JP2015150485A - 膜洗浄方法、膜洗浄剤及び膜処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】効率よく膜を洗浄することができる、膜処理装置の膜洗浄方法を提供すること。【解決手段】膜処理装置における膜洗浄方法であって、糖分解酵素、タンパク質分解酵素及びN−アシル−L−ホモセリンラクトン分解酵素からなる群より選択される少なくとも一種の分解酵素が内包されたベシクルを被処理水に添加する工程と、ベシクルを膜表面に形成されたバイオフィルムに接触させる工程と、ベシクルの内水相から分解酵素を放出する工程と、を含む、膜洗浄方法。【選択図】図1
Description
本発明は、膜洗浄方法、膜洗浄剤及び膜処理装置に関する。
近年、排水処理において、MBR(Membrane Bio Reactor)が非常に着目されている。MBRとは、従来の排水処理で一般的に使われている標準活性汚泥法と、膜処理技術を組み合わせたものである。この2つを組み合わせることによって、処理水が清澄になる、最終沈殿池が不要になるため装置全体がコンパクトになる等のメリットが得られる。一方、MBRでは、運転時間の経過に伴い、汚泥が膜に付着してバイオフィルムが形成され、膜が目詰まりしてろ過性能が低下する。
膜の目詰まりを軽減する方法として、例えば、特許文献1には、汚泥と処理水の固液分離を行う膜の目詰まり軽減方法であって、タンパク質分解酵素を分泌する微生物を前記汚泥中で維持する工程を含む、方法が開示されている。また、特許文献2には、汚泥と処理水の固液分離を行う膜の目詰まり軽減方法であって、糖分解酵素を分泌する微生物を前記汚泥中で維持する工程を含む、方法が開示されている。
しかしながら、膜の洗浄効率は、未だ改良の余地がある。
そこで、本発明は、効率よく膜を洗浄することができる、膜処理装置の膜洗浄方法を提供することを目的とする。
本発明は、膜処理装置における膜洗浄方法であって、糖分解酵素、タンパク質分解酵素及びN−アシル−L−ホモセリンラクトン分解酵素からなる群より選択される少なくとも一種の分解酵素が内包されたベシクルを被処理水に添加する工程と、上記ベシクルを膜表面に形成されたバイオフィルムに接触させる工程と、上記ベシクルの内水相から上記分解酵素を放出する工程と、を含む、膜洗浄方法に関する。
本発明の膜洗浄方法によれば、ベシクルから放出された糖分解酵素又はタンパク質分解酵素が、膜表面に形成されたバイオフィルムの分解を促進し、バイオフィルムが除去される。また、N−アシル−L−ホモセリンラクトン分解酵素は、微生物によるバイオフィルム形成を阻害する効果を奏する。本発明の洗浄方法では、ベシクルが被処理水に容易に分散することができることから、膜表面における被処理水の水流(例えば、クロスフロー、濾過吸引による水流)に乗って効率よく膜面に集まることができ、膜表面のバイオフィルムに効果的に作用することができる。また、膜表面の滞在時間が長くなるため、バイオフィルム中の微生物による作用を強く受け、分解酵素が放出されやすくなるという利点も有する。
上記膜洗浄方法において、膜処理装置は、MBRであってもよい。MBRは膜の目詰まりを軽減するための洗浄に必要な動力が高く、ランニングコストが大きいが、上記膜洗浄方法を適用することにより、膜の洗浄に必要な動力を削減でき、ランニングコストを低減できる。
本発明はまた、糖分解酵素、タンパク質分解酵素及びN−アシル−L−ホモセリンラクトン分解酵素からなる群より選択される少なくとも一種の分解酵素が内包されたベシクルを有効成分とする膜処理装置用膜洗浄剤に関する。上記膜洗浄剤は、上記ベシクルを有効成分としているため、効率よく膜を洗浄することができる。
上記膜洗浄剤は、MBR用であってもよい。MBRは膜の目詰まりを軽減するための洗浄に必要な動力が高く、ランニングコストが大きいが、上記膜洗浄剤を適用することにより、膜の洗浄に必要な動力を削減でき、ランニングコストを低減できる。
本発明は更に、糖分解酵素、タンパク質分解酵素及びN−アシル−L−ホモセリンラクトン分解酵素からなる群より選択される少なくとも一種の分解酵素が内包されたベシクルを膜近傍に供給する供給手段を備える膜処理装置に関する。上記膜処理装置は、上記供給手段を備えているため、運転しながら膜を洗浄することができる。
上記膜処理装置は、MBRであってもよい。MBRは膜の目詰まりを軽減するための洗浄に必要な動力が高く、ランニングコストが大きいが、上記供給手段を備えることによって、膜の洗浄に必要な動力を削減でき、ランニングコストを低減できる。
本発明によれば、効率よく膜洗浄することのできる、膜処理装置の膜洗浄方法の提供が可能となる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
〔ベシクル〕
ベシクルとは、リン脂質等の脂質二重膜で形成された小胞であり、小胞の内側表面と外側表面が親水性を示し、脂質二重膜の内部が疎水性を示す。脂質二重膜は、他の構成成分として、糖、タンパク質等を含むこともある。
ベシクルとは、リン脂質等の脂質二重膜で形成された小胞であり、小胞の内側表面と外側表面が親水性を示し、脂質二重膜の内部が疎水性を示す。脂質二重膜は、他の構成成分として、糖、タンパク質等を含むこともある。
図1は、分解酵素を内包したベシクルを示す模式断面図である。ベシクル10は、親水性基11と疎水性基12とを有する脂質二重膜からなる。ベシクル10の内水相には、分解酵素13が内包されている。ベシクル10には、分解酵素13そのものが内包されている場合と、分解酵素13を分泌する微生物(図示せず)が内包されている場合がある。
ベシクルとしては、電荷を帯びていないベシクル、電荷を帯びているベシクルを挙げることができる。電荷を帯びているベシクルとしては、カチオン性ベシクル、アニオン性ベシクルを挙げることができる。
カチオン性のベシクルは、カチオン性脂質、カチオン性多糖類等を脂質二重層の構成要素として含ませることで得ることができる。同様に、アニオン性のベシクルは、アニオン性脂質、アニオン性多糖類等を脂質二重層の構成要素として含ませることで得ることができる。
カチオン性脂質として、例えば、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン又は第四級アンモニウムカチオンが結合した脂質を挙げることができる。カチオン性脂質のより具体的な例として、例えば、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウム硫酸メチル(DOTAP)、3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、(1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、N,N−ジメチル−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、1,2−ジオレイル−3−ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、ステアリルアミン等が挙げられる。カチオン性多糖類のより具体的な例として、例えば、キトサン等が挙げられる。
アニオン性脂質として、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、ドデシル硫酸、ヘキサデシル硫酸等のアルキル硫酸を挙げることができる。アニオン性多糖類として、例えば、カラギーナン、デキストラン硫酸等を挙げることができる。
ベシクルは、微生物が分泌するベシクル、化学的に合成したベシクルのいずれであっても本発明に好適に用いることができる。また、ベシクルは、複数の層構造を有する場合がある。
ベシクルとしては、リポソームが好ましい。リポソームは、リン脂質を主成分とする脂質二重膜で形成される小胞である。リン脂質は、構造中にリン酸エステル部位を有する脂質である。リン脂質は、例えば、グリセリン又はスフィンゴシンを中心骨格として脂肪酸及びリン酸が結合し、更にリン酸にアルコール(例えば、コリン、エタノールアミン、イノシトール、セリン等)がエステル結合した構造を有するものである。リン脂質としては、天然由来のリン脂質、合成されたリン脂質を挙げることができる。
リン脂質として、これに限定されるものではないが、例えば、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、卵黄レシチン、水素添加大豆ホスファチジルコリン等を挙げることができる。
リン脂質のより具体的な例として、例えば、1,2−ジデカノイルホスファチジルコリン(DDPC)、1−ステアロイル−2−オレオイルホスファチジルコリン(SOPC)、1,2−ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、1−パルミトイル−2−ミリストイルホスファチジルコリン(PMPC)、1−ミリストイル−2−パルミトイルホスファチジルコリン(MPPC)、1,2−ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、卵黄ホスファチジルコリン(EPC)、スフィンゴミエリン卵黄由来(EGG−SPM)、スフィンゴミエリン牛乳由来(MILK−SPM)、1,2−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2−ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、1,2−ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、1,2−ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)を挙げることができる。
リポソームは、電荷を帯びていないリポソーム、電荷を帯びているリポソームを挙げることができる。電荷を帯びているリポソームとしては、カチオン性リポソーム、アニオン性リポソームを挙げることができる。
カチオン性リポソームは、リポソームにカチオン性脂質、カチオン性多糖類等を脂質二重層の構成要素として含ませることで得ることができる。カチオン性リポソームとして、例えば、遺伝子導入ベクターとして用いられているものを利用することもできる。
アニオン性リポソームは、リポソームにアニオン性脂質、アニオン性多糖類等を脂質二重層の構成要素として含ませることで得ることができる。
分解酵素を内包したベシクルは、公知の方法で作製することができる。例えば、リン脂質等のベシクルの構成要素をクロロホルム等の有機溶媒に溶解する。続いて、有機溶媒を留去し脂質薄膜を得る。そこに分解酵素を溶解した精製水又は緩衝液を加えて、超音波処理又はボルテックスミキサーを用いて水和分散させる。続いて、凍結融解を数回繰り返すことで、分解酵素を内包したベシクルを作製することができる。脂質薄膜に精製水又は緩衝液を加えて、リン脂質等の相転移温度以上の温度となるように加温することで、ベシクルを作製することもできる。また、逆相蒸発法、エタノール注入法、エーテル蒸発法等を利用することもできる。ベシクルとしてリポソームを用いる場合も同様に作製することができる。
〔分解酵素〕
本実施形態に係る分解酵素は、糖分解酵素、タンパク質分解酵素及びN−アシル−L−ホモセリンラクトン分解酵素からなる群より選択される少なくとも一種である。
本実施形態に係る分解酵素は、糖分解酵素、タンパク質分解酵素及びN−アシル−L−ホモセリンラクトン分解酵素からなる群より選択される少なくとも一種である。
糖分解酵素としては、糖を低分子化するものであれば特に制限されず、ガラクトシダーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、グルカナーゼ、グリコペプチダーゼ、エンドグリコシダーゼ、マンノシダーゼ、フコシダーゼ、アセチルヘキソサミニダーゼ、アラビノシダーゼ、ラムノシダーゼ、キシラナーゼ等が例示できる。糖分解酵素を分泌する微生物としては、これらのいずれかの酵素を分泌するものが使用できる。より具体的には、アルカリゲネス属、アルテロモナス属、バチルス属、マイクロコッカス属、アルスロバクター属、プラノコッカス属、アゾリカ属、アキシネラ属、サルガッスム属、アラクニオタス属、アスペルギルス属、オルピノマイセス属、サーモマイセス属、フラボバクテリウム属、シュードモナス属等に属する微生物が使用可能である。
タンパク質分解酵素としては、タンパク質を低分子化するものであれば特に制限されず、プロテアーゼやペプチダーゼが例示できる。タンパク質分解酵素を分泌する微生物としては、プロテアーゼやペプチダーゼを分泌するものが使用できる。より具体的には、アルカリゲネス属、アルテロモナス属、バチルス属、コリネバクテリウム属、フラボバクテリウム属、マイクロコッカス属、ビブリオ属、アスペルギルス属、ストレプトマイセス属、リゾプス属、ブレビバチルス属、シュードモナス属、シェワネラ属、シュードアルテロモナス属、アエロモナス属、セラチア属、エグジゴバクテリウム属、コプロサーモバクター属等に属する微生物が使用可能である。
N−アシル−L−ホモセリンラクトンには、例えば、N−ブタノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−オキソブタノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−ヒドロキシブタノイル−L−ホモセリンラクトン、N−ペンタノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−オキソペンタノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−ヒドロキシペンタノイル−L−ホモセリンラクトン、N−ヘキサノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−オキソヘキサノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−ヒドロキシヘキサノイル−L−ホモセリンラクトン、N−ヘプタノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−オキソヘプタノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−ヒドロキシヘプタノイル−L−ホモセリンラクトン、N−オクタノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−オキソオクタノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−ヒドロキシオクタノイル−L−ホモセリンラクトン、N−ノナノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−オキソノナノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−ヒドロキシノナノイル−L−ホモセリンラクトン、N−デカノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−オキソデカノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−ヒドロキシデカノイル−L−ホモセリンラクトン、N−ウンデカノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−オキソウンデカノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−ヒドロキシウンデカノイル−L−ホモセリンラクトン、N−ドデカノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−オキソドデカノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−ヒドロキシドデカノイル−L−ホモセリンラクトン、N−トリデカノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−オキソトリデカノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−ヒドロキシトリデカノイル−L−ホモセリンラクトン、N−テトラデカノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−オキソテトラデカノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−ヒドロキシテトラデカノイル−L−ホモセリンラクトン、N−ペンタデカノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−オキソペンタデカノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−ヒドロキシペンタデカノイル−L−ホモセリンラクトン、N−ヘキサデカノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−オキソヘキサデカノイル−L−ホモセリンラクトン、N−3−ヒドロキシヘキサデカノイル−L−ホモセリンラクトン等のアシル基の炭素数が4〜16であるN−アシル−L−ホモセリンラクトンが含まれる。
N−アシル−L−ホモセリンラクトン分解酵素としては、N−アシル−L−ホモセリンラクトンの構造を変換するもの、又はN−アシル−L−ホモセリンラクトンを低分子化するものであれば特に制限されず、ラクトナーゼ、アシラーゼを例示できる。N−アシル−L−ホモセリンラクトン分解酵素を分泌する微生物としては、これらのいずれかの酵素を分泌するものが使用できる。より具体的には、アスペルギルス属、アシネトバクター属、エルウニア属、シェバネラ属、シュードモナス属、バークホルデリア属、ペニシリウム属、マイクロバクテリウム属及びラルストニア属等に属する微生物が使用可能である。
上述した分解酵素又は微生物は、1種単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
〔膜処理装置用膜洗浄剤〕
本実施形態に係る膜処理装置用膜洗浄剤は、上述した分解酵素の少なくとも一種が内包された上述のベシクルを有効成分として含む。膜処理装置用膜洗浄剤は、分解酵素が内包されたベシクルのみからなる場合と、当該ベシクル以外の成分を含む場合がある。当該ベシクル以外の成分としては、例えば、水、アルコール等の担体を挙げることができる。
本実施形態に係る膜処理装置用膜洗浄剤は、上述した分解酵素の少なくとも一種が内包された上述のベシクルを有効成分として含む。膜処理装置用膜洗浄剤は、分解酵素が内包されたベシクルのみからなる場合と、当該ベシクル以外の成分を含む場合がある。当該ベシクル以外の成分としては、例えば、水、アルコール等の担体を挙げることができる。
〔膜処理装置〕
本実施形態に係る膜処理装置は、上述した分解酵素の少なくとも一種が内包された上述のベシクルを膜近傍に供給する供給手段を備える。
本実施形態に係る膜処理装置は、上述した分解酵素の少なくとも一種が内包された上述のベシクルを膜近傍に供給する供給手段を備える。
膜処理装置とは、膜処理プロセス用の分離膜を備える装置である。膜処理プロセスとしては、例えば、海水淡水化、純水製造、硬水の軟水化、トリハロメタンの除去、上水又は工業用水の製造、膜分離活性汚泥(MBR)法を含めた排水処理を挙げることができる。膜処理装置としては、例えば、MBR、RO膜海水淡水化装置、純水製造装置等を挙げることができる。膜処理装置としては、MBRが好ましい。
MBRとは、従来の排水処理で一般的に使われている標準活性汚泥法と、膜処理技術を組み合わせたものである。
MBRには、槽外型及び浸漬型が存在する。図2aは槽外型MBRの概略図である。槽外型MBR100では、汚泥を含む生物反応槽110の外に膜120が設置される。ラインL110を通して汚泥が膜120に供給される。膜120において、汚泥と処理水が分離される。処理水はラインL120を通して取り出され、汚泥はラインL130を通して生物反応槽110に返送される。本実施形態に係る膜処理装置は、例えば、ラインL110にライン(図示せず)を介して連結された供給手段(図示せず)を備えるものであってよい。供給手段は、ライン(図示せず)を介して直接膜120に連結されていてもよい。これにより膜近傍にベシクルを供給することができるため、膜の洗浄効率がより優れる。
浸漬型MBRとは、汚泥を含む生物反応槽に膜を浸漬して、汚泥と処理水を分離する方式である。浸漬型には、さらに一体型と槽別置型が存在する。図2bは浸漬型MBR(一体型)200の概略図である。浸漬型MBR(一体型)200では、汚泥を含む生物反応槽210内に膜220が設置される。膜220において、汚泥と処理水が分離され、処理水はラインL220を通して取り出される。本実施形態に係る膜処理装置は、例えば、生物反応槽210にライン(図示せず)を介して連結された供給手段(図示せず)を備えるものであってよい。供給手段は、ライン(図示せず)を介して直接膜220に連結されていてもよい。これにより膜近傍にベシクルを供給することができるため、膜の洗浄効率がより優れる。
浸漬型MBR(槽別置型)とは、汚泥を含む生物反応槽と膜を設置する膜分離槽とが分離した方式である。図2cは浸漬型MBR(槽別置型)300の概略図である。浸漬型MBR(槽別置型)300では、汚泥を含む生物反応槽310と、膜320が設置された膜分離槽330とが分離している。生物反応槽310からラインL310を通して汚泥が膜分離槽330に供給される。膜320において、汚泥と処理水が分離される。処理水はラインL320を通して取り出され、汚泥はラインL330を通して生物反応槽310に返送される。本実施形態に係る膜処理装置は、例えば、ラインL310又は膜分離槽330にライン(図示せず)を介して連結された供給手段(図示せず)を備えるものであってよい。供給手段は、ライン(図示せず)を介して直接膜320に連結されていてもよい。これにより膜近傍にベシクルを供給することができるため、膜の洗浄効率がより優れる。
膜としては、例えば、逆浸透膜(RO膜、NF膜)、限外ろ過膜(UF膜)及び精密ろ過膜(MF膜)を挙げることができる。
膜の素材は、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びセラミック等並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
膜の形態は、特に制限されるものではないが、平膜、中空糸膜、管状膜(チューブラー膜)、スパイラル膜等が挙げられる。
〔膜洗浄方法〕
一実施形態では、上述した分解酵素の少なくとも一種が内包された上述のベシクル(又は膜処理装置用膜洗浄剤)を被処理水に供給することによって、濾過吸引等による水流により膜表面に形成されたバイオフィルムに接触させることができる。バイオフィルムに接触したベシクルの内水相から分解酵素を放出することでバイオフィルムの分解等が生じ膜を洗浄することができる。分解酵素の放出は、バイオフィルム中の微生物との相互作用、又は膜近傍をベシクルの相転移温度以上に昇温することでベシクルを相転移させることで行うことができる。この方法によれば、膜処理を行いながら膜を洗浄することができるため、膜の寿命が延び水処理の効率が向上する。膜の目詰まり防止のために、膜を曝気すること等の物理的洗浄と組み合わせてもよい。
一実施形態では、上述した分解酵素の少なくとも一種が内包された上述のベシクル(又は膜処理装置用膜洗浄剤)を被処理水に供給することによって、濾過吸引等による水流により膜表面に形成されたバイオフィルムに接触させることができる。バイオフィルムに接触したベシクルの内水相から分解酵素を放出することでバイオフィルムの分解等が生じ膜を洗浄することができる。分解酵素の放出は、バイオフィルム中の微生物との相互作用、又は膜近傍をベシクルの相転移温度以上に昇温することでベシクルを相転移させることで行うことができる。この方法によれば、膜処理を行いながら膜を洗浄することができるため、膜の寿命が延び水処理の効率が向上する。膜の目詰まり防止のために、膜を曝気すること等の物理的洗浄と組み合わせてもよい。
なお、バイオフィルムとは、微生物により形成される構造体であり、基質(例えば、膜等)に付着した微生物が、細胞外多糖(EPS;Extracellular Polysaccharides)と呼ばれる分泌物を分泌することにより形成される。バイオフィルムは、微生物の他、タンパク質、糖等も含む。膜処理装置では、例えば、膜表面における被処理水の水流(例えば、クロスフロー、濾過吸引による水流)により膜の表面に微生物が付着し易いため、バイオフィルムが形成され易い。また、MBRの場合、汚泥が膜の表面に付着してバイオフィルムが形成される。
上述のベシクル(又は膜処理装置用膜洗浄剤)の供給は、膜の洗浄効率が向上するため、膜により近いところで行うことが好ましい。槽外型MBR100では、例えば、ラインL110に別のライン(図示せず)を介して供給してもよい。浸漬型MBR(一体型)200では、例えば、生物反応槽210に別のライン(図示せず)を介して供給してもよい。浸漬型MBR(槽別置型)300では、例えば、ラインL310に別のライン(図示せず)を介して供給してもよいし、膜分離槽330に別のライン(図示せず)を介して供給してもよい。
上記方法は、余剰の上述のベシクル(又は膜処理装置用膜洗浄剤)を回収する工程を備えていてもよい。これによりベシクルを再利用することもできる。ベシクルの回収は、膜を透過させ、透過したベシクルを、例えば、分離槽において、自然沈降、凝集沈降、活性炭吸着等で回収することができる。ベシクルを膜を透過させる方法として、例えば、相転移温度が被処理水の温度以下のベシクルの場合、濾過吸引により膜を透過させることができ、相転移温度が被処理水の温度以上のベシクルの場合、膜近傍を相転移温度以上に昇温することで相転移を促し、膜を透過させることができる。ベシクルの相転移温度は、当業者に公知であるが、例えば、以下の例示ができる。なお、複数の脂質を用いる場合、各脂質の相転移温度に各脂質の重量割合(脂質総量に対する割合)を掛けた値を足し合わせたものがベシクルの相転移温度になる。
他の実施形態では、膜処理装置から膜を取り出した後、上述した分解酵素の少なくとも一種が内包された上述のベシクル(又は膜処理装置用膜洗浄剤)を膜表面に形成されたバイオフィルムに接触させてもよい。これにより膜の洗浄のみを実施することができるため、例えば、超音波処理等の操作と組み合わせることができる。上述した分解酵素の少なくとも一種が内包された上述のベシクル(又は膜処理装置用膜洗浄剤)を添加した被処理水の入った洗浄槽に膜処理装置から取り出した膜を浸漬することができる。
10…ベシクル、11…親水性基、12…疎水性基、13…分解酵素、100…槽外型MBR、110,210,310…生物反応槽、120,220,320…膜、L110,L120,L130,L220,L310,L320,L330…ライン、200…浸漬型MBR(一体型)、300…浸漬型MBR(槽別置型)、330…膜分離槽。
Claims (6)
- 膜処理装置における膜洗浄方法であって、
糖分解酵素、タンパク質分解酵素及びN−アシル−L−ホモセリンラクトン分解酵素からなる群より選択される少なくとも一種の分解酵素が内包されたベシクルを被処理水に添加する工程と、
前記ベシクルを膜表面に形成されたバイオフィルムに接触させる工程と、
前記ベシクルの内水相から前記分解酵素を放出する工程と、を含む、膜洗浄方法。 - 前記膜処理装置が、MBR(Membrane Bio Reactor)である、請求項1に記載の膜洗浄方法。
- 糖分解酵素、タンパク質分解酵素及びN−アシル−L−ホモセリンラクトン分解酵素からなる群より選択される少なくとも一種の分解酵素が内包されたベシクルを有効成分とする膜処理装置用膜洗浄剤。
- 前記膜処理装置が、MBR(Membrane Bio Reactor)である、請求項3に記載の膜洗浄剤。
- 糖分解酵素、タンパク質分解酵素及びN−アシル−L−ホモセリンラクトン分解酵素からなる群より選択される少なくとも一種の分解酵素が内包されたベシクルを膜近傍に供給する供給手段を備える膜処理装置。
- 前記膜処理装置が、MBR(Membrane Bio Reactor)である、請求項5に記載の膜処理装置。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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