JP2015172252A - マグネシウム合金コイル材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】マグネシウム合金からなる板状材が円筒状に巻き取られたマグネシウム合金コイル材であって、前記コイル材の内径が1000mm以下であり、以下の幅方向の反り量を満たすことを特徴とするマグネシウム合金コイル材。前記コイル材を構成する板状材のうち、最外周側に位置する板状材を長さ:300mmに切断して反り量用試験片とし、この反り量用試験片を水平台に載置したとき、前記水平台の表面と、当該反り量用試験片の一面において前記水平台に接触しない箇所であって、当該反り量用試験片の幅方向における鉛直方向の最大距離をh、当該反り量用試験片の幅をwとし、(前記鉛直方向の最大距離h/前記反り量用試験片の幅w)×100を幅方向の反り量(%)とするとき、当該幅方向の反り量が0.5%以下である。
【選択図】図1
Description
マグネシウム合金部材の生産性を向上するためには、プレス加工などの塑性加工やその他の加工を行うにあたり、加工装置に素材を連続的に供給することが望まれる。例えば、長尺な圧延板などの板状材を円筒状に巻き取ったコイル材を素材に利用することで、上記加工装置に素材を連続的に供給することができる。
コイル材の巻き取り径(内径)を小さくすると、長尺材でも小型にできるため、搬送や上記加工装置への設置などが容易である上に、上記加工装置に対して一つのコイル材から供給可能な素材量を多くでき、マグネシウム合金部材の生産性をより高められると期待される。しかし、巻き取り径が小さいと、特に、巻き取り径が1000mm以下であると、当該板状材に巻き癖が付き易く、特に、板状材の長手方向に変形や反りを有する恐れがある。巻回数を多くすると、巻き取り径が大きくなり、上記長手方向の変形や反りを抑制できるものの、後述するように幅方向の反りがつき易くなる。
(幅方向の反り量)
上記コイル材を構成する板状材のうち、最外周側に位置する板状材を長さ:300mmに切断して反り量用試験片とし、この反り量用試験片を水平台に載置したとき、上記水平台の表面と、当該反り量用試験片の一面において上記水平台に接触しない箇所であって、当該反り量用試験片の幅方向における鉛直方向の最大距離をh、当該反り量用試験片の幅をwとし、(上記鉛直方向の最大距離h/上記反り量用試験片の幅w)×100を幅方向の反り量(%)とするとき、当該幅方向の反り量が0.5%以下である。
(平坦度)
上記コイル材を構成する板状材のうち、最内周側に位置する板状材を長さ:1000mmに切断して平坦度用試験片とし、この平坦度用試験片を水平台に載置したとき、上記水平台の表面と、当該平坦度用試験片の一面において上記水平台に接触しない箇所との鉛直方向の最大距離を平坦度とし、当該平坦度が5mm以下である。
準備工程:マグネシウム合金からなる素材板が円筒状に巻き取られてなる素材コイル材を準備する工程。
温間加工工程:上記素材コイル材を巻き戻して上記素材板を連続的に繰り出し、繰り出された上記素材板の温度が100℃超である状態で当該素材板に加工を施す工程。
巻取工程:上記加工が施された加工板を巻き取って、内径が1000mm以下のコイル材を形成する工程。
そして、上記巻き取りは、上記加工板において巻き取り直前の温度を100℃以下にしてから行う。特に、巻き取り直前の温度は75℃以下が好ましい。
[コイル材]
(組成)
本発明コイル材や後述する本発明マグネシウム合金部材を構成するマグネシウム合金は、Mgを母材とする、即ちMgを50質量%以上含有し、かつ上述のように種々の添加元素を含有した形態をとり得る。Alを含有するMg-Al系合金のより具体的な組成は、例えば、ASTM規格におけるAZ系合金(Mg-Al-Zn系合金、Zn:0.2質量%〜1.5質量%)、AM系合金(Mg-Al-Mn系合金、Mn:0.15質量%〜0.5質量%)、AS系合金(Mg-Al-Si系合金、Si:0.01質量%〜20質量%)、その他、Mg-Al-RE(希土類元素)系合金、AX系合金(Mg-Al-Ca系合金、Ca:0.2質量%〜6.0質量%)、AJ系合金(Mg-Al-Sr系合金、Sr:0.2質量%〜7.0質量%)などが挙げられる。Alを5.8質量%以上含有するAZ系合金は、例えば、AZ61合金、AZ80合金、AZ91合金(Al:8.3質量%〜9.5質量%、Zn:0.5質量%〜1.5質量%)が挙げられる。AZ91合金は、AZ31合金などの他のMg-Al系合金と比較して耐食性や強度、硬度といった機械的特性に優れ、汎用性もある。但し、Alの含有量が多いことで、硬度が高くなって塑性加工性に劣り、塑性加工時に割れなどが生じ易いことから、AZ91合金や当該合金と同程度のAlを含有する合金に対して、本発明製造方法を適用することで、平坦性に優れる上に、塑性加工性に優れる長尺な板材が得られる。
本発明コイル材を構成する板状材の代表的な形態は、鋳造材に圧延が施された圧延板、この圧延板に更に矯正加工が施された加工板が挙げられる。
内径が小さいほど巻回数を多くしても小型なコイル材となるが、特別な製造方法にしないと幅方向の反りがつき易いと考えられる。一方、内径が1000mm超である大径のコイル材では、当該コイル材を構成する板状材に付与される曲げが緩いため、特別な製造条件により製造しなくても巻き癖(主として長手方向の反り)がつき難いと考えられる。本発明コイル材は上述のように特別な製造方法により製造することから、従来の製造方法では幅方向の反りや巻き癖がつき易いと考えられる、内径が1000mm以下のコイル材を対象とする。内径が小さいほど巻回数を多くしても小型なコイル材となり、例えば、内径が300mm以下としてもよい。内径が400mm以上700mm以下のコイル材が利用し易いと考えられる。本発明コイル材の外径は、コイルの過剰な大型化を招かない範囲で適宜選択することができ、3000mm以下、特に2000mm以下が利用し易いと考えられる。
本発明コイル材を構成する板状材の厚さや幅は、代表的には、当該板状材により製造するマグネシウム合金部材の大きさに応じて適宜選択することができる。例えば、携帯用電気・電子機器の筐体などの素材に上記コイル材を利用する場合、このコイル材を構成する板状材の厚さは、0.02mm以上3.0mm以下、特に0.1mm以上1mm以下、同板状材の幅は50mm以上2000mm以下、特に100mm以上、更に200mm以上が利用し易いと考えられる。また、上述のように板状材の厚さが0.3mm〜2.0mm、幅が50mm〜300mmであると、平坦性に更に優れるコイル材を製造し易い。
上述のように温間加工後に特定の温度にして巻き取ることで、本発明コイル材は、幅方向の反りが小さい。反り量は小さいほど好ましく、0.3%以下がより好ましい。幅方向の反り量の測定は、以下のように行う。まず、コイル材を説明する。コイル材10は、図1(a)に示すように長尺な板状材11を巻き取ったものである。コイル材10において、図1(a)に矢印Aで示す方向、即ち、板状材11が巻き取られている方向(巻取方向)、又は巻き戻されている方向(巻戻方向(繰出方向))が板状材11の長手方向であり、図1(a)に矢印Bで示す方向、即ち、上記長手方向に直交する方向が板状材11の幅方向である。
本発明コイル材を構成する板状材は、上述のように平坦性に優れており、最も好ましい形態としては、上述した長さ1000mmに切り出した平坦度用試験片の一面の実質的に全面が水平台に接触する、即ち、上述した平坦度が実質的に0mmである形態が挙げられる。平坦度が小さいほど上記板状材は平坦性に優れることから、5mm以下、更に3mm以下、特に1mm以下、とりわけ0.5mm以下がより好ましい。平坦度合いの測定には種々の方法が考えられるが、本発明では、自重変形による影響が小さいと考えられることから、上述の方法を採用する。
〔引張強さ〕
本発明コイル材を構成する板状材は、組成や施された圧延などの製造条件にもよるが、同じ組成の場合、圧延が施されていることでダイキャスト材やチクソモールド材よりも強度に優れ、例えば、上述のように280MPa以上を満たし得る。組成や製造条件によっては、300MPa以上、更に320MPa以上を満たすことができる。室温(20℃程度)での引張強さが450MPa以下であると、伸びなどの靭性も十分に有することができて好ましい。
上述のような高強度な板状材は、0.2%耐力にも優れ、例えば、上述のように230MPa以上を満たし得る。組成や製造条件によっては、0.2%耐力が250MPa以上を満たすことができる。室温(20℃程度)での0.2%耐力が350MPa以下であると、伸びなどの靭性も十分に有することができて好ましい。
本発明コイル材を構成する板状材は、組成や製造条件にもよるが、上述のように高強度でありながら、優れた伸びを有する形態とすることができる。伸びが高いほど、コイル状に巻き取るときや温間矯正加工時の割れを低減できる上に、塑性加工時にも割れなどが生じ難い。例えば、上述のように伸びが1%以上、更に4%以上、特に5%以上、とりわけ8%以上である形態が挙げられる。引張強さや0.2%耐力が高いほど伸びが低下する傾向にあり、伸びの上限は15%程度と考えられる。本発明コイル材が、矯正加工が施された加工板で構成されている場合、伸びが小さくても、塑性加工時に連続的な再結晶が生じ易く、塑性加工性に優れる。
本発明コイル材を構成する板状材は、硬度も高い傾向があり、例えば、上述のようにビッカース硬度(Hv)が65以上、更に80以上を満たす形態が挙げられる。このような高硬度材であることで、本発明コイル材により製造されたマグネシウム合金部材は、傷がつき難い。ビッカース硬度は、後述する残留応力により主として変化し、残留応力が大きいほど、高硬度である傾向にあり、後述する圧縮応力の範囲では、ビッカース硬度(Hv)の上限は100と考えられる。
上記板状材が圧縮性の残留応力を有し、その値が0MPa超100MPa以下、特に5MPa以上30MPa以下である場合、プレス加工といった塑性加工を行うときの温度域、代表的には200℃〜300℃の温間域での板状材の伸びが100%以上となる。従って、この板状材は、種々の形状に対して十分に塑性変形を行え、塑性加工性に優れる。
本発明コイル材を巻き戻して、当該コイル材を構成する板状材に塑性加工を施す本発明マグネシウム合金部材の製造方法により、本発明マグネシウム合金部材が得られる。塑性加工は、プレス加工、深絞り加工、鍛造加工、曲げ加工などの種々の加工が採用できる。このような塑性加工が施された本発明マグネシウム合金部材は、代表的には、その全体に塑性加工が施されたもの、例えば、箱などの立体形状の塑性加工部材が挙げられる。その他、本発明マグネシウム合金部材は、上記板状材の一部にのみ塑性加工が施された形態、即ち、塑性加工部を有する形態も含む。塑性加工は、上記板状材を200℃〜300℃に加熱して施すと、割れなどが生じ難く、表面性状に優れるマグネシウム合金部材が得られる。また、上述のように高強度、高靭性な本発明コイル材を素材とすることで、本発明マグネシウム合金部材も高強度、高靭性である。
以下、上記本発明製造方法の各工程をより詳細に説明する。
{準備工程}
準備工程で用意する素材板には、鋳造材、鋳造材に圧延を施した圧延板が挙げられる。鋳造材を用いる場合、上述のように温間加工は圧延が挙げられ、圧延板を用いる場合、上述のように温間加工は矯正加工が挙げられる。いずれにしても、本発明コイル材を製造するには、代表的には、鋳造工程と、圧延工程とを具える。
本発明コイル材の出発材には、例えば、インゴット鋳造材を利用することができる。しかし、本発明コイル材を構成する板状材を長尺材とするには、出発材となる鋳造材も長尺材であることが好ましい。長尺材が得られる鋳造方法として、連続鋳造法が好ましい。連続鋳造法は、急冷凝固が可能であるため、添加元素の含有量が多い場合でも偏析や酸化物などの内部欠陥を低減でき、圧延などの塑性加工性に優れる鋳造材が得られることからも好ましい。即ち、連続鋳造材では、圧延などの塑性加工時に上記内部欠陥が起点となって割れなどが生じ難い。特に、AZ91合金や当該合金と同程度のAlを含有する合金では、鋳造時、晶出物や偏析が生じ易く、鋳造後に圧延などの塑性加工を施しても、これら晶出物や偏析が残存し易い。しかし、連続鋳造材とすることで、Alといった添加元素の含有量が多い合金種であっても、上記晶出物や偏析を低減し易い。連続鋳造法には、双ロール法、ツインベルト法、ベルトアンドホイール法といった種々の方法があるが、板状の鋳造材の製造には、双ロール法やツインベルト法、特に双ロール法が好適である。特に、WO/2006/003899に記載の鋳造方法で製造した鋳造材を利用することが好ましい。鋳造材の厚さ、幅、長さは所望の圧延板などの板状材が得られるように適宜選択することができる。鋳造材の厚さは、厚過ぎると偏析が生じ易いため、10mm以下、特に5mm以下が好ましい。鋳造材の幅は、製造設備で製造可能な幅とすることができる。得られた連続鋳造材も円筒状に巻き取ると、次工程に搬送し易い。巻き取り時、鋳造材において特に巻き始め部分の温度が100℃〜200℃程度であると、AZ91合金といった割れが生じ易い合金種であっても曲げ易くなって巻き取り易い。
上記鋳造材に圧延を施す前に溶体化処理を施すと、鋳造材の組成を均質化したり、Alといった元素を含む析出物を再固溶させて靭性を高めたりできる。溶体化処理の条件は、加熱温度:350℃以上、特に380℃以上420℃以下、保持時間:0.5時間以上、特に1時間以上40時間以下が挙げられる。Mg-Al系合金である場合、Alの含有量が多いほど保持時間を長めにすることが好ましい。また、上記保持時間からの冷却工程において、水冷や衝風といった強制冷却などを利用して、冷却速度を速めると(好ましくは50℃/min以上)、粗大な析出物の析出を抑制できる。鋳造コイル材を利用する場合、溶体化処理は巻き取った状態で行ってもよいし(バッチ処理)、巻き戻して加熱炉などに連続的に鋳造材を装入して行ってもよい(連続処理)。
上記鋳造材や溶体化処理材に施す圧延は、当該鋳造材を含む素材(圧延を施す対象)が100℃超、特に150℃以上400℃以下に加熱された状態で行う温間圧延、或いは熱間圧延の工程を含むことが好ましい。素材が上記温度に加熱された状態で圧延を行うことで、1パスあたりの圧下率を高めた場合にも圧延中に割れなどが生じ難く好ましい。150℃以上とすることで、圧延時、割れなどがより生じ難く、加熱温度を高めるほど、割れなどが少なくなるが、400℃超では、圧延ロールの熱劣化が生じたり、圧延板表面の焼付きなどによる劣化や圧延板を構成する結晶粒の粗大化により、得られる圧延板の機械的特性の低下を招いたりなどする。従って、圧延時の素材の温度は、350℃以下が好ましく、300℃以下、特に280℃以下、とりわけ150℃以上250℃以下とすると上記熱的な劣化や結晶粒の粗大化を抑制し易く、200℃〜350℃、特に250℃以上、とりわけ270℃以上330℃以下とすると圧延性に優れる。素材を上記温度にするには、代表的には、素材を加熱することが挙げられる。素材の加熱には、雰囲気炉(ヒートボックス)などを利用することが挙げられる。圧延ロールを加熱してもよい。圧延ロールの加熱温度は、100℃〜250℃が挙げられる。素材と圧延ロールとの双方を加熱してもよい。なお、圧下率は、圧延前の素材の厚さをt0、圧延後の圧延板の厚さをt1とするとき、{(t0-t1)/t0}×100で表される値である。
本発明コイル材を矯正加工が施された加工板で構成する場合、圧延後に得られた圧延コイル材にそのまま矯正加工を施してもよいが、矯正前に研削処理を施して、圧延板の表面に存在する疵や付着している加工油(例えば、潤滑剤)、上記表面に形成された酸化層などを除去して、上記表面を清浄かつ平滑にすることができる。このような表面性状に優れる板状材は、矯正加工を均一的に施し易い。また、例えば、後述するように矯正加工に用いる一対の矯正ロール間のギャップを比較的大きくして押込量が小さい場合にも、上記表面性状に優れる板材を矯正加工に供することで、平坦性に優れるコイル材を得易い。研削処理は、例えば、研削ベルトを用いた湿式処理が挙げられる。
本発明コイル材を矯正加工が施された加工板で構成する場合、圧延コイル材を素材とし、当該矯正加工を上述のように100℃超350℃以下といった温間で行うと共に、巻き取る直前の上記加工板の温度を100℃以下の低温にしてから巻き取る。
得られた平坦性に優れるコイル材は、そのままでもプレス加工などの塑性加工部材の素材に利用することができる。このコイル材にプレス加工などの塑性加工や切断などの種々の加工を施す前に、上述した湿式ベルト研磨などの研削処理を施して表面状態を良好にしてもよい。研削処理により、上述のように素材表面の疵や加工油、酸化層などを除去して、清浄かつ平滑な表面を有するコイル材にすることができる。また、上記塑性加工や切断などの種々の加工前に、或いは加工後に、化成処理や陽極酸化処理などの防食処理を施すことができる。その他、上記温間矯正後、別途、冷間矯正を施してもよい。冷間矯正を行うことで、平坦度をより小さくすることができる。この冷間矯正加工には、市販の冷間で利用されるロールレベラ装置を利用することができる。
<試験例1>
種々の条件でマグネシウム合金からなる板状材を作製し、平坦度、機械的特性を調べた。
コイル材は、以下のように作製した。AZ91合金相当の組成のインゴット(市販品)を不活性雰囲気中で650℃〜700℃に加熱して溶湯を作製し、この溶湯を用いて不活性雰囲気中で双ロール連続鋳造法により、長尺な鋳造板(厚さ4mm)を作製して、コイル状に巻き取った。この鋳造コイル材に400℃×24時間の溶体化処理を施した。
シート材は、以下のように作製した。AZ91合金相当の組成のインゴット(市販品)を不活性雰囲気中で650℃〜700℃に加熱して溶湯を作製し、この溶湯を用いて不活性雰囲気中で双ロール連続鋳造法により鋳造板を作製し、所定の長さに切断して、厚さ4mmの鋳造板を複数用意した。各鋳造板に400℃×24時間の溶体化処理を施した後、複数パスの圧延を施して、厚さ0.6mmの圧延板を作製した。圧延の条件は、上述した試料No.1,2のコイル材と同様とした。得られた各圧延板に上述したロールレベラ装置を用いて、試料No.1の同様の条件(押込量を3mm)で温間矯正を施し、得られた加工板(幅:210mm、長さ:1000mm)を試料No.100とした。
作製した試料No.1,2のコイル材、及び試料No.100のシート材の平坦度を測定した。コイル材については、巻き戻して最内周側に位置する板状材を長さ:1000mmに切断して試験片とし、この試験片を、巻き取られた状態のときに外周側となっていた面を水平台への載置面として水平台に載置する。そして、水平台の表面と、試験片の載置面において水平台に接触しない箇所との間の鉛直方向の最大距離を測定し、これをこの試験片の平坦度とする。n=3の平均値を表1に示す。シート材についても同様に水平台に載置して上述のように平坦度を測定し、n=3の平均値を表1に示す。
用意した試料No.1,2,100,200,300について、室温(約20℃)下で引張試験を行い(標点距離GL=50mm、引張速度:5mm/min)、引張強さ(MPa)、0.2%耐力(MPa)、伸び(%)を測定した(評価数:いずれもn=3)。この試験では、各試料(厚さ:0.6mm)からJIS 13B号の板状試験片(JIS Z 2201(1998))を作製して、JIS Z 2241(1998)の金属材料引張試験方法に基づいて上記引張試験を行った。試料No.1,2のコイル材及び試料No.300のAZ31合金板については、巻き戻したコイル材の長手方向(ここでは圧延方向に相当)、試料No.100のシート材は圧延方向が長手になるように作製した試験片(RD)と、幅方向(圧延方向に直交する方向)が長手になるように作製した試験片(TD)とを用意した。試料No.200の鋳造板については、任意の方向を長手として試験片を作製した。n=3の平均値を表1に示す。
使用X線:Cr-Kα(V フィルター)
励起条件:30kV 20mA
測定領域:φ2mm(使用コリメータ径)
測定法 :sin2Ψ法(並傾法、揺動有り)
Ψ=0゜,10゜,15゜,20゜,25゜,30゜,35゜,40゜,45゜
測定面 :Mg(1004)面
使用定数:ヤング率=45,000MPa、ポアソン比=0.306
測定箇所:サンプルの中央部
測定方向:圧延方向
以下の条件でAZ91合金相当の組成からなるコイル材を作製した。この試験では、試験例1と同様に、双ロール連続鋳造法を利用して、鋳造コイル材(厚さ5mm)を作製し、作製したコイル材に、400℃×24時間の溶体化処理を施した。溶体化処理後のコイル材を素材とし、250℃の状態の素材板に、厚さ0.6mmとなるまで複数パスの圧延を連続して施して、長尺な圧延板を作製し、コイル状に巻き取った(幅:210mm)。この試験では、最終パスの巻取時、20℃の冷風を圧延板に吹付け、強制的に100℃以下まで空冷してから巻き取った。巻き取った圧延コイル材を200℃に予熱し、200℃に加熱した圧延コイル材を巻き戻して、圧延板に試験例1の試料No.1と同様の条件で、矯正加工を施した。そして、矯正加工を施した加工板に20℃の冷風を吹付け、強制的に100℃以下まで冷却してから巻き取った。得られたコイル材から、試験例1と同様にして平坦度用試験片(長さ:1000mm,幅:210mm)及び反り量用試験片(長さ:300mm,幅:210mm)を作製し、平坦度及び幅方向の反り量を測定したところ、平坦度:1.0mm以下、反り量:0.5%以下であった。更に、反り量用試験片に対して、冷間にてロールレベラ装置により冷間矯正加工を施して、幅方向の反りが適切に測定可能な状態として幅方向の反り量を測定したところ、反り量:0.5%以下であった。
3 圧延板 30 加熱炉 31 ロールレベラ装置 32 矯正ロール
33 冷却機構
4 加工板 40 加工板と巻取りリール又はコイル部分とに接する地点
5 温度センサ
100 水平台 110 隙間
Claims (22)
- マグネシウム合金からなる板状材が円筒状に巻き取られたマグネシウム合金コイル材であって、
前記コイル材の内径が1000mm以下であり、
以下の幅方向の反り量を満たすことを特徴とするマグネシウム合金コイル材。
(幅方向の反り量)
前記コイル材を構成する板状材のうち、最外周側に位置する板状材を長さ:300mmに切断して反り量用試験片とし、この反り量用試験片を水平台に載置したとき、前記水平台の表面と、当該反り量用試験片の一面において前記水平台に接触しない箇所であって、当該反り量用試験片の幅方向における鉛直方向の最大距離をh、当該反り量用試験片の幅をwとし、(前記鉛直方向の最大距離h/前記反り量用試験片の幅w)×100を幅方向の反り量(%)とするとき、当該幅方向の反り量が0.5%以下である。 - 前記コイル材は、以下の平坦度を満たすことを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム合金コイル材。
(平坦度)
前記コイル材を構成する板状材のうち、最内周側に位置する板状材を長さ:1000mmに切断して平坦度用試験片とし、この平坦度用試験片を水平台に載置したとき、前記水平台の表面と、当該平坦度用試験片の一面において前記水平台に接触しない箇所との鉛直方向の最大距離を平坦度とし、当該平坦度が5mm以下である。 - 前記平坦度が0.5mm以下であることを特徴とする請求項2に記載のマグネシウム合金コイル材。
- 前記マグネシウム合金は、添加元素にAlを5.8質量%以上12質量%以下含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のマグネシウム合金コイル材。
- 前記マグネシウム合金は、添加元素にAlを8.3質量%以上9.5質量%以下含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のマグネシウム合金コイル材。
- 前記コイル材を構成する板状材の厚さが0.02mm以上3.0mm以下であり、
前記コイル材を構成する板状材の幅が50mm以上2000mm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のマグネシウム合金コイル材。 - 前記コイル材を構成する板状材の厚さが0.3mm以上2.0mm以下であり、
前記コイル材を構成する板状材の幅が50mm以上300mm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のマグネシウム合金コイル材。 - 前記コイル材を構成する板状材の引張強さが280MPa以上450MPa以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のマグネシウム合金コイル材。
- 前記コイル材を構成する板状材の0.2%耐力が230MPa以上350MPa以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のマグネシウム合金コイル材。
- 前記コイル材を構成する板状材の伸びが1%以上15%以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のマグネシウム合金コイル材。
- 前記コイル材を構成する板状材のビッカース硬度(Hv)が65以上100以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のマグネシウム合金コイル材。
- 前記コイル材を構成する板状材の残留応力が0MPa超100MPa以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のマグネシウム合金コイル材。
- マグネシウム合金からなる素材板が円筒状に巻き取られてなる素材コイル材を準備する準備工程と、
前記素材コイル材を巻き戻して前記素材板を連続的に繰り出し、繰り出された前記素材板の温度が100℃超である状態で当該素材板に加工を施す温間加工工程と、
前記加工が施された加工板を巻き取って、内径が1000mm以下のコイル材を形成する巻取工程とを具え、
前記巻き取りは、前記加工板において巻き取り直前の温度を100℃以下にしてから行うことを特徴とするマグネシウム合金コイル材の製造方法。 - 前記準備工程では、前記素材コイル材として、マグネシウム合金からなる圧延板を巻き取った圧延コイル材を用意し、
前記温間加工工程では、前記圧延板の温度が100℃超350℃以下である状態で当該圧延板に複数のロールにより温間矯正加工を施すことを特徴とする請求項13に記載のマグネシウム合金コイル材の製造方法。 - 前記矯正加工は、前記圧延板に30MPa以上150MPa以下の張力を加えた状態で行うことを特徴とする請求項14に記載のマグネシウム合金コイル材の製造方法。
- 前記準備工程では、前記素材コイル材として、マグネシウム合金を連続鋳造した鋳造材に圧延を施し、得られた圧延板を巻き取った圧延コイル材を用意することを特徴とする請求項14又は15に記載のマグネシウム合金コイル材の製造方法。
- 前記温間加工工程では、繰り出された前記素材板の温度が150℃以上400℃以下である状態で当該素材板に圧延ロールにより圧延を施すことを特徴とする請求項13に記載のマグネシウム合金コイル材の製造方法。
- 前記準備工程では、前記素材コイル材として、マグネシウム合金を連続鋳造した鋳造材を巻き取った鋳造コイル材を用意することを特徴とする請求項17に記載のマグネシウム合金コイル材の製造方法。
- 前記巻き取り直前の温度を75℃以下にすることを特徴とする請求項13〜18のいずれか1項に記載のマグネシウム合金コイル材の製造方法。
- 前記マグネシウム合金は、添加元素にAlを5.8質量%以上12質量%以下含有することを特徴とする請求項13〜19のいずれか1項に記載のマグネシウム合金コイル材の製造方法。
- 請求項1〜12のいずれか1項に記載のマグネシウム合金コイル材を巻き戻して、前記板状材に塑性加工を施すことを特徴とするマグネシウム合金部材の製造方法。
- 請求項21に記載の製造方法により得られたことを特徴とするマグネシウム合金部材。
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