JP2015157449A - 圧力タンクの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1や特許文献2に示された従来の圧力タンクの製造方法においては、回転される樹脂製のライナに対して、アイ口から供給される繊維束を巻回することによって、圧力タンクが製造される。
また、特許文献1および特許文献2に係る従来の圧力タンクの製造方法では、繊維束がライナの本来接触する予定である場所以外にも接触する場合があり、この場合にも、繊維束とアイ口の間で摩擦力が生じる。
繊維束とアイ口の間で摩擦力が生じると、摩擦力が生じた分だけ、ライナに着床するときにおける繊維束に作用する張力が低下するため、繊維束の着床位置がズレることとなり、隣接する繊維束同士の間で隙間や浮きが生じ、その隙間や浮きが生じた部位では繊維束の層が疎になるため、圧力タンクの強度が低下するという問題があった。
そして、このような強度低下の問題は、圧力タンクにおける肩部(ストレート部とドーム部の境界部分)において、顕著に生じることが判明しており、肩部において、所望の強度を確実に確保できる技術の確立が望まれていた。
しかしながら、特許文献2に係るFW工法を用いた場合でも、着床時における繊維束に付与する張力が低下してしまう場合には、繊維束の層中の空隙を抑制することができなかった。
本発明の一実施形態に係る圧力タンクの製造方法において、圧力タンクは、フィラメントワインディング工法(FW工法)によって製造される。
FW工法を実現する装置であるフィラメントワインディング装置(以下、FW装置と記載する)の一例を図1に示している。
ライナ8は、FW工法で圧力タンク20(図5参照)を製造するときに、CFRP7を巻回するための芯材となる樹脂製の部材であり、直管状のストレート部8aと、ストレート部8aの両端部を塞ぐ椀状のドーム部8b・8bを備えており、また、ストレート部8aとドーム部8bの境界部分において、肩部8cが形成されている。
尚、本実施形態では、ライナ8に巻回する繊維束がCFRP7である場合を例示しているが、FW装置1に用いることができる繊維束の種類はこれに限定されない。
ライナ8は、回転軸2上に固定され、モータ9を回転駆動することによって、回転軸2と共に、回転軸2の軸心周りに回転するように構成される。
尚、回転軸2に固定されたライナ8は、ストレート部8aの軸心が、回転軸2の軸心に一致している。
また、モータ9は、制御装置6に接続されている。
尚、変位装置10は、制御装置6に接続されている。
アイ口3は、変位装置10による変位方向が逆転するタイミングの前後で、前記回転機構によって、回転軸3b周りに向きを反転するように(180度)回転され、これにより、給糸口3aにおけるCFRP7との接触部位が、常に、アイ口3の変位方向における前側の内壁面(接触部3cと呼ぶ)となるように構成される。
尚、アイ口3における回転機構(図示せず)は、制御装置6に接続されている。
図2(a)に示す如く、FW装置1を用いたFW工法において、ライナ8に対してCFRP7を巻回する工程においては、まず始めに、ライナ8の肩部8cにCFRP7の始端を留め付けておき、回転軸2を回転駆動してライナ8を軸心周りに回転させるとともに、変位装置10(本図では図示せず)によって、給糸口3aからCFRP7を供給しながらアイ口3を矢印Aの方向に変位させる(STEP−1)。
このとき、回転軸2の回転速度は、ライナ8に対するCFRP7の着床位置がドーム8bであることに対応して、制御装置6によって、ドーム部8bに対するCFRP7の巻回に適した回転速度R1となるように制御される。
ドーム部8bへの巻回に適した回転速度R1は、ライナ8に対するCFRP7の着床位置に応じて、制御装置6により可変制御される。
また、CFRP7は、給糸口3aにおける接触部3cに接している。
このとき、回転軸2の回転速度は、ライナ8に対するCFRP7の着床位置がストレート部8aであることに対応して、制御装置6によって、ストレート部8aに対するCFRPの巻回に適した回転速度R2となるように制御される。ストレート部8aへの巻回に適した回転速度R2は、ドーム部8bへの巻回に適した回転速度R1に比して小さい速度(R1>R2)である。
即ち、回転速度R1と回転速度R2は、速度が異なっている。
そして、回転速度R1と回転速度R2を切り換えるタイミングは、ライナ8に対するCFRP7の着床位置が、肩部8cになったときであり、このため着床位置が肩部8cを過ぎた直後は、回転軸2の回転速度が変動するのに伴って、CFRP7の巻回状況が不安定になり、CFRP7のズレや浮きが生じやすい。
このとき、回転軸2の回転速度は、ライナ8に対するCFRP7の着床位置がドーム8bであることに対応して、制御装置6によって、ドーム部8bに対するCFRP7の巻回に適した回転速度R1となるように制御される。
また、このときのアイ口3の回転速度R3は、ドーム部8bに対するCFRP7の巻回に適した回転速度R1に同期して可変される。
このとき、回転軸2の回転速度は、ライナ8に対するCFRP7の着床位置がストレート部8aとなることに対応して、制御装置6によって、ストレート部8aに対するCFRP7の巻回に適した回転速度R2となるように制御される。
また、このときも、CFRP7は、給糸口3aにおける接触部3cに接している。
そして、アイ口3の回転速度R3を、回転軸2のドーム部8bに対するCFRP7の巻回に適した回転速度R1に同期させることで、給糸口3aにおけるCFRP7の引き出し位置が常に接触部3cの略同じ位置に維持され、これにより、ライナ8に着床したCFRP7がズレたり浮いたりすることが抑制される。
このとき、回転軸2の回転速度は、ライナ8に対するCFRP7の着床位置がストレート部8aであることに対応して、制御装置6によって、ストレート部8aに対するCFRP7の巻回に適した回転速度R2となるように制御される。
CFRP層22は、前述したCFRP7の繊維束をライナ8(および口金21・21)に巻回することによって形成される。
このような構成により、肩部8cを形成するCFRP7のズレを抑制できる。これにより、肩部8cにおけるCFRP層22内に空隙部が生じることを抑制して、所望の強度を確保することができる。
従来、FW工法では、図7に示す如く、アイ口3から供給されるCFRP7には、テンションローラ4によって、張力F1が付与されている。
接触部3cにおけるCFRP7の接触位置が変化するときには、図7に示すように、接触部3cとCFRP7との間で、摩擦力F2が生じる。
そして、このような摩擦力F2が生じる結果、巻回時にCFRP7に作用している巻回張力Fnは、摩擦力F2の分だけ減少するため、図8上図に示すように、巻回張力Fn=F1−F2となり、所望する巻回張力F1を得ることができない。
尚、ここで言う「空隙部」は、CFRP7の積層方向においてCFRP7の繊維幅の3倍以上の高さを有する空間を意味している。
そして、接触部3cに配置した圧力センサによって、接触部3cに対するCFRP7の接触圧力を検出し、制御装置6は、その検出した圧力によって、接触部3cとCFRP7の間で生じる摩擦力F2を、リアルタイムで検出する。
また、制御装置6は、検出した摩擦力F2に応じて、テンションローラ4の変位量を変更し、CFRP7に付与する張力を調整する。
その結果、着床時のCFRP7に作用する巻回張力Fnは、摩擦力F2の減少分が補われて、図8下図のように、Fn=F1+F2−F2となり、その結果、巻回張力Fn=F1を確保することができる。
尚、本発明の一実施形態に係る圧力タンクの製造方法では、テンションローラ4によってCFRP7に対して付与する張力F1を、ライナ8に対するCFRP7の着床位置に応じて変化させる構成としてもよい。
CFRP7を巻回する工程においては、制御装置6によって、変位装置10からに信号に基づいて、ライナ8に対するCFRP7の着床位置を演算し、その演算結果から、今のCFRP7の着床位置が、ドーム部8bであるか否かの判定を行う。
一方、CFRP7の着床位置が、ドーム部8bでない(ストレート部8aである)と判定した場合には、制御装置6は、テンションローラ4の変位を調整して、F1の張力をCFRP7に付与する。
巻き残しがあるか否かの判定は、例えば、回転軸2やボビン5等の積算回転数から判定することができる。
そして、巻き残しがあると判定した場合には、引き続きCFRP7を巻回する工程を継続し、上記手順を繰り返し実行する。
一方、巻き残しがあると判定した場合には、CFRP7を巻回する工程を終了する。
以下では、従来の製造方法で製造した圧力タンクと本発明の一実施形態に係る製造方法で製造した圧力タンクについて、CFRP層の構造を比較することで、効果の確認を行った場合の結果を例示している。
CFRP層32には、巻回時にCFRP7にズレや浮きが生じることで、空隙部33・33・・・が生じている。
即ち、従来の圧力タンク30では、肩部8cのCFRP層32は、ストレート部8aのCFRP層32に比して「疎の領域」の厚みが大きい状態となっており、圧力タンク30の強度が、ストレート部8aに比して肩部8cにおいて低くなっている。
圧力タンク20のCFRP層22においても、巻回時におけるCFRP7のズレや浮きは完全になくすことはできないため、空隙部23・23・・・が生じている。
即ち、本発明の一実施形態に係る製造方法で製造された圧力タンク20では、肩部8cのCFRP層22は、ストレート部8aのCFRP層22に比して「密な領域」の厚みが大きい状態となっており、圧力タンク20の強度が、ストレート部8aに比して肩部8cにおいて低くなることがなく、肩部8cの強度が確保されている。
このような構成により、肩部8cにおける空隙部23が存在しない層(「密な領域」)の厚みD2を、ストレート部8aにおける「密な領域」の厚みD1に比して大きくすることができる。これにより、肩部8cにおいて、所望の強度を確保することができる。
2 回転軸
3 アイ口
3a 給糸口
3b 回転軸
3c 接触部
6 制御装置
7 CFRP
8 ライナ
8a ストレート部
8b ドーム部
8c 肩部
R1 回転速度(ドーム部巻回時におけるライナの回転速度)
R2 回転速度(ストレート部巻回時におけるライナの回転速度)
R3 回転速度(アイ口の回転速度)
Claims (2)
- 直管状のストレート部と、
前記ストレート部の管軸方向における端部を塞ぐ略椀状のドーム部と、
を備えるライナを、
前記ストレート部の管軸方向における軸心に一致する軸回りに回転させつつ、
繊維束の供給口たるアイ口を、
前記ストレート部の管軸方向に往復変位させるとともに、
前記アイ口の変位方向が逆転するときにおいて、
前記アイ口を回転させることにより、前記アイ口の変位方向における向きを反転させて、
前記アイ口から供給される前記繊維束を前記ライナに巻回して、前記ライナに沿った形状を有する容体を形成して圧力タンクを製造する方法であって、
前記ストレート部に前記繊維束を巻回するときにおける前記ライナの回転速度と、前記ドーム部に前記繊維束を巻回するときにおける前記ライナの回転速度を変化させる場合において、
前記ドーム部に前記繊維束を巻回するときに、
前記ライナの回転速度と、
前記アイ口の回転速度を同期させる、
ことを特徴とする圧力タンクの製造方法。 - 前記ストレート部と前記ドーム部の境界部分たる肩部に前記繊維束を巻回するときに、
前記アイ口と前記繊維束との間で生じる摩擦力を測定し、
測定した前記摩擦力の分だけ、前記繊維束に付与する張力を増大させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力タンクの製造方法。
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