こうした波長可変干渉フィルターの課題は、静電アクチュエーターにより一対の反射膜間のギャップの制御を精度よく行うことである。光の波長を対象としている以上、そのギャップ精度はナノメートル単位となる。特に広い帯域での波長選択を可能とする波長可変フィルターの場合、限られた駆動電圧の中で、大きなギャップ変位(可動範囲)を可能としながら、微小な変位による高精度なギャップ制御も可能とする必要がある。
本発明のいくつかの態様では、静電アクチュエーターにより一対の反射膜間のギャップの制御を精度よく行うことができる光フィルター並びにそれを用いた分析機器及び光機器を提供することにある。
(1)本発明の一態様に係る光フィルターは、
第1基板と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板が前記第2基板と対向する第1対向面に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板が前記第1基板と対向する第2対向面に設けられ、前記第1反射膜と対向する第2反射膜と、
平面視で前記第1反射膜の周囲の位置にて前記第1基板の前記第1対向面に設けられた第1電極と、
前記第2基板の前記第2対向面に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、
を含み、
前記第1対向面及び前記第2対向面の少なくとも一方に段差部が形成され、前記第1反射膜と前記第2反射膜との間の初期ギャップを、前記第1電極と前記第2電極との間の初期ギャップよりも小さくしたことを特徴とする。
本発明の一態様では、第1反射膜と第2反射膜との間の初期ギャップを、第1電極と第2電極との間の初期ギャップよりも小さくしている。ここで、静電引力Fは、
F=(1/2)ε(V/G)2S……(1)
と示すことができる。式(1)中、ε:誘電率、V:印加電圧、G:電極間ギャップ、S:電極対向面積である。
つまり、静電引力Fは第1,第2電極間のギャップG(第2ギャップG2)の二乗に反比例する。このため、第1,第2電極間ギャップGが小さい領域ではギャップ変化量ΔGに対する静電引力の変化量ΔFが大きく、ギャップGがわずかに変化しただけで静電引力Fは急激に変化し、所定の静電引力Fを得るためのギャップ制御が極めて困難である。これに対して、本発明の一態様のように電極間ギャップGを第1,第2反射膜間のギャップよりも広げておくと、電極間ギャップの単位変化量に対する静電引力Fを変化は小さくすることができる。よって静電引力Fの大きさを制御し易くすることができる。
(2)本発明の一態様では、前記第1基板の前記第1対向面は、第1面と、平面視で前記第1面の周囲に配置されて前記第1面と段差のある第2面とを含み、前記第1面に前記第1反射膜が形成され、前記第2面に前記第1電極が形成されても良い。
つまり、第1基板の第1対向面に段差を設けることで、第1反射膜と第2反射膜との間の初期ギャップを、第1電極と第2電極との間の初期ギャップよりも小さくすることができる。なおこの場合、第1,第2基板は少なくとも一方が可動である一対の対向基板を呼称するものであるから、対向面に段差が形成されている一方を第1基板と称することができ、段差が形成されていない他方を第2基板と称することができる。第1基板は固定基板でも可動基板であっても良い。
(3)本発明の一態様では、前記第1基板の前記第1対向面は、第1面と、平面視で前記第1面の周囲に配置されて前記第1面と段差のある第2面とを含み、前記第1面に前記第1反射膜が形成され、前記第2面に前記第1電極が形成され、
前記第2基板の前記第2対向面は、第3面と、平面視で前記第3面の周囲に配置されて前記第3面と段差のある第4面とを含み、前記第3面に前記第2反射膜が形成され、前記第4面に前記第2電極が形成されても良い。
つまり、第1基板の第1対向面と第2基板の第2対向面との双方に段差を設けることで、第1反射膜と第2反射膜との間の初期ギャップを、第1電極と第2電極との間の初期ギャップよりも小さくすることができる。
(4)本発明の一態様では、前記第2基板は、前記第1基板に対して可動に支持され、
前記第2基板は、前記第2反射膜が配置される領域が、前記第2電極が配置される領域よりも厚肉に形成されてもよい。
こうして、第2反射膜が形成される領域を厚肉として撓み難くすることで、第2反射膜は平面度を保ってギャップを可変することが可能となる。このとき、第2基板に段差を設ける場合には、この段差を利用して、第2反射膜が配置される領域を厚肉に形成することができる。なお、第2電極が形成される領域は薄肉に形成できるので、第2基板の撓み性を確保できる。
(5)本発明の一態様では、前記第1電極は、電気的に独立した少なくともK(Kは2以上の整数)個のセグメント電極に分割され、前記第2電極は、同電位となる共通電極とすることができる。
この光フィルターでは、平面視で第2反射膜の周囲に配置された第2電極に共通電圧(例えば接地電圧等)を印加し、平面視で第1反射膜の周囲に配置された第1電極を構成するK個のセグメント電極の個々に独立した電圧を印加して、第1,第2反射膜間のギャップの大きさを可変する。印加電圧は直流電圧である。こうして、K個のセグメント電極に印加する電圧の大きさと、K個のセグメント電極の中から電圧を印加するために選択されたセグメント電極数との、2つのパラメーターを変化させることで、第1,第2反射膜間のギャップの大きさを制御する。
特許文献1のように、パラメーターが電圧の種類だけでは、大きなギャップ可動範囲と、ノイズ等による電圧変動に対する低感度とを、両立することが困難であった。本発明の一態様のように、電極数というパラメーターを加えることで、電圧だけで制御する場合と同じ印加電圧範囲を個々のセグメント電極に適用することで、大きなギャップ可動範囲の中で、より微調整された静電引力を発生させて、精細なギャップ調整を行うことが可能となる。
ここで、印加電圧の最大値をVmaxとし、ギャップをN段階で可変するものとする。第1電極が複数に分割されていない場合には、最大電圧VmaxをN分割して印加電圧を割り当てる必要がある。このとき、異なる印加電圧間の電圧変化量の最小値をΔV1minとする。一方、本実施形態では、K個のセグメント電極の各々への印加電圧は、最大電圧Vmaxを平均的には(N/K)分割して割り当てればよい。このとき、K個のセグメント電極の各々について、同一セグメント電極に印加される異なる印加電圧間の電圧変化量の最小値をΔVkminとする。その場合、ΔV1min<ΔVkminが成立することが明らかである。
つまり、K個のセグメント電極への印加電圧の各々について、電位差制御部に供給される最大電圧をフルスケールとして分配した結果、同一セグメント電極に印加される各印加電圧間の電圧変化量の最小値ΔVkminを比較的大きくできる。対比として、本願発明の一態様とは異なり、第1電極を単一電極で形成した時のN段階の各印加電圧間の電圧最小変化量をΔV1minと比較すると、明らかにΔV1min<ΔVkminが成立する。このように、電圧最小変化量を大きく確保できれば、電源変動や環境等に依存したノイズによってセグメント電極への印加電圧が多少変動してもギャップ変動は小さくなる。つまり、ノイズに対する感度が小さい、換言すれば電圧感度が小さくなる。それにより、高精度なギャップ制御が可能となり、特許文献1のようにギャップを帰還制御することは必ずしも要しない。また、ギャップを帰還制御したとしても、ノイズに対する感度が小さいために早期に安定させることができる。
(6)本発明の一態様では、記第1電極は、電気的に独立した少なくともK(Kは2以上の整数)個のセグメント電極に分割され、前記第2電極は、同電位となる共通電極であり、前記K個のセグメント電極は、前記第1反射膜の中心に対して同心リング状に配置されたリング状電極部をそれぞれ含む少なくとも第1,第2セグメント電極を有し、前記第1セグメント電極を前記第2セグメント電極よりも内周側に配置することができる。
こうすると、第1,第2反射膜の縦中心線に対して、第1,第2セグメント電極の各々が線対称配置となる。よって、第1,第2反射膜を中心に対称にギャップ可変駆動力(静電引力)を作用させることで、第1,第2反射膜は平行度を保ったままその間のギャップが可変される。
(7)本発明の一態様では、前記第1セグメント電極には第1引き出し配線が接続され、前記第2セグメント電極には、前記第2セグメント電極の前記リング状電極部を不連続とする第1スリットが設けられ、前記第1引き出し配線は前記第1スリットを介して前記第2セグメント電極の外方に引き出すことができる。
このように、第1,第2セグメント電極をそれぞれリング状電極部とした場合に、外側の第2セグメント電極に形成された第1スリットにより、内側の第1セグメント電極の第1引き出し配線の取り出し経路を確保できる。
(8)本発明の一態様では、前記第1基板に対して変位する前記第2基板に配置された前記第2の電極は、前記第2反射膜の中心に対して同心リング状に配置されたリング状電極部をそれぞれ含む第3,第4セグメント電極を有し、前記第3セグメント電極は前記第1セグメント電極と対向し、前記第4セグメント電極は前記第2セグメント電極と対向し、かつ、前記第3,第4セグメント電極同士を電気的に接続することができる。
こうすると、可動である第2基板に形成される電極面積は、必要最小限に縮小されるので、第2基板の剛性が低くなり、撓み易さを確保できる。
(9)本発明の一態様では、前記第4セグメント電極の前記リング状電極部を、前記第1スリットと対向する位置にて連続形成することができる。この第1スリット内には第1引き出し配線が配置されるので、内側の第1セグメント電極と同電位である第1引き出し配線と、外側の第4セグメント電極間に作用する静電引力を第1スリット内にて生じさせることができる。その利点として、例えば第1,第2セグメント電極を実質的に同電圧で駆動した場合には、外側の第4セグメント電極のほぼ全周に均等な静電引力を生じさせることができる。
(10)これに代えて、前記第1スリットと対向する位置にて前記第4セグメント電極の前記リング状電極部を不連続とする第2スリットをさらに設けても良い。こうすると、第1引き出し配線と対向する電極が存在しなくなる。よって、例えば、内側の第1セグメント電極のみを駆動した時、内側の第1セグメント電極と同電位である第1引き出し配線と、外側の第4セグメント電極間に作用する不要な静電引力が、第1スリット内で発生することを阻止できる。
(11)本発明の一態様では、前記第1,第2基板の少なくとも一方が、第1及び第2対角線を有する矩形基板とすることができる。その場合、前記第1引き出し配線は、前記第1対角線に沿って前記第1セグメント電極より延びる方向を第1方向としたとき、前記第2セグメント電極には、前記第1対角線上にて前記第1方向とは逆方向となる第2方向に延びる第2引き出し配線が接続され、前記第3,第4セグメント電極には、両電極同士を接続して、前記第2対角線に沿った第3方向に延びる第3引き出し配線が接続され、前記第3,第4セグメント電極には、両電極同士を接続して、前記第2対角線上にて前記第3方向とは逆方向となる第4方向に延びる第4引き出し配線が接続され、平面視にて前記矩形基板の四隅の位置に、前記第1〜第4引き出し配線が接続される第1〜第4接続電極部を設けることができる。
こうすると、第1基板に形成される第1,第2引き出し配線と、第2基板に形成される第3,第4引き出し配線とは、平面視で重なり合うことはなく、平行電極を構成しない。よって、第1,第2引き出し配線と、第3,第4引き出し配線との間に無駄な静電引力が生じず、また、無駄な容量を持たない。更に、第1〜第4接続電極部にそれぞれ至る第1〜第4引き出し配線の配線長が最短となる。よって、第1〜第4引き出し配線の配線抵抗と配線容量が小さくなり、第1〜第4セグメント電極を高速に充放電することができる。
(12)本発明の一態様では、前記第2セグメント電極のリング幅を、前記第1セグメント電極のリング幅よりも広くすることができる。
静電引力は電極面積に比例するので、第2セグメント電極により発生する静電引力を大きくすることができる。外側の第2セグメント電極により生じさせる静電引力の方が、内側の第1セグメント電極により生じさせる静電引力よりも大きく求められるからである。
(13)本発明の一態様では、前記第1基板の前記第2面は、第2−1面と、平面視で前記第2−1面の周囲に配置されて前記第2−1面と段差のある第2−2面とを含み、
前記第1セグメント電極は前記第2−1面に配置され、前記第2セグメント電極は前記第2−2面に配置され、前記第2セグメント電極と前記第2電極との間の初期ギャップと、前記第1セグメント電極と前記第2電極との間の初期ギャップとを異ならせることができる。
ここで、第2−1面と第2−2面とが面一であって各ギャップの初期値が同一であるとすると、第1,第2セグメント電極のうち最初に駆動される側の電極間ギャップは、後に駆動される側の電極間ギャップよりも大きくなってしまう。後に駆動される側の電極間ギャップは、最初に駆動される側の電極間ギャップと共に減少するからである。よって、第1,第2セグメント電極のうち最初に駆動される方では、後に駆動される方と比較して、初期ギャップが大きい分だけ初期の静電引力を過大に設定しなければならなくなる。各電極間ギャップの初期値を異ならせておけば、そのような弊害を抑制できる。
(14)本発明の一態様では、前記第2セグメント電極と前記第2電極との間の初期ギャップが、前記第1セグメント電極と前記第2電極との間の初期ギャップよりも小さくすることができる。
後述する通り、外側の第2セグメント電極を最初に駆動する方が有利であり、それに対応させて、第2セグメント電極と第2電極との間の初期ギャップを小さくすることができる。
(15)本発明の一態様では、前記K個のセグメント電極の各々と、前記第2電極との間の各電位差を制御する電位差制御部をさらに有し、前記電位差制御部は、前記K個のセグメント電極毎に設定された電圧値を、前記K個のセグメント電極の各々に印加して、前記K個のセグメント電極毎に設定されている、第1電位差から、前記第1電位差より大きい第2電位差、前記第2電位差より大きい第3電位差へと、前記各電位差をそれぞれ切り替えることができる。
このように、電位差制御部は、K個のセグメント電極の各々と第2電極との間の各電位差を、その電位差が順次大きくなるようにして、少なくとも3値の電位差に切り換えている。これにより、少なくとも3×K段階で、第1,第2反射膜間のギャップが可変されて透過ピーク波長が可変される。換言すれば、K個のセグメント電極毎に設定される第1電位差、第2電位差及び第3電位差は、所望の各透過ピーク波長が実現される第1,第2反射膜間の各ギャップを得るために決定される。
ここで、例えば第2電位差から、第2電位差より小さい第1電位差に切り替えると、第2電位差の時の復元力が、第1電位差の時の静電引力より大きいため、オーバーシュート等の発生による基板の減衰自由振動の時間が長くなり、迅速な波長可変動作が実施できない。これとは逆に、電位差制御部は、第1電位差から、第1電位差より大きい第2電位差へ、さらに第2電位差よりも大きい第3電位差に切り替えるため、基板の減衰自由振動を抑制することができ、迅速な波長可変動作が実施することができる。
(16)本発明の一態様では、前記第1セグメント電極と前記第2電極との間の内周側電位差と、前記第2セグメント電極と前記第2電極との間の外周側電位差とをそれぞれ制御する電位差制御部をさらに有し、前記電位差制御部は、前記第1,第2セグメント電極毎に設定された電圧値を、前記第1,第2セグメント電極の各々に印加して、前記第1,第2セグメント電極毎に設定されている、第1電位差から、前記第1電位差より大きい第2電位差、前記第2電位差より大きい第3電位差へと、前記内周側電位差及び前記外周側電位差をそれぞれ切り替えることができる。
このように、K個のセグメント電極のうち内外で隣接する第1,第2セグメント電極への電圧値を制御することで、内周側電位差と外周側電位差との各々が、その電位差が順次大きくなるようにして、少なくとも3値の電位差に切り換えられる。
(17)本発明の一態様では、前記電位差制御部は、
前記内周側電位差を前記第1電位差とするときに、前記第1セグメント電極に第1セグメント電圧を印加し、前記内周側電位差を前記第2電位差とするときに前記第1セグメント電極に第2セグメント電圧を印加し、前記内周側電位差を前記第3電位差とするときに前記第1セグメント電極に第3セグメント電圧を印加し、
前記外周側電位差を前記第1電位差とするときに、前記第2セグメント電極に第4セグメント電圧を印加し、前記外周側電位差を前記第2電位差とするときに前記第2セグメント電極に第5セグメント電圧を印加し、前記外周側電位差を前記第3電位差とするときに前記第2セグメント電極に第6セグメント電圧を印加することができる。
このように、内周側電位差と外周側電位差との各々を、第1,第2セグメント電極毎に設定されている第1〜第3電位差(つまり、内周側電位差である第1〜第3電位差と、外周側電位差である第1〜第3電位差とはそれぞれ等しいものに限らない)とにそれぞれ設定するに際して、第1セグメント電極には第1〜第3セグメント電圧を、第2セグメント電極には第4〜第6セグメント電圧をそれぞれ印加する。第1,第2セグメント電極への印加電圧は、所望の各透過ピーク波長が実現される第1,第2反射膜間の各ギャップを得るための内周側及び外周側電位差に基づいて決定される。
(18)本発明の一態様では、前記内周側電位差及び前記外周側電位差の各々について、前記第2電位差と前記第3電位差との差の絶対値を、前記第1電位差と前記第2電位差との差の絶対値よりも小さくすることができる。
静電引力は、電位差の二乗に比例する。したがって、電位差が大きくなる方向に、第1電位差、第2電位差、第3電位差と切り替えたとき、第1電位差と第2電位差との差の絶対値と、第2電位差と第3電位差との絶対値の差が同じ場合、静電引力が急激に増大することになり、オーバーシュートの原因となる。そこで、第2電位差と第3電位差との差の絶対値は、第1電位差と前2電位差との差の絶対値よりも小さくする。これにより、ギャップが狭くなった際の静電引力の急激な増大を抑制することができ、オーバーシュートをより抑制することができ、より迅速な波長可変動作を実現することができる。なお、各電位差間の差の絶対値の大きさは、所望の測定波長に対する第1,第2反射膜間のギャップの大きさ、可動側基板の剛性、第1,第2反射膜の領域に対応する基板面積や基板厚さ等々に依存して決定される。
(19)本発明の一態様では、前記内周側電位差及び前記外周側電位差の各々について、前記第2電位差に設定されている期間は、前記第1電位差に設定されている期間より長く、前記第3電位差に設定されている期間は、前記第2電位差に設定されている期間より長くすることができる。
第1電位差よりも大きい第2電位差としたとき、または第2電位差より大きい第3電位差としたとき、基板の復元力も大きくなるため、基板が静止するまでの時間が長くなることがある。すなわち、第1,第2反射膜間のギャップが、定位置に安定するまでの時間が長くなることがある。これに対して、第2電位差に設定されている期間を、第1電位差に設定されている期間より長く、第3電位差に設定されている期間を、第2電位差に設定されている期間より長く設定することにより、ギャップを所定値に安定させることができる。なお、電圧印加期間の長さは、所望の測定波長に対する第1,第2反射膜間のギャップの大きさ、可動側基板の剛性、第1,第2反射膜の領域に対応する基板面積や基板厚さ等々に依存して決定される。
(20)本発明の一態様では、前記電位差制御部が、前記外周側電位差を前記第1電位差に設定したとき、前記第1反射膜と前記第2反射膜との間は、第1間隔に設定され、
前記電位差制御部が、前記外周側電位差を前記第2電位差に設定したとき、前記第1反射膜と前記第2反射膜との間は、前記第1間隔よりも小さい第2間隔に設定され、
前記電位差制御部が、前記外周側電位差を前記第3電位差に設定したときに、前記第1反射膜と前記第2反射膜との間は、前記第2間隔よりも小さい第3間隔に設定され、
前記第1間隔と前記第2間隔との差の絶対値は、前記第2間隔と前記第3間隔との差の絶対値と等しく設定できる。
このように、第1,第2反射膜間のギャップの大きさを、第1間隔、第2間隔及び第3間隔と一定量ずつ順次狭まるように変化させることで、透過ピーク波長も一定値ずつ短くなる。
(21)本発明の一態様では、前記電位差制御部は、前記外周側電位差を前記第3電位差に維持して前記内周側電位差を変化させ、
前記電位差制御部が、前記内周側電位差を前記第1電位差に設定したとき、前記第1反射膜と前記第2反射膜との間は、第4間隔に設定され、
前記電位差制御部が、前記内周側電位差を前記2電位差に設定したとき、前記第1反射膜と前記第2反射膜との間は、前記第4間隔よりも小さい第5間隔に設定され、
前記電位差制御部が、前記内周側電位差を前記第3電位差に設定したときに、前記第1反射膜と前記第2反射膜との間は、前記第5間隔よりも小さい第6間隔に設定され、
前記第4間隔と前記第5間隔との差の絶対値は、前記第5間隔と前記第6間隔との差の絶対値と等しく設定できる。
このように、外周側電位差を第3電位差に維持して内周側電位差を第1〜第3電位差へと変化させることで、第1,第2反射膜間のギャップの大きさを、第3間隔よりも小さい第4間隔、第5間隔及び第6間隔と一定量ずつ順次狭まるように変化させることができ、それにより透過ピーク波長も一定値ずつ短くなる。
なお、第1,第2反射膜間のギャップの大きさは、外周側電位差よりも内周側電位差に基づく静電引力の影響の方が大きい。よって、先ず内周側電位差を変化させた後に、内周側電位差を一定値に維持したまま外周側電位差を変化させても、内周側電位差による静電引力が支配的となって第1,第2反射膜間のギャップは外周側電位差の通りに変化しない。そこで、先ず外周側電位差を変化させた後に、外周側電位差を一定値に維持したまま内周側電位差を変化させている。
(22)本発明の一態様では、前記電位差制御部は、前記外周側電位差としての前記第3電位差が外周側最大電位差に到達した後に、前記外周側電位差を前記外周側最大電位差に維持して前記内周側電位差を変化させることができる。
こうすると、外周側最大電位差にて設定された第1,第2反射膜間のギャップからさらに、内周側電位差の印加による1ステップ分のギャップ変化が可能となる。しかも、内周側電位差を印加させた後には、既に外周側最大外周側電位差に達しているので、外周側電位差を変化させる必要はない。このように内周側電位差を変化させた後に外周側電位差を変化させる必要がなくなるので、外周側電位差を変化させる時に内周側電位差による支配的な静電引力の悪影響をなくすことができる。
(23)本発明の一態様では、前記電位差制御部が、前記内周側電位差としての前記第3電位差を内周側最大電位差に設定したとき、前記第1反射膜と前記第2反射膜との間は最小間隔に設定され、前記外周側最大電位差及び前記内周側最大電位差の各々は、前記電位差制御部に供給される最大電圧を超えない範囲で実質的に等しくすることができる。
こうすると、第1,第2セグメント電極への印加電圧の各々について、電位差制御部に供給される最大電圧をフルスケールとして分配することができるため、上述した電圧最小変化量を従来よりも大きくできる。よって、ノイズに対する感度を小さくできる。
(24)本発明の一態様では、前記電位差制御部は、前記K個のセグメント電極の各々に順次電圧を印加することで、計N段階で前記第1反射膜と前記第2反射膜との間隔を可変し、
前記K個のセグメント電極のうち同一セグメント電極に印加される各印加電圧間の電圧変化量の最小値をΔVkminとした時、前記第1電極を単一電極で形成した時のN段階の各印加電圧間の電圧最小変化量をΔV1minと比較して、ΔV1min<ΔVkminを成立させることができる。これにより、ノイズに対する感度を小さくできることは、上述の通りである。
(25)本発明の他の態様は、上述した光フィルターを含む分析機器を定義している。この種の分析機器としては、被分析対象にて反射、吸収、透過または発光した光を、可変波長の光フィルターに入射させ、光フィルターを透過した各波長の光を受光素子にて受け、受光素子からの信号を演算回路にて演算することで、例えば各波長の強度を測定して、色、ガス中の混合成分等を分析することができる。
(26)本発明のさらに他の態様は、上述した光フィルターを含む光機器を定義している。この種の光機器として、例えば光符号分割多重(OCDM:Optical code Division Multiplexing)や波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)等の光多重通信システムの送信機を挙げることができる。WDMでは、光パルス信号を構成する光パルスの波長によってチャンネルを識別する。OCDMは、符号化された光パルス信号のパターンマッチングによってチャンネルを識別するが、光パルス信号を構成する光パルスは、異なる波長の光成分を含んでいる。よって、光多重通信システムの送信機では、複数の波長の光を用いる必要があり、本発明の一態様に係る光フィルターを用いれば、単一光源からの光から複数の波長の光を得ることができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.光フィルター
1.1.光フィルターのフィルター部
1.1.1. フィルター部の概要
図1は本実施形態の光フィルター10の電圧非印加状態の断面図であり、図2は電圧印加状態の断面図である。図1及び図2に示す光フィルター10は、第1基板20と、第1基板10と対向する第2基板30とを含む。本実施形態では、第1基板20を固定基板とし、第2基板30を可動基板またはダイヤフラムとするが、いずれか一方又は双方が可動であれば良い。
本実施形態では、第1基板20と例えば一体で、第2基板30を可動に支持する支持部23が形成されている。支持部20は、第2基板30に設けても良く、あるいは第1,第2基板20,30とは別体で形成しても良い。
第1,第2基板20,30は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成されている。これらの中でも、各基板20,30の構成材料としては、例えばナトリウム(Na)やカリウム(K)などのアルカリ金属を含有したガラスが好ましく、このようなガラスにより各基板20,30を形成することで、後述する反射膜40,50や、各電極60,70の密着性や、基板同士の接合強度を向上させることが可能となる。そして、これらの2つの基板20,30は、例えばプラズマ重合膜を用いた表面活性化接合などにより接合されることで、一体化されている。第1,第2基板20,30の各々は、一辺が例えば10mmの正方形に形成され、ダイヤフラムとして機能する部分の最大直径は例えば5mmである。
第1基板20は、厚みが例えば500μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。第1基板20は、第2基板30と対向する第1対向面20Aのうちの中央の第1面20A1に、例えば円形の第1反射膜40が形成されている。同様に、第2基板30は、厚みが例えば200μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。第2基板30は、第1基板20と対向する第2対向面30Aの中央位置に、第1反射膜40と対向する例えば円形の第2反射膜50が形成されている。
なお、第1,第2反射膜40,50は、例えば直径が約3mmの円形状に形成されている。この第1,第2反射膜40,50は、AgC単層により形成される反射膜であり、スパッタリングなどの手法により第1,第2基板20,30に形成することができる。AgC単層反射膜の膜厚寸法は、例えば0.03μmに形成されている。本実施形態では、第1,第2反射膜40,50として、可視光全域を分光できるAgC単層の反射膜を用いる例を示すが、これに限定されず、分光可能な波長域が狭いが、AgC単層反射膜よりも、分光された光の透過率が大きく、透過率の半値幅も狭く分解能が良好な、例えばTiO2とSiO2との積層膜を積層した誘電体多層膜を用いてもよい。
さらに、第1,第2基板20,30の第1,第2対向面20A,30Aとは逆側の面にて、第1,第2反射膜40,50に対応する位置に図示しない反射防止膜(AR)を形成することができる。この反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成され、第1,第2基板20,30の界面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させる。
これら第1,第2反射膜40,50は、図1に示す電圧非印加状態にて第1ギャップG1を介して対向配置されている。なお、本実施形態では、第1反射膜40を固定鏡とし、第2反射膜50を可動鏡とするが、上述した第1,第2基板20,30の態様に応じて、第1,第2反射膜のいずれか一方又は双方を可動とすることができる。
平面視で第1反射膜40の周囲の位置であって、第1基板20の第1対向面20A1の周囲の第2対向面20A2には、第1電極60が形成されている。同様に、第2基板30の対向面30Aには、第1電極60と対向して第2電極70が設けられている。第1電極60と第2電極70は、第2ギャップG2を介して、対向配置されている。なお、第1,第2電極60,70の表面は、絶縁膜にて被覆することができる。
本実施形態では、第1基板20が第2基板30と対向する第1対向面20Aは、第1反射膜40が形成される第1面20A1と、平面視で第1面20A1の周囲に配置されて、第1電極60が形成される第2面20A2とを有する。第1面20A1と第2面20A2とは同一面でなく、第1面20A1と第2面20A2との間には段差22があり、第1面20A1の方が第2面20A2よりも第2基板30に近い位置に設定している。これにより、電圧の無印加状態での初期値にて、第1ギャップG1<第2ギャップG2の関係が成立する。
ここで、上述した式(1)から、静電引力Fは第1,第2電極60,70間のギャップG(第2ギャップG2)の二乗に反比例する。静電引力Fの変化量ΔFと、第1,第2電極60,70間のギャップGの変化量ΔGとの関係を、図3に示す。図3では、電極間ギャップGが小さい領域でのギャップ変化量ΔG1と、電極間ギャップGが大きい領域でのギャップ変化量ΔG2(=ΔG1)とが示されている。電極間ギャップGが小さい領域では、ギャップがギャップ変化量ΔG1だけ変化するだけで、静電引力FはΔF1と大きく変化する。これに対して、電極間ギャップGが大きい領域では、ギャップ変化量ΔG1と同じギャップ変化量ΔG2だけ変化しても、静電引力Fの変化量は比較的小さいΔF2となる。
このように、電極間ギャップGが比較的狭い領域では、ギャップGがわずかに変化しただけで静電引力Fが急激に変化し、所定の静電引力Fを得るためのギャップ制御が極めて困難である。これに対して、電極間ギャップGが比較的広い領域では、ギャップ変化単位量に対する静電引力Fの変化が小さい。よって、図3のF−G特性カーブのうち静電引力Fの変化が小さい平坦な領域(電極間ギャップGが比較的広い領域)を使用した方が、電圧間ギャップGによって静電引力Fの大きさを制御し易いことが分かる。
一方、可変波長対象の透過波長帯域は後述するように例えば380〜700nmであって、第1,第2反射膜40,50間の第1ギャッブG1は140〜300nmと小さい。そこで、図1のように、第1ギャップG1<第2ギャップG2に設定して、静電引力Fの大きさを制御し易くしている。
第1電極60は、例えば電気的に独立した少なくともK(Kは2以上の整数)個のセグメント電極に分割され、本実施形態ではK=2の例として第1,第2のセグメント電極62,64を有することができる。つまり、K個のセグメント電極62,64はそれぞれ、異なる電圧に設定可能である一方で、第2電極30は、同電位となる共通電極である。なお、K≧3の場合には、第1,第2セグメント電極62,64に関して以下にて説明する関係は、相隣り合う任意の2つのセグメント電極について適用することができる。なお、本発明は第1電極60を必ずしもK個のセグメント電極に分割するものに限らない。第1電極60を非分割した実施例については、図15〜図18にて後述する。
このような構造の光フィルター10は、第1,第2基板20,30が共に、反射膜(第1,第2反射膜40,50)が形成される領域と、電極(第1,第2電極60,70)が形成される領域とは、平面視で異なる領域となり、特許文献1のように反射膜と電極とが積層されることはない。よって、第1,第2基板20,30の少なくとも一方(本実施形態では第2基板30)が可動基板とされても、反射膜と電極とが積層されないために可動基板は撓み易さを確保できる。しかも、特許文献1とは異なり、第1,第2電極60,70上には反射膜が形成されないので、透過型または反射型波長可変干渉フィルターとしての光フィルター10を利用しても、第1,第2電極60,70を、透明電極とする制約も生じない。なお、透明電極であっても透過特性には影響を与えるため、第1,第2電極60,70上に反射膜が形成されてない事によって、透過型または反射型波長可変干渉フィルターである光フィルター10は所望の透過または反射特性が得られる。
また、この光フィルター10では、平面視で第2反射膜50の周囲に配置された第2電極70に共通電圧(例えば接地電圧)を印加し、平面視で第1反射膜40の周囲に配置された第1電極60を構成するK個のセグメント電極62,64の個々に独立した電圧を印加して、図2に示すように対向電極間に矢印で示す静電引力F1,F2を作用させることで、第1,第2反射膜40,50間の第1ギャップG1を初期ギャップの大きさよりも小さいギャップとなるように可変する。
つまり、電圧印加状態の光フィルター10を示す図2の通り、第1セグメント電極62及びそれと対向する第2電極70とで構成される第1ギャップ可変駆動部(静電アクチュエーター)80と、第2セグメント電極64及びそれと対向する第2電極70とで構成される第2ギャップ可変駆動部(静電アクチュエーター)90とが、それぞれ独立して駆動される。
このように、平面視で第1,第2反射膜40,50の周囲にのみ配置された独立する複数(K個)のギャップ可変駆動部80,90を有することで、K個のセグメント電極62,64に印加する電圧の大きさと、K個のセグメント電極62,64の中から電圧を印加するために選択されたセグメント電極数との、2つのパラメーターを変化させることで、第1,第2反射膜40,50間のギャップの大きさを制御する。
特許文献1のように、パラメーターが電圧の種類だけでは、大きなギャップ可動範囲と、ノイズ等による電圧変動に対する低感度とを、両立することが困難であった。本実施形態のように、電極数というパラメーターを加えることで、電圧だけで制御する場合と同じ印加電圧範囲を個々のセグメント電極に適用することで、大きなギャップ可動範囲の中で、より微調整された静電引力を発生させて、精細なギャップ調整を行うことが可能となる。
ここで、印加電圧の最大値をVmaxとし、ギャップをN段階で可変するものとする。第1電極60が複数に分割されていない場合には、最大電圧VmaxをN分割して印加電圧を割り当てる必要がある。このとき、異なる印加電圧間の電圧変化量の最小値をΔV1minとする。一方、本実施形態では、K個のセグメント電極の各々への印加電圧は、最大電圧Vmaxを平均的には(N/K)分割して割り当てればよい。このとき、K個のセグメント電極の各々について、同一セグメント電極に印加される異なる印加電圧間の電圧変化量の最小値をΔVkminとする。その場合、ΔV1min<ΔVkminが成立することが明らかである。
このように、電圧最小変化量ΔVkminを大きく確保できれば、電源変動や環境等に依存したノイズによってK個のセグメント電極62,64への印加電圧が多少変動してもギャップ変動は小さくなる。つまり、ノイズに対する感度が小さい、換言すれば電圧感度が小さくなる。それにより、高精度なギャップ制御が可能となり、特許文献1のようにギャップを帰還制御することは必ずしも要しない。また、ギャップを帰還制御したとしても、ノイズに対する感度が小さいために早期に安定させることができる。
本実施形態では、中央側の第1,第2反射膜40,50の領域は非駆動領域とし、その周囲を駆動領域とすることで、第1,第2反射膜40,50の平行度を維持している。第1,第2反射膜40,50の平行度は、第1,第2反射膜40,50間で多重反射させて干渉により不要波長の光を減衰させるファブリペロー型干渉フィルターにとっては重要な技術要素である。
本実施形態では、可動基板である第2基板30の撓み性を確保するために、図1に示すように、第2電極70が形成される領域を例えば厚み寸法が50μm程度の薄肉部34としている。この薄肉部34は、第2反射膜40が配置される領域の厚肉部32、および支持部23と接触する領域の厚肉部36よりも肉薄に形成されている。換言すれば、第2基板30は、第2反射膜40及び第2電極70が形成される第2対向面30Aは平坦面であり、第2反射膜40が配置される第1領域に厚肉部32が形成され、第2電極70が形成される第2領域に薄肉部34が形成される。こうして、薄肉部34にて撓み性を確保しながら、厚肉部32を撓み難くすることで、第2反射膜40は平面度を保ってギャップを可変することが可能となる。第2基板30に段部や局所的に厚肉部を設ける例については後述する。
なお、本実施形態では、独立した複数(K個)のギャップ可変駆動部はそれぞれ、一対の電極からなる静電アクチュエーターで構成したが、それらの少なくとも一つを圧電素子等の他のアクチュエーターに置き換えても良い。ただし、非接触で吸引力を与える静電アクチュエーターは、複数あるギャップ可変駆動部同士の干渉が少なく、ギャップを高精度に制御する上で適している。これとは異なり、例えば2つの圧電素子を第1,第2基板20,30間に配置した場合、駆動していない圧電素子が、他の駆動している圧電素子によるギャップ変位を妨げる存在となる等が生じ、複数のギャップ可変駆動部を独立して駆動する方式にとっては弊害を生じる。その点から、複数のギャップ可変駆動部は静電アクチュエーターで構成することが好ましい。
1.1.2. 第1電極
第1電極60を構成するK個のセグメント電極62,64は、図4(A)の通り、第1反射膜40の中心に対して同心リング状に配置することができる。つまり、第1セグメント電極62は第1リング状電極部62Aを有し、第2セグメント電極64はリング状電極部62Aの外側に第2リング状電極部64Aを有し、各リング状電極部62A,64Aが第1反射膜に対して同心リング状に形成される。なお、「リング状」とは、無端リングに限らず不連続リング形状も含み、円形リングに限らず矩形リングまたは多角形リング等を含む用語である。
こうすると、図2に示すように、第1反射膜40の中心線Lに対して、第1,第2セグメント電極の各々が線対称配置となる。これにより、電圧印加時に第1,第2電極60,70間に作用する静電引力F1,F2は、第1反射膜40の中心線Lに対して線対称に作用するので、第1,第2反射膜40,50の平行度が高まる。
なお、図4(A)に示すように、第2セグメント電極64のリング幅W2は、第1セグメント電極62のリング幅W1よりも広くすることができる(W2>W1)。静電引力は電極面積に比例し、第2セグメント電極64により生じさせる静電引力F2の方が、第1セグメント電極62により生じさせる静電引力F1よりも大きく求められるからである。さらに詳しく言えば、外側の第2セグメント電極64は、ヒンジ部として機能する基板支持部23に対して第1セグメント電極62よりも近くに設けられる。このため、第2セグメント電極64はヒンジ部40での抵抗力に抗する大きな静電引力F2を発生する必要がある。外側の第2セグメント電極64は、内側の第1セグメント電極62に比べて直径が大きく、幅W1=幅W2であっても第2セグメント電極64の面積は大きい。よって、幅W1=幅W2としてもよいが、リング幅W2をより広げることにより、更に面積を増大させて大きな静電引力F2の発生を可能とした。特に、後述するように、外側の第2セグメント電極64を内側の第1セグメント電極62よりも先に駆動する場合には、第2セグメント電極64と第2電極70との間の初期ギャップG2が大きいので、第2セグメント電極64の面積を広くして大きな静電引力F2を発生できる点でも有利となる。その場合、内側の第1セグメント電極62の駆動時には、第1セグメント電極64の駆動状態が維持されている限りギャップは小さくなっているので、第1セグメント電極62のリング幅W1は小さくても駆動上の弊害はない。
ここで、第1セグメント電極62には第1引き出し配線62Bが、第2セグメント電極64には第2引き出し電極64Bがそれぞれ接続される。これら第1,第2引き出し電極62B,64Bは例えば第1反射膜40の中心から放射方向に向けて延在形成される。第2セグメント電極64の第2リング状電極部64Aを不連続とする第1スリット64Cが設けられている。内側の第1セグメント電極62から延びる第1引き出し配線62Bは、外側の第2セグメント電極64に形成された第1スリット64Cを介して、第2セグメント電極64の外方に引き出される。
このように、第1,第2セグメント電極62,64をそれぞれリング状電極部62A,64Aとした場合に、外側の第2セグメント電極64に形成された第1スリット64Cより、内側の第1セグメント電極62の第1引き出し配線62Bの取り出し経路を容易に確保できる。
1.1.3. 第2電極
第2基板30に配置された第2の電極70は、第2基板30のうち、第1基板20に形成された第1電極60(第1,第2セグメント電極62,64)と対向する領域を含む域にベタ電極として形成することができる。第2電極70は同一電圧に設定される共通電極だからである。
これに代えて、本実施形態のように第1基板20に対して変位する第2基板30に配置された第2の電極70は、第1電極60と同様に、K個のセグメント電極とすることができる。このK個のセグメント電極もまた、第2反射膜50の中心に対して同心リング状に配置することができる。こうすると、可動である第2基板30に形成される電極面積は、必要最小限に縮小されるので、第2基板30の剛性が低くなり、撓み易さを確保できる。
第2電極70を構成するK個のセグメント電極は、図1、図2及び図4(B)に示すように、弟3セグメント電極72及び第4セグメント電極74を有することができる。第3セグメント電極72は第3リング状電極部72Aを有し、第4セグメント電極74は第3リング状電極部62Aの外側に第4リング状電極部74Aを有し、各リング状電極部72A,74Aが第2反射膜に対して同心リング状に形成される。「同心リング状」の意味は、第1電極60に対するものと同一である。第3セグメント電極72は第1セグメント電極62と対向し、第4セグメント電極74は第2セグメント電極64と対向している。よって、本実施形態では第4セグメント電極74のリング幅(第2セグメント電極64のリング幅W2と同じ)は、第3セグメント電極72のリング幅(第1セグメント電極62のリング幅W1と同じ)よりも広い。
また、第3,第4セグメント電極72,74同士は電気的に接続されて、同一電位に設定される。このために、例えば第3,第4引き出し電極76A,76Bが例えば第2反射膜50の中心から放射方向に向けて延在形成される。第3,第4引き出し電極76A,76Bの各々は、内側の第3セグメント電極72と外側の第4セグメント電極74の双方と電気的に接続される。なお、共通電極である第3.第4セグメント電極72,74は1本の引き出し電極により接続されても良いが、引き出し電極を複数とすることで配線抵抗を少なくして、共通電極の充放電速度を速めることができる。
1.1.4. 第1,第2電極の重合領域
図5(A)は、本実施形態の第1,第2電極60,70を第2基板30側から見た平面視での重なり状態を示している。図5(A)において、下側に位置する第1電極60は、第1,第2セグメント電極62,64が第2電極の第3,第4セグメント電極72,74と対向しているため、第2基板30側から見た平面視では現れない。下側に位置する第1電極は、ハッチングで示すように第1,第2引き出し配線62B,64Bのみが、第2基板30側から見た平面視で現れている。第1引き出し配線62Bは、第2電極70の第3リング状電極部74Aが周方向で連続するので、中間領域62B1が第3リング状電極部74Aの対向領域74A1と対向する。
本実施形態では、図4(A)に示すように、第1電極20のうちの外側の第2セグメント電極64は、第1スリット64Cを有するので、このスリット64Cの領域では第2セグメント電極64に印加した電圧に基づく静電引力F2(図2参照)は作用しない。
一方、この第1スリット64C内には図4(A)に示すように第1引き出し配線62Bが配置されるので、内側の第1セグメント電極62と同電位である第1引き出し配線62Bと、外側の第4セグメント電極74間に作用する静電引力F1(図2参照)を第1スリット64C内にて生じさせることができる。その利点として、例えば第1,第2セグメント電極62,64を実質的に同電圧で駆動した場合には、外側の第4セグメント電極74のほぼ全周(第1スリット64Cとの対向領域74A1を含む)に均等な静電引力を生じさせることができる。
図5(B)は、変形例である第1,第2電極60,70’を第2基板30側から見た平面視での重なり状態を示している。図5(B)の第2電極70’が図5(A)の第2電極70と相違する点は、第4セグメント電極74が、第1電極60の第1スリット64Cと対向する位置にて第4リング状電極部74A’を不連続とする第2スリット78をさらに有する点である。その余の点では、図5(B)の第2電極70’は図5(A)の第2電極70と同一である。
こうすると、第1引き出し配線62Bと対向する電極が存在しなくなる。よって、例えば、内側の第1セグメント電極62を駆動した時、内側の第1セグメント電極62と同電位である第1引き出し配線62Bと、外側の第4セグメント電極74’間に作用する不要な静電引力が、第1スリット64C内で発生することを阻止できる。
1.1.5. 引き出し配線
図6は、第2基板30側から第2基板30を透視して平面図であり、第1〜第4引き出し配線62B,64B,76A,76Bの配線レイアウトを示している。図6において、第1,第2基板20,30の少なくとも一方が、第1及び第2対角線を有する矩形基板とされる。本実施形態では、第1,第2基板20,30の各々が、一辺が例えば10mmの正方形に形成されている。第1引き出し配線62Bが、第1対角線に沿って第1セグメント電極62Aより延びる方向を第1方向D1としたとき、第2引き出し配線64Bは、第1対角線上にて第1方向D1とは逆方向となる第2方向D2に延びている。第3引き出し配線76Aは、第2対角線に沿った第3方向D3に延びている。第4引き出し配線76Bは、第2対角線上にて第3方向D3とは逆方向となる第4方向D4に延びている。そして、平面視にて矩形基板20,30の四隅の位置にて、第1〜第4引き出し配線62B,64B,76A,76Bが接続される第1〜第4接続電極部101〜104が設けられている。
こうすると、先ず、第1基板20に形成される第1,第2引き出し配線62B,64Bと、第2基板30に形成される第3,第4引き出し配線76A,76Bとは、平面視で重なり合うことはなく、平行電極を構成しない。よって、第1,第2引き出し配線62B,64Bと、第3,第4引き出し配線76A,76Bとの間に無駄な静電引力が生じず、また、無駄な容量を持たない。更に、第1〜第4接続電極部101〜104にそれぞれ至る第1〜第4引き出し配線62B,64B,76A,76Bの配線長が最短となる。よって、第1〜第4引き出し配線62B,64B,76A,76Bの配線抵抗及び配線容量が小さくなり、第1〜第4セグメント電極62,64,72,74を高速に充放電することができる。
なお、第1〜第4外部接続電極部101〜104は、第1,第2基板20,30のいずれか一方か、あるいは双方に各一部を設けても良い。第1,第2基板20,30のいずれか一方にのみ第1〜第4外部接続電極部101〜104を設ける場合には、第1,第2基板20,30の他方に配置された引き出し配線は、導電性ペースト等によって一方の基板に形成された外部接続電極部に接続することができる。なお、第1〜第4外部接続電極部101〜104は、リード線またはワイヤボンディング等の接続部を介して、外部と接続される。
また、第1〜第4引き出し配線62B,64B,76A,76Bは、第1,第2基板20,30を接合する例えばプラズマ重合膜と交差してもよい。あるいは、第1,第2基板20,30の接合面の一方に設けた溝部を介して、第1〜第4引き出し配線62B,64B,76A,76Bを、接合面を超えて外部に引き出しても良い。
1.2. 光フィルターの電圧制御系
1.2.1. 印加電圧制御系ブロックの概要
図7は、光フィルター10の印加電圧制御系ブロック図である。図7に示すように、光フィルター10は、第1電極60と第2電極70との間の電位差を制御する電位差制御部110を有する。本実施形態では、共通電極である第2電極70(第3,第4セグメント電極72,74)は一定の共通電圧例えば接地電圧(0V)に固定されているため、電位差制御部110は、第1電極60を構成するK個のセグメント電極である第1,第2セグメント電極62,64への印加電圧を変化させて、第1,第2セグメント電極62,64の各々と第2電極70との間の内周側電位差ΔVseg1及び外周側電位差ΔVseg2をそれぞれ制御する。なお、第2電極70は接地電圧以外の共通電圧を印加してもよく、その場合、電位差制御部110が第2電極70に共通電圧の印加/非印加を制御しても良い。
図7では、電位差制御部110は、第1セグメント電極62に接続された第1セグメント電極駆動部例えば第1デジタル−アナログコンバータ(DAC1)112と、第2セグメント電極64に接続された第2セグメント電極駆動部例えば第2デジタル−アナログコンバータ(DAC2)114と、それらを制御例えばデジタル制御するデジタル制御部116とを含んでいる。第1,第2デジタル−アナログコンバータ112,114には電源120からの電圧が供給される。第1,第2デジタル−アナログコンバータ112,114は、電源120からの電圧の供給を受けると共に、デジタル制御部116からのデジタル値に応じたアナログ電圧を出力する。電源120は、光フィルター10が装着される分析機器または光機器に装備されているものを利用できるが、光フィルター10専用の電源を用いても良い。
1.2.2. 光フィルターの駆動方法
図8は、図7に示すデジタル制御部116での制御の元データである電圧テーブルデータの一例を示す特性図である。この電圧テーブルデータは、デジタル制御部116自体に設けても良いし、あるいは光フィルター10が装着される分析機器または光機器に装備しても良い。
図8は、K個のセグメント電極62,64の各々に順次電圧を印加することで、計N段階で第1,第2反射膜40,50の間のギャップを可変するための電圧テーブルデータとして、N=9の例を示している。なお、図8では、第1,第2セグメント電極62,64の双方と第2電極70との間の各電位差が共に0Vであるときは、N段階のギャップ可変範囲に含めていない。図8は、第1,第2セグメント電極62,64の少なくとも一方に、第2電極70に印加される共通電圧の電圧値(0V)以外の電圧値が印加される場合のみを示している。ただし、第1,第2セグメント電極62,64の双方と第2電極70との間の各電位差が共に0Vであるときを、透過ピーク波長が最大であると定義しても良い。
電位差制御部110は、図8に示す電圧テーブルデータに従って、K個のセグメント電極(第1,第2セグメント電極62,64)毎に設定された電圧値を、K個のセグメント電極(第1,第2セグメント電極62,64)の各々に印加している。図9は、図8に示す電圧テーブルデータのデータ番号順に駆動することで実現される電圧印加のタイミングチャートである。
図8及び図9に示すように、第1セグメント電極62には、L=4種類の電圧(VI1〜VI4:VI1<VI2<VI3<VI4)を印加し、第2セグメント電極64には、M=5種類の電圧(VO1〜VO5:VO1<VO2<VO3<VO4<VO5)を印加し、第1,第2反射膜40,50の間の第1ギャップG1をg0〜g8の9(N=L+M=9)段階にて可変している。
このような電圧制御により、光フィルター10では、図10に示す波長透過特性を実現できる。図10は、第1,第2反射膜40,50間の第1ギャップG1の大きさを例えばg0〜g3に変化した時の波長透過特性を示している。光フィルター10では、第1,第2反射膜40,50の間の第1ギャップG1の大きさが例えばg0〜g3(g0>g1>g2>g3)と可変されると、その第1ギャップG1の大きさに応じて透過ピーク波長が決定される。すなわち、光フィルター10を透過する光の波長λは、その半波長(λ/2)の整数(n)倍が第1ギャップG1と一致する光であり(n×λ=2G1)、半波長(λ/2)の整数(n)倍が第1ギャップG1と一致しない光は、第1,第2反射膜40,50により多重反射される過程で干渉しあって減衰され、透過することがない。
したがって、図10に示すように、第1,第2反射膜40,50間の第1ギャップG1の大きさをg0、g1、g2、g3と狭めるように変化させることで、光フィルター10を透過する光、すなわち透過ピーク波長がλ0、λ1、λ2、λ3(λ0>λ1>λ2>λ3)と、順次短くなるように変化する。
ここで、L,M,Nの値は任意に変更できるが、L≧3,M≧3、N≧6の整数とすることが好ましい。L≧3,M≧3、N≧6とすると、第1,第2セグメント電極62,64毎に設定されている、第1電位差ΔV1から、第1電位差ΔV1より大きい第2電位差ΔV2、第2電位差ΔV2より大きい第3電位差ΔV3へと、内周側電位差ΔVseg1及び外周側電位差ΔVseg2をそれぞれ切り替えることができる。
図8に示すように、電位差制御部110は、先ず、外側の第2セグメント電極64に電圧VO1〜電圧VO5を順次印加する。第2電極70が0Vであることから、第2電極70と第2セグメント電極64との間の電位差は、第1電位差VO1、第2電位差VO2、第3電位差VO3、第4電位差VO4、第5電位差VO5と、外周側電位差Vseg2を順次大きくすることができる。それにより、第1,第2反射膜40,50間の第1ギャップG1の大きさが、go→g1→g2→g3→g4と順次小さくなる。この結果、光フィルター10を透過する光、すなわち透過ピーク波長がλ0→λ1→λ2→λ3→λ4と、順次短くなるように変化する。
次に電位差制御部110は、図8に示すように、第2セグメント電極64への最大印加電圧VO5の印加を維持したまま、電位差制御部110は、内側の第1セグメント電極62電圧VI1〜電圧VI4を順次印加する。第2電極70が0Vであることから、第2電極70と第1セグメント電極62との間の電位差は、第1電位差VI1、第2電位差VI2、第3電位差VI3、第4電位差VIO4と、内周側電位差Vseg1を順次大きくすることができる。それにより、第1,第2反射膜40,50間の第1ギャップG1の大きさが、g5→g6→g7→g8と順次小さくなる。この結果、光フィルター10を透過する光、すなわち透過ピーク波長がλ5→λ6→λ7→λ8と、順次短くなるように変化する。
電位差制御部110は、外周側電位差Vseg2ついて少なくとも、第1電位差VO1から、第1電位差VO1より大きい第2電位差VO2へ、さらに第2電位差VO2よりも大きい第3電位差VO3に切り替え、内周側電位差Vseg1について少なくとも、第1電位差VI1から、第1電位差VI1より大きい第2電位差VI2へ、さらに第2電位差VI2よりも大きい第3電位差VI3に切り替えるため、可動側の第2基板30の減衰自由振動を抑制することができ、迅速な波長可変動作が実施することができる。しかも、電位差制御部110は、第1,第2セグメント電極62,64の各々に対して3値以上の電圧0を含んでも良い)として、第1セグメント電極62に対して少なくとも第1セグメント電圧VI1、第2セグメント電圧VI2及び第3セグメント電圧VI3を、第2セグメント電極64に対して少なくとも第1セグメント電圧VO1、第2セグメント電圧VO2及び第3セグメント電圧VO3を印加している。よって、第1,第2セグメント電極62,64の各一つを駆動するだけで、それぞれ3段階以上のギャップ可変が可能となり、第1電極60のセグメント電極数を無用に多くする必要がない。
1.2.3. 電圧変化量(第1電位差と第2電位差との差の絶対値等)
電位差制御部110は、内周側電位差Vseg1及び外周側電位差Vseg2の各々について、第2電位差と第3電位差との差の絶対値を、第1電位差と第2電位差との差の絶対値よりも小さくすることができる。本実施形態では第2電極70は共通電圧0Vで不変であるので、例えば外周側電位差Vseg2としての第1電位差と第2電位差との差の絶対値とは、図8及び図9に示すように、第2セグメント電極64に印加される第1セグメント電圧VO1及び第2セグメント電圧VO2間の電圧変化量ΔVO1と等価である。図8及び図9に示すように、外周側電位差Vseg2の電圧変化量は、ΔVO1>ΔVO2>ΔVO3>ΔVO4と順次小さくなる関係にあり、内周側電位差Vseg1の電圧変化量も、ΔVI1>ΔVI2>ΔVI3と順次小さくなる関係にある。
このような関係にした理由は次の通りである。上述した式(1)から、静電引力Fは、第1,第2電極60,70間の電位差(本実施形態では第1電極60への印加電圧V)の二乗に比例する。図11は、電位差Vの二乗に比例する静電引力Fの特性図(F=V2の図)である。図11に示すように、電位差Vが大きくなる方向に、第1電位差、第2電位差、第3電位差と切り替えたとき、第1電位差と第2電位差との差の絶対値ΔV1と、第2電位差と第3電位差との絶対値の差ΔV2が同じ場合(図11ではΔV1=ΔV2)、静電引力の増加量ΔFは、ΔF1からΔF2へと急激に増大することになり、オーバーシュートの原因となる。
そこで、第2電位差と第3電位差との差の絶対値ΔV2は、第1電位差と第2電位差との差の絶対値ΔV2よりも小さくする。これにより、ギャップが狭くなった際の静電引力の急激な増大を抑制することができ、オーバーシュートをより抑制することができ、より迅速な波長可変動作を実現することができる。
1.2.4. 電圧印加期間
電位差制御部110は、内周側電位差Vseg1及び外周側電位差Vseg2の各々について、第2電位差に設定されている期間は、第1電位差に設定されている期間より長く、第3電位差に設定されている期間は、第2電位差に設定されている期間より長くすることができる。本実施形態では、図9に示すように、外周側電位差Vseg2について、第2電位差VO1の期間TO2は、第1電位差VO1の期間TO1よりも長く、第3電位差VO3の期間TO3は、第2電位差VO2の期間TO2よりも長く、TO1<TO2<TO3<TO4<TO5と順次長くなる関係にある。同様に、図9に示すように、内周側電位差Vseg1について、第2電位差VI1の期間TI2は、第1電位差VI1の期間TI1よりも長く、第3電位差VI3の期間TI3は、第2電位差VI2の期間TI2よりも長く、TI1<TI2<TI3<TI4と順次長くなる関係にある。
第1電位差よりも大きい第2電位差としたとき、または第2電位差より大きい第3電位差としたとき、第2基板30の復元力も大きくなる。このため、第2基板30が静止するまでの時間が長くなる。すなわち、第1,第2反射膜40,50間の第1ギャップG1が、定位置に安定するまでの時間が長くなる。これに対して、本実施形態のように、第2電位差に設定されている期間を、第1電位差に設定されている期間より長く、第3電位差に設定されている期間を、第2電位差に設定されている期間より長く設定することにより、第1ギャップG1を所定値に安定させることができる。
1.2.5. 電位差、ギャップ及び可変波長の実施例1
図12は、図8に示す電位差、ギャップ及び可変波長の実施例1のデータを示す特性図である。図12のデータ番号1〜9は図8のデータ番号1〜9と同一である。図13は、図12に示す印加電圧とギャップとの関係を示す特性図である。図14は、図12に示す印加電圧と透過ピーク波長との関係を示す特性図である。
図12では、透過ピーク波長の最大波長λ0=700nmから最小波長λ8=380nmの9段階で透過ピーク波長を可変するために、第1,第2反射膜40,50間の第1ギャップG1は最大ギャップg0=300nmから最小ギャップg8=140nmの9段階に可変されている(図13も参照)。これに対応して、透過ピーク波長は最大波長λ0から最小波長λ8までの9段階に可変されている(図14も参照)。しかも、図12では、最大ギャップg0から最小ギャップg8までの9段階のギャッブg0〜g8を等間隔(=40nm)に設定することにより、最大波長λ0から最小波長λ8までの9段階の波長λ0〜λ8も等間隔(=40nm)となっている。このように、第1,第2反射膜間の第1ギャップG1の大きさを一定量ずつ順次狭まるように変化させることで、透過ピーク波長も一定値ずつ短くなる。
電位差制御部110が、外周側電位差Vseg2をVO1=16.9V、VO2=21.4V、VO3=25V、VO4=27.6V、VO5=29.8Vに順次設定し、VO5=29.8Vに維持したまま、内周側電位差Vseg1をVI1=16.4V、VI2=22.2V、VI3=26.3V、VI4=29.3Vに順次設定する。
なお、第1,第2反射膜40,50間の第1ギャップG1の大きさは、外周側電位差Vseg2に基づく静電引力F2よりも内周側電位差Vreg1に基づく静電引力F1の影響の方が大きい。よって、先ず内周側電位差Vseg1を変化させた後に、内周側電位差Vseg1を一定値に維持したまま外周側電位差Vseg2を変化させても、内周側電位差Vseg1による静電引力F1が支配的となって第1,第2反射膜40,50間のギャップは外周側電位差Vseg2の通りに変化しない。そこで、本実施形態では先ず外周側電位差Vseg2を変化させた後に、外周側電位差Vseg2を一定値に維持したまま内周側電位差Vseg1を変化させている。
電位差制御部110は、外周側電位差Vseg2が外周側最大電位差VO5に到達した後に、外周側電位差Vseg2を外周側最大電位差VO5に維持して内周側電位差Vseg1を変化させている。こうすると、外周側最大電位差VO5にて設定された第1ギャップG1からさらに、内周側電位差Vseg1の印加による1ステップ分のギャップ変化が可能となる。しかも、内周側電位差Vseg1を印加させた後には、既に外周側最大外周側電位差VO5に達しているので、外周側電位差Vseg2をさらに変化させる必要はない。よって、外周側電位差Vseg2を変化させる時には、内周側電位差Vseg1による支配的な静電引力F2の悪影響は生じない。
電位差制御部110が内周側電位差Vseg1を内周側最大電位差VI4に設定したとき、第1,第2反射膜40,50間の第1ギャップG1は最小間隔g8に設定される。外周側最大電位差VO5及び内周側最大電位差VI4の各々は、電位差制御部110に供給される最大電圧Vmaxを超えない範囲で実質的に等しくすることができる。本実施形態では、図7に示す電源120から例えば最大電圧Vmax=30Vが電位差制御部110に供給される。このとき、外周側最大電位差VO5は、最大電圧Vmax(30V)を越えない29.8Vに設定され、内周側最大電位差VI4もまた、最大電圧Vmax(30V)を越えない29.3Vに設定されている。
図12では、内周側最大電位差VO5及び内周側最大電位差VI4との間には0.5Vの微小な相違があるが、実質的に同一と言える。この微小な相違は、内周側電位差Vseg1及び外周側電位差Vseg2の各々について最大電圧Vmax(30V)を越えない範囲のフルスケール(図13及び図14参照)で、等間隔の透過ピーク波長を得るように設計された結果である。内周側最大電位差VO5及び内周側最大電位差VI4を厳密に一致させるには、第1,第2セグメント電極62,64の面積比などを調整することで可能ではあるが、厳密に一致させる必要性は乏しい。なお、本実施形態の駆動法では、内周側最大電位差VO5及び内周側最大電位差VI4を実質的に等しくすることで、図5(A)にて説明したように、外側の第4セグメント電極74のほぼ全周(第1スリット64Cとの対向領域74A1を含む)に均等な静電引力を生じさせることができるという利点がある。
本実施形態では、電位差制御部110は、K=2個の第1,第2セグメント電極62,64の各々に順次電圧を印加することで、計N=9段階で第1,第2反射膜40,50間の第1ギャップG1を可変している。このとき、K=2個の第1,第2セグメント電極62,64のうち同一セグメント電極62(または64)に印加される各印加電圧間の電圧変化量の最小値をΔVkminと定義する。図8及び図12の例では、第1セグメント電極62についてはΔVkmin=ΔVI3=3.0Vであり、第2セグメント電極64についてはΔVkmin=ΔVO4=2.2Vである。電源ノイズが0.1V程度であることを考慮すると、この最小電圧値ΔVkminがノイズに対する感度が小さいことは、以下の比較例との比較からも明らかである。
1.2.6 電位差、ギャップ及び可変波長の実施例2
実施例2では、図15(A)(B)に示すように、実施例1の第1電極60に代えて図15(A)に示す第1電極61を、実施例1の第2電極70に代えて図15(B)に示す第2電極71を用いる。つまり、実施例2の第1,第2電極61,71はセグメント分割されていない。
図16は、図15(A)(B)に示す第1,第2電極61,71間の電位差と、それにより得られるギャップ及び可変波長のデータを示す特性図である。図16のデータ番号1〜9は図8及び図12のデータ番号1〜9と同一である。図17は、図16に示す印加電圧とギャップとの関係を示す特性図である。図18は、図16に示す印加電圧と透過ピーク波長との関係を示す特性図である。
図16でも、透過ピーク波長の最大波長λ0=700nmから最小波長λ8=380nmの9段階で透過ピーク波長を可変するために、第1,第2反射膜40,50間の第1ギャップG1は最大ギャップg0=300nmから最小ギャップg8=140nmの9段階に可変されている(図16も参照)。これに対応して、透過ピーク波長は最大波長λ0から最小波長λ8までの9段階に可変されている(図17も参照)。
ただし、実施例2では、単一電極である第1電極61に印加される9段階の電圧を、最大電圧Vmax(30v)のフルスケールの中で設定しなければならない。
実施例2のように、第1電極61を単一電極で形成した時のN=9段階の各印加電圧間の電圧最小変化量をΔV1minと定義する。図16の例では、ΔV1min=0.9Vである。電源ノイズが0.1V程度であることを考慮すると、実施例2の電圧最小変化量ΔV1minはノイズに対する感度が大きい。
実施例1の電圧最小変化量ΔVkminと実施例2の電圧最小変化量V1minとを比較すると、ΔV1min<ΔVkminが成立し、実施例1ではノイズに対する感度をより小さくできる。
2.光フィルターの変形例
図19は、図1の光フィルター10とは異なる光フィルター11を示している。図19に示す第1基板21は、図1にて第1電極60が形成される第2面20A2が、平面視にて第1反射膜40が形成される第1面20A1の周囲の第2−1面20A21と、平面視にて第2−1面20A21の周囲に配置されて第2−1面20A21とは段差24のある第2−2面20A22とを含む。
第1セグメント電極62は第2−1面20A21に配置され、第2セグメント電極64は第2−2面20A22に配置され、第2セグメント電極64と第2電極70との間の初期のギャップG22が、第1セグメント電極62と前記第2電極70との間の初期のギャップG21と異なっている。
このような関係にした理由は、以下の通りである。初期のギャップG21,G22のうち、最初に駆動される例えば第2セグメント電極64と対応する初期のギャップG22は、その第2セグメント電極64と第2電極との間に作用する静電引力により狭められる。このとき、同時にギャップG21も狭められ、初期ギャップよりも小さくなる。よって、第1セグメント電極62を駆動する時には、ギャップG21は初期値よりも小さくなっている。
ここで、仮に第2−1面20A21と第2−2面20A22とが面一であってギャップG21,G22の初期値が同一であるとする。この場合、例えば第2セグメント電極64を最初に駆動するときのギャップG22は、後に第1セグメント電極62を駆動するときのギャップG21よりも大きくなってしまう。よって、第2セグメント電極64を最初に駆動するときの静電引力を、第1セグメント電極64が駆動されたときの静電引力よりも過度に大きく設定しなければならなくなる。
よって、この場合には図19に示すように、ギャップG22の初期値をギャップG21の初期値よりも小さくしておくと良い。なお、第1セグメント電極62を最初に駆動する場合には、ギャップG21の初期値をギャップG22の初期値よりも小さくしておけばよい。
3.分析機器
図20は、本発明に係る一実施形態の分析機器の一例である測色器の概略構成を示すブロック図である。
図20において、測色器200は、光源装置202と、分光測定装置203と、測色制御装置204と、を備えている。この測色器200は、光源装置202から検査対象Aに向かって例えば白色光を射出し、検査対象Aで反射された光である検査対象光を分光測定装置203に入射させる。そして、分光測定装置203にて検査対象光を分光し、分光した各波長の光の光量を測定する分光特性測定を実施する。言い換えると、検査対象Aで反射された光である検査対象光を光フィルター(エタロン)10に入射させ、エタロン10から透過した透過光の光量を測定する分光特性測定を実施する。そして、測色制御装置204は、得られた分光特性に基づいて、検査対象Aの測色処理、すなわち、どの波長の色がどの程度含まれているかを分析する。
光源装置202は、光源210、複数のレンズ212(図1には1つのみ記載)を備え、検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ212には、コリメーターレンズが含まれており、光源装置202は、光源210から射出された白色光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから検査対象Aに向かって射出する。
分光測定装置203は、図20に示すように、エタロン10と、受光部としての受光部220と、駆動回路230と、制御回路部240と、を備えている。また、分光測定装置203は、エタロン10に対向する位置に、検査対象Aで反射された反射光(測定対象光)を、内部に導光する図示しない入射光学レンズを備えている。
受光部220は、複数の光電交換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光部220は、制御回路部240に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御回路部240に出力する。
駆動回路230は、エタロン10の第1電極60、第2電極70、および制御回路部240に接続される。この駆動回路230は、制御回路部240から入力される駆動制御信号に基づいて、第1電極60および第2電極70間に駆動電圧を印加し、第2基板30を所定の変位位置まで移動させる。駆動電圧としては、第1電極60と第2電極70との間に所望の電位差が生じるように印加されればよく、例えば、第1電極60に所定の電圧を印加し、第2電極70をアース電位としてもよい。駆動電圧としては、直流電圧を用いるのが好ましい。
制御回路部240は、分光測定装置203の全体動作を制御する。この制御回路部240は、図20に示すように、例えばCPU250、記憶部260などにより構成されている。そして、CPU250は、記憶部260に記憶された各種プログラム、各種データに基づいて、分光測定処理を実施する。記憶部260は、例えばメモリーやハードディスクなどの記録媒体を備えて構成され、各種プログラム、各種データなどを適宜読み出し可能に記憶する。
ここで、記憶部260には、プログラムとして、電圧調整部261、ギャップ測定部262、光量認識部263、および測定部264が記憶されている。なお、ギャップ測定部262は上述の通り省略しても良い。
また、記憶部260には、第1ギャップG1の間隔を調整するために静電アクチュエーター80,90に印加する電圧値、およびその電圧値を印加する時間を関連付けた図8に示す電圧テーブルデータ265が記憶されている。
測色制御装置204は、分光測定装置203および光源装置202に接続されており、光源装置202の制御、分光測定装置203により取得される分光特性に基づく測色処理を実施する。この測色制御装置204としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、測色制御装置204は、図20に示すように、光源制御部272、分光特性取得部270、および測色処理部271などを備えて構成されている。
光源制御部272は、光源装置202に接続されている。そして、光源制御部272は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置202に所定の制御信号を出力し、光源装置202から所定の明るさの白色光を射出させる。
分光特性取得部270は、分光測定装置203に接続され、分光測定装置203から入力される分光特性を取得する。
測色処理部271は、分光特性に基づいて、検査対象Aの色度を測定する測色処理を実施する。例えば、測色処理部271は、分光測定装置203から得られた分光特性をグラフ化し、図示しないプリンターやディスプレイなどの出力装置に出力するなどの処理を実施する。
図21は、分光測定装置203の分光測定動作を示すフローチャートである。まず、制御回路部240のCPU250は、電圧調整部261、光量認識部263、および測定部264を起動させる。また、CPU250は、初期状態として、測定回変数nを初期化(n=0に設定)する(ステップS1)。なお、測定回変数nは、0以上の整数の値をとる。
この後、測定部264は、初期状態、すなわち、静電アクチュエーター80,90に電圧が印加されていない状態で、エタロン10を透過した光の光量を測定する(ステップS2)。なお、この初期状態における第1ギャップG1の大きさは、例えば分光測定装置の製造時において予め測定し、記憶部260に記憶しておいてもよい。そして、ここで得られた初期状態の透過光の光量、および第1ギャップG1の大きさを測色制御装置204に出力する。
次に、電圧調整部261は、記憶部260に記憶されている電圧テーブルデータ265を読み込む(ステップS3)。また、電圧調整部261は、測定回変数nに「1」を加算する(ステップS4)。
この後、電圧調整部261は、電圧テーブルデータ265から、測定回変数nに対応する第1,第2セグメント電極62,64の電圧データ及び電圧印加期間データを取得する(ステップS5)。そして、電圧調整部261は、駆動回路230に駆動制御信号を出力し、電圧テーブルデータ265のデータに従って静電アクチュエーター80,90を駆動する処理を実施する(ステップS6)。
また、測定部264は、印加時間経過タイミングで、分光測定処理を実施する(ステップS7)。すなわち、測定部264は、光量認識部263により透過光の光量を測定させる。また、測定部264は、測定された透過光の光量と、透過光の波長とを関連付けた分光測定結果を測色制御装置204に出力する制御をする。なお、光量の測定は、複数回または全ての回数の光量のデータを記憶部260に記憶させておき、複数回毎の光量のデータまたは全ての光量のデータの取得後に、まとめて、それぞれの光量を測定してもよい。
この後、CPU250は、測定回変数nが最大値Nに達したか否かを判断し(ステップS8)、測定回変数nがNであると判断すると、一連の分光測定動作を終了する。一方,ステップS8において、測定回変数nがN未満である場合、ステップS4に戻り、測定回変数nに「1」を加算する処理を実施し、ステップS5〜ステップS8の処理を繰り返す。
4.光機器
図22は、本発明に係る一実施形態の光機器の一例である波長多重通信システムの送信機の概略構成を示すブロック図である。波長多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing)通信では、波長の異なる信号は干渉し合わないという特性を利用して、波長が異なる複数の光信号を一本の光ファイバー内で多重的に使用すれば、光ファイバー回線を増設せずにデータの伝送量を向上させることができるようになる。
図22において、波長多重送信機300は、光源301からの光が入射される光フィルター10を有し、光フィルター10からは複数の波長λ0,λ1,λ2,…の光が透過される。波長毎に送信器311,312,313が設けられる。送信器311,312,313からの複数チャンネル分の光パルス信号は、波長多重装置321にて1つに合わせられて一本の光ファイバー伝送路331に送出される。
本発明は光符号分割多重(OCDM: Optical Code Division Multiplexing)送信機にも同様に適用できる。OCDMは、符号化された光パルス信号のパターンマッチングによってチャンネルを識別するが、光パルス信号を構成する光パルスは、異なる波長の光成分を含んでいるからである。
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
本発明では、第1基板20にのみ段差を設けるものに限らず、第1,第2基板20,30の少なくとも一方に段差を形成することができる。例えば、図1では、段差が形成された第1基板20を固定基板としたが、第1基板20を可動基板としても良い。図1の可動基板である第2基板30に段差38を設けた本発明の他の実施形態を図23に示す。図23に示すように、
図23では、第2基板30が第1基板20と対向する第2対向面30Aは、第2反射膜40が形成される第1面30A1と、平面視で第1面30A1の周囲に配置されて、第2電極70が形成される第2面30A2とを有する。第1面30A1と第2面30A2とは同一面でなく、第1面30A1と第2面30A2との間には段差38があり、第1面30A1の方が第2面30A2よりも第1基板20に近い位置に設定している。これにより、電圧の無印加状態での初期値にて、第1ギャップG1<第2ギャップG2の関係が成立する。
ここで、図23では第2基板30の第2対向面30Aとは逆側の面を平坦面とすると、段差38を利用して、第2反射膜50が形成された領域を厚肉部32とすることができる。こうして、第2反射膜50の平行度を維持して第2基板30を可動させることができる。
なお、上述したとおり、一対の対向基板20,30のうち段差が形成された一方を第1基板と称することができ、図23では第2基板30、第2反射膜50及び第2電極70をそれぞれ第1基板、第1反射膜及び第1電極と称しても良い。また、図23の実施形態にて、図19の段差24に相当する段差を、第2基板30側に形成するか、あるいは第1,第2基板20,30の双方に形成しても良い。この際、第2電極70が形成される領域を薄肉部34とするように、第2基板30の第2対向面30Aとは逆側の面にも段差を形成することが好ましい。
図24は、第1,第2基板20,30にそれぞれ、図1及び図23に示す段差22,38を設けた本発明の更に他の実施形態を示す。このようにしても、電圧の無印加状態での初期値にて、第1ギャップG1<第2ギャップG2の関係が成立する。図24の実施形態においても、図19の段差24に相当する段差を、第2基板30側に形成するか、あるいは第1,第2基板20,30の双方に形成しても良い。