(欠陥観察装置と欠陥検査装置はべつものの構成にする)
図1は本発明の実施例1における欠陥観察装置の構成図を示す。欠陥観察装置は、レビュー装置100と、データベース122と、ユーザインタフェース123と、記憶装置124と、制御システム部125で概略構成されている。欠陥検査装置107は、ネットワーク121を介して欠陥観察装置と接続され、試料101上に存在する欠陥を検出し、欠陥の位置座標やサイズ等の欠陥情報を取得する。欠陥検査装置107は、試料101上の欠陥に関する情報が取得できるものであればよい。
取得した欠陥情報は、ネットワーク121を介し、記憶装置124または制御システム部125に出力される。記憶装置124は、該出力された欠陥情報を格納する。制御システム部125は、欠陥検査装置107が出力した欠陥情報、或いは、記憶装置124に格納された欠陥情報を読み込み、読み込んだ欠陥情報に基づいてレビュー装置100を制御する。そして、欠陥検査装置107で検出された欠陥のいくつか或いは全ての欠陥を詳細に観察し、欠陥の分類、発生原因の分析等を行う。
次に、図1に示すレビュー装置100の構成について説明する。レビュー装置100は、試料ホルダ102及びステージ103を備える駆動部と、光学式高さ検出器104と、光学顕微鏡105と、真空漕(図示せず)と、SEM106(電子顕微鏡部)と、レーザ変位計108、を有する。試料101は、移動可能なステージ103に設置された試料ホルダ102上に載置される。ステージ103の移動により、試料101に存在する観察対象欠陥はSEM106の視野内に移動できる。制御システム部125は、ステージ103、光学式高さ検出器104、光学顕微鏡105、SEM106、レーザ変位計108、ユーザインターフェース123、データベース122、記憶装置124と接続されており、ステージ103の移動、電子顕微鏡部による画像の取得、光学式高さ検出器104及びレーザ変位計108を有する計測部での計測等、各構成の動作及び入力を制御する。また、制御システム125は、ネットワーク121を介して上位のシステム(例えば検査装置107)と接続されている。
SEM106は、電子線源151、引き出し電極152、偏向電極153、対物レンズ154を備える電子線照射系と、2次電子検出器155および反射電子検出器156を備える電子検出系を有する。内部の電子線源151から1次電子は放出され、放射された1次電子は、引き出し電極152によってビーム状に引き出して加速される。そして、偏向電極153によって、加速された1次電子ビームの軌道を制御し、対物レンズ電極154は、軌道を制御された1次電子ビームを試料101の表面に収束して照射する。試料101の表面に照射された1次電子ビームは、試料101上を照射した領域から2次電子や反射電子等を発生させる。2次電子検出器155は、発生した2次電子を検出し、反射電子検出器156は、反射電子などの比較的高エネルギの電子を検出する。SEM106の光軸上に配置されたシャッター(図示せず)は、電子線源151から照射された電子線の試料101上への照射開始・停止を選択する。以上で説明したSEM106の構成は、制御システム部125により制御され、電子線のフォーカス位置や観察倍率を変更することができる。
光学式高さ検出器104とレーザ変位計108は、レビュー装置100の計測部として、試料101上の観察対象領域の振動を計測する。ここでいう振動とは、振動の振幅や周波数、周期等の各種振動に係るパラメータを含んでいる。具体的には、光学式高さ検出器104は、ステージ103上に存在する試料101の観察対象領域の高さ位置、および、観察対象領域に対して垂直方向の振動Vを計測する。また、レーザ変位計108は、ステージ103とSEM106間の相対変位を検出し、観察対象領域の水平方向の振動Hを計測する。光学式高さ検出器104およびレーザ変位計108で計測した振動は、信号として制御システム部125へ出力される。
制御システム部125は、欠陥検査装置107で得た欠陥情報を基に光学顕微鏡105で再検出し、欠陥検査装置107で検出した欠陥の位置情報をレビュー装置上の位置情報に変換する。そして、SEM106は、制御システム部125で検査装置107上の位置情報から変換されたレビュー装置上の欠陥位置情報を用い、制御システム部125でレビュー装置上の位置情報に変換された欠陥を観察する。
また、制御システム部125は、レーザ変位計108が検出したステージ103とSEM106間の相対変位を用い、試料101上の観察対象欠陥がSEM106視野内に配置されるようステージ103の移動量を補正する。また、制御システム部125は、レーザ変位計108で計測した観察対象領域の水平方向の振動H、及び光学式高さ検出器104で計測した試料101の観察対象領域の振動Vおよびその高さ位置の変化に基づいて、電子線のフォーカス位置あるいはその補正量を導出し、偏向電極153及び対物レンズ電極154を制御し、試料101の観察対象領域上に電子線のフォーカス位置を合わせる。
制御システム部125は、2次電子検出器155及び反射電子検出器156によって取得した信号からSEM画像を構成する際に、レーザ変位計108及び光学式高さ検出器104の測定した試料101の観察対象領域の水平方向および垂直方向の振動に基づいて、2次電子検出器155及び反射電子検出器156によって取得した信号の中からSEM画像を構成する信号を選択し、該SEM画像を構成する信号に選択された信号を用いSEM画像を構成するようにできる。
図2はレーザ変位計108の構成例を示す。レーザ変位計108は、レーザ光源140と、ビームスプリッタ141と、ミラー142と、ターゲット143及び144と、検出器145を有する。レーザ光源140は変位測定光を出射し、出射された変位測定光はビームスプリッタ141により2分割される。ミラー142は、SEM106に光線を照射するため光路を折り曲げる。ターゲット143及び144は、ステージ103及びSEM106のそれぞれに配置され、2分割された変位測定光がそれぞれ照射される。検出器165は、ターゲット143及びターゲット144のそれぞれで反射された光の干渉パターンを電気信号に変換し検出する。変換された信号は、制御システム部125へ送られ、制御システム部125はターゲット143とターゲット144間の相対変位を導出する。この時、ターゲット143とターゲット144間の相対変位変化は、ステージ103とSEM106間の相対変位変化に準ずるものとみなすことができる。以上のようにすることで、観察対象領域の水平方向の振動Hを計測することが可能である。
図3は光学式高さ検出器104の構成例を示す。光学式高さ検出器104は、光源160と、集光レンズ161と、スリット162と、結像レンズ163と、集光レンズ164と、検出器165を有する。光源160は高さ測定光を出射する。光源160より出射された高さ測定光は、集光レンズ161により集光され、スリット162を透過する。スリット162を透過した高さ測定光は、結像レンズ163により試料101の観察対象領域に結像(スリット162の像)されて反射する。反射した高さ測定光は、集光レンズ164により集光され、検出器165が集光レンズ164で集光された高さ測定光を検出して電気信号へ変換する。検出器165で電気信号へ変換された高さ測定光の信号は、制御システム部125へ送られ試料101の観察対象領域の振動Vおよび高さ位置が導出される。尚、検出器165としては、二次元CCD又はラインセンサ、2分割又は4分割のポジションセンサ等を用いればよいが、これら以外のセンサを用いても構わない。
次に、欠陥検査装置107の検査からレビュー装置100による欠陥観察までの流れの概要を説明する。まず、欠陥検査装置107を用いて試料101の欠陥を検出し、欠陥情報を記憶装置124或いは制御システム部125に出力する。欠陥検査装置107が出力する試料101の欠陥情報は、欠陥検査装置107を用いて検出した欠陥座標、欠陥信号、欠陥形状、欠陥散乱光の偏光、欠陥種、欠陥ラベル、欠陥の特徴量、試料101表面の散乱信号等のいずれかもしくはこれらの組み合わせで構成される欠陥検査結果、及び検査装置107の照明入射角、照明波長、照明方位角、照明強度、照明偏光、検出器の方位角、検出器の仰角、検出器の検出領域等のいずれかもしくはこれらの組み合わせで構成される欠陥検査条件で構成される。
欠陥検査装置107に複数のセンサが存在する場合は、センサ毎に出力された試料101の欠陥情報もしくは、複数のセンサ出力を統合した試料101の欠陥情報を用いる。そして、欠陥検査装置107で検出した欠陥の一部若しくは全部をレビュー装置で観察する。この際、欠陥検査装置107で取得した欠陥情報を基に、光学顕微鏡105で欠陥の位置情報を再検出し、レビュー装置上の位置情報に変換する。そして、変換された位置情報を用い、SEM106の観察視野内に観察対象欠陥を位置合わせした後、電子線フォーカスを合焦し、欠陥を観察する。また、必要に応じ、欠陥画像の取得、欠陥分類を適宜実施する。なお、必要であれば、SEM106による観察を行う前に、SEM画像を用いた電子線フォーカスの合焦を実施してもよい。この方法を用いれば、SEM106の電子線フォーカスにおける合焦の精度を上げる事ができる。
SEM画像を用いた電子線のフォーカス合わせでは、まずレビュー装置の視野内に欠陥を位置合わせする。その後、光学式高さ検出器104で計測した試料101の観察対象領域の高さ位置を中心に電子線のフォーカス高さをシフトさせていき、高さが異なる複数枚の画像を取得する。そして、該取得した複数枚画像のコントラストなどに基づく特徴量のフォーカス変化を導出し、その特徴量の変化量からSEM画像の焦点が合う位置(以下、SEM合焦位置と称す)を導出する。この導出した結果に基づき、電子線のフォーカスがSEM合焦位置に合うようにSEM106を制御する。以下において、SEM画像を用い、電子線フォーカスを合わせるプロセスをSEM画像オートフォーカスと称す。
半導体プロセスの進展に伴う、高集積化のニーズにより、デバイスにとって致命的となる欠陥サイズが微細化している。そのため、レビュー装置の観察対象欠陥が微細化し、微細な欠陥を高倍率で観察・撮像することが必要である。また、レビュー装置を半導体製造のインライン検査に用いる場合、観察時間の削減はタクトタイム削減となる。また、レビュー装置を半導体製造のオフライン検査に用いる場合、観察時間の削減は迅速なプロセスへのフィードバックを可能にする。そのため、オンライン検査、オフライン検査に関わらず、レビュー装置ユーザには、SEM観察による高分解能で高倍率な欠陥の観察・撮像を高速化したいというニーズがある。
しかしながら、高倍率でのSEM観察において、観察対象欠陥をレビュー装置の視野内に配置するためステージ103を移動させ、ステージが目的とする位置に移動して停止した後、電子線のフォーカスを観察対象欠陥に合わせ、SEM観察を開始するようにするだけでは、高分解能で高倍率な欠陥の観察・撮像の高速化は難しい。なぜなら、ステージ103の移動直後では、ステージ103は水平方向及び垂直方向に振動しているので、これらの振動による像ブレ及び像ボケが発生してしまう。また、ステージ103の移動に伴い、ステージ103だけでなく、SEM106等のレビュー装置の各構成要素も大きく振動する。
SEM画像は、対物レンズ154を用い試料101上に集光した電子線で、試料101上の観察対象領域を走査し、電子線の走査によって試料101上から発生する二次電子や反射電子を二次電子検出器155及び反射電子検出器156を用いて検出された信号から構成されている。SEM画像オートフォーカスを実施せず、ステージ103の移動終了直後に、光学式高さ検出器104を用いて、試料101の表面におけるSEM106視野内の高さ位置を計測し、該計測した高さに電子線のフォーカス位置を合わせ、高倍率のSEM画像を取得する場合(以下、SEM画像オートフォーカスレスと称す。)は、SEM撮像中のステージ103の水平方向振動及び垂直方向振動によって、電子線のフォーカス位置の水平方向揺らぎによる像のゆれ、及び電子線のフォーカスがずれて生じる像ボケを引き起こし、実際の表面とは異なるSEM画像の取得やSEM画像の画質低下等の問題が起きてしまう。
例えば、観察対象領域の電子線走査中に、観察対象領域の水平方向に対して振動が生じた場合、本当は直線のラインアンドスペースパターンであるところが、該水平方向の振動によって走査する位置がずれ、SEM画像では波型のパターンを構成してしまう可能性がある。また、同様に、観察対象領域の電子線走査中に、観察対象領域の垂直方向に対して振動が生じた場合、試料上の電子線スポットサイズが変化し、同一画像内の場所によって空間分解能が異なる場合がある。
さらに、SEM式のレビュー装置では、観察対象領域を複数回電子線で走査し、複数回分の信号を積算し、コントラストの良いSEM像を得るという方法が一般的に行われている。この時、観察対象領域の水平方向の振動、すなわちステージ103とSEM106間の相対変位に大きな振動が存在すると、信号が積算されるために振動の影響がより大きく、像ブレ、像ボケによりSEM画像の解像度が低下しうる。
SEM画像撮像時に許容される電子線のフォーカス位置と観察対象位置間の相対位置の変化について説明する。一般的に、SEMの焦点深度(Depth of Focus: DOF)は光学顕微鏡のDOFに対して長く、SEMは垂直方向の振動に対して安定である。しかし、高倍率のSEM観察においては空間分解能を縮小するために、大きな開口数で電子線を絞っており、その結果、電子線のDOFは短くなり、観察対象領域の振動による電子線のフォーカス位置と観察対象位置間の相対位置変化の影響が無視できなくなる。許容される観察対象領域の水平方向の振動H0(以下、許容水平振動と称す。図6参照。)は、SEMの観察倍率によって決まる横分解能と二次電子検出器155及び反射電子検出器156を用いて取得した信号からSEM画像を構成する際に用いられる信号処理技術によって決まる。また、許容される観察対象領域の水平方向の振動V0(以下、許容垂直振動と称す。図6参照。)は、SEM106の観察倍率やモードに応じた電子線のDOFによって決まる。
従来、SEM画像オートフォーカスレスの場合、電子線のフォーカス位置と観察対象間の位置の相対変位が、SEMが撮像可能な程度に収まり、振動による像ブレ、像ボケの発生を抑制するために、ステージ103の移動終了後からSEM画像撮像開始までに、待機時間を設定している。そして、該待機時間は、観察対象座標やステージ103の移動速度・方向等によらず一定値を用いている。一定の待機時間を設定する場合、電子線のフォーカス位置と観察対象領域の位置との間の相対変位変化が十分に収まる時間まで待機するため、SEM画像に対する振動の影響は小さくなる。しかしながら、観察対象領域の試料101上の位置やステージ103の移動速度・方向、加速度等によって、振動の大きさ及び周波数、そして、振動が十分に収まるまでの時間が異なる。そのため、試料全面において一定の待機時間を設定した場合、ステージ103移動後の観察対象領域の振動が小さく、SEM撮像が可能な振動に収まるまでの時間が短いと、SEM撮像開始までに余分な待ち時間が生じ、検査時間が長くなってしまう。また逆に、待機時間設定時に想定していない程、観察対象領域の振動が大きい場合や振動の減衰速度が遅い場合では、振動による像ブレ、像ボケが発生し、低解像度なSEM画像と成りうる。
また、ステージ103の移動終了後にSEM画像オートフォーカスを用いる場合でも、電子線の合焦位置を導出する際、電子線の合焦位置を垂直方向にシフトして取得した複数枚のSEM画像に像ブレや像ボケが存在すると、正確な焦点測度が得られず合焦位置の導出に必要な精度が保証できない、もしくは合焦位置を導出できず、電子線フォーカスの自動焦点合わせに失敗する恐れがある。
本実施例では、上記課題を解決するために、制御システム部125は、振動に応じて画像の取得の時間または位置を決定する。具体的には、光学式高さ検出器104やレーザ変位計108等の計測部で取得した観察対象領域の水平方向および垂直方向の振動を用い、一定の待機時間ではなく、観察対象領域毎に適切な待機時間を設定する。そして、該待機時間終了後、速やかにSEM画像を取得することで、余分な待機時間を減らし、振動起因の像ブレや像ボケの影響を抑制し、高速に高分解能な高倍SEM観察を可能とする方法を提案する。
観察対象領域の振動を計測部で計測するために検出する相対変位は、図2と図3で説明したステージ103とSEM106間の相対変位及び光学式高さ検出器104と試料101の観察対象領域間の相対変位に限らず、電子線のフォーカス位置と観察対象領域間の相対変位、または、計測部とステージ103間の相対変位、計測部とSEM106間の相対変位、電子線のフォーカス位置と観察対象領域間の相対変位に準ずる場所の相対変位でもよい。なお、電子線のフォーカス位置と観察対象領域の位置との間の相対変位は、他のモードの振動の影響を除去でき、より精度の高い位置合わせが可能となる。電子線のフォーカス位置を計測することが困難な場合は、電子線源151やSEM106上のターゲット143等、電子線のフォーカス位置とほぼ同様の振動を有する要素を用いることで相対変位を計測する。また、ステージ103の相対変位を検出する計測部としては、レーザ変位計(図2)や光学式高さ検出器(図3)の他に、静電容量センサ(図示せず)等を用いてもよい。
SEM106の撮像倍率に応じて、計測部で計測した水平方向及び垂直方向の振動を用い、像ブレや像ボケのない十分な分解能を持つSEM画像を取得する上で観察対象領域の振動が十分に減衰するまでに必要な待機時間(図6中のTS)と、観察対象領域の振動が十分に減衰した時の観察対象領域の高さ位置(以下、減衰位置と称す。図6中の点線303。)を、制御システム部125で推定する。推定した待機時間内にSEM106のフォーカス電圧を制御し、推定した減衰位置に電子線のフォーカス位置を合わせ、ステージ103の移動終了から待機時間経過後に、二次電子検出器や反射電子検出器によって検出された試料101上の電子線走査によって発生した電子の信号を用い、SEM画像を取得する。
本方式によれば、ステージ103の移動方向等の違いによって変わる振動を考慮し、各観察対象領域に合わせた待機時間を設定できるため、高倍率なSEM観察の高速化を達成でき、また、像ブレや像ボケのない高分解能なSEM画像を取得可能となる。さらに、観察対象欠陥の座標やステージ103の移動速度等に由らず一定の待機時間を設定する場合とは異なり、環境変動や装置不具合等により予期せず待機時間が長くなった場合においても、振動が収まるまでに必要な待機時間を設定し、像ブレ・像ボケのない高精度で高解像度なSEM観察が可能である。
図4は第1の実施例における欠陥観察までのフロー図を示す。
検査装置107が出力した試料101の欠陥情報を読み込み、該欠陥情報に基づき、光学顕微鏡105で観察対象となる欠陥の位置を再検出し、該位置をレビュー装置上の位置座標に変換する(STEP4000)。そして、観察対象欠陥がレビュー装置100内のSEM106の視野内に入るようにステージ103を移動させる(STEP4001)。ステージ103の移動後、レーザ変位計108と光学式高さ検出器104を用い、観察対象領域の水平方向に対する振動Hと垂直方向に対する振動Vを取得する(STEP4002)。次に、計測した水平方向および垂直方向の振動HおよびVが、許容水平振動H0と許容垂直振動V0よりも小さくなる待機時間および減衰位置を推定する(STEP4003)。推定した減衰位置に基づき、SEM106の電子線フォーカスを合わせた後(STEP4004),ステージ103の移動後から待機時間が経過するまで待機し(STEP4005)、経過後速やかにSEM画像を取得する(STEP4006)。一方、待機時間が経過していない場合、SEM撮像を取得せずに待機する。SEM画像を取得した後、制御システム部125は次に観察する欠陥があるかどうか判断し(STEP4007)、ある場合、上述したレビュー装置で欠陥を観察する手順(STEP4001)へ戻り、処理を進める。一方、次に観察する欠陥がない場合、レビュー装置100による観察を終了する。
なお、計測部を用いて観察対象領域の水平方向及び垂直方向の振動HおよびVを取得するタイミングは、ステージ103の移動前後に限らず、ステージ103の移動中(STEP4001)やSEM撮像前の待機中(STEP4003),SEM撮像中(STEP4004)に取得し続けても良い。SEM撮像開始後引き続き振動を取得し続ける場合、SEM撮像開始前に取得した値から推定した減衰位置や待機時間と、導出以降に取得した実際の減衰位置と待機時間との差を導出し、減衰位置及び待機時間の推定値へフィードバックを行うことで、以降の減衰位置及び待機時間の推定精度の向上が可能となる。
また、各観察対象領域での減衰位置及び待機時間を決定するために使用する計測部による振動の計測値は、現在の観察対象領域での計測値に限らず、過去の観察対象領域での振動の計測値、及び振動の計測値から作成された特徴量、の一つ乃至いずれかである。例えば、振動の計測値から作成された特徴量としては、過去のステージ103における減衰振動の時間変化を近似した関数等が考えられる。この場合、試料101上をマトリックス上に分割したセル毎、ステージ103の移動方向・移動距離毎に、近似関数をデータベース122に保存する。そして、観察対象欠陥への移動方向、観察対象欠陥の座標から適時参照し、減衰位置及び待機時間を推定する。
この時、減衰位置及び減衰時間の決定に使用するための振動の計測値を取得するタイミングは、例えば、試料101に存在する複数個の欠陥の中の最初の観察欠陥へのステージ103の動作から、最後の観察欠陥の減衰位置及び減衰時間の決定まで連続的に計測し続けるとよい。或いは、試料101上の観察対象欠陥個々でステージ103の移動により観察対象領域をSEM106の視野内に入ってから計測値を取得開始し、減衰位置及び待機時間決定後終了してもよい。
試料101の表面特性上、電子線による帯電の影響が大きい場合、レーザ変位計108や光学式高さ検出器104による振動の計測値のみに基づいて推定した観察対象領域の減衰位置に電子線のフォーカス位置を制御すると、帯電によって電子線のフォーカス位置がシフトし、電子線のフォーカス位置を観察対象領域上に合わせることができなくなる恐れがある。
試料101上に複数の観察対象欠陥が存在する場合、観察対象欠陥の一部を用いて、帯電による電子線のフォーカス位置のシフト量データ(以下、帯電フォーカスオフセットと称す。)を取得し、帯電フォーカスオフセット取得後は、計測部の計測値と該帯電フォーカスオフセットを用い、観察対象領域に電子線のフォーカス合わせを行う。例えば、検査開始後1〜N番目の欠陥において、SEM画像オートフォーカスを実施し、計測部の計測値から推定した減衰位置と、SEM画像オートフォーカスで導出した実際のフォーカス位置の帯電フォーカスオフセット量を導出し、N+1個目の欠陥以降は、1〜N番目の欠陥で取得した帯電フォーカスオフセット量と計測部の計測値を用いフォーカス合わせをする。また、N+1番目以降の欠陥観察においても、任意の個数M個中に1回SEM画像オートフォーカスを実施し、帯電フォーカスオフセット量の補正を行なっても良い。この場合、試料101上の帯電による電子線のフォーカスシフト量を考慮したフォーカス合わせが可能であり、試料101の表面特性に影響されず、高倍率においてもフォーカスの合った高精度で高解像度なSEM画像の取得が可能となる。
また、観察対象欠陥の一部を用いて、取得するデータは、帯電フォーカスオフセット量に限らず、計測部の計測値から推定した減衰位置及び待機時間と、推定値導出以降に計測し続けた計測値から検出した実際のステージ103の減衰位置と待機時間との差を導出し、減衰位置及び待機時間の推定値へフィードバックを行うことで、以降の減衰位置及び待機時間の推定精度の向上が可能である。また計測部の計測値から減衰時間及び待機位置の推定方法の補正は、観察対象欠陥を対象にSEM観察中に実施してもよい。例えば、ステージ103移動後に計測部の計測値から減衰時間及び待機位置を推定し、推定した減衰位置に基づき電子線のフォーカスを合わせ、推定した待機時間終了後にSEM画像オートフォーカス用のSEM画像を取得する。減衰位置及び待機時間の推定後も引き続き計測部を用いステージ103の振動を計測し続け、実際の減衰位置と待機時間を計測する。次に、SEM画像オートフォーカスで取得した電子線のフォーカス位置と、実際の減衰位置と待機時間と、推定した減衰位置と待機時間から、帯電のフォーカスシフトを含めた減衰位置及び待機時間の推定方法を補正する。
また、計測部の計測値に基づく減衰位置と待機時間の推定方法の補正を行う場合、補正のためのデータの取得は、観察対象欠陥の一部の欠陥に限らず、試料101上の観察対象領域以外の領域や観察対象試料101以外で行なっても良い。例えば、試料101上の観察対象領域以外の領域を用いる場合、SEM画像オートフォーカス精度の高いパターンを補正用データ取得領域に選択することで、高精度な補正値を導出可能である。また、補正データの取得領域は、観察対象欠陥と同一の試料101上にあるため、試料の表面特性は同一であるり、高精度な帯電フォーカスオフセットが導出できる。SEM画像オートフォーカス時に使用する特徴量によるが、例えば、SEM画像オートフォーカス精度の高いパターンは、高いコントラストが期待できるエッジ部があり、デフォーカスによるSEM画像のコントラスト変化が大きいパターン等が考えられる。また、減衰位置及び待機時間の決定に使用する計測値を観察対象領域以外で取得しても良い。
また、補正に使用するための振動の計測値は、一つの領域の計測値に限らず、複数領域で取得した計測値を用いてもよい。例えば、テストサンプルと観察対象の試料101で取得した計測部の計測値を用いる場合について説明する。観察対象の試料101をSEM観察する前に、テストサンプルを用い、ステージ103の移動に伴う計測部の計測値から、減衰位置及び待機時間を推定し、レビュー装置の装置パラメータをデータベース122に保存しておく。保存するパラメータとしては、例えば、試料101上をマトリックス上に分割し、該分割されたマトリックスのセル毎に、ステージ103の移動方向毎の振動の時間変化を示す減衰曲線等が考えられる。次に、観察対象試料101を観察する際、データベース化された減衰位置及び待機時間と、観察対象欠陥上での計測部の計測値に基づき、SEM106の電子線のフォーカス位置を合焦、及び撮像開始タイミングを制御し、SEM画像を取得する。また、観察対象の試料101の表面特性上、試料101表面の帯電による電子線のフォーカス位置シフトが発生する恐れがある場合は、予め試料101上の一つの領域もしくは複数領域において、SEM画像オートフォーカスを行い、帯電フォーカスオフセット量を取得し、試料101上の観察対象領域をSEM106で撮像する際には、該帯電フォーカスオフセット量と、データベース122に保存された減衰位置及び待機時間と、観察対象欠陥上での計測部の計測値に基づき、SEM106の電子線フォーカス合わせ、及び撮像開始タイミングを制御し、SEM画像を取得する。
次に、減衰位置および待機時間を推定する際に必要な水平方向および垂直方向のステージ103の許容振動H0及びV0を決めるSEM106の撮像倍率について説明する。前述したように、許容振動H0及びV0は、撮像倍率や観察モード等のSEMの光学条件及びSEM画像に対して実施される画像処理によって規定される。撮像倍率は、ユーザインターフェースに表示される検査レシピにおいて、予めユーザが希望する撮像倍率を設定することができる。または、検査レシピにおいて、ユーザが希望する検査時間を設定しても良い。例えば、検査時間を設定する場合、試料101のロード/アンロード等に必要な時間と、試料101上の観察対象欠陥をSEM106の視野内に移動させるために必要なステージ移動時間とを、ユーザ希望検査時間から引いた時間を観察対象欠陥数で割り、一つの欠陥を観察するのに許容される時間を導出する。そして、該許容される時間を基に、一つの欠陥の観察に許容され、かつ観察可能となる待機時間を推定し、該待機時間で撮像可能なSEM観察倍率を決定する方法がある。
次に、本実施例において使用するステージ103の許容振動H0とV0の決め方に関して説明する。
許容振動は、ユーザの希望する観察倍率から決定する方法と、ユーザが希望する検査時間から決定する方法がある。垂直方向の観察対象領域の振動Vの許容振動V0は、SEMの観察倍率のDOF及び計測部で計測した計測値信号の読み出し時間、読み出した信号値から待機時間を計算する計算時間、SEMの電子線照射を制御するシャッターの応答時間、等に基づき決定する。また、水平方向の観察対象領域の振動Hの許容振動H0は、SEMの観察倍率に必要な分解能に基づき決定する。該必要な分解能は、観察するSEMの倍率及び、レーザ変位計108からのフィードバック性能、画像処理性能等に基づき決定する。
待機時間の導出方法は、いくつか考えられる。例えば、複数の振動から振動の標準偏差を導出し、標準偏差が許容振動H0とV0以下になる領域を導出する。他には、複数時間のサンプリング点の計測値を積算し、平滑化した計測値から待機時間を推定する。積算時間は、SEM撮像に問題のない振動周期を用いる。他に振動値の最大、最小値の差分を用いる。
以上で説明したように、本実施例では、ステージ103の移動方向、移動距離、移動速度等の違いによって変わる振動を考慮し、各観察対象領域に合わせた待機時間を設定できるため、高倍率なSEM観察の高速化を達成でき、さらに像ブレや像ボケのない高分解能なSEM画像を取得可能となる。
図5と図6を用い本発明の第2の実施例を説明する。本実施例は、待機時間を推定すること無く、観察対象領域ごとに待機時間を最短に設定することが可能な方法である。図5は、本発明の第2の実施例による欠陥観察のフロー図を示す。ここで、STEP5000からSTEP5002までの流れは、実施例1におけるSTEP4000からSTEP4002までと同様なのでここでは説明を省略する。
SEM106の電子線走査開始時刻をT=0、SEM画像を構成するために必要な撮像時間をT0、振動H及びVがH0及びV0以下となりSEM撮像可能な状態になる時間をTS、実際に撮像終了する時間をTEとする。
STEP5002で取得した振動HおよびVを基に、観察対象領域の減衰位置を制御システム部125で推定し(STEP5003)、推定した減衰位置を用いてSEM106のフォーカスを観察対象領域に合焦する(STEP5004)。続いて、SEM106の電子線での走査を開始し、SEM106の撮像を開始する(STEP5005)。SEM106の撮像開始後、計測部で観察対象領域の水平方向および垂直方向の振動HおよびVを取得し続け、それぞれの振動がSEM撮像可能な許容振動H0及びV0以下になるまで待機する(STEP5005)。この間、SEM106は撮像し続けている。そして、観察対象領域の振動HおよびVが、許容振動H0及びV0以下になった時刻を待機時間TSとし、T0秒経過するまでSEM106は撮像を続け、時刻TSからT0秒後までに撮像した信号を用いてSEM画像を構成する(STEP5007)。そして、T0秒経過後にSEM106の撮像を終了し(STEP5008)、制御システム部125は次の観察対象となる欠陥の有無を判断する(STEP5009)。
なお、ステージ103の移動後からSEM106の電子線走査開始前に限らず、ステージ移動中(STEP5001)や電子線走査中(STEP5005〜5008)に取得した水平方向および垂直方向の観察対象領域の振動を用い、待機時間TS以前は電子線のフォーカス位置の補正を行うために使用し、また、減衰時間TS以降は、他の欠陥観察の減衰位置及び待機時間導出のための補正用データとして使用してもよい。このようにすることで、推定される減衰位置及び待機時間の精度が向上し、より効率的に高解像度のSEM画像を取得できる。
図5に示した本発明の第2の実施例における欠陥観察についての一例を、図6を用いてさらに具体的に説明する。図6は、試料101の観察対象領域を5回電子線走査した場合において、電子線走査によって観察対象領域から発生した電子を二次電子検出器155及び反射電子検出器156を用い検出した信号を積算し、1枚のSEM画像を構成する場合について示している。ここで、観察対象領域の全面を1回電子線で走査することを1フレームと称す。
枠310、311、312は、タイムチャートを表しており、タイムチャート310は各フレームに必要な走査時間を、タイムチャート311はステージ移動終了後に待機時間無くSEMの撮像を開始し、5フレーム分の電子線走査時間を表している。また、タイムチャート312は、本実施例を適用した場合の電子線走査時間を表している。タイムチャート310中の数字は、フレーム数である。実線301は、光学式高さ検出器104及びレーザ変位計108等の計測部によって取得された観察対象領域の振動の時間変化を、線302はSEM106の電子線走査により試料表面上で発生した二次電子や反射電子を二次電子検出器155及び反射電子検出器156で検出した信号を表している。点線303は観察対象領域の振動が十分に収まったときの減衰位置を、矢印304はSEMの撮像が許容される許容振動を、それぞれ示している。点線313は電子線走査開始時間0を、点線314は計測部で計測された変位信号が閾値304以下に収まった減衰時間TSを、点線315は通常の5フレーム撮像の終了時間T0を、点線316は本発明の第二の実施例を適用した場合の5フレーム撮像の終了時間T0+TSを、それぞれ示す。
本発明の第2の実施例を適用した場合、ステージ103の移動終了後、観察対象領域にSEM106の電子線フォーカス位置を合焦し、電子線走査、すなわちSEM画像の撮像を開始する。電子線走査中、計測部で観察対象領域の振動を取得し続け、取得した振動301が許容振動304以下となる待機時間TSを検出し、待機時間TS分に応じて電子線の走査時間を延長し、T0+Tsにおいて電子線の走査を終了する。この時、電子線走査中に取得した二次電子検出器155及び反射電子検出器156の5フレーム分の検出信号を用い、1枚のSEM画像を構成する。そして、ステージ103の移動終了後から待機時間Tsまでに取得した信号は、振動の影響が大きいためSEM画像の構成には使用せず、待機時間TS以降の時間308と時間309で取得した5フレーム分の信号を用い、SEM画像を構成する。
なお、電子線走査の開始及び終了は、SEM106の電子線の光軸上に移動可能なシャッターを出し入れすることで、制御することができる。また、SEM106の電子線フォーカスの位置を合焦するために必要な減衰位置を推定するにあたり、光学式高さ検出器104で取得する垂直方向の観察対象領域の振動は、撮像開始時刻前に導出しても良いし、もしくは、観察対象領域の振動が許容振動以下に収まるまでの待機時間TSまでに導出してもよい。
以上、本実施例では、待機時間を推定すること無く、観察対象領域ごとに待機時間を最短に設定することができ、ステージ103の移動方向や移動量に応じて効率的に一つ以上の欠陥を観察することができる。また、十分に観察対象領域の振動が減衰した後の信号を用いてSEM画像を構成するので、観察によって取得した欠陥のSEM画像は高精度かつ高解像度となる。
図7は本発明の第3の実施例における欠陥観察のフロー図を示す。
本実施例は、観察対象となる欠陥に対し、低倍率及び高倍率のSEM観察を行う場合についての実施例である。ステージ103の移動前後の検出部の計測値を用い、低倍率のSEM撮像時の電子線のフォーカス位置を合焦し、低倍率によるSEM撮像を開始する。そして、そのSEM撮像中に取得した計測部の計測値を用い、高倍率のSEM撮像条件を決定し、低倍率のSEM撮像終了後から高倍率のSEM撮像可能となる待機時間の間に、高倍率のSEM撮像時の電子線のフォーカス位置を合焦し、高倍率のSEM撮像を開始する。これにより、観察対象欠陥毎に適切な待機時間を設定でき、検査時間を短縮することが可能となる。低倍率のSEM撮像中に決定する高倍率のSEM撮像条件は、高倍率のSEM観察における電子線のフォーカス位置及び撮像開始時間等である。
図7を用い、本実施例における欠陥観察の流れの一例を説明する。STEP7000からSTEP7002は実施例1のSTEP4000からSTEP4002と同様であるので説明は省略する。本実施例では、観察対象領域の振動HおよびVを取得し(STEP7002)、ステージ103の待機時間と減衰位置を推定する間に(STEP7003)、計測部により取得した観察対象領域の高さ位置を基に、低倍率(倍率A)で電子線のフォーカス位置を合焦し(STEP7004)、SEM画像を取得する(STEP7005)。この低倍率のSEM画像の取得は、ステージ103が移動した後、待機時間を設けずに行う。低倍率のSEM撮像終了後、推定した減衰位置を用い高倍率(倍率B)でSEMの電子線のフォーカスを合焦する(STEP7006)。次に、推定した待機時間が経過するまで待機し、待機時間が経過すれば(STEP7007)、速やかに高倍率のSEM画像を取得する(STEP7008)。高倍率のSEM画像を取得した後、制御システム部125は、次に観察対象欠陥があるかどうか判断し(STEP7009),ある場合は次の観察対象欠陥の位置にステージ103を移動させ、ない場合は観察を終了する。なお、推定した待機時間が、低倍率のSEM画像の取得時間より短い場合、低倍率のSEM画像取得後速やかに高倍率でSEM106の電子線のフォーカス位置を合焦し、高倍率のSEM画像を取得する。
また、ステージ103の移動後からSEM106の電子線走査開始前に限らず、ステージ移動中(STEP7001)や待機時間が経過するまで待機している間(STEP7007)、低倍率のSEM画像取得中(STEP7005)、及び高倍率のSEM画像取得中(STEP7008)に観察対象領域の水平方向および垂直方向の振動HおよびVを計測し、それらを用い、減衰時間を経過する以前は電子線フォーカスの位置を補正するために使用し、減衰時間を経過した以降は、他の欠陥観察の減衰位置及び待機時間の推定のために補正用データとして使用してもよい。
低倍率におけるSEM観察の倍率Aの決め方については、ステージ103の移動後、移動に伴う振動が存在する中で速やかに撮像が可能な深いDOFや粗い分解能を持つ倍率を、予めユーザがユーザインターフェイスに表示される検査レシピ上で設定してもよい。または、ステージ103の移動前後の計測部の計測値を用いて自動で選択、もしくは、予め装置パラメータとして設定してもよい。予め装置パラメータとして低倍率でのSEM画像取得時の倍率Aを設定する場合は、観察対象領域の座標やステージ移動方向等に由らず一定値としてもよいし、もしくは、ステージ103の平面をマトリックス状に分割し、各マトリックスのセルにおいて、ステージ移動方向毎に異なる値としても良い。観察対象領域の座標やステージ移動方向によって異なる倍率を設定する場合は、予めデータベース122に保存しておき、検査レシピ作成後に、各観察対象領域の低倍SEM撮像倍率を選択する。
高倍率のSEM観察の倍率Bは、検査レシピにおいて予めユーザが希望する観察倍率を設定することができる。または、検査レシピにおいて、ユーザが希望する検査時間を設定しても良い。例えば、検査時間を設定する場合、試料101のロード/アンロード等に必要な時間と、試料101上の観察対象欠陥をSEM106の視野内に移動させるために必要なステージ移動時間とを、ユーザ希望検査時間から引いた時間を観察対象欠陥数で割り、一つの欠陥の観察に許容される時間を導出し、該一つの欠陥の観察に許容される検査時間内に低倍率のSEM観察及び高倍率のSEM観察が可能となる高倍率のSEM撮像に許容される待機時間を導出し、該待機時間で撮像可能なSEM観察倍率を決定する方法がある。
また、低倍率のSEM画像取得中に計測した計測部の計測値から高倍率のSEM撮像条件を決定する方法がある。計測部の計測値から、低倍率のSEM撮像終了時間に計測した振動を用い、該振動の大きさを許容出来る倍率Bを高倍率のSEM撮像倍率に設定し、低倍率のSEM撮像終了後速やかに高倍率のSEM撮像を開始する。この時使用する計測部の計測値は、低倍率のSEM撮像中継続して取得した値、もしくは、低倍率のSEM撮像開始後で高倍率のSEM撮像開始前に取得した1点、もしくは複数点の計測値を用いても良い。
また、予め試料101の表面高さマップを作成し、その高さ情報を用いてSEM106の電子線フォーカスを合焦点してもよい(STEP7004)この時、ステージ移動終了後すぐに低倍率のSEM撮像を開始することが可能となり、効率的に欠陥を観察することができる。
また、低倍率のSEM画像を用い、観察対象欠陥の座標を導出し、高倍率のSEM画像を取得する際の電子線フォーカスの位置合わせの際に、該座標と計測部の計測値を用いることで、高精度な座標アライメントが可能である。このようにすることで、より精度高く欠陥の観察が可能となる。低倍率のSEM画像を用い欠陥座標のアライメントを行う場合、高倍率のSEMの撮像倍率Bの空間分解能や画像処理方法などによって規定される必要アライメント精度が得られる倍率として倍率Aを決定する方法がある。
以上で説明したように、本実施例では、高倍率のSEM画像を取得するための待機時間中に、低倍率のSEM画像を取得することで、観察対象の欠陥の位置の精度を高めつつ、観察対象欠陥毎に適切な待機時間を設定し、検査時間を短縮することが可能となる。