JP2015163594A - 酸素化物の製造方法 - Google Patents

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友章 西野
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Abstract

【課題】水素と一酸化炭素とを含有する混合ガスから、酸素化物をより効率的に合成できる酸素化物の製造方法を提供する。【解決手段】酸素化物合成用の触媒に、水素と一酸化炭素とを含有する混合ガスを接触させて酸素化物を得る工程を有する、酸素化物の製造方法において、前記混合ガスは、不活性ガスを含有することよりなる。前記混合ガスは、不活性ガスを5〜50体積%含有することが好ましく、1〜3MPaの条件下で、前記触媒に前記混合ガスを接触させることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、酸素化物の製造方法に関する。
バイオエタノールは、石油代替燃料としての普及が進められている。バイオエタノールは、主にサトウキビやトウモロコシの糖化及び発酵によって製造されている。近年、食料や飼料と競合しない、廃木材や稲わら等の作物の未利用部分等の木質系及び草本系バイオマス(セルロース系バイオマスともいう)からバイオエタノールを製造する技術が開発されている。
セルロース系バイオマスを原料とし、従来のエタノール発酵法を用いてバイオエタノールを製造するためには、セルロースを糖化させる必要がある。糖化方法としては、濃硫酸糖化法、希硫酸・酵素糖化法、水熱糖化法等があるが、安価にバイオエタノールを製造するためにはいまだ多くの課題が残されている。
セルロース系バイオマスを水素と一酸化炭素とを含む混合ガスに変換した後、この混合ガスからエタノールを合成する方法がある。この方法により、エタノール発酵法の適用が難しいセルロース系バイオマスから、効率的にバイオエタノールを製造する試みがなされている。加えて、この方法によれば、木質系・草本系バイオマスに限らず、動物の死骸や糞等由来の動物バイオマス、生ゴミ、廃棄紙、廃繊維といった多様なバイオマスを原料に用いることができる。
さらに、水素と一酸化炭素との混合ガスは、天然ガス、石炭等の石油以外の資源からも得られるため、混合ガスから酸素化物を合成する方法は、石油依存を脱却する技術として研究されている。
水素と一酸化炭素との混合ガスからエタノール、アセトアルデヒド、酢酸等の酸素化物を得る方法としては、例えば、ロジウム、アルカリ金属及びマンガンを含む触媒に、水素と一酸化炭素とのモル比が約1の混合ガスを接触させる方法が知られている(例えば、特許文献1)。
また、より効率的に酸素化物を合成することを目的とし、例えば、ロジウムと、マンガンと、アルカリ金属と、ジルコニウムとを含有する酸素化物合成用の触媒を用い、この触媒に、水素と一酸化炭素とを含有する混合ガスを接触させる方法が知られている(例えば、特許文献2)。
特公昭61−036730号公報 特開2013−063418号公報
しかしながら、酸素化物の製造方法には、酸素化物をより効率的に合成できることが求められている。
そこで、本発明は、水素と一酸化炭素とを含む混合ガスから、酸素化物をより効率的に合成できる酸素化物の製造方法を目的とする。
一般に、酸素化物の原料である混合ガスには、酸素化物の合成反応に寄与しない物質が含まれないことが好ましい。即ち、混合ガス中の水素と一酸化炭素との純度が高いほど、酸素化物の合成効率を高められる、と考えるのが一般的である。
本発明者らが鋭意検討した結果、意外にも、混合ガス中に不活性ガスをあえて含有させると、酸素化物の合成効率を高められることを見出し、本発明に至った。
本発明の酸素化物の製造方法は、酸素化物合成用の触媒に、水素と一酸化炭素とを含有する混合ガスを接触させて酸素化物を得る工程を有する、酸素化物の製造方法において、前記混合ガスは、不活性ガスを含有することを特徴とする。
前記混合ガスは、不活性ガスを5〜50体積%含有することが好ましく、1〜3MPaの条件下で、前記触媒に前記混合ガスを接触させることが好ましい。
本稿において酸素化物は、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール、酢酸等のカルボン酸、アセトアルデヒド等のアルデヒド、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル等、炭素原子と水素原子と酸素原子からなる分子を意味する。酸素化物の内、炭素数が2である化合物(例えば、酢酸、エタノール、アセトアルデヒド等)をC2酸素化物という。
本稿において、合成効率は、酸素化物の空時収量により評価される。空時収量は、触媒の単位体積当たりにおける、単位時間当たりの酸素化物の生成量(g/L−触媒/h)で表され、CO転化率と酸素化物の選択率との積に比例する。この酸素化物の空時収量が多いほど、合成効率が高いと評価できる。
本稿において、「CO転化率」は、混合ガス中のCOのモル数の内、酸素化物の合成に消費されたCOのモル数が占める百分率である。
また、「選択率」は、混合ガス中の消費されたCOのモル数のうち、特定の酸素化物へ変換されたCのモル数が占める百分率である。例えば、下記(i)式によれば、アルコールであるエタノールの選択率は100モル%である。一方、下記(ii)式によれば、C2酸素化物であるエタノールの選択率は50モル%であり、C2酸素化物であるアセトアルデヒドの選択率も50モル%である。加えて、(i)式及び(ii)式において、C2酸素化物の選択率は100モル%である。
4H+2CO→CHCHOH+HO ・・・(i)
7H+4CO→COH+CHCHO+2HO ・・・(ii)
本発明の酸素化物の製造方法は、水素と一酸化炭素とを含む混合ガスから、酸素化物をより効率的に合成できる。
本発明の一実施形態にかかる酸素化物の製造装置の模式図である。 各例における酸素化物の空時収量と反応温度との関係を示すグラフである。
(酸素化物の製造方法)
本発明の酸素化物の製造方法は、酸素化物合成用の触媒(以下、合成触媒ということがある)に、水素と一酸化炭素とを含有する混合ガスを接触させて酸素化物を得る工程を有する。
以下、酸素化物の製造方法の一例について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の酸素化物の製造方法に用いられる酸素化物の製造装置(以下、単に製造装置ということがある)の一例を示す模式図である。
図1の製造装置10は、合成触媒が充填されて反応床2が形成された反応管1と、反応管1に接続された供給管3と、反応管1に接続された排出管4と、反応管1に接続された温度制御部5と、排出管4に設けられた圧力制御部6とを備えるものである。
反応床2は、合成触媒のみが充填されたものでもよいし、合成触媒と希釈材とが充填されたものでもよい。
希釈材は、酸素化物の製造中における合成触媒の過度の発熱を防止するためのものであり、例えば、後述する合成触媒の担体と同様のものや、石英砂、アルミナボール、アルミボール、アルミショット等が挙げられる。
反応床2に希釈材を充填する場合、希釈材/合成触媒で表される質量比は、それぞれの種類や比重等を勘案して決定され、例えば、0.5〜5が好ましい。
反応管1は、混合ガス及び合成された酸素化物に対して不活性な材料が好ましく、100〜500℃程度の加熱、又は10MPa程度の加圧に耐え得る形状のものが好ましい。
反応管1としては、例えば、ステンレス製の略円筒形の部材が挙げられる。
供給管3は、混合ガスを反応管1内に供給する供給手段であり、例えば、ステンレス製等の配管が挙げられる。
排出管4は、反応床2で合成された酸素化物を含む合成ガス(生成物)を排出する排出手段であり、例えば、ステンレス製等の配管が挙げられる。
温度制御部5は、反応管1内の反応床2を任意の温度にできるものであればよく、例えば、電気炉等が挙げられる。
圧力制御部6は、反応管1内の圧力を任意の圧力にできるものであればよく、例えば、公知の圧力弁等が挙げられる。
また、製造装置10は、マスフロー等、ガスの流量を調整するガス流量制御部等の周知の機器を備えていてもよい。
合成触媒は、水素と一酸化炭素とを含有する混合ガスから、酸素化物を合成できるものであればよく、触媒金属として水素化活性金属を含有するものが挙げられる。
合成触媒は、触媒金属の集合物でもよいし、触媒金属が担体に担持された担持触媒でもよく、中でも、担持触媒が好ましい。担持触媒とすることで、触媒金属と混合ガスとの接触効率が高まり、酸素化物の合成効率のさらなる向上を図れる。
水素化活性金属としては、従来、混合ガスから酸素化物を合成できる金属として知られているものであればよく、例えば、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属;マンガン、レニウム等、周期表の第7族に属する元素;ルテニウム等、周期表の第8族に属する元素;コバルト、ロジウム等、周期表の第9族に属する元素;ニッケル、パラジウム等、周期表の第10族に属する元素等が挙げられる。
これらの水素化活性金属は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。水素化活性金属としては、CO転化率をより高め、酸素化物の選択率をより高める観点から、ロジウム、マンガン及びリチウムを組み合わせたものや、ルテニウム、レニウム及びナトリウムを組み合わせたもの等、ロジウム又はルテニウムとアルカリ金属とその他の水素化活性金属とを組み合わせたものが好ましい。
合成触媒は、水素化活性金属に加え、助活性金属を含んでもよい。
助活性金属としては、例えば、チタン、バナジウム、クロム、ホウ素、マグネシウム、ランタノイド及び周期表の第13族に属する元素から選択される1種以上が挙げられ、中でも、チタン、マグネシウム、バナジウムが好ましく、チタンがより好ましい。合成触媒は、これらの助活性金属を含有することで、CO転化率をより高め、酸素化物の選択率をより高められる。
合成触媒としては、例えば、ロジウムを含有するもの(ロジウム系触媒)が好ましく、ロジウムとマンガンとアルカリ金属とを含有するものがより好ましく、ロジウムとマンガンとアルカリ金属と助活性金属とを含有するものがさらに好ましい。
担体としては、従来、触媒に用いられている担体を用いることができ、例えば、多孔質担体が好ましい。
多孔質担体の材質は、特に限定されず、例えば、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、アルミナ、活性炭、ゼオライト等が挙げられ、中でも、比表面積や細孔直径が異なる種々の製品が市場で調達できることから、シリカが好ましい。
担体としては、比表面積が10〜1000m/gであり、かつ1nm以上の細孔径を有するものが好ましい。
担体の平均粒子径は、特に限定されないが、0.5〜5000μmが好ましい。上記下限値未満では、飛散しやすくなり、取り扱いが煩雑になりやすい。上記上限値超では、触媒金属を担持させる際に、触媒金属が担体内部に入りにくくなり、触媒金属の担持量が少なくなって、酸素化物の合成効率の向上の程度が小さくなるおそれがある。多孔質担体の粒子径は、篩分けにより調節される。加えて、担体は、粒子径の分布が狭いものが好ましい。
合成触媒中の水素化活性金属の担持量は、水素化活性金属の種類や多孔質担体の種類等を勘案して決定され、例えば、多孔質担体がシリカであれば、多孔質担体100質量部に対して0.05〜30質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。上記下限値未満では、水素化活性金属の量が少なすぎて、CO転化率が低下するおそれがあり、上記上限値超では、水素化活性金属を均一かつ高分散状態にできず、CO転化率が低下するおそれがある。
合成触媒中の助活性金属の担持量は、助活性金属の種類や水素化活性金属の種類等を勘案して決定され、例えば、多孔質担体100質量部に対して0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。上記下限値未満では、助活性金属の担持量が少なすぎて、助活性金属を用いる効果が発揮されにくい。上記上限値超では、多孔質担体の表面が助活性金属で過剰に被覆されてしまい、CO転化率が低下するおそれがある。
合成触媒中の触媒金属の担持量の合計は、触媒金属の組成、多孔質担体の材質等を勘案して決定され、例えば、多孔質担体100質量部に対して0.05〜30質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。上記下限値未満では、触媒金属の担持量が少なすぎて、CO転化率が低下するおそれがあり、上記上限値超では、触媒金属を均一かつ高分散状態にできず、CO転化率が低下するおそれがある。
合成触媒としては、下記(I)式で表される組成が好ましい。
aA・bB・cC・dD ・・・・(I)
(I)式中、Aはロジウムを表し、Bはマンガンを表し、Cはアルカリ金属を表し、Dは助活性金属を表し、a、b、c及びdはモル分率を表し、a+b+c+d=1である。
(I)式中のaは、0.053〜0.98が好ましく、0.24〜0.8がより好ましく、0.32〜0.67がさらに好ましい。上記下限値未満であるとロジウムの含有量が少なすぎて、CO転化率を十分に高められないおそれがあり、上記上限値超であると他の金属の含有量が少なくなりすぎて、CO転化率を十分に高められないおそれがある。
(I)式中のbは、0.0006〜0.67が好ましく、0.033〜0.57がより好ましく、0.089〜0.44がさらに好ましい。上記下限値未満であるとマンガンの含有量が少なすぎて、CO転化率を十分に高められないおそれがあり、上記上限値超であると他の金属の含有量が少なくなりすぎて、CO転化率を十分に高められないおそれがある。
(I)式中のcは、0.00056〜0.51が好ましく、0.026〜0.42がより好ましく、0.075〜0.33がさらに好ましい。上記下限値未満であるとアルカリ金属の含有量が少なすぎて、CO転化率を十分に高められないおそれがあり、上記上限値超であると他の金属の含有量が少なくなりすぎて、CO転化率を十分に高められないおそれがある。
(I)式中のdは、0(即ち、助活性金属を含有しない)でもよいし、0超(即ち、助活性金属を含有する)でもよい。助活性金属を含有する場合、dは、0.0026〜0.94が好ましく、0.02〜0.48がより好ましく、0.039〜0.25がさらに好ましい。上記下限値未満であると助活性金属の含有量が少なすぎて、CO転化率を十分に高められないおそれがあり、上記上限値超であると他の金属の含有量が少なくなりすぎて、CO転化率を十分に高められないおそれがある。
合成触媒は、ロジウム系触媒のみで構成されてもよいし、ロジウム系触媒と他の触媒との混合物でもよい。
他の触媒としては、銅単独又は銅と銅以外の遷移金属とが担体に担持された触媒(以下、銅系触媒ということがある)が挙げられる。銅系触媒は、アルコール以外の酸素化物をアルコールに変換できる。このため、合成触媒は、ロジウム系触媒と銅系触媒とを含むことで、アルコールの選択率を高められる。
銅系触媒としては、下記(II)式で表されるものが好ましい。
eE・fF ・・・・(II)
(II)式中、Eは銅を表し、Fは、銅以外の遷移金属を表し、e及びfはモル分率を表し、e+f=1である。
(II)式中、Fとしては、亜鉛、クロムが好ましい。Fは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
(II)式中のeは、0.5〜0.9が好ましく、0.5〜0.7がより好ましい。上記下限値未満であると銅の含有量が少なすぎて、アルコール以外の酸素化物をアルコールに変換する効率が低下するおそれがあり、上記上限値超であるとFの含有量が少なくなりすぎて、アルコール以外の酸素化物をアルコールに変換する効率が低下するおそれがある。
(II)式中のfは、0.1〜0.5が好ましく、0.3〜0.5がより好ましい。上記下限値未満であるとFの含有量が少なすぎて、アルコール以外の酸素化物をアルコールに変換する効率が低下するおそれがあり、上記上限値超であると銅の含有量が少なくなりすぎて、アルコール以外の酸素化物をアルコールに変換する効率が低下するおそれがある。
合成触媒がロジウム系触媒と銅系触媒とを含む場合、ロジウム系触媒は銅を含まず、銅系触媒はロジウムを含まないものが好ましい。
合成触媒は、従来公知の金属触媒の製造方法に準じて製造される。合成触媒の製造方法としては、例えば、含浸法、浸漬法、イオン交換法、共沈法、混練法等が挙げられ、中でも含浸法が好ましい。含浸法を用いることで、得られる触媒は、触媒金属がより均一に分散され、混合ガスとの接触効率がより高められ、酸素化物の合成効率のさらなる向上を図れる。
触媒調製に用いられる触媒金属の原料化合物としては、酸化物、塩化物、硝酸塩、炭酸塩等の無機塩、シュウ酸塩、アセチルアセトナート塩、ジメチルグリオキシム塩、エチレンジアミン酢酸塩等の有機塩又はキレート化合物、カルボニル化合物、シクロペンタジエニル化合物、アンミン錯体、アルコキシド化合物、アルキル化合物等、触媒金属の化合物として、従来の金属触媒を調製する際に用いられるものが挙げられる。
以下、含浸法について説明する。まず、触媒金属の原料化合物を水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の溶媒に溶解し、得られた溶液(含浸液)に担体を浸漬する等して、含浸液を担体に付着させる。担体として多孔質体を用いる場合には、含浸液を担体の細孔内に十分浸透させた後、溶媒を蒸発させて触媒とする。
含浸液を担体に含浸させる方法としては、全ての原料化合物を溶解した溶液を担体に含浸させる方法(同時法)、各原料化合物を別個に溶解した溶液を調製し、逐次的に担体に各溶液を含浸させる方法(逐次法)等が挙げられ、中でも、逐次法が好ましい。
逐次法で、合成触媒を製造する場合、助活性金属を担体に担持し、次いで、水素化活性金属を担体に担持するのが好ましい。このように製造された合成触媒は、酸素化物の合成効率のさらなる向上を図れる。
上述の方法によって調製された合成触媒は、通常、還元処理が施されて活性化され、酸素化物の合成に用いられる。還元処理としては、水素を含む気体に、合成触媒を接触させる方法が簡便で好ましい。この際、処理温度は、触媒金属の種類に応じて決定される。例えば、ロジウム系触媒であれば、ロジウムが還元される程度の温度、即ち100℃程度であればよいが、好ましくは200〜600℃とされる。加えて、触媒金属を十分に分散させる目的で、低温から徐々にあるいは段階的に昇温しながら水素還元を行ってもよい。また、例えば、一酸化炭素と水との存在下、又はヒドラジン、水素化ホウ素化合物もしくは水素化アルミニウム化合物等の還元剤の存在下で、触媒に還元処理を施してもよい。
還元処理における加熱時間は、例えば、1〜10時間が好ましく、2〜5時間がより好ましい。上記下限値未満では、触媒金属の還元が不十分となり、酸素化物の合成効率が低下するおそれがある。上記上限値超では、触媒金属における金属粒子が凝集し、酸素化物の合成効率が低下したり、還元処理におけるエネルギーが過剰になり経済的な不利益が生じたりするおそれがある。
次に、製造装置10を用いた酸素化物の製造方法を説明する。
まず、反応管1内を任意の温度及び任意の圧力とし、混合ガス20を供給管3から反応管1内に流入させる。
混合ガス20は、水素と一酸化炭素と不活性ガスとを含む。
不活性ガスは、特に限定されず、例えば、窒素、アルゴン、二酸化炭素等が挙げられる。
混合ガス20は、例えば、天然ガス、石炭から調製されたものであってもよいし、バイオマスをガス化して得られるバイオマスガス等であってもよい。バイオマスガスは、例えば、粉砕したバイオマスを水蒸気の存在下で加熱(例えば、800〜1000℃)する等、従来公知の方法で得られる。
混合ガス20としてバイオマスガス又はリサイクルガスを用いる場合、混合ガス20を反応管1内に供給する前に、タール分、硫黄分、ハロゲン成分、水分等の不純物を除去する目的で、ガス精製処理を施してもよい。ガス精製処理としては、例えば、湿式法、乾式法等、当該技術分野で知られる各方式を採用できる。湿式法としては、水酸化ナトリウム法、アンモニア吸収法、石灰・石膏法、水酸化マグネシウム法等が挙げられ、乾式法としては、圧力スイング吸着(PSA)法等の活性炭吸着法、電子ビーム法等が挙げられる。
混合ガス20は、水素と一酸化炭素とを主成分とするものが好ましい。混合ガス20中の水素と一酸化炭素との合計の下限値は、50体積%以上が好ましく、60体積%以上がより好ましく、70体積%以上がさらに好ましい。上記下限値以上であれば、反応に寄与する水素と一酸化炭素との割合が十分量となり、酸素化物の生成量をより高められる。
混合ガス20中の水素と一酸化炭素との合計の上限値は、特に限定されないが、例えば、95体積%以下が好ましく、90体積%以下がより好ましく、85体積%以下がさらに好ましい。上記上限値以下であれば、混合ガス20中の不活性ガスの含有量を十分にでき、酸素化物の合成効率のさらなる向上を図れる。
混合ガス20中、水素/一酸化炭素で表される体積比(以下、H/CO比ということがある)は、0.1〜10が好ましく、0.5〜3がより好ましく、1.5〜2.5がさらに好ましい。上記範囲内であれば、混合ガスから酸素化物が合成される反応において、化学量論的に適正な範囲となり、酸素化物の合成効率のさらなる向上を図れる。
混合ガス20中の不活性ガスの含有量の下限値は、例えば、5体積%以上が好ましく、10体積%以上がより好ましく、15体積%以上がさらに好ましい。上記下限値以上であれば、不活性ガスを混合ガス20に含有させた効果がより高まり、酸素化物の合成効率のさらなる向上を図れる。
混合ガス20中の不活性ガスの含有量の上限値は、50体積%以下が好ましく、40体積%以下がより好ましく、30体積%以下がさらに好ましい。上記上限値以下であれば、混合ガス20中の水素と一酸化炭素との含有量が十分になり、酸素化物の合成効率のさらなる向上を図れる。
混合ガス20中、不活性ガス/(不活性ガス+水素+一酸化炭素)で表される体積比は、5/100〜50/100が好ましく、10/100〜40/100がより好ましく、20/100〜30/100がさらに好ましい。上記下限値未満では、不活性ガスを含有させた効果が低下するおそれがあり、上記上限値超では、水素と一酸化炭素との合計量が少なくなりすぎて、酸素化物の合成効率が低下するおそれがある。
なお、混合ガス20は、水素、一酸化炭素、不活性ガスの他に、メタン、エタン、エチレン、水等(以下、これらを総じて、ガス不純物ということがある)を含有してもよい。ただし、酸素化物の合成効率のさらなる向上を図る観点からは、混合ガス20中にガス不純物を含有しないことが好ましい。
従って、混合ガス20中、不活性ガスと水素と一酸化炭素との合計量は、80体積%以上が好ましく、90体積%以上がより好ましく、100体積%がさらに好ましい。
混合ガス20と合成触媒とを接触させる際の温度(反応温度)、即ち反応管1内の温度は、例えば、150〜450℃が好ましく、200〜400℃がより好ましく、250〜350℃がさらに好ましい。上記下限値以上であれば、触媒反応の速度を十分に高め、酸素化物の合成効率のさらなる向上を図れる。上記上限値以下であれば、酸素化物の合成反応を主反応とし、酸素化物の合成効率のさらなる向上を図れる。
混合ガス20と触媒とを接触させる際の圧力(反応圧力)、即ち反応管1内の圧力は、例えば、0.5〜10MPaが好ましく、1〜7.5MPaがより好ましく、1〜5MPaがさらに好ましく、1〜3MPaが特に好ましい。上記下限値以上であれば、触媒反応の速度を十分に高め、酸素化物の合成効率のさらなる向上を図れる。上記上限値以下であれば、酸素化物の合成反応を主反応とし、酸素化物の合成効率のさらなる向上を図れる。加えて、上記上限値以下であれば、反応温度の過度の上昇を抑えやすい。
流入した混合ガス20は、反応床2の触媒と接触しながら流通し、その一部が酸素化物となる。
混合ガス20は、反応床2を流通する間、例えば、下記(1)〜(5)式で表される触媒反応により酸素化物を生成する。
3H+2CO→CHCHO+HO ・・・(1)
4H+2CO→CHCHOH+HO ・・・(2)
+CHCHO→CHCHOH ・・・(3)
2H+2CO→CHCOOH・・・(4)
2H+CHCOOH→CHCHOH+HO ・・・(5)
そして、この酸素化物を含む合成ガス22は、排出管4から排出される。合成ガス22は、酸素化物を含むものであれば特に限定されないが、酢酸、エタノール及びアセトアルデヒドから選択される1種以上を含むものが好ましく、エタノールを含むものがより好ましい。このようなC2酸素化物を製造する方法において、本発明の効果が顕著である。
混合ガス20の供給速度は、例えば、反応床2における混合ガスの空間速度(単位時間当たりのガスの供給量を触媒量(体積換算)で除した値)が標準状態換算で10〜100000L/L−触媒/hとなるように調節されることが好ましい。空間速度は、目的とする酸素化物に適した反応圧力、反応温度、及び原料である混合ガスの組成を勘案して、適宜調整される。
必要に応じ、排出管4から排出された合成ガス22を気液分離器等で処理し、未反応の混合ガス20と酸素化物とを分離してもよい。
本実施形態では、固定床の反応床2に混合ガスを接触させているが、例えば、触媒を流動床又は移動床等、固定床以外の形態とし、これに混合ガスを接触させてもよい。
本発明では、得られた酸素化物を蒸留等によって、必要成分毎に分離してもよい。
また、本発明では、エタノール以外の生成物(例えば、酢酸、アセトアルデヒド等、エタノールを除くC2酸素化物や酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸メチル等のエステル類)を水素化してエタノールに変換する工程(エタノール化工程)を設けてもよい。エタノール化工程としては、例えば、アセトアルデヒド、酢酸等を含む酸素化物を水素化触媒に接触させてエタノールに変換する方法が挙げられる。
ここで、水素化触媒としては、当該技術分野で知られる触媒が使用でき、銅、銅−亜鉛、銅−クロム、銅−亜鉛−クロム、鉄、ロジウム−鉄、ロジウム−モリブデン、パラジウム、パラジウム−鉄、パラジウム−モリブデン、イリジウム−鉄、ロジウム−イリジウム−鉄、イリジウム−モリブデン、レニウム−亜鉛、白金、ニッケル、コバルト、ルテニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム、酸化白金、酸化ルテニウム等が挙げられる。これらの水素化触媒は、本発明の触媒に用いられる担体と同様の担体に担持させた担持触媒であってもよく、担持触媒としては、銅、銅−亜鉛、銅−クロム又は銅−亜鉛−クロムをシリカ系担体に担持させた銅系触媒が好適である。担持触媒である水素化触媒の製造方法としては、上述の合成触媒と同様に、同時法又は逐次法が挙げられる。
あるいは、本発明では、アセトアルデヒドを高効率に得るために、生成物を気液分離器等で処理してエタノールを取り出し、このエタノールを酸化することによりアセトアルデヒドに変換する工程を設けてもよい。
エタノールを酸化する方法としては、エタノールを液化又は気化した後、金、白金、ルテニウム、銅又はマンガンを主成分とした金属触媒や、これら金属を2種以上含む合金触媒等の酸化触媒に接触させる方法等が挙げられる。これら酸化触媒は、合成触媒に用いられる担体と同様の担体に金属を担持させた担持触媒であってもよい。
上述したように、本実施形態によれば、混合ガスが不活性ガスを含有することで、混合ガスから酸素化物をより効率的に合成できる。
混合ガスに不活性ガスを含有させることで、酸素化物をより効率的に合成できる理由は明らかではないが、混合ガス中に不活性ガスが存在することで、合成触媒の活性点(触媒金属)への一酸化炭素の吸着と脱着とが円滑に進むためと考えられる。
以下に、実施例を示して本発明を説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
(製造例1)合成触媒の製造
チタンラクテートアンモニウム塩(Ti(OH)[OCH(CH)COO(NH )0.049gを含む水溶液(一次含浸液)1.22mLを調製した。一次含浸液1.22mLを多孔質担体(材質:シリカ、粒子径:1.18〜2.36mm、平均細孔直径:5.7nm、全細孔容積:0.61mL/g、比表面積:430m/g)2.0gに滴下して含浸させた。これを110℃にて3時間乾燥し、さらに400℃にて4.5時間焼成して一次担持体とした。塩化ロジウム三水和物(RhCl・3HO)0.154gと、塩化マンガン二水和物(MnCl・2HO)0.087gと、塩化リチウム一水和物(LiCl・HO)0.01gとを含む水溶液(二次含浸液)1.22mLを調製した。二次含浸液1.22mLを一次担持体に滴下して含浸させ、110℃にて3時間乾燥し、さらに400℃にて4.5時間焼成して触媒を得た。一次含浸液と二次含浸液との合計において、水素化活性金属のモル比は、ロジウム:マンガン=1:0.75、ロジウム:リチウム=1:0.275、マンガン:リチウム=1:0.667である。
(実施例1〜3)
製造例1で得られた合成触媒0.5gを直径1.5インチ(1.27cm)、長さ10インチ(25.4cm)のステンレス製の円筒型の反応管に充填して反応床を形成した。反応床に、常圧で水素ガスを30mL/分で流通させながら、320℃で2.5時間加熱し、触媒に還元処理を施した。
次いで、反応床を250℃とした後、反応床を表1中の反応温度とし、空間速度14400L/L−触媒/h、2MPaで反応床に流通させて、C2酸素化物を含む合成ガスを製造した。
混合ガス(水素:60体積%、一酸化炭素:30体積%、窒素:10体積%)を反応床に3時間流通させ、得られた合成ガスを回収し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。
得られたデータからCO転化率(モル%)、C2酸素化物の選択率(モル%)、C2酸素化物の空時収量(g/L−触媒/h)、合成触媒の単位質量当たりにおける、単位時間当たりの酸素化物の生成量(g/kg−触媒/h。表中、単位質量当たりの収量と記載)を算出し、これらの結果を表1に示す。また、C2酸素化物の空時収量と反応温度との関係を図2に示す。
なお、C2酸素化物の選択率及びC2酸素化物の空時収量は、得られたC2酸素化物の全てを、従来公知の水素還元処理(例えば、接触水素還元等)に付し、エタノールに変換したと仮定した場合の値である。
(実施例4〜6)
混合ガスの組成を水素:50体積%、一酸化炭素:25体積%、窒素:25体積%とした以外は、実施例1と同様にして合成ガスを製造し、CO転化率(モル%)、C2酸素化物の選択率(モル%)、C2酸素化物の空時収量(g/L−触媒/h)、合成触媒の単位質量当たりにおける、単位時間当たりの酸素化物の生成量(g/kg−触媒/h。表中、単位質量当たりの収量と記載)を算出し、これらの結果を表1に示す。また、C2酸素化物の空時収量と反応温度との関係を図2に示す。
Figure 2015163594
表1、図2に示すように、本発明を適用した実施例1〜6は、混合ガス中に不活性ガスの含有量が多いほど、C2酸素化物の空時収量が相対的に高まっていた。
これらのことから、本発明を適用することで、酸素化物をより効率的に合成できることが確認された。
1 反応管;2 反応床;3 供給管;4 排出管;5 温度制御部;6 圧力制御部;10 製造装置;20 混合ガス;22 合成ガス

Claims (3)

  1. 酸素化物合成用の触媒に、水素と一酸化炭素とを含有する混合ガスを接触させて酸素化物を得る工程を有する、酸素化物の製造方法において、
    前記混合ガスは、不活性ガスを含有することを特徴とする、酸素化物の製造方法。
  2. 前記混合ガスは、不活性ガスを5〜50体積%含有することを特徴とする、請求項1に記載の酸素化物の製造方法。
  3. 1〜3MPaの条件下で、前記触媒に前記混合ガスを接触させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の酸素化物の製造方法。
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