以下に本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本実施形態1における多重散乱波検知装置であるレーダ反射波断面積測定装置(以下、RCS測定装置という)1の構成例を示す図である。本実施形態1におけるRCS測定装置1は、図1に示すように、測定対象搭載部2と本体部3とで構成され、測定対象搭載部2と本体部3とは、例えば、ケーブルを介して接続されている。
測定対象搭載部2は、図1に示すように、本体部3の制御の下、測定対象の測定角度θを変更する回転台21と、回転台21の上に搭載された、測定対象を支持するための支持具22と、で構成されている。
図2は、本実施形態1におけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本体部3は、図2に示すように、送信部31と、受信部32と、局部発振信号生成部33と、基底帯域信号生成部34と、出力部35と、記憶部36と、制御部37と、備えて構成されている。
送信部31は、例えば、信号発生器や送信用アンテナなどで構成され、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射する。また、送信部31は、生成した送信信号S1を局部発振信号生成部33に出力する。
本実施形態1においては、送信部31が照射する送信信号S1は、以下の式1に示すものであるとする。なお、式中のHは振幅、ωは角速度を表している。
受信部32は、例えば、受信用アンテナなどで構成され、送信信号S1を照射することで散乱体Tから発生する散乱波S2を受信し、受信した散乱波S2の受信信号を基底帯域信号生成部34に出力する。
より具体的には、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2が単一散乱波S2aのみの場合には、単一散乱波S2aのみの受信信号SS(θ)を受信し、散乱体Tから発生する散乱波S2が単一散乱波S2aと多重散乱波S2bである場合には、単一散乱波S2aの受信信号SS(θ)と多重散乱波S2bにそれぞれ対応する受信信号MSi(θ)(i=1,・・・,m)との合成信号P(θ)を、受信信号として受信する。
単一散乱波S2aの受信信号SS(θ)は、送信信号S1が式1に示すものである場合には、以下の式2で表すことができる。なお、式中のA0(θ)は、測定角度θに依存している係数であり、Δ0は、伝送経路に依存している位相の遅延量である。
多重散乱波S2bの受信信号MSi(θ)(i=1,・・・,m)は、送信信号S1が式1に示すものである場合には、以下の式3で表すことができる。なお、式中のAi(θ)は、測定角度θに依存している係数であり、Δiは、伝送経路に依存している位相の遅延量である。
この場合、散乱体Tから発生する散乱波S2が単一散乱波S2aと多重散乱波S2bである場合に受信部32が受信する合成信号P(θ)は、以下の式4で表すことができる。
局部発振信号生成部33は、例えば、可変位相器などで構成され、入力された送信信号S1の位相値Φを0〜π(以下、[0,π]という)の範囲で可変な局部発振信号S3を生成し、生成した局部発振信号S3を基底帯域信号生成部34に出力する。局部発振信号S3は、送信信号S1が式1に示すものである場合には、以下の式5で示すものである。
基底帯域信号生成部34は、例えば、乗算器や基底周波数成分を取り出すローパスフィルタなどで構成され、入力された受信信号(SS(θ)又はP(θ))と局部発振信号S3とを乗算した後に、基底周波数成分を取り出すことで、基底帯域信号BS(θ)を生成する。
受信信号が合成信号P(θ)である場合には、基底帯域信号BS(θ)は、以下の式6で表すものとなる。
出力部35は、例えば、機器インターフェースなどで構成され、回転台21を回転させて測定角度θを変更させるための測定角度制御信号S4を接続されている測定対象搭載部2に出力する。
記憶部36は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などで構成され、制御部37を構成するCPU(Central Processing Unit)のワークエリア、RCS測定装置1全体を制御するための動作プログラムなどの各種プログラムを格納するプログラムエリア、各種データを格納するデータエリアとして機能する。
制御部37は、例えば、CPUなどで構成され、記憶部36のプログラムエリアに格納されている動作プログラムを実行して、図2に示すように、特定部37aと、多重散乱波判定部37bと、判定部37cと、回転台制御部37dとしての機能を実現すると共に、RCS測定装置1全体を制御する制御処理や詳しくは後述の多重散乱波検知処理などの処理を実行する。
特定部37aは、基底帯域信号生成部34により生成された基底帯域信号BS(θ)の位相値Φを[0,π]の範囲で可変した場合の、基底帯域信号BS(θ)の極大値(又は、極小値)を特定する。
多重散乱波判定部37bは、特定部37aにより特定された[0,π]の範囲における極大値(又は、極小値)の数が複数の場合には、多重散乱波S2bが発生していると判定し、[0,π]の範囲における極大値(又は、極小値)の数が1つの場合には、多重散乱波S2bは発生していないと判定する。
このように判定できるのは、受信信号が単一散乱波S2aの受信信号SS(θ)と多重散乱波S2bの受信信号MSi(θ)(i=1,・・・,m)との合成信号P(θ)である場合には、つまり、多重散乱波S2bが発生している場合には、基底帯域信号BS(θ)は、図3に示すように、多重散乱波S2bの遅延量Δiに依存して複数の極大値(又は、極小値)を有するからである。ここで、図3は、本実施形態1における位相値Φを[0,π]の範囲で可変した場合の基底帯域信号BS(θ)のグラフの例であり、多重散乱波S2bが発生している場合の基底帯域信号BS(θ)の例である。
図2に戻り、判定部37cは、特定部37aにより特定された[0,π]の範囲における極大値(又は、極小値)の数が複数か否かを判定する。また、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する。
回転台制御部37dは、判定部37cにより回転台21がまだ一周回転していないと判定された場合に、予め設定されている角度αだけ回転台21を回転させるための測定角度制御信号S4を生成して、出力部35を介して、生成した測定角度制御信号S4を測定対象搭載部2に送信する。
次に、図4を参照して、本実施形態1における多重散乱波検知処理の流れについて説明する。図4は、本実施形態1における多重散乱波検知処理のフローを説明するためのフローチャートの例である。本多重散乱波検知処理は、例えば、RCS測定装置1の操作部(不図示)を介して、RCSの測定開始の操作がなされたことをトリガとして開始される。
送信部31は、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射すると共に(ステップS001)、生成した送信信号S1を局部発振信号生成部33に出力する(ステップS002)。そして、局部発振信号生成部33は、入力された送信信号S1に基づいて、局部発振信号S3を生成し(ステップS003)、生成した局部発振信号S3を基底帯域信号生成部34に出力する(ステップS004)。
受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信し(ステップS005)、受信した散乱波S2の受信信号を基底帯域信号生成部34に出力する(ステップS006)。
そして、基底帯域信号生成部34は、入力された局部発振信号S3と散乱波S2の受信信号とを乗算した後に(ステップS007)、基底周波数成分を取り出すことで、基底帯域信号BS(θ)を生成する(ステップS008)。
そして、特定部37aは、基底帯域信号生成部34により生成された基底帯域信号BS(θ)の位相値Φを[0,π]の範囲で可変した場合の、基底帯域信号BS(θ)の極大値(又は、極小値)を特定する(ステップS009)。そして、判定部37cは、特定部37aにより特定された[0,π]の範囲における極大値(又は、極小値)の数が複数か否かを判定する(ステップS010)。
判定部37cにより、極大値(又は、極小値)の数が複数であると判定された場合には(ステップS010;YES)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していると判定する(ステップS011)。そして、処理は後述のステップS013の処理へと進む。
一方、判定部37cにより、極大値(又は、極小値)の数が一つであると判定された場合には(ステップS010;NO)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bは発生していないと判定する(ステップS012)。そして、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する(ステップS013)。判定部37cにより、回転台21を一周回転させたと判定された場合には(ステップS013;YES)、本処理は終了し、次の開始を待つ。
一方、判定部37cにより、回転台21をまだ一周回転させていないと判定された場合には(ステップS013;NO)、回転台制御部37dは、測定角度制御信号S4を生成して、出力部35を介して、生成した測定角度制御信号S4を測定対象搭載部2に送信する(ステップS014)。そして、測定対象搭載部2は、測定角度制御信号S4にしたがって、回転台21を角度α回転させる(ステップS015)。そして、処理はステップS001の処理へと戻り、前述の処理を繰り返す。
上記実施形態1によれば、RCS測定装置1は、受信信号に位相を可変な送信信号S1(局部発振信号S3)を乗算した後に、基底周波数成分を取り出して生成した基底帯域信号BS(θ)の極大値(又は、極小値)を特定する。基底帯域信号BS(θ)は、各散乱波S2の遅延量Δiに依存して極大値を発生させることから、このように構成することで、基底帯域信号BS(θ)の極大値(又は、極小値)の数に基づいて、多重散乱波S2bの発生を検知することが可能となる。
(実施形態2)
実施形態1においては、基底帯域信号BS(θ)の極大値(又は、極小値)の数に基づく多重散乱波S2bの検知方法について説明した。本実施形態2においては、多重散乱波S2bが発生している場合においても再現性を有するRCSの測定が可能な方法について説明する。
図5は、本実施形態2におけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態2における本体部3の基本的な構成は実施形態1の場合と同じである。但し、図5に示すように、制御部37が、更に、遅延量特定部37eと、参照信号生成部37fと、係数特定部37gと、分離信号生成部37hと、変換・合成処理部37iと、を備える点で、実施形態1の場合と異なっている。また、本実施形態2においては、特定部37aは、基底帯域信号BS(θ)の極大値を特定する。
制御部37は、例えば、CPUなどで構成され、記憶部36のプログラムエリアに格納されている動作プログラムを実行して、図5に示すように、特定部37aと、多重散乱波判定部37bと、判定部37cと、回転台制御部37dと、遅延量特定部37eと、参照信号生成部37fと、係数特定部37gと、分離信号生成部37hと、変換・合成処理部37iとしての機能を実現すると共に、RCS測定装置1全体を制御する制御処理や詳しくは後述のRCS測定処理などの処理を実行する。
遅延量特定部37eは、多重散乱波S2bが発生している場合に、特定部37aにより特定された極大値に対応する遅延量を特定する。より具体的には、遅延量特定部37eは、基底帯域信号BS(θ)の曲線が極大値をとる位相値Φを特定し、値が小さい順に、Φ0、Φ1、・・・、Φmとした場合に、Δi=Φi(i=0,1,・・・,m)として、各散乱波S2の遅延量Δiを特定する。
参照信号生成部37fは、多重散乱波S2bが発生している場合に、送信信号S1と遅延量特定部37eにより特定された遅延量Δiとに基づいて、以下の式7に示す参照信号RS(θ)を生成する。
係数特定部37gは、多重散乱波S2bが発生している場合に、受信信号である合成信号P(θ)と参照信号生成部37fにより生成された参照信号RS(θ)との差が最小となる場合における参照信号RS(θ)の係数B’i(θ)(i=0,1,・・・,m)を特定する。すなわち、係数特定部37gは、以下の式8を満たす係数B’i(θ)を特定する。
分離信号生成部37hは、多重散乱波S2bが発生している場合に、送信信号S1と遅延量特定部37eにより特定された遅延量Δiと係数特定部37gにより特定された係数B’i(θ)とに基づいて、散乱波S2(単一散乱波S2aと多重散乱波S2b)にそれぞれ対応する信号(以下、分離信号という)Ci(θ)を生成する。
分離信号Ci(θ)は、送信信号S1が式1に示すものである場合には、以下の式9に示すものとなる。なお、C0(θ)は単一散乱波S2aに対応し、Ci(θ)(i≧1)は、多重散乱波S2bに対応する。
変換・合成処理部37iは、多重散乱波S2bが発生している場合には、分離信号生成部37hにより生成された各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)に対して、それぞれ、遠方界の信号に変換する近傍界・遠方界変換処理を施して、分離信号Ci(θ)を平面波状態にした後に、各信号を合成することで、RCSの測定値を算出する。
また、変換・合成処理部37iは、多重散乱波S2bが発生していない場合には、受信信号(SS(θ))に対して近傍界・遠方界変換処理を施して、RCSの測定値を算出する。
次に、図6と図7を参照して、本実施形態2におけるRCS測定処理の流れについて説明する。図6と図7は、それぞれ、本実施形態2におけるRCS測定処理のフローを説明するためのフローチャートの例の一部と、他の一部である。本RCS測定処理は、例えば、RCS測定装置1の操作部(不図示)を介して、RCSの測定開始の操作がなされたことをトリガとして開始される。
送信部31は、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射すると共に(ステップS101)、生成した送信信号S1を局部発振信号生成部33に出力する(ステップS102)。そして、局部発振信号生成部33は、入力された送信信号S1に基づいて、局部発振信号S3を生成し(ステップS103)、生成した局部発振信号S3を基底帯域信号生成部34に出力する(ステップS104)。
受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信し(ステップS105)、受信した散乱波S2の受信信号を基底帯域信号生成部34に出力する(ステップS106)。
そして、基底帯域信号生成部34は、入力された局部発振信号S3と散乱波S2の受信信号とを乗算した後に(ステップS107)、基底周波数成分を取り出すことで、基底帯域信号BS(θ)を生成する(ステップS108)。
そして、特定部37aは、基底帯域信号生成部34により生成された基底帯域信号BS(θ)の位相値Φを[0,π]の範囲で可変した場合の、基底帯域信号BS(θ)の極大値を特定する(ステップS109)。そして、判定部37cは、特定部37aにより特定された[0,π]の範囲における極大値の数が複数か否かを判定する(ステップS110)。
判定部37cにより、極大値の数が複数であると判定された場合には(ステップS110;YES)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していると判定する(ステップS111)。そして、遅延量特定部37eは、特定部37aにより特定された極大値に対応する遅延量Δiを特定し(ステップS112)、参照信号生成部37fは、送信信号S1と遅延量特定部37eにより特定された遅延量Δiとに基づいて、参照信号RS(θ)を生成する(ステップS113)。
そして、係数特定部37gは、合成信号P(θ)と参照信号生成部37fにより生成された参照信号RS(θ)との差が最小となる場合における参照信号RS(θ)の係数B’i(θ)(i=0,1,・・・,m)を特定する(ステップS114)。そして、分離信号生成部37hは、送信信号S1と遅延量特定部37eにより特定された遅延量Δiと係数特定部37gにより特定された係数B’i(θ)とに基づいて、散乱波S2にそれぞれ対応する分離信号Ci(θ)を生成する(ステップS115)。
そして、変換・合成処理部37iは、分離信号生成部37hにより生成された各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施して(ステップS116)、それぞれの分離信号Ci(θ)を平面波状態にした後に、各信号を合成することで、RCSの測定値を算出する(ステップS117)。そして、処理は後述のステップS120の処理へと進む。
一方、判定部37cにより、極大値の数が一つであると判定された場合には(ステップS110;NO)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bは発生していないと判定する(ステップS118)。そして、変換・合成処理部37iは、受信信号(SS(θ))に対して近傍界・遠方界変換処理を施して、RCSの測定値を算出する(ステップS119)。
そして、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する(ステップS120)。判定部37cにより、回転台21を一周回転させたと判定された場合には(ステップS120;YES)、本処理は終了し、次の開始を待つ。
一方、判定部37cにより、回転台21をまだ一周回転させていないと判定された場合には(ステップS120;NO)、回転台制御部37dは、測定角度制御信号S4を生成して、出力部35を介して、生成した測定角度制御信号S4を測定対象搭載部2に送信する(ステップS121)。そして、測定対象搭載部2は、測定角度制御信号S4にしたがって、回転台21を角度α回転させる(ステップS122)。そして、処理はステップS101の処理へと戻り、前述の処理を繰り返す。
上記実施形態2によれば、RCS測定装置1は、送信信号S1と基底帯域信号BS(θ)の極大値に対応する遅延量Δiとに基づいて、参照信号RS(θ)を生成し、受信信号と参照信号RS(θ)との差が最小となる参照信号RS(θ)の係数B’i(θ)を特定する。そして、RCS測定装置1は、送信信号S1と遅延量Δiと係数B’i(θ)とに基づいて、散乱波S2にそれぞれ対応する分離信号Ci(θ)を生成し、生成した分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施した後に、各信号を合成する。このように構成することで、多重散乱波S2bが発生していても、再現性を有する正しいRCSの測定値を得ることが可能となる。
(実施形態3)
実施形態2においては、分離信号生成部37hは、送信信号S1と遅延量特定部37eにより特定された遅延量Δiと係数特定部37gにより特定された係数B’i(θ)とに基づいて、散乱波S2にそれぞれ対応する分離信号Ci(θ)を生成した。
図5は、本実施形態3におけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態3における本体部3の構成は実施形態2の場合と同じである。但し、分離信号生成部37hが果たす機能が実施形態2の場合と異なっている。
分離信号生成部37hは、多重散乱波S2bが発生している場合に、係数特定部37gにより特定された係数B’i(θ)の参照信号RS(θ)から、分離対象の散乱波S2に対応する係数B’j(θ)(j=0,1,・・・,m)の項を除外した除外後参照信号RSj’(θ)をそれぞれ生成する。すなわち、分離信号生成部37hは、以下の式10に示す除外後参照信号RSj’(θ)を生成する。
そして、分離信号生成部37hは、受信信号の合成信号P(θ)から除外後参照信号RSj’(θ)を減算して、以下の式11に示す分離信号Cj(θ)を生成する。
このようにして、分離信号生成部37hは、(m+1)個の散乱波S2にそれぞれ対応する分離信号Cj(θ)を生成する。
上記実施形態3によれば、RCS測定装置1は、参照信号RS(θ)から、分離対象の散乱波S2に対応する係数B’j(θ)の項を除外した除外後参照信号RSj’(θ)をそれぞれ生成し、受信信号から除外後参照信号RSj’(θ)を減算することで、各散乱波S2に対応する分離信号Cj(θ)を生成する。そして、RCS測定装置1は、分離信号Cj(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施した後に、各信号を合成する。このように構成することで、多重散乱波S2bが発生していても、再現性を有する正しいRCSの測定値を得ることが可能となる。
(実施形態4)
実施形態2と3においては、参照信号RS(θ)(又は、除外後参照信号RSj’(θ))を生成し、生成した参照信号RS(θ)(又は、除外後参照信号RSj’(θ))に基づいて、分離信号Ci(θ)を生成した。本実施形態4においては、受信信号の合成信号P(θ)に各散乱波S2の遅延量を与えて複数の擬似受信信号Pj’(θ)を生成することで、つまり、擬似的にチャネル数を増大させることで、分離信号Ci(θ)を生成する。
図8は、本実施形態4におけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態4における本体部3の基本的な構成は実施形態2の場合と同じである。但し、図8に示すように、制御部37が、参照信号生成部37fと係数特定部37gと分離信号生成部37hを備えていない点と、擬似受信信号生成部37jと分析部37kを更に備える点で、実施形態2の場合と異なっている。また、変換・合成処理部37iが果たす機能が実施形態2の場合と異なっている。
制御部37は、例えば、CPUなどで構成され、記憶部36のプログラムエリアに格納されている動作プログラムを実行して、図8に示すように、特定部37aと、多重散乱波判定部37bと、判定部37cと、回転台制御部37dと、遅延量特定部37eと、変換・合成処理部37iと、擬似受信信号生成部37jと、分析部37kとしての機能を実現すると共に、RCS測定装置1全体を制御する制御処理や詳しくは後述のRCS測定処理などの処理を実行する。
擬似受信信号生成部37jは、多重散乱波S2bが発生している場合に、受信信号の合成信号P(θ)に各散乱波S2の遅延量を与えて擬似受信信号Pj’(θ)を生成する。より具体的には、擬似受信信号生成部37jは、遅延量特定部37eにより特定された位相値Φi(i=0,1,・・・,m)、つまり、基底帯域信号BS(θ)の極大値に対応する遅延量を受信信号の合成信号P(θ)に与えて、以下の式12に示す擬似受信信号Pj’(θ)(j=0,1,・・・,m)を生成する。なお、この式におけるΔi(i=0,1,・・・,m)は未知数である。
分析部37kは、多重散乱波S2bが発生している場合に、擬似受信信号生成部37jにより生成された(m+1)個の擬似受信信号Pj’(θ)に対して主成分分析と独立成分分析を適用し、散乱波S2(単一散乱波S2aと多重散乱波S2b)にそれぞれ対応する信号(分離信号Ci(θ))を擬似受信信号Pj’(θ)から分離する。
より具体的には、分析部37kは、擬似受信信号Pj’(θ)に対して主成分分析を適用することで、擬似受信信号Pj’(θ)に基づいて、(m+1)×(m+1)共分散行列を生成し、生成した(m+1)×(m+1)共分散行列の固有値を算出する。そして、分析部37kは、算出した固有値に基づいて、同時に互いに直交した信号(以下、直交信号という)を擬似受信信号Pj’(θ)から分離する。そして、分析部37kは、分離した直交信号に対して、独立成分分析を適用し、例えば、尖度やネゲントロピなどの評価値を用いて、それぞれの信号が独立となるように分離信号Ci(θ)を分離する。
変換・合成処理部37iは、多重散乱波S2bが発生している場合には、分析部37kにより分離された各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)に対して、それぞれ、遠方界の信号に変換する近傍界・遠方界変換処理を施して、分離信号Ci(θ)を平面波状態にした後に、各信号を合成することで、RCSの測定値を算出する。
また、変換・合成処理部37iは、多重散乱波S2bが発生していない場合には、受信信号(SS(θ))に対して近傍界・遠方界変換処理を施して、RCSの測定値を算出する。
次に、図9と図10を参照して、本実施形態4におけるRCS測定処理の流れについて説明する。図9と図10は、それぞれ、本実施形態4におけるRCS測定処理のフローを説明するためのフローチャートの例の一部と、他の一部である。本RCS測定処理は、例えば、RCS測定装置1の操作部(不図示)を介して、RCSの測定開始の操作がなされたことをトリガとして開始される。なお、実施形態2におけるRCS測定処理と同じ処理については同じ符号を付すこととし、ここでは、異なる処理の部分を中心に説明する。
判定部37cは、特定部37aにより特定された[0,π]の範囲における極大値の数が複数か否かを判定する(ステップS110)。判定部37cにより、極大値の数が複数であると判定された場合には(ステップS110;YES)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していると判定する(ステップS111)。
そして、遅延量特定部37eは、特定部37aにより特定された極大値に対応する位相値Φiを特定し(ステップS201)、擬似受信信号生成部37jは、遅延量特定部37eにより特定された位相値Φiを受信信号の合成信号P(θ)に与えて、(m+1)個の擬似受信信号Pj’(θ)を生成する(ステップS202)。
そして、分析部37kは、擬似受信信号生成部37jにより生成された(m+1)個の擬似受信信号Pj’(θ)に対して主成分分析を適用し、(m+1)×(m+1)共分散行列を生成し、生成した共分散行列の固有値を算出する(ステップS203)。そして、分析部37kは、算出した固有値に基づいて、直交信号を擬似受信信号Pj’(θ)から分離し(ステップS204)、分離した直交信号に対して、独立成分分析を適用し、それぞれの信号が独立となるように分離信号Ci(θ)を分離する(ステップS205)。
そして、変換・合成処理部37iは、分析部37kにより分離された各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施して(ステップS116)、それぞれの分離信号Ci(θ)を平面波状態にした後に、各信号を合成することで、RCSの測定値を算出する(ステップS117)。そして、処理は後述のステップS120の処理へと進む。
一方、判定部37cにより、極大値の数が一つであると判定された場合には(ステップS110;NO)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bは発生していないと判定する(ステップS118)。そして、変換・合成処理部37iは、受信信号(SS(θ))に対して近傍界・遠方界変換処理を施して、RCSの測定値を算出する(ステップS119)。
そして、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する(ステップS120)。判定部37cにより、回転台21を一周回転させたと判定された場合には(ステップS120;YES)、本処理は終了し、次の開始を待つ。
一方、判定部37cにより、回転台21をまだ一周回転させていないと判定された場合には(ステップS120;NO)、回転台制御部37dは、測定角度制御信号S4を生成して、出力部35を介して、生成した測定角度制御信号S4を測定対象搭載部2に送信する(ステップS121)。そして、測定対象搭載部2は、測定角度制御信号S4にしたがって、回転台21を角度α回転させる(ステップS122)。そして、処理はステップS101の処理へと戻り、前述の処理を繰り返す。
上記実施形態4によれば、RCS測定装置1は、基底帯域信号BS(θ)の極大値に対応する遅延量(位相値Φi)を受信信号にそれぞれ与えて擬似受信信号Pj’(θ)を生成し、擬似受信信号Pj’(θ)に対し主成分分析と独立成分分析を適用して、散乱波S2にそれぞれ対応する分離信号Ci(θ)を擬似受信信号Pj’(θ)から分離する。そして、RCS測定装置1は、分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施した後に、各信号を合成する。このように構成することで、多重散乱波S2bが発生していても、再現性を有する正しいRCSの測定値を得ることが可能となる。
(実施形態5)
実施形態1乃至4においては、[0,π]の範囲における基底帯域信号BS(θ)の極大値(又は、極小値)の数に基づいて、多重散乱波S2bの発生を検知した。本実施形態5においては、主成分分析の過程で求める共分散行列の固有値の個数に基づいて、多重散乱波S2bの発生を検知する。
図11は、本実施形態5におけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態5における本体部3の基本的な構成は実施形態1の場合と同じである。但し、図11に示すように、制御部37が、遅延量特定部37eと擬似受信信号生成部37jと分析部37kを更に備える点で、実施形態1の場合と異なっている。また、多重散乱波判定部37bと判定部37cが果たす機能が実施形態1の場合と異なっている。なお、遅延量特定部37eと擬似受信信号生成部37jの機能については、実施形態4で説明した機能と同じため、ここでの説明は省略する。
制御部37は、例えば、CPUなどで構成され、記憶部36のプログラムエリアに格納されている動作プログラムを実行して、図11に示すように、特定部37aと、多重散乱波判定部37bと、判定部37cと、回転台制御部37dと、遅延量特定部37eと、擬似受信信号生成部37jと、分析部37kとしての機能を実現すると共に、RCS測定装置1全体を制御する制御処理や詳しくは後述の多重散乱波検知処理などの処理を実行する。
分析部37kは、擬似受信信号生成部37jにより生成された(m+1)個の擬似受信信号Pj’(θ)に基づいて(m+1)×(m+1)共分散行列を生成し、生成した共分散行列の固有値を算出する。
多重散乱波判定部37bは、分析部37kにより算出された固有値の個数が複数の場合には、多重散乱波S2bが発生していると判定し、固有値の個数が1つの場合には、多重散乱波S2bは発生していないと判定する。
判定部37cは、分析部37kにより算出された固有値の個数が複数か否かを判定する。また、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する。
次に、図12を参照して、本実施形態5における多重散乱波検知処理の流れについて説明する。図12は、本実施形態5における多重散乱波検知処理のフローを説明するためのフローチャートの例の一部である。本多重散乱波検知処理は、例えば、RCS測定装置1の操作部(不図示)を介して、RCSの測定開始の操作がなされたことをトリガとして開始される。なお、実施形態1における多重散乱波検知処理と同じ処理については同じ符号を付すこととし、ここでは、異なる処理の部分を中心に説明する。
特定部37aは、基底帯域信号生成部34により生成された基底帯域信号BS(θ)の位相値Φを[0,π]の範囲で可変した場合の、基底帯域信号BS(θ)の極大値を特定する(ステップS009)。
そして、遅延量特定部37eは、特定部37aにより特定された極大値に対応する位相値Φiを特定し(ステップS301)、擬似受信信号生成部37jは、遅延量特定部37eにより特定された位相値Φiを受信信号の合成信号P(θ)に与えて、(m+1)個の擬似受信信号Pj’(θ)を生成する(ステップS302)。
そして、分析部37kは、擬似受信信号生成部37jにより生成された(m+1)個の擬似受信信号Pj’(θ)に基づいて、(m+1)×(m+1)共分散行列を生成し、生成した共分散行列の固有値を算出する(ステップS303)。そして、判定部37cは、分析部37kにより算出された固有値の個数が複数か否かを判定する(ステップS304)。
判定部37cにより、固有値の個数が複数であると判定された場合には(ステップS304;YES)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していると判定する(ステップS305)。そして、処理は後述のステップS013の処理へと進む。
一方、判定部37cにより、固有値の個数が一つであると判定された場合には(ステップS304;NO)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bは発生していないと判定する(ステップS306)。そして、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する(ステップS013)。判定部37cにより、回転台21を一周回転させたと判定された場合には(ステップS013;YES)、本処理は終了し、次の開始を待つ。
一方、判定部37cにより、回転台21をまだ一周回転させていないと判定された場合には(ステップS013;NO)、回転台制御部37dは、測定角度制御信号S4を生成して、出力部35を介して、生成した測定角度制御信号S4を測定対象搭載部2に送信する(ステップS014)。そして、測定対象搭載部2は、測定角度制御信号S4にしたがって、回転台21を角度α回転させる(ステップS015)。そして、処理はステップS001の処理へと戻り、前述の処理を繰り返す。
上記実施形態5によれば、RCS測定装置1は、基底帯域信号BS(θ)の極大値に対応する遅延量(位相値Φi)を受信信号にそれぞれ与えて擬似受信信号Pj’(θ)を生成し、生成した擬似受信信号Pj’(θ)に基づいて共分散行列を生成し、生成した共分散行列の固有値を算出する。このように構成することで、固有値の数に基づいて、多重散乱波S2bの発生を検知することが可能となる。
(実施形態6)
本実施形態6においては、RCS測定装置1が、受信アンテナとして、n個のアンテナ素子のアレイアンテナを備える場合における多重散乱波S2bの検知方法について説明する。
図13は、本実施形態6におけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態6における本体部3の基本的な構成は実施形態1の場合と同じである。
但し、図13に示すように、本体部3が、局部発振信号生成部33と基底帯域信号生成部34を備えていない点で、実施形態1の場合と異なっている。また、送信部31と受信部32が果たす機能が実施形態1の場合と異なっている。また、制御部37が、特定部37aの替りに、分析部37kを更に備える点で、実施形態1の場合と異なっている。また、多重散乱波判定部37bと判定部37cが果たす機能が実施形態1の場合と異なっている。なお、多重散乱波判定部37bと判定部37cの機能については、実施形態5で説明した機能と同じである。
送信部31は、例えば、信号発生器や送信用アンテナなどで構成され、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射する。なお、本実施形態6の送信信号S1は、実施形態1の場合と同じである。
受信部32は、例えば、n個のアンテナ素子のアレイアンテナなどで構成され、送信信号S1を照射することで散乱体Tから発生する散乱波S2を複数のアンテナで受信する。ここで、各アンテナを区別する際には、アンテナAT1、・・・、アンテナATnと称することとすると、各アンテナで受信する受信信号Pj(θ)(j=1,・・・,n)は、以下の式13で表すことができる。
制御部37は、例えば、CPUなどで構成され、記憶部36のプログラムエリアに格納されている動作プログラムを実行して、図13に示すように、多重散乱波判定部37bと、判定部37cと、回転台制御部37dと、分析部37kとしての機能を実現すると共に、RCS測定装置1全体を制御する制御処理や詳しくは後述の多重散乱波検知処理などの処理を実行する。
分析部37kは、受信部32により受信されたn個の受信信号Pj(θ)に基づいてn×n共分散行列を生成し、生成した共分散行列の固有値を算出する。
次に、図14を参照して、本実施形態6における多重散乱波検知処理の流れについて説明する。図14は、本実施形態6における多重散乱波検知処理のフローを説明するためのフローチャートの例である。本多重散乱波検知処理は、例えば、RCS測定装置1の操作部(不図示)を介して、RCSの測定開始の操作がなされたことをトリガとして開始される。
送信部31は、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射し(ステップS401)、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信する(ステップS402)。そして、分析部37kは、受信部32により受信されたn個の受信信号Pj(θ)に基づいてn×n共分散行列を生成し、生成した共分散行列の固有値を算出する(ステップS403)。
そして、判定部37cは、分析部37kにより算出された固有値の個数が複数か否かを判定する(ステップS404)。判定部37cにより、固有値の個数が複数であると判定された場合には(ステップS404;YES)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していると判定する(ステップS405)。そして、処理は後述のステップS407の処理へと進む。
一方、判定部37cにより、固有値の個数が一つであると判定された場合には(ステップS404;NO)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bは発生していないと判定する(ステップS406)。そして、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する(ステップS407)。判定部37cにより、回転台21を一周回転させたと判定された場合には(ステップS407;YES)、本処理は終了し、次の開始を待つ。
一方、判定部37cにより、回転台21をまだ一周回転させていないと判定された場合には(ステップS407;NO)、回転台制御部37dは、測定角度制御信号S4を生成して、出力部35を介して、生成した測定角度制御信号S4を測定対象搭載部2に送信する(ステップS408)。そして、測定対象搭載部2は、測定角度制御信号S4にしたがって、回転台21を角度α回転させる(ステップS409)。そして、処理はステップS401の処理へと戻り、前述の処理を繰り返す。
上記実施形態6によれば、RCS測定装置1は、複数のアンテナ素子で散乱波を受信し、複数の受信信号Pj(θ)に基づいて共分散行列を生成し、生成した共分散行列の固有値を算出する。このように構成することで、固有値の数に基づいて、多重散乱波S2bの発生を検知することが可能となる。
(実施形態7)
本実施形態7においては、RCS測定装置1が、受信アンテナとして、n個のアンテナ素子のアレイアンテナを備える場合におけるRCSの測定方法について説明する。なお、アレイアンテナのアンテナ素子数は十分多きいものとする。
図15は、本実施形態7におけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態7における本体部3の基本的な構成は実施形態6の場合と同じである。但し、図15に示すように、制御部37が、変換・合成処理部37iを更に備える点で、実施形態6の場合と異なっている。また、分析部37kが果たす機能が実施形態6の場合と異なっている。なお、変換・合成処理部37iの機能は、実施形態4で説明した機能と同じである。
制御部37は、例えば、CPUなどで構成され、記憶部36のプログラムエリアに格納されている動作プログラムを実行して、図15に示すように、多重散乱波判定部37bと、判定部37cと、回転台制御部37dと、分離信号生成部37hと、変換・合成処理部37iと、分析部37kとしての機能を実現すると共に、RCS測定装置1全体を制御する制御処理や詳しくは後述のRCS測定処理などの処理を実行する。
分析部37kは、受信部32により受信されたn個の受信信号Pj(θ)に対して主成分分析と独立成分分析を適用し、散乱波S2(単一散乱波S2aと多重散乱波S2b)にそれぞれ対応する信号(分離信号Ci(θ))を受信信号Pj(θ)から分離する。
より具体的には、分析部37kは、n個の受信信号Pj(θ)に対して主成分分析を適用することで、受信信号Pj(θ)に基づいて、n×n共分散行列を生成し、生成したn×n共分散行列の固有値を算出する。そして、分析部37kは、算出した固有値に基づいて、直交信号を受信信号Pj(θ)から分離する。そして、分析部37kは、分離した直交信号に対して、独立成分分析を適用し、例えば、尖度やネゲントロピなどの評価値を用いて、それぞれの信号が独立となるように分離信号Ci(θ)を分離する。
次に、図16と図17を参照して、本実施形態7におけるRCS測定処理の流れについて説明する。図16と図17は、それぞれ、本実施形態7におけるRCS測定処理のフローを説明するためのフローチャートの例の一部と、他の一部である。本RCS測定処理は、例えば、RCS測定装置1の操作部(不図示)を介して、RCSの測定開始の操作がなされたことをトリガとして開始される。
送信部31は、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射し(ステップS501)、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信する(ステップS502)。そして、分析部37kは、受信部32により受信されたn個の受信信号Pj(θ)に基づいてn×n共分散行列を生成し、生成した共分散行列の固有値を算出する(ステップS503)。
そして、判定部37cは、分析部37kにより算出された固有値の個数が複数か否かを判定する(ステップS504)。判定部37cにより、固有値の個数が複数であると判定された場合には(ステップS504;YES)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していると判定する(ステップS505)。
そして、分析部37kは、算出した固有値に基づいて、直交信号を受信信号Pj(θ)から分離し(ステップS506)、分離した直交信号に対して、独立成分分析を適用し、それぞれの信号が独立となるように分離信号Ci(θ)を分離する(ステップS507)。
そして、変換・合成処理部37iは、分析部37kにより分離された各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施して(ステップS508)、それぞれの分離信号Ci(θ)を平面波状態にした後に、各信号を合成することで、RCSの測定値を算出する(ステップS509)。そして、処理は後述のステップS512の処理へと進む。
一方、判定部37cにより、固有値の個数が一つであると判定された場合には(ステップS504;NO)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bは発生していないと判定する(ステップS510)。そして、変換・合成処理部37iは、受信信号(例えば、アンテナAT1の受信信号)に対して近傍界・遠方界変換処理を施して、RCSの測定値を算出する(ステップS511)。
そして、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する(ステップS512)。判定部37cにより、回転台21を一周回転させたと判定された場合には(ステップS512;YES)、本処理は終了し、次の開始を待つ。
一方、判定部37cにより、回転台21をまだ一周回転させていないと判定された場合には(ステップS512;NO)、回転台制御部37dは、測定角度制御信号S4を生成して、出力部35を介して、生成した測定角度制御信号S4を測定対象搭載部2に送信する(ステップS513)。そして、測定対象搭載部2は、測定角度制御信号S4にしたがって、回転台21を角度α回転させる(ステップS514)。そして、処理はステップS501の処理へと戻り、前述の処理を繰り返す。
上記実施形態7によれば、RCS測定装置1は、複数のアンテナ素子で散乱波を受信し、複数の受信信号Pj(θ)に対して主成分分析と独立成分分析を適用して、散乱波S2にそれぞれ対応する分離信号Ci(θ)を受信信号Pj(θ)から分離する。そして、RCS測定装置1は、分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施した後に、各信号を合成する。このように構成することで、多重散乱波S2bが発生していても、再現性を有する正しいRCSの測定値を得ることが可能となる。
(実施形態8)
本実施形態8においては、送信信号S1として、一変調周期毎に互いに直交した符号(例えば、n個の直交符号)で変調した直交符号変調信号を用いた場合における多重散乱波S2bの検知方法について説明する。
図18は、本実施形態8おけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態8における本体部3の基本的な構成は実施形態1の場合と同じである。
但し、図18に示すように、本体部3が、局部発振信号生成部33と基底帯域信号生成部34を備えていない点で、実施形態1の場合と異なっている。また、送信部31と受信部32が果たす機能が実施形態1の場合と異なっている。また、制御部37が、特定部37aの替りに、相互相関算出部37lを更に備える点で、実施形態1の場合と異なっている。また、多重散乱波判定部37bと判定部37cが果たす機能が実施形態1の場合と異なっている。
送信部31は、例えば、信号発生器や送信用アンテナなどで構成され、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射する。
本実施形態8においては、送信部31が照射する送信信号S1は、一変調周期毎に互いに直交した符号(例えば、n個の直交符号)で変調した直交符号変調信号であり、以下の式14で表すものとする。
受信部32は、例えば、受信用アンテナなどで構成され、送信信号S1を照射することで散乱体Tから発生する散乱波S2を受信する。
より具体的には、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2が単一散乱波S2aのみの場合には、単一散乱波S2aのみの受信信号SS(θ)を受信し、散乱体Tから発生する散乱波S2が単一散乱波S2aと多重散乱波S2bである場合には、単一散乱波S2aの受信信号SS(θ)と多重散乱波S2bにそれぞれ対応する受信信号MSi(θ)(i=1,・・・,m)との合成信号P(θ)を、受信信号として受信する。
単一散乱波S2aの受信信号SS(θ)は、送信信号S1が式14に示すものである場合には、以下の式15で表すことができる。なお、式中のA0(θ)は、測定角度θに依存している係数であり、Δ0は、伝送経路に依存している位相の遅延量である。
多重散乱波S2bの受信信号MSi(θ)(i=1,・・・,m)は、送信信号S1が式14に示すものである場合には、以下の式16で表すことができる。なお、式中のAi(θ)は、測定角度θに依存している係数であり、Δiは、伝送経路に依存している位相の遅延量である。
この場合、散乱体Tから発生する散乱波S2が単一散乱波S2aと多重散乱波S2bである場合に受信部32が受信する合成信号P(θ)は、以下の式17で表すことができる。
制御部37は、例えば、CPUなどで構成され、記憶部36のプログラムエリアに格納されている動作プログラムを実行して、図18に示すように、多重散乱波判定部37bと、判定部37cと、回転台制御部37dと、相互相関算出部37lとしての機能を実現すると共に、RCS測定装置1全体を制御する制御処理や詳しくは後述の多重散乱波検知処理などの処理を実行する。
相互相関算出部37lは、受信部32により受信された受信信号と直交符号変調信号(送信信号S1)との相互相関を算出する。
多重散乱波判定部37bは、相互相関算出部37lにより算出された相互相関が複数回最大値をとる場合には、多重散乱波S2bが発生していると判定し、相互相関の最大値が一回の場合には、多重散乱波S2bは発生していないと判定する。
このように判定できるのは、受信信号が単一散乱波S2aの受信信号SS(θ)と多重散乱波S2bの受信信号MSi(θ)(i=1,・・・,m)との合成信号P(θ)である場合には、多重散乱波S2bの影響で複数の直交符号変調信号が発生しているからである。つまり、m個の多重散乱波S2bが発生している場合には、(m+1)個の直交符号変調信号が発生することとなる。
判定部37cは、相互相関算出部37lにより算出された相互相関が複数回最大値をとるか否かを判定する。また、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する。
次に、図19を参照して、本実施形態8における多重散乱波検知処理の流れについて説明する。図19は、本実施形態8における多重散乱波検知処理のフローを説明するためのフローチャートの例である。本多重散乱波検知処理は、例えば、RCS測定装置1の操作部(不図示)を介して、RCSの測定開始の操作がなされたことをトリガとして開始される。
送信部31は、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射し(ステップS601)、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信する(ステップS602)。そして、相互相関算出部37lは、受信部32により受信された受信信号と直交符号変調信号(送信信号S1)との相互相関を算出する(ステップS603)。
そして、判定部37cは、相互相関算出部37lにより算出された相互相関が複数回最大値をとるか否かを判定する(ステップS604)。判定部37cにより、複数回最大値をとると判定された場合には(ステップS604;YES)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していると判定する(ステップS605)。そして、処理は後述のステップS607の処理へと進む。
一方、判定部37cにより最大値をとる回数は一回であると判定された場合には(ステップ604;NO)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bは発生していないと判定する(ステップS606)。そして、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する(ステップS607)。判定部37cにより、回転台21を一周回転させたと判定された場合には(ステップS607;YES)、本処理は終了し、次の開始を待つ。
一方、判定部37cにより、回転台21をまだ一周回転させていないと判定された場合には(ステップS607;NO)、回転台制御部37dは、測定角度制御信号S4を生成して、出力部35を介して、生成した測定角度制御信号S4を測定対象搭載部2に送信する(ステップS608)。そして、測定対象搭載部2は、測定角度制御信号S4にしたがって、回転台21を角度α回転させる(ステップS609)。そして、処理はステップS601の処理へと戻り、前述の処理を繰り返す。
上記実施形態8によれば、RCS測定装置1は、直交符号変調信号を送信信号S1とし、受信信号と送信信号S1との相互相関を算出する。多重散乱波S2bが発生している場合には、多重散乱波S2bに対応する直交符号変調信号が受信信号に含まれることから、このように構成することで、相互相関が最大値をとる回数に基づいて、多重散乱波S2bの発生を検知することが可能となる。
(実施形態9)
本実施形態9においては、送信信号S1として、一変調周期毎に互いに直交した符号(例えば、n個の直交符号)で変調した直交符号変調信号を用いた場合におけるRCSの測定方法について説明する。
図20は、本実施形態9おけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態9における本体部3の基本的な構成は実施形態8の場合と同じである。但し、図20に示すように、制御部37が、更に、遅延量特定部37eと、変換・合成処理部37iと、擬似受信信号生成部37jと、分析部37kと、を備える点で、実施形態8の場合と異なっている。なお、変換・合成処理部37iと分析部37kの各機能は、実施形態4で説明した機能と同じである。
制御部37は、例えば、CPUなどで構成され、記憶部36のプログラムエリアに格納されている動作プログラムを実行して、図20に示すように、多重散乱波判定部37bと、判定部37cと、回転台制御部37dと、遅延量特定部37eと、変換・合成処理部37iと、擬似受信信号生成部37jと、分析部37kと、相互相関算出部37lとしての機能を実現すると共に、RCS測定装置1全体を制御する制御処理や詳しくは後述のRCS測定処理などの処理を実行する。
遅延量特定部37eは、多重散乱波S2bが発生している場合に、相互相関算出部37lにより算出された相互相関が最大値をとる際の直交符号変調信号(送信信号S1)の遅延量Φj(j=0,1,・・・,m)、つまり、各散乱波S2bの遅延量を特定する。
擬似受信信号生成部37jは、多重散乱波S2bが発生している場合に、受信信号の合成信号P(θ)に遅延量Φjを与えて擬似受信信号Pj’(θ)を生成する。より具体的には、擬似受信信号生成部37jは、遅延量特定部37eにより特定された遅延量Φj(j=0,1,・・・,m)を受信信号の合成信号P(θ)に与えて、以下の式18に示す擬似受信信号Pj’(θ)(j=0,1,・・・,m)を生成する。なお、この式におけるΔi(i=0,1,・・・,m)は未知数である。
次に、図21と図22を参照して、本実施形態9におけるRCS測定処理の流れについて説明する。図21と図22は、それぞれ、本実施形態9におけるRCS測定処理のフローを説明するためのフローチャートの例の一部と、他の一部である。本RCS測定処理は、例えば、RCS測定装置1の操作部(不図示)を介して、RCSの測定開始の操作がなされたことをトリガとして開始される。
送信部31は、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射し(ステップS701)、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信する(ステップS702)。そして、相互相関算出部37lは、受信部32により受信された受信信号と直交符号変調信号(送信信号S1)との相互相関を算出する(ステップS703)。
そして、判定部37cは、相互相関算出部37lにより算出された相互相関が複数回最大値をとるか否かを判定する(ステップS704)。判定部37cにより、複数回最大値をとると判定された場合には(ステップS704;YES)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していると判定する(ステップS705)。
そして、遅延量特定部37eは、相互相関算出部37lにより算出された相互相関が最大値をとる際の直交符号変調信号(送信信号S1)の遅延量Φjを特定し(ステップS706)、擬似受信信号生成部37jは、遅延量特定部37eにより特定された遅延量Φjを受信信号の合成信号P(θ)に与えて、(m+1)個の擬似受信信号Pj’(θ)を生成する(ステップS707)。
そして、分析部37kは、擬似受信信号生成部37jにより生成された(m+1)個の擬似受信信号Pj’(θ)に対して主成分分析を適用し、(m+1)×(m+1)共分散行列を生成し、生成した共分散行列の固有値を算出する(ステップS708)。そして、分析部37kは、算出した固有値に基づいて、直交信号を擬似受信信号Pj’(θ)から分離し(ステップS709)、分離した直交信号に対して、独立成分分析を適用し、それぞれの信号が独立となるように分離信号Ci(θ)を分離する(ステップS710)。
そして、変換・合成処理部37iは、分析部37kにより分離された各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施して(ステップS711)、それぞれの分離信号Ci(θ)を平面波状態にした後に、各信号を合成することで、RCSの測定値を算出する(ステップS712)。そして、処理は後述のステップS715の処理へと進む。
一方、判定部37cにより、最大値をとる回数は一回であると判定された場合には(ステップS704;NO)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bは発生していないと判定する(ステップS713)。そして、変換・合成処理部37iは、受信信号(SS(θ))に対して近傍界・遠方界変換処理を施して、RCSの測定値を算出する(ステップS714)。
そして、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する(ステップS715)。判定部37cにより、回転台21を一周回転させたと判定された場合には(ステップS715;YES)、本処理は終了し、次の開始を待つ。
一方、判定部37cにより、回転台21をまだ一周回転させていないと判定された場合には(ステップS715;NO)、回転台制御部37dは、測定角度制御信号S4を生成して、出力部35を介して、生成した測定角度制御信号S4を測定対象搭載部2に送信する(ステップS716)。そして、測定対象搭載部2は、測定角度制御信号S4にしたがって、回転台21を角度α回転させる(ステップS717)。そして、処理はステップS701の処理へと戻り、前述の処理を繰り返す。
上記実施形態9によれば、RCS測定装置1は、直交符号変調信号を送信信号S1とし、受信信号と送信信号S1との相互相関を算出し、相互相関が最大値をとる際の直交符号変調信号(送信信号S1)の遅延量Φjを特定する。そして、RCS測定装置1は、受信信号に遅延量Φjを与えて擬似受信信号Pj’(θ)を生成し、生成した擬似受信信号Pj’(θ)に対して、主成分分析と独立成分分析を適用して、散乱波S2にそれぞれ対応する分離信号Ci(θ)を擬似受信信号Pj’(θ)から分離する。そして、RCS測定装置1は、分離した分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施した後に、各信号を合成する。このように構成することで、多重散乱波S2bが発生していても、再現性を有する正しいRCSの測定値を得ることが可能となる。
(実施形態10)
実施形態8と9においては、直交符号変調信号を送信信号S1として散乱体Tに照射し、受信信号と直交符号変調信号との相互相関を算出し、算出した相互相関が最大値となる回数に基づいて多重散乱波S2bの発生を検知した。
本実施形態10においては、擬似受信信号Pj’(θ)を生成し、生成した擬似受信信号Pj’(θ)に基づいて共分散行列を生成し、生成した共分散行列の固有値の個数に基づいて多重散乱波S2bの発生を検知する方法について説明する。
図23は、本実施形態10おけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態10における本体部3の基本的な構成は実施形態8の場合と同じである。
但し、図23に示すように、制御部37が、遅延量特定部37eと、擬似受信信号生成部37jと、分析部37kと、を更に備える点で、実施形態8の場合と異なっている。また、多重散乱波判定部37bと判定部37cが果たす機能が実施形態8の場合と異なっている。なお、遅延量特定部37eと擬似受信信号生成部37jの機能は、実施形態9で説明した機能と同じである。
制御部37は、例えば、CPUなどで構成され、記憶部36のプログラムエリアに格納されている動作プログラムを実行して、図23に示すように、多重散乱波判定部37bと、判定部37cと、回転台制御部37dと、遅延量特定部37eと、擬似受信信号生成部37jと、分析部37kと、相互相関算出部37lとしての機能を実現すると共に、RCS測定装置1全体を制御する制御処理や詳しくは後述の多重散乱波検知処理などの処理を実行する。
分析部37kは、擬似受信信号生成部37jにより生成された(m+1)個の擬似受信信号Pj’(θ)に基づいて(m+1)×(m+1)共分散行列を生成し、生成した共分散行列の固有値を算出する。
多重散乱波判定部37bは、分析部37kにより算出された固有値の個数が複数の場合には、多重散乱波S2bが発生していると判定し、固有値の個数が1つの場合には、多重散乱波S2bは発生していないと判定する。
判定部37cは、分析部37kにより算出された固有値の個数が複数か否かを判定する。また、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する。
次に、図24を参照して、本実施形態10における多重散乱波検知処理の流れについて説明する。図24は、本実施形態10における多重散乱波検知処理のフローを説明するためのフローチャートの例である。本多重散乱波検知処理は、例えば、RCS測定装置1の操作部(不図示)を介して、RCSの測定開始の操作がなされたことをトリガとして開始される。なお、実施形態8における多重散乱波検知処理と同じ処理については同じ符号を付すこととし、ここでは、異なる処理の部分を中心に説明する。
送信部31は、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射し(ステップS601)、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信する(ステップS602)。そして、相互相関算出部37lは、受信部32により受信された受信信号と直交符号変調信号(送信信号S1)との相互相関を算出する(ステップS603)。
そして、遅延量特定部37eは、相互相関算出部37lにより算出された相互相関が最大値をとる際の直交符号変調信号(送信信号S1)の遅延量Φjを特定し(ステップS801)、擬似受信信号生成部37jは、遅延量特定部37eにより特定された遅延量Φjを受信信号の合成信号P(θ)に与えて、(m+1)個の擬似受信信号Pj’(θ)を生成する(ステップS802)。
そして、分析部37kは、擬似受信信号生成部37jにより生成された(m+1)個の擬似受信信号Pj’(θ)に基づいて、(m+1)×(m+1)共分散行列を生成し、生成した共分散行列の固有値を算出する(ステップS803)。
そして、判定部37cは、分析部37kにより算出された固有値の個数が複数か否かを判定する(ステップS804)。判定部37cにより、固有値の個数が複数であると判定された場合には(ステップS804;YES)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していると判定する(ステップS805)。そして、処理は実施形態8で説明したステップS607の処理へと進む。
一方、判定部37cにより固有値の個数は一つであると判定された場合には(ステップ804;NO)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bは発生していないと判定する(ステップS806)。そして、処理は実施形態8で説明したステップS607の処理へと進む。
そして、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する(ステップS607)。判定部37cにより、回転台21を一周回転させたと判定された場合には(ステップS607;YES)、本処理は終了し、次の開始を待つ。
一方、判定部37cにより、回転台21をまだ一周回転させていないと判定された場合には(ステップS607;NO)、回転台制御部37dは、測定角度制御信号S4を生成して、出力部35を介して、生成した測定角度制御信号S4を測定対象搭載部2に送信する(ステップS608)。そして、測定対象搭載部2は、測定角度制御信号S4にしたがって、回転台21を角度α回転させる(ステップS609)。そして、処理はステップS601の処理へと戻り、前述の処理を繰り返す。
上記実施形態10によれば、RCS測定装置1は、直交符号変調信号を送信信号S1とし、受信信号と送信信号S1との相互相関を算出し、相互相関が最大値をとる際の直交符号変調信号(送信信号S1)の遅延量Φjを特定する。そして、RCS測定装置1は、受信信号に遅延量Φjを与えて擬似受信信号Pj’(θ)を生成し、生成した擬似受信信号Pj’(θ)に基づいて共分散行列を生成し、生成した共分散行列の固有値を算出する。このように構成することで、固有値の数に基づいて、多重散乱波S2bの発生を検知することが可能となる。
(実施形態11)
本実施形態11においては、送信信号S1として、周波数を連続的に変化させる周波数掃引変調を行った周波数掃引変調信号を用いた場合における多重散乱波S2bの検知方法について説明する。
図25は、本実施形態11おけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態11における本体部3の基本的な構成は実施形態1の場合と同じである。
但し、図25に示すように、本体部3が、局部発振信号生成部33と基底帯域信号生成部34を備えていない点で、実施形態1の場合と異なっている。また、送信部31と受信部32が果たす機能が実施形態1の場合と異なっている。また、制御部37が、特定部37aの替りに、パルス圧縮部37mと、波数比較部37nと、を更に備える点で、実施形態1の場合と異なっている。また、多重散乱波判定部37bと判定部37cが果たす機能が実施形態1の場合と異なっている。
送信部31は、例えば、信号発生器や送信用アンテナなどで構成され、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射する。
本実施形態11においては、送信部31が照射する送信信号S1は、周波数を連続的に変化させる周波数掃引変調を行った周波数掃引変調信号であり、上述の式14で表すものとする。
受信部32は、例えば、受信用アンテナなどで構成され、送信信号S1を照射することで散乱体Tから発生する散乱波S2を受信する。
より具体的には、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2が単一散乱波S2aのみの場合には、単一散乱波S2aのみの受信信号SS(θ)(上述の式15)を受信し、散乱体Tから発生する散乱波S2が単一散乱波S2aと多重散乱波S2bである場合には、単一散乱波S2aの受信信号SS(θ)と多重散乱波S2bのそれぞれの受信信号MSi(θ)(上述の式16)との合成信号P(θ)(上述の式17)を、受信信号として受信する。
制御部37は、例えば、CPUなどで構成され、記憶部36のプログラムエリアに格納されている動作プログラムを実行して、図25に示すように、多重散乱波判定部37bと、判定部37cと、回転台制御部37dと、パルス圧縮部37mと、波数比較部37nとしての機能を実現すると共に、RCS測定装置1全体を制御する制御処理や詳しくは後述の多重散乱波検知処理などの処理を実行する。
パルス圧縮部37mは、受信部32により受信された受信信号を送信信号S1の周波数掃引変調信号と逆の周波数掃引により加算処理を行うことでパルス状の圧縮波S5を生成する。
波数比較部37nは、所定時間W1内に送信される送信信号S1の波数と所定時間W1内の圧縮波S5の波数とを比較する。
多重散乱波判定部37bは、圧縮波S5の波数が送信信号S1の波数より多い場合には、多重散乱波S2bが発生していると判定し、圧縮波S5の波数が送信信号S1の波数と等しい場合には、多重散乱波S2bは発生していないと判定する。
このように判定できるのは、図26A乃至Cに示すように、例えば、所定時間W1内に送信される送信信号S1の波数がnであり、多重散乱波S2bが発生しない場合には、所定時間W1内の圧縮波S5の波数はnとなるが、多重散乱波S2bが発生している場合には、多重散乱波S2bに対応する圧縮波S5も含まれるため、所定時間W1内の圧縮波S5の波数はnより多くなるからである。
ここで、図26Aは、本実施形態11における多重散乱波S2bの検知方法を説明するための図であり、送信信号S1を示す図である。図26Bは、本実施形態11における多重散乱波S2bの検知方法を説明するための図であり、多重散乱波S2bが発生していない場合の圧縮波S5を示す図である。図26Cは、本実施形態11における多重散乱波S2bの検知方法を説明するための図であり、多重散乱波S2bが発生している場合の圧縮波S5を示す図である。
図25に戻り、判定部37cは、波数比較部37nによる比較結果に基づいて、圧縮波S5の波数が送信信号S1の波数より多いか否かを判定する。また、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する。
次に、図27を参照して、本実施形態11における多重散乱波検知処理の流れについて説明する。図27は、本実施形態11における多重散乱波検知処理のフローを説明するためのフローチャートの例である。本多重散乱波検知処理は、例えば、RCS測定装置1の操作部(不図示)を介して、RCSの測定開始の操作がなされたことをトリガとして開始される。
送信部31は、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射し(ステップS901)、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信する(ステップS902)。そして、パルス圧縮部37mは、受信部32により受信された受信信号を送信信号S1の周波数掃引変調信号と逆の周波数掃引により加算処理を行うことで圧縮波S5を生成する(ステップS903)。
そして、波数比較部37nは、所定時間W1内に送信される送信信号S1の波数と所定時間W1内の圧縮波S5の波数とを比較する(ステップS904)。そして、判定部37cは、波数比較部37nによる比較結果に基づいて、圧縮波S5の波数が送信信号S1の波数より多いか否かを判定する(ステップS905)。判定部37cにより、圧縮波S5の波数が送信信号S1の波数より多いと判定された場合には(ステップS905;YES)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していると判定する(ステップS906)。そして、処理は後述のステップS908の処理へと進む。
一方、判定部37cにより、圧縮波S5の波数は送信信号S1の波数と等しいと判定された場合には(ステップ905;NO)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bは発生していないと判定する(ステップS907)。そして、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する(ステップS908)。判定部37cにより、回転台21を一周回転させたと判定された場合には(ステップS908;YES)、本処理は終了し、次の開始を待つ。
一方、判定部37cにより、回転台21をまだ一周回転させていないと判定された場合には(ステップS908;NO)、回転台制御部37dは、測定角度制御信号S4を生成して、出力部35を介して、生成した測定角度制御信号S4を測定対象搭載部2に送信する(ステップS909)。そして、測定対象搭載部2は、測定角度制御信号S4にしたがって、回転台21を角度α回転させる(ステップS910)。そして、処理はステップS901の処理へと戻り、前述の処理を繰り返す。
上記実施形態11によれば、RCS測定装置1は、周波数掃引変調信号を送信信号S1とし、受信信号を送信信号S1の周波数掃引変調信号と逆の周波数掃引により加算処理してパルス状の圧縮波S5を生成する。そして、RCS測定装置1は、所定時間W1内に送信される送信信号S1の波数と所定時間W1内の圧縮波S5の波数とを比較する。多重散乱波S2bが発生している場合には、多重散乱波S2bに対応する周波数掃引変調信号が受信信号に含まれることから、このように構成することで、所定時間W1内の送信信号S1と圧縮波S5の波数に基づいて、多重散乱波S2bの発生を検知することが可能となる。
(実施形態12)
本実施形態12においては、送信信号S1として、周波数を連続的に変化させる周波数掃引変調を行った信号を用いた場合における多重散乱波S2bの別の検知方法について説明する。
図28は、本実施形態12おけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態12における本体部3の基本的な構成は実施形態11の場合と同じである。
但し、図28に示すように、制御部37が、波数比較部37nの替りに、信号間隔比較部37oを更に備える点で、実施形態11の場合と異なっている。また、多重散乱波判定部37bと判定部37cが果たす機能が実施形態11の場合と異なっている。
制御部37は、例えば、CPUなどで構成され、記憶部36のプログラムエリアに格納されている動作プログラムを実行して、図28に示すように、多重散乱波判定部37bと、判定部37cと、回転台制御部37dと、パルス圧縮部37mと、信号間隔比較部37oとしての機能を実現すると共に、RCS測定装置1全体を制御する制御処理や詳しくは後述の多重散乱波検知処理などの処理を実行する。
信号間隔比較部37oは、送信信号S1の変調周期とパルス圧縮部37mにより生成された圧縮波S5の隣接する信号間の間隔とを比較する。
多重散乱波判定部37bは、圧縮波S5の間隔が送信信号S1の変調周期より短い場合には、多重散乱波S2bが発生していると判定し、圧縮波S5の間隔が送信信号S1の周波と等しい場合には、多重散乱波S2bは発生していないと判定する。
このように判定できるのは、図29A乃至Cに示すように、例えば、送信信号S1の変調周期がLであり、多重散乱波S2bが発生しない場合には、圧縮波S5の間隔は送信信号S1の変調周期と同じLとなるが、多重散乱波S2bが発生している場合には、受信信号には多重散乱波S2bに対応する信号も含まれるため、圧縮波S5の間隔は送信信号S1の変調周期より短くなるからである。
ここで、図29Aは、本実施形態12における多重散乱波S2bの検知方法を説明するための図であり、送信信号S1を示す図である。図29Bは、本実施形態12における多重散乱波S2bの検知方法を説明するための図であり、多重散乱波S2bが発生していない場合の圧縮波S5を示す図である。図29Cは、本実施形態12における多重散乱波S2bの検知方法を説明するための図であり、多重散乱波S2bが発生している場合の圧縮波S5を示す図である。
図28に戻り、判定部37cは、信号間隔比較部37oによる比較結果に基づいて、圧縮波S5の間隔が送信信号S1の変調周期より短いか否かを判定する。また、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する。
次に、図30を参照して、本実施形態12における多重散乱波検知処理の流れについて説明する。図30は、本実施形態12における多重散乱波検知処理のフローを説明するためのフローチャートの例である。本多重散乱波検知処理は、例えば、RCS測定装置1の操作部(不図示)を介して、RCSの測定開始の操作がなされたことをトリガとして開始される。なお、実施形態11における多重散乱波検知処理と同じ処理については同じ符号を付すこととし、ここでは、異なる処理の部分を中心に説明する。
送信部31は、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射し(ステップS901)、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信する(ステップS902)。そして、パルス圧縮部37mは、受信部32により受信された受信信号を送信信号S1の周波数掃引変調信号と逆の周波数掃引により加算処理を行うことで圧縮波S5を生成する(ステップS903)。
そして、信号間隔比較部37oは、送信信号S1の変調周期とパルス圧縮部37mにより生成された圧縮波S5の隣接する信号間の間隔とを比較する(ステップS1001)。そして、判定部37cは、信号間隔比較部37oによる比較結果に基づいて、圧縮波S5の間隔が送信信号S1の変調周期より短いか否かを判定する(ステップS1002)。判定部37cにより、圧縮波S5の間隔が送信信号S1の変調周期より短いと判定された場合には(ステップS1002;YES)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していると判定する(ステップS1003)。そして、処理は実施形態11で説明したステップS908の処理へと進む。
一方、判定部37cにより、圧縮波S5の間隔が送信信号S1の変調周期と等しいと判定された場合には(ステップ1002;NO)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bは発生していないと判定する(ステップS1004)。そして、処理は実施形態11で説明したステップS908の処理へと進む。
上記実施形態12によれば、RCS測定装置1は、周波数掃引変調信号を送信信号S1とし、受信信号を送信信号S1の周波数掃引変調信号と逆の周波数掃引により加算処理してパルス状の圧縮波S5を生成する。そして、RCS測定装置1は、送信信号S1の変調周期と圧縮波S5の隣接する信号間の間隔とを比較する。多重散乱波S2bが発生している場合には、多重散乱波S2bに対応する周波数掃引変調信号が受信信号に含まれることから、このように構成することで、送信信号S1の変調周期と圧縮波S5の間隔とに基づいて、多重散乱波S2bの発生を検知することが可能となる。
(実施形態13)
本実施形態13においては、送信信号S1として、周波数を連続的に変化させる周波数掃引変調を行った周波数掃引変調信号を用いた場合におけるRCSの測定方法について説明する。なお、以下に説明する構成は実施形態11と12のいずれに対しても適用可能であるが、ここでは、実施形態11を例にして説明する。
図31は、本実施形態13おけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態13における本体部3の基本的な構成は実施形態11の場合と同じである。
但し、図31に示すように、制御部37が、変換・合成処理部37iと、隣接周期間波数比較部37pと、変調周期可変部37qと、時間ゲート処理部37rと、伸長処理部37sと、を更に備える点で、実施形態11の場合と異なっている。
制御部37は、例えば、CPUなどで構成され、記憶部36のプログラムエリアに格納されている動作プログラムを実行して、図31に示すように、多重散乱波判定部37bと、判定部37cと、回転台制御部37dと、変換・合成処理部37iと、パルス圧縮部37mと、波数比較部37nと、隣接周期間波数比較部37pと、変調周期可変部37qと、時間ゲート処理部37rと、伸長処理部37sとしての機能を実現すると共に、RCS測定装置1全体を制御する制御処理や詳しくは後述のRCS測定処理などの処理を実行する。
隣接周期間波数比較部37pは、隣接する変調周期との間で、変調周期内の圧縮波S5の波数を比較し、両変調周期内の圧縮波S5の波数が等しいか否かを判定する。図32を参照して、両変調周期内の圧縮波S5の波数が等しいことは、変調周期が散乱波S2の最大遅延量ΔMAXと最小遅延量ΔMINとの差分(ΔMAX−ΔMIN)より長いことを意味し、変調周期が差分(ΔMAX−ΔMIN)より長ければ、図32Bに示すように、直前の送信信号S1の信号波に対応する散乱波S2の影響を受けないことから、両変調周期内の圧縮波S5の波数が等しくなる。
図32Aは、変調周期が短いために直前の信号波に対応する散乱波S2が次の変調周期内に含まれている例であり、図32Bは、変調周期が長いため直前の信号波に対応する散乱波S2が次の変調周期内に含まれていない例である。なお、図中、変調周期をLで表記し、遅延量が最大の散乱波S2に対応する圧縮波S5をS5mで表記している。
図31に戻り、変調周期可変部37qは、隣接周期間波数比較部37pにより両変調周期内の圧縮波S5の波数が等しくないと判定された場合に、予め設定された長さだけ周波数掃引変調の変調周期を長く設定する。
時間ゲート処理部37rは、隣接周期間波数比較部37pにより両変調周期内の圧縮波S5の波数が等しいと判定された場合に、圧縮波S5に時間ゲート処理を適用し、変調周期内の各圧縮波S5を抽出する。隣接する変調周期間における圧縮波S5の波数が等しい場合には、図32Bに示すように、変調周期内には全ての散乱波S2に対応する圧縮波S5が含まれていることから、時間ゲート処理部37rは、変調周期内の各圧縮波S5を抽出することで、全ての散乱波S2に対応する圧縮波S5の信号を抽出することが可能となる。
図31に戻り、伸長処理部37sは、時間ゲート処理部37rにより抽出された圧縮波S5を伸長し、各散乱波S2(単一散乱波S2aと多重散乱波S2b)に対応する分離信号Ci(θ)を生成する。
変換・合成処理部37iは、多重散乱波S2bが発生している場合には、伸長処理部37sにより生成された各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施して、それぞれの分離信号Ci(θ)を平面波状態にした後に、各信号を合成することで、RCSの測定値を算出する。
なお、変換・合成処理部37iは、時間ゲート処理部37rにより抽出された圧縮波S5を分離信号Ci(θ)として、それぞれ近傍界・遠方界変換処理を施して、それぞれの分離信号Ci(θ)(時間ゲート処理部37rにより抽出された圧縮波S5)を平面波状態にした後に、各信号を合成することで、RCSの測定値を算出するようにしてもよい。
また、変換・合成処理部37iは、多重散乱波S2bが発生していない場合には、受信信号(SS(θ))に対して近傍界・遠方界変換処理を施して、RCSの測定値を算出する。
次に、図33と図34を参照して、本実施形態13におけるRCS測定処理の流れについて説明する。図33と図34は、それぞれ、本実施形態13におけるRCS測定処理のフローを説明するためのフローチャートの例の一部と、他の一部である。本RCS測定処理は、例えば、RCS測定装置1の操作部(不図示)を介して、RCSの測定開始の操作がなされたことをトリガとして開始される。
送信部31は、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射し(ステップS1101)、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信する(ステップS1102)。そして、パルス圧縮部37mは、受信部32により受信された受信信号を送信信号S1の周波数掃引変調信号と逆の周波数掃引により加算処理を行うことで圧縮波S5を生成する(ステップS1103)。
そして、波数比較部37nは、所定時間W1内に送信される送信信号S1の波数と所定時間W1内の圧縮波S5の波数とを比較する(ステップS1104)。そして、判定部37cは、波数比較部37nによる比較結果に基づいて、圧縮波S5の波数が送信信号S1の波数より多いか否かを判定する(ステップS1105)。判定部37cにより、圧縮波S5の波数が送信信号S1の波数より多いと判定された場合には(ステップS1105;YES)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していると判定する(ステップS1106)。
そして、隣接周期間波数比較部37pは、隣接する変調周期との間で、変調周期内の圧縮波S5の波数を比較し(ステップS1107)、両変調周期内の圧縮波S5の波数が等しいか否かを判定する(ステップS1108)。隣接周期間波数比較部37pにより、両変調周期内の圧縮波S5の波数は等しくないと判定された場合には(ステップS1108;NO)、変調周期可変部37qは、予め設定された長さだけ周波数掃引変調の変調周期を長く設定する(ステップS1109)。
そして、送信部31は、変調周期可変部37qにより設定された変調周期にしたがって送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射する(ステップS1110)。そして、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信し(ステップS1111)、パルス圧縮部37mは、受信部32により受信された受信信号を送信信号S1の周波数掃引変調信号と逆の周波数掃引により加算処理を行うことで圧縮波S5を生成する(ステップS1112)。そして、処理はステップS1107の処理へと戻り、前述の処理を繰り返す。
一方、隣接周期間波数比較部37pにより、両変調周期内の圧縮波S5の波数が等しいと判定された場合には(ステップS1108;YES)、時間ゲート処理部37rは、圧縮波S5に時間ゲート処理を適用し、変調周期内の各圧縮波S5を抽出する(ステップS1113)。そして、伸長処理部37sは、時間ゲート処理部37rにより抽出された圧縮波S5を伸長し、各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)を生成する(ステップS1114)。
そして、変換・合成処理部37iは、伸長処理部37sにより生成された各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施して(ステップS1115)、それぞれの分離信号Ci(θ)を平面波状態にした後に、各信号を合成することで、RCSの測定値を算出する(ステップS1116)。そして、処理は後述のステップS1119の処理へと進む。
ステップS1105の処理において、判定部37cにより、圧縮波S5の波数は送信信号S1の波数と等しいと判定された場合には(ステップ1105;NO)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bは発生していないと判定する(ステップS1117)。そして、変換・合成処理部37iは、受信信号(SS(θ))に対して近傍界・遠方界変換処理を施して、RCSの測定値を算出する(ステップS1118)。
そして、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する(ステップS1119)。判定部37cにより、回転台21を一周回転させたと判定された場合には(ステップS1119;YES)、本処理は終了し、次の開始を待つ。
一方、判定部37cにより、回転台21をまだ一周回転させていないと判定された場合には(ステップS1119;NO)、回転台制御部37dは、測定角度制御信号S4を生成して、出力部35を介して、生成した測定角度制御信号S4を測定対象搭載部2に送信する(ステップS1120)。そして、測定対象搭載部2は、測定角度制御信号S4にしたがって、回転台21を角度α回転させる(ステップS1121)。そして、処理はステップS1101の処理へと戻り、前述の処理を繰り返す。
上記実施形態13によれば、RCS測定装置1は、周波数掃引変調信号を送信信号S1とし、受信信号を送信信号S1の周波数掃引変調信号と逆の周波数掃引により加算処理してパルス状の圧縮波S5を生成する。そして、RCS測定装置1は、隣接する変調周期との間で、変調周期内の圧縮波S5の波数を比較して、波数が等しくなるように変調周期を可変させ、波数が等しくなった時点で、圧縮波S5に時間ゲート処理を適用して、変調周期内の各圧縮波S5を抽出する。そして、RCS測定装置1は、抽出した圧縮波S5を伸長して各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)を生成し、生成した分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施した後に、各信号を合成する。このように構成することで、多重散乱波S2bが発生していても、再現性を有する正しいRCSの測定値を得ることが可能となる。
(実施形態14)
本実施形態14においては、送信信号S1として、周波数を連続的に変化させる周波数掃引変調を行った周波数掃引変調信号を用いた場合におけるRCSの別の測定方法について説明する。本構成は、実施形態11と12のいずれに対しても適用可能であるが、ここでは、実施形態12を例にして説明する。
図35は、本実施形態14おけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態14における本体部3の基本的な構成は実施形態12の場合と同じである。
但し、図35に示すように、制御部37が、変換・合成処理部37iと、変調周期可変部37qと、時間ゲート処理部37rと、伸長処理部37sと、隣接周期間信号間隔比較部37tと、を更に備える点で、実施形態12の場合と異なっている。なお、変換・合成処理部37iと伸長処理部37sの各機能は、実施形態13で説明した機能と同じである。
制御部37は、例えば、CPUなどで構成され、記憶部36のプログラムエリアに格納されている動作プログラムを実行して、図35に示すように、多重散乱波判定部37bと、判定部37cと、回転台制御部37dと、変換・合成処理部37iと、パルス圧縮部37mと、信号間隔比較部37oと、変調周期可変部37qと、時間ゲート処理部37rと、伸長処理部37sと、隣接周期間信号間隔比較部37tとしての機能を実現すると共に、RCS測定装置1全体を制御する制御処理や詳しくは後述のRCS測定処理などの処理を実行する。
隣接周期間信号間隔比較部37tは、隣接する変調周期との間で、変調周期内の圧縮波S5の対応する間隔を比較し、両変調周期内の圧縮波S5の対応する間隔が全て等しいか否かを判定する。図32を参照して、両変調周期内の圧縮波S5の対応する間隔が全て等しいことは、変調周期が散乱波S2の最大遅延量ΔMAXと最小遅延量ΔMINとの差分(ΔMAX−ΔMIN)より長いことを意味し、変調周期が散乱波S2の差分(ΔMAX−ΔMIN)より長ければ、直前の送信信号S1の信号波に対応する散乱波S2の影響を受けないことから、両変調周期内の圧縮波S5の対応する間隔が全て等しくなる。
図35に戻り、変調周期可変部37qは、隣接周期間信号間隔比較部37tにより両変調周期内の圧縮波S5の対応する間隔の内で等しくない間隔があると判定された場合に、予め設定された長さだけ周波数掃引変調の変調周期を長く設定する。
時間ゲート処理部37rは、隣接周期間信号間隔比較部37tにより両変調周期内の圧縮波S5の対応する間隔の全てが等しいと判定された場合に、圧縮波S5に時間ゲート処理を適用し、変調周期内の各圧縮波S5を抽出する。隣接する変調周期間における圧縮波S5の対応する間隔が全て等しい場合には、図32Bに示すように、変調周期内には全ての散乱波S2に対応する圧縮波S5が含まれていることから、時間ゲート処理部37rは、変調周期内の各圧縮波S5を抽出することで、全ての散乱波S2に対応する圧縮波S5の信号を抽出することが可能となる。
次に、図36と図37を参照して、本実施形態14におけるRCS測定処理の流れについて説明する。図36と図37は、それぞれ、本実施形態14におけるRCS測定処理のフローを説明するためのフローチャートの例の一部と、他の一部である。本RCS測定処理は、例えば、RCS測定装置1の操作部(不図示)を介して、RCSの測定開始の操作がなされたことをトリガとして開始される。なお、実施形態13におけるRCS測定処理と同じ処理については同じ符号を付すこととし、ここでは、異なる処理を中心に説明する。
送信部31は、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射し(ステップS1101)、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信する(ステップS1102)。そして、パルス圧縮部37mは、受信部32により受信された受信信号を送信信号S1の周波数掃引変調信号と逆の周波数掃引により加算処理を行うことで圧縮波S5を生成する(ステップS1103)。
そして、信号間隔比較部37oは、送信信号S1の変調周期とパルス圧縮部37mにより生成された圧縮波S5の隣接する信号間の間隔とを比較する(ステップS1201)。そして、判定部37cは、信号間隔比較部37oによる比較結果に基づいて、圧縮波S5の間隔が送信信号S1の変調周期より短いか否かを判定する(ステップS1202)。判定部37cにより、圧縮波S5の間隔が送信信号S1の変調周期より短いと判定された場合には(ステップS1202;YES)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していると判定する(ステップS1203)。
そして、隣接周期間信号間隔比較部37tは、隣接する変調周期との間で、変調周期内の圧縮波S5の対応する間隔を比較し(ステップS1204)、両変調周期内の圧縮波S5の対応する間隔が全て等しいか否かを判定する(ステップS1205)。隣接周期間信号間隔比較部37tにより、両変調周期内の圧縮波S5の対応する間隔の内で等しくない間隔があると判定された場合には(ステップS1205;NO)、変調周期可変部37qは、予め設定された長さだけ周波数掃引変調の変調周期を長く設定する(ステップS1109)。
そして、送信部31は、変調周期可変部37qにより設定された変調周期にしたがって送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射する(ステップS1110)。そして、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信し(ステップS1111)、パルス圧縮部37mは、受信部32により受信された受信信号を送信信号S1の周波数掃引変調信号と逆の周波数掃引により加算処理を行うことで圧縮波S5を生成する(ステップS1112)。そして、処理はステップS1204の処理へと戻り、前述の処理を繰り返す。
一方、隣接周期間信号間隔比較部37tにより、両変調周期内の圧縮波S5の対応する間隔の全てが等しいと判定された場合には(ステップS1205;YES)、時間ゲート処理部37rは、圧縮波S5に時間ゲート処理を適用し、変調周期内の各圧縮波S5を抽出する(ステップS1113)。そして、伸長処理部37sは、時間ゲート処理部37rにより抽出された圧縮波S5を伸長し、各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)を生成する(ステップS1114)。
そして、変換・合成処理部37iは、伸長処理部37sにより生成された各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施して(ステップS1115)、それぞれの分離信号Ci(θ)を平面波状態にした後に、各信号を合成することで、RCSの測定値を算出する(ステップS1116)。そして、処理は実施形態13で説明したステップS1119の処理へと進む。
ステップS1202の処理において、判定部37cにより、圧縮波S5の間隔が送信信号S1の変調周期と等しいと判定された場合には(ステップS1202;NO)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していないと判定する(ステップS1206)。そして、変換・合成処理部37iは、受信信号(SS(θ))に対して近傍界・遠方界変換処理を施して、RCSの測定値を算出する(ステップS1118)。そして、処理は実施形態13で説明したステップS1119の処理へと進む。
そして、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する(ステップS1119)。判定部37cにより、回転台21を一周回転させたと判定された場合には(ステップS1119;YES)、本処理は終了し、次の開始を待つ。
一方、判定部37cにより、回転台21をまだ一周回転させていないと判定された場合には(ステップS1119;NO)、回転台制御部37dは、測定角度制御信号S4を生成して、出力部35を介して、生成した測定角度制御信号S4を測定対象搭載部2に送信する(ステップS1120)。そして、測定対象搭載部2は、測定角度制御信号S4にしたがって、回転台21を角度α回転させる(ステップS1121)。そして、処理はステップS1101の処理へと戻り、前述の処理を繰り返す。
上記実施形態14によれば、RCS測定装置1は、周波数掃引変調信号を送信信号S1とし、受信信号を送信信号S1の周波数掃引変調信号と逆の周波数掃引により加算処理してパルス状の圧縮波S5を生成する。そして、RCS測定装置1は、隣接する変調周期との間で、変調周期内の圧縮波S5の対応する間隔を比較し、対応する間隔が全て等しくなるように変調周期を可変させ、対応する間隔が全て等しくなった時点で、圧縮波S5に時間ゲート処理を適用して、変調周期内の各圧縮波S5を抽出する。そして、RCS測定装置1は、抽出した圧縮波S5を伸長して各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)を生成し、生成した分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施した後に、各信号を合成する。このように構成することで、多重散乱波S2bが発生していても、再現性を有する正しいRCSの測定値を得ることが可能となる。
(実施形態15)
実施形態11においては、周波数を連続的に変化させる周波数掃引変調を行った周波数掃引変調信号を送信信号S1とし、受信信号をパルス圧縮して得た圧縮波S5の所定時間W1内における波数に基づいて、多重散乱波S2bを検知した。
本実施形態15においては、送信信号S1として、パルス振幅変調信号に拡散符号を乗算した直接拡散符号変調信号を用いた場合における多重散乱波S2bの検知方法について説明する。
図38は、本実施形態15おけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態15における本体部3の基本的な構成は実施形態11の場合と同じである。
但し、図38に示すように、制御部37が、パルス圧縮部37mの替りに、逆拡散処理部37uを更に備える点で、実施形態11の場合と異なっている。また、送信部31が果たす機能が実施形態11の場合と異なっている。また、多重散乱波判定部37bと判定部37cと波数比較部37nが果たす機能が実施形態11の場合と異なっている。
送信部31は、例えば、信号発生器や送信用アンテナなどで構成され、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射する。
本実施形態15においては、送信部31が照射する送信信号S1は、パルス振幅変調信号に拡散符号を乗算した直接拡散符号変調信号である。
制御部37は、例えば、CPUなどで構成され、記憶部36のプログラムエリアに格納されている動作プログラムを実行して、図38に示すように、多重散乱波判定部37bと、判定部37cと、回転台制御部37dと、波数比較部37nと、逆拡散処理部37uとしての機能を実現すると共に、RCS測定装置1全体を制御する制御処理や詳しくは後述の多重散乱波検知処理などの処理を実行する。
逆拡散処理部37uは、受信部32により受信された受信信号に対して、変調時に用いた拡散符号を乗算する逆拡散処理を行い、受信信号の逆拡散波S6を生成する。受信信号の逆拡散波S6は、多重散乱波S2bが発生している場合には、各散乱波S2に対応する逆拡散波S6の合成信号、つまり、各散乱波S2に対応するパルス振幅変調信号の合成信号である。
波数比較部37nは、所定時間W1内に送信される送信信号S1の波数と所定時間W1内の逆拡散波S6の波数とを比較する。
多重散乱波判定部37bは、逆拡散波S6の波数が送信信号S1の波数より多い場合には、多重散乱波S2bが発生していると判定し、逆拡散波S6の波数が送信信号S1の波数と等しい場合には、多重散乱波S2bは発生していないと判定する。
このように判定できるのは、例えば、所定時間W1内に送信される送信信号S1の波数がnであり、多重散乱波S2bが発生しない場合には、圧縮波S5の場合と同様に、所定時間W1内の逆拡散波S6の波数はnとなるが、多重散乱波S2bが発生している場合には、圧縮波S5の場合と同様に、多重散乱波S2bに対応する逆拡散波S6も含まれるため、所定時間W1内の逆拡散波S6の波数はnより多くなるからである。
判定部37cは、波数比較部37nによる比較結果に基づいて、逆拡散波S6の波数が送信信号S1の波数より多いか否かを判定する。また、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する。
次に、図39を参照して、本実施形態15における多重散乱波検知処理の流れについて説明する。図39は、本実施形態15における多重散乱波検知処理のフローを説明するためのフローチャートの例である。本多重散乱波検知処理は、例えば、RCS測定装置1の操作部(不図示)を介して、RCSの測定開始の操作がなされたことをトリガとして開始される。
送信部31は、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射し(ステップS1301)、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信する(ステップS1302)。そして、逆拡散処理部37uは、受信部32により受信された受信信号に対して、変調時に用いた拡散符号を乗算する逆拡散処理を行い、受信信号の逆拡散波S6を生成する(ステップS1303)。
そして、波数比較部37nは、所定時間W1内に送信される送信信号S1の波数と所定時間W1内の逆拡散波S6の波数とを比較する(ステップS1304)。そして、判定部37cは、波数比較部37nによる比較結果に基づいて、逆拡散波S6の波数が送信信号S1の波数より多いか否かを判定する(ステップS1305)。判定部37cにより、逆拡散波S6の波数が送信信号S1の波数より多いと判定された場合には(ステップS1305;YES)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していると判定する(ステップS1306)。そして、処理は後述のステップS1308の処理へと進む。
一方、判定部37cにより、逆拡散波S6の波数は送信信号S1の波数と等しいと判定された場合には(ステップ1305;NO)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bは発生していないと判定する(ステップS1307)。そして、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する(ステップS1308)。判定部37cにより、回転台21を一周回転させたと判定された場合には(ステップS1308;YES)、本処理は終了し、次の開始を待つ。
一方、判定部37cにより、回転台21をまだ一周回転させていないと判定された場合には(ステップS1308;NO)、回転台制御部37dは、測定角度制御信号S4を生成して、出力部35を介して、生成した測定角度制御信号S4を測定対象搭載部2に送信する(ステップS1309)。そして、測定対象搭載部2は、測定角度制御信号S4にしたがって、回転台21を角度α回転させる(ステップS1310)。そして、処理はステップS1301の処理へと戻り、前述の処理を繰り返す。
上記実施形態15によれば、RCS測定装置1は、直接拡散符号変調信号を送信信号S1とし、受信信号に対して、変調時に用いた拡散符号を乗算する逆拡散処理を行い、逆拡散波S6を生成する。そして、RCS測定装置1は、所定時間W1内に送信される送信信号S1の波数と所定時間W1内の逆拡散波S6の波数とを比較する。多重散乱波S2bが発生している場合には、多重散乱波S2bに対応する直接拡散符号変調信号が受信信号に含まれることから、このように構成することで、所定時間W1内の送信信号S1と直接拡散符号変調信号の波数に基づいて、多重散乱波S2bの発生を検知することが可能となる。
(実施形態16)
実施形態12においては、周波数を連続的に変化させる周波数掃引変調を行った周波数掃引変調信号を送信信号S1とし、受信信号をパルス圧縮して得た圧縮波S5の信号間隔に基づいて、多重散乱波S2bを検知した。
本実施形態16においては、送信信号S1として、パルス振幅変調信号に拡散符号を乗算した直接拡散符号変調信号を用いた場合における多重散乱波S2bの別の検知方法について説明する。
図40は、本実施形態16おけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態16における本体部3の基本的な構成は実施形態12の場合と同じである。
但し、図40に示すように、制御部37が、パルス圧縮部37mの替りに、逆拡散処理部37uを更に備える点で、実施形態12の場合と異なっている。また、送信部31が果たす機能が実施形態12の場合と異なっている。また、多重散乱波判定部37bと判定部37cと信号間隔比較部37oが果たす機能が実施形態12の場合と異なっている。なお、送信部31と逆拡散処理部37uが果たす機能は実施形態15で説明した機能と同じである。
制御部37は、例えば、CPUなどで構成され、記憶部36のプログラムエリアに格納されている動作プログラムを実行して、図40に示すように、多重散乱波判定部37bと、判定部37cと、回転台制御部37dと、信号間隔比較部37oと、逆拡散処理部37uとしての機能を実現すると共に、RCS測定装置1全体を制御する制御処理や詳しくは後述の多重散乱波検知処理などの処理を実行する。
信号間隔比較部37oは、送信信号S1の変調周期と逆拡散処理部37uにより生成された逆拡散波S6の隣接する信号間の間隔とを比較する。
多重散乱波判定部37bは、逆拡散波S6の間隔が送信信号S1の変調周期より短い場合には、多重散乱波S2bが発生していると判定し、逆拡散波S6の間隔が送信信号S1の周波と等しい場合には、多重散乱波S2bは発生していないと判定する。
このように判定できるのは、例えば、送信信号S1の変調周期がLであり、多重散乱波S2bが発生しない場合には、圧縮波S5の場合と同様に、逆拡散波S6の間隔は送信信号S1の変調周期と同じLとなるが、多重散乱波S2bが発生している場合には、圧縮波S5の場合と同様に、受信信号には多重散乱波S2bに対応する信号も含まれるため、逆拡散波S6の間隔は送信信号S1の変調周期より短くなるからである。
判定部37cは、信号間隔比較部37oによる比較結果に基づいて、逆拡散波S6の間隔が送信信号S1の変調周期より短いか否かを判定する。また、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する。
次に、図41を参照して、本実施形態16における多重散乱波検知処理の流れについて説明する。図41は、本実施形態16における多重散乱波検知処理のフローを説明するためのフローチャートの例である。本多重散乱波検知処理は、例えば、RCS測定装置1の操作部(不図示)を介して、RCSの測定開始の操作がなされたことをトリガとして開始される。なお、実施形態15における多重散乱波検知処理と同じ処理については同じ符号を付すこととし、ここでは、異なる処理の部分を中心に説明する。
送信部31は、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射し(ステップS1301)、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信する(ステップS1302)。そして、逆拡散処理部37uは、受信部32により受信された受信信号に対して、変調時に用いた拡散符号を乗算する逆拡散処理を行い、受信信号の逆拡散波S6を生成する(ステップS1303)。
そして、信号間隔比較部37oは、送信信号S1の変調周期と逆拡散処理部37uにより生成された逆拡散波S6の隣接する信号間の間隔とを比較する(ステップS1401)。そして、判定部37cは、信号間隔比較部37oによる比較結果に基づいて、逆拡散波S6の間隔が送信信号S1の変調周期より短いか否かを判定する(ステップS1402)。判定部37cにより、逆拡散波S6の間隔が送信信号S1の変調周期より短いと判定された場合には(ステップS1402;YES)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していると判定する(ステップS1403)。そして、処理は実施形態15で説明したステップS1308の処理へと進む。
一方、判定部37cにより、逆拡散波S6の間隔が送信信号S1の変調周期と等しいと判定された場合には(ステップ1402;NO)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bは発生していないと判定する(ステップS1404)。そして、処理は実施形態15で説明したステップS1308の処理へと進む。
上記実施形態16によれば、RCS測定装置1は、直接拡散符号変調信号を送信信号S1とし、受信信号に対して、変調時に用いた拡散符号を乗算する逆拡散処理を行い、逆拡散波S6を生成する。そして、RCS測定装置1は、送信信号S1の変調周期と逆拡散波S6の隣接する信号間の間隔とを比較する。多重散乱波S2bが発生している場合には、多重散乱波S2bに対応する直接拡散符号変調信号が受信信号に含まれることから、このように構成することで、送信信号S1の変調周期と逆拡散波S6の間隔とに基づいて、多重散乱波S2bの発生を検知することが可能となる。
(実施形態17)
本実施形態17においては、送信信号S1として、パルス振幅変調信号に拡散符号を乗算した直接拡散符号変調信号を用いた場合におけるRCSの測定方法について説明する。なお、以下に説明する構成は実施形態15と16のいずれに対しても適用可能であるが、ここでは、実施形態15を例にして説明する。
図42は、本実施形態17おけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態17における本体部3の基本的な構成は実施形態15の場合と同じである。
但し、図42に示すように、制御部37が、変換・合成処理部37iと、隣接周期間波数比較部37pと、変調周期可変部37qと、時間ゲート処理部37rと、拡散処理部uaと、を更に備える点で、実施形態15の場合と異なっている。
制御部37は、例えば、CPUなどで構成され、記憶部36のプログラムエリアに格納されている動作プログラムを実行して、図42に示すように、多重散乱波判定部37bと、判定部37cと、回転台制御部37dと、変換・合成処理部37iと、波数比較部37nと、隣接周期間波数比較部37pと、変調周期可変部37qと、時間ゲート処理部37rと、逆拡散処理部37uと、拡散処理部uaとしての機能を実現すると共に、RCS測定装置1全体を制御する制御処理や詳しくは後述のRCS測定処理などの処理を実行する。
隣接周期間波数比較部37pは、隣接する変調周期との間で、変調周期内の逆拡散波S6の波数を比較し、両変調周期内の逆拡散波S6の波数が等しいか否かを判定する。圧縮波S5の場合と同様に、両変調周期内の逆拡散波S6の波数が等しいことは、変調周期が散乱波S2の最大遅延量ΔMAXと最小遅延量ΔMINとの差分(ΔMAX−ΔMIN)より長いことを意味し、変調周期が散乱波S2の差分(ΔMAX−ΔMIN)より長ければ、直前の送信信号S1の信号波に対応する散乱波S2の影響を受けないことから、両変調周期内の逆拡散波S6の波数が等しくなる。
変調周期可変部37qは、隣接周期間波数比較部37pにより両変調周期内の逆拡散波S6の波数が等しくないと判定された場合に、予め設定された長さだけ直接拡散符号変調の変調周期を長く設定する。
時間ゲート処理部37rは、隣接周期間波数比較部37pにより両変調周期内の逆拡散波S6の波数が等しいと判定された場合に、逆拡散波S6に時間ゲート処理を適用し、変調周期内の各逆拡散波S6を抽出する。隣接する変調周期間における逆拡散波S6の波数が等しい場合には、圧縮波S5の場合と同様に、変調周期内には全ての散乱波S2に対応する逆拡散波S6が含まれていることから、時間ゲート処理部37rは、変調周期内の各逆拡散波S6を抽出することで、全ての散乱波S2に対応する逆拡散波S6の信号を抽出することが可能となる。
拡散処理部37uaは、多重散乱波S2bが発生している場合には、時間ゲート処理部37rにより抽出された逆拡散波S6に拡散符号を乗算して、拡散波に戻す処理を行うことで、各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)を生成する。
変換・合成処理部37iは、多重散乱波S2bが発生している場合には、拡散処理部37uaもより生成された各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施して、それぞれの分離信号Ci(θ)を平面波状態にした後に、各信号を合成することで、RCSの測定値を算出する。
また、変換・合成処理部37iは、多重散乱波S2bが発生していない場合には、受信信号(SS(θ))に対して近傍界・遠方界変換処理を施して、RCSの測定値を算出する。
次に、図43と図44を参照して、本実施形態17におけるRCS測定処理の流れについて説明する。図43と図44は、それぞれ、本実施形態17におけるRCS測定処理のフローを説明するためのフローチャートの例の一部と、他の一部である。本RCS測定処理は、例えば、RCS測定装置1の操作部(不図示)を介して、RCSの測定開始の操作がなされたことをトリガとして開始される。
送信部31は、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射し(ステップS1501)、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信する(ステップS1502)。そして、逆拡散処理部37uは、受信部32により受信された受信信号に対して、変調時に用いた拡散符号を乗算する逆拡散処理を行い、受信信号の逆拡散波S6を生成する(ステップS1503)。
そして、波数比較部37nは、所定時間W1内に送信される送信信号S1の波数と所定時間W1内の逆拡散波S6の波数とを比較する(ステップS1504)。そして、判定部37cは、波数比較部37nによる比較結果に基づいて、逆拡散波S6の波数が送信信号S1の波数より多いか否かを判定する(ステップS1505)。判定部37cにより、逆拡散波S6の波数が送信信号S1の波数より多いと判定された場合には(ステップS1505;YES)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していると判定する(ステップS1506)。
そして、隣接周期間波数比較部37pは、隣接する変調周期との間で、変調周期内の逆拡散波S6の波数を比較し(ステップS1507)、両変調周期内の逆拡散波S6の波数が等しいか否かを判定する(ステップS1508)。隣接周期間波数比較部37pにより、両変調周期内の逆拡散波S6の波数は等しくないと判定された場合には(ステップS1508;NO)、変調周期可変部37qは、予め設定された長さだけ直接拡散符号変調の変調周期を長く設定する(ステップS1509)。
そして、送信部31は、変調周期可変部37qにより設定された変調周期にしたがって送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射する(ステップS1510)。そして、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信し(ステップS1511)、逆拡散処理部37uは、受信部32により受信された受信信号に対して、変調時に用いた拡散符号を乗算する逆拡散処理を行い、受信信号の逆拡散波S6を生成する(ステップS1512)。そして、処理はステップS1507の処理へと戻り、前述の処理を繰り返す。
一方、隣接周期間波数比較部37pにより、両変調周期内の逆拡散波S6の波数が等しいと判定された場合には(ステップS1508;YES)、時間ゲート処理部37rは、逆拡散波S6に時間ゲート処理を適用し、変調周期内の各逆拡散波S6を抽出する(ステップS1513A)。そして、拡散処理部37uaは、時間ゲート処理部37rにより抽出された逆拡散波S6に拡散符号を乗算して拡散波に戻すことで、各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)を生成する(ステップS1513B)。
そして、変換・合成処理部37iは、拡散処理部37uaにより生成された各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施して(ステップS1514)、それぞれの分離信号Ci(θ)を平面波状態にした後に、各信号を合成することで、RCSの測定値を算出する(ステップS1515)。そして、処理は後述のステップS1518へと進む。
ステップS1505の処理において、判定部37cにより、逆拡散波S6波数は送信信号S1の波数と等しいと判定された場合には(ステップ1505;NO)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bは発生していないと判定する(ステップS1516)。そして、変換・合成処理部37iは、受信信号(SS(θ))に対して近傍界・遠方界変換処理を施して、RCSの測定値を算出する(ステップS1517)。
そして、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する(ステップS1518)。判定部37cにより、回転台21を一周回転させたと判定された場合には(ステップS1518;YES)、本処理は終了し、次の開始を待つ。
一方、判定部37cにより、回転台21をまだ一周回転させていないと判定された場合には(ステップS1518;NO)、回転台制御部37dは、測定角度制御信号S4を生成して、出力部35を介して、生成した測定角度制御信号S4を測定対象搭載部2に送信する(ステップS1519)。そして、測定対象搭載部2は、測定角度制御信号S4にしたがって、回転台21を角度α回転させる(ステップS1520)。そして、処理はステップS1501の処理へと戻り、前述の処理を繰り返す。
上記実施形態17によれば、RCS測定装置1は、直接拡散符号変調信号を送信信号S1とし、受信信号に対して、変調時に用いた拡散符号を乗算する逆拡散処理を行い、逆拡散波S6を生成する。そして、RCS測定装置1は、隣接する変調周期との間で、変調周期内の逆拡散波S6の波数を比較して、波数が等しくなるように変調周期を可変させ、波数が等しくなった時点で、逆拡散波S6に時間ゲート処理を適用して、変調周期内の各逆拡散波S6を抽出し、拡散波に戻した各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)を生成する。そして、RCS測定装置1は、生成した分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施した後に、各信号を合成する。このように構成することで、多重散乱波S2bが発生していても、再現性を有する正しいRCSの測定値を得ることが可能となる。
(実施形態18)
本実施形態18においては、送信信号S1として、パルス振幅変調信号に拡散符号を乗算した直接拡散符号変調信号を用いた場合におけるRCSの別の測定方法について説明する。本構成は、実施形態15と16のいずれに対しても適用可能であるが、ここでは、実施形態16を例にして説明する。
図45は、本実施形態18おけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態18における本体部3の基本的な構成は実施形態16の場合と同じである。
但し、図45に示すように、制御部37が、変換・合成処理部37iと、変調周期可変部37qと、時間ゲート処理部37rと、隣接周期間信号間隔比較部37tと、拡散処理部37uaと、を更に備える点で、実施形態16の場合と異なっている。なお、変換・合成処理部37iと拡散処理部37uaの機能は、実施形態17で説明した機能と同じである。
制御部37は、例えば、CPUなどで構成され、記憶部36のプログラムエリアに格納されている動作プログラムを実行して、図45に示すように、多重散乱波判定部37bと、判定部37cと、回転台制御部37dと、変換・合成処理部37iと、信号間隔比較部37oと、変調周期可変部37qと、時間ゲート処理部37rと、隣接周期間信号間隔比較部37tと、逆拡散処理部37uと、拡散処理部37uaとしての機能を実現すると共に、RCS測定装置1全体を制御する制御処理や詳しくは後述のRCS測定処理などの処理を実行する。
隣接周期間信号間隔比較部37tは、隣接する変調周期との間で、変調周期内の逆拡散波S6の対応する間隔を比較し、両変調周期内の逆拡散波S6の対応する間隔が全て等しいか否かを判定する。圧縮波S5の場合と同様に、両変調周期内の逆拡散波S6の対応する間隔が全て等しいことは、変調周期が散乱波S2の最大遅延量ΔMAXと最小遅延量ΔMINとの差分(ΔMAX−ΔMIN)より長いことを意味し、変調周期が散乱波S2の差分(ΔMAX−ΔMIN)より長ければ、直前の送信信号S1の信号波に対応する散乱波S2の影響を受けないことから、両変調周期内の逆拡散波S6の対応する間隔が全て等しくなる。
変調周期可変部37qは、隣接周期間信号間隔比較部37tにより両変調周期内の逆拡散波S6の対応する間隔の内で等しくない間隔があると判定された場合に、予め設定された長さだけ直接拡散符号変調の変調周期を長く設定する。
時間ゲート処理部37rは、隣接周期間信号間隔比較部37tにより両変調周期内の逆拡散波S6の対応する間隔の全てが等しいと判定された場合に、逆拡散波S6に時間ゲート処理を適用し、変調周期内の各逆拡散波S6を抽出する。隣接する変調周期間における逆拡散波S6の対応する間隔が全て等しい場合には、圧縮波S5の場合と同様に、変調周期内には全ての散乱波S2に対応する逆拡散波S6が含まれていることから、時間ゲート処理部37rは、変調周期内の各逆拡散波S6を抽出することで、全ての散乱波S2に対応する逆拡散波S6の信号を抽出することが可能となる。
次に、図46と図47を参照して、本実施形態18におけるRCS測定処理の流れについて説明する。図46と図47は、それぞれ、本実施形態18におけるRCS測定処理のフローを説明するためのフローチャートの例の一部と、他の一部である。本RCS測定処理は、例えば、RCS測定装置1の操作部(不図示)を介して、RCSの測定開始の操作がなされたことをトリガとして開始される。なお、実施形態17におけるRCS測定処理と同じ処理については同じ符号を付すこととし、ここでは、異なる処理を中心に説明する。
送信部31は、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射し(ステップS1501)、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信する(ステップS1502)。そして、逆拡散処理部37uは、受信部32により受信された受信信号に対して、変調時に用いた拡散符号を乗算する逆拡散処理を行い、受信信号の逆拡散波S6を生成する(ステップS1503)。
そして、信号間隔比較部37oは、送信信号S1の変調周期と逆拡散処理部37uにより生成された逆拡散波S6の隣接する信号間の間隔とを比較する(ステップS1601)。そして、判定部37cは、信号間隔比較部37oによる比較結果に基づいて、逆拡散波S6の間隔が送信信号S1の変調周期より短いか否かを判定する(ステップS1602)。判定部37cにより、逆拡散波S6の間隔が送信信号S1の変調周期より短いと判定された場合には(ステップS1602;YES)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していると判定する(ステップS1603)。
そして、隣接周期間信号間隔比較部37tは、隣接する変調周期との間で、変調周期内の逆拡散波S6の対応する間隔を比較し(ステップS1604)、両変調周期内の逆拡散波S6の対応する間隔が全て等しいか否かを判定する(ステップS1605)。隣接周期間信号間隔比較部37tにより、両変調周期内の逆拡散波S6の対応する間隔の内で等しくない間隔があると判定された場合には(ステップS1605;NO)、変調周期可変部37qは、予め設定された長さだけ直接拡散符号変調の変調周期を長く設定する(ステップS1509)。
そして、送信部31は、変調周期可変部37qにより設定された変調周期にしたがって送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射する(ステップS1510)。そして、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信し(ステップS1511)、逆拡散処理部37uは、受信部32により受信された受信信号に対して、変調時に用いた拡散符号を乗算する逆拡散処理を行い、受信信号の逆拡散波S6を生成する(ステップS1512)。そして、処理はステップS1604の処理へと戻り、前述の処理を繰り返す。
一方、隣接周期間信号間隔比較部37tにより、両変調周期内の逆拡散波S6の対応する間隔の全てが等しいと判定された場合には(ステップS1605;YES)、時間ゲート処理部37rは、逆拡散波S6に時間ゲート処理を適用し、変調周期内の各逆拡散波S6を抽出する(ステップS1513A)。そして、拡散処理部37uaは、時間ゲート処理部37rにより抽出された逆拡散波S6に拡散符号を乗算して拡散波に戻すことで、各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)を生成する(ステップS1513B)。
そして、変換・合成処理部37iは、拡散処理部37uaにより生成された各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施して(ステップS1514)、それぞれの分離信号Ci(θ)を平面波状態にした後に、各信号を合成することで、RCSの測定値を算出する(ステップS1515)。そして、処理は実施形態17で説明したステップS1518の処理へと進む。
ステップS1602の処理において、判定部37cにより、各逆拡散波S6の間隔が送信信号S1の変調周期と等しいと判定された場合には(ステップS1602;NO)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していないと判定する(ステップS1606)。そして、変換・合成処理部37iは、受信信号(SS(θ))に対して近傍界・遠方界変換処理を施して、RCSの測定値を算出する(ステップS1517)。そして、処理は実施形態17で説明したステップS1518の処理へと進む。
上記実施形態18によれば、RCS測定装置1は、直接拡散符号変調信号を送信信号S1とし、受信信号に対して、変調時に用いた拡散符号を乗算する逆拡散処理を行い、逆拡散波S6を生成する。そして、RCS測定装置1は、隣接する変調周期との間で、変調周期内の逆拡散波S6の対応する間隔を比較し、対応する間隔が全て等しくなるように変調周期を可変させ、対応する間隔が全て等しくなった時点で、逆拡散波S6に時間ゲート処理を適用して、変調周期内の各逆拡散波S6を抽出し、拡散波に戻した各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)を生成する。そして、RCS測定装置1は、生成した分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施した後に、各信号を合成する。このように構成することで、多重散乱波S2bが発生していても、再現性を有する正しいRCSの測定値を得ることが可能となる。
(実施形態19)
本実施形態19においては、送信信号S1として、一変調周期毎に相異なる拡散符号により変調した直接拡散符号変調信号、つまり、一変調周期毎に相異なる拡散符号をパルス振幅変調信号に乗算した直接拡散符号変調信号を用いた場合における多重散乱波S2bの検知方法について説明する。
図48は、本実施形態19おけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態19における本体部3の基本的な構成は実施形態15の場合と同じである。
但し、図48に示すように、制御部37は、波数比較部37nの替りに、波数算出部37vを備える点で実施形態15の場合と異なっている。また、送信部31と逆拡散処理部37uと多重散乱波判定部37bと判定部37cが果たす機能が実施形態15の場合と異なっている。
送信部31は、例えば、信号発生器や送信用アンテナなどで構成され、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射する。
本実施形態19においては、送信部31が照射する送信信号S1は、一変調周期毎に相異なる拡散符号をパルス振幅変調信号に乗算した直接拡散符号変調信号である。以下、n種類の拡散符号で変調するものとし、変調順に拡散符号SC1、SC2、・・・、SCnと称することとする。
制御部37は、例えば、CPUなどで構成され、記憶部36のプログラムエリアに格納されている動作プログラムを実行して、図48に示すように、多重散乱波判定部37bと、判定部37cと、回転台制御部37dと、逆拡散処理部37uと、波数算出部37vとしての機能を実現すると共に、RCS測定装置1全体を制御する制御処理や詳しくは後述の多重散乱波検知処理などの処理を実行する。
逆拡散処理部37uは、受信部32により受信された受信信号に対して、変調時に用いた拡散符号(SC1〜SCn)をそれぞれ乗算する逆拡散処理を行い、n個の受信信号の逆拡散波S6、つまり、各拡散符号に対応した逆拡散波S6をn個生成する。以下、拡散符号SCj(j=1,・・・,n)に対応する逆拡散波S6を逆拡散波S6jと称することとする。
波数算出部37vは、所定時間W2(本例では、n変調周期)内の逆拡散波S6jの波数をそれぞれ算出する。あるいは、波数算出部37vは、逆拡散波S6jの中から任意の一つを選択し、選択した逆拡散波S6jにおける所定時間W2内の波数を算出する。
多重散乱波判定部37bは、波数算出部37vにより算出された所定時間W2内における逆拡散波S6jの波数が複数の場合には、多重散乱波S2bが発生していると判定し、波数算出部37vにより算出された所定時間W2内における逆拡散波S6jの波数が一つの場合には、多重散乱波S2bは発生していないと判定する。
このように判定できるのは、多重散乱波S2bが発生しない場合には、所定時間W2内の逆拡散波S6jの波数と対応する拡散符号SCjの変調回数(1回)は等しくなるが、多重散乱波S2bが発生している場合には、多重散乱波S2bに対応する逆拡散波S6jも含まれるため、所定時間W2内の逆拡散波S6jの対応する拡散符号SCjの変調回数(1回)より多くなるからである。
判定部37cは、波数算出部37vにより算出された所定時間W2内における逆拡散波S6jの波数が複数か否かを判定する。また、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する。
次に、図49を参照して、本実施形態19における多重散乱波検知処理の流れについて説明する。図49は、本実施形態19における多重散乱波検知処理のフローを説明するためのフローチャートの例である。本多重散乱波検知処理は、例えば、RCS測定装置1の操作部(不図示)を介して、RCSの測定開始の操作がなされたことをトリガとして開始される。
送信部31は、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射し(ステップS1701)、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信する(ステップS1702)。そして、逆拡散処理部37uは、受信部32により受信された受信信号に対して、変調時に用いた拡散符号(SC1〜SCn)をそれぞれ乗算する逆拡散処理を行い、各拡散符号SCjに対応する逆拡散波S6jをn個生成する(ステップS1703)。
そして、波数算出部37vは、所定時間W2内の逆拡散波S6jの波数をそれぞれ算出、又は、逆拡散波S6jの中から任意の一つを選択し、選択した逆拡散波S6jにおける所定時間W2内の波数を算出する(ステップS1704)。そして、判定部37cは、波数算出部37vにより算出された所定時間W2内における逆拡散波S6jの波数が複数か否かを判定する(ステップS1705)。
判定部37cにより、所定時間W2内における逆拡散波S6jの波数が複数であると判定された場合には(ステップS1705;YES)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していると判定する(ステップS1706)。そして、処理は後述のステップS1708の処理へと進む。
一方、判定部37cにより、所定時間W2内における逆拡散波S6jの波数は一つであると判定された場合には(ステップ1705;NO)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bは発生していないと判定する(ステップS1707)。そして、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する(ステップS1708)。判定部37cにより、回転台21を一周回転させたと判定された場合には(ステップS1708;YES)、本処理は終了し、次の開始を待つ。
一方、判定部37cにより、回転台21をまだ一周回転させていないと判定された場合には(ステップS1708;NO)、回転台制御部37dは、測定角度制御信号S4を生成して、出力部35を介して、生成した測定角度制御信号S4を測定対象搭載部2に送信する(ステップS1709)。そして、測定対象搭載部2は、測定角度制御信号S4にしたがって、回転台21を角度α回転させる(ステップS1710)。そして、処理はステップS1701の処理へと戻り、前述の処理を繰り返す。
上記実施形態19によれば、RCS測定装置1は、一変調周期毎に相異なる拡散符号SCjにより変調した直接拡散符号変調信号を送信信号S1とし、受信信号に対して、変調時に用いた拡散符号SCjをそれぞれ乗算する逆拡散処理を行い、拡散符号SCjに対応する逆拡散波S6jを生成する。そして、RCS測定装置1は、所定時間W2内における逆拡散波S6jの波数を算出する。多重散乱波S2bが発生している場合には、多重散乱波S2bに対応する直接拡散符号変調信号が受信信号に含まれることから、このように構成することで、所定時間W2内における逆拡散波S6jの波数に基づいて、多重散乱波S2bの発生を検知することが可能となる。
(実施形態20)
本実施形態20においては、送信信号S1として、一変調周期毎に相異なる拡散符号SCjにより変調した直接拡散符号変調信号、つまり、一変調周期毎に相異なる拡散符号SCjをパルス振幅変調信号に乗算した直接拡散符号変調信号を用いた場合におけるRCSの測定方法について説明する。
図50は、本実施形態20おけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態20における本体部3の基本的な構成は実施形態19の場合と同じである。但し、図50に示すように、制御部37は、変換・合成処理部37iと、時間ゲート処理部37rと、拡散処理部37uaと、逆拡散波選択部37wと、を更に備える点で実施形態19の場合と異なっている。なお、変換・合成処理部37iと拡散処理部37uaの機能は、実施形態17で説明した機能と同じである。
制御部37は、例えば、CPUなどで構成され、記憶部36のプログラムエリアに格納されている動作プログラムを実行して、図50に示すように、多重散乱波判定部37bと、判定部37cと、回転台制御部37dと、変換・合成処理部37iと、時間ゲート処理部37rと、逆拡散処理部37uと、拡散処理部37uaと、波数算出部37vと、逆拡散波選択部37wとしての機能を実現すると共に、RCS測定装置1全体を制御する制御処理や詳しくは後述のRCS測定処理などの処理を実行する。
逆拡散波選択部37wは、波数算出部37vにより算出された所定時間W2内における逆拡散波S6jの波数が複数であると判定された場合に、逆拡散処理部37uにより生成された逆拡散波S6jの中から任意の拡散符号SCjに対応する逆拡散波S6jを一つ選択する。
時間ゲート処理部37rは、逆拡散波選択部37wにより選択された逆拡散波S6jに時間ゲート処理を適用し、所定時間W2内の各逆拡散波S6jを抽出する。所定時間W2内には全ての散乱波S2に対応する逆拡散波S6jが含まれていることから、時間ゲート処理部37rは、所定時間W2内の各逆拡散波S6jを抽出することで、全ての散乱波S2に対応する逆拡散波S6jの信号を抽出することが可能となる。
次に、図51と図52を参照して、本実施形態20におけるRCS測定処理の流れについて説明する。図51と図52は、それぞれ、本実施形態20におけるRCS測定処理のフローを説明するためのフローチャートの例の一部と、他の一部である。本RCS測定処理は、例えば、RCS測定装置1の操作部(不図示)を介して、RCSの測定開始の操作がなされたことをトリガとして開始される。
送信部31は、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射し(ステップS1801)、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信する(ステップS1802)。そして、逆拡散処理部37uは、受信部32により受信された受信信号に対して、変調時に用いた拡散符号(SC1〜SCn)をそれぞれ乗算する逆拡散処理を行い、各拡散符号SCjに対応する逆拡散波S6jをn個生成する(ステップS1803)。
そして、波数算出部37vは、所定時間W2内の逆拡散波S6jの波数をそれぞれ算出、又は、逆拡散波S6jの中から任意の一つを選択し、選択した逆拡散波S6jにおける所定時間W2内の波数を算出する(ステップS1804)。そして、判定部37cは、波数算出部37vにより算出された所定時間W2内における逆拡散波S6jの波数が複数か否かを判定する(ステップS1805)。
判定部37cにより、所定時間W2内における逆拡散波S6jの波数が複数であると判定された場合には(ステップS1805;YES)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していると判定する(ステップS1806)。そして、逆拡散波選択部37wは、逆拡散処理部37uにより生成された逆拡散波S6jの中から任意の拡散符号SCjに対応する逆拡散波S6jを一つ選択する(ステップS1807)。
時間ゲート処理部37rは、逆拡散波選択部37wにより選択された逆拡散波S6jに時間ゲート処理を適用し、所定時間W2内の各逆拡散波S6jを抽出する(ステップS1808A)。そして、拡散処理部37uaは、時間ゲート処理部37rにより抽出された逆拡散波S6jに拡散符号を乗算して拡散波に戻すことで、各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)を生成する(ステップS1808B)。
そして、変換・合成処理部37iは、拡散処理部37uaにより生成された各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施して(ステップS1809)、それぞれの分離信号Ci(θ)を平面波状態にした後に、各信号を合成することで、RCSの測定値を算出する(ステップS1810)。そして、処理は後述のステップS1813へと進む。
ステップS1805の処理において、判定部37cにより、所定時間W2内における逆拡散波S6jの波数は一つであると判定された場合には(ステップ1805;NO)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bは発生していないと判定する(ステップS1811)。そして、変換・合成処理部37iは、受信信号(SS(θ))に対して近傍界・遠方界変換処理を施して、RCSの測定値を算出する(ステップS1812)。
そして、判定部37cは、回転台21を一周回転させたか否かを判定する(ステップS1813)。判定部37cにより、回転台21を一周回転させたと判定された場合には(ステップS1813;YES)、本処理は終了し、次の開始を待つ。
一方、判定部37cにより、回転台21をまだ一周回転させていないと判定された場合には(ステップS1813;NO)、回転台制御部37dは、測定角度制御信号S4を生成して、出力部35を介して、生成した測定角度制御信号S4を測定対象搭載部2に送信する(ステップS1814)。そして、測定対象搭載部2は、測定角度制御信号S4にしたがって、回転台21を角度α回転させる(ステップS1815)。そして、処理はステップS1801の処理へと戻り、前述の処理を繰り返す。
上記実施形態20によれば、RCS測定装置1は、一変調周期毎に相異なる拡散符号SCjにより変調した直接拡散符号変調信号を送信信号S1とし、受信信号に対して、変調時に用いた拡散符号SCjをそれぞれ乗算する逆拡散処理を行い、拡散符号SCjに対応する逆拡散波S6jを生成する。そして、RCS測定装置1は、逆拡散波S6jの中から任意の拡散符号SCjに対応する逆拡散波S6jを一つ選択し、選択した逆拡散波S6jに対して時間ゲート処理を適用し、拡散波に戻した各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)を生成する。そして、RCS測定装置1は、生成した分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施した後に、各信号を合成する。このように構成することで、多重散乱波S2bが発生していても、再現性を有する正しいRCSの測定値を得ることが可能となる。
(実施形態21)
本実施形態21においては、送信信号S1として、一変調周期毎に相異なる拡散符号SCjにより変調した直接拡散符号変調信号、つまり、一変調周期毎に相異なる拡散符号SCjをパルス振幅変調信号に乗算した直接拡散符号変調信号を用いた場合におけるRCSの別の測定方法について説明する。
図53は、本実施形態21おけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態21における本体部3の基本的な構成は実施形態20の場合と同じである。但し、図53に示すように、制御部37が、逆拡散波選択部37wを備えていない点で実施形態20の場合と異なっている。また、時間ゲート処理部37rと逆拡散処理部37uと波数算出部37vの各機能が実施形態20の場合と異なっている。
制御部37は、例えば、CPUなどで構成され、記憶部36のプログラムエリアに格納されている動作プログラムを実行して、図53に示すように、多重散乱波判定部37bと、判定部37cと、回転台制御部37dと、変換・合成処理部37iと、時間ゲート処理部37rと、逆拡散処理部37uと、拡散処理部37uaと、波数算出部37vとしての機能を実現すると共に、RCS測定装置1全体を制御する制御処理や詳しくは後述のRCS測定処理などの処理を実行する。
逆拡散処理部37uは、変調時に用いた拡散符号SCjの中から任意の拡散符号SCjを一つ選択し、受信部32により受信された受信信号に対して、選択した拡散符号SCjを乗算する逆拡散処理を行い、選択した拡散符号SCjに対応する逆拡散波S6jを生成する。
波数算出部37vは、所定時間W2(本例では、n変調周期)内の逆拡散波S6jの波数を算出する。
時間ゲート処理部37rは、多重散乱波が発生している場合に、逆拡散処理部37uにより生成された逆拡散波S6jに時間ゲート処理を適用し、所定時間W2内の各逆拡散波S6jを抽出する。所定時間W2内には全ての散乱波S2に対応する逆拡散波S6jが含まれていることから、時間ゲート処理部37rは、所定時間W2内の各逆拡散波S6jを抽出することで、全ての散乱波S2に対応する逆拡散波S6jの信号を抽出することが可能となる。
次に、図54と図55を参照して、本実施形態21におけるRCS測定処理の流れについて説明する。図54と図55は、それぞれ、本実施形態21におけるRCS測定処理のフローを説明するためのフローチャートの例の一部と、他の一部である。本RCS測定処理は、例えば、RCS測定装置1の操作部(不図示)を介して、RCSの測定開始の操作がなされたことをトリガとして開始される。なお、実施形態20におけるRCS測定処理と同じ処理については同じ符号を付すこととし、ここでは、異なる処理を中心に説明する。
送信部31は、制御部37の制御の下、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を測定対象の散乱体Tに照射し(ステップS1801)、受信部32は、散乱体Tから発生する散乱波S2を受信する(ステップS1802)。そして、逆拡散処理部37uは、変調時に用いた拡散符号(SC1〜SCn)の中から任意の拡散符号SCjを一つ選択し(ステップS1901)、受信部32により受信された受信信号に対して、選択した拡散符号SCjを乗算する逆拡散処理を行い、選択した拡散符号SCjに対応する逆拡散波S6jを生成する(ステップS1902)。
そして、波数算出部37vは、所定時間W2内の逆拡散波S6jの波数を算出する(ステップS1903)。そして、判定部37cは、波数算出部37vにより算出された所定時間W2内における逆拡散波S6jの波数が複数か否かを判定する(ステップS1805)。
判定部37cにより、所定時間W2内における逆拡散波S6jの波数が複数であると判定された場合には(ステップS1805;YES)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していると判定する(ステップS1806)。そして、時間ゲート処理部37rは、逆拡散処理部37uにより生成された逆拡散波S6jに時間ゲート処理を適用し、所定時間W2内の各逆拡散波S6jを抽出する(ステップS1904A)。そして、拡散処理部37uaは、時間ゲート処理部37により抽出された逆拡散波S6jに拡散符号を乗算して拡散波に戻すことで、各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)を生成する(ステップS1904B)。
そして、変換・合成処理部37iは、拡散処理部37uaにより生成された各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施して(ステップS1809)、それぞれの分離信号Ci(θ)を平面波状態にした後に、各信号を合成することで、RCSの測定値を算出する(ステップS1810)。そして、処理は実施形態20で説明したステップS1813の処理へと進む。
ステップS1805の処理において、判定部37cにより、所定時間W2内における逆拡散波S6jの波数は一つであると判定された場合には(ステップ1805;NO)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bは発生していないと判定する(ステップS1811)。そして、変換・合成処理部37iは、受信信号(SS(θ))に対して近傍界・遠方界変換処理を施して、RCSの測定値を算出する(ステップS1812)。そして、処理は実施形態20で説明したステップS1813の処理へと進む。
上記実施形態21によれば、RCS測定装置1は、一変調周期毎に相異なる拡散符号SCjにより変調した直接拡散符号変調信号を送信信号S1とし、変調時に用いた拡散符号SCjの中から任意の拡散符号SCjを一つ選択し、受信信号に対して、選択した拡散符号SCjを乗算する逆拡散処理を行い、選択した拡散符号SCjに対応する逆拡散波S6jを生成する。そして、RCS測定装置1は、生成した逆拡散波S6jに対して時間ゲート処理を適用し、拡散波に戻した各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)を生成する。そして、RCS測定装置1は、生成した分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施した後に、各信号を合成する。このように構成することで、多重散乱波S2bが発生していても、再現性を有する正しいRCSの測定値を得ることが可能となる。
(実施形態22)
本実施形態22においては、送信信号S1として、一変調周期毎に相異なる拡散符号SCjにより変調した直接拡散符号変調信号、つまり、一変調周期毎に相異なる拡散符号SCjをパルス振幅変調信号に乗算した直接拡散符号変調信号を用いた場合におけるRCSの更に別の測定方法について説明する。
図56は、本実施形態22おけるRCS測定装置1の本体部3の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態22における本体部3の基本的な構成は実施形態20の場合と同じである。但し、図56に示すように、制御部37は、逆拡散波選択部37wの替りに、逆拡散波合成信号生成部37xを備える点で実施形態20の場合と異なっている。また、時間ゲート処理部37rが果たす機能が、実施形態20の場合と異なっている。
制御部37は、例えば、CPUなどで構成され、記憶部36のプログラムエリアに格納されている動作プログラムを実行して、図56に示すように、多重散乱波判定部37bと、判定部37cと、回転台制御部37dと、変換・合成処理部37iと、時間ゲート処理部37rと、逆拡散処理部37uと、拡散処理部37uaと、波数算出部37vと、逆拡散波合成信号生成部37xとしての機能を実現すると共に、RCS測定装置1全体を制御する制御処理や詳しくは後述のRCS測定処理などの処理を実行する。
逆拡散波合成信号生成部37xは、波数算出部37vにより算出された所定時間W2内における逆拡散波S6jの波数が複数であると判定された場合に、対応する拡散符号SCjの遅延量だけ逆拡散処理部37uにより生成された逆拡散波S6jの位相を前にずらし各逆拡散波S6jのパターンを一致させた後に合成して逆拡散波合成信号S7を生成する。ここで、拡散符号SCjの遅延量は、変調周期をW3とした場合、(j−1)×W3、つまり、拡散符号SC1による変調タイミングから拡散符号SCjによる変調タイミングまでの時間である。
図57Aは、位相をずらす前の各逆拡散波S6jのパターンを示す図であり、図57Bは、位相をずらした後の各逆拡散波S6jのパターンを示す図である。拡散符号SCjの遅延量(=(j−1)×W3)だけ、位相を前にずらした後の各逆拡散波S6jのパターンは、図57Bに示すように、一致する。したがって、逆拡散波合成信号S7に対して時間ゲート処理を適用することで、各散乱波S2に対応する信号を分離することが可能となる。
図56に戻り、時間ゲート処理部37rは、逆拡散波合成信号生成部37xにより生成された逆拡散波合成信号S7に時間ゲート処理を適用し、所定時間W2内の各逆拡散波合成信号S7を抽出する。所定時間W2内には全ての散乱波S2に対応する逆拡散波合成信号S7が含まれていることから、時間ゲート処理部37rは、所定時間W2内の各逆拡散波合成信号S7を抽出することで、全ての散乱波S2に対応する逆拡散波合成信号S7の信号を抽出することが可能となる。
次に、図58と図59を参照して、本実施形態22におけるRCS測定処理の流れについて説明する。図58と図59は、それぞれ、本実施形態22におけるRCS測定処理のフローを説明するためのフローチャートの例の一部と、他の一部である。本RCS測定処理は、例えば、RCS測定装置1の操作部(不図示)を介して、RCSの測定開始の操作がなされたことをトリガとして開始される。なお、実施形態20におけるRCS測定処理と同じ処理については同じ符号を付すこととし、ここでは、異なる処理を中心に説明する。
判定部37cは、波数算出部37vにより算出された所定時間W2内における逆拡散波S6jの波数が複数か否かを判定する(ステップS1805)。判定部37cにより、所定時間W2内における逆拡散波S6jの波数が複数であると判定された場合には(ステップS1805;YES)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bが発生していると判定する(ステップS1806)。そして、逆拡散波合成信号生成部37xは、逆拡散波合成信号S7を生成する(ステップS2001)。
時間ゲート処理部37rは、逆拡散波合成信号生成部37xにより生成された逆拡散波合成信号S7に時間ゲート処理を適用し、所定時間W2内の各逆拡散波合成信号S7を抽出する(ステップS2002A)。そして、拡散処理部37uaは、時間ゲート処理部37rにより抽出された逆拡散波合成信号S7に拡散符号を乗算して拡散波に戻すことで、各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)を生成する(ステップS2002B)。
そして、変換・合成処理部37iは、拡散処理部37uaにより生成された各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施して(ステップS1809)、それぞれの分離信号Ci(θ)を平面波状態にした後に、各信号を合成することで、RCSの測定値を算出する(ステップS1810)。そして、処理は実施形態20で説明したステップS1813の処理へと進む。
ステップS1805の処理において、判定部37cにより、所定時間W2内における逆拡散波S6jの波数は一つであると判定された場合には(ステップ1805;NO)、多重散乱波判定部37bは、多重散乱波S2bは発生していないと判定する(ステップS1811)。そして、変換・合成処理部37iは、受信信号(SS(θ))に対して近傍界・遠方界変換処理を施して、RCSの測定値を算出する(ステップS1812)。そして、処理は実施形態20で説明したステップS1813の処理へと進む。
上記実施形態22によれば、RCS測定装置1は、一変調周期毎に相異なる拡散符号SCjにより変調した直接拡散符号変調信号を送信信号S1とし、受信信号に対して、変調時に用いた拡散符号SCjをそれぞれ乗算する逆拡散処理を行い、拡散符号SCjに対応する逆拡散波S6jを生成する。そして、RCS測定装置1は、対応する拡散符号SCjの遅延量だけ逆拡散波S6jの位相を前にずらし各逆拡散波S6jのパターンを一致させた後に合成して逆拡散波合成信号S7を生成する。そして、RCS測定装置1は、生成した逆拡散波合成信号S7jに対して時間ゲート処理を適用し、拡散波に戻して各散乱波S2に対応する分離信号Ci(θ)を生成する。そして、RCS測定装置1は、生成した分離信号Ci(θ)に対してそれぞれ近傍界・遠方界変換処理を施した後に、各信号を合成する。このように構成することで、多重散乱波S2bが発生していても、再現性を有する正しいRCSの測定値を得ることが可能となる。
図60は、各実施形態におけるRCS測定装置1の本体部3のハードウェア構成の例を示す図である。図2などに示す本体部3は、例えば、図60に示す各種ハードウェアにより実現されてもよい。図60の例では、RCS測定装置1の本体部3は、CPU201、RAM202、ROM203、HDD204、送信用アンテナ205が接続されている送信モジュール206、受信用アンテナ207が接続されている受信モジュール208、PC(Personal Computer)などの外部機器や測定対象搭載部2が接続される機器インターフェース209、記録媒体212に記録されている情報を読み取る読取装置210、これらのハードウェアはバス211を介して接続されている。
CPU201は、HDD204に格納されている動作プログラムをRAM202にロードし、RAM202をワーキングメモリとして使いながら各種処理を実行する。CPU201は、動作プログラムを実行することで、図2などに示す制御部37の各機能部を実現することができる。
実施形態に応じて、送信モジュール206、受信モジュール208の構成は変更され得る。例えば、実施形態1おいては、送信モジュール206は、信号発生器や分配器などで構成され、受信モジュール208は、可変位相器や乗算器やローパスフィルタや受信器などで構成されている。
信号発生器は、送信信号S1を生成し、生成した送信信号S1を分配器に出力する。分配器は、入力された送信信号S1を送信用アンテナ205と受信モジュール208の可変位相器に出力する。可変位相器は、送信信号S1の位相を[0,π]の範囲で可変な局部発振信号S3を生成する。乗算器は、局部発振信号S3を受信用アンテナ207により受信された受信信号に乗算し、ローパスフィルタは、乗算後の信号から基底周波数成分を取り出すことで、基底帯域信号BS(θ)を生成する。
また、例えば、実施形態6と7で説明したように、受信用アンテナ207は複数のアンテナ素子を備えるものであってもよく、この場合、受信モジュール208は複数となる。
なお、一部の実施形態において、送信用アンテナ205と受信用アンテナ207を共用し、切替えて使用するようにしてもよい。
なお、上記動作を実行するための動作プログラムを、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto Optical disk)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体212に記憶して配布し、これを本体部3に接続されている読取装置210で読み取ってコンピュータにインストールすることにより、上述の処理を実行するように構成してもよい。さらに、本体部3が通信モジュール(不図示)を備えるように構成し、インターネット上のサーバ装置が有するディスク装置等に動作プログラムを記憶しておき、通信モジュールを介して、本体部3のコンピュータに動作プログラムをダウンロード等するものとしてもよい。
なお、実施形態に応じて、RAM202、ROM203、HDD204以外の他の種類の記憶装置が利用されてもよい。例えば、本体部3は、CAM(Content Addressable Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)などの記憶装置を有してもよい。
なお、実施形態に応じて、RCS測定装置1の本体部3のハードウェア構成は図60とは異なっていてもよく、図60に例示した規格・種類以外のその他のハードウェアをRCS測定装置1の本体部3に適用することもできる。
例えば、図2などに示す本体部3の制御部37の各機能部は、ハードウェア回路により実現されてもよい。具体的には、CPU201の代わりに、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのリコンフィギュラブル回路や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などにより、図2などに示す制御部37の各機能部が実現されてもよい。もちろん、CPU201とハードウェア回路の双方により、これらの機能部が実現されてもよい。
また、例えば、図2などに示す局所発振信号生成部33や基底帯域信号生成部34はハードウェアにより実現されると説明したが、プログラムにより実現されてもよい。
また、例えば、RCS測定装置1の本体部3に接続されたPCなどの情報端末装置により制御部37の機能部の一部が実現されてもよい。
以上において、いくつかの実施形態について説明した。しかしながら、実施形態は上記の実施形態に限定されるものではなく、上述の実施形態の各種変形形態及び代替形態を包含するものとして理解されるべきである。例えば、各種実施形態は、その趣旨及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できることが理解されよう。また、前述した実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、種々の実施形態を成すことができることが理解されよう。更には、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除して又は置換して、或いは実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加して種々の実施形態が実施され得ることが当業者には理解されよう。
以上の実施形態1〜22を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
送信信号を生成し、生成した前記送信信号を散乱体に照射する送信手段と、
前記送信信号を照射することで前記散乱体から発生する散乱波に対応する受信信号を受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された前記受信信号に基づいて、多重散乱波の発生を検知する多重散乱波検知手段と、
前記多重散乱波検知手段により前記多重散乱波が検知された場合に、前記受信手段により受信された前記受信信号から各散乱波に対応する信号を分離する分離手段と、
前記分離手段により分離された各散乱波に対応する前記信号に対して、それぞれ、遠方界の信号に変換する近傍界・遠方界変換を行った後に、各信号を合成する変換・合成手段と、
を備える、
ことを特徴とするレーダ反射断面積測定装置。
(付記2)
前記送信信号に可変な位相を加えた局部発振信号を生成する局部発振信号生成手段と、
前記受信信号に前記局部発振信号を乗算した後に、基底周波数成分を取り出して基底帯域信号を生成する基底帯域信号生成手段と、
前記位相を所定の範囲で可変した場合における前記基底帯域信号の極大値に対応する位相値を遅延量として特定する遅延量特定手段と、
前記遅延量特定手段により特定された前記遅延量を前記送信信号にそれぞれ与えた信号を合成して参照信号を生成する参照信号生成手段と、
前記受信信号と前記参照信号生成手段により生成された前記参照信号との差が最小となるように、前記参照信号の各項の係数を特定する係数特定手段と、
を、更に、備え、
前記分離手段は、前記送信信号と前記遅延量特定手段により特定された前記遅延量と前記係数特定手段により特定された前記係数とに基づいて、前記受信信号から各散乱波に対応する信号を分離する、
ことを特徴とする付記1に記載のレーダ反射断面積測定装置。
(付記3)
前記分離手段は、前記受信信号と前記参照信号との差が最小となる場合の前記参照信号の項の中から一つの項をそれぞれ除外した除外参照信号を、前記受信信号から減算することで、前記受信信号から各散乱波に対応する信号を分離する、
ことを特徴とする付記2に記載のレーダ反射断面積測定装置。
(付記4)
前記送信信号に可変な位相を加えた局部発振信号を生成する局部発振信号生成手段と、
前記受信信号に前記局部発振信号を乗算した後に、基底周波数成分を取り出して基底帯域信号を生成する基底帯域信号生成手段と、
前記位相を所定の範囲で可変した場合における前記基底帯域信号の極大値に対応する位相値を遅延量として特定する遅延量特定手段と、
前記遅延量特定手段により特定された前記遅延量を前記受信信号に与えた擬似受信信号を生成する擬似受信信号生成手段と、
を、更に、備え、
前記分離手段は、前記擬似受信信号生成手段により生成された前記擬似受信信号に対して、主成分分析と独立成分分析を適用し、各散乱波に対応するそれぞれ独立な信号を前記受信信号から分離する、
ことを特徴とする付記1に記載のレーダ反射断面積測定装置。
(付記5)
前記受信手段は、複数のアンテナ素子で前記受信信号を受信し、
前記分離手段は、前記受信手段により受信された前記受信信号に対して、主成分分析と独立成分分析を適用し、各散乱波に対応するそれぞれ独立な信号を前記受信信号から分離する、
ことを特徴とする付記1に記載のレーダ反射断面積測定装置。
(付記6)
前記送信信号は、一変調周期毎に互いに直交した符号で変調した直交符号変調信号であり、
前記受信手段により受信された前記受信信号と前記送信信号との相互相関を算出する相互相関算出手段と、
前記相互相関の値が最大値をとる際の前記送信信号の遅延量を特定する遅延量特定手段と、
前記遅延量特定手段により特定された前記遅延量を前記受信信号に与えた擬似受信信号を生成する擬似受信信号生成手段と、
を、更に、備え、
前記分離手段は、前記擬似受信信号生成手段により生成された前記擬似受信信号に対して、主成分分析と独立成分分析を適用し、各散乱波に対応するそれぞれ独立な信号を前記受信信号から分離する、
ことを特徴とする付記1に記載のレーダ反射断面積測定装置。
(付記7)
前記送信信号は、周波数を連続的に変化させる周波数掃引変調を行った周波数掃引変調信号であり、
前記受信手段により受信された前記受信信号を前記周波数掃引変調信号と逆の周波数掃引により加算処理して圧縮波を生成する圧縮波生成手段と、
隣接する変調周期との間で、前記変調周期内の前記圧縮波の波数が等しくなるように前記送信信号の前記変調周期を可変する変調周期可変手段と、
前記変調周期内の前記圧縮波の波数が等しくなった時点で、前記圧縮波に時間ゲート処理を適用し、前記変調周期内の各圧縮波を抽出する時間ゲート処理手段と、
を、更に、備え、
前記分離手段は、前記時間ゲート処理手段により抽出された各圧縮波を各散乱波に対応する前記信号とする、
ことを特徴とする付記1に記載のレーダ反射断面積測定装置。
(付記8)
前記変調周期可変手段は、隣接する変調周期との間で、前記変調周期内の前記圧縮波の対応する間隔が全て等しくなるように前記送信信号の前記変調周期を可変し、
前記時間ゲート処理手段は、前記変調周期内の前記圧縮波の対応する間隔が全て等しくなった時点で、前記圧縮波に時間ゲート処理を適用し、前記変調周期内の各圧縮波を抽出する、
ことを特徴とする付記7に記載のレーダ反射断面積測定装置。
(付記9)
前記時間ゲート処理手段により抽出された各圧縮波をそれぞれ伸長する伸長処理手段を、更に、備え、
前記分離手段は、前記伸長処理手段により伸長された後の各圧縮波を各散乱波に対応する前記信号とする、
ことを特徴とする付記7又は8に記載のレーダ反射断面積測定装置。
(付記10)
前記送信信号は、パルス振幅変調信号に拡散符号を乗算した直接拡散符号変調信号であり、
前記受信手段により受信された前記受信信号に対して、変調時に用いた前記拡散符号を乗算する逆拡散処理を行い、逆拡散波を生成する逆拡散波生成手段と、
隣接する変調周期との間で、前記変調周期内の前記逆拡散波の波数が等しくなるように前記送信信号の前記変調周期を可変する変調周期可変手段と、
前記変調周期内の前記逆拡散波の波数が等しくなった時点で、前記逆拡散波に時間ゲート処理を適用し、前記変調周期内の各逆拡散波を抽出する時間ゲート処理手段と、
を、更に、備え、
前記分離手段は、前記時間ゲート処理手段により抽出された各逆拡散波を各散乱波に対応する前記信号とする、
ことを特徴とする付記1に記載のレーダ反射断面積測定装置。
(付記11)
前記変調周期可変手段は、隣接する変調周期との間で、前記変調周期内の前記逆拡散波の対応する間隔が全て等しくなるように前記送信信号の前記変調周期を可変し、
前記時間ゲート処理手段は、前記変調周期内の前記逆拡散波の対応する間隔が全て等しくなった時点で、前記逆拡散波に時間ゲート処理を適用し、前記変調周期内の各逆拡散波を抽出する、
ことを特徴とする付記10に記載のレーダ反射断面積測定装置。
(付記12)
前記送信信号は、一変調周期毎に相異なる拡散符号をパルス振幅変調信号に乗算した直接拡散符号変調信号であり、
前記受信手段により受信された前記受信信号に対して、変調時に用いた前記拡散符号を乗算する逆拡散処理を行い、前記拡散符号に対応する逆拡散波を生成する逆拡散波生成手段を、更に、備え、
前記分離手段は、前記逆拡散波生成手段により生成された前記逆拡散波に基づいて、前記受信信号から各散乱波に対応する信号を分離する、
ことを特徴とする付記1に記載のレーダ反射断面積測定装置。
(付記13)
前記逆拡散波生成手段は、前記受信手段により受信された前記受信信号に対して、変調時に用いた前記拡散符号をそれぞれ乗算する逆拡散処理を行い、前記拡散符号にそれぞれ対応する逆拡散波を生成し、
前記逆拡散波生成手段により生成された前記逆拡散波の中から任意の逆拡散波を一つ選択する逆拡散波選択手段と、
前記逆拡散波選択手段により選択された前記逆拡散波に時間ゲート処理を適用し、各逆拡散波を抽出する時間ゲート処理手段と、
を、更に、備え、
前記分離手段は、前記時間ゲート処理手段により抽出された各逆拡散波を各散乱波に対応する前記信号とする、
ことを特徴とする付記12に記載のレーダ反射断面積測定装置。
(付記14)
前記逆拡散波生成手段は、変調時に用いた前記拡散符号の中から任意の前記拡散符号を一つ選択し、前記受信手段により受信された前記受信信号に対して、選択した前記拡散符号を乗算する逆拡散処理を行い、選択した前記拡散符号に対応する逆拡散波を生成し、
前記逆拡散波生成手段により生成された前記逆拡散波に時間ゲート処理を適用し、各逆拡散波を抽出する時間ゲート処理手段を、更に、備え、
前記分離手段は、前記時間ゲート処理手段により抽出された各逆拡散波を各散乱波に対応する前記信号とする、
ことを特徴とする付記12に記載のレーダ反射断面積測定装置。
(付記15)
前記逆拡散波生成手段は、前記受信手段により受信された前記受信信号に対して、変調時に用いた前記拡散符号をそれぞれ乗算する逆拡散処理を行い、前記拡散符号にそれぞれ対応する逆拡散波を生成し、
前記逆拡散波生成手段により生成された各逆拡散波のパターンを一致させた後に合成して逆拡散波合成信号を生成する逆拡散波合成信号生成手段と、
前記逆拡散波合成信号生成手段により生成された前記逆拡散波合成信号に時間ゲート処理を適用し、各逆拡散波合成信号を抽出する時間ゲート処理手段と、
を、更に、備え、
前記分離手段は、前記時間ゲート処理手段により抽出された各逆拡散波合成信号を各散乱波に対応する前記信号とする、
ことを特徴とする付記12に記載のレーダ反射断面積測定装置。
(付記16)
前記変換・合成手段は、前記多重散乱波が発生していない場合には、前記受信信号に対して、遠方界の信号に変換する近傍界・遠方界変換を行う、
ことを特徴とする付記1乃至15のいずれか一に記載のレーダ反射断面積測定装置。
(付記17)
送信信号を生成し、
生成した前記送信信号を散乱体に照射し、
前記送信信号を照射することで前記散乱体から発生する散乱波に対応する受信信号を受信し、
受信した前記受信信号に基づいて、多重散乱波が発生しているか否かを判定し、
前記多重散乱波が発生していると判定した場合に、前記受信信号から各散乱波に対応する信号を分離し、
分離した各散乱波に対応する前記信号に対して、それぞれ、遠方界の信号に変換する近傍界・遠方界変換を行った後に、各信号を合成する、
ことを特徴とするレーダ反射断面積測定方法。
(付記18)
レーダ反射断面積測定装置のコンピュータに、
送信信号を生成し、
生成した前記送信信号を散乱体に照射し、
前記送信信号を照射することで前記散乱体から発生する散乱波に対応する受信信号を受信し、
受信した前記受信信号に基づいて、多重散乱波が発生しているか否かを判定し、
前記多重散乱波が発生していると判定した場合に、前記受信信号から各散乱波に対応する信号を分離し、
分離した各散乱波に対応する前記信号に対して、それぞれ、遠方界の信号に変換する近傍界・遠方界変換を行った後に、各信号を合成する、
処理を実行させる、
ことを特徴とするプログラム。
(付記19)
送信信号を生成し、生成した前記送信信号を散乱体に照射する送信手段と、
前記送信信号を照射することで前記散乱体から発生する散乱波に対応する受信信号を受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された前記受信信号に基づいて、多重散乱波の発生を検知する多重散乱波検知手段と、
を備える、
ことを特徴とする多重散乱波検知装置。
(付記20)
前記送信信号に可変な位相を加えた局部発振信号を生成する局部発振信号生成手段と、
前記受信信号に前記局部発振信号を乗算した後に、基底周波数成分を取り出して基底帯域信号を生成する基底帯域信号生成手段と、
を、更に、備え、
前記多重散乱波検知手段は、前記位相を所定の範囲で可変した場合における前記基底帯域信号の極大値、又は、極小値の数に基づいて、前記多重散乱波の発生を検知する、
ことを特徴とする付記19に記載の多重散乱波検知装置。
(付記21)
前記基底帯域信号の前記範囲における前記極大値に対応する位相値を遅延量として特定する遅延量特定手段と、
前記遅延量特定手段により特定された前記遅延量を前記受信信号に与えた擬似受信信号を生成する擬似受信信号生成手段と、
前記擬似受信信号生成手段により生成された前記擬似受信信号に基づいて、共分散行列を生成し、生成した前記共分散行列の固有値を算出する固有値算出手段と、
を、更に、備え、
前記多重散乱波検知手段は、前記固有値算出手段により算出された前記固有値の数に基づいて、前記多重散乱波の発生を検知する、
ことを特徴とする付記20に記載の多重散乱波検知装置。
(付記22)
前記受信手段は、前記受信信号を複数のアンテナ素子で受信し、
前記受信手段により受信された前記受信信号に基づいて、共分散行列を生成し、生成した前記共分散行列の固有値を算出する固有値算出手段を、更に、備え、
前記多重散乱波検知手段は、前記固有値算出手段により算出された前記固有値の数に基づいて、前記多重散乱波の発生を検知する、
ことを特徴とする付記19に記載の多重散乱波検知装置。
(付記23)
前記送信信号は、一変調周期毎に互いに直交した符号で変調した直交符号変調信号であり、
前記受信手段により受信された前記受信信号と前記送信信号との相互相関を算出する相互相関算出手段を、更に、備え、
前記多重散乱波検知手段は、前記相互相関算出手段により算出された前記相互相関の値が最大値をとる回数に基づいて、前記多重散乱波の発生を検知する、
ことを特徴とする付記19に記載の多重散乱波検知装置。
(付記24)
前記相互相関の値が最大値をとる際の前記送信信号の遅延量を特定する遅延量特定手段と、
前記遅延量特定手段により特定された前記遅延量を前記受信信号に与えた擬似受信信号を生成する擬似受信信号生成手段と、
前記擬似受信信号生成手段により生成された前記擬似受信信号に基づいて、共分散行列を生成し、生成した前記共分散行列の固有値を算出する固有値算出手段と、
を、更に、備え、
前記多重散乱波検知手段は、前記固有値算出手段により算出された前記固有値の数に基づいて、前記多重散乱波の発生を検知する、
ことを特徴とする付記23に記載の多重散乱波検知装置。
(付記25)
前記送信信号は、周波数を連続的に変化させる周波数掃引変調を行った周波数掃引変調信号であり、
前記受信手段により受信された前記受信信号を前記周波数掃引変調信号と逆の周波数掃引により加算処理して圧縮波を生成する圧縮波生成手段を、更に、備え、
前記多重散乱波検知手段は、前記圧縮波生成手段により生成された前記圧縮波の所定時間内における波数と前記送信信号の前記所定時間内における波数とに基づいて、前記多重散乱波の発生を検知する、
ことを特徴とする付記19に記載の多重散乱波検知装置。
(付記26)
前記多重散乱波検知手段は、前記圧縮波生成手段により生成された前記圧縮波の間隔と前記送信信号の変調周期とに基づいて、前記多重散乱波の発生を検知する、
ことを特徴とする付記25に記載の多重散乱波検知装置。
(付記27)
前記送信信号は、パルス振幅変調信号に拡散符号を乗算した直接拡散符号変調信号であり、
前記受信手段により受信された前記受信信号に対して、変調時に用いた前記拡散符号を乗算する逆拡散処理を行い、逆拡散波を生成する逆拡散波生成手段を、更に、備え、
前記多重散乱波検知手段は、前記逆拡散波生成手段により生成された前記逆拡散波の所定時間内における波数と前記送信信号の前記所定時間内における波数とに基づいて、前記多重散乱波の発生を検知する、
ことを特徴とする付記19に記載の多重散乱波検知装置。
(付記28)
前記多重散乱波検知手段は、前記逆拡散波生成手段により生成された前記逆拡散波の間隔と前記送信信号の変調周期とに基づいて、前記多重散乱波の発生を検知する、
ことを特徴とする付記27に記載の多重散乱波検知装置。
(付記29)
前記送信信号は、一変調周期毎に相異なる拡散符号をパルス振幅変調信号に乗算した直接拡散符号変調信号であり、
前記受信手段により受信された前記受信信号に対して、変調時に用いた前記拡散符号をそれぞれ乗算する逆拡散処理を行い、前記拡散符号にそれぞれ対応する逆拡散波を生成する逆拡散波生成手段を、更に、備え、
前記多重散乱波検知手段は、前記逆拡散波生成手段により生成された前記逆拡散波の波数に基づいて、前記多重散乱波の発生を検知する、
を備える、
ことを特徴とする付記19に記載の多重散乱波検知装置。
(付記30)
レーダ反射断面積測定装置のコンピュータに、
送信信号を生成し、
生成した前記送信信号を散乱体に照射し、
前記送信信号を照射することで前記散乱体から発生する散乱波に対応する受信信号を受信し、
受信した前記受信信号に基づいて、多重散乱波が発生しているか否かを判定し、
前記多重散乱波が発生していると判定した場合に、前記受信信号から各散乱波に対応する信号を分離し、
分離した各散乱波に対応する前記信号に対して、それぞれ、遠方界の信号に変換する近傍界・遠方界変換を行った後に、各信号を合成する、
処理を実行させるプログラムを記憶した記録媒体。