JP2015155799A - シンチレータ、放射線検出装置、放射線検出装置の製造方法及び放射線検出システム - Google Patents

シンチレータ、放射線検出装置、放射線検出装置の製造方法及び放射線検出システム Download PDF

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知昭 市村
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Abstract

【課題】 シンチレータと光電変換基板とを貼り合わせる粘着層からの水分の侵入を低減し、耐湿性の高い放射線検出装置を提供すること。
【解決手段】放射線検出装置は、複数の光電変換素子が配列された光電変換基板と、放射線を光電変換素子が検出可能な光に変換する蛍光体層と蛍光体層の少なくとも一部を覆う蛍光体保護層とを有するシンチレータと、光電変換基板およびシンチレータを貼り合わせる接着層と、を有する。シンチレータの端部における蛍光体保護層の厚さは、シンチレータの中央部における蛍光体保護層の厚さよりも厚く形成されており、蛍光体保護層との貼り合わせにより端部における接着層の厚さは、中央部における接着層の厚さよりも薄く形成される。
【選択図】 図3C

Description

本発明は、シンチレータ、放射線検出装置、放射線検出装置の製造方法及び放射線検出システムに関するものである。
近年、複数の光電変換素子を表面に形成した光電変換基板と、X線を照射することにより光電変換素子が検知可能な波長の光を発光するシンチレータを光電変換基板上に積層したデジタル放射線検出装置が商品化されている。
シンチレータに用いる蛍光体としては、CsIにTlをドープした材料に代表されるハロゲン化アルカリ系の材料からなるもの、GdOSにTbをドープした材料からなるものが主流である。特に、ハロゲン化アルカリ系のシンチレータ材料は、柱状の結晶が成長することにより、ライトガイディングの効果を得ることにより蛍光体の発光の散乱を低減させることができ、高い鮮鋭度を得ることができる。
ハロゲン化アルカリ系の材料は高い潮解性を有しているため、シンチレータの防湿保護構造に関する技術として以下の特許文献1、2による手法が提案されている。
特許文献1では、シンチレータ端部と基板上の有機樹脂層を厚くする構造を提案している。有機樹脂層を厚くすることにより蛍光体と外界との距離を遠ざけ、蛍光体に到達する水分量を減らすことにより高い防湿性を有する放射線検出装置の構造と製造方法を提供している。
特許文献2では、光電変換基板上に蛍光体を形成し、蛍光体保護層としてホットメルト樹脂を用いる構造を提案している。ホットメルト樹脂と金属からなく保護層を蛍光体上に形成した後、ホットメルト樹脂の端部を加熱・加圧により圧着し、水分の通り道を狭めることにより高い防湿性を有する放射線検出装置の構造と製造方法を提供している。
特開2006−52979号公報 特許第4612876号明細書
光電変換基板上にシンチレータを貼り合わせる構造を有する放射線検出装置において、特許文献1に示した構造の様に光電変換基板とシンチレータとを接着層を介して張り合わせることにより衝撃に対する耐久性を高めることが可能である。
一般的に、真空蒸着により形成されるハロゲン化アルカリ系シンチレータにおいては、蛍光体表面にスプラッシュと呼ばれる高さ50μm程度の結晶の異常成長部が存在する。このようなスプラッシュが残ったまま光電変換基板とシンチレータとを貼り合わせると、光電変換基板とスプラッシュとの間に浮きや気泡が残留し、画像の違和感や鮮鋭度の低下を招く一因となる。貼り合わせの前にスプラッシュの平坦化処理を行っても高さ15μm程度の凹凸は残留してしまう。
そこで、残留したスプラッシュの凹凸の高さよりも厚い接着層を用いることにより、貼り合わせ時の気泡の発生を避けることが可能である。
しかしながら、接着層を厚くするとシンチレータと光電変換基板との距離が離れ、遠ざかることにつながる。シンチレータと光電変換基板との距離が離れるとシンチレータの発光が散乱し、鮮鋭度やMTF(解像度)が低減するという課題が生じ得る。
さらに、使用される接着層(接着剤や粘着剤)の透湿率は30g/m・day以上であり、シンチレータの防湿保護層として要求される透湿率である5g/m・day以下と比較して高い透湿率である。このため、接着層を厚くすると水分がシンチレータと光電変換基板の間に侵入しやすくなるという課題がある。そのため、接着層を介してシンチレータに水分が侵入することを防止するために、シンチレータ表面を構成する防湿保護層もある程度の厚さが必要となる。
本発明は、シンチレータの端部における蛍光体保護層を厚膜化して、耐湿性に優れた放射線検出装置を提供することを目的とする。
本発明にかかる放射線検出装置は、複数の光電変換素子が配置された光電変換基板と、放射線を前記光電変換素子が検出可能な光に変換する蛍光体層と前記蛍光体層の少なくとも一部を覆う蛍光体保護層とを有するシンチレータと、前記光電変換基板および前記シンチレータを貼り合わせる接着層と、を有する放射線検出装置であって、
前記シンチレータの端部における前記蛍光体保護層の厚さは、前記シンチレータの中央部における前記蛍光体保護層の厚さよりも厚く形成されており、
前記蛍光体保護層との貼り合わせにより前記端部における前記接着層の厚さは、前記中央部における前記接着層の厚さよりも薄く形成される
ことを特徴とする。
本発明にかかる放射線検出装置の製造方法は、複数の光電変換素子が配置された光電変換基板と、放射線を前記光電変換素子が検出可能な光に変換する蛍光体層と前記蛍光体層の少なくとも一部を覆う蛍光体保護層とを有するシンチレータと、前記光電変換基板および前記シンチレータを貼り合わせる接着層と、を有する放射線検出装置の製造方法であって、
前記シンチレータの端部における前記蛍光体保護層の厚さを、前記シンチレータの中央部における前記蛍光体保護層の厚さよりも厚く形成する工程と、
前記蛍光体保護層との貼り合わせにより前記端部における前記接着層の厚さを、前記中央部における前記接着層の厚さよりも薄く形成する工程と、
を有することを特徴とする。
本発明によれば、シンチレータの端部における蛍光体保護層を厚膜化して、耐湿性に優れた放射線検出装置の提供が可能になる。
すなわち、シンチレータの端部における蛍光体保護層の厚さを、シンチレータの中央部における蛍光体保護層の厚さよりも厚く形成することで、シンチレータと光電変換基板とを貼り合わせた際に、シンチレータの端部における接着層を薄くすることが可能となる。これにより、蛍光体保護層よりも透湿率の高い接着層を介して、端部から侵入してくる水分を低減することができる。
また、端部から侵入してくる水分が低減されることにより、シンチレータの中央部へ侵入する水分も低減されるため、中央部の保護層を薄く形成することができ、MTF(解像度)の改善を図ることが可能になる。
実施形態の放射線検出装置の構造を説明する断面図。 第1実施形態の放射線検出装置の構造を説明する断面図。 第1実施形態の放射線検出装置の製造方法を説明する図。 第1実施形態の放射線検出装置の製造方法を説明する図。 第1実施形態の放射線検出装置の製造方法を説明する図。 第2実施形態の放射線検出装置の製造方法を説明する図。 第3実施形態の放射線検出装置の製造方法を説明する図。 第4実施形態の放射線検出装置の製造方法を説明する図。 第5実施形態の放射線検出装置の製造方法を説明する図。 第5実施形態の放射線検出装置の製造方法を説明する図。 第6実施形態の放射線検出装置の製造方法を説明する図。 第6実施形態の放射線検出装置の製造方法を説明する図。 第7実施形態の放射線検出システムを説明する図。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。本発明は放射線を電気信号として検出する放射線検出装置に係わり、本明細書では、X線の他、α線、β線、γ線等の電磁波も、放射線に含まれるものとする。
<シンチレータについて>
図1は、本実施形態に係る放射線検出装置の構造を示す図である。シンチレータ100の蛍光体支持基板上には真空蒸着法により柱状結晶からなる蛍光体層105が形成されており、蛍光体層105の少なくとも一部が有機樹脂からなる蛍光体保護層106で覆われている(図1(c))。蛍光体保護層106は、蛍光体層105の平坦な中央部の厚さに比べて蛍光体層105の外周部(端部)の方が厚く形成されている。
蛍光体層105として、柱状結晶を形成する材料を用いることにより、ライトガイディング効果を得ることができ、発光の散乱を抑え高い鮮鋭度と輝度を得ることが可能である。柱状結晶を形成する蛍光体層105の材料としては、ハロゲン化アルカリを主成分とする材料を用いることが可能である。例えば、CsI:Tl、CsI:Na、CsBr:Tl、NaI:Tl、LiI:Eu、KI:Tl等を用いることが可能である。その製造方法は、例えば、CsI:Tlでは、CsIとTlIを真空チャンバー内で同時に加熱し蒸着することで形成することが可能である。
図1(c)に示すように、蛍光体支持基板101の耐食性を向上させるために、蛍光体支持基板101の少なくとも一部を下引層104で被覆することにより、支持基板102を構成しても構わない。
蛍光体支持基板101としては、Al、Mg、Be、Fe等の金属や、アモルファスカーボン、結晶カーボン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ナイロン、アラミド、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)等の樹脂基板や、その他の材料としてはガラス、シリコーン、ゲルマニウム等を蛍光体支持基板として用いることが可能である。
下引層104としては、高い耐熱性を有する樹脂として、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を用いることが可能である。また、蛍光体支持基板101の反射率が低い場合、蛍光体支持基板101の表面に反射層を形成することが可能である。反射層は、蛍光体支持基板101と蛍光体層105との間に配置され、蛍光体層105で変換された光を反射する。この場合、反射層としては、Al、Ag、Au、Pt、Cu、Mg、Be、Fe等のうち少なくともいずれか1つの金属を蒸着やCVDにより形成する方法が可能である。あるいは、酸化チタンやシリカ、アルミナ、酸化イットリウム、ガドリニウムオキシ硫化物(GOS)、イットリウムオキシ硫化物(YOS)等を含有した樹脂を蛍光体支持基板101の表面に形成する方法が可能である。
<蛍光体保護層について>
蛍光体保護層106は蛍光体層105の少なくとも一部を覆うように配置されている。蛍光体保護層106は接着層113よりも高い防湿性が要求される。蛍光体保護層106として使用できる材料としては、例えば、ポリ四フッ化エチレン、ポリ三フッ化−塩化エチレン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリフッ化ビニリデン、アラミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、 ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ナイロン、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレンブタジエンゴム系樹脂、ポリパラキシリレン等を用いることが可能である。
蛍光体保護層106の形成方法としては、例えば、スピンコート、ディップコート、スプレーコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート、CVD、真空蒸着などの一般的な樹脂膜形成方法を使用することが可能である。蛍光体層105の外周部を形成する蛍光体保護層106の凸部の形成方法としては、例えば、ディップコート、スプレーコート、ダイコート、CVD、真空蒸着などを用いることが可能である。
蛍光体保護層106が有機樹脂や水等の溶剤中に溶解している有機物から生成される場合、塗布後に加熱による乾燥や重合を行う必要がある。このため、加熱にはホットプレート、熱風乾燥機、IRヒータ、真空乾燥機、マイクロ波乾燥機等の一般的な乾燥機を使用することが可能である。
また、蛍光体保護層106がフィルムを貼り合わせることにより形成される場合には、例えば、ロールラミネータ、熱圧着法等の一般的な圧着方法を使用することが可能である。
蛍光体保護層106は、蛍光体層105の平坦な中央部よりも外周部(端部)の方が厚く形成されている。厚く形成されている部分を、以下、凸部と表記する。蛍光体を真空蒸着法で形成すると、図3A(a)の様に蛍光体層105の蛍光体端部には傾斜部が形成される。これは、蒸着時に基板を保持しているホルダによる遮蔽効果のためで、蒸着中心に近い蛍光体中央部と比較して、蛍光体端部には傾斜が形成されるのである。
図1(c)に記載するように、シンチレータの蛍光体保護層106は中央部が平坦であり、蛍光体層105の傾斜部に近い端部には、蛍光体保護層106と同一の材料からなる凸部が形成されている。蛍光体保護層106の厚さは、蛍光体表面の凹凸を鑑みて、例えば、5μm以上に形成され、鮮鋭度の低下を鑑みると、例えば、50μm以下に形成される。
蛍光体保護層106を形成した後、蛍光体保護層106の端部に凸部を形成するための手法は、蛍光体保護層106を形成した手法と同一であっても、異なる方法を用いても構わない。蛍光体保護層106の表面に形成された凸部によって粘着剤を圧縮する必要があるので、凸部を構成する蛍光体保護層の厚さは、例えば、平坦な中央部を構成する蛍光体保護層106の厚さより3μm以上厚く形成される。
<放射線検出装置について>
放射線検出装置110はシンチレータ100と光電変換基板111とを貼り合わせることにより構成される(図1(b)、(c))。光電変換基板111には、複数の光電変換素子114が配置されている。シンチレータ100は、放射線を光電変換素子114が検出可能な光に変換する蛍光体層105と蛍光体層105の少なくとも一部を覆う蛍光体保護層106とを有する。光電変換素子114はシンチレータ100により発した光を電荷に変換する。光電変換基板111としては、例えば、ガラス基板や有機樹脂フィルム上に光電変換素子114やTFTを2次元的に配置して光電変換部を形成したものを用いることが可能である。あるいは、光電変換基板111として、例えば、シリコーン基板上に光電変換素子114を2次元的に配置したCMOSセンサーやCCDセンサーを用いることが可能である。ガラス基板上に光電変換素子を形成する場合、例えば、MIS型センサー、PIN型センサー等を適宜用いることが可能である。
図1(a)と、図1(a)のA−A’断面を示す図1(b)とには、光電変換基板111としてガラス基板上にTFTや光電変換素子114を2次元的に配置した形態を示す。また、図2(a)と、図2(a)のB−B’断面を示す図2(b)とには光電変換素子114としてCMOSセンサーを配置した形態を示す。光電変換基板111の表面は異物や静電気の影響を避けるため表面を表面保護層108で被覆することが可能であり、表面保護層108で光電変換基板111の表面を被覆する場合、表面保護層108は少なくとも有効画素領域を被覆するように形成される。
表面保護層108としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、スチレン樹脂、ポリパラヒドロキシスチレン樹脂等を用いることが可能である。
図1(b)のように、シンチレータ100と光電変換基板111との実装に際し、シンチレータ100と光電変換基板111との位置ずれを防止するために、シンチレータ100と光電変換基板111との間の少なくとも一部に接着層113を用いて固定を行う。接着層113としては、例えば、常温で接着性を有する粘着シートや、加熱により接着性が発現し冷却により硬化するホットメルト樹脂や、硬化により接着性を発現する接着剤を用いることが可能である。粘着剤としては、例えば、アクリル系、エポキシ系、シリコーン系からなるシート状の粘着剤を用いることが可能である。
ホットメルト樹脂を用いる場合は、例えば、オレフィン系、エポキシ系、アクリル系、ポリイミド系の熱可塑性樹脂からなるものを用いることが可能である。接着剤を用いる場合は、例えば、エポキシ系、アクリル系、 シリコーン系、ウレタン系、ポリイミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系等の樹脂からなる樹脂を用いることが可能である。硬化方法は、自然放置により硬化が完了する自然硬化型、複数の樹脂を混合することにより硬化反応が進行する混合型、加熱により硬化が進行する熱硬化型のいずれでもよい。
また、接着層113の厚みは、シンチレータ表面の凹凸(例えば、スプラッシュ)と光電変換基板111との間に気泡が形成されることを避けるため、15μm以上であることが好ましい。
また、封止樹脂112(封止部材)は、耐衝撃性の観点から弾性率の高い材料により形成される。封止樹脂112(封止部材)として、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、 シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリパラキシリレン、ポリ四フッ化エチレン、ポリ三フッ化−塩化エチレン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラート、スチレンブタジエンゴム系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を用いることができる。
シンチレータの防湿保護層(蛍光体保護層106、封止樹脂112(封止部材))として要求される透湿率は、例えば、5g/m・day以下である。接着層(接着剤や粘着剤)の透湿率は、例えば、30g/m・day以上であり、シンチレータの防湿保護層(蛍光体保護層106、封止樹脂112(封止部材))の透湿率は接着層113の透湿率よりも低い。
(第1実施形態)
第1実施形態の放射線検出装置110の模式断面図を図2に示し、放射線検出装置110およびシンチレータ100およびその製造方法を説明するための模式断面図を図3A〜図3Cに示す。
図3A(a)に示すように、蛍光体支持基板101の上に下引層104を形成する。下引層104を形成した支持基板102上に、真空蒸着法により柱状結晶の蛍光体層105を形成する。蛍光体層105は、例えば、CsI:Tlの場合に、CsI(沃化セシウム)とTlI(沃化タリウム)との共蒸着によって形成される。この蛍光体層の形成方法は、以下の方法で行うことが可能である。上記の蛍光体原料を蒸着材料として抵抗加熱ボートに充填する。そして、回転する支持体ホルダに支持基板102を設置する。続いて蒸着装置内を真空ポンプで排気して、Arガスを導入して真空度を0.1Paに調整し、蒸着を行う。本実施形態で説明する構成例では、蛍光体支持基板101として、厚さ0.3mmのアルミ基板を用い、下引層104として高い耐熱性を有するポリイミド樹脂を用いている。
次いで、図3A(b)に示すように、有機樹脂溶液をスプレーコート塗布により蛍光体保護層106の形成を行う。蛍光体保護層106としては、シクロペンタノン中にポリ塩化ビニリデンを溶解させることにより粘度を15cpsに調整した塩化ビニリデン溶液を蛍光体上に直接塗布する。その後、100℃のホットプレートで溶剤を乾燥させることにより、厚さ10μmの有機樹脂層の形成を行う。
次いで図3A(c)に示すように、先に使用した有機樹脂の溶液と同じ材料からなる溶液をシンチレータ100の端部107にスプレーコートにより塗布する。ここで追加塗布による凸部の高さは20μm形成した(蛍光体表面からの厚さは、図3A(b)で説明したように有機樹脂層の厚さが10μmであるので、凸部の高さ20μmとの合計により30μmとなる)。
図3A(c)に示すように、シンチレータ100の端部107における蛍光体保護層106の厚さは、シンチレータ100の中央部127における蛍光体保護層106の厚さよりも厚く形成されている。
以上の処理により、本実施形態にかかるシンチレータ100の端部107に凸部を配置したシンチレータ100を形成することができる。
次に、光電変換基板111とシンチレータ100とを接着層113を介して貼り合わせることにより放射線検出装置110を作成する処理を説明する。本実施形態では、光電変換基板111として、Si基板119上に光電変換素子114としてCMOSセンサーを配置した構成を説明する。光電変換基板111の構成はこの例に限定されるものではなく、例えば、ガラス基板上にTFTや光電変換素子114を2次元的に配置した構成を用いることも可能である。
接着層113としては、シート状に加工されたホットメルト樹脂を使用する。先ず、シンチレータ100とホットメルト樹脂(接着層113)とをロールラミネータ103による加熱加圧処理による圧着(熱圧着)を行い貼り合わせる(図3B(d))。熱圧着の条件としては、例えば、圧力0.2MPa、温度100℃、送り速度5mm/secで貼り合わせを行う。熱圧着に用いるホットメルト樹脂としては、例えば、倉敷紡績社製の厚さ25μmのシート状ホットメルト樹脂であるZ−2を用いることが可能である。
次に、接着層113としてホットメルト樹脂を貼り合わせたシンチレータ100と光電変換基板111とを対向させ、ロールラミネータ103を用いた熱圧着により貼り合わせを行う(図3B(e))。熱圧着の条件としては、例えば、圧力0.4MPa、温度100℃、送り速度1mm/secで貼り合わせを行う。
本実施形態では、シンチレータ100の中央部に対応する接着層の厚さは25μmであり、蛍光体保護層106の中央部の厚さは10μmであり、合計すると35μmになる。
シンチレータ100の端部において、蛍光体保護層106の厚さは30μm(蛍光体表面からの高さ)である。蛍光体保護層106の厚さ30μmの厚さと接着層の厚さとの合計が35μmになるとすると、貼り合わせで蛍光体保護層106により押圧されることにより、シンチレータ100の端部に対応する接着層の厚さは5μmとなる。接着層は圧縮されて20μmつぶされたことになる(図3C(f))。
貼り合わせにおける押圧でシンチレータ100の外周部に配置された凸部により粘着剤(接着層)が押しつぶされ、シンチレータ100の凸部と光電変換基板111とにはさまれた粘着剤(接着層)の厚さを5μmとすることができる。
光電変換基板111とシンチレータ100とを貼り合わせた後、迷光防止のため放射線検出装置の周辺を封止樹脂112で封止する(図3C(g))。封止樹脂112は、光電変換基板111およびシンチレータ100の少なくとも一方の側面を覆う。封止樹脂112の形成には、例えば、武蔵エンジニアリング社製ディスペンサーを用いることが可能である。封止樹脂112としては、例えば、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製のシリコーン樹脂であるTSE3976を使用することが可能である。TSE3976は黒色であることに加え、ショア硬さA30とやわらかく、光電変換基板111に迷光が入ることを防止しつつ、シンチレータ100の端部に作用する応力を吸収して、耐衝撃性の高い放射線検出装置110を作ることができる。
以上の処理工程により製造された放射線検出装置110はシンチレータ100の端部の凸部が接着層113を加圧(押圧)する。シンチレータ100と光電変換基板111との間の隙間を狭めることにより放射線検出装置110の中央部への水分の侵入を防ぐことができ、蛍光体保護層106を薄くしても高い防湿性を有する放射線検出装置110を製作することが可能になる。
(第2実施形態)
次に、図4の模式断面図を用いて第2実施形態の放射線検出装置およびシンチレータおよびその製造方法を説明する。第1実施形態においては、接着層113として加熱により軟化するホットメルト樹脂を用いた。本実施形態では接着層113としてエポキシ樹脂からなる接着剤を用いてシンチレータ100と光電変換基板111との貼り合わせを行う処理を説明する。
シンチレータ100の作成方法は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。本実施形態では、接着層113として、2液混合により硬化するエポキシ樹脂からなる接着剤として、3M社製DP−125クリアを専用ハンドガンで混合した後、光電変換基板111上に塗布を行う(図4(a))。
次にシンチレータ100と光電変換基板111とを対向させて、シンチレータ100側から圧力を加える(例えば、2kgのおもり116を乗せて加圧を行う)ことにより、光電変換基板111とシンチレータ100との接着を行う(図4(b))。その後、第1実施形態と同様の方法でシンチレータ100の周辺を封止樹脂112で封止することにより、放射線検出装置110を形成することが可能である。
本実施形態によれば、第1実施形態と異なり、光電変換基板111とシンチレータ100との貼り合わせに際し、加熱を行わない。このため、貼り合わせ後の基板反りを低減させることができ、内部応力を低減した衝撃耐久性に優れた放射線検出装置を製造することが可能である。
(第3実施形態)
次に、図5の模式断面図を用いて第3実施形態の放射線検出装置およびシンチレータおよびその製造方法を説明する。第1実施形態においては、蛍光体支持基板101として厚さ0.3mmのアルミ基板を用い、下引層104として高い耐熱性を有するポリイミド樹脂を用いた。本実施形態では、蛍光体支持基板101として厚さ0.2mmの炭素繊維強化プラスチック(CFRP)基板を使用する構成を説明する。
CFRPのヤング率(弾性率)は100〜200GPaであり、アルミ(Al)のヤング率は約70GPaに比べて高い剛性を有している。このため、アルミ(Al)により蛍光体支持基板101を作成する場合に比べて、CFRPで蛍光体支持基板101を作成する場合は蛍光体支持基板101を薄くしても高い剛性を確保することが可能である。また、高い剛性を確保することにより、大判のシンチレータを作成する際の蛍光体支持基板101のハンドリングも容易になる。
CFRPで蛍光体支持基板101を作成する場合、基板が薄くなることにより封止樹脂112を基板の側壁に接触させることが困難となる。封止樹脂112が基板の側壁に塗布されずに接着層113がむき出しになると水分のリークパスとなってしまうため、図5に示す様に、接着層113の端部はシンチレータ100の端部まで配置せず、封止樹脂112により被覆されている構造とすることができる。図5に示す構造では、封止樹脂112は、光電変換基板111と蛍光体保護層106との間に配置されており、封止樹脂112の側面により接着層113の端部が被覆されている。接着層113をシンチレータ100の外周部の周辺を封止する封止樹脂112よりも内側に配置することにより、接着層113がむき出しになることを防止することができ、接着層113からの水分侵入を防ぐことができる。
接着層113として、例えば、厚さ25μmのアクリル系粘着剤であるリンテック製P−0280を用い、ロールラミネータを用いて粘着剤とシンチレータ100との貼り合わせを行うことが可能である。
粘着剤を貼り合わせたシンチレータ100と光電変換基板111とを対向させて、ロールラミネータ103を用いた圧着により貼り合わせを行う。図5に示す構成では、光電変換基板として、厚さ0.7mmのガラス基板上にTFTと光電変換素子114を形成した光電変換基板111を用いている。圧着の条件としては、圧力0.4MPa、温度25℃、送り速度1mm/secである。
本実施形態ではシンチレータ100の中央部に対応する接着層の厚さは25μmであり、第1実施形態と同様に蛍光体保護層106の中央部の厚さを10μmで形成すると、両者の合計は35μmになる。
シンチレータ100の端部において、蛍光体保護層106の厚さを30μm(蛍光体表面からの高さ)に形成すると、貼り合わせで蛍光体保護層106により押圧されることにより、シンチレータ100の端部に対応する接着層の厚さは5μmとなる。接着層は圧縮されて20μmつぶされたことになる。
貼り合わせにおける押圧でシンチレータ100の外周部に配置された凸部により粘着剤(接着層)が押しつぶされ、シンチレータ100の外周部に配置された凸部と光電変換基板111とにはさまれた接着層113の厚さを5μmとすることができる。
本実施形態により作成された放射線検出装置は蛍光体支持基板101を薄くすることにより軽量化が可能である。さらに、接着層113をシンチレータ100の外周部の周辺を封止する封止樹脂112よりも内側に配置することにより、接着層113がむき出しになることを防止することができ、接着層113からの水分侵入を防ぐことができる。本実施形態によれば、高い剛性と防湿性とを有する放射線検出装置を作成することが可能である。
(第4実施形態)
次に、図6の模式断面図を用いて第4実施形態の放射線検出装置およびシンチレータおよびその製造方法を説明する。第1実施形態においては、有機樹脂の溶液をスプレーコートすることによりシンチレータ100の端部107に凸部を形成した。本実施形態では、端部を厚く形成した有機樹脂フィルムを貼り合わせることによりシンチレータ100の端部に凸部を形成する構成を説明する。
有機樹脂フィルムの作成方法は、図6に示す様に、シンチレータ100の端部にあたる個所を中央の平坦部に比べて厚くした型117を作成する(図6(a))。そして、その型117の中に有機樹脂を含んだ溶液(例えば、シクロペンタノン中に塩化ビニリデンを含んだ溶液)を流し込み、その後、溶剤(シンクロペンタノン)を乾燥させることにより任意形状の有機樹脂フィルム(塩化ビニリデンフィルム)を作成する。尚、溶液としては、例えば、塩化ビニリデン溶液の他、トルエン中にスチレンブタジエンゴムを溶解させた溶液を用いることも可能である。
以下の説明では、有機樹脂フィルムの作成として、塩化ビニリデン溶液を用いる例を説明する。まず、シクロペンタノンにポリ塩化ビニリデンを溶解させた溶液を型117に流し込み、100℃のホットプレートで30分加熱を行う(図6(b))。この際、溶剤を乾燥させないでおくことにより、多少のタック性(粘着性)を有するポリ塩化ビニリデンのシートを作成することが可能である。
作成したポリ塩化ビニリデンシートをシンチレータ100上に配置し、120℃、0.3MPaのラミネータで1時間加熱/加圧による圧着(加熱加圧処理による圧着)を行う(図6(c))。圧着作業中に溶剤が乾燥し、ポリ塩化ビニリデンシートと蛍光体とを接着することが可能である。これにより、端部に凸部を形成したシンチレータ100を作成することが可能である。
次に、シンチレータ100と光電変換基板111とを対向させて、貼り合わせを行う。光電変換基板111としては、例えば、基板119として厚さ0.7mmのガラス基板上にTFTと光電変換素子114を2次元的に配置した構成を用いることが可能である。また、光電変換基板111としては、例えば、Si製の基板119上に光電変換素子114としてCMOSセンサーを配置した構成を用いることも可能である。
貼り合わせに用いる接着層113として、例えば、アクリル系粘着剤であるリンテック製P−0280を用いることが可能である。粘着剤を貼り合わせたシンチレータ100と光電変換基板111とを対向させ、ロールラミネータ103を用いた圧着により貼り合わせを行う。圧着の条件としては、例えば、圧力0.4MPa、温度25℃、送り速度1mm/secである。これによりシンチレータ100の外周部に配置された凸部により粘着剤が押しつぶされ、シンチレータ100の凸部と光電変換基板111とにはさまれた粘着剤の厚さを5μmとすることができる。
本実施形態によれば、蛍光体保護層の端部に凸部を作るために、事前にフィルム状の有機樹脂層を作成しておくことにより、シンチレータの生産性を高め、シンチレータの生産コストを低減することが可能である。
(第5実施形態)
次に、図7A〜図7Bの模式断面図を用いて第5実施形態の放射線検出装置およびシンチレータおよびその製造方法を説明する。
第1、第3実施形態においては、シンチレータ100端部の蛍光体保護層106の凸部の厚さは20μm(蛍光体表面からの高さは30μm、中央部の厚さは10μm)、接着層の厚さは25μmで作成する構成例を説明した。上記の例は接着層の厚さ(25μm)が、シンチレータ100端部の凸部の厚さ(20μm)より厚くなる構成(接着層の厚さ>凸部の厚さとなる構成)例である。
本実施形態では、接着層113の厚さがシンチレータ端部の厚さ以下となる構成(接着層の厚さ≦凸部の厚さとなる構成)について説明する。特に、本実施形態の構成はスプラッシュの少ない蛍光体上に保護層を形成する場合に有効で、スプラッシュの高さが低い場合、蛍光体と接着層を薄くすることが可能である。
ただし、この場合ラミネータ条件の最適化により端部の接着層の厚さを0μmにしたとしても蛍光体保護層の方が厚いため凸部が出っ張るために浮きが発生してしまう。本実施形態では放射線検出基板上の表面保護層108を、画像取得に用いる光電変換素子114の有効画素領域109上のみに形成する。
図7A(a)に示す様に、シンチレータ100の端部には第1実施形態で説明したシンチレータ100の構成と同様にスプレーコートにより凸部が形成されている。蛍光体保護層106としては、粘度を15cpsに調整した塩化ビニリデン溶液を蛍光体上に直接塗布した後、100℃のホットプレートで溶剤を乾燥させたものを用いることが可能である。
本実施形態では第1実施形態と同様に、スプレーコートにより平坦部の蛍光体保護層106としてポリ塩化ビニリデン樹脂を10μmに形成する。その後、蛍光体保護層106の端部にポリ塩化ビニリデン溶液の追加塗布を行うことにより、シンチレータ100端部に高さを25μmの凸部を形成する。蛍光体表面からの厚さは、蛍光体保護層106の中央部におけるポリ塩化ビニリデン樹脂の厚さが10μmであるので、凸部の高さ25μmとの合計により35μmとなる。
ここで、スプラッシュを低減したシンチレータを準備する。スプラッシュを低減する方法としては、例えば、蛍光体蒸着のレートを遅くすることにより、柱状結晶構造の成長速度を低減させ、蒸着分子の異常成長を抑えることができ、スプラッシュ等を低減した蛍光体層を形成することが可能である。
本実施形態では、蛍光体の蒸着レートは、例えば、1μm/minの条件で真空蒸着を行うものとする。先の方法により形成された蛍光体でも、シンチレータ表面の凹凸が10μm程度残存している場合が生じ得る。シンチレータ100と光電変換基板111との間に浮きや気泡が残ることを防止するために接着層113としては厚さが10μm以上とする。接着層113として、例えば、厚さ20μmのアクリル系粘着剤であるパナック製PDS1を使用することができる。
図7A(b)は本実施形態の光電変換基板111の構成例を示す図である。図7A(b)に示す様に、ガラスからなる基板119上に、例えば、MIS型センサーを形成した光電変換基板111を用いる。表面保護層108を、厚さ5μmのポリイミド樹脂をスリットコートにより、MIS型センサーの有効画素領域109上にのみ形成する。図7A(c)は、図7A(a)のシンチレータ100と図7A(b)の光電変換基板111とを貼り合わせた状態を示す図である。
図7B(d)はMIS型センサーの有効画素上の断面(図7A(c)のA部)を例示的に示す図であり、図7B(e)、(f)は有効画素領域外の断面を例示的に示す図である。図7B(d)、(e)、(f)に示す様に、光電変換基板111とシンチレータ100とを貼り合わせる際には、シンチレータ100の端部に形成された凸部が、有効画素領域109上に形成された表面保護層108の端部より外側となるように配置する。接着層113は基板119により圧縮され、表面保護層108および有効画素領域109の端部側において、接着層113と蛍光体保護層106と密着した状態となる。このように配置することにより、蛍光体保護層106の端部に形成された凸部の厚さを粘着剤の厚さ以上の厚さにした貼り合わせが可能になる。図1(a)はシンチレータ100と光電変換基板111とを貼り合わせた状態を示す平面図である。図7B(e)は有効画素とのデータ通信用の配線材115(電気接続部)が設けられている側の断面を示し(図7A(c)のB部)、図7B(f)は配線材115(電気接続部)が設けられていない側(図1(a)を参照)の断面を示している。図7B(d)、(e)、(f)において、200はセンサー表面保護層、201は配線材接続用のVs配線、202はセンサー上電極、203はMISセンサー、204はセンサー下電極、205は有機平坦化膜である。206はソース・ドレイン電極、207はチャネル/コンタクト層、208はゲート絶縁膜、209はゲート電極である。
シンチレータ100と光電変換基板111との貼り合わせには、例えば、図3B(d)に示すようなロールラミネータ103を使用し、熱圧着の条件としては、例えば、圧力0.4MPa、温度25℃、送り速度1mm/secで貼り合わせを行う。
本実施形態では、シンチレータ100の中央部に対応する接着層の厚さは20μmであり、蛍光体保護層106の中央部の厚さは10μmである。また、また、シンチレータ100の中央部に対応する位置に配置されている光電変換素子114の有効画素領域の厚さを5μm、表面保護層108の厚さを5μmとすると、合計で40μm(=20μm+10μm+5μm+5μm)になる。
シンチレータ100の端部において、蛍光体保護層106の厚さは35μm(蛍光体表面からの高さ)である。蛍光体保護層106の厚さ35μmの厚さと接着層の厚さとの合計が40μmになるとすると、貼り合わせで蛍光体保護層106により押圧されることにより、シンチレータ100の端部に対応する接着層の厚さは5μmとなる。接着層は圧縮されて15μmつぶされたことになる。
貼り合わせにおける押圧でシンチレータ100の外周部に配置された凸部により粘着剤(接着層)が押しつぶされ、凸部と光電変換基板とにはさまれた粘着剤(接着層)の厚さを5μmとすることが可能である。光電変換基板111とシンチレータ100とを貼り合わせた後、第1実施例同様に迷光防止のため放射線検出装置の周辺を封止樹脂112で封止する。
本実施形態に記載のシンチレータ100の様に、薬液塗布によりシンチレータ100端部の厚さを厚くする場合、同時にシンチレータ端部の傾斜部の保護層も厚膜化することが可能である。シンチレータ100の傾斜部は基板119と蛍光体保護層106との界面であるため、応力が集中しやすく蛍光体保護層106の破損が起こりやすい個所である。そこで、本実施形態のように蛍光体保護層106の端部に凸部を形成すると同時に、シンチレータ端部の傾斜部の蛍光体保護層も厚膜化することにより曲げ応力に強いシンチレータを作成することが可能である。
(第6実施形態)
次に、図8A〜図8Bの模式断面図を用いて第6実施形態の放射線検出装置およびシンチレータおよびその製造方法を説明する。本実施形態では、第5実施形態よりも接着層を薄くすることが可能な構成について説明する。本実施形態では、基板119の一部をエッチングすることにより、くぼみ(凹部)を形成し、シンチレータ側に形成されている凸部と、基板119側に形成されたくぼみ(凹部)とを嵌合させる。
本実施形態で用いるシンチレータ100は、蛍光体の蒸着レートを0.5μm/minとし、第5実施形態よりもスプラッシュ等を、より低減した蛍光体を用いるものとする。シンチレータ100に形成された蛍光体保護層の厚みや材料は第5実施形態と同一のものを用いる。接着層113として、例えば、厚さ10μmのアクリル系粘着剤であるパナック製PDS1を使用することができる。
本実施形態では、第5実施形態とは異なり、有効画素領域の形成前に素ガラスの段階で基板119のエッチングを行うものとする。基板119としては、例えば、旭硝子製AN100を使用することが可能である。まず、耐フッ酸用レジスト120である三菱製紙社製のガラスエッチング用ドライフィルムレジストをラミネートにより基板119上に貼り合わせる(図8A(a))。
次に、エッチングする領域のみに紫外線露光を行い、強アルカリを用いてエッチングする領域のレジストのみの除去を行う(図8A(b))。基板119のエッチングには、例えば、JSP社製のフッ酸エッチング液であるFSWを用いることにより、深さ10μmのくぼみ118(凹部)を形成する(図8A(c))。その後、アッシングにより不要なレジストの除去を行い、くぼみ118(凹部)を有する基板119を形成する(図8A(d))。
第5実施形態同様に、ガラス基板(基板119)上にMISセンサー203の形成を行う。そして、有効画素領域109上(MISセンサーの形成されている領域)のみに表面保護層108として厚さ5μmのポリイミドを形成する。
次に、第5実施形態と同様に、シンチレータ100と光電変換基板111との貼り合わせを行う。貼り合わせには、例えば、図3B(d)に示すようなロールラミネータ103を使用し、熱圧着の条件としては、例えば、圧力0.4MPa、温度25℃、送り速度1mm/secで貼り合わせを行う。
本実施形態では、シンチレータ100の中央部に対応する接着層の厚さは10μmであり、蛍光体保護層106の中央部の厚さを第1実施形態と同様に10μmとする。また、また、シンチレータ100の中央部に対応する位置に配置されている光電変換素子114の有効画素領域の厚さを5μm、表面保護層108の厚さを5μmとすると、合計で30μm(=10μm+10μm+5μm+5μm)になる。
シンチレータ100の端部において、蛍光体保護層106の厚さは35μm(蛍光体表面からの高さ)である。また、深さ10μmのくぼみ118(凹部)とシンチレータ100の凸部との嵌合により、蛍光体保護層106の厚さは、深さ10μm分が減じられ、くぼみ118の深さの減算後の蛍光体保護層106の厚さは25μm(=35μm−10μm)となる。
減算後の蛍光体保護層106の厚さ25μmと接着層の厚さとの合計が30μmになるとすると、貼り合わせで蛍光体保護層106により押圧されることにより、シンチレータ100の端部に対応する接着層の厚さは5μmとなる。接着層は圧縮されて5μmつぶされたことになる。
貼り合わせにおける押圧でシンチレータ100の外周部に配置された凸部により粘着剤が押しつぶされ、凸部と光電変換基板111とにはさまれた粘着剤の厚さを5μmとすることができる。光電変換基板111とシンチレータ100とを貼り合わせた後、第1実施例同様に迷光防止のため放射線検出装置の周辺を封止樹脂112で封止する。
図8B(e)は、シンチレータ100と光電変換基板111とを貼り合わせた状態を示す図である。ガラス基板(基板119)上に形成されるMISセンサー203の有効画素領域109は、くぼみ118(凹部)よりも内側に形成される。
シンチレータ100の外周部に配置された凸部とくぼみ118(凹部)とが嵌合して接着層113は基板119により圧縮され、密着した状態となる。図8B(e)のように貼り合わせることにより、第5実施形態よりも接着層を薄くした貼り合わせが可能になる。
図8B(f)、(g)は有効画素領域外の断面を例示的に示す図である。図8B(f)は、図7B(e)と同様に、有効画素とのデータ通信用の配線材115が設けられている側の断面を示し(図8B(e)のC部)、図8B(g)は図7B(f)と同様に配線材115が設けられていない側(図1(a)を参照)の断面を示している。図8B(f)において、配線材接続用のVs線201とITO((indium tin oxide)からなるセンサー上電極202が、くぼみ118(凹部)上に形成されている。
本実施形態においては、シンチレータの端部に形成された凸部の高さを厚くした場合でも、基板のエッチング量を増やすことにより対応が可能である。また、蛍光体の平坦化によりさらに薄い接着層を使用することも可能である。
本実施形態では光電変換基板111上に表面保護層108として厚さ5μmのポリイミドを形成したが、不要の場合は形成しなくても構わない。
本実施形態の手法により放射線検出装置を作成することにより、シンチレータ端部の凸部と光電変換基板のくぼみ(凹部)とを嵌合させることができ、耐久性を向上させることが可能である。また、この構造は、シンチレータ端部の凸部が接着層に対して厚い場合でも、接着層を薄くすることが可能となり、高い鮮鋭度を有する放射線検出装置を作成することが可能になる。
(第7実施形態)
次に、図9を用いて本発明に係る放射線検出装置を用いた放射線検出システムについて説明する。放射線発生部610で発生した放射線611は、患者或いは被験者620を透過し、放射線検出装置630に入射する。この入射した放射線には患者の体内部の情報が含まれている。放射線の入射に対応して放射線検出装置630のシンチレータは発光し、これを光電変換して電気的情報を得る。この情報は信号処理され、デジタルデータに変換されイメージプロセッサ640(により画像処理され制御室のディスプレイ650で観察できる。
また、この情報は電話回線等の伝送処理部660により遠隔地へ転送でき、別の場所のドクタールーム等ディスプレイ651に表示又は光ディスク等の保存部に保存することができ、遠隔地の医師が診断することも可能である。またフィルムプロセッサ670によりフィルム671に記録することもできる。
本発明は、医療診断機器、非破壊検査機器等における、放射線検出装置やシンチレータに用いることが可能である。

Claims (20)

  1. 複数の光電変換素子が配置された光電変換基板と、
    放射線を前記光電変換素子が検出可能な光に変換する蛍光体層と前記蛍光体層の少なくとも一部を覆う蛍光体保護層とを有するシンチレータと、
    前記光電変換基板および前記シンチレータを貼り合わせる接着層と、を有する放射線検出装置であって、
    前記シンチレータの端部における前記蛍光体保護層の厚さは、前記シンチレータの中央部における前記蛍光体保護層の厚さよりも厚く形成されており、
    前記蛍光体保護層との貼り合わせにより前記端部における前記接着層の厚さは、前記中央部における前記接着層の厚さよりも薄く形成される
    ことを特徴とする放射線検出装置。
  2. 前記蛍光体保護層の透湿率は前記接着層の透湿率よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の放射線検出装置。
  3. 前記光電変換基板および前記シンチレータの少なくとも一方の側面を覆う封止部材を更に備え、
    前記封止部材の透湿率は前記接着層の透湿率よりも低いことを特徴とする請求項1または2に記載の放射線検出装置。
  4. 前記蛍光体保護層は、スピンコート、ディップコート、スプレーコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート、CVD、真空蒸着のうちいずれか1つの方法により形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線検出装置。
  5. 前記蛍光体保護層は、
    前記シンチレータの端部に対応した部分の厚さを、前記シンチレータの中央部に対応した部分の厚さよりも厚くした型を用いて形成された有機樹脂フィルムと、前記シンチレータとを加熱加圧処理により圧着することにより形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線検出装置。
  6. 前記蛍光体保護層は、ポリ四フッ化エチレン、ポリ三フッ化−塩化エチレン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリフッ化ビニリデン、アラミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、 ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ナイロン、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレンブタジエンゴム系樹脂、ポリパラキシリレンのいずれか1つを含む材料であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の放射線検出装置。
  7. 前記接着層は加熱により接着性が発現し冷却により硬化するホットメルト樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線検出装置。
  8. 前記ホットメルト樹脂は、オレフィン系、エポキシ系、アクリル系、ポリイミド系の熱可塑性樹脂のいずれか1つを含む材料であることを特徴とする請求項7に記載の放射線検出装置。
  9. 加熱加圧処理による圧着により、前記蛍光体保護層と前記接着層とが密着して前記シンチレータおよび前記光電変換基板が貼り合わされることを特徴とする請求項7または8に記載の放射線検出装置。
  10. 前記接着層はエポキシ樹脂からなる接着剤またはアクリル系粘着剤を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線検出装置。
  11. 加圧処理による圧着により、前記蛍光体保護層と前記接着層とが密着して前記シンチレータおよび前記光電変換基板が貼り合わされることを特徴とする請求項10に記載の放射線検出装置。
  12. 前記蛍光体層は、前記シンチレータの支持基板上に形成されており、
    前記支持基板は、Al、Mg、Be、Fe、アモルファスカーボン、結晶カーボン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ナイロン、アラミド、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック、ガラス、シリコーン、ゲルマニウムのうち少なくとも1つの材料を用いて構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線検出装置。
  13. 前記蛍光体層は柱状結晶構造を有することを特徴とする請求項12に記載の放射線検出装置。
  14. 前記光電変換基板を被覆する表面保護層が前記光電変換基板に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線検出装置。
  15. 前記シンチレータは、
    前記支持基板と前記蛍光体層との間に配置され、前記蛍光体層で変換された光を反射する反射層を更に有することを特徴とする請求項12に記載の放射線検出装置。
  16. 前記反射層は、Al、Ag、Au、Pt、Cuのうち少なくともいずれか1つの金属を含むことを特徴とする請求項15に記載の放射線検出装置。
  17. 前記反射層は、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化イットリウム、ガドリニウムオキシ硫化物(GOS)を含む樹脂を前記支持基板に塗布することにより形成されることを特徴とする請求項15に記載の放射線検出装置。
  18. 支持基板と、
    前記支持基板に配され、放射線を光に変換する蛍光体層と、
    前記蛍光体層の少なくとも一部を覆う蛍光体保護層と、
    を有するシンチレータであって、
    前記シンチレータの端部における前記蛍光体保護層の厚さは、前記シンチレータの中央部における前記蛍光体保護層の厚さよりも厚く形成されている
    ことを特徴とするシンチレータ。
  19. 複数の光電変換素子が配置された光電変換基板と、放射線を前記光電変換素子が検出可能な光に変換する蛍光体層と前記蛍光体層の少なくとも一部を覆う蛍光体保護層とを有するシンチレータと、前記光電変換基板および前記シンチレータを貼り合わせる接着層と、を有する放射線検出装置の製造方法であって、
    前記シンチレータの端部における前記蛍光体保護層の厚さを、前記シンチレータの中央部における前記蛍光体保護層の厚さよりも厚く形成する工程と、
    前記蛍光体保護層との貼り合わせにより前記端部における前記接着層の厚さを、前記中央部における前記接着層の厚さよりも薄く形成する工程と、
    を有することを特徴とする放射線検出装置の製造方法。
  20. 請求項1乃至17のいずれか1項に記載の放射線検出装置と、
    前記放射線検出装置からの信号を処理するイメージプロセッサと、
    前記イメージプロセッサからの信号を表示するためのディスプレイと、
    を備えることを特徴とする放射線検出システム。
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