JP2015179629A - 飛行時間型質量分析装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】幅広い質量電荷比範囲のイオンについて、質量電荷比の相違を考慮した精度の高いエネルギ収束を行って質量分解能を向上させる。【解決手段】イオンを自由飛行させる飛行空間17中に、イオン光軸C方向に沿って複数の補助電極15を配置し、各補助電極15にパルス電圧印加部24からそれぞれ異なる電圧の印加を可能とする。引き出し電極12と加速電極13との間の加速領域で加速されたイオンが補助電極15の設置位置に到達するタイミングで、パルス電圧印加部24は所定電圧を補助電極15に印加することで、飛行空間17の入口側に向かうに従い傾斜が急になるような非線形の電位勾配を有する補助加速電場を形成する。この電場は理想的な電位勾配曲線に近いため、質量電荷比毎に適切なポテンシャルエネルギ変化をイオンに与えてエネルギ収束を達成することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、飛行時間型質量分析装置(Time-Of-Flight Mass Spectrometer、以下「TOFMS」と称す)に関する。
TOFMSでは、マトリクス支援レーザ脱離イオン化(MALDI=Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization)法などを用いたイオン源で生成した測定対象物質由来のイオンに一定の運動エネルギを付与して加速し、所定長さの飛行空間中を飛行させる。飛行空間に導入された各イオンの飛行速度は質量電荷比m/zが小さいほど大きいため、同時にイオン源を発した各種イオンは質量電荷比が小さな順に飛行空間を通り抜けて検出器に到達する。即ち、各種イオンは質量電荷比に応じて時間的に分離される。測定対象物質由来の各イオンの飛行時間は質量電荷比値と所定の関係にあるから、イオン種毎に飛行時間を計測すれば、この計測値から各イオン種の質量電荷比を算出することができる。
一般に、MALDI法などのイオン化法では、イオンが発生する空間は非常に小さいものの、発生したイオンの初期速度の広がり(ばらつき)は比較的大きい。TOFMSにおいて高い質量分解能を達成するには、同じ質量電荷比を持つイオンができるだけ同時に検出器に到達する、つまり高い時間収束性を有している必要があるが、イオンの初期速度のばらつきは時間収束性の低下の大きな要因であり、質量分解能の低下に繋がる。そこで、TOFMSにおける時間収束性を改善するために、従来、遅延引き出し法と一般に呼ばれる手法が広く利用されている。
一般的な遅延引き出し法では、レーザ光の照射によるイオン発生時点から一定の期間、イオン発生部位の近傍に電場を形成せず、イオンを自由に飛行させてその空間分布を広げる。そして、イオン発生時点から一定の遅延時間が経過した後に、サンプルの前方に配置した引き出し電極にパルス電圧を印加し、サンプルプレートから引き出し電極に向かって下り電位勾配の加速電場を形成する。パルス電圧の印加時点、つまりイオン発生時点から一定の遅延時間が経過した時点では、初期速度の小さなイオンほどサンプルプレートに近い位置(引き出し電極から遠い位置)にあるため、初期速度の小さなイオンほど、高い加速電圧による大きな運動エネルギが付与されることになる。これによって、イオン発生時点での初期速度のばらつきの影響が軽減され、TOFMSにおける時間分解能つまりは質量分解能を向上させることができる。
上述したように、遅延引き出し法は、サンプルプレートと引き出し電極との間の空間の電場を利用することで、同種の(つまり質量電荷比が同じである)イオンが持つ初期エネルギのばらつきを収束させている。これに対し、サンプルから発生したイオンが引き出されたあとに到達する加速領域に形成される加速電場や、通常は無電場である飛行空間の一部に形成される電場を利用することによって、同種のイオンが持つ初期エネルギのばらつきを収束させる技術も従来知られている。
例えば特許文献1に記載のTOFMSでは、サンプルプレートから見て引き出し電極よりも遠い位置に設けられた加速電極と引き出し電極との間の加速領域に形成される加速電場の電位勾配を時間的に変化させることにより、該加速領域において、その位置において先行しているイオンが受けた運動エネルギよりも大きな運動エネルギを遅れているイオンに対して与えることで、同種のイオンが持つ初期エネルギのばらつきを軽減している。
この特許文献1に記載のTOFMSは、広い照射面積を有するレーザ光をサンプルに照射し、それに対してサンプル上の各測定点から放出されたイオンをその測定点の位置関係を保持するように飛行させて検出する投影型イメージング質量分析装置である。このような構成の質量分析装置において遅延引き出しを行った場合、レーザ光照射時点から所定の遅延時間が経過するまでの期間中のイオンの空間的な拡散(イオン引き出し方向以外の方向への拡散)が空間分解能の低下をもたらす。これはイメージング質量分析装置としては大きな問題である。これに対し、特許文献1で提案されているように、すでにイオンが引き出されたあとの加速領域においてエネルギ収束を行うことによって、空間分解能を低下させずに同種イオンの飛行時間を収束させることができるという利点がある。
一方、特許文献2に記載のTOFMSでは、加速領域ではなく実質的にイオンを自由飛行させる飛行空間内に加速器を配置し、該加速器により直線的な下り電位勾配を有する加速電場を形成して、同種のイオンが持つエネルギのばらつきを飛行途中で補償している。
これら特許文献1、2に記載のTOFMSによれば、上述したような遅延引き出し法を用いることなく、同種イオンの初期的なエネルギのばらつきを補償し、質量電荷比が同じである同種のイオンを略同時に検出器に到達させることができる。それによって、TOFMSにおける質量分解能が向上する。
しかしながら、本願発明者の検討によれば、特許文献1、2に記載された手法では、エネルギ補償のために印加されたパルス電圧が適当である質量電荷比及びその近傍の質量電荷比を有するイオンについては質量分解能向上の効果が得られるものの、それよりも質量電荷比が小さなイオンに対してはエネルギ補償が過剰である一方、それよりも質量電荷比が大きなイオンに対してはエネルギ補償が不足し、いずれも質量分解能の改善効果が殆ど得られない。即ち、特許文献1、2に記載の手法では、質量分解能を改善し得る質量電荷比の範囲が狭い、という問題がある。
特開2010−251174号公報 米国特許公開第2012/0145893号明細書 特開2011−175898号公報 特開2013−41699号公報
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、広い質量電荷比範囲に亘って同種イオンの初期エネルギのばらつきを補償し、高い質量分解能を実現することができる飛行時間型質量分析装置を提供することである。
本願発明者らはこれまで、遅延引き出し法における様々な改良手法を提案している。例えば特許文献3に記載のTOFMSでは、レーザ光をサンプルに照射する時点で、サンプルプレートから引き出し電極に向かって緩やかに下がる電位勾配を有する電場を形成しておく。この電場の作用により、サンプル表面で発生したイオンは質量電荷比に応じた速度を持ち、質量電荷比が小さなイオンほど引き出し電極に近づく。そして、レーザ光照射時点から所定の遅延時間が経過した後にサンプルプレートに印加する電圧を上げ、サンプルプレートから引き出し電極に向かう電位勾配を急にしてイオンを加速する。すると、質量電荷比が大きなイオンは質量電荷比が小さなイオンに比べて相対的に大きなエネルギを受ける。これにより、質量電荷比毎に適切なエネルギ変化をイオンに与えることができ、エネルギ収束が行われる質量電荷比の範囲を拡大することができる。以下の説明では、この方法を「改良遅延引き出し法」と称す。
また、特許文献4に記載のTOFMSでは、引き出し電極をイオン光軸方向に複数に分割した構成とし、レーザ光照射時点から所定の遅延時間が経過した後に、サンプルプレートに近づくほど電位勾配が急であるような非線形の電位勾配を有する加速電場を引き出し領域に形成するようにサンプルプレート及び複数の引き出し電極にそれぞれ所定の電圧を印加する。特許文献4に記載されているように、レーザ光照射時点から適宜の期間中に、直線的な傾斜を持つ電位勾配によってイオンをおおまかに質量分離したあとに初期速度のばらつきによる運動エネルギの差を加速電圧で補償する場合、加速電場形成後の該加速電場における理想的な電位勾配は、サンプルプレートと引き出し電極との間の所定の位置で電位が無限大になるような非線形形状となる。そこで、複数の引き出し電極にそれぞれ所定の電圧を印加することで、この非線形形状の電位勾配を有する加速電場を形成し、質量電荷比に応じたより適切なエネルギ補償を行っている。
上述したような電位勾配が非線形形状である電場を利用したエネルギ補償は、イオンが質量電荷比に応じて或る程度分離された状態でないと適用できない。換言すれば、イオンが質量電荷比に応じて或る程度分離された状態であれば、非線形形状の電位勾配を有する加速電場を利用したエネルギ補償は、イオンの引き出し領域のみならず、イオンを加速する加速領域やイオンを自由に飛行させる飛行領域においても有効であると推測される。本願発明者はこうした知見の下に計算機シミュレーション等による検討を繰り返し、本発明をするに至った。
即ち、上記課題を解決するためになされた本発明の第1の態様による飛行時間型質量分析装置は、試料から発生したイオンを加速して飛行空間に導入し、該飛行空間内で質量電荷比に応じてイオンを分離して検出する飛行時間型質量分析装置において、
a)試料を保持する試料保持部から所定距離離間して配設された引き出し電極と、
b)前記試料保持部から見て前記引き出し電極よりも遠い位置に配設された加速電極と、
c)前記引き出し電極と前記加速電極との間の加速領域で加速されたイオンが送り込まれる飛行空間中に、イオン光軸方向に沿って配設された複数の補助電極と、
d)前記加速領域で加速され前記飛行空間に導入されたイオンが前記補助電極の設置部位を通過するときに、イオン光軸に沿ったイオン通過方向にイオンを加速する電位勾配が該飛行空間の奥側よりも手前側で相対的に大きい疑似曲線形状である加速電場が形成されるように、前記複数の補助電極にそれぞれ所定の電圧を印加する電圧印加部と、
を備えることを特徴としている。
また上記課題を解決するためになされた本発明の第2の態様による飛行時間型質量分析装置は、試料から発生したイオンを加速して飛行空間に導入し、該飛行空間内で質量電荷比に応じてイオンを分離して検出する飛行時間型質量分析装置において、
a)試料を保持する試料保持部から所定距離離間して配設された引き出し電極と、
b)前記試料保持部から見て前記引き出し電極よりも遠い位置に配設された加速電極と、
c)前記引き出し電極と前記加速電極との間の加速領域に、イオン光軸方向に沿って配設された1又は複数の補助電極と、
d)イオン発生開始時点から前記所定の遅延時間が経過するまでの期間中又は少なくともその期間中の一部期間において、試料表面から前記引き出し電極に向けてイオンを質量電荷比に応じて移動させる電場を形成するべく、前記試料保持部の電位を前記引き出し電極の電位よりも所定の第1の電位差だけ高くし、前記所定の遅延時間が経過した時点及びそれ以降には、前記試料保持部と前記引き出し電極との間の空間にあるイオンが一斉に加速されて該引き出し電極を通り過ぎる電場が形成されるように、前記試料保持部の電位を前記引き出し電極の電位よりも、第1の電位差より大きな第2の電位差だけ高く保つべく、前記試料保持部及び前記引き出し電極に対し電圧を印加するとともに、前記試料から生成され前記引き出し電極を通過して加速領域に引き出されたイオンを加速して飛行空間へ送り込むために該加速領域に加速電場を形成する際に、イオン光軸方向に沿った電位勾配が前記加速電極側よりも前記引き出し電極側で相対的に大きい疑似曲線状である加速電場を形成するように、前記引き出し電極、前記補助電極、及び前記加速電極にそれぞれ所定の電圧を印加する電圧印加部と、
を備えることを特徴としている。
また上記課題を解決するためになされた本発明の第3の態様による飛行時間型質量分析装置は、試料から発生したイオンを加速して飛行空間に導入し、該飛行空間内で質量電荷比に応じてイオンを分離して検出する飛行時間型質量分析装置において、
a)試料を保持する試料保持部から所定距離離間して配設された引き出し電極と、
b)前記試料保持部から見て前記引き出し電極よりも遠い位置に配設された加速電極と、
c)前記引き出し電極と前記加速電極との間の加速領域に、イオン光軸方向に沿って配設された1又は複数の補助電極と、
d)イオン発生開始時点で、試料表面で発生したイオンが加速されて前記引き出し電極を通り過ぎる電場が前記試料保持部と該引き出し電極との間の空間に形成されるように、該引き出し電極に所定の電圧を印加しつつ該引き出し電極への印加電圧よりも所定の電位差だけ高い電圧を前記試料保持部に印加するとともに、前記試料から生成され前記引き出し電極を通過して加速領域に引き出されたイオンを加速して飛行空間へ送り込むために該加速領域に加速電場を形成する際に、イオン光軸方向に沿った電位勾配が前記加速電極側よりも前記引き出し電極側で相対的に大きい疑似曲線状である加速電場を形成するように、前記引き出し電極、前記補助電極、及び前記加速電極にそれぞれ所定の電圧を印加する電圧印加部と、
を備えることを特徴としている。
本発明に係る第1乃至第3の態様の飛行時間型質量分析装置において、試料からイオンを発生させるためのイオン化法としては、MALDI、LDI(Laser Desorption/Ionization)等のレーザ光を利用した方法、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)等のイオン線を利用した方法、DESI(Desorption ElectroSpray Ionization)等の帯電噴霧流を利用した方法、PDI(Plasma Desorption Ionization)等のプラズマを利用した方法、などが考えられる。
本発明に係る第1の態様の飛行時間型質量分析装置において、電圧印加部は、飛行空間に導入されたイオンがちょうど補助電極の設置部位付近を通過するタイミングで、イオン光軸に沿ったイオン通過方向にイオンを加速する電位勾配が該飛行空間の奥側よりも手前側で相対的に大きい疑似曲線形状(曲線に近似させた折れ線状)である補助的な加速電場が形成されるように、複数の補助電極にそれぞれ所定の電圧を印加する。加速領域で加速された各種イオンは、補助電極の設置部位付近に達した時点で未だそれほど空間的に分散してはいないものの、質量電荷比に応じておおまかに分離されている。このとき、同一イオン種は空間的に比較的近い位置に存在するため、補助加速電場の形成により、同一イオン種に対してはほぼ同程度の加速エネルギが与えられる。また、質量電荷比が大きいイオンは相対的に飛行空間の手前側に、逆に質量電荷比が小さいイオンは相対的に飛行空間の奥側を飛行している。そのため、質量電荷比が小さいイオンよりも質量電荷比が大きいイオンに対して、電位勾配の傾斜がより大きな補助加速電場が作用し、大きな加速エネルギが与えられることになる。
後述するように、引き出し領域に加速電場を生じさせてイオンの初期エネルギを補償する場合、理想的な加速電場は、引き出し電極側から試料保持部側へ向かう電位勾配が略放物線状に増加し、試料保持部に近い或る位置で電位が無限大に発散する形状となる電場である。本発明の第1の態様による飛行時間型質量分析装置では、飛行空間中に一時的に形成する補助加速電場のイオン光軸に沿った電位勾配を直線的ではなく疑似曲線状とすることで、引き出し領域に理想的な加速電場を生じさせるのとほぼ同等のエネルギ補償を行うことができる。その結果、幅広い質量電荷比を持つイオンに対してそれぞれの質量電荷比に応じた適切な加速エネルギを与えることが可能となり、広い質量電荷比範囲に亘って質量分解能を改善することができる。
一方、本発明の第2又は第3の態様による飛行時間型質量分析装置では、飛行空間中ではなく、引き出し電極と加速電極との間の空間に1又は複数の補助電極を配置し、この加速領域においてイオンを加速する際に、電位勾配が加速電極側よりも引き出し電極側で相対的に大きい疑似曲線状であるような加速電場を形成する。ただし、従来の一般的な遅延引き出し法では、イオンが加速領域に達した時点でイオンは質量電荷比に応じて分離されていない。加速領域に形成された上記のような加速電場によって各イオンが持つエネルギを適切に補償するには、加速領域において加速される際にイオンが質量電荷比に応じておおまかに分離されている必要がある。そこで、第2の態様では、特許文献3に記載された改良遅延引き出し法によって試料表面付近からイオンを引き出し、加速領域へと移動させる。また、第3の態様では、遅延引き出しを行わずにイオン発生時点で試料保持部と引き出し電極との間の空間にイオンを加速する傾斜電場を形成しておき、この電場によりイオンを質量電荷比に応じておおまかに分離したあとに、加速領域に形成された電場によって各イオンが持つエネルギを適切に補償する。
即ち、第2の態様による飛行時間型質量分析装置では、例えばイオン発生開始時点において試料保持部と引き出し電極との間の空間に、イオンを試料表面から引き出し電極の方向に引き出す電場が形成されている。このときの試料保持部と引き出し電極との間の電位差(第1の電位差)は生成された全てのイオンを一斉に且つ大きな加速度で以て加速するほどは大きくなく、その電位差により形成される電場の作用により、各種イオンは緩慢に試料表面から引き出し電極に向かって移動する。一定の電場の下ではイオンの速度はサイズに逆比例するから、小さな(一般的には質量電荷比が小さな)イオンほど引き出し電極に近づき、逆に大きなイオンは試料に近い位置に存在する。そのため、所定の遅延時間が経過した時点では、引き出し領域におけるイオンの空間分布はおおまかに質量電荷比に依存したものとなる。
そして、所定の遅延時間が経過しイオンを一斉に加速させるべく試料保持部と引き出し電極との電位差を拡大する際に、空間的に比較的近い位置に存在する同一のイオン種には、ほぼ同程度の加速電圧が与えられる。これにより、各種イオンに対し質量電荷比に応じた加速電圧が与えられる。こうして引き出し領域から送り出された各イオンが加速領域を通過するタイミングで、加速領域では上述したような非線形形状の電位勾配を有する加速電場が形成されるため、特に質量電荷比が大きなイオンに対しても十分なエネルギ補償が考慮された加速エネルギが付与される。それによって、広い質量電荷比範囲に亘って質量分解能を改善することができる。
また第2の態様による飛行時間型質量分析装置の他の形態では、イオン発生開始時点から或る遅延時間が経過した時点で試料保持部の相対的な電位が上がり、電位勾配を持つ電場が試料保持部と引き出し電極との間の空間に形成されると、その空間に存在していたイオンは加速されて引き出し電極に向かって移動し始める(1回目の加速操作)。このとき、質量電荷比の小さなイオンほど移動し易いから、その直前のイオンの空間分布が質量電荷比に依存しない状態であっても、質量電荷比が小さなイオンのほうが質量電荷比が大きなイオンに比べて早く引き出し電極を通過する傾向にある。このため、1回目の加速操作を行った時点から或る時間が経過した時点では、試料保持部と引き出し電極との間の空間に残るイオンは質量電荷比が相対的に大きなものの割合が多くなる。
試料保持部の相対的な電位がさらに上げられ電位勾配の傾斜が急になると、残っていた質量電荷比が比較的大きなイオンに追加的に運動エネルギが付与され、これによってそのイオンは加速されて引き出し電極に向かって移動する(2回目の加速操作)。この加速操作は2回以上の任意の回数行うことができる。また、加速操作のためには、引き出し電極の電位を固定にしたまま試料保持部の電位を上げる、試料保持部の電位を固定したまま引き出し電極の電位を下げる、或いは、試料保持部の電位を上げると同時に引き出し電極の電位を下げる、のいずれを行ってもよい。このように段階的に加速電圧を上げていくことにより、各種イオンに対し質量電荷比に応じた加速電圧を与えることが可能となる。
なお、第1の態様においても、改良遅延引き出し法を適用することができる。その場合、飛行空間中の加速電場ではイオン引き出し時に補償しきれなかった分のエネルギを通過するイオンに対して付与すればよいので、改良遅延引き出し法を適用しない場合に比べて、補助加速電場の電位勾配は全体として緩やかなものとなる。
また第1乃至第3の態様のいずれにおいても、補助電極の数が多いほど、疑似曲線状の電位勾配を理想曲線に近付けることができる。したがって、好ましくは、補助電極の数を増やして各補助電極にそれぞれ適宜の電圧を印加する構成とすることが好ましい。
また本発明に係る飛行時間型質量分析装置は、リニア飛行時間型質量分析装置、リフレクトロン飛行時間型質量分析装置のいずれにも適用可能である。ただし、第1の態様による飛行時間型質量分析装置をリフレクトロン飛行時間型質量分析装置に適用する場合、原理的には、リフレクトロンでイオンが折り返したあとの飛行経路上に補助電極を配置することも可能ではあるものの、この場合、リフレクトロンでエネルギ収束が行われたあとのイオンに対して加速エネルギを与えることになるので、複数の補助電極に印加すべき電圧の算出が複雑になる。そのため、リフレクトロンでイオンが折り返される前の飛行経路上に補助電極を配置し、そこで所望のエネルギ収束を実施することが好ましい。
本発明に係る第1乃至第3の態様による飛行時間型質量分析装置によれば、広い質量電荷比範囲のイオンに対して理想に近いエネルギ補償を行うことができるので、広い質量電荷比範囲に亘り質量分解能を向上させることができる。また、特に本発明の第1及び第3の態様による飛行時間型質量分析装置によれば、遅延引き出しを行うことなくエネルギ補償を行うことができるので、遅延引き出しを行う際のイオンの空間的な拡散の影響を受けずに済み、投影型イメージング質量分析装置においても空間分解能を損なうことなく質量分解能を改善することができる。
本発明の第1実施例によるMALDI−TOFMSの概略構成図。 第1実施例のMALDI−TOFMSにおけるイオン光軸上の電位分布の概略図。 第1実施例のMALDI−TOFMSにおける補助加速電場の電位分布の一例を示す図。 第1実施例のMALDI−TOFMSの効果を検証するためのシミュレーション結果を示す図。 第1実施例の変形例のMALDI−TOFMSにおけるイオン光軸上の電位分布の概略図。 本発明の第2実施例によるMALDI−TOFMSの概略構成図。 第2実施例のMALDI−TOFMSにおけるイオン光軸上の電位分布の概略図。 第2実施例の変形例であるMALDI−TOFMSにおけるイオン光軸上の電位分布の概略図。 第2実施例の変形例であるMALDI−TOFMSにおけるイオン光軸上の電位分布の概略図。
[第1実施例]
本発明の第1実施例であるMALDI−TOFMSについて、添付図面を参照して説明する。図1は第1実施例のMALDI−TOFMSの概略構成図、図2は第1実施例のMALDI−TOFMSにおけるイオン光軸上の電位分布の概略図である。
第1実施例のMALDI−TOFMSでは、その表面にサンプルSが形成された、金属(又は導電ガラス)から成るサンプルプレート10は、ステージ11により保持されている。このステージ11の表面に略直交するイオン光軸Cに沿って、引き出し電極12、加速電極13、イオンレンズ14、フライトチューブ16内に形成された飛行空間17、及びイオン検出器18が配置されている。一般的に、リフレクトロン等を除けばTOFMSの飛行空間は電場が存在しない自由飛行空間であるが、この実施例のTOFMSでは、飛行空間17においてイオン光軸Cに沿って複数の補助電極15が配設されている。
ステージ11はプレート電圧発生部20に接続され、制御部25の制御の下に、プレート電圧発生部20からステージ11を介してサンプルプレート10に所定の電圧が印加される。引き出し電極12は引き出し電圧発生部21に接続され、加速電極13は加速電圧発生部22に接続され、イオンレンズ14はレンズ電圧発生部23に接続され、制御部25の制御の下に、引き出し電極12、加速電極13、イオンレンズ14にはそれぞれ所定の電圧が印加される。また、複数の補助電極15はいずれもパルス電圧印加部24に接続され、制御部25の制御の下に、複数の補助電極15にはそれぞれ所定の電圧が印加される。図1では、サンプルSをイオン化するためのレーザ光照射部などの記載は省略してある。なお、説明の便宜上、図1中に示すように、イオン光軸Cの延伸方向、つまりイオンの飛行方向をX方向とし、これに直交するとともに互いに直交する2方向をY方向、Z方向とする。
このMALDI−TOFMSの基本的な動作を概略的に説明する。
制御部25の指示の下に、図示しないレーザ光照射部からパルス状に射出されたレーザ光がサンプルSに照射されると、サンプルSに含まれる目的化合物由来のイオンが発生する。このイオンは引き出し電極12とサンプルプレート10との間に形成される電場によってサンプルS表面から引き出され、さらに主として引き出し電極12と加速電極13との間に形成される加速電場によってX方向に加速される。加速されたイオン流は、イオンレンズ14により形成される電場によってイオン光軸C付近に収束されて、フライトチューブ16内の飛行空間17に導入される。
イオンは質量電荷比に応じた飛行速度を有するため、飛行空間17を飛行する間に質量電荷比に応じて分離される。即ち、質量電荷比が小さなイオンほど大きな飛行速度を有するため、短い飛行時間で飛行空間17を通り抜けてイオン検出器18に達する。イオン検出器18は例えば光電子増倍管であって、順次到達するイオンを検出し、イオン量に応じた検出信号を生成する。図示しないデータ処理部はこの検出信号に基づいて飛行時間と信号強度(イオン量)との関係を示す飛行時間スペクトルを作成し、予め求めた校正情報に基づいて飛行時間を質量電荷比に換算することによってマススペクトルを作成する。
次に、本実施例のMALDI−TOFMSにおける質量分解能向上のためのエネルギ収束に関連した特徴的な動作について説明する。
イオン化の際には、次のような遅延引き出しが実行される。
制御部25の制御の下に、レーザ光が照射される以前の適宜に時点で、引き出し電圧発生部21は引き出し電極12へ電圧V1を印加し、プレート電圧発生部20はサンプルプレート10へ電圧V1よりも高い電圧V2を印加する。一般的な遅延引き出し法ではV1=V2であるのに対し、ここではV2>V1である。ただし、このときの電位差V2-V1は後述するイオン加速時の電位差V3−V1に比べると十分に小さい。このとき、サンプルプレート10と引き出し電極12との間の空間(引き出し領域)におけるイオン光軸C上の電位分布は、図2中に点線で示す状態である。即ち、引き出し領域には、サンプルプレート10から引き出し電極12に向かって緩やかに下傾する電位勾配を有する電場が形成される。一方、加速電圧発生部22は加速電極13に電圧V1よりも十分に低い電圧V0を印加する。したがって、引き出し電極12と加速電極13との間の空間(加速領域)には、引き出し電極12から加速電極13に向かって急峻に下傾する電位勾配を有する電場が形成されている。
試料Sにレーザ光が照射され試料S表面でイオンが生成されると、それらイオンには引き出し領域における上記電場が作用する。それにより、イオンは引き出し電極12に向かう方向(図1では上方)に誘引される。このとき電場により与えられるポテンシャルエネルギに由来するイオンの速度は質量電荷比が小さいほど大きい。そのため、質量電荷比が小さなイオンほど引き出し電極3に近い位置になるように、イオンはおおまかに分離される。また、ほぼ同一の質量電荷比を有するイオンの集まりを子細にみると、大きな初期エネルギを持つイオンほど引き出し電極13に近い位置にある。
なお、試料S表面付近から引き出されたイオンが所定の遅延時間内に引き出し電極3を通りすぎてしまわない程度の運動エネルギをイオンに付与するように、引き出し領域における電位勾配の傾斜は緩くしておく必要がある。一方、この電位勾配の傾斜が緩すぎると、その電場によりイオンが受ける運動エネルギよりもイオンが持つ初期エネルギの影響のほうが大きく、イオンが質量電荷比に応じて分離されない。そこで、こうした条件を満たすように、電位差V2−V1を予め適切に定めておくとよい。
制御部25はレーザ光照射時点から所定の遅延時間tが経過したときに、サンプルプレート10への印加電圧をV2からV3にステップ状に上昇させるようにプレート電圧発生部20を制御する。これにより、引き出し領域における電位分布は図2中に実線で示す状態に変化する。即ち、引き出し領域には、サンプルプレート10から引き出し電極12に向かって急峻に下傾する電位勾配を有する電場が形成される。その結果、その直前に引き出し領域中に存在しているイオンに対して大きな加速電圧が一斉に与えられ、加速領域を経て一層加速されて飛行空間17に送り出される。引き出し領域においてサンプルプレート10に近い位置に存在するイオンほど大きな加速エネルギが与えられるため、大きな速度で以て飛行空間17に導入される。つまり、質量電荷比が大きなイオンほど大きな速度を有し、同じ質量電荷比であれば初期エネルギが小さなイオンほど大きな速度を有する。引き出し領域中でサンプルプレート10に近い位置に存在した、或る質量電荷比のイオンは、同じ質量電荷比であって引き出し電極12により近い位置に存在したイオンよりも時間的に後から飛行空間17に導入される。しかしながら、飛行速度はより大きいので、先行しているイオンに飛行中に徐々に追いつく。即ち、これにより同一質量電荷比のイオンのエネルギ収束が行われる。
一方、質量電荷比が大きなイオンには質量電荷比が小さなイオンに比べて相対的に高い加速エネルギが与えられる。したがって、それぞれの質量電荷比のイオンに対して適切なポテンシャルエネルギの変化を与えることができるので、質量電荷比による初速のばらつきの補正効果の差異が軽減できる。
ただし、特許文献4に開示されているように、直線的な傾斜を示す電位勾配によってイオンをおおまかに質量分離したあとに、初速のばらつきによる運動エネルギの差を加速電圧で補う場合、その加速のための電位勾配の理想的な形状は直線状ではなく、引き出し領域中の所定の位置において無限大に発散する放物線状となる。そのため、上述したように直線状の電位勾配を有する電場を引き出し領域中に形成してイオンを加速すると、一部の質量電荷比範囲についてしか十分なエネルギ収束が達成されない。そこで、本実施例のMALDI−TOFMSでは、パルス電圧印加部24から複数の補助電極15に印加する電圧によって飛行空間17中に形成する補助加速電場によって、引き出し領域における加速電場が理想的でないことに起因するエネルギずれを補償する。
即ち、飛行空間17に導入されたイオンが補助電極15で囲まれる空間(補助加速領域)を通過するときに、図2中に示すような疑似曲線状の電位勾配を有する補助加速電場が補助加速領域に形成されるように、パルス電圧印加部24がパルス電圧を各補助電極15に印加する。この補助加速電場の電位勾配は、遅れて飛行しているイオン、つまりは相対的に質量電荷比が大きなイオン又は同じ質量電荷比であれば初期エネルギが小さなイオンに対して電位勾配がより急峻になるような電位勾配である。エネルギ収束のために理想的な電位勾配を予め計算しておき、そうした電位勾配が最も適切に近似できるように各補助電極15に印加する電圧を決めておくことで、引き出し領域においてイオンを加速する際に曲線状の電位勾配を示す電場を形成するのと同様のエネルギ収束性を実現することができる。
なお、飛行空間17に導入されたイオンは質量電荷比に応じて、飛行中にイオン光軸Cの延伸方向に分離されるが、補助電極15は飛行空間17の入口に近い位置に配置されているので、イオンの空間的な拡がりは未だ小さい。そのため、イオン光軸C方向の補助加速領域の長さをそれほど長くすることなく、全てのイオンに対し加速エネルギを追加的に与えることができる。
一例として、イオン光軸C上のサンプルプレート10の位置をx=0としたときに、開始点をx=303[mm]、終了点をx=758[mm]とした補助加速領域における、理想的な補助加速電場の電位勾配をボルツマン関数を利用して計算した結果を図3に示す。電位勾配の傾斜の変化はそれほど大きいものではないので、比較的少ない数の補助電極によっても、かなり精度の高い近似が可能である。
本実施例のMALDI−TOFMSにおけるエネルギ補償動作の効果を検証するために行ったシミュレーション結果の一例を図4に示す。図4において従来法は、本実施例と同様の改良遅延引き出し法を実施したうえで補助加速電場を用いない方法である、また、図4において本発明法は、上述した改良遅延引き出し法を実施したうえで図3に示したボルツマン関数による電位勾配を示す補助加速電場を用いた方法である。このシミュレーションでは、図1に示したようなイオン光軸Cを中心とする軸対称のイオン輸送系を想定し、補助電極以外の各電極に印加する電圧などの条件は、補助加速電場の有無に対してそれぞれシミュレーション結果ができるだけ良好になるように調整した。
図4から明らかなように、従来法では分解能が5000を越える質量電荷比範囲の上限は2500[Da]程度であるのに対し、本発明法では1000〜4000[Da]の広い質量電荷比範囲で分解能が5000を越えている。このことから、本発明法によれば、高い分解能が得られる質量電荷比範囲を従来法に比べて2倍程度に拡大できていることが分かる。
上記第1実施例では、改良遅延引き出し法によるイオン加速を行っていたが、通常の遅延引き出し法によるイオン加速を行った場合(上述したように図2においてV1=V2である場合)でも、補助加速電場を用いることで、引き出し領域における加速電場が理想的でないことに起因するエネルギずれを補償することができる。また、遅延引き出しを行わずにイオンを加速する場合であっても、補助加速電場を用いてエネルギずれを補償することができる。
図5は、第1実施例のMALDI−TOFMSと同様の電極構成で、遅延引き出しを行わない場合のイオン光軸上の電位分布の概略図である。この場合には、イオン生成時点において引き出し領域に加速領域と同様の電位勾配を有する電場が形成されており、イオンはその発生の直後に加速される。この場合でも、イオンが補助加速領域に達した時点で非線形の電位勾配を有する補助加速電場が形成されるように補助加速電極にパルス状に電圧を印加することで、各イオンのエネルギずれを補償することができる。
[第2実施例]
本発明の第2実施例であるMALDI−TOFMSについて、添付図面を参照して説明する。図6は第2実施例のMALDI−TOFMSの概略構成図、図7(a)、(b)は第2実施例のMALDI−TOFMSにおけるイオン光軸上の電位分布の概略図である。
第1実施例では、飛行空間17中に複数の補助電極15を配置し、その補助電極15にパルス電圧を印加することで、幅広い質量電荷比を持つイオンについてのエネルギ収束性を高める非線形の補助加速電場を形成するようにしていた。これに対し、この第2実施例では、図5に示すように、引き出し電極12と加速電極13との間の加速領域中に補助電極15を配置している。この例では、補助電極15の数は3であるが、その数は最低1以上、任意である。この補助電極15と加速電極13にはそれぞれ、加速電圧発生部26から所定の直流電圧が印加されるようになっている。
この第2実施例のMALDI−TOFMSでは、第1実施例と同様に、サンプルSに対しレーザ光が照射され、それによって生成されたイオンが改良遅延引き出し法によって引き出される。即ち、レーザ光照射時点では引き出し領域に例えば図7(a)中に点線で示す電位勾配を有する電場が形成されており、この電場によって、レーザ光照射時点から所定の遅延時間が経過した時点において、引き出し領域でイオンはおおまかに質量電荷比に応じて分離された状態となっている。それからサンプルプレート10に印加される電圧がV2からV3に引き上げられると、引き出し領域中のイオンは加速されて加速領域に入る。このときには、加速電圧発生部26は補助電極15に電圧を印加せず、加速領域には図7(a)中に点線で示すように直線的に下傾する電位勾配を有する加速電場が形成されるようにしておく。そして、ほぼ全てのイオンが加速領域に入った時点で、加速電圧発生部26は補助電極15に所定の電圧を印加するとともに加速電極13に印加する電圧を下げ、加速領域中に形成される加速電場の電位勾配の形状を図7(a)中に実線で示すような疑似曲線状に変化させる。これにより、各イオンに対し幅広い質量電荷比についてエネルギ収束が考慮された加速エネルギが付与され、飛行空間17へと送り出される。
また図7(a)に示したように、加速領域においてイオン流の下流側の電位を下げる代わりに、図7(b)に示したように、加速領域においてイオン流の上流側の電位を上げるように変化させて、加速領域中に形成される加速電場の電位勾配の形状を疑似曲線状に変化させるようにしてもよい。
なお、図7(a)、(b)いずれの場合でも、適切な非線形加速電場の電位勾配の形状は、第1実施例と同様に、予めシミュレーション計算などによって求めておけばよい。
上記第1、第2実施例では、補助電極15を設置する位置は異なるものの、同じ改良遅延引き出しの手法を用いていた。上述したように、この改良遅延引き出し法は引き出し領域においてイオンをおおまかに質量分離するものであり、特許文献3に開示された一手法である。引き出し領域においてイオンをおおまかに質量分離することが可能でありさえすれば、イオンの引き出し法は第1、第2実施例に記載の方法に限らない。
具体的には、特許文献3に開示されている、他の改良遅延引き出し法を用いてもよい。この、他の改良遅延引き出し法を用いた、第2実施例の変形例によるMALDI−TOFMSの動作を、図により説明する。図9(a)、(b)はこの変形例であるMALDI−TOFMSにおけるイオン光軸上の電位分布の概略図である。なお、装置構成は第2実施例と基本的に同じであるので、図5に示した概略構成図を使用する。
例えば図9(a)に示すように、サンプルSにレーザ光が照射される時点では、プレート電圧発生部20は、引出し電極12への印加電圧V1と同じ電圧をサンプルプレート10に印加しておく。即ち、この場合、イオン生成時点において引き出し領域には、イオンを誘引するような実質的な電場は存在しない。この点では、通常の遅延引き出し法と同じである。サンプルSにレーザ光が照射されることで発生した各種イオンは、それぞれの初期エネルギに基づく初速で移動する。したがって、イオン発生開始時点から所定時間が経過した後に、質量電荷比とは無関係にイオンはその初期エネルギに応じて分散している。イオン発生時点から所定の時間が経過したとき、引き出し電圧発生部21はサンプルプレート10への印加電圧をそれまでのV1からV1+ΔV1にステップ状に上昇させる。これにより、引き出し領域には、サンプルプレート10から引き出し電極12に向かって緩やかに下傾する電位勾配を有する電場が形成される。
引き出し領域中に電位勾配が形成されることにより、イオンは加速電圧による比較的低くエネルギを受け移動する。このときのイオンの速度は質量電荷比が大きいほど小さくなるから、同じ位置にある、つまり同じ加速エネルギを受けた異なる質量電荷比のイオンを比べると、質量電荷比が小さなイオンほど大きな速度を持つ。そのため、全体として質量電荷比の小さなイオンほど早く引き出し電極12を通過して加速領域に入り、逆に質量電荷比の大きなイオンは引き出し領域に留まり易い。このように、引き出し領域において質量分離に近い操作が行われる。
さらに所定の時間が経過する毎に、プレート電圧発生部20はサンプルプレート10への印加電圧をさらにΔV1ずつステップ状に、V3になるまで上昇させる。即ち、サンプルプレート10から引き出し電極12に向かう電位勾配の傾斜が段階的に急になる。引き出し領域中の電場がこのように変化すると、その時点で引き出し領域中に残っていた主として質量電荷比の大きなイオンに対しより大きな加速電圧が一斉に与えられ、イオンは引き出し電極12に向かって引き出され、加速領域に突入する。これによって、加速領域中では、イオンはおおまかに質量分離された状態になるから、全てのイオンが加速領域に導入されたタイミングで、上述したように加速領域中の加速電場の電位勾配の形状を線形形状から非線形形状に変化させることで、各イオンに対しエネルギ収束を考慮した加速エネルギを与えることができる。
図9(a)に示した例では、加速領域においてイオン流の下流側の電位を下げて電位勾配の形状を疑似曲線状に変化させており、図9(b)に示した例では、加速領域においてイオン流の上流側の電位を上げて電位勾配の形状を疑似曲線状にして変化させている。これは、上記図7(a)、(b)と同じである。
また、この第2実施例のMALDI−TOFMSにおいても第1実施例と同様に、遅延引き出しを行わずに、イオンの発生時点において引き出し領域に加速領域と同様の電位勾配を有する電場が形成しておいてもよい。図8(a)、(b)は、第2実施例のMALDI−TOFMSと同様の電極構成で、遅延引き出しを行わない場合のイオン光軸上の電位分布の概略図である。この場合には、イオン生成時点において引き出し領域にもイオンを加速するような電位勾配を有する電場が形成されており、イオンはその発生の直後に加速される。この場合でも、イオンが加速領域に導入された時点で直線状の電位勾配を非線形状に変化させるように補助加速電極に電圧を印加する。図8(a)に示した例では、加速領域においてイオン流の下流側の電位を下げて電位勾配の形状を疑似曲線状に変化させており、図8(b)に示した例では、加速領域においてイオン流の上流側の電位を上げて電位勾配の形状を疑似曲線状にして変化させている。これは、上記図7(a)、(b)と同じである。このように加速領域における電位勾配を疑似曲線状とすることで、各イオンのエネルギずれを補償することができる。
なお、上記第1実施例のMALDI−TOFMSにおいても上記変形例で述べた遅延引き出し法を適用することができる。
また、上記実施例はいずれも本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
例えば上記実施例はリニア飛行時間型質量分析装置であるが、リフレクトロン飛行時間型質量分析装置に本発明を適用可能であることは明らかである。また、イオン化法はMALDIに限るものではなく、MALDIと同様に、サンプルSの表面付近でパルス的にイオンを生成可能なイオン化法であれば、如何なるイオン化法を用いてもよい。
10…サンプルプレート
11…ステージ
12…引き出し電極
13…加速電極
14…イオンレンズ
15…補助電極
16…フライトチューブ
17…飛行空間
18…イオン検出器
20…プレート電圧発生部
21…引き出し電圧発生部
22、26…加速電圧発生部
23…レンズ電圧発生部
24…パルス電圧印加部
25、27…制御部
S…サンプル
C…イオン光軸

Claims (8)

  1. 試料から発生したイオンを加速して飛行空間に導入し、該飛行空間内で質量電荷比に応じてイオンを分離して検出する飛行時間型質量分析装置において、
    a)試料を保持する試料保持部から所定距離離間して配設された引き出し電極と、
    b)前記試料保持部から見て前記引き出し電極よりも遠い位置に配設された加速電極と、
    c)前記引き出し電極と前記加速電極との間の加速領域で加速されたイオンが送り込まれる飛行空間中に、イオン光軸方向に沿って配設された複数の補助電極と、
    d)前記加速領域で加速され前記飛行空間に導入されたイオンが前記補助電極の設置部位を通過するときに、イオン光軸に沿ったイオン通過方向にイオンを加速する電位勾配が該飛行空間の奥側よりも手前側で相対的に大きい疑似曲線形状又は折れ線状である加速電場が形成されるように、前記複数の補助電極にそれぞれ所定の電圧を印加する電圧印加部と、
    を備えることを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
  2. 試料から発生したイオンを加速して飛行空間に導入し、該飛行空間内で質量電荷比に応じてイオンを分離して検出する飛行時間型質量分析装置において、
    a)試料を保持する試料保持部から所定距離離間して配設された引き出し電極と、
    b)前記試料保持部から見て前記引き出し電極よりも遠い位置に配設された加速電極と、
    c)前記引き出し電極と前記加速電極との間の加速領域に、イオン光軸方向に沿って配設された1又は複数の補助電極と、
    d)イオン発生開始時点から前記所定の遅延時間が経過するまでの期間中又は少なくともその期間中の一部期間において、試料表面から前記引き出し電極に向けてイオンを質量電荷比に応じて移動させる電場を形成するべく、前記試料保持部の電位を前記引き出し電極の電位よりも所定の第1の電位差だけ高くし、前記所定の遅延時間が経過した時点及びそれ以降には、前記試料保持部と前記引き出し電極との間の空間にあるイオンが一斉に加速されて該引き出し電極を通り過ぎる電場が形成されるように、前記試料保持部の電位を前記引き出し電極の電位よりも、第1の電位差より大きな第2の電位差だけ高く保つべく、前記試料保持部及び前記引き出し電極に対し電圧を印加するとともに、前記試料から生成され前記引き出し電極を通過して加速領域に引き出されたイオンを加速して飛行空間へ送り込むために該加速領域に加速電場を形成する際に、イオン光軸方向に沿った電位勾配が前記加速電極側よりも前記引き出し電極側で相対的に大きい疑似曲線状である加速電場を形成するように、前記引き出し電極、前記補助電極、及び前記加速電極にそれぞれ所定の電圧を印加する電圧印加部と、
    を備えることを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
  3. 試料から発生したイオンを加速して飛行空間に導入し、該飛行空間内で質量電荷比に応じてイオンを分離して検出する飛行時間型質量分析装置において、
    a)試料を保持する試料保持部から所定距離離間して配設された引き出し電極と、
    b)前記試料保持部から見て前記引き出し電極よりも遠い位置に配設された加速電極と、
    c)前記引き出し電極と前記加速電極との間の加速領域に、イオン光軸方向に沿って配設された1又は複数の補助電極と、
    d)イオン発生開始時点で、試料表面で発生したイオンが加速されて前記引き出し電極を通り過ぎる電場が前記試料保持部と該引き出し電極との間の空間に形成されるように、該引き出し電極に所定の電圧を印加しつつ該引き出し電極への印加電圧よりも所定の電位差だけ高い電圧を前記試料保持部に印加するとともに、前記試料から生成され前記引き出し電極を通過して加速領域に引き出されたイオンを加速して飛行空間へ送り込むために該加速領域に加速電場を形成する際に、イオン光軸方向に沿った電位勾配が前記加速電極側よりも前記引き出し電極側で相対的に大きい疑似曲線状である加速電場を形成するように、前記引き出し電極、前記補助電極、及び前記加速電極にそれぞれ所定の電圧を印加する電圧印加部と、
    を備えることを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
  4. 請求項1に記載の飛行時間型質量分析装置であって、
    前記電圧印加部は、イオン発生開始時点から前記所定の遅延時間が経過するまでの期間中に、試料表面から前記引き出し電極に向けてイオンを質量電荷比に応じて移動させる電場を形成するべく、前記試料保持部の電位を前記引き出し電極の電位よりも、前記所定の遅延時間及び前記所定距離に応じた第1の電位差だけ高く保ち、前記所定の遅延時間が経過した時点及びそれ以降には、前記試料保持部と前記引き出し電極との間の空間にあるイオンが一斉に加速されて該引き出し電極を通り過ぎる電場が形成されるように、前記試料保持部の電位を前記引き出し電極の電位よりも、第1の電位差より大きな第2の電位差だけ高く保つように、前記試料保持部及び前記引き出し電極に対し所定の電圧を印加することを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
  5. 請求項1に記載の飛行時間型質量分析装置であって、
    前記電圧印加部は、イオン発生開始時点以降に、前記試料保持部と前記引き出し電極との間の空間においてイオンを該試料保持部から該引き出し電極に向かう方向に引き出す電位勾配の傾斜が、所定の同一又は異なる時間が経過する毎に段階的に大きくなる電場が形成されるように、前記試料保持部に対し、前記引き出し電極の電位に対する前記試料保持部の相対的な電位を段階的に増加させた電圧を印加することを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の飛行時間型質量分析装置であって、
    前記飛行空間はイオンを直線的に飛行させるリニア型の飛行空間であることを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の飛行時間型質量分析装置であって、
    前記飛行空間はイオンを折り返し飛行させるリフレクトロン型の飛行空間であることを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の飛行時間型質量分析装置であって、
    イオン化の手法は、MALDI法、LDI法、DESI法、PDI法、SIMS法のいずれかであることを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
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