学分析を行う手法で、パーソナルコンピュータの発達とともに発展してきた。最近の赤外分光分析では主成分(回帰)分析あるいはPLS回帰分析といった多変量解析手法を用いて行われている(特許文献3)。
特開平10−54761号公報 特開2001−221743号公報 特開2000−131230号公報
複数の成分が含まれる多成分混合溶液に含まれる各成分物質の濃度をそれぞれ測定しようとした場合、いずれかひとつの物質に適した吸光度になるように光路長を設定しても、他の物質にとってその光路長が適切であるかどうか不明で、ひとつの測定条件が他のすべての成分物質に適した条件であるとは限らない。したがって、他の物質については、吸光度から求まる濃度は誤差が大きい値となることがある。
また、ケモメトリクスは、前記ランベルト−ベールの法則を多波長・多成分に拡張し、定量目的の成分以外の吸収ピークも含めて濃度変化と吸光度変化の関係を統計的解析手法でとらえることが可能であるため、多成分混合溶液中の各物質の正確な検量(キャリブレーション)をおこなうのに優れた手法ではあるが、目的の成分のシグナル(信号)の大きさ(SN比)を改善するものではないので、吸収ピークにおける吸光度変化の測定精度を保証するものではない。
本発明は、複数の成分が含まれる多成分混合溶液中の各成分物質に適した測定条件で赤外吸収スペクトルを測定することに加えて、ケモメトリクスの手法を用いることにより、従来技術よりも各成分物質の濃度を精度よく測定することが可能な濃度定量方法および溶液濃度測定装置を提供することを目的とする。
本願第1の発明は、既知の物質を1種類以上含み、これら既知の物質に由来する特性吸収帯が2つ以上存在する溶液の赤外吸収スペクトルを作成する方法であって、
a1. 前記既知の物質に由来する特性吸収帯のうちからスペクトル情報を得たい特性吸収帯を2つ以上選択し、
a2. 前記a1で選択した特性吸収帯のうちから1つの特性吸収帯を選択し、
a3. 前記a2で選択した特性吸収帯が由来する既知の物質に対して任意の目標とする濃度値を設定し、
a4. 前記a3の既知の物質の濃度が前記a3で設定した濃度値であるときに、前記a2で選択した特性吸収帯での赤外線の吸収ピークの吸光度が0.2〜0.8となる光路長を設定し、
a5. 前記a4で設定した光路長で前記溶液に赤外線を通過させて溶液の赤外吸収スペクトルを測定して、前記a2で選択した特性吸収帯のスペクトル情報を得て、
a6. 前記a2〜a5の操作を前記a1で選択した特性吸収帯の全てについて行い、得られたスペクトル情報を合成して2次スペクトルを作成する。
本願第1の発明の赤外吸収スペクトル作成方法において、
前記a3で設定する濃度値を、この濃度値が設定される前記既知の物質の想定され得る濃度変動範囲の代表値または制御目標値とするのが好ましく、
前記a4で設定される光路長を、選択できる複数の光路長の中から前記吸光度が最も0.43に近い値となる光路長に設定するのが好ましく、
前記a5における赤外線を、波数領域4000cm−1から400cm−1の中赤外線とするのが好ましい。
本願第2の発明は、既知の物質を1種類以上含み、これら既知の物質に由来する特性吸収帯が2つ以上存在する溶液の、これら既知の物質の濃度を測定するための検量線を作成する方法であって、
b1. 前記既知の物質のそれぞれの濃度を、想定され得る濃度変動範囲内の任意の濃度にした調整液を作成し、
b2. 前記既知の物質に由来する特性吸収帯のうちからスペクトル情報を得たい特性吸収帯を2つ以上選択し、
b3. 前記b2で選択した特性吸収帯のうちから1つの特性吸収帯を選択し、
b4. 前記b3で選択した特性吸収帯が由来する既知の物質に対して任意の目標とする濃度値を設定し、
b5. 前記b4の既知の物質の濃度が前記b4で設定した濃度値であるときに、前記b3で選択した特性吸収帯での赤外線の吸収ピークの吸光度が0.2〜0.8となる光路長を設定し、
b6. 前記b5で設定した光路長で前記調整液に赤外線を透過させて調整液の赤外吸収スペクトルを測定して、前記b3で選択した特性吸収帯のスペクトル情報を得て、
b7. 前記b3〜b6の操作を前記b2で選択した特性吸収帯の全てについて行い、得られたスペクトル情報を合成して2次スペクトルを作成し、
b8. 前記想定され得る濃度変動範囲内で前記既知の物質のそれぞれの濃度を変更した複数の調整液を作成し、これら各調整液で前記b2〜b7の操作を行い複数の2次スペクトルを得て、
b9. 前記b8で得られた複数の2次スペクトルと、各2次スペクトルを得た際の調整液中の前記各既知の物質の濃度値にケモメトリクスを適用して、前記既知の物質ごとに検量線を作成する。
本願第2の発明の検量線作成方法において、
前記b5で設定される光路長を、選択できる複数の光路長の中から前記吸光度が最も0.43に近い値となる光路長に設定するのが好ましく、
前記b6における赤外線を、波数領域4000cm−1から400cm−1の中赤外線とするのが好ましい。
本願第3の発明は、既知の物質を1種類以上含み、これら既知の物質に由来する特性吸収帯が2つ以上存在する溶液中の、これら既知の物質の濃度を赤外線の吸光度情報から測定するに際し、本願第2の発明の検量線作成方法で作成した検量線を用いて前記各既知の物質の濃度を算出する溶液濃度定量方法である。
本願第4の発明は、既知の物質を1種類以上含み、これら既知の物質に由来する特性吸収帯が2つ以上存在する溶液中の、これら既知の物質の濃度を赤外線のスペクトル情報から測定する溶液濃度測定装置であって、
赤外線源と、
赤外線検出手段と、
前記赤外線源と前記赤外線検出手段との間に配置されて前記溶液を収容し、赤外線源から照射された赤外線が溶液を通過する光路長を変更できる測定セルと、
前記測定セルを通過した赤外線から赤外吸収スペクトルを作成するスペクトル作成手段と、
作成された赤外吸収スペクトルのスペクトル情報を用いて2次スペクトルを作成する2次スペクトル作成手段と、
作成された2次スペクトルに含まれる特性吸収帯の吸収ピークの値と検量線とを対比して前記各既知の物質の濃度を定量する手段とを備え、
前記2次スペクトル作成手段は、
c1. 前記既知の物質に由来する特性吸収帯のうち、スペクトル情報を得たい2つ以上の特性吸収帯が設定されており、
c2. 前記測定セルの光路長を、前記c1で設定されている特性吸収帯のうちの1つの特性吸収帯に対応する光路長にし、
前記光路長は、この光路長が対応する特性吸収帯に由来する既知の物質の濃度が特定の濃度値であるときに、この光路長が対応する特性吸収帯での赤外線の吸収ピークの吸光度が0.2〜0.8となる長さであり、
前記特定の濃度値は、前記光路長が対応する特性吸収帯が由来する既知の物質に対して設定された想定され得る濃度変動範囲の代表値または制御目標値であり、
c3. 前記測定セルの光路長を前記c2で選択された光路長に調整するか、または前記c2で選択された光路長に最も近い光路長に調整し、
c4. 前記c3で調整された光路長で測定された赤外吸収スペクトルを前記スペクトル作成手段から得て、前記c2で選択した光路長が対応する特性吸収帯のスペクトル情報を得て、
c5. 前記c2〜c4の操作を前記c1で設定されている全ての特性吸収帯に対応する光路長について行い、得られたスペクトル情報を合成して2次スペクトルを作成する。
本願第5の発明は、既知の物質を1種類以上含み、これら既知の物質に由来する特性吸収帯が2つ以上存在する溶液中の、これら既知の物質の濃度を赤外線のスペクトル情報から測定する溶液濃度測定装置であって、
赤外線源と、
赤外線検出手段と、
前記赤外線源と前記赤外線検出手段との間に配置されて前記溶液を収容し、赤外線源から照射された赤外線が溶液を通過する光路を複数有し、これら各光路の光路長が異なっている測定セルと、
前記測定セルを通過した赤外線から赤外吸収スペクトルを作成するスペクトル作成手段と、
作成された赤外吸収スペクトルのスペクトル情報を用いて2次スペクトルを作成する2次スペクトル作成手段と、
作成された2次スペクトルに含まれる特性吸収帯の吸収ピークの値と検量線とを対比して前記各既知の物質の濃度を定量する手段とを備え、
前記2次スペクトル作成手段は、
d1. 前記既知の物質に由来する特性吸収帯のうち、スペクトル情報を得たい2つ以上の特性吸収帯が設定されており、
d2. 前記c1で設定されている特性吸収帯のうちの1つの特性吸収帯に対応する光路長を選択し、
前記光路長は、この光路長が対応する特性吸収帯に由来する既知の物質の濃度が特定の濃度値であるときに、この光路長が対応する特性吸収帯での赤外線の吸収ピークの吸光度が0.2〜0.8となる長さであり、
前記特定の濃度値は、前記光路長が対応する特性吸収帯が由来する既知の物質に対して設定された想定され得る濃度変動範囲の代表値または制御目標値であり、
d3. 前記測定セルの前記d2で選択された光路長の光路、または前記測定セルの前記d2で選択された光路長に最も近い光路で測定された赤外吸収スペクトルを前記スペクトル作成手段から得て、前記d2で選択された光路長が対応する特性吸収帯のスペクトル情報を得て、
d4. 前記d2とd3の操作を前記d1で設定されている全ての特性吸収帯に対応する光路長について行い、得られたスペクトル情報を合成して2次スペクトルを作成する。
ここで、光路を複数有する測定セルには、無段階の光路長をもつ形状の測定セルも含まれる。
本願第4の発明の溶液濃度測定装置において、赤外線源から照射された赤外線を測定セル中の溶液の液面を通る光路を通過させ、赤外線が溶液を通過する光路長の変更を測定セル中の溶液の液面高さを変えることで行ってもよい。
本願第4の発明の溶液濃度測定装置において、測定セルが複数の異なる光路長の光路を備え、赤外線が溶液を通過する光路長の変更を、測定セルと赤外線の光路との位置関係を相対的に変えることで行い各光路長に対応する複数の赤外吸収スペクトルを作成してもよい。
本願第4の発明の溶液濃度測定装置において、測定セルが複数の異なる光路長の光路を備え、これら光路のいずれかを通過した複数の赤外線を同時に検出できる複数の赤外線検出手段を備えることで、測定セルの各光路長に対応した赤外吸収スペクトルを同時に作成してもよい。ここで、測定セルを通過する複数の赤外線は、複数の赤外線源からの赤外線を照射したり、1つの赤外線源から照射された赤外線を分光することで実現できる。
本願第4および第5の発明の溶液濃度測定装置において、測定セルが透過型セルであり、透過型セルが多段階の光路長の光路を備えてもよい。ここで、透過型セルは、多段階の光路長の光路を備えた隔室で構成されていてもよい。
本願第4および第5の発明の溶液濃度測定装置において、測定セルが透過型セルであり、透過型セルが無段階の光路長の光路を備えもとよい。
本願第4の発明の溶液濃度測定装置において、測定セルを透過型セルとし、赤外線源から照射された赤外線を透過型セルの内部を往復させる鏡を備え、赤外線が溶液を通過する光路長の変更を、赤外線が透過型セルの内部を通過する回数を変更することで行ってもよい。
本願発明における「既知の物質」とは濃度を測定したい物質のことであり、溶液中に含まれる全ての既知の物質のことを意味しているのではない。また、「既知の物質を1種類以上含み、これら既知の物質に由来する特性吸収帯が2つ以上存在する」とは、(i)濃度を測定したい既知の物質が2種以上あり、これら既知の物質がそれぞれ1つ以上の特性吸収帯を有する場合、または (ii)濃度を測定したい既知の物質が1つあり、この既知の物質が2つ以上の特性吸収帯を有する場合、を意味する。
本願発明における「特性吸収帯」とは、多成分混合溶液中の各物質の分子が有する官能基の種類に対応した特徴的な吸収ピークが現れる赤外吸収スペクトルの特定波数領域をいう。
本願発明における「スペクトル情報」とは、特性吸収帯の吸収ピークが少なくともひとつは含まれる赤外吸収スペクトルから得られる吸光度と波数との関係をいう。
本願発明における「2次スペクトル情報」とは、複数の光路長で取得した赤外吸収スペクトルから、赤外線分光分析の感度が良い条件で測定された各物質の吸収ピークのスペクトル情報を得て、前記スペクトル情報を合成して新たに得られるスペクトル情報である。
本願発明における「ケモメトリクス」とは、化学計測分野において多変量解析を用いて最適情報を得る学問分野で、1つのサンプルに対し行列を用いて複数の変量を扱い、多成分混合系における目的物の定量や多数サンプルの分類、差異分析を行う手法である。目的物の定量における主な手法に、MLR(線形重回帰)法、PCR(主成分回帰)法、PLS(部分最小2乗)法などがある。
本発明の赤外吸収スペクトル作成方法によれば、赤外吸収スペクトルにおいて複数の特性吸収帯の吸収ピークをもつ多成分混合溶液であって、各吸収ピークに最適な光路長が異なる場合であっても、赤外分光分析の感度が良い条件で各吸収ピークのスペクトル情報を得ることができる。
また、本発明の多成分混合溶液の検量線作成方法によれば、各成分物質の濃度が変化した複数水準の多成分混合溶液(調整液)において、赤外分光分析の感度が良い条件で取得したスペクトル情報と、同スペクトル情報に対応した濃度情報にケモメトリクスを適用して高精度な定量が期待できる検量線を作成できる。
また、本発明の多成分混合溶液の濃度定量方法によれば、赤外吸収スペクトルにおいて複数の特性吸収帯の吸収ピークをもつ多成分混合溶液であって、各吸収ピークに最適な光路長が異なる場合であっても、多成分混合溶液に含まれる各成分物質の濃度を精度よく測定することができる。
また、本発明の多成分混合溶液の濃度測定装置によれば、多成分混合溶液に含まれる各成分物質の濃度測定の高精度化が期待できる。また、手動で透過セルの光路長を変更する作業と赤外吸収スペクトルを取得する作業を繰り返さずとも、自動で上記測定を実施できる。
本発明の溶液濃度測定装置の概略図である。 測定セルの一実施形態であるフローセルの概略図である。 測定セルの一実施形態であるステップセルの概略図である。 測定セルの一実施形態である個別セルの概略図である。 測定セルの一実施形態であるスロープセルの概略図である。 測定セルの一実施形態であるミラー付きセルの概略図である。 物質A、物質B、物質Cが含まれた多成分混合溶液の赤外吸収スペクトルの例(1)である。 赤外分光分析における吸光度と感度の関係を示す感度曲線である。 物質A、物質B、物質Cが含まれた多成分混合溶液の赤外吸収スペクトルの例(2)である。 物質A、物質B、物質Cが含まれた多成分混合溶液の赤外吸収スペクトルの例(3)である。 物質A、物質B、物質Cが含まれた多成分混合溶液の赤外吸収スペクトルの例(4)である。 物質A、物質B、物質Cが含まれた多成分混合溶液の赤外吸収スペクトルから作成した2次スペクトル情報の例である。 光路長1.0mmのスペクトル情報のみで作成した物質A、物質C、物質Cの検量結果である。 光路長0.3mmのスペクトル情報のみで作成した物質A、物質C、物質Cの検量結果である。 光路長1.0mmと光路長0.3mmのスペクトル情報から合成した2次スペクトル情報を用いて作成した物質A、物質C、物質Cの検量結果である。
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に本発明の濃度測定装置の概略図を示しており、赤外線源11、分光器12、測定セル13、赤外線を検出するとともに信号を検出する赤外線検出器14、信号を分析する分析装置15などから構成される。測定セル13に被測定液16が収容され、後ほど説明するように、測定セル13の光路長Lが調節可能に構成されている。分光器12から入射光17が測定セル13に入り、被測定液16を透過した透過光18が赤外線検出14で電気信号へと変換される。
図2は測定セル13の一実施形態であるフローセル21の概略図である。被測定液16が注水口22からフローセル21に入り、排水口23から排出される。液面の高さHは、注水口22と排水口23における測定液16の流量を調節することで変化する。フローセル21に照射される入射光17は、液面の高さHの距離だけ被測定液を通過し、透過光18としてフローセル21から出てくる。このとき、液面の高さHは光路長Lに等しく、液面の高さHを変化させることで光路長Lが調節可能となる。
図3は測定セル13の一実施形態であるステップセル31の概略図である。ステップセル31は、セル幅Wが異なる多段階の光路を有している。被測定液16がステップセル31内に収容され、入射光17と透過光18の光軸の位置とステップセル31がX1あるはX2の方向に相対的に移動することで、予め設定されたセル幅Wに応じて光路長Lが調整可能となる。このとき、セル幅Wと光路長Lは等しい。
図4は測定セル13の一実施形態である個別セル41の概略図である。個別セル41はセル幅Wが異なる複数のセルを有している(第1のセル42、第2のセル43、第3のセル44、第4のセル45)。各々のセルに被測定液16が収容され、入射光17と透過光18の光軸上に設置されるセルを切り替えることで、予め設定されたセル幅Wに応じて光路長Lが調整可能となる。このとき、セル幅Wと光路長Lは等しい。
図5は測定セル13の一実施形態であるスロープセル51の概略図である。スロープセル51は、無段階でセル幅Wが変化する光路を有している。被測定液16がスロープセル51内に収容され、入射光17と透過光18の光軸の位置とスロープセル51がX1あるはX2の方向に相対的に移動することで、無段階でセル幅Wを変更でき、光路長Lが調整可能となる。このとき、セル幅Wと光路長Lは等しい。
図6は測定セル13の一実施形態であるミラー付セル61の概略図である。第1のミラー62と第2のミラー63の間に測定セル13が設置される。被測定液16が測定セル13内に収容され、入射光17が第1のミラー62を通して測定セル13に照射される。測定セル13を通過した光は第2のミラーで反射し、再び測定セル13に照射される。このように第1のミラー62と第2のミラー3で反射を繰り返し、測定セルを複数回通過した光が透過光18として出てくる。このときの光路長Lは反射角が十分小さい場合、(反射回数+1)×セル幅Wとおおむね等しく、反射角が大きい場合はセル幅W×(2+(反射回数―1)/COSθ)と等しい。反射回数を変化させることで光路長Lが調整可能となる。
このように、本発明の実施の形態は多成分混合溶液の赤外吸収スペクトルを測定するに際し、光路長Lを任意の長さに調整できる。また、多成分混合溶液に含まれる物質のそれぞれの吸収ピークの吸光度Aが0.2から0.8になるように光路長Lを適切に設定することにより、高感度で測定されたそれぞれの吸収ピークのスペクトル情報を得ることができる。
この高感度で測定された吸収ピークのスペクトル情報から2次スペクトル情報を作成し、ケモメトリクスを適用することで多成分混合溶液に含まれる各成分物質の高精度な定量が期待できる検量線を得ることができる。
さらに、濃度未知の多成分混合溶液の赤外吸収スペクトルを各物質の特性吸収帯の吸収ピークごとに設定した光路長で測定し、そこから得られたスペクトル情報から2次スペクトル情報を合成し、前記検量線を適用することで、各物質の濃度を高精度に測定することができる。
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
本発明について実施例を用い、図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
[赤外線吸収スペクトルの作成]
最初に赤外吸収スペクトルの作成について説明する。
図7は、物質A、物質B、物質Cが含まれた多成分混合溶液を測定セルの光路長を1.0mmに設定して測定した赤外吸収スペクトルの例(1)である。横軸は波数を表わし、縦軸はその波数における多成分混合溶液の吸光度を表わしている。各物質の濃度の代表値は物質Aが55質量%、物質Bが12.5質量%、物質Cが7.5質量%であり、物質Aは50〜60質量%の範囲、物質Bは10〜15質量%の範囲、物質Cは5.5〜10質量%の範囲でそれぞれ濃度変動することがわかっている。
図7は、各物質の濃度が代表値(物質Aが55質量%、物質Bが12.5質量%、物質Cが7.5質量%)である多成分混合溶液を測定して得られた赤外吸収スペクトルである。
図7には、物質A、物質B、物質Cに固有な特性吸収帯を示している。A1とA2は物質Aに固有な特性吸収帯でA1は1000cm−1付近、A2は800cm−1付近に吸収ピークがある。B1とB2は物質Bに固有な特性吸収帯でB1は2600cm−1付近、B2は1600cm−1付近に吸収ピークがある。C1は物質Cに固有な特性吸収帯で1700cm−1付近に吸収ピークがある。
赤外分光分析では、透過率Tと感度Gの関係 G=−(TlnT)および吸光度Aと透過率Tとの関係 A=−logT から、図8に示す感度曲線が得られる。横軸は吸光度Aを表わし、左縦軸はある吸光度における透過率、右縦軸はある吸光度における感度を表わしている。
ここで感度Gとは、濃度変動(吸光度Aに比例)に対する透過率Tの変化率であり、感度Gの値が大きいほど濃度が変動した際に透過率Tが大きく変化する。すなわち、濃度変化に対する透過率Tの変化がなるべく大きい方が外乱に影響され辛いため、透過率Tから計算した吸光度Aを用いて濃度を定量する際には、感度Gが大きい方が好ましい。
また、この感度Gの逆数である−(TlnT)−1と透過率Tの関係は、Twyman−othianの誤差曲線として一般に知られている。すなわち、感度Gが大きいほど透過率Tの値を読み取る際に想定される誤差が小さいということを意味する。
図8からわかるように、吸光度が0.43で感度が最大となる。したがって、吸光度が0.43となるような測定条件に設定するのが最もよいが、機械的な設計条件の制約から、必ずしも0.43となる光路長に設定できないこともあるので、この場合には、選択できる光路長の中から、吸光度が最も0.43に近い値となる光路長を選択するのがよい。少なくとも吸光度の変動の範囲が0.2〜0.8となるように設計すれば、最大感度の80%以上の感度を得られるので、吸収ピークを利用して十分精度のよいスペクトル情報が得られると期待できる。
図7に示す赤外吸収スペクトルでは、吸収ピークB2と吸収ピークC1は吸光度が0.2から0.8の範囲におさまっており、これらの2つの吸収ピークは感度よく測定でき、得られるスペクトル情報は精度の高いものとなる。
一方、吸収ピークA1、吸収ピークA2、および吸収ピークB1は、いずれも吸光度が0.8を越えた値となっており、これら3つの吸収ピークを利用すると感度は低下するので、スペクトル情報の精度は高い結果とはならない。
図7では、光路長が1.0mmと設定したが、これより小さく設定して、吸収ピークB2と吸収ピークC1の吸光度を0.43に近い値になるように設定することによって、吸収ピークB2と吸収ピークC1のスペクトル情報の精度を高めることができる。
図9は、同じ組成の多成分混合溶液を測定用セルの光路長を0.3mmに設定して測定した赤外吸収スペクトルの例(2)である。
図9において、吸収ピークB2と吸収ピークC1の吸光度が0.2を下回る値となったが、吸収ピークA1、吸収ピークA2、および吸収ピークB1は、いずれも吸光度が0.2から0.8の範囲に入っている。吸収ピークB2と吸収ピークC1の感度は低く、スペクトル情報の精度は低い結果となるが、吸収ピークA1、吸収ピークA2、および吸収ピークB1は感度が高く、スペクトル情報の測定精度は高い結果が得られる。
このように、測定セルの光路長をそれぞれの吸収ピークの吸光度が0.2から0.8になるように適切に設定することにより、それぞれの吸収ピークのスペクトル情報を高い感度で得ることができる。
つまり、既知の物質を1種類以上含み、これら既知の物質に由来する特性吸収帯が2つ以上存在する溶液の赤外吸収スペクトルは以下の手順で作成するのがよい。
a1. 前記既知の物質に由来する特性吸収帯のうちからスペクトル情報を得たい特性吸収帯を2つ以上選択し、
a2. 前記a1で選択した特性吸収帯のうちから1つの特性吸収帯を選択し、
a3. 前記a2で選択した特性吸収帯が由来する既知の物質に対して任意の目標とする濃度値を設定し、
a4. 前記a3の既知の物質の濃度が前記a3で設定した濃度値であるときに、前記a2で選択した特性吸収帯での赤外線の吸収ピークの吸光度が0.2〜0.8となる光路長を設定し、
a5. 前記a4で設定した光路長で前記溶液に赤外線を通過させて溶液の赤外吸収スペクトルを測定して、前記a2で選択した特性吸収帯のスペクトル情報を得て、
a6. 前記a2〜a5の操作を前記a1で選択した特性吸収帯の全てについて行い、得られたスペクトル情報を合成して2次スペクトルを作成する。
ここで、手順a5で照射する赤外線は波長領域が4000cm−1から400cm−1の中赤外線を使うのがよい。 具体的に本実施例をこの手順に当てはめると次のようになる。
「既知の物質」は物質A、物質Bおよび物質Cであり、「既知の物質に由来する特性吸収帯」は吸収ピークA1、吸収ピークA2、吸収ピークB1、吸収ピークB2および吸収ピークC1をそれぞれ含む波長領域である。溶液が物質A、物質B、物質C以外の既知の物質を含んでいてもよい。
(手順a1) 先ず、スペクトル情報を得たい2つ以上の特性吸収帯を選択する。具体的には、吸収ピークA1、吸収ピークA2、吸収ピークB1、吸収ピークB2および吸収ピークC1をそれぞれ含む波長領域を選択する。
(手順a2) 次いで、手順a2で選択した特性吸収帯から1つの特性吸収帯を選択する。例えば吸収ピークA1を含む波長領域を選択する。
(手順a3) 次いで、吸収ピークA1を含む波長領域が由来する既知の物質である物質Aの目標とする濃度値を設定する。具体的には55質量%を設定する。
(手順a4) 次いで、物質Aが55質量%であるときに、吸収ピークA1を含む波長領域での赤外線の吸収ピークの吸光度が0.2〜0.8となる光路長を設定する。具体的には0.3mmを設定する。
(手順a5) 次いで、光路長0.3mmで溶液の赤外吸収スペクトルを測定し、吸収ピークA1を含む波長領域のスペクトル情報を得る。
(手順a6) a1〜a5の手順を、残りの吸収ピークA2、吸収ピークB1、吸収ピークB2および吸収ピークC1をそれぞれ含む波長領域についても同様に行う。具体的には以下(i)〜(iv)のように設定して、それぞれ赤外吸収スペクトルを測定してスペクトル情報を得て、それらを合成して2次スペクトルを作成する。
(i) 吸収ピークA2を含む波長領域のスペクトル情報を得る際は、物質Aの目標濃度値を55質量%に設定し、光路長を0.3mmに設定する。
(ii) 吸収ピークB1を含む波長領域のスペクトル情報を得る際は、物質Bの目標濃度値を12.5質量%に設定し、光路長を0.3mmに設定する。
(iii) 吸収ピークB2を含む波長領域のスペクトル情報を得る際は、物質Bの目標濃度値を12.5質量%に設定し、光路長を1.0mmに設定する。
(iv) 吸収ピークC1を含む波長領域のスペクトル情報を得る際は、物質Cの目標濃度値を7.5質量%に設定し、光路長を1.0に設定する。
[検量線の作成、濃度の定量]
次に、検量線の作成について説明する。前記した各物質に想定され得る濃度変動範囲で、物質Aの濃度、物質Bの濃度、および物質Cの濃度、それぞれを変えた多成分混合溶液(調整液)を準備する。準備した調整液の一覧を表1に示す。
Figure 2015184018
これらの調整液について、測定セルの光路長を1.0mmと0.3mmの2通りに設定して測定する。
図10は、物質A、物質B、および物質Cが含まれた調整液の水準1〜5を測定用セルの光路長を1.0mmに設定して測定した赤外吸収スペクトルの例(3)である。
光路長を1.0mmに設定して測定した赤外吸収スペクトルは、いずれも吸収ピークB2と吸収ピークC1は吸光度がおおむね0.2から0.8の範囲に入り、吸収ピークA1、吸収ピークA2、および吸収ピークB1は、いずれも吸光度が0.8を越えた値となった。
図11は、物質A、物質B、および物質Cが含まれた調整液の水準1〜5を測定用セルの光路長を0.3mmに設定して測定した赤外吸収スペクトルの例(4)である。
測定用セルの光路長を0.3mmに測定した赤外吸収スペクトルは、吸収ピークA1、吸収ピークA2、および吸収ピークB1が、いずれも吸光度が0.2から0.8の範囲に入り、吸収ピークB2および吸収ピークC1は吸光度が0.2未満となった。
したがって、吸収ピークB2と吸収ピークC1については、光路長1.0mmに設定して得られたスペクトル情報が、吸収ピークA1、吸収ピークA2、および吸収ピークB1については、光路長を0.3mmに設定して得られたスペクトル情報が精度の高い結果となる。
つまり、光路長を1.0mmに設定して測定して得られる赤外吸収スペクトルの吸収ピークB2と吸収ピークC1のスペクトル情報と、光路長0.3に設定して得られる赤外吸収スペクトルの吸収ピークA1、吸収ピークA2、および吸収ピークB1のスペクトル情報とを合成することで、すべての吸収ピークについて精度の高いスペクトル情報が得られることとなる。
図12は、図10(光路長1.0mm)と図11(光路長0.3mm)の赤外吸収スペクトルから取得したスペクトル情報より新たに合成した2次スペクトル情報である。このとき吸収ピークA1、A2およびB1については光路長1.0mmのスペクトル情報を、吸収ピークB21およびC1については光路長0.3mmのスペクトル情報を用いた。図12において、すべての吸収ピークの吸光度が0.2〜0.8の範囲内の値となっている。
次に、上記調整液の各物質濃度とスペクトル情報から検量線を作成する。
図10の赤外吸収スペクトル(光路長1.0mm)のみからスペクトル情報を取得し、作成した検量線を検量線1とする。検量線1の作成にはケモメトリクス手法のひとつであるPLS法を用い、波長流域には3500cm−1から400cm−1の領域を使用した。このとき、主成分因子数は1とした。
図11の赤外吸収スペクトル(光路長0.3mm)のみからスペクトル情報取得し、作成した検量線を検量線2とする。検量線2の作成にはケモメトリクス手法のひとつであるPLS法を用い、波長領域には3500cm−1から400cm−1の波長領域を使用した。このとき、主成分因子数は1とした。
図12の2次スペクトル情報を用いて作成した検量線を検量線3とする。検量線3の作成にはケモメトリクス手法のひとつであるPLS法を用い、波長領域には波数領域には2800cm−1から550cm−1の領域を使用した。このとき、主成分因子数は2とした。
次に、表2に示す水準6〜8の調整液を未知濃度試料として扱い、水準1〜5の調整液のスペクトル情報にPLS法を適用して作成した検量線1〜3を用いて水準6〜8の濃度測定を実施した。
Figure 2015184018
図13は光路長1.0mmのスペクトル情報のみで作成した検量線1で物質A、物質B、物質Cを検量した結果である。
また、表3に検量線1を水準1〜8の調整液のスペクトル情報に適用したときの実濃度と測定濃度の相関係数(R)、検量線試料(水準1〜5)の濃度測定誤差値(RMSEC)、未知濃度試料(水準6〜8)の濃度測定誤差値(RMSEP)をまとめて示した。濃度測定誤差値とは、各水準の実濃度と測定濃度の差(誤差)から二乗平均平方根(RMS)を計算した値であり、誤差なしの理想的な場合にはゼロとなるものである。
Figure 2015184018
図13の検量結果において、物質Bおよび物質Cの濃度測定精度が特に低いことがわかる。表3においても、物質Bおよび物質Cは相関係数が低く、測定誤差の大きさを表すRMSEC、RMSEPの値が物質Aと比較して大きい。これは吸収ピークB2と吸収ピークC1の吸光度が光路長1.0mmでは0.2以下になってしまい、十分な感度でスペクトル情報が得られていないためである。
図14は光路長0.3mmのスペクトル情報のみで作成した検量線2で物質A、物質B、物質Cを検量した結果である。
また、表4に検量線2を水準1〜8の調整液のスペクトル情報に適用したときのR、検量線試料(水準1〜5)のRMSEC、未知濃度試料(水準6〜8)のRMSEPをまとめて示した。
Figure 2015184018
図14の検量結果および表4においても、図13、表3と同様に物質Bおよび物質Cの濃度測定精度が低いことがわかる。これは吸収ピークB1とB2のスペクトル情報の感度に差があるために物質Bの濃度測定精度が低下したことに加えて、吸収ピークB2とC1が互い干渉し合っているために物質Cの濃度測定精度に物質Bの誤差が影響したためである。
このように複数の成分が含まれる多成分混合溶液に含まれる各成分物質の濃度をそれぞれ測定しようとした場合、いずれかひとつの物質に適した吸光度になるように光路長を設定しても、他の物質にとってその光路長が不適切であると吸光度から求まる濃度は誤差が大きくなる。
図15は光路長1.0mmと光路長0.3mmのスペクトル情報から合成した2次スペクトル情報を用いて作成した検量線3で物質A、物質B、物質Cの検量した結果である。このとき吸収ピークA1、A2およびB1については光路長1.0mmのスペクトル情報を、吸収ピークB21およびC1については光路長0.3mmのスペクトル情報を用いて2次スペクトル情報を合成した。
また、表4に検量線3を水準1〜8の調整液のスペクトル情報に適用したときのR、検量線試料(水準1〜5)のRMSEC、未知濃度試料(水準6〜8)のRMSEPをまとめて示した。
Figure 2015184018
図15において、物質A、物質Bおよび物質Cともに高い濃度測定精度が得られた。また、表5では、表3および表4と比較して、物質Aの濃度測定精度は若干低下したものの、物質Bおよび物質Cの相関係数、測定誤差が大きく改善され、濃度測定精度が向上したことがわかる。これは互いに干渉し合った吸収ピークを含め、検量線に用いたすべての吸収ピークの吸光度が0.2〜0.8の範囲内の値となり、十分に高感度なスペクトル情報から合成した2次スペクトル情報をケモメトリクスに適用できたためである。
つまり、既知の物質を1種類以上含み、これら既知の物質に由来する特性吸収帯が2つ以上存在する溶液の、これら既知の物質の濃度を測定するための検量線を以下の方法で作成するのがよい。そして、これら既知の物質の濃度を赤外線の吸光情報から測定するに際し、この作成した検量線を用いて既知の物質の濃度を算出するのがよい。
b1. 前記既知の物質のそれぞれの濃度を、想定され得る濃度変動範囲内の任意の濃度にした調整液を作成し、
b2. 前記既知の物質に由来する特性吸収帯のうちからスペクトル情報を得たい特性吸収帯を2つ以上選択し、
b3. 前記b2で選択した特性吸収帯のうちから1つの特性吸収帯を選択し、
b4. 前記b3で選択した特性吸収帯が由来する既知の物質に対して任意の目標とする濃度値を設定し、
b5. 前記b4の既知の物質の濃度が前記b4で設定した濃度値であるときに、前記b3で選択した特性吸収帯での赤外線の吸収ピークの吸光度が0.2〜0.8となる光路長を設定し、
b6. 前記b5で設定した光路長で前記調整液の赤外吸収スペクトルを測定して、前記b3で選択した特性吸収帯のスペクトル情報を得て、
b7. 前記b3〜b6の操作を前記b2で選択した特性吸収帯の全てについて行い、得られたスペクトル情報を合成して2次スペクトルを作成し、
b8. 前記想定され得る濃度変動範囲内で前記既知の物質のそれぞれの濃度を変更した複数の調整液を作成し、これら各調整液で前記b2〜b7の操作を行い複数の2次スペクトルを得て、
b9. 前記b8で得られた複数の2次スペクトルと、各2次スペクトルを得た際の調整液中の前記各既知の物質の濃度値にケモメトリクスを適用して、前記既知の物質ごとに検量線を作成する。
具体的に本実施例をこの手順に当てはめると次のようになる。
「既知の物質」と「既知の物質に由来する特性吸収帯」は前述の赤外線スペクトルの作成方法と同じである。
(手順b1) 先ず、既知の物質のそれぞれの濃度を、想定され得る濃度変動範囲内の任意の濃度にした調整液を作成する。具体的には、想定され得る濃度変動の範囲は、物質Aは50〜60質量%、物質Bは10〜15質量%、物質Cは5.5〜10質量%の範囲である。そして、例えば物質Aが52.1質量%、物質Bが11.1質量%、物質Cが5.8質量%である水準1の調整液を作成する。
(手順b2)〜(手順b7) 次いで、作成した水準1の調整液を使って、前述の赤外線スペクトルの作成方法のa1〜a6と同じ手順を行い、2次スペクトルを得る。このとき、赤外線スペクトルの作成方法での「溶液」を「調整液」と読み替えればよい。
(手順b8)次に、表1に示した水準2〜5の調整液を作成し、それぞれの調整液を使ってb2〜b7の手順を行い、それぞれ2次スペクトルを得る。
(手順b9) 次に、水準1〜5の調整液中の物質A、物質Bおよび物質Cの各濃度値と、各水準の調整液で得られた2次スペクトルにケモメトリクスを適用して、物質A、物質Bおよび物質Cの検量線を作成する。
[溶液濃度測定装置]
次に、多成分混合溶液の濃度測定装置の実施例について説明する。
赤外吸収スペクトルが複雑で吸収ピークごとに最適な光路長が大きく異なるような多成分混合溶液においては、各吸収ピークごとに異なる光路長を数多く設定する必要があり、光路長が固定された通常の赤外分光分析装置では高精度かつ簡便な赤外吸収スペクトルの取得および濃度測定が可能ではあるが、測定作業が煩雑になる。また経時変化にも弱い。
そこで、既知の物質を1種類以上含み、これら既知の物質に由来する特性吸収帯が2つ以上存在する溶液中の、これら既知の物質の濃度を赤外線のスペクトル情報から測定する溶液濃度測定装置は、以下のような構成とするのがよい。
赤外線源と、赤外線検出手段と、前記赤外線源と前記赤外線検出手段との間に配置されて前記溶液を収容し、赤外線源から照射された赤外線が溶液を通過する光路長を変更できる測定セルと、前記測定セルを通過した赤外線から赤外吸収スペクトルを作成するスペクトル作成手段と、作成された赤外吸収スペクトルのスペクトル情報を用いて2次スペクトルを作成する2次スペクトル作成手段と、作成された2次スペクトルに含まれる特性吸収帯の吸収ピークの値と検量線とを対比して前記各既知の物質の濃度を定量する手段とを備えた溶液濃度測定装置であって、
前記2次スペクトル作成手段は、
c1. 前記既知の物質に由来する特性吸収帯のうち、スペクトル情報を得たい2つ以上の特性吸収帯が設定されており、
c2. 前記測定セルの光路長を、前記c1で設定されている特性吸収帯のうちの1つの特性吸収帯に対応する光路長にし、
前記光路長は、この光路長が対応する特性吸収帯に由来する既知の物質の濃度が特定の濃度値であるときに、この光路長が対応する特性吸収帯での赤外線の吸収ピークの吸光度が0.2〜0.8となる長さであり、
前記特定の濃度値は、前記光路長が対応する特性吸収帯が由来する既知の物質に対して設定された想定され得る濃度変動範囲の代表値または制御目標値であり、
c3. 前記測定セルの光路長を前記c2で選択された光路長に調整するか、または前記c2で選択された光路長に最も近い光路長に調整し、
c4. 前記c3で調整された光路長で測定された赤外吸収スペクトルを前記スペクトル作成手段から得て、前記c2で選択した光路長が対応する特性吸収帯のスペクトル情報を得て、
c5. 前記c2〜c4の操作を前記c1で設定されている全ての特性吸収帯に対応する光路長について行い、得られたスペクトル情報を合成して2次スペクトルを作成する。
つまり、この濃度測定装置は、赤外線源から照射された赤外線が溶液を通過する光路長を変更できる測定セルを備えることで、前述の赤外線スペクトルの作成方法を簡便に実現できる濃度測定装置である。
続いて、様々な測定セルを用いた具体例を説明する。まず、図1に示した濃度測定装置と図2に示したフローセルを用いて多成分混合溶液に含まれる各物質の濃度を測定した。この場合、液面の高さHを変化させることで光路長が調節できるため、様々な物質の最適光路長の設定が可能となる。また、多成分混合溶液を常に新鮮な状態に入れ替えながら赤外吸収スペクトルの取得ができるため、液の状態が経時変化する物質のインラインでの濃度測定などに適している。
次に、図1に示した濃度測定装置と図3に示したステップセルを用いて多成分混合溶液に含まれる各物質の濃度を測定した。工業製品のように多成分混合溶液中に含まれる成分物質が予め判明している場合、各物質の吸収ピークの最適光路長を調べることが可能であるため、各物質の吸収ピークに対応した複数の光路長をもつ多段階の透過セル(ステップセル)を設計することができる。このステップセルを用いれば、ステップセルと赤外線の光軸を相対的に移動させるだけで最適光路長の切り替えができ、素早く多成分混合溶液の濃度測定が実施できる。
ステップセルの場合と同様、多成分混合溶液中に含まれる成分物質とそれらの物質の吸収ピークに対応する最適光路長が予め判明しているならば、図1に示した濃度測定装置内に、図4に示した複数の個別セルを用いても、個別セルを切り替えて多成分混合溶液の赤外吸収スペクトルの取得と濃度測定が可能である。この場合、非常に単純な構造の透過セルを使用することができる。
図1に示した濃度測定装置と図5に示したスロープセルを用いて多成分混合溶液に含まれる各物質の濃度を測定した。スロープセルでは各物質の吸収ピークに対応した複数の光路長を無段階に設定できるため、様々な物質の最適光路長を設定可能である。また、光軸の切り替えは、ステップセルと同様に、赤外線の光軸を相対的に移動させるだけで可能であるため、素早く多成分混合溶液の濃度測定が実施できる。
また、図1に示した濃度測定装置と図6に示したミラー付きセルを用いて多成分混合溶液に含まれる各物質の濃度を測定した。ミラー付きセルを用いれば、光路長が固定された通常の透過セルであっても反射回数に応じて異なる光路長設定でき、多成分混合溶液のスペクトル取得と濃度測定が可能となる。これは図2〜5に示した実施形態にも使用可能である。
具体的に5種類の光路長が必要な多成分液を従来装置とフローセルを用いた本発明の濃度測定装置で測定したところ、前者では1時間かかった測定が、後者では10分で完了した。また後者であれば、インライン装置として測定用配管から測定セルに多成分混合溶液を導くことで工業製品の生産プロセスへも適用でき、測定された各種濃度値をプロセスの制御に用いることも可能である。
さらに、以下のような溶液濃度測定装置の構成とすることで、様々な光路長を通過した複数の赤外線からの赤外吸収スペクトルを一度に得ることができる。
赤外線源と、赤外線検出手段と、前記赤外線源と前記赤外線検出手段との間に配置されて前記溶液を収容し、赤外線源から照射された赤外線が溶液を通過する光路を複数有し、これら各光路の光路長が異なっている測定セルと、前記測定セルを通過した赤外線から赤外吸収スペクトルを作成するスペクトル作成手段と、作成された赤外吸収スペクトルのスペクトル情報を用いて2次スペクトルを作成する2次スペクトル作成手段と、作成された2次スペクトルに含まれる特性吸収帯の吸収ピークの値と検量線とを対比して前記各既知の物質の濃度を定量する手段とを備えた溶液濃度測定装置であって、
前記2次スペクトル作成手段は、
d1. 前記既知の物質に由来する特性吸収帯のうち、スペクトル情報を得たい2つ以上の特性吸収帯が設定されており、
d2. 前記c1で設定されている特性吸収帯のうちの1つの特性吸収帯に対応する光路長を選択し、
前記光路長は、この光路長が対応する特性吸収帯に由来する既知の物質の濃度が特定の濃度値であるときに、この光路長が対応する特性吸収帯での赤外線の吸収ピークの吸光度が0.2〜0.8となる長さであり、
前記特定の濃度値は、前記光路長が対応する特性吸収帯が由来する既知の物質に対して設定された想定され得る濃度変動範囲の代表値または制御目標値であり、
d3. 前記測定セルの前記d2で選択された光路長の光路、または前記測定セルの前記d2で選択された光路長に最も近い光路で測定された赤外吸収スペクトルを前記スペクトル作成手段から得て、前記d2で選択された光路長が対応する特性吸収帯のスペクトル情報を得て、
d4. 前記d2とd3の操作を前記d1で設定されている全ての特性吸収帯に対応する光路長について行い、得られたスペクトル情報を合成して2次スペクトルを作成する。
この溶液濃度測定装置では、図4、図5または図6に示した複数の異なる光路長の光路を備えた測定セルを用いて、これら光路のいずれかを通過した複数の赤外線を同時に検出できる複数の赤外線検出手段を備えることで、測定セルの各光路長に対応した赤外吸収スペクトルを同時に作成できる。測定セルを通過する複数の赤外線は、複数の赤外線源からの赤外線を照射したり、1つの赤外線源から照射された赤外線を分光することで実現できる。
このように本発明の多成分混合溶液の濃度測定装置を用いることで、赤外吸収スペクトルが複雑で吸収ピークごとに最適な光路長が大きく異なるような多成分混合溶液においても、各吸収ピークごとに異なる光路長を簡便に設定でき、各物質の吸収ピークに最適な条件で高精度かつ簡便な赤外吸収スペクトルの取得と濃度測定が可能となる。
本発明によれば、多成分混合溶液に含まれる各成分物質の濃度を精度よく測定することができる。化学反応プロセスにおける溶液中の反応物質の濃度を監視することによって、化学反応プロセスの管理、さらには、化学反応プロセスの制御に利用することができる。
11 赤外光源
12 分光器
13 測定セル
14 赤外線検出器
15 分析装置
16 被測定液
17 入射光
18 透過光
21 フローセル
22 注水口
23 排水口
24 液面
31 ステップセル
41 個別セル
42 第1のセル
43 第2のセル
44 第3のセル
45 第4のセル
51 スロープセル
61 ミラー付セル
62 第1のミラー
63 第2のミラー
L 光路長
H 液面の高さ
W セル幅
θ 反射角

Claims (17)

  1. 既知の物質を1種類以上含み、これら既知の物質に由来する特性吸収帯が2つ以上存在する溶液の赤外吸収スペクトルを作成する方法であって、
    a1. 前記既知の物質に由来する特性吸収帯のうちからスペクトル情報を得たい特性吸収帯を2つ以上選択し、
    a2. 前記a1で選択した特性吸収帯のうちから1つの特性吸収帯を選択し、
    a3. 前記a2で選択した特性吸収帯が由来する既知の物質に対して任意の目標とする濃度値を設定し、
    a4. 前記a3の既知の物質の濃度が前記a3で設定した濃度値であるときに、前記a2で選択した特性吸収帯での赤外線の吸収ピークの吸光度が0.2〜0.8となる光路長を設定し、
    a5. 前記a4で設定した光路長で前記溶液に赤外線を通過させて溶液の赤外吸収スペクトルを測定して、前記a2で選択した特性吸収帯のスペクトル情報を得て、
    a6. 前記a2〜a5の操作を前記a1で選択した特性吸収帯の全てについて行い、得られたスペクトル情報を合成して2次スペクトルを作成する、
    赤外吸収スペクトル作成方法。
  2. 前記a3で設定する濃度値を、この濃度値が設定される前記既知の物質の想定され得る濃度変動範囲の代表値または制御目標値とする、請求項1の赤外吸収スペクトル作成方法。
  3. 前記a4で設定される光路長を、選択できる複数の光路長の中から前記吸光度が最も0.43に近い値となる光路長に設定する、請求項1または2の赤外吸収スペクトル作成方法。
  4. 前記a5における赤外線が、波数領域4000cm−1から400cm−1の中赤外線である、請求項1〜3のいずれかの赤外吸収スペクトル作成方法。
  5. 既知の物質を1種類以上含み、これら既知の物質に由来する特性吸収帯が2つ以上存在する溶液の、これら既知の物質の濃度を測定するための検量線を作成する方法であって、
    b1. 前記既知の物質のそれぞれの濃度を、想定され得る濃度変動範囲内の任意の濃度にした調整液を作成し、
    b2. 前記既知の物質に由来する特性吸収帯のうちからスペクトル情報を得たい特性吸収帯を2つ以上選択し、
    b3. 前記b2で選択した特性吸収帯のうちから1つの特性吸収帯を選択し、
    b4. 前記b3で選択した特性吸収帯が由来する既知の物質に対して任意の目標とする濃度値を設定し、
    b5. 前記b4の既知の物質の濃度が前記b4で設定した濃度値であるときに、前記b3で選択した特性吸収帯での赤外線の吸収ピークの吸光度が0.2〜0.8となる光路長を設定し、
    b6. 前記b5で設定した光路長で前記調整液に赤外線を通過させて調整液の赤外吸収スペクトルを測定して、前記b3で選択した特性吸収帯のスペクトル情報を得て、
    b7. 前記b3〜b6の操作を前記b2で選択した特性吸収帯の全てについて行い、得られたスペクトル情報を合成して2次スペクトルを作成し、
    b8. 前記想定され得る濃度変動範囲内で前記既知の物質のそれぞれの濃度を変更した複数の調整液を作成し、これら各調整液で前記b2〜b7の操作を行い複数の2次スペクトルを得て、
    b9. 前記b8で得られた複数の2次スペクトルと、各2次スペクトルを得た際の調整液中の前記各既知の物質の濃度値にケモメトリクスを適用して、前記既知の物質ごとに検量線を作成する、
    検量線作成方法。
  6. 前記b5で設定される光路長を、選択できる複数の光路長の中から前記吸光度が最も0.43に近い値となる光路長に設定する、請求項5の検量線作成方法。
  7. 前記b6における赤外線が、波数領域4000cm−1から400cm−1の中赤外線である請求項5または6の検量線作成方法。
  8. 既知の物質を1種類以上含み、これら既知の物質に由来する特性吸収帯が2つ以上存在する溶液中の、これら既知の物質の濃度を赤外線の吸光度情報から測定するに際し、請求項5〜7のいずれかの検量線作成方法で作成した検量線を用いて前記各既知の物質の濃度を算出する溶液濃度定量方法。
  9. 既知の物質を1種類以上含み、これら既知の物質に由来する特性吸収帯が2つ以上存在する溶液中の、これら既知の物質の濃度を赤外線のスペクトル情報から測定する溶液濃度測定装置であって、
    赤外線源と、
    赤外線検出手段と、
    前記赤外線源と前記赤外線検出手段との間に配置されて前記溶液を収容し、赤外線源から照射された赤外線が溶液を通過する光路長を変更できる測定セルと、
    前記測定セルを通過した赤外線から赤外吸収スペクトルを作成するスペクトル作成手段と、
    作成された赤外吸収スペクトルのスペクトル情報を用いて2次スペクトルを作成する2次スペクトル作成手段と、
    作成された2次スペクトルに含まれる特性吸収帯の吸収ピークの値と検量線とを対比して前記各既知の物質の濃度を定量する手段とを備え、
    前記2次スペクトル作成手段は、
    c1. 前記既知の物質に由来する特性吸収帯のうち、スペクトル情報を得たい2つ以上の特性吸収帯が設定されており、
    c2. 前記測定セルの光路長を、前記c1で設定されている特性吸収帯のうちの1つの特性吸収帯に対応する光路長にし、
    前記光路長は、この光路長が対応する特性吸収帯に由来する既知の物質の濃度が特定の濃度値であるときに、この光路長が対応する特性吸収帯での赤外線の吸収ピークの吸光度が0.2〜0.8となる長さであり、
    前記特定の濃度値は、前記光路長が対応する特性吸収帯が由来する既知の物質に対して設定された想定され得る濃度変動範囲の代表値または制御目標値であり、
    c3. 前記測定セルの光路長を前記c2で選択された光路長に調整するか、または前記c2で選択された光路長に最も近い光路長に調整し、
    c4. 前記c3で調整された光路長で測定された赤外吸収スペクトルを前記スペクトル作成手段から得て、前記c2で選択した光路長が対応する特性吸収帯のスペクトル情報を得て、
    c5. 前記c2〜c4の操作を前記c1で設定されている全ての特性吸収帯に対応する光路長について行い、得られたスペクトル情報を合成して2次スペクトルを作成する、
    溶液濃度測定装置。
  10. 既知の物質を1種類以上含み、これら既知の物質に由来する特性吸収帯が2つ以上存在する溶液中の、これら既知の物質の濃度を赤外線のスペクトル情報から測定する溶液濃度測定装置であって、
    赤外線源と、
    赤外線検出手段と、
    前記赤外線源と前記赤外線検出手段との間に配置されて前記溶液を収容し、赤外線源から照射された赤外線が溶液を通過する光路を複数有し、これら各光路の光路長が異なっている測定セルと、
    前記測定セルを通過した赤外線から赤外吸収スペクトルを作成するスペクトル作成手段と、
    作成された赤外吸収スペクトルのスペクトル情報を用いて2次スペクトルを作成する2次スペクトル作成手段と、
    作成された2次スペクトルに含まれる特性吸収帯の吸収ピークの値と検量線とを対比して前記各既知の物質の濃度を定量する手段とを備え、
    前記2次スペクトル作成手段は、
    d1. 前記既知の物質に由来する特性吸収帯のうち、スペクトル情報を得たい2つ以上の特性吸収帯が設定されており、
    d2. 前記c1で設定されている特性吸収帯のうちの1つの特性吸収帯に対応する光路長を選択し、
    前記光路長は、この光路長が対応する特性吸収帯に由来する既知の物質の濃度が特定の濃度値であるときに、この光路長が対応する特性吸収帯での赤外線の吸収ピークの吸光度が0.2〜0.8となる長さであり、
    前記特定の濃度値は、前記光路長が対応する特性吸収帯が由来する既知の物質に対して設定された想定され得る濃度変動範囲の代表値または制御目標値であり、
    d3. 前記測定セルの前記d2で選択された光路長の光路、または前記測定セルの前記d2で選択された光路長に最も近い光路で測定された赤外吸収スペクトルを前記スペクトル作成手段から得て、前記d2で選択された光路長が対応する特性吸収帯のスペクトル情報を得て、
    d4. 前記d2とd3の操作を前記d1で設定されている全ての特性吸収帯に対応する光路長について行い、得られたスペクトル情報を合成して2次スペクトルを作成する、
    溶液濃度測定装置。
  11. 前記赤外線源から照射された赤外線が、前記測定セル中の溶液の液面を通る光路を通過し、
    前記赤外線が溶液を通過する光路長の変更を、前記測定セル中の溶液の液面高さを変えることで行う、請求項9の溶液濃度測定装置。
  12. 前記測定セルが複数の異なる光路長の光路を備え、
    前記赤外線が溶液を通過する光路長の変更を、前記測定セルと前記赤外線の光路との位置関係を相対的に変えることで行う、請求項9の溶液濃度測定装置。
  13. 前記測定セルが複数の異なる光路長の光路を備え、
    前記光路のいずれかを通過した複数の赤外線を同時に検出できる複数の前記赤外線検出手段を備えた、請求項10の溶液濃度測定装置。
  14. 前記測定セルが透過型セルであり、この透過型セルが多段階の光路長の光路を備えた、請求項12または13の溶液濃度測定装置。
  15. 前記測定セルが透過型セルであり、この透過型セルが多段階の光路長の光路を備えた隔室で構成された、請求項12または13の溶液濃度測定装置。
  16. 前記測定セルが透過型セルであり、この透過型セルが無段階の光路長の光路を備えた、請求項12または13の溶液濃度測定装置。
  17. 前記測定セルが透過型セルであり、
    前記赤外線源から照射された赤外線を、前記透過型セルの内部を往復させる鏡を備え、
    前記赤外線が溶液を通過する光路長の変更を、赤外線が前記透過型セルの内部を通過する回数を変更することで行う、請求項9の溶液濃度測定装置。
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