JP2015152523A - ガス検出器 - Google Patents

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幸一 井川
加藤 友文
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水野 卓也
Takuya Mizuno
卓也 水野
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Abstract

【課題】可燃性ガスの濃度測定や漏洩検知等に用いられるガス検出器であって、耐アルカリ性に優れるとともに耐結露性に優れるガス検出素子を備えるガス検出器を提供する。【解決手段】ガス検出器1に備えられるガス検出素子60は、結晶質を含有すると共にアルミナ(Al2O3)を主体とする酸化膜で形成される保護層64を備える。この保護層64は、耐結露性に優れており、水滴が付着しても、自身の構造が緻密な構造から多孔質構造に変化することがない。このように、ガス検出器1では、水滴による保護層64の特性変化を抑制できるため、ガス検出素子60の最表面層に水滴が付着したとしても、不純物が保護層64(最表面層)に侵入することを抑制でき、ガス検出素子60の熱容量が変化するのを抑制できる。したがって、ガス検出器1によれば、耐アルカリ性に優れるとともに耐結露性に優れるガス検出素子60を備えるガス検出器を実現できる。【選択図】図5

Description

本発明は、可燃性ガスの濃度測定や漏洩検知等に用いられるガス検出器に関する。
可燃性ガスの濃度測定や漏洩検知を行うガス検出器では、省スペース化や低消費電力化の観点から、より一層の小型化が望まれている。近年では、MEMS(Micro Electro Mechanical System)の技術(マイクロマシニング技術とも言われる)を用いたより小型のガス検出素子も開発されている。MEMSの技術を用いたガス検出素子は、半導体基板(例えば、シリコン基板)上に複数の薄膜が積層状に構成されてなるものである。
このようなガス検出素子としては、発熱抵抗体を備え、その発熱抵抗体に通電されて発熱抵抗体が発熱した際に可燃性ガスへの熱伝導が生じることを利用した熱伝導式ガス検出素子がある。具体的に、ガス検出素子の温度を一定の温度に制御する場合、熱伝導によって発熱抵抗体の温度が変化するとともに抵抗値が変化するため、その変化量に基づき、被検出ガスを検出するものである。また、他には、発熱抵抗体、及びその発熱抵抗体の熱に基づき可燃性ガスを燃焼させる触媒を有し、発熱抵抗体に通電された際に触媒によって可燃性ガスが燃焼することを利用する接触燃焼式ガス検出素子がある。具体的に、可燃性ガスの燃焼熱に応じて発熱抵抗体の温度が変化するとともに抵抗値が変化するため、その変化量に基づき可燃性ガスを検出するものである。
何れも、可燃性ガスの種類或いは濃度により発熱抵抗体の抵抗値が変化するため、そのようなガス検出素子を備えたガス検出器においては、発熱抵抗体の抵抗値に基づき可燃性ガスを検出することができる。
このようなガス検出素子は、半導体基板上に絶縁層を設け、この絶縁層内に発熱抵抗体を配置させる構成をとるが、絶縁層の最表面(具体的に、可燃性ガスが含まれるガス雰囲気に接する面)は、耐腐食性や安定性に優れていることが好ましい。
そのため、MEMSの技術を用いて作製されるガス検出素子では、絶縁層の最表面に、ガス不透過性の酸化膜を備える構成が提案されている(特許文献1参照)。このガス検出素子によれば、耐被毒性(耐アルカリ性)が向上し、不純物の侵入による熱容量の変化を抑制できる。
また、MEMSの技術を用いて作製されるガス検出素子(半導体センサ)においては、Crからなる保護層を設けることで、保護層への異方性エッチング液の浸透を効果的に防止して、金属酸化物膜を十分に保護することが提案されている(特許文献2)。
特許第5102172号公報 特開2001−023950号公報
しかし、上記従来のガス検出素子は、耐結露性(耐湿性)については検討されておらず、結露が発生するような高湿度環境下においては、水分の影響によってガス検出精度が低下する虞がある。
例えば、上記従来のガス検出素子は、結露によって生じた水滴が酸化膜に付着した際に、酸化膜が水滴により侵食されて、酸化膜の構造が緻密な構造から多孔質構造に変化する可能性がある。このような酸化膜の特性変化が生じると、ガス検出素子の出力に誤差が生じる可能性がある。
本発明は、可燃性ガスの濃度測定や漏洩検知等に用いられるガス検出器であって、耐アルカリ性に優れるとともに耐結露性に優れるガス検出素子を備えるガス検出器を提供することを目的とする。
(1)本発明の1つの局面におけるガス検出器は、熱伝導式のガス検出素子と制御手段とを備えている。このうち、ガス検出素子は、少なくとも発熱抵抗体と絶縁層とが半導体基板に積層され、絶縁層が発熱抵抗体を覆うように形成される。制御手段は、発熱抵抗体の通電を制御するとともに、その発熱抵抗体に通電した際のその発熱抵抗体の抵抗値に基づき被検出ガスを検出する。
また、ガス検出素子は、絶縁層の表面に、その絶縁層を覆うように積層されるガス不透過性の酸化膜を有する。そして、その酸化膜は、結晶質を含有するとともに、被検出ガスを含むガス雰囲気に接する最表面層を構成している。
尚、本発明における「検出」とは、被検出ガスの有無を判定することに限らず、被検出ガスの濃度を検量することを含む趣旨である。また、酸化膜がガス不透過性であるとは、酸化膜がガスを通さないほどより緻密に構成されていることを趣旨とする。さらに、「結晶質を含有する」とは、酸化膜のうち少なくとも一部が結晶化した状態のみならず、酸化膜の全体が結晶化している状態を含んだ趣旨である。
このガス検出器では、ガス検出素子の最表面層が結晶質を含有する酸化膜で形成されており、この酸化膜は、水滴がガス検出素子の表面に付着しても、水滴により侵食されることがない。つまり、この酸化膜は、耐結露性に優れており、水滴が付着しても、自身の構造が緻密な構造から多孔質構造に変化することがない。
このように、このガス検出器では、水滴による酸化膜の特性変化を抑制できるため、ガス検出素子の最表面層に水滴が付着したとしても、不純物が酸化膜(最表面層)に侵入することを抑制でき、ガス検出素子の熱容量が変化するのを抑制できる。
また、この酸化膜は、酸化材料で形成されるため、耐アルカリ性に優れることは言うまでもない。このため、例えば、アルカリ性の成分がそのガス検出素子の表面に付着したとしても、アルカリ性の成分による侵食を防止できる。
さらに、この酸化膜は、ガス不透過性を有している(緻密に構成されている)ため、被検出ガスが含まれる環境中の不純物(例えば有機シリコン等)が酸化膜中に侵入することを抑制することができる。例えば、酸化膜の構造が、ガス透過性を有するポーラス(多孔質状)であれば、孔に不純物が入り込むなどして不純物が付着しやすいことも考えられるが、本発明ではそのようなことがない。このため、ガス検出素子において不純物が最表面層中に侵入してしまって熱容量が変化するのを抑制できる。
したがって、本発明によれば、耐アルカリ性に優れるとともに耐結露性に優れるガス検出素子を備えるガス検出器を実現できる。つまり、本発明のガス検出器は、ガス検出素子の出力が安定し、かつ正確なものとなることで、ガス検出精度を高いレベルにすることができる。
(2)本発明の他の局面のガス検出器においては、酸化膜はアルミナを主体に形成される構成を採ることができる。
アルミナ(Al23)を主体に形成される酸化膜を用いることで、耐アルカリ性に優れるとともに耐結露性に優れるガス検出素子を備えるガス検出器を実現できる。
なお、ここでの「主体に形成される」とは、酸化膜におけるアルミナの含有量が50vol%以上であることを意味する。
(3)本発明のさらに他の局面のガス検出器においては、絶縁層の表面は窒化珪素からなるという構成を採ることができる。
窒化珪素は耐腐食性や安定性の点で優れているため、耐アルカリ性や耐結露性に優れる酸化膜との設置効果と相俟って、ガス検出素子の耐久性を高めることができる。
(4)本発明のさらに他の局面のガス検出器においては、酸化膜は、その厚さ寸法が半導体基板の表裏面に垂直な方向に対する発熱抵抗体の厚さ寸法の50分の1以上となるように形成されている、という構成を採ることができる。
酸化膜の厚さ寸法をこのように規定することで、酸化膜に孔(スポット、ポア)が生じることを抑制できる。
(5)本発明のさらに他の局面のガス検出器においては、酸化膜は、その厚さ寸法が5〜200nmとなるように形成されている、という構成を採ることができる。
このように酸化膜の厚さ寸法における下限値を規定することにより、酸化膜に孔(スポット、ポア)が生じることを抑制できる。
また、酸化膜の厚さ寸法における上限値を規定することにより、酸化膜の厚さ寸法が過剰に大きくなるのを抑制でき、酸化膜の熱による膨張、収縮等に対する柔軟性が小さくなることを抑制できる。
(6)本発明のさらに他の局面のガス検出器においては、酸化膜におけるガス雰囲気に接する表面から絶縁層の表面までの距離が、その酸化膜の厚さ寸法である、という構成を採ることができる。
この趣旨は、酸化膜の厚さ寸法は、絶縁層の表面に沿って見たときに何れの箇所においても所定の数値範囲を満たすというものである。例えば、絶縁層の表面は、内部の発熱抵抗体の存在によって少なからず凹凸があるが、酸化膜もその凹凸に沿って所定の厚さ寸法を持つように形成されることを趣旨とする。
これにより、絶縁層の凹凸における角から酸化膜の表面までの距離も、確実に確保されるため、上記凹凸によって酸化膜を設けた効果にばらつきが出るのを防ぐことができる。
(7)本発明のさらに他の局面のガス検出器においては、酸化膜はスパッタ法にて形成される、という構成を採ることができる。
スパッタ法とは、所望の原料にイオンを衝突させることでその原料を粒子としてはじき飛ばし、そのはじき飛ばした粒子を対象物に付着させることで、その対象物上に所望の薄膜を形成する方法である。スパッタ法によれば、より緻密な膜を形成できる。
(8)本発明のさらに他の局面のガス検出器においては、被検出ガスは水素ガスである、という構成を採ることができる。
つまり、本発明のガス検出器は、例えば、水素ガスを検出するものとして構成されると実用的である。
(9)本発明のさらに他の局面のガス検出器においては、少なくともガス検出素子が、水素と酸素とから電力を発生する燃料電池システムにおける所定の箇所に配設され、その燃料電池システムにおける水素ガスを検出する、という構成を採ることができる。
つまり、本発明のガス検出器は、例えば、燃料電池システムにおいて水素ガスを検出するものとして構成されると実用的である。
本発明によれば、耐アルカリ性に優れるとともに耐結露性に優れるガス検出素子を備えるガス検出器を実現できる。つまり、本発明のガス検出器は、ガス検出素子の出力が安定し、かつ正確なものとなることで、ガス検出精度を高いレベルにすることができる。
本実施形態のガス検出器1の縦断面図である。 回路基板41に設けられる制御回路90を表す図面である。 ガス検出素子60の平面図である。 図3のガス検出素子60におけるA−A矢視断面図である。 ガス検出素子60の製造工程を表す図である。 保護層64の厚みの定義を説明する図である。 保護層64の厚みの他の定義を説明する図である。 耐結露性確認試験におけるサイクル(a)の温度および湿度の概要を示す説明図である。 耐結露性確認試験におけるサイクル(b)の温度および湿度の概要を示す説明図である。 耐結露性確認試験における実施例の試験結果である。 耐結露性確認試験における比較例の試験結果である。 耐結露性確認試験における試験前および試験後のガス検出素子の外観を撮影した画像である。 第2ガス検出素子160の平面図である。 第2ホイートストーンブリッジ回路921の構成を表す説明図である。
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
なお、以下に示す実施形態では、ガス検出器の一種である水素を検出するためのガス検出器を例に挙げる。具体的には、水素と酸素とから電力を発生する燃料電池システムにおける水素ガスの漏洩を検知する目的で使用されるガス検出器を例に挙げて説明する。
[1.第1実施形態]
[1−1.全体構成]
図1は、本発明が適用されたガス検出器1の縦断面図である。このガス検出器1は、例えば水素と酸素とから電力を発生する燃料電池システムにおける水素ガスの漏洩を検知する目的で使用される。
ガス検出器1は、素子ケース20と、この素子ケース20を支持する収容ケース40と、を備えて構成される。
また、ガス検出器1は、熱伝導式ガス検出素子であるガス検出素子60、そのガス検出素子60と電気的に接続される回路基板41を有している。回路基板41には、マイクロコンピュータ(以下、マイコンともいう)94が搭載されている。
ガス検出素子60は、素子ケース20に収容される。また、回路基板41は、素子ケース20とともに収容ケース40に収容される。
まず、収容ケース40の構成について説明する。
収容ケース40は、ケース本体42と、ケース本体42の上端部に設けられた開口を覆う蓋であるケース蓋44と、を備えて構成されている。
ケース本体42は、上面及び下面に開口を有するとともに、所定の高さを有する容器であり、回路基板41の周縁部を保持する回路基板保持部45と、素子ケース20の鍔部38を保持する保持部46と、を備えている。
また、ケース本体42は、ケース本体42の下部中央に形成された流路形成部43と、ケース本体42の側部に形成され、外部給電するためのコネクタ55と、を備えている。
流路形成部43の内部には、被検出ガスを導入及び排出するための素子ケース20の導入部35が収納されている。このように、素子ケース20は、収容ケース40内部に配置されるような形態で保持部46により保持されている。尚、素子ケース20の鍔部38とケース本体42との間には、これらの隙間をシール(密閉)するシール部材47が配置されている。
コネクタ55は、回路基板41(およびマイコン94)に電気を供給するためのものであり、ケース本体42の外側面に組み付けられている。このコネクタ55の内部には、ケース本体42の側壁から突出する複数のコネクタピン56,57が設けられている。コネクタピン56,57はそれぞれ、ケース本体42の側壁に埋め込まれた配線(図示せず)を介して回路基板41(およびマイコン94)に電気的に接続されている。
次に、素子ケース20について説明する。
素子ケース20は、ガス検出素子60が設置される接続端子取出台21と、接続端子取出台21の周縁部を挟持するとともに、被検出ガスを導入するガス導入口13に向かって突設された円筒状の壁面を有する検出空間形成部材22と、を備えている。尚、素子ケース20の接続端子取出台21の周縁部には、検出空間形成部材22との間の隙間をシール(密閉)するシール部材(図示省略)が配置されている。接続端子取出台21及び検出空間形成部材22により囲まれた空間は、被検出ガスを導入するための検出空間39となっている。
接続端子取出台21には、接続端子24〜28を個別に挿入するための挿入孔がそれぞれ設けられており、各挿入孔の周縁部は絶縁性部材により覆われている。
接続端子24〜28は、ガス検出素子60と回路基板41に備えられた回路とを電気的に接続するための部材であり、導電性部材により棒状に形成されている。
検出空間形成部材22は、外筒36,接続端子取出台21の周縁部を挟持する取出台支持部37、収容ケース40の保持部46により支持される鍔部38を備えている。また、検出空間形成部材22の下端部には、被検出ガスを検出空間39に導入する開口である導入口34が設けられている。
この導入口34の近傍には、被検出ガスをガス検出素子60に対して導入及び排出するための流路を形成する導入部35が設けられている。導入部35には、導入口34から近い順に、撥水フィルタ29,スペーサ30、2枚の金網31,32がそれぞれ装填されている。そして、これらの部材は、検出空間形成部材22とフィルタ固定部材33とにより挟持固定されている。
撥水フィルタ29は、導入口34に最も近い位置に取り付けられるフィルタであり、被検出ガス中に含まれている水滴を除去する撥水性を有する薄膜である。これより、水滴などが飛来する多湿環境下においても、ガス検出素子60が被水するのを防止することができる。撥水フィルタ29は、物理的吸着により水滴を除去するものであればよく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を利用したフィルタを適用することができる。
スペーサ30は、フィルタ固定部材33の内周壁に備えられ、被検出ガスが導入される開口を有する形状(平面視ではリング状)の部材であり、所定の厚みを有することにより、撥水フィルタ29と2枚の金網31,32との位置を調整している。
2枚の金網31,32は、所定の厚みと所定の開口部を有しており、ガス検出素子60に設けられた発熱抵抗体の温度が被検出ガスに含まれる水素ガスの発火温度よりも上昇して発火した場合であっても、火炎が外部に出るのを防止するフレームアレスタとしての機能を果たす。
フィルタ固定部材33は、検出空間形成部材22の内壁面と当接する筒状の壁面を有すると共に、その壁面の内面から内向きに突出する凸部を備えている。凸部は、撥水フィルタ29,スペーサ30、2枚の金網31,32を検出空間形成部材22との間で挟持固定するために備えられている。
次に、回路基板41について説明する。
回路基板41は、所定の厚みを有する板状の基板であり、被検出ガス中に含まれる可燃性ガスを検出するための制御回路90(後述する)と、発熱体50,51の温度を制御するための温度制御回路(図示せず)と、をそれぞれ備えている。
回路基板41における制御回路90は、接続端子24〜28により、ガス検出素子60と電気的に接続されている。また、回路基板41における温度制御回路は、リード線52,53により、発熱体50,51と電気的に接続されている。
回路基板41に搭載されたマイコン94は、同じく回路基板41に設けられた制御回路90の出力に基づき、被検出ガス中に含まれる可燃性ガスの濃度を演算する処理(センサ出力演算処理)を実行する。また、温度制御回路の出力に基づき、発熱体50,51の発熱量(温度)を制御する処理(温度制御処理)を実行する。マイコン94は、少なくとも、これらのセンサ出力演算処理や発熱体50,51の温度制御処理を実行するためのプログラムを格納する記憶装置と、この記憶装置に記憶されたプログラムを実行するCPUと、を備えて構成されている。
次に、発熱体50,51について説明する。
発熱体50,51は、素子ケース20を加熱し、素子ケース20の内側面の温度或いは検出空間39内を所定温度より高い温度(少なくとも露点より高い温度)に保つためのものである。発熱体50,51は、例えば、電子部品等で用いられる抵抗体や、フィルムヒータなどを用いて構成される。発熱体50,51による加熱により、被検出ガスが、素子ケース20の内側面或いは検出空間39内で冷却されてしまうこと、ひいてはその素子ケース20の内側面或いは検出空間39内が結露するような事態や被検出ガスの温度が不安定になるようなことを防止することができる。
[1−2.制御回路]
次に、制御回路90の概略について、図2を参照して説明する。
図2に示すように、制御回路90は、ガス検出回路91、及び温度測定回路93を備えている。
ガス検出回路91は、ガス検出素子60に備えられた発熱抵抗体71と、回路基板41に備えられた固定抵抗95,96,97とによって構成されるホイートストーンブリッジ911、及び、回路基板41に備えられ、このホイートストーンブリッジ911から得られる電位差を増幅するオペアンプ912を備えている。
発熱抵抗体71として、自身の温度の上昇に伴い抵抗値が上昇する抵抗体を用いた場合、このオペアンプ912は、発熱抵抗体71の温度が所定の温度に保たれるように、発熱抵抗体71の温度が上昇した場合には出力する電圧を低くし、発熱抵抗体71の温度が下降した場合には出力する電圧を高くするように作動する。
そして、このオペアンプ912の出力は、ホイートストーンブリッジ911に接続されているので、発熱抵抗体71の温度が所定の温度より上昇すると、発熱抵抗体71の温度を下げるためにオペアンプ912から出力される電圧は低くなり、ホイートストーンブリッジ911に印加される電圧が低下する。このときの、ホイートストーンブリッジ911の端部を構成する電極85の電圧はガス検出回路91の出力としてマイコン94により検出され、マイコン94により検出された出力値は、被検出ガスに含まれ可燃性ガスを検出するための演算処理に供される。
温度測定回路93は、ガス検出素子60に備えられた測温抵抗体80(後述する)と、回路基板41に備えられた固定抵抗101,102,103によって構成されるホイートストーンブリッジ931と、回路基板41に備えられ、このホイートストーンブリッジ931から得られる電位差を増幅するオペアンプ933とを備えている。このオペアンプ933の出力はマイコン94により検出され、マイコン94により検出された出力値は、被検出ガスの温度を測定するのに用いられ、さらに、被検出ガスに含まれ可燃性ガスを検出するための演算処理に供される。
以上のような構成を有する制御回路90の出力値に基づき、マイコン94により実行される可燃性ガスの濃度を演算する処理は、次のようなものである。まず、マイコン94が備えるCPU(図示せず)は、同じくマイコン94が備える記憶装置(図示せず)に記憶されたプログラムに基づき、ガス検出回路91の出力値から、可燃性ガス濃度にほぼ比例した第1の出力値を出力する。この第1の出力値は検出空間39の雰囲気温度変化による出力変化を含んでいるので、続いて、温度測定回路93からの出力に基づき第1の出力値を補正した第2の出力値を出力する。さらに、マイコン94は、そのマイコン94の記憶装置(図示せず)に記憶された第2の出力値と可燃性ガスの濃度との関係に基づき、被検出ガス中に含まれる可燃性ガスの濃度を出力する。このように、第1の出力値を温度測定回路93の出力に基づき補正しているので、精度よく可燃性ガスを検出できる。尚、可燃性ガスの濃度を演算する処理は、上記のものに限られず、公知の手段を適宜用いれば良い。
[1−3.ガス検出素子]
次に、ガス検出素子60の構成について説明する。図3に、ガス検出素子60の平面図を示す。また、図4に、ガス検出素子60の断面図(図3におけるA−A矢視断面図)を示す。尚、図3の平面図において、紙面の左右方向をその平面図の左右方向とする。また、図4の断面図において、紙面の上下方向をその断面図の上下方向とする。
ガス検出素子60は、マイクロマシニング技術を用いて製造されるもので、図4に示すが、シリコン製半導体基板61を備えるとともに、シリコン製半導体基板61の上下両側に絶縁層(上側絶縁層67、下側絶縁層66)を備えている。上側絶縁層67は、シリコン製半導体基板61の表面に形成されており、一方、下側絶縁層66は、シリコン製半導体基板61の裏面に形成されている。また、上側絶縁層67の表面には、保護層64が形成されている。尚、上側絶縁層67は、シリコン製半導体基板61の表面に形成される絶縁層68と、絶縁層68の表面に形成される絶縁保護層69とから構成される。また、ガス検出素子60は、発熱抵抗体71を備えている。
シリコン製半導体基板61は、発熱抵抗体71の下方に位置する部位に、シリコン製半導体基板61の一部が開口状に除去された空洞62を備えており、当該空洞62の上部は、上側絶縁層67の一部が露出している。そして、発熱抵抗体71は、上側絶縁層67において空洞62に対応する領域に内包されている。
このような構成にすることにより、発熱抵抗体71は、空洞62により周囲から断熱されるため、短時間にて昇温又は降温する。このため、ガス検出素子60の熱容量を小さくすることができる。
また、発熱抵抗体71が形成された平面と同じ平面に形成された配線膜711,712、及び、配線713,714(配線713,714については図3参照)がそれぞれ上側絶縁層67に内包されている。この上側絶縁層67は、絶縁性を有する材料により形成され、例えば、酸化珪素(SiO2 )、窒化珪素(Si34)が用いられる。上側絶縁層67は、複数の層を単一の材料により形成しても良いし、複数の層を異なる材料を用いて形成するようにしてもよい。本実施形態では、少なくとも絶縁保護層69は、窒化珪素(Si34)からなる。
保護層64は、上側絶縁層67の上面に所定の厚みを有する層状に形成され、例えば、結晶質を含有する酸化膜(本実施形態では、結晶質を含有すると共にアルミナ(Al23)を主体とする酸化膜)で形成される。この保護層64は、発熱抵抗体71、配線膜711,712、配線713,714の汚染や損傷を防止すべくそれらを覆うように設けられている。
前述の発熱抵抗体71は、渦巻き状に形成され(図3参照)、被検出ガスの温度(詳細には、可燃性ガスへの熱伝導)により、自身の温度が変化するとともに自身の抵抗値が変化する抵抗体である。発熱抵抗体71は、温度抵抗係数が大きい導電性部材によって形成され、例えば、白金(Pt)により形成される。可燃性ガスとしての水素ガスを検出する場合、水素ガスへの熱伝導によって発熱抵抗体71から奪われる熱量の大きさは、水素ガス濃度に応じた大きさとなる。このことから、発熱抵抗体71における電気抵抗値の変化に基づいて、水素ガス濃度を検出することが可能となる。
尚、発熱抵抗体71の抵抗値変化は被検出ガスの温度による影響を受けるため、後述する測温抵抗体80(図3)の電気抵抗値に基づき検出される温度を用いて、発熱抵抗体71の電気抵抗値変化に基づき検出した被検出ガスの濃度を補正することにより、被検出ガス濃度の検出精度を向上させることができる。
次に、発熱抵抗体71の左端は、上側絶縁層67(図4)に内包され、発熱抵抗体71と一体に形成された配線713(図3)及び配線膜711(図4)を介し、電極85(図3)と電気的に接続されている。一方、発熱抵抗体71の右端は、上側絶縁層67に内包され、発熱抵抗体71と一体に形成された配線714(図3)及び配線膜712(図4)を介し、グランド電極86(図3)と電気的に接続されている。この電極85及びグランド電極86は、発熱抵抗体71に接続される配線の引き出し部位であり、コンタクトホール84(図4)を介して露出している。この電極85及びグランド電極86の材質は、例えば、アルミニウム(Al)又は金(Au)が用いられる。
測温抵抗体80(図3)は、検出空間39(図1参照)内に存在する被検出ガスの温度を検出するためのものであり、上側絶縁層67(図4)と保護層64(図4)との間で、かつ、シリコン製半導体基板61と平行な平面上に形成されている。測温抵抗体80は、電気抵抗値が温度に比例して変化する金属が用いられ、例えば、白金(Pt)が用いられる。
また、測温抵抗体80は、電極88(図3)及びグランド電極89(図3)と電気的に接続されている。この電極88及びグランド電極89は、コンタクトホール(図示せず)を介して露出している。この電極88及びグランド電極89の材質は、例えば、アルミニウム(Al)又は金(Au)が用いられる。
[1−4.ガス検出素子の製造工程]
次に、ガス検出素子60の製造工程について図5を用いて説明する。
[1−4−1.絶縁層68、下側絶縁層66の形成工程(第1工程)]
シリコン製半導体基板61を準備し、このシリコン製半導体基板61を洗浄した上で当該シリコン製半導体基板61に熱酸化処理を施す。これにより、シリコン製半導体基板61の表裏面が上下両側の酸化珪素膜(SiO2膜)としてそれぞれ100[nm]の厚さにて形成される。ついで、シリコン製半導体基板61の上下両側の各酸化珪素膜に減圧CVD法により上下両側の各窒化珪素膜(Si34膜)をそれぞれ積層して200[nm]の厚さにて形成する。
これにより、シリコン製半導体基板61の上側の酸化珪素膜及び窒化珪素膜が絶縁層68として形成され、一方、シリコン製半導体基板61の下側の酸化珪素膜及び窒化珪素膜が下側絶縁層66として形成される。
[1−4−2.発熱抵抗体71及び配線膜711,712の形成工程(第2工程)]
上述のように絶縁層68及び下側絶縁層66を形成した後、温度300[℃]の雰囲気内において、タンタル膜(Ta膜)を20[nm]の厚さにて絶縁層68の表面にスパッタ法により形成し、ついで、白金膜(Pt膜)を400[nm]の厚さにてそのタンタル膜にスパッタ法により積層状に形成する。尚、タンタル膜は、上記白金膜の絶縁層68との密着強度を高める役割をもつ。
然る後、フォトリソグラフィ処理にて、タンタル膜、及び白金膜のうち発熱抵抗体71及び配線膜711,712に対する対応部のパターンを描写した後、エッチング処理を行い、発熱抵抗体71及び配線膜711,712に対する対応部以外の部位を除去する。これにより、発熱抵抗体71及び配線膜711,712が、絶縁層68の表面上に形成される。尚、配線膜711,712及び発熱抵抗体71の抵抗温度係数は、約2000[ppm/℃]である。尚、この工程において、測温抵抗体80についても、発熱抵抗体71と同時に、絶縁層68の表面上に形成する。
[1−4−3.絶縁保護層69の形成工程(第3工程)]
上述のように発熱抵抗体71及び配線膜711,712を形成した後、酸化珪素層(SiO2層)を、プラズマCVD法により、各発熱抵抗体71及び配線膜711,712を覆うようにして絶縁層68の表面上に100[nm]の厚さにて形成する。さらに、当該酸化珪素層上に、窒化珪素層(Si34層)を、減圧CVD法により、200[nm]の厚さにて積層状に形成する。
ついで、当該窒化珪素層及び酸化珪素層の積層のうち配線膜711,712に対応する各部位を、フォトリソグラフィ処理のもとエッチングにより除去する。これにより、コンタクトホール84の一部を有する絶縁保護層69が、発熱抵抗体71を覆うようにして絶縁層68の表面上に形成される。また、同時に、測温抵抗体80用のコンタクトホール(図示せず)を形成する。
[1−4−4.保護層64の形成工程(第4工程)]
上述のように絶縁保護層69を形成した後、600℃まで加熱し、アルミナ(Al23)を主体に形成される酸化膜を、75[nm]の厚さにて加熱スパッタ法により積層状に形成する。この酸化膜が、保護層64となる。この保護層64は、600℃に加熱した状態でスパッタリングを行う加熱スパッタ法で形成されるため、結晶質を含有する状態で形成される。
ついで、結晶質を含有すると共にアルミナ(Al23)を主体に形成される酸化膜のうち配線膜711,712に対応する各部位を、フォトリソグラフィ処理のもとエッチングにより除去する。これにより、コンタクトホール84が形成される。
[1−4−5.電極85,86の形成工程(第5工程)]
上述のように保護層64を形成した後、クロム膜(Cr膜)を20[nm]の厚さにて保護層64にスパッタ法により層状に形成し、ついで、このクロム膜上に、金膜(Au膜)を600[nm]の厚さにてスパッタ法により積層状に形成する。
然る後、このように積層した金膜及びクロム膜からなる電極層のうち各コンタクトホール84に対する対応部以外の部位を、フォトリソグラフィ処理のもとエッチングにより除去する。これにより、電極85,86が、各コンタクトホール84に対応して形成される。また、この工程の際に、電極88及びグランド電極89についても、図示しないコンタクトホールに対応して形成される。
[1−4−6.空洞62の形成工程(第6工程)]
上述のように電極85,86を形成した後、下側絶縁層66のうち発熱抵抗体71に対応する各部位を、フォトリソグラフィ処理のもとエッチングにより除去し、ついで、この除去部位に対応するシリコン製半導体基板61の各部位を水酸化テトラメチルアンモニウムを用いてエッチングにより除去して、絶縁層68のうち発熱抵抗体71に対応する部位を外方に露呈させる。これにより、空洞62が、シリコン製半導体基板61及び下側絶縁層66のうち発熱抵抗体71に対応する部位に形成される。
[1−4−7.保護層64の「厚み」について]
ここで、保護層64の「厚み」について図6を用いて説明する。
まず、前提として、絶縁保護層69の表面には、下地に例えば発熱抵抗体71が存在することによって、図6に示すように凹凸(段差)が生じる。
そして、例えば、保護層64の厚みがS[nm]であるとするその趣旨は、絶縁保護層69の表面を直径Sの円が転がることによって描かれる軌跡が保護層64の表面内に内包される、という趣旨である。即ち、図6に示すように、垂直方向の厚み、及び水平方向の厚みの双方とも、S[nm]となる。さらに、絶縁保護層69の角100からの厚み(角100から保護層64の表面までの距離)も、S[nm]となる。
尚、図7に示すように、絶縁保護層69の凹凸の角に合わせ、保護層64の表面の凹凸にも角が立つような構成でも良い。
このような本実施形態においては、ガス検出素子60は、その表面が結晶質を含有すると共にアルミナ(Al23)を主体とする酸化膜で形成される保護層64で覆われているため、耐アルカリ性および耐結露性に優れたものとなっている。つまり、保護層64は、耐結露性に優れており、水滴が付着しても、自身の構造が緻密な構造から多孔質構造に変化することがない。このように、ガス検出素子60では、水滴による保護層64の特性変化を抑制できるため、ガス検出素子60の最表面層に水滴が付着したとしても、不純物が保護層64(最表面層)に侵入することを抑制でき、ガス検出素子60の熱容量が変化するのを抑制できる。
さらに、保護層64は加熱スパッタ法により形成されており、結晶質を含有することから、より緻密な構成(例えばガス不透過性)となっている。このため、例えば保護層64の構成がポーラス(多孔質性)である場合と比較して、被検出ガスが含まれる環境中の不純物(例えば有機シリコン)の保護層64への侵入を抑制することができる。
[1−5.効果確認試験]
本発明を適用したガス検出器における耐結露性の効果を確認するための耐結露性確認試験における試験結果について説明する。
本試験では、本発明の実施例としての1種類のガス検出素子と、比較例としての1種類のガス検出素子と、を用いて、耐結露性確認試験を実施した。
実施例のガス検出素子は、600℃に加熱した状態でスパッタリングを行う加熱スパッタ法で形成した保護層64(換言すれば、結晶質を含有すると共にアルミナ(Al23)を主体とする酸化膜としての保護層64)を備える。比較例のガス検出素子は、常温でスパッタリングを行い形成した保護層(換言すれば、非晶質であるとともにアルミナ(Al23)を主体とする酸化膜としての保護層)を備える。
本試験では、ガスセンサ素子単体での測定ではなく、実施例のガス検出素子を備えるガス検出器と、比較例のガス検出素子を備えるガス検出器と、を用いて、結露が生じる環境下に設置される前と設置された後とで、センサ出力値の変動量(出力誤差)を測定した。
今回の耐結露性確認試験は、「JASO D 014−4:2006」に基づく温度湿度組合せサイクル試験であり、図8に示すサイクル(a)と図9に示すサイクル(b)とに示すように温度および湿度が変更される環境下にガス検出器を交互に設置し、この環境下に設置される前と設置された後とで、センサ出力値の変動量を測定した。なお、出願人は、今回の耐結露性確認試験では、検出素子の表面に必ず結露が生じることを確認しつつ試験を実施した。
本試験では、各サイクルを交互に5回ずつ繰り返し実施し、5回目のサイクル(b)における高温(65℃)が安定した後に、所定の温度および湿度の環境下でガス検出器に通電を行った。
つまり、上記環境下への設置前および設置後におけるセンサ出力値の測定は、温度および湿度が異なる6種類の環境下で実施した。具体的には、「温度:−30℃、湿度:制御せず(環境依存)」、「温度:25℃、湿度:制御せず(環境依存)」、「温度:25℃、湿度:50%RH」、「温度:70℃、湿度:制御せず(環境依存)」、「温度:70℃、湿度:20%RH」、「温度:70℃、湿度:50%RH」の各環境下で測定を実施した。
実施例および比較例としての各ガス検出素子の試験結果を図10および図11に示す。
試験結果によれば、実施例は、全ての変動量(出力誤差)が±0.2[%]の範囲内である。比較例は、一部の試料の変動量(出力誤差)が±0.2[%]の範囲内であるが、変動量(出力誤差)が±0.2[%]の範囲を逸脱するものが存在する。このため、実施例のガス検出素子は、比較例のガス検出素子に比べて、水分(結露)の影響による出力変動量(出力誤差)が小さくなり、耐結露性に優れることが判る。
また、実施例および比較例について、試験前および試験後におけるガス検出素子の外観を撮影した画像を図12に示す。
図12に示すように、実施例のガス検出素子は、試験前と試験後とで外観に大きな変化が生じておらず、結露により生じた水滴による保護層の侵食は発生していない。
これに対して、比較例のガス検出素子は、試験後の外観において水玉模様のようなマダラ状の外観となっており、試験後は、試験前と比べて外観に変化が生じている。これは、結露により生じた水滴による保護層の侵食が発生して、保護層の構造が緻密な構造から多孔質構造に変化したためである。このような保護層の特性変化が生じると、多孔質化した保護層の孔に不純物が入り込むことによってガス検出素子の熱容量が変化してしまい、ガス検出素子の出力に誤差が生じる。このため、比較例では、試験前に比べて試験後のセンサ出力の変動量が所定範囲を逸脱してしまい、上記の測定結果(図10および図11)に示すように、実施例に比べて出力変動量(出力誤差)が大きくなったと考えられる。
この試験結果から、本発明を適用した実施例は、比較例と比べて、耐結露性に優れることが判る。
[1−6.効果]
以上説明したように、本実施形態のガス検出器1に備えられるガス検出素子60は、結晶質を含有すると共にアルミナ(Al23)を主体とする酸化膜で形成される保護層64を備える。
この保護層64は、水滴がガス検出素子60の表面に付着しても、水滴により侵食されることがない。つまり、この保護層64は、耐結露性に優れており、水滴が付着しても、自身の構造が緻密な構造から多孔質構造に変化することがない。このように、ガス検出器1では、水滴による保護層64の特性変化を抑制できるため、ガス検出素子60の最表面層に水滴が付着したとしても、不純物が保護層64(最表面層)に侵入することを抑制でき、ガス検出素子60の熱容量が変化するのを抑制できる。
また、この保護層64は、酸化材料で形成されるため、耐アルカリ性に優れるため、例えば、アルカリ性の成分がそのガス検出素子60の表面に付着したとしても、アルカリ性の成分による侵食を防止できる。
さらに、この保護層64は、ガス不透過性を有している(緻密に構成されている)ため、被検出ガスが含まれる環境中の不純物(例えば有機シリコン等)が保護層64の中に侵入することを抑制することができる。例えば、保護層64の構造が、ガス透過性を有するポーラス(多孔質状)であれば、孔に不純物が入り込むなどして不純物が付着しやすいことも考えられるが、本実施形態のガス検出素子60ではそのようなことがない。このため、ガス検出素子60において不純物が保護層64(最表面層)の中に侵入してしまって熱容量が変化するのを抑制できる。
したがって、本実施形態のガス検出器1によれば、耐アルカリ性に優れるとともに耐結露性に優れるガス検出素子60を備えるガス検出器を実現できる。つまり、本実施形態のガス検出器1は、ガス検出素子60の出力が安定し、かつ正確なものとなることで、ガス検出精度を高いレベルにすることができる。
次に、ガス検出素子60においては、上側絶縁層67のうち絶縁保護層69は、窒化珪素(Si34)で形成されている。窒化珪素は耐腐食性や安定性の点で優れているため、耐アルカリ性や耐結露性に優れる保護層64との設置効果と相俟って、ガス検出素子60は耐久性が高くなる。
次に、保護層64は、厚さ寸法が75[nm]であり、発熱抵抗体71の厚さ寸法(400[nm])と比べて、50分の1以上の厚さ寸法を有している。保護層64の厚さ寸法をこのように規定することで、保護層64に孔(スポット、ポア)が生じることを抑制できる。
また、保護層64は、厚さ寸法が75[nm]であり、その厚さ寸法が5〜200nmの範囲内となるように形成されている。このように保護層64の厚さ寸法における下限値を規定することにより、保護層64に孔(スポット、ポア)が生じることを抑制できる。また、保護層64の厚さ寸法における上限値を規定することにより、保護層64の厚さ寸法が過剰に大きくなるのを抑制でき、保護層64の熱による膨張、収縮等に対する柔軟性が小さくなることを抑制できる。
さらに、保護層64は、ガス雰囲気に接する自身の表面から上側絶縁層67の表面までの距離が、自身の厚さ寸法となるように形成されている。つまり、上側絶縁層67の表面は、内部の発熱抵抗体71の存在によって少なからず凹凸があるが、保護層64もその凹凸に沿って所定の厚さ寸法を持つように形成されている。
これにより、上側絶縁層67の凹凸における角から保護層64の表面までの距離も、確実に確保されるため、上記凹凸によって保護層64を設けた効果にばらつきが出るのを防ぐことができる。
次に、本実施形態のガス検出素子60においては、保護層64は600℃に加熱した状態でスパッタリングを行う加熱スパッタ法にて形成される。このため、保護層64は、結晶質を含有して形成され、緻密な膜として形成されるため、被検出ガスが含まれる環境中の不純物(例えば有機シリコン等)が保護層64の中に侵入することを抑制できる。これにより、ガス検出素子60において不純物が保護層64(最表面層)の中に侵入してしまって熱容量が変化するのを抑制できる。
また、ガス検出素子60は、熱伝導式ガス検出素子であり、保護層64を備えることで、耐アルカリ性および耐結露性に優れた特性を有するガス検出素子となる。とりわけ、熱伝導式ガス検出素子においては、保護層64を設ける効果がより大きいと考えられる。
つまり、熱伝導式ガス検出素子においては、被検出ガス濃度がppmオーダー(百万分の1)である低濃度領域で被検出ガスの検出を行う場合には、ガス検出素子の出力を増幅する必要があるため、出力の誤差は小さいほうが好ましい。
この点、本実施形態のガス検出素子60においては、水滴による保護層64の特性変化を抑制できるため、不純物の侵入による熱容量の変化を抑制でき、ひいては誤差を抑制できるため有利である。
[1−7.特許請求の範囲との対応関係]
ここで、特許請求の範囲と本実施形態とにおける文言の対応関係について説明する。
発熱抵抗体71が発熱抵抗体の一例に相当し、上側絶縁層67が絶縁層の一例に相当し、シリコン製半導体基板61が半導体基板の一例に相当し、ガス検出素子60がガス検出素子の一例に相当し、回路基板41が制御手段の一例に相当し、保護層64が酸化膜の一例に相当する。
[2.他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
例えば、上記実施形態では、発熱抵抗体71の周囲のうち一方向のみに測温抵抗体80が配置される構成のガス検出素子60について説明したが、ガス検出素子はこのような構成に限られることはない。具体的には、図13に示す第2ガス検出素子160のように、発熱抵抗体171の周囲のうち3方向に配置される測温抵抗体180を備える構成であっても良い。このような形態の測温抵抗体180を備えることで、測温抵抗体180による温度検出の検出精度を向上できる。
また、第2ガス検出素子160では、電極185、グランド電極186、電極188、グランド電極189が、第2ガス検出素子160の4辺のうち1辺に集約されて配置されている。これにより、各電極と他部材との接続を4辺のうち1辺に集約することができ、各電極が互いに離れた位置に配置される構成に比べて、第2ガス検出素子160と他部材との接続構造を簡易な構造として実現できる。
なお、第2ガス検出素子160では、電極185は、配線膜811および配線813を介して発熱抵抗体171の一端に接続されており、グランド電極186は、配線膜812および配線814を介して発熱抵抗体171の他端に接続されている。また、電極188は、測温抵抗体180の一端に接続されており、グランド電極189は、測温抵抗体180の他端に接続されている。
次に、ガス検出回路91に備えられるホイートストーンブリッジ911は上記構成に限られることはなく、可変抵抗部を備えても良い。例えば、図14に示す第2ホイートストーンブリッジ回路921は、発熱抵抗体71と、2つの固定抵抗95,96と、抵抗値を切替可能な可変抵抗部162を備えている。つまり、第2ホイートストーンブリッジ回路921は、上述のホイートストーンブリッジ911のうち固定抵抗97を可変抵抗部162に置き換えて構成されている。
可変抵抗部162は、抵抗値を切り替えることで、第2ホイートストーンブリッジ回路921のバランスを変化させるものである。可変抵抗部162には、抵抗値の異なる2個の第1固定抵抗163および第2固定抵抗165と、第1固定抵抗163および第2固定抵抗165のいずれか一方を有効に動作させる切替スイッチ167とが設けられている。切替スイッチ167は、マイコン94から出力された切替信号CG1に従って切り替え動作を行うものである。
なお、第1固定抵抗163は、発熱抵抗体71が高温側の第1設定温度CH(例えば400℃)となる抵抗値を有するものである。また、第2固定抵抗165は、発熱抵抗体71が第1設定温度CHより低く設定された低温側の第2設定温度CL(例えば300℃)となる抵抗値を有するものである。
このような第2ホイートストーンブリッジ回路921を備えるガス検出回路は、可変抵抗部162により発熱抵抗体71が第1設定温度CHに設定される場合には、出力値V1として高温時電圧VHを出力し、可変抵抗部162により発熱抵抗体71が第2設定温度CLに設定される場合には、出力値V1として低温時電圧VLを出力する。
マイコン94では、ガス検出回路から出力された高温時電圧VHおよび低温時電圧VLと、温度測定回路93から出力された出力値(温度電圧値)とを用いて、可燃性ガスの濃度を演算する。具体的には、まず、高温時電圧VHと低温時電圧VLとの比率(電圧比VC)を演算し、電圧比VCおよび温度電圧値と所定のマップデータなどを用いて、雰囲気湿度を演算する。そして、高温時電圧VHと所定のマップデータなどを用いて基準ガス濃度を演算し、さらに、雰囲気温度や雰囲気湿度による影響を低減するように基準ガス濃度を補正して、可燃ガス濃度を演算する。このように、高温時電圧VHと低温時電圧VLとの比率(電圧比VC)に基づき雰囲気湿度を演算して、雰囲気湿度の影響を低減するようにガス濃度を補正しているので、可燃性ガスの検出精度を向上できる。なお、高温時電圧VHおよび低温時電圧VLを用いた可燃性ガスの濃度を演算する処理は、上記のものに限られず、公知の手段を適宜用いれば良い。
次に、上記実施形態の保護層64は、結晶質を含有すると共にアルミナ(Al23)を主体とする酸化膜で形成されるが、本発明の適用対象はこれに限られることはなく、結晶質を含有する酸化膜であれば、他の化合物を主体とする酸化膜で形成される保護層64を適用してもよい。
また、保護層64の厚み寸法は、75[nm]に限定されることはなく、5〜200[nm]の範囲内における任意の厚み寸法で形成できる。また、保護層64の厚み寸法は、発熱抵抗体71の厚みの50分の1以上の所定の厚み寸法とすることができる。
さらに、上記実施形態では、水素ガスを検出するガス検出器について説明したが、本発明の適用対象はこれに限られることはなく、水素以外の可燃性ガスを検出するガス検出器に対して本発明を適用しても良い。
1…ガス検出器、20…素子ケース、39…検出空間、40…収容ケース、41…回路基板、42…ケース本体、50,51…発熱体、60…ガス検出素子、61…シリコン製半導体基板、64…保護層、66…下側絶縁層、67…上側絶縁層、68…絶縁層、69…絶縁保護層、71…発熱抵抗体、80…測温抵抗体、85…電極、86…グランド電極、88…電極、89…グランド電極、90…制御回路、94…マイコン、160…第2ガス検出素子、171…発熱抵抗体、180…測温抵抗体、185…電極、186…グランド電極、188…電極、189…グランド電極。

Claims (9)

  1. 少なくとも発熱抵抗体と絶縁層とが半導体基板に積層され、前記絶縁層が、前記発熱抵抗体を覆うように形成されてなる熱伝導式のガス検出素子と、
    前記発熱抵抗体の通電を制御するとともに、その発熱抵抗体に通電した際のその発熱抵抗体の抵抗値に基づき被検出ガスを検出する制御手段と、
    を備えたガス検出器において、
    前記ガス検出素子は、前記絶縁層の表面に、その絶縁層を覆うように積層されるガス不透過性の酸化膜を有し、
    前記酸化膜は、結晶質を含有するとともに、前記被検出ガスを含むガス雰囲気に接する最表面層を構成していること、
    を特徴とするガス検出器。
  2. 前記酸化膜は、アルミナを主体に形成されること、
    を特徴とする請求項1に記載のガス検出器。
  3. 前記絶縁層の表面は、窒化珪素からなること、
    を特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス検出器。
  4. 前記酸化膜は、その厚さ寸法が、前記半導体基板の表裏面に垂直な方向に対する前記発熱抵抗体の厚さ寸法の50分の1以上となるように形成されていること、
    を特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載のガス検出器。
  5. 前記酸化膜は、その厚さ寸法が、5〜200nmとなるように形成されていること、
    を特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載のガス検出器。
  6. 前記酸化膜における前記ガス雰囲気に接する表面から前記絶縁層の表面までの距離が、その酸化膜の厚さ寸法であること、
    を特徴とする請求項4または請求項5に記載のガス検出器。
  7. 前記酸化膜は、スパッタ法にて形成されること、
    を特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載のガス検出器。
  8. 前記被検出ガスは水素ガスであること、
    を特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載のガス検出器。
  9. 少なくとも前記ガス検出素子が、水素と酸素とから電力を発生する燃料電池システムにおける所定の箇所に配設され、その燃料電池システムにおける水素ガスを検出すること、
    を特徴とする請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載のガス検出器。
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