JP2015149184A - インピーダンス特性を向上させた同軸コネクタ - Google Patents

インピーダンス特性を向上させた同軸コネクタ Download PDF

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Abstract

【課題】インピーダンス特性を向上させた同軸コネクタを提供することを目的とする。【解決手段】外部導体と、中心導体、絶縁部材、及び環状金具を有する。外部導体は、基板実装部と本体部を有し、それらを連通する連通穴を有する。絶縁部材は、外部導体の連通穴に収容される。中心導体は、絶縁部材に支持され、外部導体の連通穴の内部に配置される。環状金具は、貫通穴を有し、軸方向と直交する径方向に延びる面内に絶縁部材の少なくとも一部と対向する対向面を有し絶縁部材に対して基板実装部の側において外部導体の連通穴に収容される。絶縁部材に支持された中心導体は、環状金具の貫通穴を貫通しており、対向面付近における環状金具の空気層の径が、対向面から離れた側における環状金具の空気層の径に比べて大きく設定されている。【選択図】図7

Description

本願発明は、同軸コネクタ、更に言えば、インピーダンス特性を向上させた同軸コネクタに関する。
図13に、このような構成を有する従来の同軸コネクタの一例を示す。この図は、特開2003−178844号公報の図4に相当する図である。
この同軸コネクタは、主に、第1の外導体101、絶縁体102、第2の外導体103、中心導体ピン105から成る。同軸コネクタは、第1の外導体の底面に設けられたねじ穴114を用いてねじ116でプリント回路基板に固定する。中心導体ピン105は球状回転構造物107を介して回路パターン112に安定した状態で弾性接触できるようになっている。
特開2003−178844号公報
回路基板の面上に高密度でネジ止め取り付けし、高周波信号に対しても良好なインピーダンス特性を発揮する検査用の同軸コネクタが所望されている。しかしながら、特許文献1の同軸コネクタは、中心導体ピン105に垂直方向の弾性を持たせ、また先端に球状回転構造物107を設けるなど複雑な構成であること、一般的なBNCやSMB等の規格品では3GHz以上よりも高周波の信号に使用した場合には、インピーダンスの不整合が生じやすく、インピーダンス特性が低下してしまうといった問題があった。
本願発明は、上述した従来技術における問題を解決するためになされたものであり、インピーダンス特性を向上させた同軸コネクタを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本願出願人は、インピーダンス特性が中心導体の外径と外導体の内径との比で定まるという知見に基づき、この比に影響を与えることができればインピーダンス特性を向上させることができるのではないかとの仮説を立てた。尚、インピーダンス特性は、挿入損失や電圧定在波比(VSWR)と密接な関係があるため、これらの特性についても着目することにした。試行錯誤の末、様々なシミュレーションを行った結果、以下の構成によればインピーダンス特性の改善が得られることが明らかになった。
本発明は、同軸コネクタであって、基板実装部と、該基板実装部から軸方向に垂設した筒状の本体部と、を有する外部導体であって、前記基板実装部と前記本体部を連通する連通穴を有する、前記外部導体と;前記外部導体の連通穴に収容される絶縁部材と;前記絶縁部材によって支持され、前記外部導体の連通穴の内部に前記軸方向に沿って配置される中心導体と;前記軸方向と直交する径方向に延びる面内に前記絶縁部材の少なくとも一部と対向する対向面を有し前記絶縁部材に対して前記基板実装部の側において前記外部導体の連通穴に収容される、貫通穴を有する環状金具と;を備え、前記絶縁部材に支持された前記中心導体は、前記環状金具の貫通穴を前記軸方向に沿って貫通しており、前記中心導体の外面と前記貫通穴の内周面との間に前記径方向に拡がる空気層が形成されており;前記対向面付近における前記環状金具の前記空気層の径が、前記対向面から離れた位置における前記環状金具の前記空気層の径に比べて大きく設定されていることを特徴としている。
上記同軸コネクタにおいて、前記環状金具の貫通穴の内周面に前記対向面から前記対向面の反対側の面に向って環状段部を設けることにより、前記対向面付近における前記環状金具の前記空気層の径が、前記対向面から離れた位置における前記環状金具の前記空気層の径に比べて大きく設定されていてもよい。
また、上記同軸コネクタにおいて、前記環状金具の貫通穴の内周面に前記対向面から前記対向面の反対側の面に向って複数の前記環状段部を設けることにより、前記対向面付近における前記環状金具の前記空気層の径が、前記対向面から離れた位置における前記環状金具の前記空気層の径に比べて大きく設定されており、複数の前記環状段部のうち、前記対向面に近い側の環状段部における前記空気層の径は、前記対向面から遠い側の環状段部における前記空気層の径に比べて大きく設定されていてもよい。
更に、上記同軸コネクタにおいて、前記環状金具の貫通穴の内周面に前記対向面から前記対向面の反対側の面に向ってテーパー部を設けることにより、前記対向面付近における前記環状金具の前記空気層の径が、前記対向面から離れた位置における前記環状金具の前記空気層の径に比べて大きく設定されており、前記テーパー部における前記空気層の径は、前記対向面から遠い側から前記対向面に近い側に向って大きく設定されていてもよい。
更にまた、上記同軸コネクタにおいて、前記対向面において前記環状金具の貫通穴の中心から前記環状金具の外部に向って複数の溝部を設けることにより、少なくとも前記複数の溝部において、前記対向面付近における前記環状金具の前記空気層の径が、前記対向面から離れた位置における前記環状金具の前記空気層の径に比べて大きく設定されていてもよい。
また、上記同軸コネクタにおいて、前記溝部は、前記環状金具の貫通穴の中心から放射状に複数設けられ、前記環状金具の対向面に複数の略扇部が形成されていてもよい。
また、上記同軸コネクタにおいて、前記中心導体は、前記本体部から前記基板実装部に向う方向において、前記環状金具以上に突出した状態で設けられており、前記環状金具は、前記本体部から前記基板実装部に向う方向において、前記基板実装部以上に突出した状態で設けられているのが好ましい。
更に、上記同軸コネクタにおいて、前記環状金具はその素材よりも導電性の高いメッキが施されているのが好ましい。
また、上記同軸コネクタにおいて、前記外部導体の連通穴には、前記外部導体の連通穴に収容された前記絶縁部材を係止する係止部と、前記外部導体の連通穴に収容された前記環状金具を係止する係止部と、が設けられていてもよい。
本願発明によれば、インピーダンス特性を向上させた同軸コネクタを提供することができる。
シミュレーションに用いた同軸コネクタの外観斜視図である。 シミュレーションに用いた同軸コネクタの分解斜視図である。 シミュレーションに用いた同軸コネクタの垂直縦断面図である。 シミュレーションにおける同軸コネクタの配置方法を示す図である。 挿入損失に関するシミュレーション結果を示す図である。 電圧定在波比(VSWR)に関するシミュレーション結果を示す図である。 インピーダンスに関するシミュレーション結果を示す図である。 実施例1のシミュレーション結果を示す図である。 実施例2のシミュレーション結果を示す図である。 実施例3のシミュレーション結果を示す図である。 実施例4のシミュレーション結果を示す図である。 比較例のシミュレーション結果を示す図である。 従来例を示す図である
[同軸コネクタの構成]
同軸コネクタにおいて、対向する環状金具(金属リング)と絶縁部材との界面やその付近における構成が、そのインピーダンス特性にどのような影響を与えるか調べるべく、シミュレーションを行った。シミュレーションには、図1乃至図3に示す構造を持つ同軸コネクタ1を用いた。図1は、同軸コネクタ1の外観斜視図、図2は、その分解斜視図、図3は、垂直縦断面図を、それぞれ示す。尚、これらの図に示した同軸コネクタ1は、公知のものではなく、シミュレーションを行うにあたって発明者自らが考え出したものである。
同軸コネクタ1は、例えば、高速伝送用の評価ボード面上に垂直にネジ止めされる検査用の同軸コネクタとして使用することができる。高速伝送化の高域化に伴い、同軸コネクタとしても高密度で高域の同軸信号を流せる評価ボード用のコネクタが必要となる。同軸コネクタ1は、このような評価ボード用のコネクタとして適したものである。但し、評価ボードに対する使用に限定されるものではなく、勿論、通常の接続に使用することもできる。
同軸コネクタ1は、主に、外部導体10と、中心導体20、絶縁部材30、及び環状金具40を備える。
外部導体10は、例えば、ステンレスや黄銅などの金属を切削することによって製造することができる。主に、基板実装部12と本体部11から成る。基板実装部12は、基板(図示されていない)に実装される部分であって、所定の厚みを有する板状体として形成されている。基板実装部12の左右各側には、外部導体10を基板に固定するための貫通したネジ孔16が設けられている。ネジ孔16を設けたことにより、絶縁部材30を固定する環状金具40を外部導体10の確実な接地面として、実装基板の面上に垂直にネジ止め接続することができる。本体部11は、基板実装部12から軸方向に垂設した部分であって、全体として円筒形状とされている。本体部11の相手端子の挿入側には、相手端子(図示されていない)とのネジ接続を可能とするネジ部17が設けられている。基板実装部12と本体部11には、両者を連通する連通穴15が設けられている。この連通穴15には、相手端子の一部が挿入される大口径部15−1と、基板実装面側から口径が順に小さくなるように切削形成された、中心導体20や絶縁部材30が配置される小口径部15−2と、環状金具40が配置される中口径部15−3が含まれる。
絶縁部材30は、例えば、樹脂で製造することができる。絶縁部材30は、例えば、3つの同心状のリング部分、即ち、小径リング37、中径リング38、及び大径リング39を含んでいてもよく、これらのリング部分をこれらの順に重ね合わせた形状を有していてもよい。各リング部分には、全てのリング部分を貫通する一定の径を有する保持孔35が設けられている。絶縁部材30は、外部導体10の基板実装側からその中口径部15−3を介して、基板実装部12と本体部11の両者を連通する連通穴15の小口径部15−2に挿入、収容される。絶縁部材30を連通穴15の所定位置に位置決めするため、絶縁部材30の中径リング38と大径リング39の間に形成されたフランジ31を利用できる。フランジ31を、連通穴15に設けた係止用の段部(係止部)18に衝突させることにより、連通穴15に対する絶縁部材30の過度の押し込みを規制することもできる。
中心導体20は、例えば、りん青銅などの金属板を加工することによって製造されてもよい。相手端子の挿入側には、相手端子と弾性接触させる複数の弾性片28がスリ割21によって形成されている。中心導体20は、絶縁部材30の保持孔35によって支持される。中心導体20を保持孔35の所定位置に位置決めするため、中心導体20の中間付近に、環状フランジ27と傾斜突部22が設けられている。中心導体20が、絶縁部材30の保持孔35に小径リング37の側から挿入されると、環状フランジ27が小径リング37の上面に衝突し、傾斜突部22が絶縁部材30の窪み32に固定される。これらの構成により、中心導体20は、絶縁部材30に支持されると同時に、絶縁部材30を介して、外部導体10の連通穴15の内部に軸方向に沿って配置される。
環状金具40は、一定の径を有する貫通穴45が中心に設けられたリング形状を有する。例えば、ステンレスや黄銅などの金属を切削することによって製造することができる。導電性を高めるため、環状金具40の実装面側或いは全体に金メッキや銀メッキなどの導電性の高いメッキを施すのが電気的性能及びコスト低減の面でも好ましい。環状金具40は、絶縁部材30に対して基板実装部12の側において、外部導体10の基板実装側の中口径部15−3に挿入、収容される。環状金具40を連通穴15の所定位置に位置決めするため、連通穴15には係止用の段部(係止部)19が設けられている。この係止部19に、軸方向と直交する面内にある環状金具40の一方の面44を、絶縁部材30の少なくとも一部(対向面34)と対向させた状態で配置する。環状金具40を、連通穴15に設けた係止用の段部(係止部)19に衝突させることにより、連通穴15に対する環状金具40の過度の押し込みを規制することもできる。環状金具40の外部導体10に対する挿入をスムーズなものとするため、環状金具40の外面47の相手端子挿入側の縁部に、小さな環状の切欠42を設けてもよい。切欠42を設けたことにより、環状金具40の一方の面44の外径は、環状金具40の対向面34の外径よりやや小さくなっているが、それでもなお、絶縁部材30の外径よりは大きい。また、環状金具40の貫通穴45の径は、中心導体20の外径よりは大きいが、絶縁部材30の外径よりは小さい。このような寸法関係とすることにより、環状金具40を絶縁部材30の少なくとも一部(対向面34)と対向させた状態で配置して、絶縁部材30の抜けを防止することができる。
組み立ては、例えば、外部導体10の連通穴15の小口径部15−2に絶縁部材30を挿入し、次いで、中口径部15−3に環状金具40を挿入し、最後に、連通穴15に収容された絶縁部材30の保持孔35に中心導体20を挿入することによって行う。組立後、絶縁部材30の保持孔35によって支持された中心導体20は、環状金具40の貫通穴45を軸方向(図3の矢印「ア」に沿う方向)に沿って貫通した状態で配置される。中心導体20が貫通穴45に配置されることにより、中心導体20の外面24と、貫通穴45の内周面48との間に、軸方向と直交した径方向に拡がる空気層33が形成される。尚、中心導体20は、軸方向に沿って本体部11から基板実装部12に向う方向(図3の矢印「ア」方向)において、環状金具40と同程度か僅かに突出した状態で、且つ、環状金具40は、本体部11から基板実装部12に向う方向(ア)において、基板実装部12よりも僅かに突出した状態で設けるのが好ましい。このような状態とすることにより、基板実装部12を基板表面にネジ止め等により半田を用いず固定した場合でも、中心導体20の実装面23は確実に基板に接触し、また、環状金具40の実装面も同様に確実に基板に接触することになる。
[シミュレーションソフト]
使用したシミュレーションソフトは、一般に且つ容易に入手可能なANSYS社HFSSver.15である。
[シミュレーション方法]
図1乃至図3に示す同軸コネクタを2つ用いた。これら2つの同軸コネクタ1、1’を、図4に示すように、外部導体10、10’の実装部12、12’同士を互いに向かい合わせた状態で配置するものとした。尚、上に説明したように、中心導体20は、本体部11から基板実装部12に向う方向(図3の矢印「ア」方向)において、環状金具40以上に突出した状態で、且つ、環状金具40は、本体部11から基板実装部12に向う方向(ア)において、基板実装部12以上に突出した状態で設けられているため、互いをネジ止め(図示されていない)等で機械的に固定すると対向する部分は互いに電気的に接続される。更に言えば、一方の同軸コネクタ1の環状金具40の実装面43は、他方の同軸コネクタ1’の環状金具40’の実装面43’と、また、一方の同軸コネクタ1の中心導体20の実装面23は、他方の同軸コネクタ1’の中心導体20’の実装面23’と、それぞれ接続されている。尚、一方の同軸コネクタ1の外部導体10と環状金具40は電気的に接続されているため、更に、他方の同軸コネクタ1’の外部導体10’と環状金具40’は電気的に接続されているため、外部導体10と外部導体10’は、環状金具40と環状金具40’と同様に、電気的に接続されたものとなっている。
このように配置した同軸コネクタ1、1’にそれぞれ、ネットワークアナライザの入力及び出力にそれぞれ接続された同軸ケーブル(図示されていない)を接続し、一方の同軸コネクタ1に最大50GHzの電気信号を入力した。この入力に関し、インピーダンス特性が中心導体20の外径29と環状金具40の内径49との比で定まるという知見に基づき、対向する環状金具40と絶縁部材30との界面やその付近における構成を変化させることによってインピーダンス特性を向上させることができるのではないかとの推測の下、様々な形状の環状金具(後述する図8乃至図12に示す環状金具40a〜40e)について、インピーダンスと、このインピーダンスに影響を及ぼす挿入損失及び電圧定在波比(VSWR)とについてシミュレーションを行った。
[シミュレーション結果]
図5乃至図7に、比較的良好な結果が得られた形状に関してのみ、詳細なシミュレーション結果を示す。
図5は、一方の同軸コネクタ1に最大50GHzの電気信号を入力した際に他方の同軸コネクタ1’で得られた出力信号に現れる損失を、全実施例及び比較例に関して一枚のシートに示したものであって、挿入損失に関するシミュレーション結果を示す図である。横軸は50GHzを最大とする周波数(GHz)を、縦軸は挿入損失(dB)を、それぞれ示す。明らかなように、挿入損失(dB)は0に近ければ近いほど損失が少ないことから、0に近いほど理想的な値であると言える。
図6は、一方の同軸コネクタ1に最大50GHzの電気信号を入力した際にこの一方の同軸コネクタ1へ反射した信号を、全実施例及び比較例に関して一枚のシートに示したものであって、電圧定在波比(VSWR)に関するシミュレーション結果を示す図である。横軸は50GHzを最大とする周波数(GHz)を、縦軸は定在波比の値を、それぞれ示す。明らかなように、電圧定在波比は1に近いほど反射が少ないことから、1に近いほど理想的な値であると言える。
図7は、一方の同軸コネクタ1に最大50GHzの電気信号を入力した際に他方の同軸コネクタ1’で得られた出力信号から計算されたインピーダンスに関するシミュレーション結果を、全実施例及び比較例に関して一枚のシートに示した図である。横軸は時間(ns)を、縦軸は抵抗(Ω)を、それぞれ示す。50Ωの同軸線路を想定しているため、図7におけるインピーダンスの値が50Ωに近ければ近いほど良好なインピーダンス整合が得られたことになる。また、挿入損失がより小さく、電圧定在波比が1に近い場合には、インピーダンス整合の崩壊が抑制されることから、インピーダンスの特性も当然に良好な結果となる。
尚、図5中の挿入損失を示す波形と図6中の電圧定在波比を示す波形については、同軸コネクタ1、1’の部位との間に明確な相関関係は存在しない。これに対し、図7中のインピーダンスを示す波形と同軸コネクタ1、1’の部位との間には、電気長と物理長とは厳密には異なることから完全一致とまではいかないものの、それらの間にある程度の相関関係が認められる。そこで、図7に関しては、便宜上、インピーダンスを示す波形とともに、それらの波形に対応するであろう同軸コネクタ1、1’の部位を示し、それらの間の相関関係をも明らかにした。
図8乃至図11に、各実施例で用いた環状金具40a〜dやその周辺部を含む断面を、更に、図12に、比較例で用いた環状金具40やその周辺部を含む断面を、それぞれ示す。シミュレーションの結果、図8乃至図11に示す実施例と図12に示す比較例との対比から、対向面44付近における環状金具40の空気層33の径49’が、対向面44から離れた位置における環状金具40の空気層33の径49に比べて大きく設定されているときに、良好なシミュレーション結果が得られることが明らかとなった。尚、便宜上、図8乃至図11(及び図12)において、図1乃至図3における部材に対応する部材には、図1乃至図3と同様の参照番号を付している。
[実施例1(一段)]
図8の(a)に示す環状金具40aを用いてシミュレーションを行った。図8の(b)は、この環状金具40aを用いた場合の、図3に相当する部分断面図である。図1乃至図3に示すものと異なり、環状金具40aでは、貫通穴45の内周面48に対向面44から対向面44の反対側の実装面43に向って環状段部51が設けられている。この結果、対向面44付近における環状金具40aの空気層33の径49’は、対向面44から離れた位置における環状金具40aの空気層33の径49に比べて大きくなっている。
図5乃至図7に示すように、この場合、挿入損失、電圧定圧波比、及びインピーダンスの全てに関して、環状段部を設けていない図1乃至図3に示す構成よりも、かなり良好な結果が得られた。
[実施例2(二段)]
図9の(a)に示す環状金具40bを用いてシミュレーションを行った。図9の(b)は、この環状金具40bを用いた場合の、図3に相当する部分断面図である。図1乃至図3に示すものと異なり、環状金具40bでは、貫通穴45の内周面48に対向面44から対向面44の反対側の実装面43に向って複数の(ここでは二段の)環状段部51’、51”が設けられている。図8に示した実施例1との相違は、環状段部を複数、ここでは2個設けたことである。尚、これらの環状段部51’、51”のうち、対向面44に近い側の環状段部51’における空気層33の径49’は、対向面44から遠い側の環状段部51”における空気層33の径49”に比べて大きく設定されている。
図5乃至図7に示すように、この場合、環状段部を一段のみとした実施例1の構成と同様に、挿入損失、電圧定圧波比、及びインピーダンスの全てに関して、環状段部を設けていない図1乃至図3に示す構成よりも、かなり良好な結果が得られた。また、実施例1に比較して、若干、良好な値が得られた。
[実施例3(テーパー)]
図10の(a)に示す環状金具40cを用いてシミュレーションを行った。図10の(b)は、この環状金具40cを用いた場合の、図3に相当する部分断面図である。図1乃至図3に示すものと異なり、環状金具40cでは、貫通穴45の内周面48に、対向面44から対向面44の反対側の実装面43に向ってテーパー部52が設けられている。尚、テーパー部52における内径は、対向面44から遠い側から対向面44に近い側に向って大きく設定されている。この結果、対向面44付近における環状金具40cの空気層33の径49’は、対向面44から離れた位置における環状金具40cの空気層33の径49に比べて大きくなっている。
図5乃至図7に示すように、この場合、実施例1、2と同様に、挿入損失、電圧定圧波比、及びインピーダンスの全てに関して、環状段部を設けていない図1乃至図3に示す構成よりも、良好な結果が得られた。また、実施例1に比較して、若干、良好な結果が得られたが、その値は、実施例2と拮抗するものであった。
[実施例4(スリット)]
図11の(a)に示す環状金具40dを用いてシミュレーションを行った。図11の(b)は、この環状金具40dを用いた場合の、図3に相当する部分断面図である。図1乃至図3に示すものと異なり、環状金具40dでは、対向面44において環状金具40dの貫通穴45の中心から環状金具40dの外部に向って複数の溝(スリット)部60を設けている。更に言えば、溝部60は、環状金具40dの貫通穴45の中心から放射状に且つ等間隔に複数設けられており、これにより、環状金具40dの対向面44に複数の略扇部61が形成されている。この結果、対向面44付近における環状金具40dの空気層33の所定部分における径49’は、対向面44から離れた位置における環状金具40dの空気層33の径49に比べて大きくなっている。
図5乃至図7に示すように、この場合、実施例1、2と同様に、挿入損失、電圧定圧波比、及びインピーダンスの全てに関して、環状段部を設けていない図1乃至図3に示す構成よりも、良好な結果が得られた。但し、実施例1乃至3と比較すると、若干、劣るものであった。
[比較例(段なし)]
比較例として、図1乃至図3に示した環状金具40を用いてシミュレーションを行った。この環状金具40には、実施例のように、環状金具の内径について特別な加工は施していない。よって、対向面44付近における環状金具40の空気層33の径49と、対向面44から離れた位置において環状金具40の空気層33の径49は等しい。
図5乃至図7に示すように、この場合、挿入損失、電圧定圧波比、及びインピーダンスの全てに関して、実施例1乃至4よりも悪い結果しか得られなかった。
[考察]
図5乃至図7より明らかなように、環状金具に所定の加工を施した実施例1乃至4では、比較例に比べて、挿入損失、電圧定在波比、及びインピーダンスの全ての点において良好な結果が得られた。よって、対向面44付近における環状金具(40a〜d)の空気層33の径(49)が、対向面44から離れた位置における環状金具(40a〜d)の空気層33の径(49)に比べて大きく設定されている場合には、一般に、良好な値が得られる傾向があることが明らかとなった。
高周波特性は中心導体の外径と外部導体の内径とその間にある絶縁材の誘電率で決まることから、外部導体の内径が変化する箇所は誘電率の変化点になると考えられ、このような変化点に誘電率の安定した空気層を形成し得る段差等を設けたことで、変化量が緩やかになり、インピーダンスの不整合が抑えられたものと推察される。
尚、特に詳細は示さないが、実施例1乃至4の形態を適当に組み合わせても、同様に良好な結果が得られた。よって、本願発明は、これらの変形例をも当然に包含するものである。
インピーダンス特性の改善が所望される様々な状況で、本発明の同軸コネクタの利用が見込まれる。
1 同軸コネクタ
10 外部導体
11 本体部
12 基板実装部
13 実装面
15 連通穴
18 係止部
19 係止部
20 中心導体
24 外面
29 外径
30 絶縁部材
33 空気層
35 保持孔
40 環状金具
43 実装面
44 対向面
45 貫通穴
48 内周面

Claims (9)

  1. 同軸コネクタであって、
    基板実装部と、該基板実装部から軸方向に垂設した筒状の本体部と、を有する外部導体であって、前記基板実装部と前記本体部を連通する連通穴を有する、前記外部導体と、
    前記外部導体の連通穴に収容される絶縁部材と、
    前記絶縁部材によって支持され、前記外部導体の連通穴の内部に前記軸方向に沿って配置される中心導体と、
    前記軸方向と直交する径方向に延びる面内に前記絶縁部材の少なくとも一部と対向する対向面を有し前記絶縁部材に対して前記基板実装部の側において前記外部導体の連通穴に収容される、貫通穴を有する環状金具と、
    を備え、
    前記絶縁部材に支持された前記中心導体は、前記環状金具の貫通穴を前記軸方向に沿って貫通しており、前記中心導体の外面と前記貫通穴の内周面との間に前記径方向に拡がる空気層が形成されており、
    前記対向面付近における前記環状金具の前記空気層の径が、前記対向面から離れた位置における前記環状金具の前記空気層の径に比べて大きく設定されていることを特徴とする同軸コネクタ。
  2. 前記環状金具の貫通穴の内周面に前記対向面から前記対向面の反対側の面に向って環状段部を設けることにより、前記対向面付近における前記環状金具の前記空気層の径が、前記対向面から離れた位置における前記環状金具の前記空気層の径に比べて大きく設定されている請求項1に記載の同軸コネクタ。
  3. 前記環状金具の貫通穴の内周面に前記対向面から前記対向面の反対側の面に向って複数の前記環状段部を設けることにより、前記対向面付近における前記環状金具の前記空気層の径が、前記対向面から離れた位置における前記環状金具の前記空気層の径に比べて大きく設定されており、複数の前記環状段部のうち、前記対向面に近い側の環状段部における前記空気層の径は、前記対向面から遠い側の環状段部における前記空気層の径に比べて大きく設定されている請求項2に記載の同軸コネクタ。
  4. 前記環状金具の貫通穴の内周面に前記対向面から前記対向面の反対側の面に向ってテーパー部を設けることにより、前記対向面付近における前記環状金具の前記空気層の径が、前記対向面から離れた位置における前記環状金具の前記空気層の径に比べて大きく設定されており、前記テーパー部における前記空気層の径は、前記対向面から遠い側から前記対向面に近い側に向って大きく設定されている請求項1に記載の同軸コネクタ。
  5. 前記対向面において前記環状金具の貫通穴の中心から前記環状金具の外部に向って複数の溝部を設けることにより、少なくとも前記複数の溝部において、前記対向面付近における前記環状金具の前記空気層の径が、前記対向面から離れた位置における前記環状金具の前記空気層の径に比べて大きく設定されている請求項1に記載の同軸コネクタ。
  6. 前記溝部は、前記環状金具の貫通穴の中心から放射状に複数設けられ、前記環状金具の対向面に複数の略扇部が形成されている請求項5に記載の同軸コネクタ。
  7. 前記中心導体は、前記本体部から前記基板実装部に向う方向において、前記環状金具以上に突出した状態で設けられており、
    前記環状金具は、前記本体部から前記基板実装部に向う方向において、前記基板実装部以上に突出した状態で設けられている、
    請求項1乃至6のいずれかに記載の同軸コネクタ。
  8. 前記環状金具はその素材よりも導電性の高いメッキが施されている請求項1乃至7のいずれかに記載の同軸コネクタ。
  9. 前記外部導体の連通穴には、
    前記外部導体の連通穴に収容された前記絶縁部材を係止する係止部と、
    前記外部導体の連通穴に収容された前記環状金具を係止する係止部と、が設けられている請求項1乃至8のいずれかに記載の同軸コネクタ。
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