JP2015167606A - 再生治療用低分解性フィブリンゲル膜の製造方法及びその製造装置 - Google Patents

再生治療用低分解性フィブリンゲル膜の製造方法及びその製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】低分解性でかつ膜状のフィブリンゲルを容易に製造可能な方法及び装置を提供する。【解決手段】本発明の製造方法は、フィブリンゲル内の増殖因子及び血小板の一部を除去する予備除去工程S1と、フィブリンゲルに熱を付与する加熱工程S2と、フィブリンゲルを圧延する圧延工程S3と、を含む。加熱工程S2と圧延工程S3とは同時に行われる。加熱工程S2では、80〜100℃の温度に維持された少なくとも一対の伝熱性部材2a,2bを用いて、フィブリンゲルが1〜10秒間、加熱しながら均一厚さに圧延される。伝熱性部材2a,2bが金属部材で構成されていることが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、再生治療に使用可能な低分解性フィブリンゲル膜の製造方法及び製造装置に関するものである。
(フィブリンゲル及びその用途)
近年、患者の血液から調製されたゲル状の多血小板フィブリン(PRF)が、歯周病等の再生治療、人工インプラントの埋入や美容外科などの分野で、組織再生促進材料として利用されつつある。本明細書ではこのPRFを「フィブリンゲル」とも呼ぶ。
(フィブリンゲルの長所)
フィブリンゲルは、(1)治療後の痛みを少なくしかつ傷の治りを早くする点、(2)血小板や増殖因子が豊富に含まれた血液由来の材料であるため、骨の少ない所に使用するとその再生が早くなり、ひいては、治癒期間が短縮する点といった優れた長所を有する。
(先行技術:フィブリンゲル圧延装置)
本発明者らは、このフィブリンゲルを、内在する増殖因子や血漿等の栄養分の喪失やその表面に付着した血小板の損傷を引き起こすことなく、フィブリンゲルを均一な厚みに圧延することができる器具を既に提案している(特許文献1を参照)。すなわち、特許文献1に開示の圧延器具は、「組織再生促進材料」としてのフィブリンゲルの本来の機能・長所を保持したままでこれをシート状に形成することを目的として創出された器具である。
(遮断膜の必要性)
ところで、歯周病等の外科手術後の創傷治癒においては、歯肉粘膜上皮細胞の治癒の速度が結合組織の線維芽細胞や骨芽細胞より早いので、上皮細胞の深行増殖(down growth)が起こり、骨や歯周組織の再生/新生が得られにくくなることが問題となっている。この深行増殖の問題を解決するために、歯周組織誘導再生(GTR)法や骨組織誘導再生(GBR)法が提案・実施されている。これらの方法は、具体的には、遮断膜(barrier membrane)を用いて上皮細胞の患部への侵入を防ぎ、線維芽細胞や骨芽細胞の誘導を助けることによって歯周組織や歯槽骨の再生/新生を図るものである(例えば、特許文献2を参照)。
遮断膜には、非吸収性のものと吸収性のものとに大別される。非吸収性の遮断膜には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜などが挙げられるが、生体内で非吸収性のため術後に取り除く必要があり、生体組織(歯肉骨膜弁等)と癒着しないので、術後縫合部の開列が起こり易いという欠点が指摘されている。
一方、吸収性の遮断膜には、コラーゲン膜、PLA/PGA(ポリ乳酸/ポリグリコール酸共重合体)膜、等の生体分解性膜が挙げられる。しかしながら、コラーゲン等の架橋を架橋剤により化学的に行っていることから生体内でのこれらの膜の分解は遅々としたものであり、また過度の炎症を引き起こすなどの有害事象も報告されている。また、PLA/PGA膜は分解時に強烈な炎症を引き起こすことも報告されている。
このような欠点に依るのか、近年、遮断膜の市販品の入手が困難となっており、主たる需要者である開業歯科医は困惑している。
特許第5093546号公報 特開2008−148790号公報
本発明者らは、上記遮断膜を取り巻く事情を鑑み、患者の血液由来のフィブリンゲルを、本来の用途たる組織再生促進材料としてではなく、遮断膜としても利用できないかと思案した。
しかしながら、従来のフィブリンゲルは治癒期間を短縮する目的で作製されているため、数日から10日程度の極めて短い期間で生体内に完全に分解してしまう。遮断膜として使用するには、術後、骨芽細胞が十分に生成するまで所定の空隙を確保できるように、フィブリンゲルが6〜12週間程度は分解されずに残存する必要がある。
そこで、本発明では、低分解性でかつ膜状(シート状或いはフィルム状)のフィブリンゲルを容易に製造可能な方法及び装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の末、フィブリンゲルに所定の前処理を行い、所定の熱を付与しながら圧延することにより、遮断膜にも利用可能な低分解性のフィブリンゲル膜を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、例えば、以下の構成・特徴を備えるものである。
(態様1)
フィブリンゲル内の増殖因子及び血小板の一部を除去する予備除去工程と、
前記フィブリンゲルに熱を付与する加熱工程と、
前記フィブリンゲルを圧延する圧延工程と、
を含み、かつ、
前記加熱工程と、前記圧延工程と、を同時に行い、
前記加熱工程では、80〜100℃の温度に維持された少なくとも一対の伝熱性部材を用いて、前記フィブリンゲルを1〜10秒間、加熱しながら均一厚さに圧延することを特徴とする再生治療用低分解性フィブリンゲル膜の製造方法。
(態様2)
前記伝熱性部材が金属部材で構成されていることを特徴とする態様1に記載の製造方法。
(態様3)
前記加熱工程では、前記伝熱性部材の表面の少なくとも一部をセラミックス又は生体親和性を有した油で予め被覆するか、又は、前記フィブリンゲルをフィルム状シートで予め包むことを特徴とする態様1又は2に記載の製造方法。
(態様4)
前記予備除去工程では、前記フィブリンゲルをガーゼで包んで予備押圧することを特徴とする態様1〜3のいずれかに記載の製造方法。
(態様5)
フィブリンゲルを挟持可能な少なくとも一対の伝熱性部材と、
前記伝熱性部材を介して前記フィブリンゲルに熱を供給可能な熱源が設けられた本体と、
前記伝熱性部材の温度を検知する第1センサと、
前記第1センサから得られた情報を取得し、該情報を基に前記熱源での熱の供給を調節して、前記伝熱性部材の温度を80〜100℃の範囲に設定可能な制御部と、
を備えたことを特徴とする再生治療用低分解性フィブリンゲル膜の製造装置。
(態様6)
前記伝熱性部材によって前記フィブリンゲルが挟持されているかどうかを検知する第2センサをさらに備え、かつ、前記制御部は、前記第2センサから得られた情報も取得し、該情報を基に前記フィブリンゲルの加熱時間を計算可能にすることを特徴とする態様5に記載の製造装置。
(態様7)
前記制御部は、前記フィブリンゲルの加熱時間を1〜10秒間の範囲に設定可能であることを特徴とする態様6に記載の製造装置。
(態様8)
前記伝熱性部材は前記本体に着脱自在であることを特徴とする態様5〜7のいずれかに記載の製造装置。
(態様9)
前記伝熱性部材が金属部材で構成されていることを特徴とする態様5〜8のいずれかに記載の製造装置。
(態様10)
前記伝熱性部材は、セラミックスで被覆された表面を含んでいることを特徴とする態様5〜9のいずれかに記載の製造装置。
(態様11)
前記伝熱性部材の目標温度及び目標加熱時間の少なくとも一つを受け付けかつこれらの情報を前記制御部に伝達可能な入力装置を備えたことを特徴とする態様5〜10のいずれかに記載の製造装置。
(態様12)
前記伝熱性部材の温度及び加熱時間の少なくとも一つを表示可能な表示装置、或いは、前記伝熱性部材の温度及び加熱時間の少なくとも一つが前記制御部で決定した設定範囲に出入りする際に警報を発することが可能な警報装置、又は、該表示装置及び該警報装置をさらに備えたことを特徴とする態様5〜11のいずれかに記載の製造装置。
本発明によれば、生体内での分解速度(吸収速度)が低いフィブリンゲルを製造することができ、例えば、これを遮断膜として提供することができる。従来のフィブリンゲルは10日程度で生体内に完全に吸収されるが、本発明により製造されたフィブリンゲル膜は、後述するように、分解が著しく遅延し、3〜4週間経過しても完全に吸収されることは無い。また、この遮断膜は血液由来のフィブリンゲルを利用している為、生体内での炎症を招くこともない。
本発明の製造方法の各工程を示したフロー図である。 本発明の製造装置の一例を示した図である。 試験管を用いたインビトロでの実証試験の結果を示した図である。(実施例1) 動物を用いたインビボでの実証試験の結果を示した図である。(実施例2)
以下、本考案を図面に示す実施の形態に基づき説明するが、本考案は、下記の具体的な
実施形態に何等限定されるものではない。
(実施形態1)
(再生治療用低分解性フィブリンゲル膜の製造方法)
本発明は、再生治療を目的として、患者の血液から調整されたフィブリンゲルを原料として、低分解性を有しかつフィルム状(つまり膜状)を成すフィブリンゲル(以下、単に「フィブリンゲル膜」又は「フィブリンゲル」とも呼ぶ。)を製造する方法を提供する。先ず、この製造方法について、図1を参照しながら、説明する。なお、以下詳述する各工程を実施する前に、血液由来のフィブリンゲルを調整・用意する工程S0を含むことは言うまでも無い。
(予備除去工程S1)
この製造方法は、フィブリンゲル内の増殖因子及び血小板の一部を除去する予備除去工程S1を含む。この予備除去工程S1は、ガーゼの利用が挙げられ、フィブリンゲルをガーゼで包んで予備押圧することが好ましい。これにより、フィブリンゲルが遮断膜として生体内に取り込まれた際に、フィブリンゲルの分解速度を高める要因となり得る増殖因子及び血小板を減らすことが可能となる。
また、本発明者らが既に提案しているフィブリンゲル圧延器具(特許文献1)や公知の圧延器具を用いて予備的に押圧してもよい。また、本発明の製造装置に設けられた後述する伝熱性部材(例えば、金属部材)を用いて、フィブリンゲルを加熱しない状態で予備的に押圧するようにしてもよい。以上の公知の圧延器具や本製造装置の金属部材を利用した場合は、ガーゼを利用した場合に比べ、増殖因子の数を削減しにくいものの血小板等の液体成分を迅速かつ手軽に排出することが可能となる。
(加熱工程S2及び圧延工程S3)
この製造方法は、さらに、フィブリンゲルに熱を付与する加熱工程S2と、このフィブリンゲルを圧延する圧延工程S3と、を含む。なお、後述する実施例のように、加熱工程S2と圧延工程S3とを同時に行うことが好ましい。
(加熱条件)
この加熱工程S2では、80〜100℃の周囲温度かつ1〜10秒間、前記フィブリンゲルを加熱する。好ましくは、周囲温度は80〜90℃で、加熱時間は1〜5秒間である。要求されるフィブリンゲル膜の厚さが薄い場合には、加熱時間は1〜3秒であることが好ましい。周囲温度や加熱時間が上限を超えてしまうとフィブリンゲル内の蛋白質が過度に変性(場合によっては、フィブリンゲルの反り返り(curled)等、その形状が変形)してしまう。一方、下限を下回るとフィブリンゲルに熱を付与してもその内部のフィブリン繊維同士を効率的又は効果的に熱架橋させることができなくなる恐れがある。上記好ましい温度でフィブリンゲルを加熱できれば、フィブリン繊維間に効率的又は効果的な熱架橋が施され、生体内の分解酵素に対して抵抗性を増加させることができる。なお、一対の伝熱性部材を用いて上下(又は左右)からフィブリンゲルを短時間に加熱することにより、外側は比較的硬く、内側は比較的柔らかいフィブリンゲル膜を形成することができる。
(同時処理)
なお、圧延工程S3が加熱工程S2と同時に行われる場合、前述した加熱温度に維持された少なくとも一対の伝熱性部材でフィブリンゲルを加熱しながら均一厚さに圧延することが望ましい。遮断膜に利用できるよう、その厚みを0.1mm〜2mm程度に設定することが好ましい。
なお、伝熱性部材として、金属部材、又は、伝熱性材料で外表面を被覆した樹脂、など伝熱性を有する材料の使用が挙げられ、好ましくは、フィブリンゲルを圧延可能な面を有したシート状の金属部材であり、さらに好ましくは、後述の実施形態2に示すようにフィブリンゲルを把持・収容が可能な匙状の金属部材である。なお、樹脂を利用する場合、上述した加熱温度にも耐えられる耐熱性を有する材料を選択する必要がある。
(フィブリンゲルの付着防止処理)
また、加熱工程S2では、伝熱性部材の表面の少なくとも一部をセラミックス又は生体親和性を有した油で予め被覆するか、又は、フィブリンゲルをフィルム状シートで予め包んでおくこと(図1では、付着防止処理工程S2A)が好ましい。この処理工程S2Aにより、加熱後のフィブリンゲルが、伝熱性部材の表面にこびりつかずに難無く採取することができるようになる。なお、フィルム状シートには、市販の食品包装用フィルムや公知の医療用フィルムが挙げられる。
(実施形態2)
(再生治療用低分解性フィブリンゲル膜の製造装置)
次に、上述した方法の加熱工程S2及び圧延工程S3を実現可能な器具(製造装置)1について、図2を参照しながら説明する。なお、上記加熱工程S2は、下記の製造装置1に限らず、他の装置を用いても実現可能であり、例えば、高温の液体や気体を収容した容器(図示せず)を用意し、フィブリンゲルを所定時間、この容器内に配置することでも達成可能であろう。
この製造装置1は、フィブリンゲル(図2では符号X)を挟持可能な少なくとも一対の伝熱性部材2(図2では、一対の匙状の金属部材2a,2b)と、伝熱性部材2を介してフィブリンゲルXに熱を供給可能な熱源3(図2では、破線で示したコイル3a,3b)が設けられた本体4と、を少なくとも備える。この形態を有した本体4は、ヒンジ部5にて一定距離だけ回動可能に接続された一対の柄部6(6a,6b)内に熱源3a,3bが内蔵されている。また、本体4には、熱源3a,3bに電力を供給するための電源プラグ7も設けられている。さらに、ヒンジ部5の近傍には、加熱を開始又は終了させるためのスイッチ9が設けられていても良い。
また、伝熱性部材2は本体4に着脱自在であることが好ましい。図2の例では、図2(B)に示すように、それぞれの伝熱性部材2a,2bには延長部21(21a,21b)が接続されている一方、それぞれの柄部6a,6bの先端には、延長部21a,21bを熱源3a,3bへ導くための差し込み口8(8a,8b)が設けられている。
伝熱性部材2a,2bの材料として、例えば、ステンレス、チタン、アルミニウム等の金属部材が好ましい。これらの材料は、良好な伝熱特性(熱伝導率及び熱伝達率)を有する他、耐圧性、耐熱性、及び耐腐食性を有する材料でもあり、オートクレーブ滅菌処理や超音波洗浄を適用することで再利用可能となる。また、フィブリンゲルXと直接接触し最も汚れやすい伝熱性部材2a,2bを着脱自在とすることで、この製造装置1のうち当該部材2a,2bのみを一回限りの使い捨て(ディスポーザル)とすることもできる。
また、伝熱性部材2a,2bは、図示しないセラミックスで被覆された表面を含んでいることがさらに好ましい。例えば、フィブリンゲルXを収容・挟持する各面22a,22bにこのセラミックスコーティングが施されていることが好ましい。これにより、加熱後のフィルム状のフィブリンゲル(図示では符号Y)が、伝熱性部材2a,2bの表面22a,22bにこびりつかずに難無く採取することができるようになる。
また、伝熱性部材2a,2bの形状としては、種々の形状を選択することができるが、当該金属部材が急速に加熱されて一定の温度を保持できかつフィブリンゲルXを均一な薄い厚さで圧延できる性能が得られるようにするには、適度に薄くて扁平な板状に構成されていることが好ましい。なお、図示の例の伝熱性部材2a,2bは、フィブリンゲルXを効率良く収容・挟持するため、匙状に形成されている。また、伝熱性部材2a,2bを最も閉じた状態では、これらの部材2a,2bの対向する面22a,22bが、フィブリンゲル膜Yの所望の厚み(0.1mm〜2mm程度)に応じた離間距離を有するように設定されていることが好ましい。
本発明の製造装置1は、さらに、伝熱性部材2a,2bの温度を検知する第1センサ(温度センサ)30と、第1センサ30から得られた情報を取得し、当該情報を基に熱源3a,3bでの熱の供給を調節して伝熱性部材2a,2bの温度を80〜100℃の範囲に設定可能な制御部40と、を備える。これらの構成要素30,40を設けることにより、伝熱性部材2a,2bの表面の現在温度を実測し、その実測値に応じて熱源での熱の供給量を制御すること(場合によっては供給を遮断すること)によって、フィブリンゲルXにおける繊維間の熱架橋を行うのに適切な熱量を伝熱性部材2a,2bに供給し、伝熱性部材2a,2bを所望の温度に維持することができるようになる。
この製造装置1は、さらに、伝熱性部材2a,2bによってフィブリンゲルXが挟持されているかどうか(つまり、挟持の有無)を検知する第2センサ(接触検知センサ)50を備え、かつ、制御部40は、第2センサ50から得られた情報も取得し、当該情報を基にフィブリンゲルXの加熱時間を計算可能にすることが好ましい。
また、この製造装置1は、伝熱性部材2a,2bの目標温度及び目標加熱時間を受け付けかつこれらの情報を制御部40に伝達可能な入力装置61をさらに備えることが好ましい。このような入力装置61を設けることで、目標とする温度や加熱時間を任意に設定したり、微調整したりすることが可能となる。
また、この製造装置1は、第1センサ30で実測された温度、制御部40で計算された加熱時間、及び、入力装置61で受け付けられた目標温度若しくは目標時間の少なくとも一つを表示する表示装置62や、伝熱性部材2a,2bの温度及び加熱時間が制御部40で決定した設定範囲に出入りする際に警報を発する警報装置63をさらに備えることが好ましい。このような表示装置62や警報装置63を設けることで、適切な加熱条件を順守したままフィブリンゲルXを加熱及び圧延することができるため、熟練した者で無くともこの製造装置1を難なく適切に操作することが可能となる。
なお、上述の制御部40、入力装置61、表示装置62、及び警報装置63の少なくとも一つは、公知のパーソナルコンピュータ60を利用することができる。
また、本発明の製造装置1には種々の変形・改良が可能である。例えば、図2において本発明の製造装置1の外部に現われている構成要素(例えば、第1センサ30、制御部40、入力装置61、表示装置62、及び警報装置63)は、この製造装置1に一体となるよう内蔵されていてもよい。また、図2に示す製造装置1では電源プラグ7が設けられているが、これに代えて、例えば、使い捨て電池や充電式電池等を利用してもよい。
(試験管を用いたインビトロでの実証試験)
健康な成人の新鮮な血液(末梢血)を遠心操作して調整し、PBS液で洗浄したフィブリンゲルXを用意した。これを乾いたガーゼで軽く押し潰して、内部の増殖因子及び血小板の一部を除去した(予備除去工程S1)。
次に、伝熱性部材2a,2bを加熱してこれを約100℃の温度に保たれるようにした。実証実験では、伝熱性部材2a,2b及び熱源3a,3bとして毛髪用アイロン(テスコム電機株式会社製)と、伝熱性部材2a,2bの温度を検知する第1センサ30やこの温度を表示する表示装置62として放射温度計(株式会社エー・アンド・デイ製)とを用いて、フィブリンゲルXの加熱工程S2及び圧延工程S3を同時に実行した。加熱時間は約10秒間とした。なお、加熱・圧延工程S2,S3の前に、フィブリンゲルXを食品包装用フィルムで包んでおいた(付着防止処理工程S2A)。具体的には、食品包装用フィルムの表面をエタノールで拭いて紫外線(UV)で滅菌した後、フィブリンゲルXを包むようにした。これにより、フィブリンゲルXを無菌的に操作できただけでなく、伝熱性部材2a,2bの加熱面へのフィブリンゲルXのこびりつきを防止することができた。
その後、加熱・圧延されたフィブリンゲル膜Yにパンチ器具を押し当てパンチして、直径8mmの円盤状の試験片を作製した(実施例1)。なお、予備除去工程S1のみを実行したフィブリンゲルXを用いて同一寸法・形状の試験片を作製し、これを比較例1とした。
次に、24−well plateに上記試験片を挿入し、プラスミンを2μg/mL濃度で注入したハンクス液(HBSS)で充たし、COインキュベータ内で培養した。なお、HBSSは2日おきに新しいものに取り換えた。
(試験管での結果)
図3に、試験片の分解の経時変化を示す。上段は比較例1の試験片(図中、符号Xを参照)の外観を示す一方、下段は実施例1の試験片(図中、符号Yを参照)の外観を示す。この図3からも分かるように、ガーゼで押しつぶしただけでの比較例1の試験片Xでは10日程度でほぼ分解されてしまうのが観察された。一方、実施例1の試験片Yでは、僅かな分解は確認されたが、10日経過してもほぼ分解されずに残存していることが観察された。なお、別の成人の血液から調整したフィブリンゲルを用いて同様の方法で試験を何度か行ったが、同様の結果を得た。
(動物を用いたインビトロでの実証試験)
動物実験のサンプルとして生後6週間の雄のネズミを複数調達し、本試験前に試験場所で1週間以上保管・生育した。また、この動物実験に供するフィブリンゲルXも、上述の試験管試験の実施例1及び比較例1の場合と同様に調整し、実施例2及び比較例2として用意した。
これらの動物サンプルの背部を消毒した後、正中線皮膚切開を実施し、その皮下組織に、実施例2或いは比較例2の試験片を移植して、その後の試験片の分解・吸収の様子を観察した。試験片とこの周辺の結合組織は、これらをヘマトキシリン、エオシン、又はマッソン・トリクロームを用いて染色することで可視化された。
(動物実験の結果)
図4の各図に、上記動物実験の結果、具体的には、ヘマトキシリンで染色された試験片及びその周辺の結合組織の切断画像を示す。図4の(A)及び(B)は、移植後1週間目及び2週間目の比較例2の試験片(図中の破線及び符号Xを参照)の状態を示す。一方、図4(C)、(D)及び(E)は、移植後1週間目、2週間目、及び3週間目の実施例2の試験片(図中の破線及び符号Yを参照)の状態を示す。なお、各画像の倍率・縮尺は同様である。
これらの画像からも明らかなように、比較例2の試験片Xは、2週間を経過すると非常に薄くなっていることが観察される。なお、3週間目では完全に無くなってしまったため、図示していない。
一方、この図4(C)、(D)及び(E)の各画像からも明らかなように、実施例2の試験片Yは、時間の経過とともに、縮小しているが、3週間を経過しても、確実に残存していることが観察された。
以上のように、試験管を用いた試験及び動物実験を用いた試験においても、実施例1,2及び比較例1,2において、生体分解酵素に対する分解速度において有意な差が観察された。
上述したように、歯周病等の再生医療などの分野にて有害物質を含まない安全な遮断膜の需要が高いだけで無く、開業歯科医等が自ら手軽に遮断膜を作製したいとの要望も高い。従って、本発明は、これらの需要に応え、安心・安全な治療の発展に寄与するものであり、産業上の利用価値及び利用可能性は非常に高い。
S1 予備除去工程
S2 加熱工程
S2A 付着防止処理工程
S3 圧延工程
1 再生治療用低分解性フィブリンゲル膜の製造装置
2(2a,2b) 伝熱性部材(一対の金属部材)
3(3a,3b) 熱源(一対の熱源)
4 製造装置の本体
30 第1センサ(温度センサ)
40 制御部
50 第2センサ(接触検知センサ)
61 入力装置
62 表示装置
63 警報装置
X フィブリンゲル
Y フィブリンゲル膜

Claims (12)

  1. フィブリンゲル内の増殖因子及び血小板の一部を除去する予備除去工程と、
    前記フィブリンゲルに熱を付与する加熱工程と、
    前記フィブリンゲルを圧延する圧延工程と、
    を含み、かつ、
    前記加熱工程と、前記圧延工程と、を同時に行い、
    前記加熱工程では、80〜100℃の温度に維持された少なくとも一対の伝熱性部材を用いて、前記フィブリンゲルを1〜10秒間、加熱しながら均一厚さに圧延することを特徴とする再生治療用低分解性フィブリンゲル膜の製造方法。
  2. 前記伝熱性部材が金属部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記加熱工程では、前記伝熱性部材の表面の少なくとも一部をセラミックス又は生体親和性を有した油で予め被覆するか、又は、前記フィブリンゲルをフィルム状シートで予め包むことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記予備除去工程では、前記フィブリンゲルをガーゼで包んで予備押圧することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. フィブリンゲルを挟持可能な少なくとも一対の伝熱性部材と、
    前記伝熱性部材を介して前記フィブリンゲルに熱を供給可能な熱源が設けられた本体と、
    前記伝熱性部材の温度を検知する第1センサと、
    前記第1センサから得られた情報を取得し、該情報を基に前記熱源での熱の供給を調節して、前記伝熱性部材の温度を80〜100℃の範囲に設定可能な制御部と、
    を備えたことを特徴とする再生治療用低分解性フィブリンゲル膜の製造装置。
  6. 前記伝熱性部材によって前記フィブリンゲルが挟持されているかどうかを検知する第2センサをさらに備え、かつ、前記制御部は、前記第2センサから得られた情報も取得し、該情報を基に前記フィブリンゲルの加熱時間を計算可能にすることを特徴とする請求項5に記載の製造装置。
  7. 前記制御部は、前記フィブリンゲルの加熱時間を1〜10秒間の範囲に設定可能であることを特徴とする請求項6に記載の製造装置。
  8. 前記伝熱性部材は前記本体に着脱自在であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の製造装置。
  9. 前記伝熱性部材が金属部材で構成されていることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の製造装置。
  10. 前記伝熱性部材は、セラミックスで被覆された表面を含んでいることを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載の製造装置。
  11. 前記伝熱性部材の目標温度及び目標加熱時間の少なくとも一つを受け付けかつこれらの情報を前記制御部に伝達可能な入力装置を備えたことを特徴とする請求項5〜10のいずれかに記載の製造装置。
  12. 前記伝熱性部材の温度及び加熱時間の少なくとも一つを表示可能な表示装置、或いは、前記伝熱性部材の温度及び加熱時間の少なくとも一つが前記制御部で決定した設定範囲に出入りする際に警報を発することが可能な警報装置、又は、該表示装置及び該警報装置をさらに備えたことを特徴とする請求項5〜11のいずれかに記載の製造装置。
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