JP2015175837A - ピペットチップ用板状部材、ピペットチップ、液体撹拌用キット及び液体撹拌装置 - Google Patents

ピペットチップ用板状部材、ピペットチップ、液体撹拌用キット及び液体撹拌装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ピペットによって容器へ注入される液体を撹拌するための部材を提供する。【解決手段】第1の面に設けられたピペットチップ挿入孔と、前記第1の面の背面である第2の面に設けられ、前記ピペットチップ挿入孔と連通する一又は複数の連通孔と、前記ピペットチップ挿入孔へ挿入されたピペットチップから吐出された液体を前記第2の面側から前記第1の面側へ通流させる1又は複数の通流部と、を有するピペットチップ用板状部材を提供する。【選択図】図2

Description

本技術は、ピペットチップ用板状部材、ピペットチップ、液体撹拌用キット及び液体撹拌装置に関する。より詳しくは、ピペット操作によって液体を撹拌する技術に関する。
生化学等の分野では、一般に、溶液や液体試料の分注のために各種ピペットが用いられており、液体と接触する部分に交換式の部品を用いるタイプのものもある。この交換式の部品は「ピペットチップ」と呼ばれている。このようなピペットを用いて液体を分注する際には、ピペットチップから吐出された液体を再びピペットチップ内に吸引し、吸引と吐出を繰り返すことによって液体を撹拌することも行われている。しかし、このようなピペットによる吸引と吐出の単純な繰り返しでは、液体の撹拌が不十分な場合もあった。
上記の撹拌が不十分であるとの問題に対しては、例えば、特許文献1に、「二種類の異なる液体を撹拌し、混合液を得る工程を含む液体混合方法であって、第一液を含有する容器に第二液を供給した後、液体を全量吸引せず、吸引時にピペットチップの先端部に空気を導入し、吐出時に気泡を発生させ、吸引及び吐出の繰り返しにより撹拌を行うことを特徴とする、前記方法」が開示されている。当該方法では、液体の吸引時にピペットチップの先端部に空気を導入し、吐出時に気泡を発生させて吐出液により気泡を揺動させ、吸引及び吐出を繰り返すことで撹拌を効率的に行うことができる。
特開2011−107089号公報
上記特許文献1に記載されている液体混合方法によって、液体をより効果的に撹拌することができる。しかし、上記特許文献1に記載の方法でも、液体を十分な撹拌状態とするためには、従来行われている吸引と吐出を繰り返すことが必須である。このため、液体の撹拌をより簡便に行うことが求められている。
そこで、本開示は、ピペットによって容器へ注入される液体を撹拌するための部材を提供することを主な目的とする。
上記課題解決のため、本開示は、第1の面に設けられたピペットチップ挿入孔と、前記第1の面の背面である第2の面に設けられ、前記ピペットチップ挿入孔と連通する一又は複数の連通孔と、前記ピペットチップ挿入孔へ挿入されたピペットチップから吐出された液体を前記第2の面側から前記第1の面側へ通流させる1又は複数の通流部と、を有するピペットチップ用板状部材を提供する。
前記ピペットチップ挿入孔は前記連通孔を介して前記第2の面側へ貫通していてもよい。
また、前記ピペットチップ挿入孔は平面視において中心に設けられていてもよく、前記通流部は貫通孔とすることもできる。
さらに、前記ピペットチップ用板状部材の広がり方向において端部が多角形状、円形状又は多角形と円形とを組み合わせた形状に切り欠かれていてもよい。
前記液体は、細胞、タンパク質、多糖類、アルコール類、界面活性剤及び合成ポリマーから選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよく、前記液体を生体試料とすることもできる。
本開示はまた、前記ピペットチップ用板状部材を備えるピペットチップを提供する。
前記ピペットチップ挿入孔の内径は、前記ピペットチップが挿入された状態において前記ピペットチップの先端が前記連通孔から突出する大きさに形成されていてもよく、前記ピペットチップ用板状部材と前記ピペットチップとは一体成形されていてもよい。
本開示はさらに、前記ピペットチップ用板状部材と、前記ピペットチップから吐出された液体が収容される容器と、を備える液体撹拌用キットを提供する。
前記ピペットチップ用板状部材は前記容器の前記液体が収容される空間の断面と相似形の断面を有していてもよい。
本開示は、この他、前記ピペットチップ用板状部材と、前記ピペットチップ挿入孔へ挿入されるピペットチップと、前記ピペットチップから吐出された液体を収容する容器と、前記ピペットチップからの前記液体の吐出を制御するピペット制御部と、を有する液体撹拌装置を提供する。
上記液体撹拌装置は、前記ピペットチップと前記容器との垂直方向における相対位置を変化させる駆動機構を有していてもよい。
本開示により、ピペットによって容器へ注入される液体を撹拌するための部材等が提供される。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載された何れかの効果であってもよい。
本開示の第1実施形態に係る液体撹拌装置の一例を示す模式図である。 図1に示すピペットチップ及びピペットチップ用板状部材の斜視図である。 Aは、ピペットチップ及びピペットチップ用板状部材の平面図であり、BはAのP−P線による断面図であり、Cは、ピペットチップ及びピペットチップ用板状部材が一体成形されている場合の断面図である。 A〜Dは、ピペットチップ及びピペットチップ用板状部材の構成例を示す断面模式図である。 A〜Cは、ピペットチップ用板状部材の構成例を示す平面模式図である。 A及びBは、ピペットチップ用板状部材の構成例を示す平面模式図である。 A〜Cは、ピペットチップ用板状部材の構成例を示す平面模式図である。 Aは、ピペットチップ用板状部材の平面図であり、BはAのQ1−Q1線による断面図であり、Cは容器の平面図であり、DはCのQ2−Q2線による断面図である。 A〜Dは、液体撹拌装置による液体の撹拌の概要を示す図である。 本開示の第2実施形態に係る液体撹拌装置の一例を示す模式図である。
以下、本開示を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本開示の代表的な実施形態を示したものであり、これにより本開示の範囲が狭く解釈されることはない。
(1)第1実施形態
図1に、本開示の第1実施形態に係る液体撹拌装置の一例を模式的に示す。図1に示すように、液体撹拌装置D1は、ピペットチップ用板状部材1(以下、単に板状部材1とも称する)と、ピペットチップ板状部材1に設けられたピペットチップ挿入孔13へ挿入されるピペットチップ2と、ピペットチップ2から吐出された液体を収容する容器3と、ピペットチップ2からの液体の吐出を制御するピペット制御部4と、を有する。以下、液体撹拌装置A1の各構成について、図1〜8を参照しながら説明する。
<ピペットチップ用板状部材>
板状部材1は、後述する液体撹拌装置D1による撹拌動作において、容器3内の液体の流動する速度を不均一にして撹拌をより効果的に行うための構成である。図2は、板状部材1を備えたピペットチップ2の、板状部材1の第1の面11側からの斜視図である。また、図2は、ピペットチップ2がピペットチップ挿入孔13に挿入された状態を示している。
図3Aは、ピペットチップ2及び板状部材1の平面図である。また、図3Bは、図3AのP−P線による断面図である。図2及び図3Aに示すように、板状部材1は、第1の面11に設けられたピペットチップ挿入孔13と、第1の面11の背面である第2の面12に設けられ、ピペットチップ挿入孔13と連通する一又は複数の連通孔14と、ピペットチップ挿入孔13へ挿入されたピペットチップ2から吐出された液体を第2の面12側から第1の面11側へ通流させる1又は複数の通流部15と、を有する。また、図3Bに示す板状部材1では、ピペットチップ挿入孔13は連通孔14を介して第2の面12側へ貫通している。また、ピペットチップ2は、ピペットチップ挿入孔13に挿入された状態で、ピペットチップ先端21が、第2の面12から突出している。
図3Bに示す板状部材1及びピペットチップ2は、各々、別体として形成されている。一方、液体撹拌装置D1において、板状部材1とピペットチップ2とは一体成形されていてもよい(図3C参照)。板状部材1とピペットチップ2とを一体成形品とすることにより、板状部材1のピペットチップ挿入孔13へピペットチップ2を挿入する作業を省略することができるため、作業性が向上する。また、板状部材1をピペットチップ2へ装着する際に、誤ってピペットチップ先端21に触れるなどして、ピペットチップ先端21が汚染されてしまうことを防ぐことができる。
ピペットチップ挿入孔13は、液体が吐出するピペットチップ2のピペットチップ先端21を挿入できるように形成され、かつ、連通孔14と連通していればよく、図3A〜Cに示す形状には限定されない。例えば、図4Aに示すように、ピペットチップ挿入孔13は、ピペットチップ先端21を挿入した状態で、ピペットチップ先端21が第2の面12側に突出しない大きさに形成されていてもよい。また、図4Bに示すように、ピペットチップ挿入孔13と連通孔14との連通部分には屈曲部分が設けられていてもよい。この他、当該連通部分には、湾曲部分が設けられていてもよい。さらに、図4Cに示すように、上記連通部分は、分岐部分を有していてもよい。また、液体撹拌装置D1において、板状部材1は、少なくとも一つがピペットチップ2に装着されていれば、後述する撹拌動作における効果は発揮されるが、例えば図4Dに示すように、板状部材1がピペットチップ2に複数装着されていてもよく、その数は限定されない。
図5A〜Cは、板状部材1の構成例を示す平面模式図である。ピペットチップ挿入孔13は、第1の面11において、いずれの位置に設けることもできるが、ピペットチップ挿入孔13は平面視において板所部材1の中心に設けられていることが好ましい。板状部材1の中心に設けられることにより、後述する液体の撹拌動作において、より均一に液体を撹拌することができる。
図5Aに示すように、板状部材1は、平面視において円形であってもよいが、その形状は後述する液体の撹拌するための動作が可能な形状であれば、その形状は限定されない。例えば、板状部材11は、平面視正方形(図5B参照)のように多角形であってもよい。また、平面視において、多角形と円形とを組み合わせた形状であってもよい(図5C参照)。
図6A及び図6Bは、板状部材1の構成例を示す平面模式図である。図5A〜Cに示すように板状部材1に設けられる通流部15の開口部分の形状は、平面視において円形であってもよいが、その形状は後述する液体を撹拌するための動作が可能な形状であれば、その形状は限定されない。例えば、図6A及び図6Bに示すように、連通部15は平面視視矩形であってもよく、また、湾曲した形状であってもよい。さらに、連通部15の開口部分は、第1の面11側と第2の面12側の各々で、形状が異なっていてもよい。
また、通流部15は、ピペットチップ2から吐出された液体を第2の面12側から第1の面11側へ通流させることが可能であれば、その形状は限定されないが、通流部15は貫通孔であってもよい(図3B、再度参照)。通流部15を貫通孔として形成する場合、通流部15が分岐した形状に比べて、簡便に板状部材1を作製することができる。
図7A〜Cは、板状部材1の構成例を示す平面模式図である。図7A〜Cに示すように、板状部材1には、板状部材1の広がり方向において端部16が多角形状、円形状又は多角形と円形とを組み合わせた形状に切り欠かれていてもよい。板状部材1にこれらの切り欠かれた部分を設けることにより、板状部材1において、ピペットチップ2から吐出された液体を第2の面12側から第1の面11側へ通流させることが可能となる。即ち、これらの切り欠かれている部分は、通流部15とすることができる。なお、板状部材1に貫通孔と切欠かれている部分の両方を設けることもできる。
板状部材1の大きさについては、後述する液体の撹拌動作において、容器3内の液体が収容される空間に出し入れでき、撹拌動作を妨げない範囲において適宜設計することができる。また、板状部材1は、容器3の液体が収容される空間の断面と相似形の断面を有することが好ましい。板状部材1の断面とは、例えば、図8Aに示す板状部材1では、Q1−Q1線で示す断面(図8B参照)である。また、例えば、板状部材1の厚さ方向に垂直な断面である。液体が収容される空間の断面とは、例えば、図8Cに示す容器3では、Q2−Q2線で示す断面(図8D参照)である。また、例えば、容器底面31に平行な断面であり、若しくは容器3の高さ方向に垂直な断面である。液体が収容される空間の断面と相似形の断面を板状部材1が有することにより、後述する液体の撹拌動作において、液体全体に対して均一に撹拌を行うことができる。
板状部材1の材質については、撹拌する液体の性質に合わせて、公知の材料の中から適宜選択することができる。材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリサルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等のポリマーやコポリマー、ブレンドポリマーなどが挙げられる。また、複数種類の材料からなる板材を貼り合わせて板状部材1としてもよい。この他、メッシュ状の板材を板状部材1に用いてもよい。この場合、メッシュ状の網目構造を通流部15とすることができる。さらに、板状部材1に対しては、例えば、液体に含まれる物質の吸着を低減するなどの目的のために表面処理等が施されていてもよい。また、板状部材1は液体と接触する部材であるため、使い捨て(ディスポーザブルユーズ)としてもよい。
<ピペットチップ>
ピペットチップ2は、液体撹拌装置D1において、任意の容量の液体を一定期間収容した後、容器3へ吐出するための構成である。第1実施形態に係る液体撹拌装置D1において、ピペットチップ2は、板状部材1を装着してピペット制御部4に接続でき、後述する液体の撹拌動作において、容器3内に挿入されてピペットチップ先端21から液体を吐出可能に構成されていれば、その形状や材質は限定されない。ピペットチップ2については、従来公知のピペットチップから、撹拌する液体の性質や容器3の大きさ等に合わせて、適宜選択することもできる。ピペットチップ3の材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリサルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等のポリマーやコポリマー、ブレンドポリマーなどが挙げられる。また、ピペットチップ2についても、公知のピペットチップと同様に、使い捨て(ディスポーザブルユーズ)とすることができる。
<容器>
容器3は、液体撹拌装置D1において、後述する撹拌動作の際に液体を収容するための空間Eを有する。容器3は、撹拌動作において、板状部材1が装着されたピペットチップ2を空間Eへ出し入れでき、後述する撹拌の効果が奏されるように構成されていれば、その形状は限定されない。また、容器3の材質についても、撹拌する液体の性質等に合わせて公知の材料の中から、適宜選択することができる。容器3の材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリサルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等のポリマーやコポリマー、ブレンドポリマーなどが挙げられる。容器3は、板状部材1及びピペットチップ2と同様に、使い捨て(ディスポーザブルユーズ)とすることもできる。
上述した板状部材1及び容器3については、板状部材1と、ピペットチップ2から吐出された液体が収容される容器3と、を備える液体撹拌用キットとしてもよい。また、板状部材1と、ピペットチップ2と、容器3と、を備える液体撹拌用キットとしてもよい。
容器3には、ピペットチップ2から吐出される液体に混合する試薬や試料が備えられていてもよい。また、試薬や試料は、後述する液体の撹拌動作が妨げられない限り、いずれの形状及び容量とすることができる。例えば、固相状の試薬が容器3に備えられていてもよい。
容器3には、液体の撹拌動作が妨げられない限り、液体の保存、液体の処理、液体の解析等に用いられる部材が備えられていてもよい。部材としては、例えば、蓋、フィルタ、電極などが挙げられる。
液体は、ピペットチップ2から吐出可能であり、撹拌動作が可能なものであれば、その組成は限定されない。液体撹拌装置D1は、後述する理由により、例えば、細胞、タンパク質、多糖類、アルコール類、界面活性剤及び合成ポリマーから選ばれる少なくとも一種を含む液体に好適である。また、液体は生体試料とすることもできる。生体試料としては、例えば、全血、血漿、血清、脳脊髄液、尿、精液、唾液等の体液が挙げられる。
上述した成分を含む液体は、撹拌の際、高いせん断力を発生させることが好ましくない場合もある。例えば、生体試料には、細胞やタンパク質等が含まれる。タンパク質は、高いせん断力の影響により活性が変化するおそれがある。また、高いせん断力は細胞へダメージを与えたり、細胞の性質を変化させたりするおそれがある。この他、多糖類、アルコール類及び合成ポリマーなどについても、これらの重合体が高いせん断力によって切断されてしまうおそれがある。また、ミセル状の界面活性剤についても同様である。
<ピペット制御部>
ピペット制御部4は、前述したピペットチップ2からの液体の吐出を制御するための構成である。ピペット制御部4は、任意の量の液体を、ピペットチップ2を介して容器3へ吐出することが可能であれば、その構成は制限されない。ピペット制御部4の構成は、公知のピペッターや液体分注装置等の構成から、適宜設計することができる。例えば、ピペット制御部4は、チップ接続部位、プランジャー、CPU等を備え、プランジャーの移動量をCPUが制御することにより、チップ接続部位に接続したピペットチップ2から任意の容量の液体を吐出させてもよい。また、任意のせん断力を超えないように液体を撹拌するためには、ピペット制御部4は、ピペットチップ2からの液体の吐出速度を制御するための構成を有していることが好ましい。この場合、例えば、CPUがプランジャーの移動速度を制御することにより行うこともできる。なお、ピペットチップ2から吐出される液体は、液体撹拌装置D1に備えられたタンク等から供給されたものでもよい。また、サンプルチューブ等に保持された液体内へピペットチップ2を導入して、当該液体を吸引してもよい(図1において、タンク及びサンプルチューブは不図示)。
(2)液体の撹拌方法
以下、本開示に係る液体の撹拌方法について図9を参照して説明する。即ち、上述した液体撹拌装置D1による液体の撹拌動作について説明する。
図9Aは、ピペットチップ2から液体が吐出されている状態を示す。ピペットチップ2から液体が吐出されると(矢印F1参照)、容器3内の空間Eに液体が溜まり、液面は上昇していく。
図9Bは、容器3内において、ピペットチップ2に装着された板状部材1を超える高さまで液面が上昇した状態を示す。図9Bに示すように、ピペットチップ2から吐出された液体は、一度、容器の下方へ流動した後に上方へ流動し(矢印F2参照)、板状部材1に接するまで、均一に上昇していく。
板状部材1の第2の面12に達したとき、液体の一部は、通流部15を通流するため、上方への流れを妨げられることなく、第1の面11側へ達する(矢印F3参照)。一方、板状部材1に上方への流れを妨げられた部分では、上昇速度が抑えられる。この結果、均一であった液体の上昇速度について、速度の早い部分と遅い部分が生じる。この液体の上昇速度の不均一さはエントレインメント効果をもたらし、液体の撹拌が促進される。
上述した板状部材1については、ピペットチップ挿入孔13が、連通孔14を介して第2の面12側へ貫通していることが好ましい。さらに、ピペットチップ挿入孔13の内径は、ピペットチップ2が挿入された状態においてピペットチップ2の先端(ピペットチップ先端21)が連通孔14から突出する大きさに形成されていることが好ましい(図3B再度参照)。板状部材1及びピペットチップ2がこのような構成となることによって、液体を板状部材1からより離れた位置に吐出させることができ、第2の面12における液体の速度の不均一さがより生じやすくなる(図9B参照)。
図9Cは、ピペットチップ2からの液体の吐出が完了した状態を示す。ピペットチップ2を矢印X1で示す方向に引き上げると、板状部材1の第1の面11側にある液体は、重力により第2の面12側へ移動する(矢印F4参照)。このとき、第2の面12側から第1の面11側へ液体が移動する場合と同様に、液体の移動速度が板状部材1によって不均一となり、エントレインメント効果がもたらされる。この結果、液体の撹拌が促進される。ピペットチップ2の引き上げが完了して、液体の撹拌動作も完了する(図9D参照)。なお、上述した液体の撹拌動作は、板状部材1を備えるピペットチップ2を手動用ピペッター等に接続して、ユーザーが手動で行うこともできる。
図9A〜Dに示す液体の撹拌方法では、液体の吐出を1回行う場合を例示しているが、液体の撹拌をより効果的に行うために、液体の吐出と吸引を複数回繰り返してもよい。また、同様の理由により、液体を吐出した後にピペットチップ2の引き上げと押し下げを複数回繰り返してもよい。なお、引き上げられた板状部材1は、容器3に収容される液体に対する次の工程を妨げない限り、容器3内に残っていてもよい。次の工程としては、例えば、液体の解析などが挙げられる。
図9Aに示すピペットチップ2からの液体の吐出速度については、各種液体のせん断応力限界を超えない範囲に定めることにより、撹拌動作において液体に与えられる好ましくない影響を低減することができる。ピペットチップ先端21の開口から吐出される液体のせん断力は容器3の壁面で発生し、吐出流動が層流条件となるのであれば、ピペットチップ2から吐出される液体の限界平均流速は下記数式(1)で求めることもできる。
Figure 2015175837
また、ピペットチップ2から吐出された液体は、板状部材1に設けられた通流部15のいずれかを通過するため、通流部15における平均流速は、下記数式(2)で求めることができる。なお、通流部15の開口が、平面視楕円等、真円でない場合には、同じ面積となる真円の直径を通流部15の直径Dとすることができる。
Figure 2015175837
ここで、板状部材1を液体が通過する際にも液体のせん断応力限界を超えないようにする必要がある。従って、通流部15の通過時の液体の限界平均流速は、例えば、下記数式(3)で求めることもできる。
Figure 2015175837
液体の撹拌動作において、ピペットチップ2からの吐出時と板状部材1の通過時の両方で最大のエントレインメント効果を得るためには、上記数式(1)〜(3)を満たすように、ピペットチップ先端21の開口と通流部15を設ければよい。従って、ピペットチップ先端21の開口と通流部15との関係は、下記数式(4)となる。
Figure 2015175837
上述した第1実施形態に係る液体撹拌装置では、ピペットチップに板状部材を備えることにより、液体の撹拌をより効率的に行うことができる。このため、従来のピペットチップへの吸引とピペットチップからの吐出を繰り返す方法に比べて、短時間で液体を十分に撹拌することができる。例えば、混合の開始直後に反応が開始してしまう試料と試薬等を混合する場合、撹拌に時間を要すると、液体の一部では反応が開始され、一部では反応が開始されないといったむらが生じてしまう。このようなむらは、試料の解析等においては、精度の低下を招くおそれがある。また、例えば、十分な混合状態になるまで撹拌した後に解析等を行うと、反応開始直後の状態の解析を困難にしてしまう。このような試料と試薬等の混合に対しても、本開示に係る液体撹拌装置は効率的に撹拌を行うことができるため、好適に用いられ得る。
また、粘性のある液体を撹拌する場合、従来の吸引と吐出を繰り返す方法では、十分な混合状態にするまで長い時間がかかってしまったり、十分に撹拌されない場合もあった。第1実施形態に係る液体撹拌装置では、板状部材を用いることによって、粘度を有する液体についても十分な混合状態まで撹拌することができる。
液体を撹拌する場合、例えば、ノズル径を小さくした吹き出し口から液体を吐出させて、液体の流速を上げることによって撹拌の効率を上げることもできる。しかし、このような場合には、せん断力が高くなってしまう。一方、第1実施形態に係る液体撹拌装置では、板状部材によって液体の流速にばらつきを生じさせて液体を撹拌するため、液体に加わるせん断力を抑えながら効率的に撹拌することができる。このため、本開示に係る液体撹拌装置は、撹拌の際に生じるせん断力を抑えることが好ましい液体の撹拌に、好適に用いられ得る。
(3)第2実施形態
図10は、本開示の第2実施形態に係る液体撹拌装置の一例を示す模式図である。図10中、符号D2で示す液体撹拌装置は、ピペットチップ2と容器3との垂直方向における相対位置を変化させる駆動機構5(5a,5b)を有する。なお、第1実施形態に係る液体撹拌装置D1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
駆動機構5(5a,5b)は、ピペットチップ2と容器3との垂直方向における相対位置を変化させることが可能であれば、その構成は限定されない。駆動機構5(5a,5b)は、公知の液体分注装置等の構成から適宜設計できる。駆動機構5は、例えば、矢印X2で示すように、ピペットチップ2の垂直方向における位置を変化させる構成(5a)であってもよい。また、矢印X3で示すように容器3の垂直方向における位置を変化させる構成(5b)であってもよい。なお、液体撹拌装置D2では、ピペットチップ2と容器3の両方に対する駆動機構5a,5bが各々備えられていてよい。
第2実施形態に係る液体撹拌装置では、ピペットチップと容器との垂直方向における相対位置を変化させる駆動機構を備えることにより、任意の速度で、板状部材を容器から引き上げることができる。このため、板状部材による撹拌動作後の液体の状態が複数の液体試料等の間でより均一になり、撹拌後の液体の解析などをより精度高く行うことができる。第2実施形態に係る液体撹拌装置の他の効果は、上述した第1実施形態に係る液体撹拌装置と同様である。
なお、上記に記載された効果はあくまで例示であって、限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。
本開示は、以下のような構成もとることができる。
(1)第1の面に設けられたピペットチップ挿入孔と、前記第1の面の背面である第2の面に設けられ、前記ピペットチップ挿入孔と連通する一又は複数の連通孔と、前記ピペットチップ挿入孔へ挿入されたピペットチップから吐出された液体を前記第2の面側から前記第1の面側へ通流させる1又は複数の通流部と、を有するピペットチップ用板状部材。
(2)前記ピペットチップ挿入孔は前記連通孔を介して前記第2の面側へ貫通している上記(1)に記載のピペットチップ用板状部材。
(3)前記ピペットチップ挿入孔は平面視において中心に設けられている上記(1)又は(2)に記載のピペットチップ用板状部材。
(4)前記通流部は貫通孔である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のピペットチップ用板状部材。
(5)前記ピペットチップ用板状部材の広がり方向において端部が多角形状、円形状又は多角形と円形とを組み合わせた形状に切り欠かれている上記(1)〜(4)のいずれかに記載のピペットチップ用板状部材。
(6)前記液体は、細胞、タンパク質、多糖類、アルコール類、界面活性剤及び合成ポリマーから選ばれる少なくとも一種を含む上記(1)〜(5)の何れかに記載のピペットチップ用板状部材。
(7)前記液体は生体試料である上記(6)に記載のピペットチップ用板状部材。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のピペットチップ用板状部材を備えるピペットチップ。
(9)前記ピペットチップ挿入孔の内径は、前記ピペットチップが挿入された状態において前記ピペットチップの先端が前記連通孔から突出する大きさに形成されている上記(8)に記載のピペットチップ。
(10)前記ピペットチップ用板状部材と前記ピペットチップとは一体成形されている上記(8)又は(9)に記載のピペットチップ。
(11)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のピペットチップ用板状部材と、前記ピペットチップから吐出された液体が収容される容器と、を備える液体撹拌用キット。
(12)前記ピペットチップ用板状部材は前記容器の前記液体が収容される空間の断面と相似形の断面を有する上記(11)に記載の液体撹拌用キット。
(13)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のピペットチップ用板状部材と、前記ピペットチップ挿入孔へ挿入されるピペットチップと、前記ピペットチップから吐出された液体を収容する容器と、前記ピペットチップからの前記液体の吐出を制御するピペット制御部と、を有する液体撹拌装置。
(14)前記ピペットチップと前記容器との垂直方向における相対位置を変化させる駆動機構を有する上記(13)に記載の液体撹拌装置。
D1,D2:液体撹拌装置
1:ピペットチップ用板状部材(板状部材)
11:第1の面
12:第2の面
13:ピペットチップ挿入孔
14:連通孔
15:通流部
16:端部
2:ピペットチップ
21:ピペットチップ先端
3:容器
31:容器底面
4:ピペット制御部
5,5a,5b:駆動機構

Claims (14)

  1. 第1の面に設けられたピペットチップ挿入孔と、
    前記第1の面の背面である第2の面に設けられ、前記ピペットチップ挿入孔と連通する一又は複数の連通孔と、
    前記ピペットチップ挿入孔へ挿入されたピペットチップから吐出された液体を前記第2の面側から前記第1の面側へ通流させる1又は複数の通流部と、を有する
    ピペットチップ用板状部材。
  2. 前記ピペットチップ挿入孔は前記連通孔を介して前記第2の面側へ貫通している
    請求項1に記載のピペットチップ用板状部材。
  3. 前記ピペットチップ挿入孔は平面視において中心に設けられている
    請求項1に記載のピペットチップ用板状部材。
  4. 前記通流部は貫通孔である
    請求項1に記載のピペットチップ用板状部材。
  5. 前記ピペットチップ用板状部材の広がり方向において端部が多角形状、円形状又は多角形と円形とを組み合わせた形状に切り欠かれている
    請求項1に記載のピペットチップ用板状部材。
  6. 前記液体は、細胞、タンパク質、多糖類、アルコール類、界面活性剤及び合成ポリマーから選ばれる少なくとも一種を含む
    請求項1に記載のピペットチップ用板状部材。
  7. 前記液体は生体試料である
    請求項6に記載のピペットチップ用板状部材。
  8. 請求項1に記載のピペットチップ用板状部材を備えるピペットチップ。
  9. 前記ピペットチップ挿入孔の内径は、前記ピペットチップが挿入された状態において前記ピペットチップの先端が前記連通孔から突出する大きさに形成されている
    請求項8に記載のピペットチップ。
  10. 前記ピペットチップ用板状部材と前記ピペットチップとは一体成形されている
    請求項8に記載のピペットチップ。
  11. 請求項1に記載のピペットチップ用板状部材と、
    前記ピペットチップから吐出された液体が収容される容器と、を備える
    液体撹拌用キット。
  12. 前記ピペットチップ用板状部材は前記容器の前記液体が収容される空間の断面と相似形の断面を有する
    請求項11に記載の液体撹拌用キット。
  13. 請求項1に記載のピペットチップ用板状部材と、
    前記ピペットチップ挿入孔へ挿入されるピペットチップと、
    前記ピペットチップから吐出された液体を収容する容器と、
    前記ピペットチップからの前記液体の吐出を制御するピペット制御部と、を有する
    液体撹拌装置。
  14. 前記ピペットチップと前記容器との垂直方向における相対位置を変化させる駆動機構を有する
    請求項13に記載の液体撹拌装置。
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