JP2016033467A - 高粘性溶液中の脂質量および/または水分量の分析方法および装置 - Google Patents

高粘性溶液中の脂質量および/または水分量の分析方法および装置 Download PDF

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Abstract

【課題】マヨネーズ等の高粘性溶液の脂質量あるいは水分量を、簡便かつ迅速に測定することのできる方法と装置を提供する。【解決手段】積分球7を装着した分光光度計を用い、容器に収容したマヨネーズ等に対して近赤外領域を含む波長範囲で順次選択した測定光を照射し、その反射光を検出することで吸光度スペクトルを測定し、脂質(水分)量既知の複数種の標準サンプルの吸光度スペクトルを用いた多変量解析に基づく定量手法で作成した検量モデルを用いて、マヨネーズ等の高粘性溶液中の脂質(水分)量を求めるものであって、反射測定を採用することで、透過測定時のような試料容器の光路長や形状の制約がなくなり、測定準備を簡略化することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、マヨネーズ類、動物性脂肪生クリーム、植物性脂肪生クリーム、ソース、ケチャップ、カレー(レトルトカレーを含む)、あるいはジャム等の、粘度1〜100Pa・s程度の高粘性溶液中の脂質量および/または水分量の分析方法および装置に関する。
マヨネーズ類に含まれている脂質(脂肪)の量の測定は、従来より、ソックスレー抽出管を用いたエーテル抽出法が一般に用いられている。この方法は、ソックスレー管を用いてジエチルエーテルで還流抽出することにより、溶剤中の脂質量を次第に濃縮させていく方法であって、溶剤を留去した残りの重量を測定することで、脂質量を求める(例えば非特許文献1、特許文献1参照)。
特開2011−177150号公報
一般財団法人食品分析開発センター(SUNATEC) 第一理化学検査室 服部聰司「栄養成分分析の実際」[online]平成26年5月20日検索 インターネット<URL;http://www.mac.or.jp/mail/121201/02.shtml>
ところで、ソックスレー管を用いたエーテル抽出法に基づく脂質量の測定方法は、その所要時間が極めて長いという問題がある。
ここで、溶液中の特定物質を短時間のうちに定量する一般的な方法として、近赤外分光法が知られている。この近赤外分光法により溶液中の特定物質を定量する方法では、近赤外領域を含む波長範囲で順次波長選択した測定光を試料溶液に照射し、その透過光を検出して試料溶液による吸光度スペクトルを算出する。そして、特定物質量が既知の複数種の試料溶液の吸光度スペクトルを測定してあらかじめ作成した検量モデルから試料溶液中の特定物質の量を算出する。しかし、この近赤外分光法を用いてマヨネーズ中の脂質量の測定は、実質的に極めて困難である。
すなわち、溶液の透過測定を行うためには、試料溶液を角セルに収容して測定に供する必要があるが、マヨネーズのように透明度の低い溶液を透過測定するためには、光路長10mmの角セルを用いたのでは透過光を測定することはできない。もし、光路長1mm程度の角セルを用いると透過光の測定は可能となるかもしれないが、その場合、粘性の高いマヨネーズ等を気泡等の混入なく角セル内に収容するのに多大な時間と労力を要してしまうという問題がある。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、マヨネーズ等の高粘性溶液中の脂質量あるいは水分量を、簡便かつ迅速に測定することのできる方法および装置の提供をその課題としている。
上記の課題を解決するため、本発明の高粘性溶液中の脂質量および/または水分量の分析方法は、積分球を装着した分光光度計を用い、分析対象の高粘性液を収容した試料容器を上記積分球の開口部からその内部に臨ませた状態で、近赤外領域を含む波長範囲で順次波長選択した測定光を、上記積分球の別の開口部を通じて上記試料容器内の高粘性溶液に照射し、その反射光を当該積分球に設けられた検出器で検出することにより吸光度スペクトルを測定し、その測定結果と、脂質量および/または水分量が既知の複数種の標準サンプルの各吸光度スペクトルを用いた多変量解析に基づく定量手法で作成した検量モデルとから、上記分析対象の高粘性溶液中の脂質量および/または水分量を求めることによって特徴づけられる。
本発明は、高精度の吸光度スペクトルの測定が可能な前分光の分光光度計を用いて、しかも角セルを用いることなく簡便かつ迅速に高粘性溶液中の脂質量や水分量の分析を行うことを目的として鋭意研究を重ねた結果としてなされたものであり、近赤外分光において積分球を用いた反射測定を行うことにより、マヨネーズ等の高粘性溶液中の脂質量、あるいは水分量を正確に測定できる、という結論に達した。
すなわち、積分球を用いた反射測定でマヨネーズ等の高粘性溶液の吸光度スペクトルを測定することにより、多変量解析の定量手法に基づく検量モデルから正確に当該溶液中の脂質量および/または水分量を求め得ることを確認した。
そして、本発明は反射測定であるため、透過測定の場合のように光路長に起因するセル(試料容器)の制約がなく、セル内への試料溶液の封入の作業性の問題は生じない。また、安価なスクリュー管などを用いてこれを使い捨てとしたり、あるいは流通状態の容器に収容されたままで測定に供することも可能である。
一方、本発明の高粘性溶液中の脂質量および/または水分量の分析装置は、本発明方法を実現する装置であり、少なくとも近赤外領域を含む波長範囲の白色光を発生する光源と、その光源からの光を分光する分光器と、その分光器により順次波長選択された測定光が導入される測定光導入用開口部、および、その導入された測定光の光路上に形成された反射測定試料設置用開口部を備えた積分球と、その積分球の内部に臨み、当該積分球の内面で集光された反射光を検出する検出器と、その検出器の出力に基づいて上記試料容器内の高粘性溶液による吸光度スペクトルを算出する吸光度スペクトル算出手段と、脂質量および/または水分量既知の複数の標準サンプルの各吸光度スペクトルを用いた多変量解析の定量手法に基づいて検量モデルを作成する検量モデル演算手段と、分析対象の高粘性溶液の吸光度スペクトルの測定結果と検量モデルとから、その高粘性溶液の脂質量および/または水分量を算出する脂質量および/または水分量算出手段を備えるとともに、上記積分球の外側には、分析対象の高粘性溶液を収容した試料容器を上記反射測定試料設置用開口部に対して一定の位置関係のもとに固定するための保持機構が設けられていることによって特徴づけられる。
以上の本発明の分析装置は、汎用の分光光度計の基本構成を維持しながら、高粘性溶液の反射測定を可能とするものであって、積分球の反射測定試料設置用開口部に対して一定の位置関係のもとに試料容器を固定するための保持機構を設け、これにより、液体試料の反射測定の繰り返し精度を向上させることが可能となる。
本発明によれば、前分光で積分球を用いた反射測定によって高粘性溶液の吸光度スペクトルを測定し、多変量解析の定量手法に基づいて作成した検量モデルを用いてその脂質量および/または水分量を求めるので、従来の近赤外分光法を利用した透過測定を行う場合に比して、試料容器(セル)の形態について光路長による制約を受けることなく、試料容器を任意のものとすることができる。例えば、測定に際し安価なスクリュー管を用いて使い捨ての試料容器としたり、あるいは製品としてマヨネーズ容器に収容されたままマヨネーズを測定に供することなどが可能となり、高粘性溶液の試料容器内への封入作業が大幅に容易化され、迅速かつ簡便で正確に高粘性溶液中の脂質量および/または水分量を測定することが可能となった。
しかも、分析装置は汎用の紫外可視近赤外分光光度計に積分球を装着し、その反射測定試料設置用開口部に対して試料容器の保持機構を設けるか、あるいはその開口部に対して順次試料容器を供給する供給手段を設けるだけでよく、汎用の分光光度計に対して大幅な構造変更を行う必要がなく、装置コストを低く抑えることができるとともに、オンライン測定をも実現することができる。
本発明の実施形態の構成を示す模式図。 本発明の実施形態における積分球内部での測定光の光路と、分析対象の溶液を収容した試料容器の保持状態を表す概略模式図(A)と、その保持機構の開放状態を示す模式図(B)。 本発明の実施形態によるマヨネーズの脂質量の測定手順を示すフローチャート。 実験に用いた8種類のマヨネーズの吸光度スペクトルの測定結果を表すグラフ。 図4のグラフにおける1000nm〜1500nmの波長範囲を拡大表示したグラフ。 8種類のマヨネーズの各市販状態における吸光度スペクトルの測定結果を表すグラフ。 図6のグラフにおける1000nm〜1500nmの波長範囲を拡大表示したグラフ。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。図1に本発明の実施の形態の構成を模式図で示す。
この例は、汎用の紫外可視近赤外分光光度計に外付け部品として積分球を装着したものを基本構成とするものであり、光源1からの光はミラー2により光路の向きが調整されて分光器3に向かう。分光器3は回折格子3aとその角度を調整する波長送り機構3bを主体とし、回折格子3aの角度を変化させることによって、試料室4に向かう単色光の波長が変化する。つまり、分光器3によって試料室4内に導かれる測定光の波長が選択される。
試料室4内には、分光器3により波長選択された測定光を、外付けされた筐体5内へと向かわせるミラー6が配置されている。筐体5内には積分球7が設けられており、ミラー6で反射した測定光は、積分球7に設けられた測定光導入用開口部7aを介してその内部に入射し、当該積分球7に設けられている反射測定試料設置用開口部7b(図2参照)を介して試料容器8に照射される。
ここで、積分球7内部における測定光の光路と、分析対象の高粘性溶液を収容した試料容器8の保持状態を表す概略的な模式図を図2(A)に示す。積分球7には、測定光が入射する測定光導入用開口部7aと、反射測定試料設置用開口部7bとが少なくとも形成されており、反射測定試料設置用開口部7bの外側に、分析対象である高粘性溶液を収容する試料容器8が位置決め固定され,この試料容器8の側面が積分球7の内側に臨み、そこに測定光が照射される。この例では、全光線反射測定が採用され、試料容器8の法線に対して8°程度傾いた方向から測定光が照射される。なお、必ずしも全光線反射測定である必要はなく、拡散反射測定を採用することもできる。
積分球7はその内面が球面で、その内表面は硫酸バリウムなどの反射率の高い光散乱素材で作製されるとともに、反射測定試料設置用開口部7bに近接して積分球7の外側には、試料容器8を積分球7に対して常に一定の位置関係のもとに位置決め固定するための保持機構9が設けられている。
この例では、試料容器8として円筒形のスクリュー管を用いており、保持機構9は全体として鉛直方向に伸びる略円筒形をなし、筐体5に対して下端部分が固定される本体部9aと、その本体部9aに対してヒンジ機構9bを介して開閉自在に支持された蓋体部9cを備えている。この保持機構9の蓋体部9cを開いた状態の模式図を図2(B)に示す。蓋体部9cの内面にはスポンジ等の弱い弾性材料が9dが貼着され、これにより蓋体部9cを閉じた状態では、試料容器8は本体部9aに対して押し付けられることになり、試料容器8は積分球7の反射測定試料設置用開口部7bに対して一定の位置関係のもとに位置決め固定された状態となる。
また、図1に示すように、積分球7には、測定光導入用開口部7aおよび反射測定試料設置用開口部7bのいずれに対して略90°離れた位置に検出器10が取り付けられている。この検出器10は、その有感面が積分球7に形成された開口を塞ぐように取り付けられており、試料容器8内の高粘性溶液により反射した測定光が積分球7の内面で散乱反射して集光され、その反射光強度を検出する。なお、図2においては図面の複雑化を避けるため、検出器10の図示を省略している。また、実際の装置においては、光源変動モニタ用のリファランス光が積分球7内に照射される、いわゆるダブルビーム型式が用いられるが、図1,2ではその図示も省略している。
さて、積分球7内の反射光を検出する検出器10からの出力は、ゲイン設定機構11により所望の増幅率に設定された増幅器12で増幅され、A/D変換器13でデジタル化されたうえで制御部14に取り込まれる。制御部14は装置制御に必要なプログラムや設定パラメータなどの情報を記憶し、装置全体の制御を行う。また、後述する基準試料となる標準サンプル(標準白板)を用いてベースライン補正を行うことにより、分析対象の反射光の検出データは標準サンプルの反射率に対する相対反射率データに換算される。
制御部14はパーソナルコンピュータ15と接続されており、このパーソナルコンピュータ15では、制御部14から取り込んだ各波長ごとの相対反射率データ、つまり試料の反射スペクトルを表示する他、各波長ごとの吸光度を算出して吸光度スペクトルを求めて表示する。吸光度はAbs.は、基準板の反射強度をR,試料の反射強度をRとしたとき、
Abs.=log10(R/R)
で表される。
また、パーソナルコンピュータ15では、後述する多変量解析の定量手法に基づく検量モデルの作成、その検量モデルと分析対象の反射スペクトルから、その分析試料の脂質量の算出・表示などを行う。
なお、この実施の形態は汎用の分光分析装置をベースとして用いているため、分光器3からの測定光を積分球7側に向かわせるミラー6は着脱自在であり、積分球7を使用しない場合はミラー6に代えてセルホルダが取り付けられる。セルホルダは試料セルを保持するものであり、この場合、分光器3からの測定光は試料質4内の試料セルを透過して検出器30によって検出され、その出力が増幅器12により増幅される。
以上の構成からなる本発明の実施の形態を用いて、マヨネーズの脂質量の分析を行う際の手順について以下に説明する。図3はその手順を表すフローチャートである。
汎用の分光光度計に積分球7と試料容器8の保持機構9を備えた外付けの筐体5を取り付けるとともに、光路変更用のミラー6を装着する。その後、積分球7の反射測定試料設置用開口部7bに、フッ素樹脂系白板や硫酸バリウム板などの標準白板を設置してベースライン補正を行う。
次に、脂質量既知の複数の標準サンプルを用い、それぞれを試料容器8に収容して保持機構9に保持し、順次吸光度スペクトルを算出する。そして、これらのスペクトルデータを用いて、検量モデルを作成する。この検量モデルは、例えば重回帰やPLS(Partial Least Squares)などの多変量解析の定量手法に基づいて作成するのであるが、この検量モデルに関しては後述する。
その後、未知の試料を試料容器8に収容して上記と同様に保持機構9に保持し、吸光度スペクトルを測定する。必要量の試料を測定した後、検量モデルを用いて全ての未知試料の脂質量を算出する。
以上のように積分球を用いてマヨネーズを反射測定して吸光度スペクトルを求めることにより、そのマヨネーズに含まれる脂質量の定量が有効であることは、以下の実験により確認されている。
市販されている脂質含有量の異なる8種のマヨネーズを用意した。各マヨネーズの包装紙に表示されたそれぞれの脂質量を[表1]に示す。試料には脂質の多い順にA〜Hの符号を付している。
Figure 2016033467
なお、[表1]には記載していないが、各マヨネーズは、脂質だけでなくたんぱく質や炭水化物といった他の成分も互いに相違しており、そのような状況において、脂質量のみを正確に測定できるか否かを実験により明らかにする。
各マヨネーズについて、それぞれガラス製のスクリュー管からなる試料容器に収容して試料容器に収容し、反射測定により吸光度スペクトルを求めた。各種類のマヨネーズは、それぞれ2本のスクリュー管に収容して個々に測定した。したがって、16(8×2)の吸光度スペクトルデータを得た。その結果を図4に示す。この図4から、同じ種類のマヨネーズについては吸光度スペクトルがほぼ重なっており、スクリュー管の違いによるデータへの影響は少ないことが確かめられた。
図4における1000nm〜1500nmの波長範囲を拡大したグラフを図5に示す。図5には、脂質の吸収ピークが現れる波長(1210nm)近傍を丸で囲んで示している。脂質の吸収ピークの近傍に着目すると、脂質の含有量が多い試料ほど吸収ピークが大きくなっている。
[表1]に示した各試料のうち、試料A,C,E,G,Hを標準サンプルとして用い、その各吸光度スペクトルを説明変数、脂質量を目的変数として検量モデルを作成した。検量モデルの作成に用いた解析手法は、重回帰とPLSの二手法とし、それぞれの手法で作成した検量モデルによる定量精度を比較した。なお、重回帰法では、1150nm,1210nm,1240nm,1280nmの4波長のデータを使用して検量モデルの作成を行い、PLS法では、1150nm〜1280nm間の全データに対し中心平均化処理を行って検量モデルの作成に供した。また、マヨネーズの包装紙に表示されている脂質量を標準サンプルの脂質量の真値として用いた。
そして、[表1]に示した各試料のうち、試料B,D,Fを検証用サンプルとして使うことで、検量モデルを検証した。
[表2]に重回帰法とPLS法の各検量モデルを用いて各検証用サンプルの脂質量を予測した結果と、実際の脂質量(包装紙に表示された脂質量)とを示す。
Figure 2016033467
[表2]においてRMSEPは、y’を予測値、yを実際値、Nを評価用試料数としたときに、下記の式で表される値であり、予測値と実際値との平均的な差を表す指標である。
Figure 2016033467
[表2]から明らかなように、重回帰法およびPLS法にそれぞれ基づく検量モデルの双方とも良好な結果を示し、積分球を装着した分光光度計によりマヨネーズの反射測定を行って得た吸光度スペクトルから、多変量解析に基づく定量手法で作成した検量モデルを用いて脂質量を定量する方法が有効であることが確かめられた。すなわち、本発明によれば、脂質以外のたんぱく質や炭水化物の量が任意に相違していても、これらの影響を受けることなく脂質量のみを正確に定量することができた。
なお、以上の実験では多変量解析の手法として重回帰法とPLS法を例にして検量モデルを作成したが、サポートベクター回帰法(SVR)を用いても同等の正確さで検量モデルを作成できることが確かめられている。
また、以上は試料をガラス製のスクリュー管に収容して吸光度スペクトルを測定した例を示したが、次に、市販されているマヨネーズをその容器ごと測定に供した例を示す。
今回実験に供した製品は、メーカーが複数社にわたるものの、その容器の材質は全てPE(ポリエチレン)、EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)で同一であったが、厚みはサンプルにより相違していた。したがってこの場合、マヨネーズのデータに容器の厚みを反映した透過の影響も加わることになる。これは、多変量解析において目的成分(この場合は脂質)以外の成分がもう一つ追加されたことと数学的に同等となる。そのような他成分の変動分を多変量解析は補正することができる。ゆえに、容器の厚みによる変動分は補正されることになり、脂質の定量は可能であると考えられる。
測定方法は、図1,2に示したものと基本的構成は同等であるが、スクリュー管に適応した保持機構は撤去し、積分球7の反射試料設置用開口部7bの外側に、測定すべきマヨネーズをその容器ごと固定する機構を設けた。測定に供したマヨネーズは[表1]に示した8種のマヨネーズと同じものを用い、各マヨネーズは積分球7に対して設置しなおして2回ずつ測定した。その他の測定条件は先のスクリュー管を用いた場合と同じである。その測定結果を図6に示し、図6における1000nm〜1500nmの波長範囲を拡大したグラフを図7に示す。図7には、脂質の吸収ピークが現れる波長(1210nm)近傍を丸で囲んで示している。この測定結果においても、脂質量が多いほど吸収ピークが大きくなっていることが判る。
さて、[表2]に示した各試料のうち、上記の例と同様に、試料A,C,E,G,Hを標準サンプルとして用い、その各吸光度スペクトルを説明変数、脂質量を目的変数として検量モデルを作成した。検量モデルの作成に用いた解析手法は、同じく重回帰とPLSの二手法とし、それぞれの手法で作成した検量モデルによる定量精度を比較した。また、重回帰法では、1150nm,1210nm,1240nm,1280nmの4波長のデータを使用して検量モデルの作成を行い、PLS法では、1150nm〜1280nm間の全データに対し中心平均化処理を行って検量モデルの作成に供した点と、マヨネーズの包装紙に表示されている脂質量を標準サンプルの脂質量の真値として用いた点も同じである。
そして、[表2]に示した各試料のうち、試料B,D,Fを検証用サンプルとして使うことで、検量モデルを検証した。
[表3]に重回帰法とPLS法の各検量モデルを用いて各検証用サンプルの脂質量を予測した結果と、実際の脂質量(包装紙に表示された脂質量)とを示す。
Figure 2016033467
[表3]から明らかなように、重回帰法およびPLS法にそれぞれ基づく検量モデルの双方とも良好な結果を示し、積分球を装着した分光光度計により、製品として流通している容器に入ったままのマヨネーズを反射測定して得た吸光度スペクトルから、多変量解析に基づく定量手法で作成した検量モデルを用いて脂質量を定量する方法が有効であることが確かめられた。すなわち、本発明によれば、脂質以外のたんぱく質や炭水化物の量、またこれらに加えて容器の厚みなどが任意に相違していても、これらの影響を受けることなく脂質量のみを正確に定量することができた。
なお、容器としては、現時点において市販に供されているものであれば特に測定に支障を来すことはないが、敢えて言えば、近赤外光を透過させるものであることが好ましい。
ここで、以上はマヨネーズ中の脂質量の分析に本発明を適用した例を示したが、本発明は、粘度が高く、透明度が低いが故に、分光光度計を用いて透過測定を行うための角セルに封入することが実質的に困難な高粘性溶液、例えば動物性脂肪生クリーム、植物性脂肪生クリーム、ソース、ケチャップ、カレー(レトルトカレーを含む)、ジャム等を分析対象として、その中に含まれる脂質量、あるいは水分量の定量にも等しく適用することができる。
また、上記した例においては、試料容器を個々に手動により分析装置にセットする例を示したが、これを自動化することにより、オンライン測定を行うこともできる。
すなわち、図1,2における積分球7の反射測定試料設置用開口部7bに配置される保持機構9代えて、試料容器を反射測定試料設置用開口部7bの直近に順次供給するコンベア状の供給機構や、あるいは個々の試料容器をハンドリングして反射測定試料設置用開口部7bに対して一定の位置関係で移動させるハンドリング機構を設け、これらを分析装置による測定動作と同期して駆動し、一つの試料の測定を完了するごとに次の試料を積分球7の反射試料設置用開口部7bの外側の規定位置に移動させる構成を採用することもできる。
1 光源
3 分光器
3a 回折格子
3b 波長送り機構
4 試料室
5 筐体
6 ミラー
7 積分球
7a 測定光入射用開口部
7b 反射測定試料設置用開口部
8 試料容器
9 保持機構
9a 本体部
9b ヒンジ機構
9c 蓋体部
9d 弾性材料
10 検出器
11 ゲイン設定機構
12 増幅器
13 A/D変換器
14 制御部
15 パーソナルコンピュータ

Claims (4)

  1. 脂質および/または水を含有する高粘性溶液中の脂質量および/または水分量の分析方法であって、積分球を装着した分光光度計を用い、分析対象の高粘性液を収容した試料容器を上記積分球の開口部からその内部に臨ませた状態で、近赤外領域を含む波長範囲で順次波長選択した測定光を、上記積分球の別の開口部を通じて上記試料容器内の高粘性溶液に照射し、その反射光を当該積分球に設けられた検出器で検出することにより吸光度スペクトルを測定し、その測定結果と、脂質量および/または水分量が既知の複数種の標準サンプルの各吸光度スペクトルを用いた多変量解析に基づく定量手法で作成した検量モデルとから、上記分析対象の高粘性溶液中の脂質量および/または水分量を求めることを特徴とする高粘性溶液中の脂質量および/または水分量の分析方法。
  2. 上記試料容器としてスクリュー管を用いることを特徴とする請求項1に記載の高粘性溶液中の脂質量および/または水分量の分析方法。
  3. 上記試料容器として、分析対象の高粘性溶液が収容されて流通に供される容器を用い、分析対象の高粘性溶液が当該容器に封入された流通状態のままで分析に供することを特徴とする請求項1に記載の高粘性溶液の脂質量および/または水分量の分析方法。
  4. 脂質および/または水を含有する高粘性溶液中の脂質量および/または水分量を分析するための分析装置であって、少なくとも近赤外領域を含む波長範囲の白色光を発生する光源と、その光源からの光を分光する分光器と、その分光器により順次波長選択された測定光が導入される測定光導入用開口部、および、その導入された測定光の光路上に形成された反射測定試料設置用開口部を備えた積分球と、その積分球の内部に臨み、当該積分球の内面で集光された反射光を検出する検出器と、その検出器の出力に基づいて上記試料容器内の高粘性溶液による吸光度スペクトルを算出する吸光度スペクトル算出手段と、脂質量および/または水分量既知の複数の標準サンプルの各吸光度スペクトルを用いた多変量解析の定量手法に基づいて検量モデルを作成する検量モデル演算手段と、分析対象の高粘性溶液の吸光度スペクトルの測定結果と検量モデルとから、その高粘性溶液の脂質量および/または水分量を算出する脂質量および/または水分量算出手段を備えるとともに、上記積分球の外側には、分析対象の高粘性溶液を収容した試料容器を上記反射測定試料設置用開口部に対して一定の位置関係のもとに固定するための保持機構が設けられていることを特徴とする高粘性溶液の脂質量および/または水分量の分析装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017163891A1 (ja) * 2016-03-24 2017-09-28 コニカミノルタ株式会社 反射特性測定装置および反射特性を測定する方法
WO2022005812A1 (en) * 2020-06-29 2022-01-06 Spekciton Biosciences Llc Duvf-msi biophotonic analyzer device and methods for detecting pathogens on plants and measuring stress response

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