JP2015172266A - ポリビニルアルコール延伸物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】無機充填材を配合することなく実質的にポリビニルアルコールのみからなる、高ヤング率のポリビニルアルコール延伸物の提供。
【解決手段】ポリビニルアルコールを含有する水溶液を凍結解凍してポリビニルアルコールゲルを作製する工程、得られたポリビニルアルコールゲルの水分量を調整した後に延伸する工程、延伸したポリビニルアルコールゲルを乾燥する工程、および乾燥したポリビニルアルコールゲルを熱処理する工程を含む、ヤング率が120GPa以上のポリビニルアルコール延伸物の製造方法の提供。更に、最大応力が3.0GPa以上のポリビニールアルコール延伸物。
【選択図】図1
【解決手段】ポリビニルアルコールを含有する水溶液を凍結解凍してポリビニルアルコールゲルを作製する工程、得られたポリビニルアルコールゲルの水分量を調整した後に延伸する工程、延伸したポリビニルアルコールゲルを乾燥する工程、および乾燥したポリビニルアルコールゲルを熱処理する工程を含む、ヤング率が120GPa以上のポリビニルアルコール延伸物の製造方法の提供。更に、最大応力が3.0GPa以上のポリビニールアルコール延伸物。
【選択図】図1
Description
本発明は、フィルムおよび繊維として広く使用されているポリビニルアルコール延伸物およびその製造方法に関する。
力学特性に優れたポリビニルアルコールを得る方法として、ポリビニルアルコールゲルを延伸する方法が知られている。
非特許文献1では、水/有機溶媒の混合溶媒のポリビニルアルコール溶液をキャストしたゲルフィルムを作製し、水/DMSO=2/8の溶液を用いて48倍に延伸して最大応力2.8GPa、ヤング率60GPaを示すフィルムが得られている。また、特許文献1では、ヨウ素およびヨウ化物塩を含むポリビニルアルコール水溶液をノズルを通して冷却相へ押し出すことによってゲル繊維を作製し、28倍に延伸して最大応力1.9GPa、ヤング率40GPaを示す繊維が得られている。さらに、非特許文献2では、ポリビニルアルコール水溶液を凍結解凍後、延伸および熱処理を行ってゲルフィルムを作製し、8倍に延伸して最大応力2.5GPaのフィルムが得られている。加えて、非特許文献3では、延伸フィルムを作製し、動的粘弾性測定によるヤング率115GPaのフィルムが得られている。
このように、これまで報告されたポリビニルアルコールの最大の最大応力は2.8GPa、ヤング率は115GPaにすぎない。
筏 義人、「PVAのゲル紡糸」、化繊講演集、1990年、第47集、p.55−63
福森大志、中沖隆彦、「凍結解凍法により最大応力が2.5GPaを超える高強度延伸ポリビニルアルコールフィルムの作製」、高分子討論会、1G12、2013年9月11〜13日
T.Kunugi,et al, Journal of Applied Polymer Science, Vol.30,2101−2112(1990).
本発明は、無機充填材を配合することなく実質的にポリビニルアルコールのみからなる、高ヤング率のポリビニルアルコール延伸物を得ることを目的とする。
本発明者らは、ポリビニルアルコール延伸物の高ヤング率化について鋭意検討した結果、凍結解凍後のポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する場合がある。)ゲル中に含まれている水分量を変化させて延伸を行ったところ、PVAゲルの水分量によって延伸倍率を特異的に上昇させることができ、その結果、120GPaを超えるPVA延伸物を得ることができた。
すなわち、本発明は、ヤング率が120GPa以上のポリビニルアルコール延伸物に関する。
前記ポリビニルアルコール延伸物において、最大応力が3.0GPa以上であることが好ましい。
前記ポリビニルアルコール延伸物において、延伸物の形態は繊維またはフィルムであることが好ましい。
また、本発明は、ポリビニルアルコールを含有する水溶液を凍結解凍してポリビニルアルコールゲルを作製する工程、得られたポリビニルアルコールゲルの水分量を調整した後に延伸する工程、延伸したポリビニルアルコールゲルを乾燥する工程、および乾燥したポリビニルアルコールゲルを熱処理する工程を含む、前記ポリビニルアルコール延伸物の製造方法に関する。
前記製造方法における延伸工程において、延伸工程前のポリビニルアルコールゲルに含有される水分量を50〜88%に調整することが好ましい。
本発明のポリビニルアルコール延伸物は、無機充填材を配合することなく、120GPaを超え、高強度ポリエチレンのヤング率なみのヤング率を有しており、ポリエチレンの融点よりも高いため、耐熱性の問題でポリエチレンでは使用できない多くの用途に適用可能である。また、本発明のポリビニルアルコール延伸物の製造方法では、実質的にポリビニルアルコールのみからなる、120GPaを超えるヤング率を有するポリビニルアルコール延伸物を製造することができる。
本発明のPVA延伸物は、120GPa以上のヤング率を有する。PVA延伸物のヤング率は、好ましくは130GPa以上、より好ましくは140GPa以上である。本発明において、ヤング率は、応力ひずみ曲線において、最大応力になるひずみに達する間の、応力が10−30MPaを示す領域によって測定することができる。即ち、応力が10−30MPaを示す領域を一次関数で最小自乗近似し、得られた一次関数の傾きをヤング率とする。
また、PVA延伸物の最大応力は特に限定されないが、好ましくは3.0GPa以上、より好ましくは3.5GPa以上、さらに好ましくは4.0GPa以上である。PVA延伸物の最大応力は、最大の引張強度を意味する。本発明において、最大応力は、得られる応力ひずみ曲線において、もっとも高い値を示す応力として測定することができる。
また、PVA延伸物の最大応力は特に限定されないが、好ましくは3.0GPa以上、より好ましくは3.5GPa以上、さらに好ましくは4.0GPa以上である。PVA延伸物の最大応力は、最大の引張強度を意味する。本発明において、最大応力は、得られる応力ひずみ曲線において、もっとも高い値を示す応力として測定することができる。
本発明においてPVA延伸物とは、PVAゲルを延伸して得られた延伸物をいい、その形態はとくに限定されないが、繊維またはフィルムであることが好ましい。このような120GPa以上のヤング率を有するPVA延伸物は、以下に詳述する本発明のPVA延伸物の製造方法によって製造することができる。
本発明のPVA延伸物の製造方法は、PVAを含有する水溶液を凍結解凍してPVAゲルを作製する工程、得られたPVAゲルの水分量を調整した後に延伸する工程、延伸したポリビニルアルコールゲルを乾燥する工程、および乾燥したポリビニルアルコールゲルを熱処理する工程を含む。
PVAゲルの作製工程
PVAを水に溶解させてPVA水溶液を作製する。PVA水溶液を凍結解凍することにより、PVAゲルが作製される。凍結解凍して得られたPVAゲル自体は流動性を有しているために、フィルムや繊維などの形態に加工することができる。
PVAを水に溶解させてPVA水溶液を作製する。PVA水溶液を凍結解凍することにより、PVAゲルが作製される。凍結解凍して得られたPVAゲル自体は流動性を有しているために、フィルムや繊維などの形態に加工することができる。
使用するPVAは、ビニルエステル重合体のビニルエステル単位がけん化され、ビニルアルコール単位を主たる構成モノマーとして含む重合体をいう。けん化度は、好ましくは98.5モル%以上、より好ましくは99.0モル%以上である。98.5モル%未満では、フィルムの結晶化度が低く、十分な応力が得られなくなる傾向がある。PVAとしてはけん化度の異なる2種を混合して使用してもよい。
また、ビニルエステル重合体の構成モノマーはとくに限定されず、たとえば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等が挙げられる。これらの中でも、酢酸ビニルが好ましい。また、PVAはビニルアルコール単位を主成分とするものであるが、ビニルアルコール単位以外の他の単位が少量含まれていてもよい。他の単位を構成する単量体としては、たとえば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン系単量体、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルエーテル、アクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上を併用してもよい。
PVAの平均重合度は特に限定されないが、好ましくは1000〜3000、より好ましくは1500〜2000である。1000未満では、分子鎖が短すぎ、充分な機械特性を示さず、3000を超えると、分子鎖が長すぎ、充分に配向しなくなる傾向がある。
凍結解凍に使用するPVA水溶液の濃度は特に限定されないが、好ましくは3〜30重量%、より好ましくは5〜15重量%である。3重量%未満では、十分な強度が得られず、30重量%を超えると、分子鎖の絡み合いが起こり、結晶化度が低くなる傾向がある。
PVA水溶液を凍結解凍する条件は特に限定されない。凍結温度は、好ましくは−50〜0℃、より好ましくは−15〜0℃である。凍結時間は、好ましくは5〜300分、より好ましくは15〜60分である。一方、解凍温度は、好ましくは0〜30℃、より好ましくは20〜25℃である。0℃未満では、水溶液が解凍できない。30℃を超えると、結晶化度が十分高くならない傾向がある。解凍時間は、好ましくは20分〜20時間、より好ましくは30〜60分である。
これらの凍結解凍という一連の操作を1回以上行うことが必要であり、好ましくは3〜20回、より好ましくは7〜20回である。3回未満では、ゲル中の結晶化度が低くなる傾向がある。7回を超えると、結晶化度が一定となる傾向がある。
PVAゲルの水分量を調整した後に延伸する工程
PVAゲル中の水分量(以下、ゲル水分量という場合がある。)は、好ましくは50〜88%、より好ましくは60〜87%に調整される。50%未満では、ゲル中の結晶化度が低くなり延伸倍率が低くなり、88%を超えると、結晶化していないため、延伸ができなくなる傾向がある。ここで、PVAゲル中の水分量は、得られたPVAゲルに含有される水分量を所定範囲に調整することをいい、50〜88%であれば調整する必要がなく、50%未満では水分量を増大させ、88%を超える場合には水分量を低減させる。水分量を増大させる方法はとくに限定されず、水を添加すればよい。一方、水分量を低減させる方法もとくに限定されず、たとえば常温で乾燥させればよい。
PVAゲル中の水分量(以下、ゲル水分量という場合がある。)は、好ましくは50〜88%、より好ましくは60〜87%に調整される。50%未満では、ゲル中の結晶化度が低くなり延伸倍率が低くなり、88%を超えると、結晶化していないため、延伸ができなくなる傾向がある。ここで、PVAゲル中の水分量は、得られたPVAゲルに含有される水分量を所定範囲に調整することをいい、50〜88%であれば調整する必要がなく、50%未満では水分量を増大させ、88%を超える場合には水分量を低減させる。水分量を増大させる方法はとくに限定されず、水を添加すればよい。一方、水分量を低減させる方法もとくに限定されず、たとえば常温で乾燥させればよい。
PVAゲルの水分量の調整において、PVAゲルの形態は特に限定されず、ゲルそのものであっても、フィルムや繊維の形態であってもよい。ゲルそのもので調整した場合には、その後にフィルムや繊維などの延伸させやすい形態に加工する必要がある。
PVA延伸物としてフィルムを製造する場合、延伸方法は特に限定されず、例えば、一軸延伸、二軸延伸等が挙げられる。PVA延伸物として繊維を製造する場合、延伸方法は特に限定されず、例えば、湿式紡糸、乾式紡糸、ゲル紡糸等が挙げられる。また、延伸は一段延伸でも、二段延伸などの多段延伸であってもよい。延伸倍率はとくに限定されないが、好ましくは6倍以上、より好ましくは10倍以上である。
延伸したPVAゲルフィルムを乾燥する工程
乾燥方法としては、とくに限定されず、自然乾燥、熱風オーブンでの乾燥、真空乾燥機等が挙げられる。このようにして乾燥PVAゲルが得られる。PVAゲル中の残存水分量は、好ましくは2%以下である。
乾燥方法としては、とくに限定されず、自然乾燥、熱風オーブンでの乾燥、真空乾燥機等が挙げられる。このようにして乾燥PVAゲルが得られる。PVAゲル中の残存水分量は、好ましくは2%以下である。
PVAゲルフィルムを熱処理する工程
熱処理温度はとくに限定されないが、好ましくは100〜230℃、より好ましくは130〜150℃である。100℃未満では、結晶化が進行しなくなり、230℃を超えると、結晶の核が溶けてしまう傾向がある。熱処理時間もとくに限定されないが、好ましくは5〜120分、より好ましくは20〜60分である。熱処理を行うことにより、PVAゲルのヤング率および最大応力を向上させることができる。熱処理して得られたPVA延伸物は、PVAの折りたたみ鎖結晶を有するPVAの融点220℃と比較して、非常に高い融点230〜260℃を有しており、該高融点はPVAの伸び切り鎖結晶に由来するピークである。
熱処理温度はとくに限定されないが、好ましくは100〜230℃、より好ましくは130〜150℃である。100℃未満では、結晶化が進行しなくなり、230℃を超えると、結晶の核が溶けてしまう傾向がある。熱処理時間もとくに限定されないが、好ましくは5〜120分、より好ましくは20〜60分である。熱処理を行うことにより、PVAゲルのヤング率および最大応力を向上させることができる。熱処理して得られたPVA延伸物は、PVAの折りたたみ鎖結晶を有するPVAの融点220℃と比較して、非常に高い融点230〜260℃を有しており、該高融点はPVAの伸び切り鎖結晶に由来するピークである。
本発明のPVA延伸物は、これまでに報告された最大の力学特性を示す非特許文献3に開示されたPVAフィルム(ヤング率115GPa、最大応力2.8GPa)に比べて優れた力学特性を示す。高強度ポリエチレンの力学特性(ヤング率160GPa、最大応力4.8GPa)なみの力学特性を有している。ポリエチレンの融点と比較して、PVAの融点は非常に高いため、ポリエチレンを使用できないような用途に適用可能である。具体的な用途としては、たとえば、コンクリート補強材、ブレーキホース、ヘルメット補強材等が挙げられる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
実施例および比較例
[PVAゲルの作製工程]
PVAの粉末(クラレ株式会社製「クラレPVA−HC」、重合度1740、けん化度99.9モル%)を水に溶解し、10重量%PVA水溶液を調製した。このPVA水溶液を−25℃で15分間凍結、25℃で45分間解凍する凍結解凍サイクルを7回繰り返してPVAゲルを得た。凍結解凍終了後、水平保持したシャーレ中にPVAゲルを流延し、自然乾燥(ドラフト内に放置して水分を蒸発乾燥)する時間を調節して、PVAゲルの水分量を0〜100%の範囲に調節した試料を13個調製した。以下の実施例および図面において、PVAゲルの水分量は、水分量調整後のPVAゲルに含有される水分量を、10重量%PVA水溶液の凍結解凍により得られたPVAゲルに含有される水分量(PVAゲル重量の0.9倍)を100%としたときの相対比率(%)で表した水分残存率である。
[PVAゲルの作製工程]
PVAの粉末(クラレ株式会社製「クラレPVA−HC」、重合度1740、けん化度99.9モル%)を水に溶解し、10重量%PVA水溶液を調製した。このPVA水溶液を−25℃で15分間凍結、25℃で45分間解凍する凍結解凍サイクルを7回繰り返してPVAゲルを得た。凍結解凍終了後、水平保持したシャーレ中にPVAゲルを流延し、自然乾燥(ドラフト内に放置して水分を蒸発乾燥)する時間を調節して、PVAゲルの水分量を0〜100%の範囲に調節した試料を13個調製した。以下の実施例および図面において、PVAゲルの水分量は、水分量調整後のPVAゲルに含有される水分量を、10重量%PVA水溶液の凍結解凍により得られたPVAゲルに含有される水分量(PVAゲル重量の0.9倍)を100%としたときの相対比率(%)で表した水分残存率である。
[PVAゲルの延伸工程]
水分量が異なるPVAゲル(厚み25μm)を幅40mm、長さ80mmに切り出し、手動延伸機(株式会社井元製作所製)を用い、延伸速度10mm/分の延伸条件にて延伸を行い、延伸PVAゲルを得た。
水分量が異なるPVAゲル(厚み25μm)を幅40mm、長さ80mmに切り出し、手動延伸機(株式会社井元製作所製)を用い、延伸速度10mm/分の延伸条件にて延伸を行い、延伸PVAゲルを得た。
[PVAフィルムの乾燥工程および熱処理工程]
延伸したPVAゲルをドラフト内で1週間かけて自然乾燥させた。自然乾燥終了後、真空乾燥機を用いてさらに1日間乾燥を行い、十分に水分が除去された乾燥PVAフィルムを得た。続いて、乾燥PVAフィルムを130℃で30分間熱処理して、熱処理PVAフィルムを得た。
[引張試験の条件]
引張試験機は島津製作所社製オートグラフAGS−X型を用い、測定試験片は幅1mm、長さ50mmに裁断し、チャック間距離が30mmになるように装置に取り付けた。厚みは各試験片毎に計測した値を用いた。測定時の温度は室温とし、引張速度は3mm/分で行った。
延伸したPVAゲルをドラフト内で1週間かけて自然乾燥させた。自然乾燥終了後、真空乾燥機を用いてさらに1日間乾燥を行い、十分に水分が除去された乾燥PVAフィルムを得た。続いて、乾燥PVAフィルムを130℃で30分間熱処理して、熱処理PVAフィルムを得た。
[引張試験の条件]
引張試験機は島津製作所社製オートグラフAGS−X型を用い、測定試験片は幅1mm、長さ50mmに裁断し、チャック間距離が30mmになるように装置に取り付けた。厚みは各試験片毎に計測した値を用いた。測定時の温度は室温とし、引張速度は3mm/分で行った。
[PVAゲルの水分量と延伸倍率との関係]
水分量が異なる各PVAゲルを延伸した時の延伸倍率を測定し、PVAゲルの水分量と延伸倍率との関係を図1に示す。図1から、PVAゲルの水分量が100%を下回ると延伸倍率が急激に増加し、約90%で最大の13倍に達し、90%を下回ると60%まで急激に低下し、60%未満では漸減する傾向を示した。PVAゲルの水分量が90〜100%の場合の水分量と延伸倍率との関係を図2に示す。図2から、水分量が100%以下では、水分量の低下とともに、延伸倍率が増加しており、90%のところで最大の延伸倍率となった。このように、水分量調整前のPVAゲル(水分量100%)では延伸倍率が低いこと、延伸倍率を顕著に増加させるためには水分量を60〜96%(PVAゲル中の絶対水分量は54〜86.4%(=60×0.9〜96×0.9))に調整する必要があることが分かる。
水分量が異なる各PVAゲルを延伸した時の延伸倍率を測定し、PVAゲルの水分量と延伸倍率との関係を図1に示す。図1から、PVAゲルの水分量が100%を下回ると延伸倍率が急激に増加し、約90%で最大の13倍に達し、90%を下回ると60%まで急激に低下し、60%未満では漸減する傾向を示した。PVAゲルの水分量が90〜100%の場合の水分量と延伸倍率との関係を図2に示す。図2から、水分量が100%以下では、水分量の低下とともに、延伸倍率が増加しており、90%のところで最大の延伸倍率となった。このように、水分量調整前のPVAゲル(水分量100%)では延伸倍率が低いこと、延伸倍率を顕著に増加させるためには水分量を60〜96%(PVAゲル中の絶対水分量は54〜86.4%(=60×0.9〜96×0.9))に調整する必要があることが分かる。
実施例1
上記[PVAゲルの作製工程]において水分量を80%に調整したPVAゲルについて、上記[PVAゲルの延伸工程]および[PVAフィルムの乾燥工程および熱処理工程]のとおり処理を行い、熱処理PVAフィルム(1)を得た。この場合、延伸工程において、延伸倍率は12倍であった。また、熱処理PVAフィルム(1)のヤング率は142GPa、最大応力は4.0GPaであった。
上記[PVAゲルの作製工程]において水分量を80%に調整したPVAゲルについて、上記[PVAゲルの延伸工程]および[PVAフィルムの乾燥工程および熱処理工程]のとおり処理を行い、熱処理PVAフィルム(1)を得た。この場合、延伸工程において、延伸倍率は12倍であった。また、熱処理PVAフィルム(1)のヤング率は142GPa、最大応力は4.0GPaであった。
実施例2
上記[PVAゲルの作製工程]においてPVAゲルの水分量を90%に調整した試料を作製した以外は、実施例1と同様に、熱処理PVAフィルム(2)を作製した。この場合、延伸工程において、延伸倍率は13倍であった。また、熱処理PVAフィルム(1)のヤング率は148GPa、最大応力は4.4GPaであった。
上記[PVAゲルの作製工程]においてPVAゲルの水分量を90%に調整した試料を作製した以外は、実施例1と同様に、熱処理PVAフィルム(2)を作製した。この場合、延伸工程において、延伸倍率は13倍であった。また、熱処理PVAフィルム(1)のヤング率は148GPa、最大応力は4.4GPaであった。
実施例3
上記[PVAゲルの作製工程]においてPVAゲルの水分量を70%に調整した試料を作製した以外は、実施例1と同様に、熱処理PVAフィルム(3)を作製した。この場合、延伸工程において、延伸倍率は10倍であった。また、熱処理PVAフィルム(1)のヤング率は122GPa、最大応力は3.6GPaであった。
上記[PVAゲルの作製工程]においてPVAゲルの水分量を70%に調整した試料を作製した以外は、実施例1と同様に、熱処理PVAフィルム(3)を作製した。この場合、延伸工程において、延伸倍率は10倍であった。また、熱処理PVAフィルム(1)のヤング率は122GPa、最大応力は3.6GPaであった。
実施例4
上記[PVAゲルの作製工程]においてPVAゲルの水分量を36%に調整した試料を作製した以外は、実施例1と同様に、熱処理PVAフィルム(4)を作製した。この場合、延伸工程において、延伸倍率は8倍であった。また、熱処理PVAフィルム(1)のヤング率は120GPa、最大応力は2.4GPaであった。
上記[PVAゲルの作製工程]においてPVAゲルの水分量を36%に調整した試料を作製した以外は、実施例1と同様に、熱処理PVAフィルム(4)を作製した。この場合、延伸工程において、延伸倍率は8倍であった。また、熱処理PVAフィルム(1)のヤング率は120GPa、最大応力は2.4GPaであった。
実施例5
上記[PVAゲルの作製工程]においてPVAゲルの水分量を96%に調整した試料を作製した以外は、実施例1と同様に、熱処理PVAフィルム(5)を作製した。この場合、延伸工程において、延伸倍率は8倍であった。また、熱処理PVAフィルム(1)のヤング率は122GPa、最大応力は2.6GPaであった。
上記[PVAゲルの作製工程]においてPVAゲルの水分量を96%に調整した試料を作製した以外は、実施例1と同様に、熱処理PVAフィルム(5)を作製した。この場合、延伸工程において、延伸倍率は8倍であった。また、熱処理PVAフィルム(1)のヤング率は122GPa、最大応力は2.6GPaであった。
比較例1
上記[PVAゲルの作製工程]において凍結解凍処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に、熱処理PVAフィルム(C1)を得た。この場合、延伸工程におて、延伸倍率は8倍であった。また、熱処理PVAフィルム(C1)のヤング率は35GPa、最大応力は0.8GPaであった。
上記[PVAゲルの作製工程]において凍結解凍処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に、熱処理PVAフィルム(C1)を得た。この場合、延伸工程におて、延伸倍率は8倍であった。また、熱処理PVAフィルム(C1)のヤング率は35GPa、最大応力は0.8GPaであった。
比較例2
上記[PVAゲルの作製工程]において水分量を8%に調整したPVAゲルを用いた以外は、実施例1と同様に、熱処理PVAフィルム(C2)を作製した。この場合、延伸工程において、延伸倍率は6倍であった。また、熱処理PVAフィルム(C2)のヤング率は84GPa、最大応力は1.8GPaであった。
上記[PVAゲルの作製工程]において水分量を8%に調整したPVAゲルを用いた以外は、実施例1と同様に、熱処理PVAフィルム(C2)を作製した。この場合、延伸工程において、延伸倍率は6倍であった。また、熱処理PVAフィルム(C2)のヤング率は84GPa、最大応力は1.8GPaであった。
比較例3
上記[PVAゲルの作製工程]において水分量を98%に調整したPVAゲルを用いた以外は、実施例1と同様に、熱処理PVAフィルム(C3)を作製した。この場合、延伸工程において、延伸倍率は4倍であった。また、熱処理PVAフィルム(C2)のヤング率は52GPa、最大応力は1.6GPaであった。
上記[PVAゲルの作製工程]において水分量を98%に調整したPVAゲルを用いた以外は、実施例1と同様に、熱処理PVAフィルム(C3)を作製した。この場合、延伸工程において、延伸倍率は4倍であった。また、熱処理PVAフィルム(C2)のヤング率は52GPa、最大応力は1.6GPaであった。
比較例4
上記[PVAフィルムの乾燥工程および熱処理工程]において熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に、熱処理PVAフィルム(C4)を得た。この場合、延伸工程における延伸倍率は12倍であり、熱処理PVAフィルム(C4)のヤング率は20GPa、最大応力は0.6GPaであった。
上記[PVAフィルムの乾燥工程および熱処理工程]において熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に、熱処理PVAフィルム(C4)を得た。この場合、延伸工程における延伸倍率は12倍であり、熱処理PVAフィルム(C4)のヤング率は20GPa、最大応力は0.6GPaであった。
(熱処理と力学特性の関係)
延伸倍率13倍のPVAフィルム(実施例2)の熱処理前後のフィルムを引張試験機を用いて引張試験を行い、得られた応力―ひずみ曲線を図3に示す。また、延伸倍率に対する最大応力の変化を図4に、延伸倍率に対するヤング率の変化を図5に示す。
延伸倍率13倍のPVAフィルム(実施例2)の熱処理前後のフィルムを引張試験機を用いて引張試験を行い、得られた応力―ひずみ曲線を図3に示す。また、延伸倍率に対する最大応力の変化を図4に、延伸倍率に対するヤング率の変化を図5に示す。
図4から、PVAフィルムを熱処理すると、PVAゲルの延伸倍率が大きいほど、熱処理による最大応力の増加量が大きくなることがわかる。また、図5から、ヤング率についても、最大応力と同様に熱処理によるヤング率の増加量が大きくなることがわかる。さらに、延伸倍率が約8倍以上であれば、熱処理によってヤング率が120GPa以上のPVAフィルムが得られることがわかる。
従来のポリビニルアルコール系材料では、ヤング率および最大応力を、高強度ポリエチレンと同等レベルに到達させることは困難であったが、本発明のポリビニルアルコール延伸物は、高強度ポリエチレンと同等レベルのヤング率および最大応力を有するため、ロープやネット、またコンクリート補強材、ブレーキホース、ヘルメット補強材等の補強材等の幅広い用途に使用することができる。特に、本発明のポリビニルアルコール延伸物は、ポリエチレンを使用できない高温下において好適に使用可能である。
Claims (5)
- ヤング率が120GPa以上のポリビニルアルコール延伸物。
- 最大応力が3.0GPa以上である、請求項1に記載のポリビニルアルコール延伸物。
- 延伸物の形態が繊維またはフィルムである請求項1または2に記載のポリビニルアルコール延伸物。
- ポリビニルアルコールを含有する水溶液を凍結解凍してポリビニルアルコールゲルを作製する工程、
得られたポリビニルアルコールゲルの水分量を調整した後に延伸する工程、
延伸したポリビニルアルコールゲルを乾燥する工程、および
乾燥したポリビニルアルコールゲルを熱処理する工程
を含む請求項1〜3のいずれかに記載のポリビニルアルコール延伸物の製造方法。 - 延伸工程において、延伸工程前のポリビニルアルコールゲルに含有される水分量を50〜88%に調整する請求項4に記載のポリビニルアルコール延伸物の製造方法。
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2015
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