JP2015183036A - 水性塗料組成物及び塗装物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
ブロックイソシアネートは、硬化性反応基としてイソシアネート基を有する硬化剤がブロック剤と結合し、イソシアネート基がいわゆるブロック(マスク)化されたものである。一般に、硬化性樹脂を必須とする主剤と硬化剤とを含む一液型塗料において用いられ、塗装後、焼付け時にブロック剤が解離して硬化(架橋)反応を生じることになる。特に、工業塗料分野における積層塗膜を形成する塗装システム等において、電着、中塗り、ベース、クリヤー等に広く適用されているものである。
またオキシム官能基の炭素が少なくとも1個の求電子性官能基を有する、オキシム含有化合物が、イソシアネートに対して作用することにより得ることができる、少なくとも1個のマスク化されたイソシアネート官能基を有する、マスク化されたイソシアネートが開示されている(例えば、特許文献2等を参照)。
これらによれば、ブロック化(マスク化)されたイソシアネートが塗料用硬化剤として有用であり、また、特許文献2においては、制約された時間内で比較的に低い解離温度を有し、かつ、重合技術において受け入れられる解離収率を有するとされている。
また特許文献2では、イソシアネートをメチルエチルケトキシム(MEKO)でブロックしたときの焼付温度に対して、硬度とメチルエチルケトン(MEK)耐性に関する実施例が示されている。しかし、この先行技術においては、実質的に溶剤系を検討対象としていて、水系塗料に対する実施はなされていない。溶剤系と水系では、硬化剤の塗膜性能等に対する影響が異なるため比較することはできない。例えば、溶剤系の方が塗料の均一性が高く、硬化が均一に進行することは一般的に知られている。硬度とMEK耐性に関して、架橋形成のプロセスは大きく分類して樹脂の分子量増大と三次元架橋構造形成に分けることができる。ここで硬度とMEK耐性は、三次元架橋構造形成の初期段階で満足される項目である。特許文献2の実施例において、硬度400で頭打ちしていることでも示されている。MEK耐性が発現するのは、樹脂が溶解しないレベルで架橋されたときであるので、三次元架橋の初期段階であるということは容易に理解できる。したがって、硬度とMEK耐性を満足することは実用性能を判断する指標にはならず、特に、溶剤系塗料の硬度とMEK耐性が記載されているからといって、これによって水系塗料の実用性を判断する指標にはなり難いと考えられる。
そして、従来よりも低温で焼付けて硬化させ、また同時に塗膜性能を向上させるためには、比較的低温における焼付け条件であっても硬化反応性を高めることが必要となるが、これと貯蔵安定性とは技術的にトレードオフの関係にあるため、塗膜性能を向上させつつ貯蔵安定性の低下を抑制することは、工業塗料分野における重要な課題の一つであるといえる。
このように水性塗料組成物における主剤となる樹脂、イソシアネートの骨格及びブロック剤を特定すれば、上記課題をみごとに解決できることに想到し、工業用途等において用いられる塗料組成物において、環境対応とエネルギーコストの削減に加えて、塗膜性能及び安定な工業製品等の生産を可能とする貯蔵安定性を同時に達成できることに到達したものである。
なお、本発明の発明特定事項の説明とともに、本発明の好ましい形態を示すが、本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
また数値範囲で示した事項について、いくつかの数値範囲がある場合、それらの下限値と上限値とを選択的に組合せて好ましい形態とすることができる。
上記アクリル系樹脂分散体としては、水性塗料組成物において水等の水系媒体にアクリル系樹脂が分散したものであればよく、エマルション、ディスパージョンが好適であり、また、本明細書においては、水等の水系媒体に溶解するとされる水溶性アクリル系樹脂も含むものとする。
なお、上記アクリル系樹脂分散体は、アクリル系樹脂分散体として水性塗料組成物中に添加してもよく、アクリル系樹脂と他の成分とを水系媒体に分散させたものとして水性塗料組成物中に添加してもよい。また、アクリル系樹脂を水性塗料組成物中に分散させることによって分散体を形成してもよい。
これによって、塗装性、塗膜間の密着性、物性、外観といった基本特性を充分に発揮させることができる。上記単量体(A)、(B)、(C)はそれぞれ、1種であってもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
なお、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」の用語はそれぞれ、アクリル又はメタクリル、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「アクリル系」の用語は、アクリル及び/又はメタクリル系単量体単位を有することを意味するものである。
上記オキシラン環を有する単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有する単量体等を用いればよく、上記アミン化合物としては、一級アミン、二級アミン、三級アミン等を用いればよい。また、アミノ基を有する単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また溶液重合−転相の場合、溶液重合で合成したアクリル系樹脂を水転相させたり、水分散させてアクリルディスパージョン系としたりすればよく、このような形態は本発明の好ましい実施形態である。
上記ブロックイソシアネートは、ブロック部位と芳香族イソシアネートによるイソシアネート部位とから構成されるものを必須とし、該ブロック部位の解離温度が120〜150℃である。本明細書中において、必須成分となる上記ブロックイソシアネートのことを、上記解離温度を有するブロックイソシアネートともいう。
上記ブロック部位は、ブロック剤の反応性基を芳香族イソシアネートのイソシアネート基と反応させ、ブロック剤と芳香族イソシアネートとを結合させることによって形成することができる。ブロック部位は、該ブロック剤に由来する部位であり、イソシアネート部位は、該芳香族イソシアネートに由来する部位である。すなわち、−NHCO−の結合を介してブロック剤における反応性基の残基部分が結合した構造となり、ブロック剤における残基部分を含むブロック剤由来の部分がブロック部位、−NHCO−結合を含む芳香族イソシアネートからなる部分がイソシアネート部位となる。
上記解離温度を有するブロックイソシアネートにおいて、すべてのイソシアネート部位のモル数に対するブロック部位のモル数の割合、すなわちブロック化率については、通常、実質的に100%となるようにすることが好ましい。
上記解離温度の決定方法としては、例えば、水性塗料組成物の焼付け前の未硬化塗膜を作製し、剛体振子自由減衰振動法(Free Damped Oscillation Method)によって硬化開始温度を測定する方法が好適である。
上記剛体振子自由減衰振動法は、AND社製のPRT−3000W(商品名)にて測定することができる。測定条件及び解離温度(硬化開始温度)の決定については、測定用鉄板に2ミルドクターブレードにて塗料を塗布し、30分間かけ、25℃から170℃に一定速度で昇温し、剛体振子自由減衰振動法(剛体振子名:FRB−300(商品名)、エッジ:RBE−160(商品名))にて周期が減衰し始める温度を解離温度(硬化開始温度)とすればよい。
これら芳香族イソシアネートは、特定のブロック剤と組合せて用いることにより、優れた低温硬化性を発揮できるものである。
上記窒素原子に活性化水素又は水酸基が結合した化合物としては、該活性化水素又は水酸基がイソシアネート基と反応する低分子化合物であり、それによって形成されるブロック部位が上記解離温度を有することになるものであればよい。また、塗料用硬化剤として、好ましくは後述する硬化温度で使用できる硬化剤として好適なブロックイソシアネートを生成するものであればよい。
オキシム類は、窒素原子に結合した水酸基における活性化水素が反応してイソシアネートをブロックすることができ、ピラゾール類及び第二級アミンは、窒素原子に結合した活性化水素が反応してイソシアネートをブロックすることができる。このようにブロック部位を形成する化合物を特定することにより、本発明の作用効果である低温硬化性及び貯蔵安定性をより効果的に発揮することができる。
このように、イソシアネート、そのブロック剤は、1種のみ用いられてもよいし、2種以上が併用されていてもよいことから、上述したこれらの化合物の例示においても、1種又は2種以上を選択して用いることができる。
この場合、2種のブロックイソシアネートの混合物が示すブロック部位の解離温度は、上記範囲内となる。2種以上のブロックイソシアネートの配合割合としては、例えば、2種のブロックイソシアネートを併用する場合、両者の特性が発揮されるように、1種当たりの配合割合として、30〜70質量%であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましい。
上記水性塗料組成物において、アクリル系樹脂分散体とブロックイソシアネートとの組成比としては、ブロックイソシアネートが有するイソシアネート部位とアクリル系樹脂分散体が有する水酸基とのモル比が、0.2〜2.0(イソシアネート部位/水酸基)となるようにすることが好ましい。実質的にそのような範囲にすればよく、本発明の効果の発現に支障をきたさなければ、工業塗料分野において許容されている誤差範囲で前後してもよい。これにより、耐衝撃性等の塗膜性能に優れ、また貯蔵安定性も充分に確保することができる。より好ましくは、0.5〜1.5である。
上記水性塗料組成物の製造における好ましい実施形態としては、(1)ブロックイソシアネート合成工程、(2)アクリル系樹脂合成工程、(3)ブロックイソシアネートのアクリル系樹脂ディスパージョン(AcBI)調製工程、(4)アクリル系樹脂分散体の調製工程、(5)顔料分散体調製工程、(6)水性塗料組成物調製工程の各工程を実施することによって行われる。
上記ブロックイソシアネートのアクリル系樹脂ディスパージョン(AcBI)調製工程は、ブロックイソシアネートをアクリル系樹脂で分散する分散体調製工程であり、このような工程を含む水性塗料組成物の製造工程は、本発明における好ましい実施形態の一つである。また顔料を含有する水性塗料組成物を調製する場合(顔料分散工程を含む場合)、通常では、ブロックイソシアネートのアクリル系樹脂ディスパージョン(AcBI)調製工程と顔料分散体調製工程とを分けて実施されることになる。
本発明の水性塗料組成物を用いて塗装物を製造するにあたっては、通常では、水性塗料組成物を塗装して塗膜を形成する工程(塗装工程)及び該塗膜を硬化する工程(硬化工程)をこの順に行うことになる。塗装工程及び硬化工程はそれぞれ、複数回行ってもよいが、積層塗膜を形成する場合は、塗装工程を複数回行った後に硬化工程を行ってもよい。
上記塗装工程においては、適用用途、塗装方法等に応じて水性塗料組成物の粘度等を調整し、当業者において通常用いられるエアースプレー、エアレススプレー、静電塗装等の塗装方法を用いて、被塗物上に未硬化の塗膜を形成することができる。
上記硬化工程における加熱時間としては、硬化温度等の塗装条件に応じて適宜設定することができるが、好ましくは10〜30分である。
本発明の水性塗料組成物の適用用途としては、例えば、自動車ボディー、産業機械、建設機械、家具・物置等の屋内外設置物、その他の工業製品等に用いられる工業塗料分野への適用が好適である。塗装される基材としては、金属素材の他、プラスチック素材等に対しても適用できる。上記金属素材としては、鉄板、鋼板、アルミニウム板等が挙げられる。
水性塗料組成物が塗装される被塗物としては、これらの素材に化成処理等の表面処理又は塗装が施された鋼板を用いることができる。化成処理鋼板としては、リン酸亜鉛処理、ジルコニウム処理、クロメート処理等の化成処理鋼板を用いることができる。水性塗料組成物が中塗り、上塗り又は上塗りクリヤー塗料として用いられる場合、塗装鋼板としてはそれぞれ、上記化成処理鋼板等に、電着、中塗り又は上塗り塗料が塗装された鋼板を用いることができる。本発明の好ましい実施形態としては、上記被塗物が、化成処理鋼板又は塗装鋼板である形態であり、より好ましくは、リン酸亜鉛処理鋼板又は該鋼板に塗装が施された鋼板である。リン酸亜鉛処理鋼板上に本発明の水性塗料組成物からなる塗膜を形成した場合には、優れた密着性と防錆性を発揮させることができる。
また、本発明の塗装物の製造方法は、本発明の水性塗料組成物を用いて低温硬化を行うものであるので、エネルギーコストやCO2の削減に寄与することができ、また、優れた塗膜性能を同時に達成することができる。
装置:東ソー社製HLC−8220 GPC
カラム:Shodex KF−606M、KF−603
流速:0.6ml/min
検出器:RI、UV254nm
移動層:テトラヒドロフラン
標準サンプル:TSK STANDARD POLYSTYRENE(東ソー社製)、A−500、A−2500、F−1、F−4、F−20、F−80、F−700、1−フェニルヘキサン(アルドリッチ社製)
(ステップ1:ブロックイソシアネートの合成)
芳香族イソシアネートとしてジフェニルメタンジイソシアネートのプレポリマー(住化バイエルウレタン社製、「スミジュールE−21−2」;イソシアネート基(NCO基)含有率9.0%、NCO当量467)100部、ジブチルジグリコール(DBDG)39部、錫触媒(日東化成社製、「TVS♯Tin Lau」)0.022部を、フラスコ(コルベン)に入れ、混合した。本実施例におけるイソシアネート基と水酸基とのモル比(NCO基/OH基)は1.32であった。この混合物を70℃まで昇温した後、ブロック剤としてメチルエチルケトンオキシム100部を120分間かけて等速で滴下した。滴下中、反応液が70〜75℃の範囲内に保たれるように制御した。滴下完了後には、反応液を30分間エージング(放置・熟成)した。エージング後の反応液について、ジブチルアミンを用いた滴定法により求めたNCO当量、及び赤外吸収スペクトルを測定したときの2270cm−1付近のNCO基由来のピークが消失していたことに基づき、NCO基がブロックされたことを確認した。続いて、60℃以下になった反応液にメタノール2部を加えた。室温まで冷却した後、得られたブロックイソシアネートをフラスコから取り出した。
スチレン(ST)28.53部、アクリル酸n−ブチル(NBA)27.34部、メタクリル酸n−ブチル(NBMA)19.45部、ヒドロキシエチルメタアクリレート(HEMA)16.24部、メタクリル酸(MAA)8.44部を混合し、モノマーの混合液を準備した。フラスコに、メチルプロピレンジグリコール(MFDG)22.5部を入れ、140℃に昇温し、窒素バブリングした。続いて、140℃に保ったMFDG中に、モノマーの混合液100部、ラジカル重合開始剤としての(2−エチルヘキサノイル)(tert−ブチル)ぺルオキシド(化薬アクゾ社製、「カヤエステルO」)7部を、180分間かけて等速で滴下した。滴下完了後には反応液を30分間エージングして冷却し、得られたアクリル系樹脂をフラスコから取り出した。得られたアクリル系樹脂は、水酸基価が70mgKOH/g、酸価が55mgKOH/g、数平均分子量が5,000であった。
ステップ1で得られたブロックイソシアネート100部、ステップ2で得られたアクリル系樹脂100部を混合し、5分間攪拌した後、中和用アミンとしてジメチルエタノールアミン(DMEA)3.3部を加え、更に5分間攪拌してアクリル系樹脂のカルボン酸を100%中和した。続いて、蒸留水250部を10分間かけて等速で滴下した。更に10分間攪拌してブロックイソシアネートのアクリルディスパージョン(AcBI)を得た。
ステップ2で得られたアクリル系樹脂100部に対し、中和用アミンとしてDMEA3.3部を加え、5分間攪拌した。続いて、蒸留水73部を10分間かけて等速で滴下した。更に10分間攪拌してアクリル系樹脂水分散体を得た。
ステップ4で得られたアクリル系樹脂水分散体44部に対し、白顔料としての酸化チタン(石原産業社製、「CR−97」)100部と、蒸留水69部とを加え、10分間攪拌した。その後、ガラスビーズを水分散体の全量に対して80%となる量で加え、周速8m/sの攪拌速度で60分間攪拌した。攪拌後、ガラスビーズを濾過し、顔料分散体を得た。
ステップ3で得られたAcBI49部、ステップ5で得られた顔料分散体100部、2−エチル−1−ヘキサノール(2EHOH)5部を加え、10分間攪拌することによって塗料を作製した。
ステップ6で得られた塗料を25℃に調整してから、蒸留水を添加し、更に高速分散機(プライミクス社製、「ホモディスパー」)を用いて1000rpmにて1分間攪拌を実施することによって、フォードカップ♯4に準じる粘度カップNK−2(アネスト岩田社製)で測定したときに40秒となるように粘度調整した。この塗料を用いて温度35℃、湿度35%の環境下で静電塗装した。塗装後10分間静置し、140℃で20分間焼き付けを行うことにより、塗膜を形成した。
ステップ1で使用したイソシアネートプレポリマーの種類、ブロック剤の種類、焼付け温度を下記表1のように変更したことを除いて、実施例1と同様にして塗料を作製し、塗装を行った。実施例3、6及び比較例5では、2種類のブロック剤を併用し、各ブロック剤の使用量は50部ずつとした。また、比較例3では、比較例2と同じ塗料を用い、焼付け温度を160℃に変更した。
実施例1〜6、比較例1〜6で得られた塗膜の物性について下記の評価試験を行った。なお、試験に用いる塗膜は、厚さ40μmとした。下記表2に試験結果をまとめて示す。
ステップ7で作製した静電塗装後、焼付け前の未硬化塗膜について、AND社製のPRT−3000W(商品名)を用いて、剛体振子自由減衰振動法によって硬化開始温度を測定した。
測定条件及び硬化開始温度の決定については、測定用鉄板に2ミルドクターブレードにて塗料を塗布し、30分間かけ、25℃から170℃に一定速度で昇温し、剛体振子(商品名:FRB−300)によってエッジ(商品名:RBE−160)を介して未硬化塗膜に振動を与え、得られた剛体振子の自由減衰振動データから周期が減衰し始める温度を求め、硬化開始温度とした。
JIS−K−5600−5−6(クロスカット法)に準拠し、次のようにして試験を行った。まず、試験片に鋭利な刃物で刃が金属素地に達するように1mm間隔で相互に直交するように、けがき線を11本ずつ引き、1×1mmの升目を100個作った。そして、JIS Z 1522に規定された粘着テープを貼付した後、すぐに剥離し、100個の枡目について塗膜の剥がれの有無を確認した。試験結果は、剥がれが発生しなかった良品の数に基づき、以下の基準で判定した。
A:100個のいずれにも欠けも見られず
B:100個、縁に欠けが見られた
C:99〜80個(1〜20個において、剥がれが見られた)
D:79〜51個(21〜49個において、剥がれが見られた)
E:50〜0個(50個以上において、剥がれが見られた)
JIS−A−1531に準拠し、次のようにして試験を行った。まず、試験片に直径25mmの円状にカットしたWHATMAN社製の定性濾紙グレード3を2枚重ね、10%アンモニア水を0.4g染み込ませた。23℃で6時間静置後、試験片を純水で洗浄した。更に24時間経過後に、塗膜の状態を観察した。試験結果は、JIS K 5600−8−2に基づき、以下の基準で判定した。
A:異常なし
B:膨れの量(密度)の等級2以下の軽度の異常あり
C:膨れの量(密度)の等級3の異常あり
D:膨れの量(密度)の等級4の異常あり
E:膨れの量(密度)の等級5以上の重度の異常あり
JIS−K−5600−5−3(耐おもり落下性試験)に準拠し、次のようにして試験を行った。試験の種類は、デュポン式を採用し、直径1/2インチの撃ち型と受け台を用い、500gの重りを、15〜30cmの間で5cmごとに高さを変えて、塗膜の上に落とし、それぞれ衝撃面における塗膜の割れ、剥がれの有無を確認した。試験結果は、塗膜の割れ、剥がれが生じなかった重りの高さに基づき、以下の基準で判定した。
A:30cm以上
B:25cm
C:20cm
D:15cm
E:10cm
JIS−5600−7−2(連続結露法)に準拠し、50℃、95%RH以上の環境に塗膜を96時間放置し、膨れ、素地の錆の発生の有無について外観確認を実施した。外観確認の結果は、JIS K 5600−8−2に基づき、以下の基準で判定した。
A:異常なし
B:膨れの量(密度)の等級2以下の軽度の異常あり
C:膨れの量(密度)の等級3の異常あり
D:膨れの量(密度)の等級4の異常あり
E:膨れの量(密度)の等級5以上又はその他の重度の異常あり
続いて、25℃にて24時間乾燥後、上述した密着性試験についても実施した。
耐湿性の評価は、外観確認の結果と密着性試験の結果のうち、低い評価となった方を採用した。
40℃の恒温室で6週間保管し、貯蔵前後の塗料をスプレー塗装し、塗膜性能の変化(塗膜外観の低下、耐湿性の低下等)を確認した。試験結果は、以下の基準で判定した。
A:塗膜性能に差異なし
B:塗膜性能が若干低下
C:塗膜性能が少し低下
D:塗膜性能が低下
E:塗膜性能が著しく低下
芳香族イソシアネートを用いた実施例1〜6はいずれも、焼付け条件が従来よりも低温の140℃であったにも関わらず、耐衝撃性が最も高い評価となっており、低温硬化性に優れていることが確認された。一方、脂肪族イソシアネートを用いた比較例1及び2は、耐衝撃性が顕著に劣る結果となっていた。また、比較例2の塗料と同じ塗料を、160℃で焼付けた比較例3では、耐衝撃性が顕著に改善された。これらの結果から、芳香族イソシアネートを用いることで低温硬化性が向上し、140℃で充分に硬化させることができることが分かった。
Claims (11)
- ブロックイソシアネートを用いた水性塗料組成物であって、
該水性塗料組成物は、アクリル系樹脂分散体を含み、
該ブロックイソシアネートは、ブロック部位と芳香族イソシアネートによるイソシアネート部位とから構成されるものを必須とし、該ブロック部位の解離温度が120〜150℃である
ことを特徴とする水性塗料組成物。 - 前記ブロック部位は、窒素原子に活性化水素又は水酸基が結合した化合物から形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の水性塗料組成物。
- 前記ブロック部位は、オキシム類から形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性塗料組成物。
- 前記ブロック部位は、ピラゾール類から形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性塗料組成物。
- 前記ブロック部位は、第二級アミンから形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性塗料組成物。
- 前記ブロックイソシアネートは、解離温度が120〜150℃であるブロック部位として異なる2種以上を併用したものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水性塗料組成物。
- 前記水性塗料組成物は、前記アクリル系樹脂分散体が水酸基を有するものであり、前記ブロックイソシアネートのイソシアネート部位と前記水酸基とのモル比(イソシアネート部位/水酸基)が0.2〜2.0であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の水性塗料組成物。
- 前記水性塗料組成物は、前記アクリル系樹脂分散体が水酸基及び酸基を有するものであり、水酸基価が20〜200mgKOH/g及び酸価が5〜150mgKOH/gであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の水性塗料組成物。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の水性塗料組成物を製造する方法であって、
該水性塗料組成物の製造方法は、ブロックイソシアネートをアクリル系樹脂で分散する分散体調製工程を含むことを特徴とする水性塗料組成物の製造方法。 - 請求項1〜8のいずれかに記載の水性塗料組成物を用いて塗装物を製造する方法であって、
該塗装物の製造方法は、水性塗料組成物を被塗物に塗装して塗膜を形成する工程及び該塗膜を硬化する工程を含み、該硬化工程は、120〜160℃の硬化条件にて行うことを特徴とする塗装物の製造方法。 - 前記被塗物は、化成処理鋼板又は塗装鋼板であることを特徴とする請求項10に記載の塗装物の製造方法。
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