JP2015147967A - 高強度冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低いMn含有量で440MPa以上の引張強さとともに、優れた加工性、特に優れた曲げ加工性を有し、材質安定性に優れた高強度冷延鋼板を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.03%以上0.15%以下、Si:1.5%以下、Mn:0.6%以下、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.08%以下、N:0.0080%以下、Ti:0.04%以上0.18%以下を含有する組成を有し、フェライト相の面積率が90%以上、コイル面内における該フェライト相の面積率のばらつきが3%以下、前記フェライト相に対する加工フェライトの面積率が15%以下、前記フェライト相の結晶粒内のTiを含む炭化物の平均粒子径が10nm以下、含有するTi量に対しマトリックス中に固溶状態として存在するTi量の割合が10%未満である高強度冷延鋼板。【選択図】なし

Description

本発明は、自動車用部材の使途に有用な、引張強さ(TS)が440MPa以上の高強度と優れた加工性、特に優れた曲げ性を兼ね備えた高強度冷延鋼板およびその製造方法に関する。
近年地球環境保全の観点から、CO排出量削減のため自動車業界全体で自動車の燃費改善が指向されている。自動車の燃費改善には、使用部材の薄肉化(板厚減少)による自動車車体の軽量化が最も有効である。このため、自動車用部材に使用される鋼板については、高強度化して鋼板板厚を減少することが検討されており、軽量化と安全性を両立する高強度冷延鋼板の使用量は年々増加しつつある。自動車車体の軽量化と強化を同時に満たすには、剛性が問題とならない範囲で部材素材を薄肉化することが有効であり、薄肉した部材素材の安全性を保証するには鋼板の高強度化が有効である。軽量化効果は、使用する鋼板が高強度であるほど大きくなる。
一方、鋼板を素材とする自動車部品の多くは、プレス加工によって成形される。鋼板の高強度化にともない、割れ、しわ、寸法精度といった成形性が劣位となる。割れやしわは鋼板の延性や表面性状等に関係し、寸法精度はスプリングバック量と相関が強い降伏強度に関係がある。割れやしわを抑制できる加工性の良い高強度冷延鋼板が求められている。
また、近年のCAE(Computer Assisted Engineering)技術の発達により高強度鋼板の成形技術が向上してきた。しかしながら、鋼板の材質ばらつきが大きい場合にはCAEによる予測精度が低下し、寸法精度良く成形することができなくなる。このような背景から、加工性に優れるとともに、材質安定性にも優れた高強度冷延鋼板が求められている。
以上から、高強度冷延鋼板を自動車部品等に適用するうえでは、強度と加工性、材質安定性とを両立させることが必須である。高強度化や成形性を向上させる技術は現在までに様々なものが提案されている。
例えば、特許文献1には、鋼板組成を質量%で、C:0.001〜0.2%、N:0.0001〜0.2%、C+N:0.002〜0.3%、Si:0.001〜0.1%、Mn:0.01〜1%、Ti:0.001〜0.1%、Nb:0.001〜0.1%を含有し、鋼中に直径1〜10nmの微細析出物を1×1017個/cm以上の密度で含むことを特徴とする常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板を製造する技術が提案されている。特許文献1に提案された技術によると、微細析出物としてCまたはNを固定し、塗装焼付工程時に固定したCおよびNを脱離、拡散させることにより常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板が得られるとしている。
また、特許文献2には、鋼板組成を質量%で、C:0.01%超〜0.1%、Si:0.3%以下、Mn:0.2〜2.0%、N:0.006%以下、Ti:0.03〜0.2%を含有し、Mo:0.5%以下およびW:1.0%以下のうち1種以上を含み、組織が実質的にフェライト単相で、原子比で0.5≦C/(Ti+Mo+W)≦1.5を満たす10nm未満の炭化物が分散していることを特徴とする加工性に優れた高張力冷延鋼板を製造する技術が提案されている。特許文献2によると、転位密度が低く加工性が良好なフェライト組織に微細に析出するTi、MoおよびWの1種以上を含む炭化物を分散させることにより、加工性と強度を両立させた鋼板が得られるとしている。
特許文献3には、鋼板組成を質量%で、C:0.01〜0.10%、Mn:0.10〜3.00%、Ti:0.03〜0.15%を含有し、Si:2.50%以下、N:0.0060%以下、Nb:0.03%以下、Mo:0.25%以下、V:0.25%以下に制限し、TiおよびNb、Mo、Vの含有量を調節し、Ti系炭窒化物の粒子径が1〜50nmであり、フェライトの面積率が95%以上であり、該フェライトの平均粒径を20μm以下に制限し、該フェライトに占める該未再結晶フェライトの割合を25%以下に制限したことを特徴とする析出強化型冷延鋼板を製造する技術が提案されている。特許文献3によると、冷間圧延前にTiの固溶を促進し、冷間圧延後の焼鈍時にTiの微細な炭窒化物を析出させ、伸びフランジ性が良好な鋼板が得られるとしている。
特開2003−253378号公報 特開2003−321732号公報 特開2010−285656号公報
しかしながら、特許文献1で提案された技術では150〜200℃の塗装焼付温度で析出物を鋼中に溶解し、CおよびNを脱離させる必要があるため、多量にTiおよびNbを含有させることはできず高強度の鋼板は得られない。
特許文献2で提案された技術では、実施例を参照すると、加工性を低下させるMnを多量に含有しているため、本発明で求める加工性を安定的に発現させるのが困難であるという問題がある。さらに、焼鈍工程での再結晶を阻害させるMoおよびWを多量に含むため、加工フェライト組織が残存しやすく加工性が低下するという問題もある。特許文献3で提案された技術でも特許文献2と同様に、加工性を低下させるMnを多量に含有している。
以上のように、従来技術では低いMn含有量で高強度の冷延鋼板を得ることができず、良好な加工性を有する高強度冷延鋼板を得ることができない。本発明はかかる事情を鑑みてなされたものであって、440MPa以上の引張強さとともに、優れた加工性、特に優れた曲げ加工性を有し、材質安定性に優れた高強度冷延鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、加工性と材質安定性を両立させるべく軟質なフェライト単一組織に着目した。その結果、本発明者らは、安定的に加工性を良好なものとするには、固溶強化および偏析により延性を低下させるMn含有量を制限する必要があることを知見した。
従来、高強度鋼板を得るにあたっては、Mnを多量に添加し、Mnの固溶強化により強度を得ていた。したがって、Mn含有量を従来に比べて低く制限するには、高強度化が課題であった。発明者らはこのような課題に対し、フェライト粒内に炭化物を微細分散させて強度を得る、粒子分散強化機構に着目して鋭意検討した。
微細な炭化物が分散した鋼であると、低い焼鈍温度では、粒界のピン止め効果により再結晶組織を得ることができず、加工性が著しく損なわれる。一方で、高い焼鈍温度では、炭化物が粗大化するため所望の高強度鋼板を得ることが困難である。この問題を解決するため、焼鈍中の炭化物粗大化挙動に着目して検討を行ったところ、逆変態したオーステナイト中での炭化物の粗大化速度は、フェライト中の粗大化速度よりも大きいことが判明した。焼鈍温度に対する回復、再結晶挙動を詳細に調査した結果、500℃以上であれば、転位密度が減少し始め、回復、再結晶が開始されることを見出した。そこで、次の2点により材質の安定性と加工性の両立を図った。
1)微細炭化物の粗大化を抑制するためには、逆変態前のフェライト中で回復、再結晶を促進させることが望ましい。そのため、焼鈍工程での昇温速度を遅くすることで逆変態前に回復、再結晶を促進させることが可能となる。転位の消滅は500℃以上から開始されるため、特に500℃以上での昇温速度の制御が重要となる。
2)さらに逆変態前で回復、再結晶させるには、Ac1点を上昇させることも有効である。Ac1点上昇させるにはSiおよびCrの添加が有効である。
本発明は上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は次のとおりである。
[1]質量%で、
C:0.03%以上0.15%以下、
Si:1.5%以下、
Mn:0.6%以下、
P:0.05%以下、
S:0.01%以下、
Al:0.08%以下、
N:0.0080%以下、
Ti:0.04%以上0.18%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、フェライト相の面積率が90%以上、コイル面内における該フェライト相の面積率のばらつきが3%以下、前記フェライト相に対する加工フェライトの面積率が15%以下、前記フェライト相の結晶粒内のTiを含む炭化物の平均粒子径が10nm以下、含有するTi量に対しマトリックス中に固溶状態として存在するTi量の割合が10%未満であることを特徴とする、高強度冷延鋼板。
[2]前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:0.01%以上1.0%以下を含有することを特徴とする、前記[1]に記載の高強度冷延鋼板。
[3]前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca、Mg、REMの1種または2種以上を合計で0.0001%以上0.2%以下含有することを特徴とする、前記[1]または[2]に記載の高強度冷延鋼板。
[4]前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.01%以上0.2%以下、Nb:0.01%以上0.05%以下、Mo:0.01%以上0.05%以下、W:0.01%以上0.05%以下、Hf:0.01%以上0.05%以下、Zr:0.01%以上0.1%以下、Co:0.0001%以上0.1%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする、前記[1]ないし[3]のいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板。
[5]鋼板表面にめっき層を有することを特徴とする、前記[1]ないし[4]のいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板。
[6]前記めっき層が亜鉛めっき層であることを特徴とする、前記[5]に記載の高強度冷延鋼板。
[7]前記めっき層が合金化亜鉛めっき層であることを特徴とする、前記[5]に記載の高強度冷延鋼板。
[8]鋼素材に、粗圧延と仕上げ圧延からなる熱間圧延を施し、仕上げ圧延終了後、冷却して巻き取り、冷間圧延し、焼鈍することで冷延鋼板とするにあたり、前記鋼素材を、質量%で、C:0.03%以上0.15%以下、Si:1.5%以下、Mn:0.6%以下、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.08%以下、N:0.0080%以下、Ti:0.04%以上0.18%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とし、前記粗圧延に供する鋼素材の温度を1100℃以上1350℃以下とし、前記仕上げ圧延の仕上げ圧延温度を820℃以上とし、前記冷却を仕上げ圧延終了後2秒以内に開始し、前記冷却の平均冷却速度を20℃/s以上とし、前記巻き取りの巻取り温度を400℃以上700℃以下とし、前記冷間圧延の冷間圧延率を30%以上90%以下とし、前記焼鈍を、500℃から最高到達温度までの平均昇温速度を7℃/s以下、焼鈍温度を700℃以上850℃以下とすることを特徴とする、高強度冷延鋼板の製造方法。
[9]前記鋼素材が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:0.01%以上1.0%以下を含有する組成とすることを特徴とする、前記[8]に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
[10]前記鋼素材が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca、Mg、REMの1種または2種以上を合計で0.0001%以上0.2%以下含有することを特徴とする、前記[8]または[9]に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
[11]前記鋼素材が、前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.01%以上0.2%以下、Nb:0.01%以上0.05%以下、Mo:0.01%以上0.05%以下、W:0.01%以上0.05%以下、Hf:0.01%以上0.05%以下、Zr:0.01%以上0.1%以下、Co:0.0001%以上0.1%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする、前記[8]ないし[10]のいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
[12]前記焼鈍温度での焼鈍の後、めっき処理を施すことを特徴とする、前記[8]ないし[11]のいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
[13]前記めっき処理が、亜鉛めっき処理であることを特徴とする、前記[12]に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
[14]前記めっき処理が、合金化亜鉛めっき処理であることを特徴とする、前記[12]に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
本発明によると、引張強さ:440MPa以上であり且つ加工性、材質安定性に優れた高強度冷延鋼板が得られ、自動車の構造部材等の使途に好適であり、かつ自動車部材の軽量化や自動車部材成形を可能とする等の効果を奏する。また、加工性を兼ね備えた引張強さ:440MPa以上の高強度冷延鋼板が得られることから、高強度冷延鋼板の更なる用途展開が可能となり、産業上格段の効果を奏する。
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の冷延鋼板の成分組成の限定理由について説明する。なお、以下の成分組成を表す%は、特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.03%以上0.15%以下
Cは、Tiと結合し炭化物として鋼板中に微細分散する。また、さらにVやNbを添加した場合、あるいは更にMo、W、Zr、Hfを添加した場合、これら元素とも結合し、炭化物として鋼板中に微細分散する。すなわちCは、微細な炭化物を形成してフェライト組織を著しく強化させる元素である。Cは鋼板を強化する上で必須の元素であり、引張強さ440MPa以上を確保するには、C含有量は0.03%以上とする必要があり、0.04%以上とすることが好ましい。さらに、炭化物形成に関与しなかったCは、熱延板ではパーライトを形成し再結晶を促進させる効果もある。このような効果を得るには、Cは炭化物構成元素であるTiの含有量、さらにはV、Nb、Mo、W、Zr、Hfを添加した場合には、これら元素の含有量に対し、原子比にして過剰に含有させることが望ましく、下記式(1)を満たすことが好ましい。より好ましくは、式(1)の左辺は1.5以上である。なお、式(1)中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を表す。一方、C含有量が0.15%を超えると、フェライト粒界に、フィルム状のセメンタイトの他に加工性を著しく低下させる粒状のセメンタイトやパーライトが生成する。このため、C含有量は0.15%以下とする。好ましくは0.14%以下である。
(C/12)/{(Ti/48)+(V/51)+(Nb/93)+(Mo/96)
+(W/184)+(Hf/176)+(Zr/91)}≧1.2・・・(1)
Si:1.5%以下
Siは、冷間圧延後、焼鈍工程での逆変態温度(Ac1点)を上昇させ、逆変態で生じるオーステナイト相の生成を抑制する。オーステナイト中での炭化物は粗大化しやすいため、Siは焼鈍工程での炭化物粗大化抑制に寄与し、高強度化させる元素として有効である。この効果を得るためには、Si量を0.1%以上とすることが好ましい。一方で、Siは、鋼板表面に濃化し易く、鋼板表面にファイヤライト(FeSiO)を形成し、鋼板の表面性状を低下させる。このファイヤライトは鋼板表面に楔形となって形成するため、鋼板の加工性をさせ、特に曲げ加工時の亀裂発生の起点となり、曲げ加工性を低下させる。したがって、本発明ではSi含有量の上限を1.5%とする必要がある。好ましくは、1.0%以下である。
Mn:0.6%以下
Mnは固溶強化元素として鋼板を強化する一方で、延性を低下させる元素である。さらには、不可避的に生じる板厚中央付近での偏析により著しく加工性を低下させる。本発明では、安定的に良好な加工性を得るために、極力Mn量を低減する。安定的に加工性を良好なものとするには、Mn量は0.6%以下とする必要があり、好ましくは0.5%未満である。なお、Mn含有量は不純物レベルまで低減してもよい。
P:0.05%以下
Pは粒界に偏析して加工時に粒界割れの起点となり、加工性を劣化させるが、このようなPの影響は、0.05%までは許容できる。このため、P含有量は0.05%以下とする。好ましくは、P含有量は0.03%以下であり、極力低減することが好ましい。P含有量は不純物レベルまで低減してもよい。
S:0.01%以下
Sは、鋼中でMnSなどの介在物として存在する。この介在物は熱間圧延中に伸展し、伸展した介在物は加工時に割れの起点となるため加工性を低下させるが、このようなSの影響は、0.01%までは許容できる。このため、S含有量は0.01%以下とする。好ましくは、S含有量は0.008%以下であり、極力低減することが好ましく、S含有量は不純物レベルまで低減してもよい。
Al:0.08%以下
Alは、脱酸剤として作用する元素である。このような効果を得るためにはAl量は0.02%以上とすることが好ましい。一方で、Alは酸化物等の介在物を形成し、加工時にボイドの起点となるため加工性を低下させるが、Al含有量は0.08%までは許容できる。このため、Al量の上限を0.08%とする。好ましくは、Al量は0.06%以下である。
N:0.0080%以下
Nは製鋼、連続鋳造の段階でTiと結合しTiNを形成する。この際析出するTiNは粗大であるため、鋼板の強化に寄与せず、加工時にボイド生成の起点となるため鋼板の加工性に悪影響をもたらす。このため、Nは極力低減させることが望ましいが、0.0080%までは許容できるため、本発明でのN含有量の上限を0.0080%とする。好ましくは、N含有量は0.0060%以下である。N含有量は極力低減させることが好ましい。
Ti:0.04%以上0.18%以下
Tiは、Cと炭化物を形成して鋼板の高強度化に寄与する元素である。特に本発明では固溶強化元素であるMnを低減しているため、所望の鋼板強度を得るにはTiを添加して、Tiを含む炭化物を微細に分散させる必要がある。Ti含有量が0.04%を下回ると所望の鋼板強度(引張強さ:440MPa以上)が得られなくなるため、Ti含有量の下限を0.04%とする。好ましくは、Ti含有量は0.05%以上である。一方、Ti含有量が0.18%を超えると、鋼板を製造する際、熱間圧延前のスラブ加熱によって粗大なTi炭化物を溶解することができず、高強度化の効果が飽和するばかりか、粗大なTi炭化物は曲げ加工時にボイドの起点となり、加工性が低下する。このため、Ti含有量の上限を0.18%とする。好ましくは、Ti含有量は0.17%以下である。したがって、Ti含有量は0.04%以上0.18%以下とし。好ましくは0.05%以上0.17%以下である。特に、引張強さ:590MPa以上の鋼板を得る場合には、Ti含有量は0.09%以上0.18%以下とすることが望ましい。
以上が、本発明における基本組成であり、残部はFeおよび不可避的不純物である。本発明では、上記した基本組成に加えて、さらに目的に応じて、以下の成分を加えてもよい。
Cr:0.01%以上1.0%以下
CrはSiと同様、Ac1点を上昇させ、炭化物の粗大化の抑制に寄与する元素である。この効果を得るためには、少なくとも0.01%以上添加する必要があり、0.05%以上添加することが好ましい。さらに好ましくは、Cr量は0.1%以上である。Crを多量添加すると耐食性が低下し、孔食による不具合の原因となる。そのため、Cr量の上限は1.0%とした。好ましくは、Cr量は0.8%以下である。
Ca、Mg、REMの1種または2種以上を合計で0.0001%以上0.2%以下
Ca、Mg、REM(REM:スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)および原子番号57から71までのランタノイド元素)は介在物の形態を制御し、介在物から発生するボイドを抑制するのに有効な元素である。このような効果を得るには少なくともCa、Mg、REMの1種または2種以上を合計で0.0001%以上を添加する必要がある。一方で、これらの元素の含有量の合計が0.2%を超えると、上記効果が飽和するため、Ca、Mg、REMの1種または2種以上の合計量の上限を0.2%とした。好ましい範囲はCa、Mg、REMの1種または2種以上を合計で0.0005%以上0.1%以下である。
V:0.01%以上0.2%以下、Nb:0.01%以上0.05%以下、Mo:0.01%以上0.05%以下、W:0.01%以上0.05%以下、Hf:0.01%以上0.05%以下、Zr:0.01%以上0.1%以下、Co:0.0001%以上0.1%以下の1種または2種以上
VおよびNb、Mo、W、Hf、Zr、Coは微量添加で鋼板強度を上昇させるのに有効な元素である。鋼板強度を上昇させるには、VおよびNb、Mo、W、Hf、Zrはそれぞれ0.01%以上、Coは0.0001%以上を添加する必要がある。一方で、Vは炭化物を粗大化させやすく0.2%を超える含有は強化に対する効果が飽和、もしくは含有量の増量につれ強度が低下する。以上からV含有量の上限を0.2%とする。好ましいV含有量の上限は0.15%である。Nbは再結晶時にsolute drag効果により粒界移動を阻害させ加工フェライト粒が残存しやすくなり、この加工フェライト粒は加工性を低下させることとなる。0.05%以下のNb含有量であれば上記悪影響は顕在化しないため、Nb含有量の上限を0.05%とする。望ましいNb含有量の上限は0.04%である。Zr、Coの含有量がそれぞれ0.1%、Mo、W、Hfの含有量がそれぞれ0.05%を超えると加工性に悪影響をもたらすため、Zr、Coの含有量の上限はそれぞれ0.1%、Mo、W、Hfの含有量の上限はそれぞれ0.05%とした。特にMo、W、Hf、Zrは再結晶を阻害させやすい元素であるため、Mo、W、Hf、Zrを2種以上含有させる場合には、これらの元素の含有量を合計で0.1%以下とすることが好ましい。
次に、本発明鋼板の組織の限定理由について説明する。
フェライト相の面積率が90%以上
冷延、再結晶焼鈍後の冷延鋼板のマトリックスは、加工性に優れたフェライト単相組織とすることが好ましい。ベイナイト相やマルテンサイト相、残留オーステナイト等のフェライト相と硬度が異なる、フェライト以外の組織である第二相組織が鋼板組織に混入すると、フェライト相と第二相組織との界面で加工時に応力集中が生じ、割れ等の欠陥が発生することとなる。また、ベイナイト相やマルテンサイト相は延性に乏しいためベイナイト相もしくはマルテンサイト相の単相組織では所望の加工性が得られない。本発明鋼においてフェライト相の面積率は90%以上とすることで、優れた加工性を得ることができるため、フェライト相の面積率下限を90%とした。好ましくは95%以上である。
コイル面内におけるフェライト相の面積率のばらつきが3%以下
強度や延性といった材質を安定化させるには、コイル面内での金属組織を安定化させることが有効となる。フェライト相の面積率のばらつきが大きい場合には、硬質な第二相の面積率のばらつきが大きくなり、強度や延性にばらつきが生じる。所望の特性を得るには、該フェライト相の面積率のばらつきは3%以下である必要がある。好ましくは、2%以下である。ここで、フェライト相の面積率のばらつきは、コイル面内におけるフェライト相の面積率のばらつきであり、次のようにして求める。
すなわち、面積率のばらつきを評価する材料のコイル位置(評価する材料の採取位置)は、コイル状に巻き取った鋼板のコイル内周および外周の1巻き分を除き、鋼板の長手方向に対し20等分割し、幅方向に対し1/4、1/2、3/4の位置とする。このような位置から採取した各々の材料について、フェライト相の面積率を求める。コイル面内におけるフェライト相の面積率のばらつきは、このようにして求めたフェライト相の面積率の標準偏差に2を乗じた値とする。
なお、フェライト相の平均結晶粒径は、10μm以下とすることが好ましい。再結晶後のフェライト粒径は鋼中に分散する炭化物の大きさと相関を持つ。フェライト相の平均結晶粒径が10μmを超える場合には、炭化物が過度に粗大化しピン止め効果が低下したことを意味する。所望の炭化物の平均粒子径を得るには、該フェライト相の平均結晶粒径が10μm以下であることが望ましい。さらに望ましくは、8μm以下である。
フェライト相に対する加工フェライトの面積率が15%以下
冷間圧延後には、鋼板全体が加工された組織となる。この組織は粒内に多量の転位を含むため延性が著しく乏しく加工性を低下させる。加工フェライトの面積率は15%以下であれば加工性への悪影響が顕在化せず、延性のばらつきが許容される範囲となる。望ましくは10%以下である。なお、ここで加工フェライトの面積率は、フェライト相に対する加工フェライトの面積率であり、フェライト相全体に占める加工フェライトの面積率である。
フェライト相の結晶粒内のTiを含む炭化物の平均粒子径が10nm以下
固溶強化元素であるMnを低減したため、本発明鋼では粒子分散強化による強化量を最大限高める必要がある。粒子分散強化による強化量は炭化物の析出量の他に炭化物の粒子径が重要な要素となる。炭化物の微細化により鋼板強度は著しく上昇するため、所望の鋼板強度を得るには、フェライト相の結晶粒内の炭化物平均粒子径は10nm以下とする必要がある。この微細に析出する炭化物はTiを含む組成であるが、Tiの他にV、Nb、Mo、W、Hf、Zr、N、Alを含んでいても良い。
含有するTi量に対しマトリックス中に固溶状態として存在するTi量の割合が10%未満
前述のように、粒子分散強化による強化量は炭化物の析出量にも関係する。焼鈍後の冷延鋼板中に強化に寄与しない固溶状態にあるTi量が多量に残存した状態であると、鋼板強度が低下する。含有するTi量に対しマトリックス中に固溶状態として存在するTi量の割合が10%未満であれば、上記の悪影響が顕在化しない。このため、含有するTi量に対しマトリックス中に固溶状態として存在するTi量の割合は10%未満とする。望ましくは5.5%以下である。
次に、本発明の冷延鋼板の製造方法について説明する。本発明の冷延鋼板は、鋼素材に、粗圧延と仕上げ圧延からなる熱間圧延を施し、仕上げ圧延終了後、冷却し、巻き取り、冷間圧延し、焼鈍する工程により製造される。
本発明は、上記した組成の鋼素材(鋼スラブ)を用い、鋼素材の温度を1100℃以上1350℃以下として、該温度の鋼素材を熱間圧延に供し、仕上げ圧延の仕上げ圧延温度を820℃以上として熱間圧延を施し、仕上げ圧延終了後から2秒以内に平均冷却速度が20℃/s以上の冷却を開始し、巻取り温度を400℃以上700℃以下として巻取り、冷間圧延率が30%以上90%以下の冷間圧延を施し、500℃から最高到達温度までの平均昇温速度を7℃/s以下、焼鈍温度を700℃以上850℃以下とする焼鈍を行うことを特徴とする。
本発明において、鋼の溶製方法は特に限定されず、転炉、電気炉等、公知の溶製方法を採用することができる。また、真空脱ガス炉にて2次精錬を行ってもよい。その後、生産性や品質上の問題から連続鋳造法によりスラブ(鋼素材)とするのが好ましいが、造塊−分塊圧延法、薄スラブ連鋳法等、公知の鋳造方法でスラブとしても良い。
鋼素材の温度:1100℃以上1350℃以下
上記の如く得られた鋼素材に、粗圧延および仕上げ圧延からなる熱間圧延を施す。通常、熱間圧延に先立ち鋼素材は加熱され、粗圧延および仕上げ圧延が施される。本発明においては、粗圧延に先立ち鋼素材を加熱して、実質的に均質なオーステナイト相とし、鋼素材中の粗大な炭化物を溶解する必要がある。粗圧延に供する鋼素材の温度、すなわち鋼素材を加熱する場合は鋼素材の加熱温度(以下、単に加熱温度ともいう)が1100℃未満では、粗圧延前に鋼素材中の粗大な炭化物が溶解せず、冷間圧延、焼鈍後に得られる微細分散する炭化物の量が少なく、鋼板強度が著しく低下する。一方、上記鋼素材の温度(加熱温度)が1350℃を超えると、鋼素材表面に生成するスケール量が多く、熱間圧延中にスケールが噛み込みやすく、鋼板表面性状を悪化させる。以上の理由により、粗圧延に供する鋼素材の温度(加熱温度)は、1100℃以上1350℃以下とする。好ましくは1150℃以上1300℃以下である。ただし、鋼素材に熱間圧延を施すに際し、鋳造後の鋼素材が1100℃以上1350℃以下の温度域にある場合、或いは鋼素材の炭化物が溶解している場合には、鋼素材を加熱することなく直送圧延してもよい。なお、粗圧延条件については特に限定されない。
仕上げ圧延温度:820℃以上
仕上げ圧延温度(以下、仕上げ圧延終了温度ともいう)が820℃未満となると、熱間圧延中、鋼板の一部が変態を開始し、コイル面内の強度、すなわち鋼板の長手方向および幅方向に対する強度が著しく不均一となる。このような鋼板を冷間圧延すると、鋼板が冷間圧延中に破断したり、形状が著しく不均一になり加工性が低下する問題が生じる。そのため、仕上げ圧延温度は820℃以上とする。仕上げ圧延温度の上限は特に定めないが、操業を安定させるには仕上げ圧延温度は1000℃以下が望ましい。
仕上げ圧延終了後の冷却を開始するまでの時間:2秒以内
仕上げ圧延直後の高温状態の鋼板においては、オーステナイト相に蓄積されたひずみエネルギーが大きいため、ひずみ誘起析出による炭化物が生じる。この炭化物は、高温で析出するため粗大化し易い。本発明では、生成した炭化物は巻取工程ならびに焼鈍工程で粗大化する一方であるため、巻取り前には、できる限り粗大な炭化物の生成は抑える必要がある。本発明では、仕上げ圧延終了後なるべく早く強制冷却を開始して、粗大な炭化物の生成を抑制する。このため、仕上げ圧延終了後、少なくとも2秒以内に冷却を開始する。好ましくは1.5秒以内である。
平均冷却速度:20℃/s以上
上記したように、仕上げ圧延終了後の鋼板が高温に維持される時間が長いほど、ひずみ誘起析出による炭化物の粗大化が進行し易くなる。このような炭化物の粗大化を回避するため、仕上げ圧延後は急冷する必要があり、20℃/s以上の平均冷却速度で冷却する必要がある。好ましくは40℃/s以上である。但し、仕上げ圧延終了後の冷却速度が過剰に大きくなると、巻取り温度の制御が困難となり安定した強度が得られにくくなるという問題が懸念されるため、150℃/s以下とすることが好ましい。なお、ここで平均冷却速度は、仕上げ圧延温度終了温度から巻取り温度までの平均冷却速度である。
巻取り温度:400℃以上700℃以下
熱延板の組織はフェライト相とパーライトの混在組織とし、パーライトにより冷間圧延時にひずみエネルギーを上昇させ再結晶を促進させる必要がある。巻取り温度が400℃を下回ると、熱延板に十分にパーライトが生成せず、再結晶促進効果が得られない。一方、巻取温度が700℃を超えると析出した炭化物が粗大化し、所望の炭化物の粒子径ならびに鋼板強度が得られなくなる。したがって、巻取温度の範囲は400℃以上700℃以下とする。好ましくは500℃以上670℃以下である。
冷間圧延率:30%以上90%以下
冷間圧延率が30%を下回ると、操業上安定せず板形状が不均一になる。不均一な板形状であると加工性が低下し、材質ばらつきが増大するため、冷間圧延率は30%以上とする。好ましくは40%以上である。一方、冷間圧延率が90%を超えると、過度に鋼板が加工硬化し所望の板厚が得られなくなるため、冷間圧延率の上限は90%とする。好ましくは冷間圧延率は80%以下である。
500℃から最高到達温度までの平均昇温速度:7℃/s以下
本発明鋼では500℃以上の温度で冷間圧延時に導入された転位が回復、再結晶を開始する。極力低い温度で回復、再結晶させれば、炭化物の粗大化を抑制しつつ高い延性を保つことができる。さらに、極力低い温度から回復、再結晶を制御することにより、コイル面内での金属組織のばらつきを抑制することが可能である。このような効果を得るには500℃から最高到達温度までの平均昇温速度を7℃/s以下に抑えることが必要である。より材質安定性を向上させるには、5℃/s以下が望ましい。下限は特に設けないが、製造工程での効率の観点から、0.15℃/s以上とすることが望ましい。
焼鈍温度:700℃以上850℃以下
冷間圧延で導入された転位を取り除くため、実質的に加工フェライトを残存させず完全に再結晶させる必要がある。実質的に加工フェライトを残存させず完全に再結晶させるためには、700℃以上で焼鈍する必要がある。好ましくは、720℃以上である。一方で、上記したように昇温速度を制御したうえで、焼鈍温度が850℃を超えると、炭化物が粗大化し固溶Ti量が増加するため、鋼板強度が著しく低下する。したがって、焼鈍温度の上限を850℃とし、好ましくは、830℃とする。以上により、焼鈍温度は700℃以上850℃以下とする。好ましい焼鈍温度の範囲は720℃以上830℃以下である。なお、ここで焼鈍温度は、焼鈍中の鋼板温度の最高到達温度である。
本発明の冷延鋼板は、表面にめっき層を具えたとしても材質変動が極めて小さく鋼板強度や加工性を低下させない。そのため、表面にめっき層を具えることができる。めっき層を付与するには、上記焼鈍温度で焼鈍後、めっき処理を行えば良い。めっき層の種類は特に問わず、電気めっき層、無電解めっき層のいずれも適用可能である。また、めっき層の合金成分も特に問わず、溶融亜鉛めっき等の亜鉛めっき層、合金化溶融亜鉛めっき等の合金化亜鉛めっき層などが好適な例として挙げられる。なお、めっき層の合金成分、めっき層の種類などはこれらに限定されず、従前公知のものがいずれも適用可能である。
表1に示す組成を有する肉厚250mmの鋼素材(鋼スラブ)を、表2に示すスラブ加熱温度に加熱した後、表2に示す熱延条件で熱延板とし、表2に示す条件の冷間圧延を施し、連続焼鈍ラインもしくは連続溶融めっきラインにて冷延鋼板とした。表面にめっき層を具えない“裸材”は連続焼鈍ラインで製造し、溶融亜鉛めっき層を具えた“GI材”、もしくは合金化溶融亜鉛めっき層を具えた“GA材”は連続溶融めっきラインにて製造した。連続溶融めっきラインで浸漬するめっき浴(めっき組成:Zn−0.13質量%Al)の温度は460℃であり、GA材はめっき浴に浸漬後、520℃で合金化処理を施した。めっき付着量はGI材、GA材ともに片面当たり45〜65g/mとした。なお、表2に記載の冷却速度は、仕上げ圧延終了温度から巻取り温度までの平均冷却速度であり、平均昇温速度は500℃から焼鈍温度までの平均昇温速度であり、焼鈍温度は焼鈍中の鋼板温度の最高到達温度である。
上記により得られた冷延鋼板から試験片を採取し、組織観察、引張試験を行い、フェライト相の面積率、フェライト相の平均結晶粒径、加工フェライトの面積率、Tiを含む炭化物の平均粒子径、降伏強度、引張強さ、伸び、限界曲げ半径等を求めた。試験方法は次のとおりとした。
(i)組織観察
フェライト相の面積率は以下の手法により評価した。冷延、焼鈍後のコイル状に巻き取った冷延鋼板を巻き戻し、長手方向に対し20等分割し、幅方向に対し1/4、1/2、3/4の位置から評価に供するサンプルを63枚採取した。ただし、長手方向の評価位置において、コイル状に巻き取った鋼板のコイル内周および外周の1巻き分は含まない。各々のサンプルの圧延方向に平行な断面の板厚中心部について、5%ナイタールによる腐食現出組織を走査型光学顕微鏡で400倍に拡大して10視野分撮影した。フェライト相は粒内にラス状の形態やセメンタイトが観察されない形態を有する組織である。また、ポリゴナルフェライト、ベイニティックフェライト、アシキュラーフェライトおよびグラニュラーフェライトをフェライトとして面積率や粒径を求めた。フェライト相の面積率は画像解析によりベイナイト相やマルテンサイト相、パーライト等のフェライト相以外を分離し、観察視野に対するフェライト相の面積率によって求めた。このとき、線状の形態として観察される粒界はフェライト相の一部として計上した。得られたフェライト相の面積率の平均値およびコイル面内におけるフェライト面積率のばらつきを表3に示す。面積率のばらつきは、63サンプルに対する標準偏差に2を乗じた値とした。
フェライト平均結晶粒径は、上記400倍に拡大して撮影した代表的な写真3枚について、水平線および垂直線をそれぞれ10本ずつ引きASTM E 112−10に準拠した切断法によって求め、最終的に3枚の平均値を1つのサンプルの平均結晶粒径とした。表3には63サンプルに対する平均値を記した。
また、伸展された形状で粒内に腐食痕が認められる組織を加工フェライトとみなし、観察視野に占めるフェライト相に対する加工フェライトの面積率を求めた。すなわち、加工フェライトの面積率としては、フェライト相全体を母集合とした上で、加工フェライトの面積率を求めた。63サンプルについて求めた加工フェライトの面積率の平均値を表3に記した。フェライト相の結晶粒内のTiを含む炭化物の平均粒子径は、得られた冷延鋼板の板厚中央部から薄膜法によってサンプルを作製し、透過型電子顕微鏡(倍率:135000倍)で観察を行い、100点以上の析出物粒子径の平均によって求めた。析出物の組成はTEMに付帯するEDXにより分析し、Tiが含まれることを確認した。この析出物粒子径を算出する上で、Tiを含まない粗大なセメンタイトやCが含まれないTiを含む窒化物は含まないものとした。このTiを含む窒化物は粒子径が100nm以上であり、球形ではなく長方形の形状で観察される。これは析出物粒子径を算出するうえで含めない。マトリックス中に含まれる固溶Ti量の分析は、得られた冷延鋼板を用い、10%AA系電解液(10vol%アセチルアセトン−1mass%塩化テトラメチルアンモニウム-メタノール)中で、約0.2gを電流密度20mA/cmで定電流電解した後、電解液中に含まれるTi量を分析し、含有量に対する割合をマトリックス中に固溶状態にあるTi量の割合として算出した。
(ii)引張試験
得られた冷延鋼板から圧延方向に対して垂直方向にJIS5号引張試験片を作製し、JIS Z 2241(2011)の規定に準拠した引張試験を5回行い、平均の降伏強度(YS)、引張強さ(TS)、全伸び(El)を求めた。引張試験のクロスヘッドスピードは10mm/minとした。組織観察と同様の手順で、平均値と降伏強度のばらつき(ΔYS)を求め、表3に示した。降伏強度のばらつきはフェライト相の面積率とそのばらつき、Tiを含む炭化物の平均粒子径、マトリックス中に固溶状態として存在するTi量の割合によって変動する。そこで、本発明で求める材質が安定した冷延鋼板が得られているかを確認するため、ΔYSを求め、評価した。
(iii)曲げ試験(曲げ性評価)
得られた冷延鋼板のコイル長手方向および幅方向に対し中央部から、試験に供する短冊状の試験片(100mmW(幅)×35mmL(長さ))をせん断加工によって3枚採取した。このとき、試験片端面は、せん断加工ままで曲げ試験を実施したが、せん断面と破断面が4つの辺を持つ短冊状の試験片端面の全てで同一の方向となるよう、試験片端面は同じ方向からせん断加工を施した。JIS Z 2248に準拠したVブロック法による曲げ試験を3回行い、試験後サンプルの湾曲部外側を肉眼もしくは10倍の拡大鏡で観察し、裂けや疵等の欠点がないものを合格した。押金具の内側半径(R)に対し、合格となった最小のRと板厚(t)との商を下式に示す限界曲げ半径とした。なお、R、tともに、単位はmmである。
(限界曲げ半径)=(合格となった押金具の最小内側半径)/(鋼板板厚)
限界曲げ半径は小さい値であるほど良い結果であることを示す。限界曲げ半径が2.0以下の場合に曲げ性が良好であると評価した。なお、曲げ性は押金具の内側半径と、鋼板板厚に左右される。そのため、限界曲げ半径は鋼板板厚の影響を除した指標で評価した。
以上により得られた結果を表3に示す。なお、得られた結果について、引張強さ(TS)が440MPa以上、降伏強度のばらつきが30MPa以下、かつ限界曲げ半径が1.0以下であれば”○”、それ以外は”×”として評価し、その結果も表3に示している。本発明例はいずれも、引張強さTS:440MPa以上であり且つ曲げ性にも優れることから強度と加工性を兼備した冷延鋼板となっている。また、本発明例では、組織のばらつきが小さいため、TSが440MPa以上かつΔYSが30MPa以下の加工性が良好な冷延鋼板が得られている。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、所望の強度(引張強さ:440MPa以上)の高強度が確保できていないか、良好な曲げ性が得られておらず加工性が乏しいことがわかる。また、例えば鋼板No.2はフェライト面積率のばらつきが大きく降伏強度のばらつきが30MPaを上回り、材質が不安定なものであった。
Figure 2015147967
Figure 2015147967
Figure 2015147967

Claims (14)

  1. 質量%で、
    C:0.03%以上0.15%以下、
    Si:1.5%以下、
    Mn:0.6%以下、
    P:0.05%以下、
    S:0.01%以下、
    Al:0.08%以下、
    N:0.0080%以下、
    Ti:0.04%以上0.18%以下
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、フェライト相の面積率が90%以上、コイル面内における該フェライト相の面積率のばらつきが3%以下、前記フェライト相に対する加工フェライトの面積率が15%以下、前記フェライト相の結晶粒内のTiを含む炭化物の平均粒子径が10nm以下、含有するTi量に対しマトリックス中に固溶状態として存在するTi量の割合が10%未満であることを特徴とする、高強度冷延鋼板。
  2. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:0.01%以上1.0%以下を含有することを特徴とする、請求項1に記載の高強度冷延鋼板。
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca、Mg、REMの1種または2種以上を合計で0.0001%以上0.2%以下含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の高強度冷延鋼板。
  4. 前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.01%以上0.2%以下、Nb:0.01%以上0.05%以下、Mo:0.01%以上0.05%以下、W:0.01%以上0.05%以下、Hf:0.01%以上0.05%以下、Zr:0.01%以上0.1%以下、Co:0.0001%以上0.1%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板。
  5. 鋼板表面にめっき層を有することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板。
  6. 前記めっき層が亜鉛めっき層であることを特徴とする、請求項5に記載の高強度冷延鋼板。
  7. 前記めっき層が合金化亜鉛めっき層であることを特徴とする、請求項5に記載の高強度冷延鋼板。
  8. 鋼素材に、粗圧延と仕上げ圧延からなる熱間圧延を施し、仕上げ圧延終了後、冷却して巻き取り、冷間圧延し、焼鈍することで冷延鋼板とするにあたり、
    前記鋼素材を、質量%で、C:0.03%以上0.15%以下、Si:1.5%以下、Mn:0.6%以下、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.08%以下、N:0.0080%以下、Ti:0.04%以上0.18%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とし、前記粗圧延に供する鋼素材の温度を1100℃以上1350℃以下とし、前記仕上げ圧延の仕上げ圧延温度を820℃以上とし、前記冷却を仕上げ圧延終了後2秒以内に開始し、前記冷却の平均冷却速度を20℃/s以上とし、前記巻き取りの巻取り温度を400℃以上700℃以下とし、前記冷間圧延の冷間圧延率を30%以上90%以下とし、前記焼鈍を、500℃から最高到達温度までの平均昇温速度を7℃/s以下、焼鈍温度を700℃以上850℃以下とすることを特徴とする、高強度冷延鋼板の製造方法。
  9. 前記鋼素材が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:0.01%以上1.0%以下を含有する組成とすることを特徴とする、請求項8に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
  10. 前記鋼素材が、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca、Mg、REMの1種または2種以上を合計で0.0001%以上0.2%以下含有することを特徴とする、請求項8または9に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
  11. 前記鋼素材が、前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.01%以上0.2%以下、Nb:0.01%以上0.05%以下、Mo:0.01%以上0.05%以下、W:0.01%以上0.05%以下、Hf:0.01%以上0.05%以下、Zr:0.01%以上0.1%以下、Co:0.0001%以上0.1%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項8ないし10のいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
  12. 前記焼鈍温度での焼鈍の後、めっき処理を施すことを特徴とする、請求項8ないし11のいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
  13. 前記めっき処理が、亜鉛めっき処理であることを特徴とする、請求項12に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
  14. 前記めっき処理が、合金化亜鉛めっき処理であることを特徴とする、請求項12に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
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