JP2015169198A - ユニフロー2ストロークエンジン - Google Patents

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Abstract

【課題】 ユニフロー2ストロークエンジンにおいて、簡素な構成で吸気の吹き抜けを抑制する。
【解決手段】 ユニフロー2ストロークエンジンEであって、ピストン23が往復動可能に受容されたシリンダ22と、シリンダの上端部に設けられた排気ポート31と、シリンダの下部側壁部に設けられ、ピストンによって開閉される掃気ポート56と、掃気ポートに設けられ、掃気ポートを通過するガスの抵抗となり、ガスの流速を低下させる減速手段59とを有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ユニフロー2ストロークエンジンに関する。
シリンダの上端部に設けられた排気ポートと、シリンダの下部側壁部に設けられた掃気ポートとを有するユニフロー2ストロークエンジンが公知である。掃気ポートは、シリンダ内を往復動するピストンによって開閉される。このエンジンでは、ピストンが下降すると、クランク室内の混合気が圧縮されると共に掃気ポートが開かれ、クランク室内の混合気が掃気ポートを通過してシリンダ内に流入する。同時に、排気ポートが開かれることによって、シリンダ内の排気ガス(既燃焼ガス)は流入する混合気によって排気ポートから押し出される。このとき、シリンダに流入する混合気の層と排気ガスの層とが混ざり合わず、境界が明確であれば、排気ガスのみを排気ポートから排出することが可能である。しかしながら、混合気の一部は、排気ガスと混ざり合い、或いは排気ガスよりも速い速度を有することによって、排気ガスと共に排気ポートから外部に排出される、いわゆる吹き抜けが発生する。混合気の吹き抜けは、燃費や環境汚染の観点から好ましくない。
このような問題に対して、掃気ポートの経路上に混合気の分離装置を設けたエンジンがある(例えば、特許文献1)。このエンジンでは、混合気は遠心分離式の分離装置を通過することによって燃料がリッチな流れと、燃料がリーンな流れとに分離され、それぞれ異なる通路を通過してシリンダに供給される。そのため、燃料がリーンな混合気を使用して掃気を行うことで、排気ポートから排出される燃料の濃度を低下させることができる。
特許第5039790号公報
しかしながら、特許文献1に係るエンジンは、排気ガスの層及び混合気の層の境界を明確にするものではないため、排気ポートから排出される混合気の燃料濃度を低下させることができるものの、混合気が外部に排出されることには変わりがない。また、遠心分離装置で分離された燃料がリッチな流れと、リーンな流れとをシリンダに供給するタイミングを制御しなければならず制御が複雑である。
本発明は、以上の背景を鑑み、ユニフロー2ストロークエンジンにおいて、簡素な構成で吸気の吹き抜けを抑制することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、ユニフロー2ストロークエンジン(E)であって、ピストン(23)が往復動可能に受容されたシリンダ(22)と、前記シリンダの上端部に設けられた排気ポート(31)と、前記シリンダの下部側壁部に設けられ、前記ピストンによって開閉される掃気ポート(56)と、前記掃気ポートに設けられ、前記掃気ポートを通過するガスの抵抗となり、ガスの流速を低下させる減速手段(59)とを有することを特徴とする。
この構成によれば、減速手段は、掃気ポートを流れる混合気の流れの抵抗となり、混合気の流速を低下させる。これにより、掃気ポートからシリンダに流れる混合気の流れが、シリンダ内の排気ガスを追い越して、排気ガスよりも先に排気ポートに到達することが抑制される。また、掃気ポートからシリンダに供給されるガスの流速が低下するため、シリンダ内の排気ガスとの混合が抑制され、供給されるガス層と排気ガス層との境界が一層明確になり、排気ポートの閉タイミングを調整することで排気ガス層のみの排出が可能になる。減速手段は、混合気の流れに含まれる様々な速度の内で、高い速度を低下させ、速度分布の分散を小さくする。
また、上記の発明において、前記減速手段は、通気性を有する網目部材又は多孔質部材を含むとよい。
この構成によれば、簡素な構成で、掃気ポートを流れるガスの流速を低下させることができる。
また、上記の発明において、前記減速手段は、金属メッシュであるとよい。
この構成によれば、簡素な構成で、燃料に対する耐食性や、耐熱性を有する減速手段を形成することができる。
以上の構成によれば、ユニフロー2ストロークエンジンにおいて、簡素な構成で吸気の吹き抜けを抑制することができる。
実施形態に係るエンジンの縦断面図 図1のII-II断面図 図1のIII-III断面図 シリンダ軸線Aを中心とした周方向を展開して示す掃気ポートの模式図 図3のV-V断面図 変形実施形態に係るエンジンの要部を拡大して示す縦断面図 変形実施形態に係るエンジンの要部を拡大して示す縦断面図 変形実施形態に係るエンジンの要部を拡大して示す縦断面図
以下、図面を参照して、本発明を単気筒のユニフロー2ストロークエンジン(以下、エンジンEという)に適用した実施形態について詳細に説明する。
(エンジンの概略構成)
図1および図2に示すように、エンジンEの機関本体1は、内部にクランク室2Aを画成するクランクケース2と、クランクケース2の上部に接合されたシリンダブロック3と、シリンダブロック3の上部に接合されたシリンダヘッド4と、シリンダヘッド4の上部に接合され、シリンダヘッド4との間に上部動弁室6を画成するヘッドカバー5とを有する。
クランクケース2は、図2に示すように、上下に延びる面(シリンダ軸線Aを通る面)で左右に分割された一対のクランクケース半体によって構成される。左右のクランクケース半体は、ボルトによって互いに締結され、両半体間にクランク室2Aを形成する。クランクケース2の左右の側壁2B、2Cには、軸受7を介してクランクシャフト8が回転可能に支持される。
クランクシャフト8は、クランクケース2の側壁2B、2Cに支持される一対のジャーナル8Aと、両ジャーナル8A間に設けられた一対のウェブ8Bと、両ウェブ8Bによってジャーナル8Aから偏心した位置に支持されたクランクピン8Cとを有する。
右側壁2Cの外面側にはエンドプレート11が締結される。エンドプレート11は、周縁部において右側壁2Cの外面に締結され、右側壁2Cとの間に下部動弁室12を形成する。クランクシャフト8の左端部8Dは、クランクケース2の左側壁2Bを貫通して左方に延出する。クランクシャフト8の右端部8Eは、クランクケース2の右側壁2C及びエンドプレート11を貫通して右方へと延出する。クランクシャフト8の左端部8Dが左側壁2Bを貫通する部分、及び右端部8Eがエンドプレート11を貫通する部分には、クランク室2Aの気密性を確保するためのシール部材13がそれぞれ設けられる。
クランクケース2の上部には、上下に延び、上端がクランクケース2の上端面に開口すると共に、下端がクランク室2Aに向けて開口する断面円形の第1スリーブ受容孔16が形成される。
シリンダブロック3は、上下に延在し、下端面においてクランクケース2の上端面に接合される。シリンダブロック3には、上端面から下端面に上下に貫通する第2スリーブ受容孔18が形成される。第2スリーブ受容孔18は、上部が下部に対して段違いに拡径された円形断面の段付き孔であり、上部及び下部の境界部に上方を向く環状の肩面18Aを有する。第2スリーブ受容孔18の下端開口は、シリンダブロック3の第1スリーブ受容孔16の上端開口と同軸に対向し、互いに連通する。第1スリーブ受容孔16及び第2スリーブ受容孔18の下部の内径は等しく、連続した孔を形成する。
第1及び第2スリーブ受容孔16、18には、円筒状のシリンダスリーブ19が圧入される。シリンダスリーブ19は、外周部に径方向外方に突出する環状の凸部21を有する。凸部21が肩面18Aに当接することによって、シリンダスリーブ19の第1及び第2スリーブ受容孔16、18に対する位置が定まる。シリンダスリーブ19の下端は、第1スリーブ受容孔16の下端開口から下方に突出し、クランク室2Aの内部において突出端となっている。シリンダスリーブ19の上端はシリンダブロック3の上端面と面一となる位置に配置され、シリンダブロック3に接合されるシリンダヘッド4の下端面に当接する。これにより、シリンダスリーブ19は、肩面18Aとシリンダヘッド4の下面との間に挟持され、シリンダ軸線A方向において位置が定まる。シリンダスリーブ19の内孔は、シリンダ22を形成する。
シリンダ22には、往復動可能にピストン23が受容される。ピストン23は、クランクシャフト8と平行に延びるピストンピン23Aを有する。ピストンピン23Aには、軸受24を介してコンロッド26の小端部が回動可能に支持される。コンロッド26の大端部は、軸受25を介してクランクピン8Cに回動可能に支持される。ピストン23とクランクシャフト8とがコンロッド26によって連結されることによって、ピストン23の往復動がクランクシャフト8の回転運動に変換される。
図1および図2に示すように、シリンダヘッド4の下端面におけるシリンダスリーブ19に対応する位置には、半球状の燃焼室凹部28が形成されている。燃焼室凹部28は、ピストン23の頂面との間に燃焼室29を形成し、シリンダ22の上端部となる。
シリンダヘッド4には、点火プラグ30が燃焼室29に臨むように設けられている。また、シリンダヘッド4には、排気ポート31が燃焼室29の頂部に開口するように形成されると共に、排気ポート31を開閉するポペット型の排気弁32が設けられている。排気弁32は、そのステムエンドが上部動弁室6に配置され、バルブスプリング33によって閉方向に付勢されている。排気弁32は、動弁機構34によって、クランクシャフト8の回転に同期して開閉駆動される。
図2に示すように、動弁機構34は、クランクシャフト8の回転に応じて回転するカムシャフト41と、カムシャフト41によって進退駆動されるプッシュロッド42と、プッシュロッド42によって駆動され、排気弁32を開方向に押すロッカアーム43とを有する。カムシャフト41は、下部動弁室12にクランクシャフト8と平行に配置されている。カムシャフト41は、一端がクランクケース2の右側壁2Cに回転可能に支持されると共に、他端がエンドプレート11に回転可能に支持される。クランクシャフト8は、下部動弁室12に位置する部分にクランクギヤ45を有し、カムシャフト41はクランクギヤ45に噛み合うカムギヤ46を有する。クランクギヤ45とカムギヤ46のギヤ比は1:1である。カムシャフト41には、板カムであるカム47が設けられている。
プッシュロッド42は、両端が開口した管状のロッドケース51に進退可能に収容されている。ロッドケース51は、上下に延在し、下端がクランクケース2の右側壁2Cに接合されて下部動弁室12に連通すると共に、上端がシリンダブロック3に接合されて上部動弁室6に連通する。プッシュロッド42は、下端においてカムシャフト41のカム47に当接し、カムシャフト41の回転に応じて進退する。プッシュロッド42の下端にローラを設け、ローラにおいてカム47に転接するようにしてもよい。
ロッカアーム43は、シリンダヘッド4に支持されたロッカシャフト52に回動可能に支持される。ロッカシャフト52は、シリンダ軸線A及びクランクシャフト8の軸線と直交する方向に延在する。ロッカアーム43は、一端にプッシュロッド42の上端に当接する受け部43Aを有し、他端に排気弁32のステムエンドに当接するスクリュアジャスタ43Bを有する。
以上の構成の動弁機構34によって、クランクシャフト8が1回転する毎に、所定のタイミングで排気弁32が1回開かれる。
図1に示すように、クランクケース2の前側壁2Dには、クランク室2Aに連通する開口である吸気ポート53が形成されている。吸気ポート53は、クランクシャフト8の前方に配置され、クランクシャフト8側に向けて前後に延びている。吸気ポート53の外端には、図示しない吸気通路が接続される。吸気ポート53には、吸気ポート53側からクランク室2A側への流体の流れを許容する一方で、クランク室2A側から吸気ポート53側への流体の流れを阻止するリード弁54が設けられている。リード弁54は、通常は閉弁しており、ピストン23の上昇によってクランク室2A内の圧力が低下すると開弁する。
シリンダスリーブ19の第1スリーブ受容孔16内に対応する部分には、径方向に貫通する掃気口55が形成されている。掃気口55の高さ寸法は、ピストン23の外周面の高さ寸法よりも小さく設定されている。クランクケース2の上部であって、第1スリーブ受容孔16の周囲には、クランク室2Aと掃気口55とを連通する掃気ポート56が形成されている。掃気口55は掃気ポート56の下流端をなす。掃気口55(掃気ポート56)は、ピストン23の往復動によって開閉される。具体的には、ピストン23が掃気口55と対応する位置にあるときには、掃気ポート56はピストン23の外周部によって閉じられ、ピストン23の下縁が掃気口55の下縁55Bよりも上方(上死点側)にあるときには、掃気ポート56がシリンダ22のピストン23よりも下側部分と連通するように開かれ、ピストン23の上縁が掃気口55の上縁55Aよりも下方(下死点側)にあるときには、掃気ポート56がシリンダ22のピストン23よりも上側部分と連通するように開かれる。
図3に示すように、本実施形態では、エンジンEは2つの掃気ポート56及び2つの掃気口55を有する。2つの掃気ポート56及び掃気口55は、シリンダ軸線Aを中心として、回転対称形をなし、180°回転対称位置に配置される。
図4は、シリンダ軸線Aを中心とした周方向を展開して示す掃気ポート56の模式図である。図1及び図4に示すように、各掃気ポート56の上流側部分56Aは、クランク室2Aに連通する下端からシリンダスリーブ19の径方向外方をシリンダ軸線Aと平行に上方に延びる。上流側部分56Aの上端は、掃気口55の上縁55Aよりも上方に配置される。
各掃気ポート56の下流側部分56Bは、掃気口55を通過してシリンダ22内に流入するガス流に下向きの速度成分を与えるために、上流側部分56Aの上端から掃気口55に向けて斜め下方に延びる。詳細には、通路部材(クランクケース2)によって形成される下流側部分56Bの上壁面56Cは、上流側から下流側に進むにつれて下方に進むように傾斜した傾斜面をなす。上壁面56Cは、掃気口55の上縁55Aに滑らかに連続する面をなす。また、通路部材(クランクケース2)によって形成される下流側部分56Bの下部を形成する通路部材の下壁面56Dは、上流側から下流側に進むにつれて下方に進むように傾斜した傾斜面をなす。下壁面56Dは、掃気口55の下縁55Bに滑らかに連続する面をなす。
図3及び図4は掃気ポート56の形状を表しており、図中に記載された角度は図3及び図4で対応する角度位置を表している。図3に示すように、下流側部分56Bは、上流側部分56Aの上部から掃気口55に向けてシリンダスリーブ19の径方向外方を周方向に延在する。下流側部分56Bは、シリンダ軸線Aに沿った上側から見た場合に、上流側から下流側にシリンダ軸線Aを中心とした時計回り方向に延在している。
図4に示すように、下流側部分56Bは、シリンダ軸線Aを中心とした周方向において上流側から下流側に進むにつれて下方に進むように傾斜する。また、図5に示すように、シリンダ軸線Aを中心とした径方向において上流側(径方向外側)から下流側(径方向内側)に進むにつれて下方に進むように傾斜する。図4及び図5に示すように、上壁面56C及び下壁面56Dは、シリンダ軸線Aを中心とした周方向において上流側から下流側に進むにつれて下方に進むように傾斜し、径方向において上流側から下流側(径方向において外側から内側)に進むにつれて下方に進むように傾斜する。
掃気ポート56の下流側部分56Bが下流側に進むにつれて下方に進むように傾斜しているため、下流側部分56B及び掃気口55を通過してシリンダ22内に流入するガス流は、下向きの速度成分を有し、ピストン23の頂面側に流れる。上壁面56C及び下壁面56Dは、それぞれ掃気ポート56からシリンダ22内に流入するガス流に下向きの速度成分を与える第1のガイド手段を構成する。
図3及び図5に示すように、下流側部分56Bの外周側部を構成する通路部材の外周側壁面56Eは、シリンダ軸線Aを中心とした周方向に延在する。下流側部分56Bの内周側部を構成する内周側壁面56Fは、シリンダスリーブ19の外周面によって形成され、シリンダ軸線Aを中心とした周方向に延在する。外周側壁面56Eの掃気口55と連続する外周下流端部分56Gは、下流側に進むほど径方向内方に進むように、シリンダ軸線Aを中心とした周方向に対して傾斜している。外周下流端部分56Gは、掃気口55の側縁55Cにおいて、シリンダスリーブ19の外周面の接線方向と略平行に延在する。これにより、下流側部分56Bを通過してシリンダ22内に供給されるガス流は、外周側壁面56E及び外周下流端部分56Gにガイドされ、シリンダ軸線Aを中心とした周方向の速度成分を有する。そのため、ガス流は、シリンダ22内において、スワール流を形成する。外周側壁面56E及び外周下流端部分56Gは、それぞれ掃気ポート56からシリンダ22内に流入するガス流に周方向の速度成分を与える第2のガイド手段を構成する。
図1及び図4に示すように、掃気ポート56には、流通するガスの速度を低下させる減速手段59が設けられている。減速手段59は、掃気ポート56を通過するガスの抵抗となり、ガスの流速を低下させる。減速手段59は、通気性を有する網目部材又は多孔質部材を含む。本実施形態では、減速手段59として、例えばスチールウール等の金属メッシュであるメッシュ部材が使用される。減速手段59は、掃気ポート56の上流側部分56Aに挿入され、固定される。減速手段59は、掃気ポート56の任意の位置における流路断面積の全てを覆うように配置される。減速手段59は、掃気ポート56の下流側部分56Bに設けられてもよい。
図1に示すように、シリンダスリーブ19のクランク室2Aに突入した下端部の外周部には環状の油路形成部材60が接合されている。油路形成部材60の内周面は、シリンダスリーブ19の外周面と周方向にわたって面接触する。シリンダスリーブ19の外周面であって、油路形成部材60の内周面に対向する部分には、周方向に環状に延在する環状溝(番号省略)が形成されている。環状溝は、油路形成部材60によって覆われ、環状の通路を形成する。油路形成部材60には、径方向に貫通し、環状溝に連通する油入口孔(番号省略)が形成されている。シリンダスリーブ19には、径方向に貫通し、環状溝と連通する油供給孔(番号省略)が形成されている。油供給孔は、シリンダスリーブ19の周方向において複数形成されている。
シリンダブロック3には、第1油路64が形成されている。第1油路64は、シリンダブロック3の側面に開口する一端と、シリンダブロック3の下端面に開口する他端とを有する。クランクケース2には、掃気ポート56からシリンダブロック3の下端面であって、第1油路64が開口する部分に延びる通路65が形成されている。第1油路64のシリンダブロック3の下端面における開口端には、第2油路を形成する第2油路管66の一端が接続されている。第2油路管66は、通路65内を延びて掃気ポート56内に突入し、他端が油路形成部材60の油入口孔に接続されている。これにより、図示しないオイルポンプによって圧送されたオイルは、第1油路64、第2油路管66、油入口孔、環状溝、及び油供給孔を順に通過してシリンダスリーブ19の内壁に供給される。
クランクケース2の後側壁2Eには、燃料噴射弁68が取り付けられている。燃料噴射弁68の先端は、クランク室2Aに配置され、クランクシャフト8側を向いている。燃料噴射弁68は、所定のタイミングでクランク室2Aに燃料を噴射する。
図2に示すように、クランクケース2の左右側壁2B、2Cの内面には、互いに近接する方向に突出する鍔部71が設けられている。鍔部71は、クランクシャフト8と干渉しないように、ピストン23が上死点に位置するときのウェブ8Bの上端よりも上方に配置される。また、一対の鍔部71は、コンロッド26と干渉しないように、その先端同士が左右方向において所定の隙間を有するように配置されている。
このように構成されたエンジンEは、始動後、次のように動作する。図1を参照すると、まず、ピストン23の上昇行程では、これに伴うクランク室2Aの減圧によってリード弁54が開弁し、新気がクランク室2Aに流入する。クランク室2Aに流入した新気には、燃料噴射弁68から燃料が噴射され、混合気が生成される。同時に、シリンダ22の上部の混合気はピストン23によって圧縮され、ピストン23が上死点近傍にあるときに点火プラグ30が火花点火を行い、燃料が燃焼する。
その後、ピストン23が下降行程に移ると、リード弁54が閉じられ、クランク室2A内の混合気が圧縮される。ピストン23の下降が進み、ピストン23が掃気ポート56を開放する前に、動弁機構34に駆動された排気弁32が排気ポート31を開く。次いで、ピストン23が掃気口55を開くと、クランク室2Aにおいて圧縮された混合気が掃気ポート56を通ってシリンダ22内(燃焼室29内)に流入する。燃焼室29内の既燃焼ガス(排気ガス)は混合気によって押し出されるように排気ポート31から排出され、その一部は内部EGRガスとして燃焼室29内に残留する。
ピストン23が再び上昇行程に移ると、ピストン23が掃気ポート56を閉じた後、カム47によって駆動された排気弁32が排気ポート31を閉じ、ピストン23の上昇に伴ってシリンダ22(燃焼室29)内の混合気が圧縮される。同時に、クランク室2A内が減圧され、リード弁54から新気が吸入される。
このようにして、エンジンEは2サイクル動作を行う。掃気ポート56からシリンダ22を経由して排気ポート31へと流れる掃排気の流れは、曲がりの少ないユニフローとなる。
以下、本実施形態に係るエンジンEの効果を説明する。エンジンEでは、掃気ポート56の下流側部分56Bが、下流に進むほど下方に進むように傾斜した上壁面56C及び下壁面56Dを有するため、掃気ポート56からシリンダ22に流入するガスは上壁面56C及び下壁面56Dにガイドされ、下向きの速度成分を有する(図4中の白抜き矢印参照)。このため、掃気ポート56からシリンダ22内に流入する混合気の流れは、高い速度を有する初期に排気ポート31と相反する下側に流れ、ピストン23の頂部やシリンダスリーブ19の内壁と衝突することによって速度が低下する。その後、混合気の流れは、シリンダ22内で排気ポート31側に向きを変えて流れる。そのため、シリンダ22内の排気ガスとの混合が抑制されると共に、排気ガスよりも先に排気ポート31に到達することが抑制される。これにより、シリンダ内における排気ガス層と混合気層との境界が明確になり、排気ガスの排出を一層確実に行うことができると共に、混合気の排気ポート31からの流出を一層確実に抑制することができる。すなわち、層状掃気を一層確実に行うことができる。
上壁面56Cが掃気口55の上縁55Aに滑らかに連続し、下壁面56Dが掃気口55の下縁55Bに滑らかに連続するため、上壁面56C及び下壁面56Dによって下向きにガイドされた混合気の流れは、下向きの速度成分を維持したまま円滑にシリンダ22内に流入する。
下流側部分56Bは、シリンダスリーブ19の径方向外方を周方向に沿って延在するため、クランクケース2を含む機関本体1の大型化を招かずに、下流側部分56Bの長さを確保することができる。また、下流側部分56Bが周方向に延在することによって、下流側部分56Bを流れる混合気は、シリンダ軸線Aを中心とした周方向の速度成分を有し、掃気口55にシリンダ22の接線方向から進入する(図3中の白抜き矢印参照)。これにより、混合気はシリンダ22内においてスワール流を形成する。シリンダ22内を流れる混合気が、上方に直線状に流れず、スワール流を形成することによって、混合気層と排気ガス層との混合が抑制され、両層の境界が一層明確になる。
掃気ポート56に設けられた減速手段59は、掃気ポート56を流れる混合気の流れの抵抗となり、混合気の流速を低下させる。また、減速手段59は、混合気の流れに含まれる様々な速度を均一化する効果を奏する。特に、混合気の流れに含まれる様々な速度の内で、高い速度を低下させ、速度分布の分散を小さくする。これにより、掃気ポート56からシリンダ22に流れる混合気の流れが、シリンダ22内の排気ガスを追い越して、排気ガスよりも先に排気ポート31に到達することが抑制される。
以上の、下流側部分56Bを上流側から下流側に進むにつれて下方に進むようにする構成、下流側部分56Bをシリンダ22の外方において周方向に延在させる構成、及び掃気ポート56に減速手段59を設ける構成は、それぞれ単独で、排気ガスの層と混合気の層との混合を抑制することができ、排気ポート31から排気ガスを排出する際に混合気の排出を抑制することができる。これにより、排気ポート31から排出されるガス中の炭化水素量を低減することができる。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、掃気ポート56の数や形状は、適宜変更することができる。
例えば、掃気ポート56からシリンダ22に流れるガスに下向きの速度成分を与える第1のガイド手段として、本実施形態では上壁面56C及び下壁面56Dの両方を下流側に進むにつれて下方に進む傾斜面にしたが、他の実施形態では上壁面56C及び下壁面56Dの少なくとも一方を下流側に進むにつれて下方に進む傾斜面にしてもよい。
掃気口55の変形例として、図6に示すように、掃気口55の上縁55A及び下縁55B間に複数の柱部80を掛け渡し、掃気口55を複数の長孔状(スリット状)の開口81に区画してもよい。この場合、各柱部80の周方向において下流側部分56Bの上流側を向く側壁面80Aが斜め下方を向くように、各柱部80は下端が上端に対して下流側部分56Bの下流側に偏倚し、傾斜しているとよい。これにより、柱部80の側壁面80Aは、周方向において下流側部分56Bの下流側に進むにつれて下方に進むように傾斜した面を構成する。各側壁面80Aは、下流側部分56Bを流れ、各開口81を通過するガス流を下方にガイドし、下向きの速度成分を与えることができる。
また、図7に示すように、下流側部分56Bは、シリンダスリーブ19の径方向外方を周方向に延在せず、軸線Aの径方向に沿って延在するようにしてもよい。この場合も実施形態と同様に、上流側部分56Aの上端部は掃気口55の上縁55Aよりも上方に延出し、下流側部分56Bは上流側部分56Aの上端から掃気口55に向けて斜め下方に延在する。そして、下流側部分56Bの上壁面56C及び下壁面56Dは、下流側(径方向内側)に進むにつれて下方に進むように傾斜した面を形成するとよい。
また、図7に示すように、掃気ポート56の下流端をなす掃気口55の上縁55A及び下縁55Bをシリンダ22側に進むにつれて下方に進むように傾斜面としてもよい。換言すると、上縁55A及び下縁55Bは、径方向内方に進むにつれて下方に進む傾斜面としてもよい。上縁55A及び下縁55Bを傾斜面にする構成は、図7に示す変形実施形態だけでなく、下流側部分56Bが周方向に延在する実施形態に適用してもよい。
また、図8に示すように、掃気ポート56の下流端をなす掃気口55の下流側の側縁55Cをシリンダ22の略接線方向に延びる傾斜面としてもよい。また、掃気ポート56の下流端をなす掃気口55の上流側の側縁55Dをシリンダ22の略接線方向に延びる傾斜面としてもよい。
1…機関本体、2…クランクケース、2A…クランク室、3…シリンダブロック、4…シリンダヘッド、5…ヘッドカバー、8…クランクシャフト、16…第1スリーブ受容孔、18…第2スリーブ受容孔、19…シリンダスリーブ、22…シリンダ、23…ピストン、29…燃焼室、31…排気ポート、32…排気弁、53…吸気ポート、54…リード弁、55…掃気口、55A…上縁、55B…下縁、56…掃気通路、56…掃気ポート、56A…上流側部分、56B…下流側部分、56C…上壁面、56D…下壁面、56E…外周側壁面、56F…内周側壁面、56G…外周下流端部分、59…減速手段、68…燃料噴射弁、A…シリンダ軸線、E…エンジン

Claims (3)

  1. ピストンが往復動可能に受容されたシリンダと、
    前記シリンダの上端部に設けられた排気ポートと、
    前記シリンダの下部側壁部に設けられ、前記ピストンによって開閉される掃気ポートと、
    前記掃気ポートに設けられ、前記掃気ポートを通過するガスの抵抗となり、ガスの流速を低下させる減速手段とを有することを特徴とするユニフロー2ストロークエンジン。
  2. 前記減速手段は、通気性を有する網目部材又は多孔質部材を含むことを特徴とする請求項1に記載のユニフロー2ストロークエンジン。
  3. 前記減速手段は、金属メッシュであることを特徴とする請求項2に記載のユニフロー2ストロークエンジン。
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