JP7189845B2 - 分光分析方法及び分光分析装置 - Google Patents
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Description
例えば上述した特許文献1に記載された分光分析装置において、測定プローブで分析対象の液体が接触する部位のうち、分光分析装置の光源からの光が透過する部位が分析対象の液体によって汚れてしまうと、正しい濃度を測定できなくなってしまう。そのため、該部位が汚れてしまった場合には、該部位の汚れを除去する等、測定プローブのメンテナンスを行う必要がある。
しかし、測定プローブの設置場所が離れているなどの距離的な理由や、測定プローブの設置場所が狭いなどのアクセス性の理由、周囲の温度などの作業環境上の理由、液体の性状に由来する理由など、測定プローブを配管等から取り外すことが容易ではない理由が存在する場合、測定プローブのメンテナンスを頻繁に行うことが難しい。
分析対象の液体を通過する光の光路長が第1光路長であるときに前記液体を通過した光の強度を計測する第1計測工程と、
前記光路長が前記第1光路長とは異なる第2光路長であるときに前記液体を通過した光の強度を計測する第2計測工程と、
前記第1計測工程で計測した前記強度に基づいて、前記光路長が前記第1光路長であるときの第1吸光度を算出する第1吸光度算出工程と、
前記第2計測工程で計測した前記強度に基づいて、前記光路長が前記第2光路長であるときの第2吸光度を算出する第2吸光度算出工程と、
前記第1吸光度算出工程で算出した前記第1吸光度と前記第2吸光度算出工程で算出した前記第2吸光度とに基づいて、前記液体における分析対象の成分の濃度を算出する濃度算出工程と、
を備える。
A=-log(I/I0)
=e×c×l ・・・(f1)
ここで、I0は入射光、すなわち例えば分光分析装置において光源からの光を照射する照射部から照射された光の強度である。Iは透過光、すなわち分析対象の液体を透過して例えば分光分析装置における受光部で受光した光の強度である。なお、ここでは、説明を簡略化するため、分光分析装置の照射部における光源から分析対象の液体に到達するまでの導光経路における光の減衰、及び、分析対象の液体を透過した光が分光分析装置の受光部に到達するまでの導光経路における光の減衰については無視する。
吸光度Aは無次元の値である。モル吸光係数eの単位は[mol/L/m]である。成分濃度cの単位は[mol/L]である。光路長lの単位は[m]である。
A’=e×c×l+β ・・・(f2)
しかし、光の透過部分に汚れが付着している場合、算出される吸光度A’には汚れによる吸光度βが含まれているため、1つの方程式に対し未知数が2つ(β及びc)となるため、このままでは成分濃度cが求められない。
式(f1)より、モル吸光係数e、及び成分濃度cが一定の場合、光路長lを長くすると、光路長lに比例して吸光度Aも増大する。光路長lをa倍とした場合の吸光度(A’’)は次の式(f3)で表される。
A’’=a×e×c×l+β ・・・(f3)
c=(A2-A1)/{e×l×(a-1)} ・・・(f4)
β=(a×A1-A2)/(a-1) ・・・(f5)
さらにこの場合において、例えば、光路長が第1光路長となるときと第2光路長となるときで、例えば分光分析装置において上記液体流通部に対して光が入射及び反射する回数が異なる場合について、以下、説明する。
そのような場合には、光路長が第1光路長となるときと第2光路長となるときとで、液体流通部への光の入射と液体流通部からの光の出射との繰り返し回数が異なるため、上述した式(f2)における汚れによる吸光度の増分の項と上述した式(f3)における汚れによる吸光度の増分の項とでは、値が異なる。
そこで、例えば上記繰り返し回数をnとし、この繰り返し回数nを式(f2)及び式(f3)における吸光度の増分の項にパラメータとして加えることで、繰り返し回数nの相違による吸光度の増分の違いを算出式に反映できる。
なお、次式(f6)及び次式(f7)において、β’は、繰り返し回数nの1回当たりの汚れによる吸光度の増分である。
A’=e×c×l+n1×β’ ・・・(f6)
A’’=a×e×c×l+n2×β’ ・・・(f7)
c={(n2/n1)×A1-A2}/[{(n2/n1)-a}×e×l]
・・・(f8)
β=(A2-a×A1)/(n2-n1×a) ・・・(f9)
例えば、光路長が第1光路長となるときと第2光路長となるときでは、光路が異なることがある。説明の便宜上、以下の説明では、光路長が第1光路長となるときの光路を第1光路と呼び、光路長が第2光路長となるときの光路を第2光路と呼ぶ。第1光路と第2光路とのように、光路が異なる場合、光路毎に汚れが付着した部分の光透過長さや光散乱挙動が異なって、繰り返し回数nの1回当たりの汚れによる吸光度の増分β’も光路毎に異なることも考えられる。
そこで、例えば第1光路と第2光路とにおける汚れによる吸光度の差を表す係数を予め求めておき、この係数を用いることで第1光路と第2光路とにおける汚れによる吸光度の差を算出式に反映できる。
なお、次式(f10)及び次式(f11)において、β’’は、第1光路における汚れによる吸光度の増分である。
A’=e×c×l+β’’ ・・・(f10)
A’’=a×e×c×l+γ×β’’ ・・・(f11)
c=(A1-A2)/{(1-a)×e×l} ・・・(f12)
β’’=(A2-a×A1)/{γ×(1-a)} ・・・(f13)
分析対象の液体が流通可能な液体流通部と、
前記液体流通部の外部から前記液体流通部を流通する前記液体に光源からの光を照射する照射部と、
前記照射部から照射されて前記液体を透過した光を反射する反射部と、
前記反射部で反射された光を前記液体流通部の外部で受光する受光部と、
を備え、
前記照射部は、前記光源からの光を反射して前記液体流通部に導く導光ミラーと、前記導光ミラーの位置又は角度の少なくとも何れか一方を変更する変更部とを有する。
前記変更部によって前記導光ミラーの位置又は角度の少なくとも何れか一方を変更する前と後とで前記受光部が受光したそれぞれの光の強度を計測する計測部と、
前記計測部で計測した前記強度と、前記照射部から照射される光の強度とに基づいて、前記変更部によって前記導光ミラーの位置又は角度の少なくとも何れか一方を変更する前の第1吸光度と、前記変更部によって前記導光ミラーの位置又は角度の少なくとも何れか一方を変更した後の第2吸光度とを算出する吸光度算出部と、
前記吸光度算出部が算出した前記第1吸光度と前記第2吸光度とに基づいて、前記液体における分析対象の成分の濃度を算出する濃度算出部と、
をさらに備える。
上記(7)の構成によれば、導光ミラーの位置又は角度の少なくとも何れか一方を変更する前と後とで反射部において光源からの光が照射される位置が変更されないので、反射部の汚れ方が場所によって異なる場合であっても、成分濃度cの算出精度の低下を抑制できる。
上記(7)の構成は、液体流通部のメンテナンスを頻繁に行うことが難しく、反射部を頻繁に清掃できない場合に有効である。
その点、上記(9)の構成によれば、上述した(5)の構成を有するので、分析対象の液体が放射性物質を含有する場合のように液体流通部のメンテナンスを頻繁に行うことが難しい場合であっても、正しい濃度を測定できる。
前記液体流通部を有する筐体と、
前記筐体に形成された開口を覆って前記液体流通部の内部と外部とを仕切るとともに、前記照射部から照射された光、及び、前記反射部で反射された光を透過させる窓板と、
前記筐体と前記窓板との隙間をシールするシール部材と、
をさらに備える。
したがって、上記(11)の構成によれば、窓板の透明度が低下し難くなるので、窓板の交換頻度を抑制してコスト増を抑制できる。
したがって、上記(12)の構成によれば、シール部材が劣化し難くなるので、シール部材の交換頻度を抑制してコスト増を抑制できる。
しかし、上記(13)の構成によれば、反射部が金属製であるので、反射部での光の反射率の低下を抑制できる。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
幾つかの実施形態の分光分析装置1は、たとえば、核燃料の再処理工場等の原子力施設において、配管や塔槽類の内部の液体のウランやプルトニウムなどの放射性物質の濃度をオンラインで測定するために用いられてもよい。
以下、幾つかの実施形態の分光分析装置1によって、上述したような原子力施設において、配管や塔槽類の内部の液体のウランやプルトニウムなどの放射性物質の濃度をオンラインで測定する場合について説明する。
分光分析装置1のうち、分析装置本体10は、高線量区域91よりも空間線量率が低い低線量区域92に設置されている。具体的には、分析装置本体10は、制御室等に設置されている。なお、幾つかの実施形態では、高線量区域91と低線量区域92とは、壁部93によって区画されている。
幾つかの実施形態では、分析装置本体10は、筐体内に、光源11と、分光器12と、検出器13と、制御装置14とを備えている。光源11、分光器12、及び検出器13は、分光分析装置として公知の構成であるので、説明を省略する。制御装置14の詳細については後で説明する。
幾つかの実施形態では、互いに離れた場所に設置されている分析装置本体10と測定プローブ100とは、上述したように複数の光ファイバケーブル20によって接続されている。光ファイバケーブル20は、図1に示すように、例えば高線量区域91を区画する壁部93等を貫通して敷設されることもある。
幾つかの実施形態では、測定プローブ100と、分析装置本体10とは、光源11からの光を測定プローブ100に導く1本の照射用光ファイバケーブル20aと、測定プローブ100からの光を検出器13に導く例えば3本の受光用光ファイバケーブル20bとによって接続されている。
図9に示す一実施形態の測定プローブ100と、分析装置本体10とは、光源11からの光を測定プローブ100に導く1本の照射用光ファイバケーブル20aと、測定プローブ100からの光を分光器12に導く1本の受光用光ファイバケーブル20bとによって接続されている。
図2は、幾つかの実施形態の測定プローブ100の構成を模式的に示す断面図である。幾つかの実施形態では、測定プローブ100は、筒状の管状部103を有する筐体101と、管状部103に取り付けられたフランジ部105とを有する。
図2に示す幾つかの実施形態の測定プローブ100では、管状部103の先端側に、配管80内を流れる分析対象の液体が流通可能な液体流通部110が設けられている。すなわち、管状部103の先端側には、配管80内を流れる分析対象の液体が液体流通部110に流入し、液体流通部110から流出するための開口部111が形成されている。
以下、図2に示す実施形態の測定プローブ100の構成を具体的に説明する。
2つの導光ミラー30のうちの一方は、照射用光ファイバケーブル20aによって導かれて端面21aから出射された光源11からの光を液体流通部110を流通する液体に向けて反射させるための照射用導光ミラー31である。
2つの導光ミラー30のうちの他方は、液体流通部110を流通する液体を透過した光を受光用光ファイバケーブル20bの端面21bに向けて反射させるための受光用導光ミラー32である。
角度変更用アクチュエータ41によって、照射用導光ミラー31の角度が変更されると、照射用導光ミラー31から液体流通部110へ向かう光の光路は、例えば、図2において実線で示した入射光路311から破線で示した入射光路313へと変更される。
また、角度変更用アクチュエータ41によって、照射用導光ミラー31の角度が変更されると、液体流通部110から受光用導光ミラー32へ向かう光の光路は、例えば、図2において実線で示した反射光路321から破線で示した反射光路323へと変更される。
なお、図2に示した実施形態では、照射用導光ミラー31の角度が変更されると、反射部130において光源11からの光が照射される位置Prが変更される。
隔壁107と窓板115との間には、隔壁107と窓板115との隙間をシールするシール部材117が配置されている。
したがって、照射用導光ミラー31からの光は、窓板115を透過して液体流通部110を流通する液体に到達できる。また、反射部130で反射された光は、窓板115を透過して受光用導光ミラー32に到達できる。すなわち、図2に示した実施形態では、窓板115を介して照射部3からの光を分析対象の液体に入射させることができ、窓板115を介して液体を透過した光を後述する受光部5で受光できる。したがって、図2に示した実施形態によれば、放射性物質を含有する液体が照射部3や受光部5に接触することを防止できる。
例えば窓板115が石英製であれば、放射性物質を含有する液体からの放射線によって窓板115が被ばくすると、窓板115の透明度が比較的短期間で低下してしまう。しかし、窓板115が酸化アルミニウム製であれば、放射性物質を含有する液体からの放射線によって窓板115が被ばくしても、窓板115の透明度が低下し難い。
したがって、図2に示した実施形態によれば、窓板115の透明度が低下し難くなるので、窓板115の交換頻度を抑制してコスト増を抑制できる。
したがって、図2に示した実施形態によれば、シール部材117が劣化し難くなるので、シール部材117の交換頻度を抑制してコスト増を抑制できる。
図2に示した実施形態では、反射部130が液体流通部110の内部に配置されているので、放射性物質を含有する液体に直接接触する。そのため、例えば、反射部130に例えば石英製のガラスが用いられていると、上述したように、ガラスの透明度が比較的短期間で低下してしまい、反射部130での光の反射率が比較的短期間で低下してしまう。
しかし、図2に示した実施形態によれば、反射部130が金属製であるので、反射部130での光の反射率の低下を抑制できる。
幾つかの実施形態では、計測部17は、変更部40によって導光ミラー30の角度を変更する前と後とで受光部5が受光したそれぞれの光の強度を計測する。すなわち、幾つかの実施形態では、計測部17は、検出器13に相当する。
幾つかの実施形態では、濃度算出部143は、吸光度算出部141が算出した第1吸光度A1と第2吸光度A2とに基づいて、後で説明するように、液体流通部110を流通する液体における分析対象の成分の濃度(成分濃度c)を算出する。
また、幾つかの実施形態では、汚れ度算出部145は、吸光度算出部141が算出した第1吸光度A1と第2吸光度A2とに基づいて、後で説明するように、窓板115及び反射部130の汚れによる吸光度の増分βを算出する。
以下、成分濃度c及び汚れによる吸光度の増分βの算出について説明する。
吸光特性を有する溶液成分の濃度は、次の式(f1)に示すランベルト・ベールの法則に従って定量することができる。式(f1)より、吸光度(A)はモル吸光係数(e)、成分濃度(c)、光路長(l)から求めることができ、モル吸光係数e、光路長lが既知であれば、吸光度Aを計測することで成分濃度cを求めることができる。
A=-log(I/I0)
=e×c×l ・・・(f1)
ここで、I0は入射光、すなわち照射部3から照射された光の強度である。Iは透過光、すなわち液体流通部110を流通する液体を透過して受光部5で受光した光の強度である。なお、ここでは、説明を簡略化するため、照射部3における光源11から液体流通部110を流通する液体に到達するまでの導光経路における光の減衰、及び、液体流通部110を流通する液体を透過した光が受光部5の分光器12に到達するまでの導光経路における光の減衰については無視する。
吸光度Aは無次元の値である。モル吸光係数eの単位は[mol/L/m]である。成分濃度cの単位は[mol/L]である。光路長lの単位は[m]である。
A’=e×c×l+β ・・・(f2)
しかし、窓板115又は反射部130に汚れが付着している場合、算出される吸光度A’には汚れによる吸光度βが含まれているため、1つの方程式に対し未知数が2つ(β及びc)となるため、このままでは成分濃度cが求められない。
式(f1)より、モル吸光係数e、及び成分濃度cが一定の場合、光路長lを長くすると、光路長lに比例して吸光度Aも増大する。光路長lをa倍とした場合の吸光度(A’’)は次の式(f3)で表される。
A’’=a×e×c×l+β ・・・(f3)
例えば、図2に示した実施形態では、制御装置14は、角度変更用アクチュエータ41、42を制御して、照射用導光ミラー31及び受光用導光ミラー32の角度を変更する。そして、図2に示した実施形態では、計測部17は、照射用導光ミラー31及び受光用導光ミラー32の角度の変更の前と後とで、受光部5が受光したそれぞれの光の強度を計測する。
そして、吸光度算出部141は、光路長lの変更前の第1吸光度A1と、光路長lの変更後の第2吸光度A2とを求める。
そこで、図2に示した実施形態では、濃度算出部143は、次式(f4)によって成分濃度cを求める。また、図2に示した実施形態では、汚れ度算出部145は、次式(f5)によって汚れによる吸光度の増分βを求める。
c=(A2-A1)/{e×l×(a-1)} ・・・(f4)
β=(a×A1-A2)/(a-1) ・・・(f5)
また、上述した幾つかの実施形態に係る分光分析装置1では、受光用導光ミラー32よりも分光器12側の光学部材は、例えば受光用光ファイバケーブル20bを含んでいる。以下の説明では、受光用導光ミラー32及び受光用導光ミラー32よりも分光器12側の光学部材のことを単に分光器側光学部材とも呼ぶ。
その点、上述した幾つかの実施形態に係る分光分析装置1によれば、液体流通部110のメンテナンスが行えず、窓板115又は反射部130に汚れが付着しても、正しい濃度を測定できる。
具体的には、例えば、照射用導光ミラー31はコリメータミラーであってもよい。そして、照射用導光ミラー31は、照射用光ファイバケーブル20aの端面21aから出射された光をコリメート光として、又は、反射部130において集束する光として液体流通部110を流通する液体に照射するように構成されていてもよい。
これにより、受光部5で受光する光の強度の低下を抑制できるので、成分濃度cの算出精度の低下を抑制できる。
図3に示す他の実施形態では、図2に示した実施形態に係る構成に加えて、さらに、反射部130Aの位置を変更可能に構成されている。具体的には、反射部130Aは、位置変更用アクチュエータ43によって、図3における矢印cで示すように、液体流通部110を挟んで対向する窓板115との離間距離が変更されるように構成されている。すなわち、図3に示す他の実施形態では、反射部130Aは、照射用導光ミラー31及び受光用導光ミラー32との距離が変更可能に構成されている。なお、図3に示す他の実施形態では、反射部130Aは平面鏡であってもよい。位置変更用アクチュエータ43は変更部40に含まれる。
ここで、反射部130Aの移動量と照射用導光ミラー31の角度変更とを適宜設定することで、反射部130Aの位置が変更されても、反射部130Aにおいて光源11からの光が照射される位置Prが変更されないようにすることができる。但し、反射部130A位置が変更されることで反射面131自体の位置が移動するため、該位置Prと照射用導光ミラー31及び受光用導光ミラー32との距離は変化する。
位置変更用アクチュエータ43によって、反射部130Aの位置が変更されることで、反射部130Aと窓板115との離間距離が変更されるので、液体流通部110内で液体を透過する光の光路長lが変化する。
図3に示した他の実施形態によれば、導光ミラー30の角度を変更する前と後とで反射部130Aにおいて光源11からの光が照射される位置が変更されないので、反射部130Aの汚れ方が場所によって異なる場合であっても、成分濃度cの算出精度の低下を抑制できる。
図3に示した他の実施形態は、液体流通部110のメンテナンスを頻繁に行うことが難しく、反射部130Aを頻繁に清掃できない場合に有効である。
図4に示す実施形態では、2つの導光ミラー30の角度ではなく、位置が移動可能に構成されている点で、図2に示した実施形態に係る構成とは異なる。具体的には、照射用導光ミラー31は、位置変更用アクチュエータ44によって、図4における矢印dで示すように、位置が変更されるように構成されている。
なお、照射用導光ミラー31と一緒に照射用光ファイバケーブル20aの端面21aの位置が移動してもよい。
また、位置変更用アクチュエータ44によって、照射用導光ミラー31の位置が変更されると、液体流通部110から受光用導光ミラー32へ向かう光の光路は、例えば、図4において実線で示した反射光路321Bから破線で示した反射光路323Bへと変更される。
図5に示す実施形態では、2つの導光ミラー30の角度と位置とが移動可能に構成されている点で、図2に示した実施形態に係る構成とは異なる。具体的には、照射用導光ミラー31は、角度変更用アクチュエータ41によって、図5における矢印aで示すように、角度が変更されるように構成されているとともに、位置変更用アクチュエータ44によって、図5における矢印dで示すように、位置が変更されるように構成されている。
図6は、上述した幾つかの実施形態に係る分光分析装置による分光分析方法における処理手順を示したフローチャートである。図6に示した処理は、制御装置14における不図示の演算回路によって実行される。
図6に示す、幾つかの実施形態に係る分光分析方法は、第1計測工程S10と、第1吸光度算出工程S20と、第2計測工程S30と、第2吸光度算出工程S40と、濃度算出工程S50と、汚れ度算出工程S60とを備える。
第1計測工程S10は、変更部40によって導光ミラー30の位置又は角度の少なくとも何れか一方を変更する前に受光部5が受光した光の強度を計測する工程である。
例えば図2に示した実施形態であれば、第1計測工程S10では、制御装置14は、照射用導光ミラー31が例えば予め設定された角度となるように角度変更用アクチュエータ41を制御するとともに、受光用導光ミラー32が例えば予め設定された角度となるように角度変更用アクチュエータ42を制御する。
すなわち、第1計測工程S10では、光路長lが変更前の光路長(第1光路長)であるときに分析対象の液体を通過した光の強度を計測する。
第1吸光度算出工程S20は、第1計測工程S10で計測した上記光の強度Iと、照射部から照射される光の強度I0とに基づいて、変更部40によって導光ミラー30の位置又は角度の少なくとも何れか一方を変更する前の第1吸光度A1を算出する工程である。
第1吸光度算出工程S20では、制御装置14の吸光度算出部141は、第1計測工程S10で計測した上記光の強度Iと、モル吸光係数eと、光路長lと、入射光の強度I0とに基づいて、上述した式(f1)から第1吸光度A1を算出する。
なお、モル吸光係数eと、入射光の強度I0と、変更部40によって導光ミラー30の位置又は角度の少なくとも何れか一方を変更する前の光路長lとは、予め不図示の記憶部で記憶されているものとする。
すなわち、第1吸光度算出工程S20では、第1計測工程S10で計測した強度Iに基づいて、光路長が変更前の光路長(第1光路長)であるときの第1吸光度A1を算出する。
第2計測工程S30は、変更部40によって導光ミラー30の位置又は角度の少なくとも何れか一方を変更した後で受光部5が受光した光の強度を計測する工程である。
例えば図2に示した実施形態であれば、第2計測工程S30では、制御装置14は、照射用導光ミラー31が例えば予め設定されていて第1計測工程S10において設定された角度とは異なる角度となるように角度変更用アクチュエータ41を制御する。また、制御装置14は、受光用導光ミラー32が例えば予め設定されていて第1計測工程S10において設定された角度とは異なる角度となるように角度変更用アクチュエータ42を制御する。
すなわち、第2計測工程S30では、光路長lが変更後の光路長(第2光路長)であるときに分析対象の液体を通過した光の強度を計測する。
第1吸光度算出工程S20は、第2計測工程S30で計測した上記光の強度Iと、照射部から照射される光の強度I0とに基づいて、変更部40によって導光ミラー30の位置又は角度の少なくとも何れか一方を変更した後の第2吸光度A2を算出する工程である。
第2吸光度算出工程S40では、制御装置14の吸光度算出部141は、第2計測工程S30で計測した上記光の強度Iと、モル吸光係数eと、光路長lと、入射光の強度I0とに基づいて、上述した式(f1)から第2吸光度A2を算出する。
なお、変更部40によって導光ミラー30の位置又は角度の少なくとも何れか一方を変更した後の光路長lは、予め不図示の記憶部で記憶されているものとする。
すなわち、第2吸光度算出工程S40では、第2計測工程S30で計測した強度Iに基づいて、光路長lが変更後の光路長(第2光路長)であるときの第2吸光度A2を算出する。
濃度算出工程S50は、第1吸光度算出工程S20で算出した第1吸光度A1と第2吸光度算出工程S40で算出した第2吸光度A2とに基づいて、液体流通部110を流通する液体における分析対象の成分の濃度を算出する工程である。
濃度算出工程S50では、制御装置14の濃度算出部143は、第1吸光度算出工程S20で算出した第1吸光度A1と、第2吸光度算出工程S40で算出した第2吸光度A2と、変更部40によって導光ミラー30の位置又は角度の少なくとも何れか一方を変更する前と後とでの光路長lの変化倍数aとに基づいて、上述した式(f4)から成分濃度cを求める。
汚れ度算出工程S60は、第1吸光度算出工程S20で算出した第1吸光度A1と第2吸光度算出工程S40で算出した第2吸光度A2とに基づいて、液体流通部110における光の通過経路における汚れ度合いを算出する工程である。
汚れ度算出工程S60では、制御装置14の汚れ度算出部145は、第1吸光度算出工程S20で算出した第1吸光度A1と、第2吸光度算出工程S40で算出した第2吸光度A2と、変更部40によって導光ミラー30の位置又は角度の少なくとも何れか一方を変更する前と後とでの光路長lの変化倍数aとに基づいて、上述した式(f5)から窓板115及び反射部130の汚れによる吸光度の増分βを求める。
なお、汚れ度算出工程S60おける窓板115及び反射部130の汚れによる吸光度の増分βの算出は、常時実施する必要はなく、例えば数日等の期間をあけて定期的に算出するようにしてもよい。
以下、測定プローブ100の構成の変形例について説明する。図7及び図8は、測定プローブ100の構成の変形例の一例について説明するための図である。なお、図2に示した実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、詳細な説明については省略する。
図7及び図8に示す変形例では、液体流通部110内に配置された平面鏡である第1反射部151と、隔壁107よりも図示上方の空間109に配置された第2反射部150とが設けられている。図7及び図8に示す変形例では、第1反射部151は、例えば図2に示した実施形態に係る反射部130Aと同じ位置に配置されている。なお、図7及び図8に示す変形例では、第2反射部150は、空間109内で窓板115上に配置されていてもよい。
図7及び図8に示す変形例では、図7に示した光路(第1光路とも呼ぶ)331と、図8に示した光路(第2光路とも呼ぶ)332とで、上述した幾つかの実施形態と比べて、液体流通部110における光路長を大きく変更できる。
図9及び図10に示す変形例では、図7及び図8に示した変形例に係る第1反射部151に代えて第3反射部153を有する。第3反射部は、平面鏡であって窓板115の接液面115aに対して略平行な第1反射面153aと、第1反射面153aの図示右端と図示他端とに形成されて、第1反射面153aに対して傾斜した一対の第2反射面153bとを有する。
これに対し、角度変更用アクチュエータ41によって、照射用導光ミラー31を駆動することで光路を変更すると、図10に示すように、照射用光ファイバケーブル20aから射出された光は、第1反射面153aで最初に反射された後、第2反射部150で再び第1反射面153aに向けて反射される。そして、照射用光ファイバケーブル20aから射出された光は、第1反射面153aで2回目に反射された後、受光用導光ミラー32で反射されて受光用光ファイバケーブル20bに入射する。
図9及び図10に示す変形例では、図9に示した光路(第1光路とも呼ぶ)333と、図10に示した光路(第2光路とも呼ぶ)334とで、上述した幾つかの実施形態と比べて、液体流通部110における光路長を大きく変更できる。
図11及び図12は、光路長を変更するための構成についての変形例の一例について説明するための図である。図11に示すように、例えば、照射用光ファイバケーブル20aの端面21aに遮光フィルタ装置160を配置する。この遮光フィルタ装置160は、例えば図12に示すように、照射用光ファイバケーブル20aの端面21aから出射される光の透過を許可する透過部161と、照射用光ファイバケーブル20aの端面21aから出射される光を遮る遮光部162とを有している。遮光フィルタ装置160は、例えば制御装置14からの制御信号によって透過部161と遮光部162との位置を変更可能に構成されている。なお、図12は、図11において、照射用導光ミラー33から照射用光ファイバケーブル20aの方を見たときの模式的な図である。
図11に示す変形例では、遮光フィルタ装置160によって、例えば図12の上側の図に示すように図示下側に遮光部162が配置されて図示上側に透過部161が形成された場合、照射用光ファイバケーブル20aからの光は、図示上側に形成された透過部161を通過して第1反射面33aで反射される。この場合の光路を第1光路335とする。
図11に示す変形例では、遮光フィルタ装置160によって、例えば図12における下側の図に示すように図示上側に遮光部162が配置されて図示下側に透過部161が形成された場合、照射用光ファイバケーブル20aからの光は、図示下側に形成された透過部161を通過して第2反射面33bで反射される。この場合の光路を第2光路336とする。
図11及び図12に示す変形例では、遮光フィルタ装置160における遮光部162の配置位置を変更することで、第1光路335と第2光路336とを切り替えることができる。
例えば、図7及び図8に示すように、分光分析装置1において液体流通部110に対して光が入射及び反射する回数が異なる場合に、成分濃度c及び汚れによる吸光度の増分βを算出するための方法について説明する。
例えば図7及び図8に示す変形例では、第1光路331と第2光路332とで、液体流通部110への光の入射と液体流通部110からの光の出射との繰り返し回数が異なるため、上述した式(f2)における汚れによる吸光度の増分の項と上述した式(f3)における汚れによる吸光度の増分の項とでは、値が異なる。
これにより、上記式(f2)を次式(f6)で置き換えることができ、上記式(f3)を次式(f7)で置き換えることができる。
なお、次式(f6)及び次式(f7)において、β’は、繰り返し回数nの1回当たりの汚れによる吸光度の増分である。
A’=e×c×l+n1×β’ ・・・(f6)
A’’=a×e×c×l+n2×β’ ・・・(f7)
c={(n2/n1)×A1-A2}/[{(n2/n1)-a}×e×l]
・・・(f8)
β=(A2-a×A1)/(n2-n1×a) ・・・(f9)
これにより、光路長が第1光路長であるときと、第1光路長とは異なる第2光路長となるときで、液体流通部110に対して光が入射及び反射する回数が異なる場合であっても成分濃度c、及び、上述した汚れによる吸光度の増分β’を求めることができる。
例えば上述したように、第1光路331と第2光路332とでは光路が異なる。説明の便宜上、以下の説明では、例えば第1光路331における光路長lと第1光路長と呼び、第2光路332における光路長lと第2光路長と呼ぶ。
そこで、例えば第1光路331と第2光路332とにおける汚れによる吸光度の差を表す係数を予め求めておき、この係数を用いることで第1光路331と第2光路332とにおける汚れによる吸光度の差を算出式に反映できる。
なお、次式(f10)及び次式(f11)において、β’’は、第1光路331における汚れによる吸光度の増分である。
A’=e×c×l+β’’ ・・・(f10)
A’’=a×e×c×l+γ×β’’ ・・・(f11)
c=(A1-A2)/{(1-a)×e×l} ・・・(f12)
β’’=(A2-a×A1)/{γ×(1-a)} ・・・(f13)
これにより、光路毎に汚れが付着した部分の光透過長さや光散乱挙動が異なる場合であっても成分濃度c、第1光路331における汚れによる吸光度の増分β’’及び、第2光路332における汚れによる吸光度の増分γ×β’’を求めることができる。
以下、上述した係数γの求め方の一例を説明する。
例えば、上述した液体流通部110を分析対象の液体の実液または模擬液に所定時間浸漬し、液体流通部110の光学部材(例えば窓板115や、反射部130、130A、130B、第1反射部151、第3反射部153等)に模擬的に汚れを付着させる。
このようにして汚れを付着させた液体流通部110を用いて異なる光路(例えば上述した第1光路331及び第2光路332)における汚れによる吸光度を求め、その比からγを求める。その際、液体流通部110には、例えば純水等の液体を満たしておくことで、測定された吸光度が汚れによる吸光度と一致するようにしておくとよい。
なお、模擬的に汚れを付着させる際に、液体流通部110における液体の流れや、濃度、温度、浸漬時間等の浸漬条件は実機使用条件に近いことが望ましい。また、同じ条件で複数のデータを取得したり、液体流通部110における液体の流れや、濃度、温度、浸漬時間等の浸漬条件をパラメータとして複数のデータを取得し、平均値を取ることでばらつきも考慮した値とすることが望ましい。
3 照射部
5 受光部
10 分析装置本体
11 光源
12 分光器
13 検出器
14 制御装置
17 計測部
20 光ファイバケーブル
30 導光ミラー
31 照射用導光ミラー
32 受光用導光ミラー
40 変更部
41、42 角度変更用アクチュエータ
100 測定プローブ
110
115 窓板
117 シール部材
130 反射部
141 吸光度算出部
143 濃度算出部
Claims (8)
- 分析対象の液体が流通可能な液体流通部と、
前記液体流通部の外部から前記液体流通部を流通する前記液体に光源からの光を照射する照射部と、
前記照射部から照射されて前記液体を透過した光を反射する反射部と、
前記反射部で反射された光を前記液体流通部の外部で受光する受光部と、
を備え、
前記照射部は、前記光源からの光を反射して前記液体流通部に導く導光ミラーと、前記導光ミラーの位置又は角度の少なくとも何れか一方を変更する変更部とを有し、
前記変更部によって前記導光ミラーの位置又は角度の少なくとも何れか一方を変更する前と後とで前記受光部が受光したそれぞれの光の強度を計測する計測部と、
前記計測部で計測した前記強度と、前記照射部から照射される光の強度とに基づいて、前記変更部によって前記導光ミラーの位置又は角度の少なくとも何れか一方を変更する前の第1吸光度と、前記変更部によって前記導光ミラーの位置又は角度の少なくとも何れか一方を変更した後の第2吸光度とを算出する吸光度算出部と、
前記吸光度算出部が算出した前記第1吸光度と前記第2吸光度とに基づいて、前記液体における分析対象の成分の濃度を算出する濃度算出部と、
を備える
分光分析装置。 - 前記変更部は、前記導光ミラーの位置又は角度の少なくとも何れか一方を変更する前と後とで前記反射部において前記光源からの光が照射される位置が変更されないように、前記導光ミラーの位置又は角度の少なくとも何れか一方を変更する
請求項1に記載の分光分析装置。 - 前記照射部は、前記光源からの光をコリメート光として、又は、前記反射部において集束する光として前記液体流通部を流通する前記液体に照射する
請求項1又は2に記載の分光分析装置。 - 前記液体は、放射性物質を含有する
請求項1乃至3の何れか1項に記載の分光分析装置。 - 前記液体流通部を有する筐体と、
前記筐体に形成された開口を覆って前記液体流通部の内部と外部とを仕切るとともに、前記照射部から照射された光、及び、前記反射部で反射された光を透過させる窓板と、
前記筐体と前記窓板との隙間をシールするシール部材と、
をさらに備える
請求項4に記載の分光分析装置。 - 前記窓板は、酸化アルミニウム製である
請求項5に記載の分光分析装置。 - 前記シール部材は、金属製である
請求項5又は6に記載の分光分析装置。 - 前記反射部は、前記液体流通部の内部に配置されており、金属製である
請求項4乃至7の何れか一項に記載の分光分析装置。
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