JP6123551B2 - 耐疲労性およびスリット加工後の形状凍結性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

耐疲労性およびスリット加工後の形状凍結性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、特に大型自動車用の骨格部品の使途に有用な熱延鋼板であって、耐疲労性およびスリット加工後の形状凍結性に優れた降伏強さ(YS):600MPa以上の高強度熱延鋼板およびその製造方法に関する。
近年地球環境保全の観点から、CO2排出量削減のため自動車業界全体で自動車の燃費改善が指向されている。自動車の燃費改善には、使用部材の薄肉化による自動車車体の軽量化が最も有効である。また、衝突時における乗員の安全を確保すべく、自動車車体を強化し、自動車車体の衝突安全性を向上することも要求されている。このような観点から、自動車部品用素材として、軽量化と安全性との両立が可能な高強度熱延鋼板が使用されるようになり、その使用量は年々増加している。
ここで、自動車部品のうち、例えば大型自動車用の骨格部品を薄肉化するには、耐疲労性の向上が必須要件となる。したがって、特に大型自動車用の骨格部品などの素材として使用される高強度熱延鋼板には、耐疲労性に優れていることが要求される。
また、大型自動車用の骨格部品などは、コイル状の高強度熱延鋼板(熱延コイル)を、その長手方向に対しスリット加工を施して一定幅のフープとし、該フープにプレス加工を施して所定の形状に成形することにより製造される。この際、フープの板面内に発生する曲がりが問題となる。高強度熱延鋼板にスリット加工を施すと、スリット加工により得られたフープの板面内に曲がりが発生する場合がある。このように、スリットされたフープの板面内に曲がりが生じると、プレス加工での形状凍結性が劣化したり金型が損傷する等、様々な支障をきたす。
以上の理由により、特に大型自動車用の骨格部品などの素材として使用される高強度熱延鋼板には、耐疲労性に優れていることに加えて、スリット加工を施してフープとした際、板面内に発生する曲がり量が少なく、プレス加工後の形状凍結性に優れていることも要求される。
これまでに、鋼板の高強度化や耐疲労性を改善する技術については様々な検討がなされており、例えば次のような技術が公開されている。
特許文献1には、フェライトまたはベイナイトを面積率で最大相とし、1/2板厚における板面の{001}<110>〜{223}<110>方位群のX 線ランダム強度比の平均値を規定し、更に化合物粒子のサイズと個数を規定することで、高強度鋼板の形状凍結性を高める技術が公開されている。
特許文献2には、鋼組成を、質量%で、C:0.055%超0.15%未満、Si:1.2%未満、Mn:0.5%超2.5%未満、Al:0.5%未満、P:0.1%未満、S:0.01%未満、N:0.008%未満、ならびにV:0.03%超0.5%未満、Ti:0.003%超0.2%未満、Nb:0.003%超0.1%未満、およびMo:0.03%超0.2%未満の群から選ばれる1種または2種以上を(1)式(−0.04<C−(Ti−3.43N)×0.25−Nb×0.129−V×0.235−Mo×0.125<0.05)の範囲で含有し、残部Feおよび不純物とし、鋼組織を、(2)式(Hvα≧0.3×TS+10)で規定されるビッカース硬度Hvαを備える等軸フェライトを70体積%以上含有し、マルテンサイトの含有量が0〜5体積%であり、残部が前記等軸フェライトを除くフェライト、ベイナイト、セメンタイトおよびパーライトの1種または2種以上とすることで、高強度熱延鋼板の穴拡げ性と曲げ性を改善する技術が公開されている。
特許文献3には、鋼組成を、質量%で、C:0.02〜0.2%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.2%以下、sol.Al:0.001〜0.5%、Ti:0.1%以下、Nb:0.1%以下、V:0.5%以下、Mo:0.5%以下、かつ、Ti+Nb:0.1%以下を含有し、残部Feおよび不純物とし、フェライトを主相とし、鋼板表面から板厚の1/4の深さにおけるフェライトの平均結晶粒径および700℃における増加速度を規定し、更に、平均粒径200nm以下のセメンタイトをフェライト粒内に102〜107個/μm3析出させることで、機械的強度、加工性および熱的安定性に優れた熱延鋼板とする技術が公開されている。
特許文献4には、質量%で、C:0.010〜0.200%、Si:0.01〜1.50%、Mn:0.25〜3.00%、B:0.0002〜0.0030%をそれぞれ含有し、P:0.05%以下に制限し、更に、Ti:0.03〜0.20%、Nb:0.01〜0.20%、V:0.01〜0.20%、Mo:0.01〜0.20%のうちの何れか1種又は2種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成とし、フェライトの大角結晶粒界へのCの偏析量とBの偏析量との合計を4〜10atms/nm2の範囲とすることで、打ち抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板とする技術が公開されている。
特許文献5には、質量%で、C:0.04%〜0.17%、Si:0.001〜0.60%未満、Mn:1.2〜1.9%、P:0.001〜0.04%未満、S:0.0001〜0.01%、Al:0.10%以下、N:0.0005〜0.010%、O:0.002〜0.010%を含有し、更に、NbもしくはTiのいずれか一方あるいは両方を、合計で0.012〜0.052%含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる組成とし、鋼板組織を主として平均粒径5μm以下のフェライトとパーライトまたは/および鉄系炭化物からなる組織とし、フェライト粒内に含まれるパーライトまたは/および鉄系炭化物を1平方mmあたり3500個以上とすることで、降伏比が高く、成形性に優れた高強度鋼板とする技術が公開されている。
特許文献6には、質量%で、C:0.025〜0.15%、Si:0.01〜1.0%以下、Mn:1.0〜2.5%、P:0.02%以下、S:0.005%以下、Al:0.5%以下、Ti:0.04〜0.10%、及びN:0.007%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、Mn/Ti比:15以上であり、Nbが添加されていない成分組成とし、フェライトの体積率が30%以上で、残部がパーライトとベイナイトのうち1種または2種からなり、結晶粒の相当楕円の平均アスペクト比が5以下であり、フェライト粒界面上における粒径が20nm以上のTi系炭化物の平均分布密度が10個/μm以下である金属組織とすることで、打ち抜き破断面の脆性破面率が20%未満であり、最大引張強度が590MPa以上である打抜き加工性と疲労特性に優れた熱延鋼板とする技術が公開されている。
特許文献7には、C:0.05〜0.15%、Si:0.2〜1.2%、Mn:1.0〜2.0%、P:0.04%以下、S:0.0030%以下、Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以下およびTi:0.03〜0.13%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とし、鋼板の表裏面より、それぞれ全板厚の1.5〜3.0%深さまでの表層領域が、ベイナイト面積率:80%未満で、かつ粒径が2〜15μmのフェライト層の面積率:10%以上であり、該表層領域以外の内部領域は、ベイナイト層の面積率:95%超である組織とすることで、引張強さが780MPa以上であり曲げ加工性に優れた高強度熱延鋼板とする技術が公開されている。
特開2006−22349号公報 特開2006−161111号公報 特開2008−189978号公報 特開2008−266726号公報 特開2008−274360号公報 国際公開第2010/131303号 特開2012−62558号公報
しかしながら、特許文献1に公開された技術では、鋼板の耐疲労性について検討されていない。また、後述するように、粒界に析出する微細なセメンタイトは鋼板の耐疲労性の向上に寄与するが、特許文献1に公開された技術では、添加したCの多くをフェライト粒内に微細な化合物粒子として析出させており、セメンタイトの微細分散は意図していないため、耐疲労性に優れた鋼板は得られない。
また、特許文献2に公開された技術においても、特許文献1に公開された技術と同様、鋼板の耐疲労性について検討されていない。そして、特許文献2に公開された技術では、特許文献1に公開された技術と同様に、添加したCの多くをフェライト粒内に析出させているため、耐疲労性に優れた鋼板は得られない。更に、当該技術により得られる鋼板は、その実施例が示すように、金属組織に低温変態相であるベイナイトを含んでいる。このように金属組織に低温変態相を含むと、スリット加工後のコイル(フープ)において板面内の曲がり量が大きくなる。
特許文献3に公開された技術においても、やはり鋼板の耐疲労性について検討されていない。そして、特許文献3に公開された技術では、フェライト粒内にセメンタイトを析出させており、粒界に析出するセメンタイトを抑制しているため、耐疲労性に優れた鋼板は得られない。また、特許文献3に公開された技術では、鋼板を強化するうえで必要となる化学成分や製造条件について十分に検討されていない。したがって、その実施例が示すように、析出強化元素であるTiを0.21質量%も含有する場合であっても、引張強さ(TS)が564MPa程度の鋼板しか得られない。
特許文献4に公開された技術では、粒界に固溶状態のCを偏析させるために、鋼板を製造する際の巻取り温度を低くする必要がある。そして、巻取り温度が580℃未満にまで低下すると、低温変態相が生成されるためスリット加工後の形状凍結性が悪化する。また、粒界にCを偏析させる結果、粒界に析出するセメンタイトが抑制されるため、耐疲労性に優れた鋼板が得られない。
特許文献5に公開された技術では、特許文献3に公開された技術と同様に、フェライト粒内にセメンタイトを析出させており、粒界に析出するセメンタイトを抑制しているため、耐疲労性に優れた鋼板は得られない。また、特許文献5に公開された技術では、その実施例が示すように、得られる鋼板の殆どが強度不足であり、降伏強さが600MPaに至っていない。一方、降伏強さが600MPaを超える鋼板は、El(伸び)が著しく低く、所定の部品形状に成形できない。
特許文献6および特許文献7に公開された技術では、鋼板の金属組織にベイナイトを混在させている。そのため、スリット加工後のコイル(フープ)の板面内に曲がりが発生してしまい、スリット加工後のコイル(フープ)の形状凍結性が悪化する。
以上のように、従来技術では、高強度、優れた耐疲労性およびスリット加工後の形状凍結性を兼ね備えた熱延鋼板を得ることが困難であった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、600MPa以上の降伏強さを有し、耐疲労性およびスリット加工後の形状凍結性にも優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく、本発明者らは、熱延鋼板の強度、スリット加工後の形状凍結性および耐疲労性に影響を及ぼす各種要因について鋭意検討した。
先述のとおり、大型自動車用の骨格部品などは、スリット加工を施した熱延コイル(フープ)にプレス加工を施して所定の形状に成形することにより製造されるため、これらの部品の素材となる熱延鋼板には優れた加工性が要求される。そこで、本発明者らは、まず、加工性に優れたフェライト相を主相とする金属組織に着眼し、その強度、スリット加工後の形状凍結性および耐疲労性を高める手段について検討した。
フェライト相を主相とする金属組織の熱延鋼板を高強度化する手段としては、金属組織をフェライト相に加えて低温変態相であるベイナイトやマルテンサイトを混在させた組織とすることが挙げられる。しかし、本発明者らによる検討の結果、熱延鋼板の金属組織に、上記低温変態相や残留オーステナイトが混在する場合、スリット加工後の形状凍結性が悪化する傾向にあることが明らかになった。
そこで、本発明者らは、低温変態相を活用せずに熱延鋼板の高強度化を図る手段を採用することとし、固溶強化および粒子分散強化機構に着眼した。そして、SiとMnによる固溶強化と、Ti含有炭化物による粒子分散強化機構を活用することで、スリット加工後の形状凍結性を損なうことなく、熱延鋼板の高強度化が可能であることを知見した。
次に、本発明者らは、フェライト相を主相とする金属組織の熱延鋼板の、耐疲労性を高める手段について検討した。その結果、フェライト相の粒界上に、硬質粒子であるセメンタイトを析出させることで、疲労による亀裂伝播が抑制可能であることを突き止めた。また、この亀裂伝播抑制効果は、セメンタイトの粒子径の微細化に伴い向上することも確認された。更に、耐疲労性を高めるには、熱延鋼板の降伏強さを高めることも重要であることを突き止めた。熱延鋼板に降伏点以下の荷重が負荷された状態においては、マクロ的な塑性変形は生じないものの、転位構造等のミクロ的な組織変化は生じる。このミクロ的な組織変化により熱延鋼板の疲労強度は低下するため、降伏強さを高めることが重要である。そして、本発明者らが検討を進めた結果、降伏強さが600MPa以上の高強度熱延鋼板であれば、上記のミクロ的な組織変化を抑えられることが明らかになった。
これらの事項を踏まえ、本発明者らは更に、熱延鋼板の化学成分および金属組織について包括的に解析を行った。その結果、CおよびSi、Mn、Tiを適正な範囲で添加することで、スリット加工後の形状凍結性を損なうことなく、降伏強さ:600MPa以上の高強度熱延鋼板が得られることを知見した。また、鋼素材にSiを適量添加したうえで、熱延鋼板を製造する際の熱間圧延条件を最適化することにより、フェライト相の粒界上にセメンタイトを微細分散させることが可能となり、熱延鋼板の耐疲労性が飛躍的に向上することを知見した。
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は次のとおりである。
[1] 質量%で、C:0.06%以上0.13%以下、Si:0.5%超1.5%以下、Mn:1.0%以上1.8%以下、P:0.03%以下、S:0.006%以下、Al:0.08%以下、N:0.0080%以下、Ti:0.09%以上0.16%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、フェライト相および粒状セメンタイト、或いは更にパーライトからなり、前記フェライト相の面積率が85%以上97%以下、前記粒状セメンタイトのうち前記フェライト相の粒界上に析出した粒状セメンタイトの下記式(1)で求められる円相当直径を粒子径として平均粒子径が0.5μm以下、前記粒界上に析出した粒状セメンタイトのうち前記粒子径が0.5μm以下である粒状セメンタイトの単位面積当たりの個数が1.5×105個/mm2以上であり、前記フェライト相の結晶粒内に析出したTiを含む炭化物の平均粒子径が10nm以下であり、固溶Ti量が質量%で0.03%以下である組織を有し、降伏強さが600MPa以上、疲労限度が350MPa以上、スリット加工後の板面内の曲がり量が4.5mm以下であることを特徴とする耐疲労性およびスリット加工後の形状凍結性に優れた高強度熱延鋼板。

(円相当直径)=(4×(粒状セメンタイトの長辺)×(粒状セメンタイトの短辺)/π) 1/2
・・・(1)
[2] [1]において、前記組成に加えて更に、質量%でV:0.001%以上0.10%以下を含有することを特徴とする耐疲労性およびスリット加工後の形状凍結性に優れた高強度熱延鋼板。
[3] 鋼素材を加熱し、粗圧延および仕上げ圧延からなる熱間圧延を施した後、冷却し、巻き取り、熱延鋼板とするにあたり、前記鋼素材を、質量%で、C:0.06%以上0.13%以下、Si:0.5%超1.5%以下、Mn:1.0%以上1.8%以下、P:0.03%以下、S:0.006%以下、Al:0.08%以下、N:0.0080%以下、Ti:0.09%以上0.16%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とし、前記加熱の加熱温度を1180℃以上1350℃以下とし、前記粗圧延で5回以上のひずみを与え、前記仕上げ圧延前の板厚を30mm以上とし、前記仕上げ圧延の仕上げ圧延終了温度を820℃以上920℃以下とし、前記冷却を仕上げ圧延終了後3s以内に開始し、前記冷却の平均冷却速度を10℃/s以上120℃/s以下とし、前記冷却の停止温度および前記巻き取りの巻取り温度を580℃以上680℃以下とし、フェライト相および粒状セメンタイト、或いは更にパーライトからなり、前記フェライト相の面積率が85%以上97%以下、前記粒状セメンタイトのうち前記フェライト相の粒界上に析出した粒状セメンタイトの下記式(1)で求められる円相当直径を粒子径として平均粒子径が0.5μm以下、前記粒界上に析出した粒状セメンタイトのうち前記粒子径が0.5μm以下である粒状セメンタイトの単位面積当たりの個数が1.5×105個/mm2以上であり、前記フェライト相の結晶粒内に析出したTiを含む炭化物の平均粒子径が10nm以下であり、固溶Ti量が質量%で0.03%以下である組織を有し、降伏強さが600MPa以上、疲労限度が350MPa以上、スリット加工後の板面内の曲がり量が4.5mm以下である板厚10mm以下の熱延鋼板とすることを特徴とする耐疲労性およびスリット加工後の形状凍結性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。

(円相当直径)=(4×(粒状セメンタイトの長辺)×(粒状セメンタイトの短辺)/π) 1/2
・・・(1)
[4] [3]において、前記組成に加えて更に、質量%でV:0.001%以上0.10%以下を含有することを特徴とする耐疲労性およびスリット加工後の形状凍結性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
本発明によると、優れた耐疲労性を有するとともに、スリット加工後の形状凍結性が良好な、降伏強さ:600MPa以上の熱延鋼板が得られる。したがって、本発明によると、熱延鋼板にスリット加工を施してフープとしたのちプレス加工を施しても、所望の耐疲労性と強度を備え、且つ寸法精度にも優れた大型自動車用骨格部品が得られる。また、本発明によると、上記の如く極めて優れた特性を示す高強度熱延鋼板が得られることから、高強度熱延鋼板の更なる用途展開が可能となり、産業上格段の効果を奏する。
スリット加工後のコイル(フープ)の曲がり量を示す図である。
以下に、本発明について具体的に説明する。
まず、本発明熱延鋼板の組織の限定理由について説明する。
本発明の熱延鋼板は、フェライト相および粒状セメンタイトからなる組織を有する。また、本発明の熱延鋼板は、フェライト相および粒状セメンタイトを含み、残部がパーライトからなる組織としてもよい。
一方、マルテンサイト相、ベイナイト相および残留オーステナイト相は、熱延鋼板のスリット加工後の形状凍結性に悪影響を及ぼす。
熱延鋼板の組織を、マルテンサイト相、ベイナイト相、残留オーステナイト相を含む組織とするためには、熱延鋼板の製造工程において、オーステナイト単相域で熱間圧延を終了したのち冷却して巻取る際、巻取り温度を低く設定する必要がある。ここで、巻取り温度が低温化するにつれて、巻取り時に板幅方向端部と板幅方向中央部の温度差が増大する傾向にある。これは、巻取り温度を低温とするには、仕上げ圧延後の強制水冷(強制冷却)における冷却水の水量を増量させる必要があるが、水量を増量すると、冷却水の横流れによるエッジ冷却効果が大きくなるためである。そして、板幅方向端部と板幅方向中央部の間で大きな温度差が生じた熱延コイルを室温まで冷却すると、熱収縮量が板幅方向で大きくばらつき、熱延コイルに発生する残留応力が大きくなる。
また、フェライト相とともにマルテンサイト相、ベイナイト相、残留オーステナイト相が混在した組織を有する熱延鋼板では、熱間圧延終了後の冷却・巻取り工程で発生する変態ひずみ量が板面内で不均一になるため、熱延コイルに発生する残留応力が大きくなる。このように残留応力が蓄積した熱延コイルにスリット加工を施すと、スリット加工後の熱延コイル(フープ)板面内に発生する曲がり量が大きくなり、形状凍結性が劣化する。
したがって、本発明では、熱延鋼板の組織を、マルテンサイト相、ベイナイト相、残留オーステナイト相を含まない組織とする。このような組織とすることで、スリット加工後の形状凍結性に優れた熱延鋼板が得られる。
また、本発明では、フェライト相の粒界上に粒状セメンタイトを析出させることにより、熱延鋼板の耐疲労性向上を図る。更に、本発明では、フェライト相の結晶粒内に微細な炭化物(Tiを含む炭化物)を析出させることにより、熱延鋼板の高強度化を図る。
フェライト相の面積率:85%以上97%以下
フェライト相の面積率が85%を下回ると、フェライト以外の相が15%を超える。フェライト以外の相がベイナイト、マルテンサイトなどの低温変態相である場合には、前述のように、スリット加工後の板面内に発生する曲がり量が大きくなる。また、フェライト以外の相がパーライトである場合にはパーライト量が過大となり、特にフェライト三重点に生成するパーライトが粗大となる。粗大なパーライトは疲労亀裂の発生起点となるため、疲労強度が低下する。一方、フェライト相の面積率が97%を上回ると、フェライト相の粒界上に析出する粒状セメンタイトが不足し、熱延鋼板の耐疲労性が低下する。したがって、フェライト相の面積率は85%以上97%以下とする。好ましくは90%以上95%以下である。なお、本発明において、フェライト相の面積率が85%以上となる組織を得るには、主にC、SiおよびTiの含有量を調整したうえで、粗圧延および仕上げ圧延条件の最適化を図る必要がある。
本発明において、フェライト相以外の残部金属組織は粒状セメンタイトである。また、粒状セメンタイトのほかにパーライトを含有してもよい。なお、パーライトを構成する層状のセメンタイトは、上記粒状セメンタイトに含まれない。本発明において、粒状セメンタイトの析出は、熱延鋼板の耐疲労性を高めるうえで必須となる。一方、熱延鋼板の耐疲労性の向上を図る観点からは、パーライトの面積率を極力低減することが好ましく、パーライトの面積率を0%とすることがより好ましい。
なお、本発明において、熱延鋼板の組織をフェライト相と粒界セメンタイトからなる組織とする場合には、フェライト相の面積率を87%以上97%以下とすることが好ましく、90%以上96%以下とすることがより好ましい。
一方、本発明において、熱延鋼板の組織をフェライト相、粒界セメンタイトおよびパーライトからなる組織とする場合には、フェライト相の面積率を85%以上95%以下とし、パーライトの面積率を7%以下とすることが好ましい。また、フェライト相の面積率を87%以上96%以下とし、パーライトの面積率を3%以下とすることがより好ましい。
フェライト相の粒界上に析出した粒状セメンタイトの平均粒子径:0.5μm以下
本発明鋼で粒状セメンタイトが析出する場所は、主にフェライト相の粒界上である。フェライト相の粒界上に析出する粒状セメンタイトが微細であると、疲労時の亀裂伝播の進行を抑制する効果を発現する。一方、フェライト相の粒界上に析出する粒状セメンタイトの粒子径が大きくなると、疲労時に亀裂の起点となる応力集中部になり易くなるため、熱延鋼板の耐疲労性ならびに降伏強さが低下してしまう。したがって、フェライト相の粒界上に析出する粒状セメンタイトの平均粒子径を0.5μmとする。好ましくは0.3μm以下である。
本発明において、粒状セメンタイトの粒子径は、以下の(1)で算出される円相当直径とする。
(円相当直径)=(4×(粒状セメンタイトの長辺)×(粒状セメンタイトの短辺)/π)1/2 … (1)
フェライト相の粒界上に析出した粒状セメンタイトのうち粒子径が0.5μm以下である粒状セメンタイトの単位面積あたりの個数:1.5×105個/mm2以上
上記の如く微細な粒状セメンタイトにより疲労時の亀裂伝播を抑制するためには、微細な粒状セメンタイトの析出量を十分に確保する必要がある。そこで、本発明では、フェライト相の粒界上に析出する粒状セメンタイトのうち粒子径が0.5μm以下である粒状セメンタイトの個数を1.5×105個/mm2以上とすることで、熱延鋼板の耐疲労性の向上を図る。好ましくは2.0×105個/mm2以上4.0×105個/mm2以下である。
なお、フェライト相の粒界上に析出するセメンタイトの形態が板状であっっても、その長辺の長さが1.0μmであれば、本発明で求める微細な粒状セメンタイトと見なすことができる。すなわち、本発明においては、長辺の長さが1.0μm以下であり且つ上記(1)式で計算される円相当直径が0.5μm以下であるセメンタイトも、粒子径0.5μm以下の粒状セメンタイトに含まれるものとする。
フェライト相の結晶粒内に析出したTiを含む炭化物の平均粒子径:10nm以下
本発明においては、Ti含む微細な炭化物によって熱延鋼板の高強度化を達成している。降伏強さ600MPa以上の高強度熱延鋼板を得るには、フェライト相の結晶粒内に析出する炭化物(Tiを含む炭化物)の平均粒子径を10nm以下とする必要がある。好ましくは、6nm以下である。本発明において、上記平均粒子径の下限は特に設けないが、実質的に得られる平均粒子径の下限は0.8nm程度である。
なお、本発明においてTiを含む炭化物とは、フェライト粒内に分散する析出物がTiおよびCを含む組成を有するものであり、この析出物にNやV等が含まれていても良い。また、本発明において、鋼板組成がVを含有する組成である場合、VはV単独で析出せず、TiおよびVの複合炭化物として析出する。
固溶Ti量:質量%で0.03%以下
微細な炭化物を分散させることにより得られる粒子分散強化量は、炭化物の大きさだけでなくその析出量にも依存する。熱延鋼板に含まれるTiのうち、析出していないTi量、すなわち固溶Ti量が質量%で0.03%以下であれば、所望の熱延鋼板強度(降伏強さ:600MPa以上)が得られる。したがって、固溶Ti量は質量%で0.03%以下とする。好ましくは0.02%以下である。
次に、本発明熱延鋼板の成分組成の限定理由について説明する。なお、以下の成分組成を表す%は、特に断らない限り質量%(mass%)を意味するものとする。
C:0.06%以上0.13%以下
Cは、Tiと結合して微細な炭化物を形成するため、熱延鋼板の高強度化に寄与する元素である。更に、Tiとの結合に関与しなかったCは、主に粒界に微細なセメンタイトとして析出し、熱延鋼板の耐疲労性を向上させる。熱延鋼板の降伏強さを600MPa以上にするとともに、所望のセメンタイトを析出させて耐疲労性の向上化を図るためには、C含有量を0.06%以上とする必要がある。好ましくは0.07%以上である。一方、C含有量が過剰に高くなると、フェライト粒界の三重点にパーライトが多く形成されるようになり、0.13%を超えると熱延鋼板の疲労強度低下が顕在化する。したがって、C含有量は0.13%以下とする。好ましくは0.12%以下である。
Si:0.5%超1.5%以下
Siは、固溶強化元素であり、熱延鋼板の高強度化に有効な元素である。また、Siは、セメンタイトを微細化する効果があるため、熱延鋼板の耐疲労性を向上させるのに有効な元素でもある。所望の降伏強さと耐疲労性を備えた熱延鋼板を得るには、Si含有量を0.5%超とする必要がある。好ましくは0.6%以上であり、より好ましくは0.65%以上である。一方、Siは、鋼板表面に濃化し易く、鋼板表面にファイヤライト(Fe2SiO4)を形成する。このファイヤライトはノッチ状に形成されるため、Si含有量が過剰に高くなると、熱延鋼板の耐疲労性を低下させることとなる。このような問題を回避すべく、Si含有量は1.5%以下とする。好ましくは1.2%以下である。
Mn:1.0%以上1.8%以下
Mnは、固溶強化元素であり、熱延鋼板の高強度化に有効な元素である。また、Mnは、Ar3点を下げる効果があり、フェライト相の結晶粒内にTiを含む微細炭化物を分散させるために必要な元素である。フェライト相の結晶粒内に析出する炭化物(Tiを含む炭化物)は、鋼素材をγ域に加熱して熱間圧延を施した後の冷却・巻取り工程でγ→α変態に伴い析出するが、Ar3点が高いと高温域でγ→α変態が生じる、すなわち高温域で炭化物が析出する結果、炭化物が粗大化してしまい、熱延鋼板の強度が低下する。ゆえに、フェライト相の結晶粒内に析出する炭化物(Tiを含む炭化物)を微細化するためには、Ar3点を低くすることが必要となる。
降伏強さが600MPa以上である熱延鋼板を得るには、Mn含有量を1.0%以上とする必要がある。好ましくは、1.1%以上である。一方、Mn含有量が1.8%を超えると、上記高強度化の効果が飽和するうえ、鋼の鋳造性が低下する。したがって、Mn含有量は1.8%以下とする。好ましくは1.6%以下である。
P:0.03%以下
Pは、粒界に偏析して粒界割れの原因となる。また、Pは、熱延鋼板の加工性や溶接性を低下させるうえ、疲労時の亀裂感受性を高める有害な元素であるため、その含有量を極力低減することが好ましい。本発明では、0.03%までは許容できるため、P含有量を0.03%以下とする。好ましくは0.02%以下である。なお、P含有量は不純物レベルまで低減してもよい。
S:0.006%以下
Sは、鋼中でMnSやTi4C2S2などの介在物として存在する。特にMnSは、熱延鋼板製造時、熱間圧延により伸展した形状となるため、疲労時の亀裂の起点となる。したがって、本発明ではS含有量を極力低減することが好ましく、0.006%以下とする。好ましくは0.003%以下である。なお、S含有量は不純物レベルまで低減してもよい。
Al:0.08%以下
Alは、硬質な酸化物を形成する。この硬質な酸化物は粗大であるため、応力集中部となり易く、熱延鋼板の耐疲労性を低下させる。そのため、本発明では、耐疲労性の低下を抑制する目的で、Al含有量を0.08%以下とする。好ましくは0.06%以下である。但し、Alは、脱酸元素としての効果があるため、その含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
N:0.0080%以下
Nは、製鋼、連続鋳造の段階でTiと結合して粗大なTiNを形成する。この粗大なTiNは、熱延鋼板の高強度化に寄与しないため、強度低下や強度安定性の低下の原因となる。更に、TiNは粗大な介在物であるため、Alと同様、熱延鋼板の耐疲労性を低下させる。以上の理由により、本発明ではN含有量を抑制し、その上限を0.0080%とする。好ましくは0.0060%以下である。N含有量は、可能な限り低減することが望ましく、N含有量は0%としてもよい。
Ti:0.09%以上0.16%以下
Tiは、Cと結合して微細な炭化物を形成し、熱延鋼板を高強度化させるのに有効な元素である。降伏強さ600MPa以上の熱延鋼板を得るためには、Ti含有量を0.09%以上とする必要がある。また、Tiはフェライト変態を促進させる元素であり、Ti含有量が0.09%を下回るとベイナイト相といった低温変態相が生成する。一方、Tiを過剰に添加した場合には、粗大なTi炭化物が析出し、セメンタイトとして析出するCが減じるため、熱延鋼板の耐疲労性が低下する。以上の理由により、Ti含有量は0.09%以上0.16%以下とする。好ましくは0.10%以上0.14%以下である。
なお、先述のとおり、本発明では、フェライト相と粒状セメンタイト、或いは更にパーライトからなる組織を有する熱延鋼板とし、フェライト相の粒界上に微細な粒状セメンタイトを析出させることにより耐疲労性の向上を図っている。ここで、所望の粒状セメンタイト析出量を得るには、CおよびTiを、以下の(2)式を満足するように含有させることが好ましい。
2.0≦([%C]/12)/{([%Ti]-3.4×[%N]-1.5×[%S])/48}≦7.0 … (2)
ここで、(2)式において、[%C]、[%Ti]、[%N]、[%S]はそれぞれ、C、Ti、N、Sの含有量(質量%)である。
(2)式の中辺の値が2.0を下回ると、亀裂伝播を抑制する微細なセメンタイトの析出量が少なくなり、熱延鋼板の耐疲労性が低下するおそれがある。一方、(2)式の中辺の値が7.0を上回ると、フェライト粒界の三重点にパーライトが過剰に形成され、熱延鋼板の疲労強度が劣化するおそれがある。したがって、(2)式の中辺の値を2.0以上7.0以下とすることが好ましく、2.5以上4.3以下とすることがより好ましい。
以上が本発明の熱延鋼板における基本組成であるが、上記した基本組成に加えて更に、以下の元素を含有してもよい。
V:0.001%以上0.10%以下
Vは、Tiと同様、Cと結合して微細炭化物として析出し、熱延鋼板の更なる高強度化に寄与する元素である。このような効果を得るには、V含有量を0.001%以上とすることが好ましい。また、降伏強さが700MPa以上の熱延鋼板を得るためには、V含有量を0.01%以上とすることが好ましい。一方、本発明者らによる検討の結果、Vは炭化物の熱安定性を低下させる元素であることが判明した。炭化物の熱安定性が低下すると、熱延鋼板の強度安定性に悪影響を及ぼす場合がある。したがって、V含有量は0.10%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.08%以下である。
なお、本発明の熱延鋼板において、上記以外の成分は、Feおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、例えばO(酸素)、Se、Te、Po、As、Bi、Ge、Ga、In、Tl、Zn、B、Nb、Mo、Cd、Hg、Ag、Au、Pd、Pt、Co、Rh、Ir、Ru、Os、Tc、Re、Ta、Be、Sr、REM、Ni、Cr、Sb、Cu、Mg等が挙げられ、これらの含有量は合計で0.2%以下とすることが好ましい。
以上のように、組成および組織を規定することにより、降伏強さ:600MPa以上の強度を有し、耐疲労性が良好であり且つスリット加工後の形状凍結性にも優れた高強度熱延鋼板が得られる。
なお、本発明の熱延鋼板は、焼鈍温度が720℃以下であれば連続めっきラインへの通板が可能であり、表面にめっき層を形成してもよい。めっき層の種類は特に問わず、電気めっき層、無電解めっき層のいずれも適用可能である。また、めっき層の合金成分も特に問わない。亜鉛めっき層、特に溶融亜鉛めっき層や合金化溶融亜鉛めっき層などが好適な例として挙げられるが、勿論、これらに限定されない。表面にめっき層を形成することにより、熱延鋼板の耐食性が向上し、例えば自動車部品の中でも特に厳しい腐食環境下で使用される部品への適用が可能になる。
次に、本発明熱延鋼板の製造方法について説明する。
本発明は、上記した組成の鋼素材を加熱し、粗圧延および仕上げ圧延からなる熱間圧延を施した後、冷却し、巻き取り、熱延鋼板とする。この際、前記加熱の加熱温度を1180℃以上1350℃以下とし、前記粗圧延で5回以上のひずみを与え、前記仕上げ圧延前の板厚を30mm以上とし、前記仕上げ圧延の仕上げ圧延終了温度を820℃以上920℃以下とし、前記冷却を仕上げ圧延終了後3s以内に開始し、前記冷却の平均冷却速度を10℃/s以上120℃/s以下とし、前記冷却の停止温度および前記巻き取りの巻取り温度を580℃以上680℃以下とすることを特徴とする。
本発明において、鋼の溶製方法は特に限定されず、転炉、電気炉等、公知の溶製方法を採用することができる。また、真空脱ガス炉にて2次精錬を行ってもよい。その後、生産性や品質上の問題から連続鋳造法によりスラブ(鋼素材)とするのが好ましいが、造塊−分塊圧延法、薄スラブ連鋳法等、公知の鋳造方法でスラブ(鋼素材)としても良い。
鋼素材の加熱温度:1180℃以上1350℃以下
上記の如く得られた鋼素材に熱間圧延を施すが、本発明においては、熱間圧延に先立ち鋼素材を加熱して実質的に均質なオーステナイト単相とし、粗大な炭化物(Tiを含む炭化物)を溶解する必要がある。鋼素材の加熱温度が1180℃を下回ると、粗大な炭化物が溶解しないため、熱間圧延終了後の冷却・巻取り工程で微細分散する炭化物の量が減じることとなり、最終的に得られる熱延鋼板の強度が著しく低下する。一方、上記加熱温度が1350℃を上回ると、スケールが噛み込み、鋼板表面性状を悪化させる。
以上の理由により、鋼素材の加熱温度は1180℃以上1350℃以下とする。好ましくは1200℃以上1320℃以下である。但し、鋼素材に熱間圧延を施すに際し、鋳造後の鋼素材が1180℃以上1350℃以下の温度域にある場合、或いは鋼素材の炭化物が溶解している場合には、鋼素材を加熱することなく直送圧延してもよい。鋼素材を上記加熱温度に加熱したのち、以下の条件に従い、粗圧延および仕上げ圧延からなる熱間圧延を施す。
粗圧延で付与するひずみ回数:5回以上
所望の組織、すなわちフェライト相の粒界に微細な粒状セメンタイトが析出した組織を有する熱延鋼板を得るためには、粗圧延で5回以上ひずみを与える必要がある。先述のとおり、本発明においては、熱間圧延に先立ち鋼素材を加熱して実質的に均質なオーステナイト単相組織とするが、鋼素材の加熱温度は1180℃以上と高温であるため、熱間圧延前の鋼素材はオーステナイトが著しく粗大化した状態となっている。ここで、フェライト相の粒界上に粒状セメンタイトが微細分散した組織を有する熱延鋼板とするには、熱間圧延終了時の鋼板組織を微細な加工オーステナイトとする必要がある。オーステナイト粒界やオーステナイト中の転位はフェライトの核生成サイトになる。ゆえに、熱間圧延終了時の鋼板組織が微細な加工オーステナイトであると、熱間圧延終了後の冷却・巻取り工程で微細結晶粒のフェライト相が得られる結果、粒状セメンタイトをフェライト相の粒界上に微細分散させることが可能となる。
以上の理由により、フェライト相の粒界上に微細な粒状セメンタイトを析出させるには、鋼素材のSi含有量を適正化したうえで、粗圧延工程でオーステナイトを細粒化し、仕上げ圧延工程でオーステナイトの転位密度を高める必要がある。しかしながら、本発明では、鋼素材にTi等を含有させているため、熱間圧延時にオーステナイトの再結晶が阻害されてオーステナイトが微細化し難い傾向にある。仕上げ圧延前にオーステナイトが十分に微細化されていない場合には、熱延鋼板の組織を、本発明で目的とする母相組織、すなわち粒状セメンタイトを含み低温変態相を含まない母相組織を得ることが困難となる。そのため、圧延温度がオーステナイトの再結晶温度以上の高温となる粗圧延でひずみを与え、オーステナイトの再結晶を促進して微細化を図る必要がある。
そこで、本発明においては、鋼素材を1180℃以上に加熱することにより粗大化したオーステナイトを、十分に微細化するために、粗圧延で5回以上のひずみを与える。このように、オーステナイトの再結晶回数を増加させることで、仕上げ圧延前に微細なオーステナイト粒を得ることができる。また、粗圧延でひずみを付与する回数は、7回以上とすることが好ましい。なお、オーステナイトの再結晶をより一層促進するには、1回あたりに付与するひずみ量を10%以上とすることが好ましい。
以上のように、微細なオーステナイトを形成したのち、仕上げ圧延においてオーステナイトの未再結晶領域でひずみを与えると、オーステナイト粒界面積が著しく増大し、オーステナイトの転位密度も増加する。その結果、熱間圧延終了後、所定の条件で冷却して巻き取ることで、フェライト相の粒界上に析出する粒状セメンタイトの微細化を促進することができる。
仕上げ圧延前の板厚:30mm以上
本発明においては、フェライト相の粒界上に析出する粒状セメンタイトの微細化をより一層促進するに、仕上げ圧延で導入するひずみ量を一定量以上とする。例えば、熱延鋼板の板厚(仕上げ圧延終了時の板厚)を10mm以下とする場合には、仕上げ圧延開始前の板厚を30mm以上とすることが必要となる。このように板厚を規定すると、オーステナイトの粒界面積が増大し、粒状セメンタイトの微細化がより一層促進する。なお、熱延鋼板の板厚(仕上げ圧延終了時の板厚)を10mm以上20mm以下とする場合には、仕上げ圧延開始前の板厚を45mm以上とすることが望ましい。なお、板厚20mmを超える熱延鋼板は、本発明の対象としない。
更に、仕上げ圧延において、未再結晶領域で一定のひずみ量を導入する観点からは、仕上げ圧延機の入り側温度(仕上げ圧延開始温度)を930℃以上1050℃以下とすることが好ましく、950℃以上1020℃以下とすることが、より好ましい。
仕上げ圧延終了温度:820℃以上920℃以下
仕上げ圧延終了温度が820℃を下回ると、オーステナイト粒内にTiを含む炭化物が析出するようになる。このように、Tiを含む炭化物がオーステナイト粒内で析出した場合、この炭化物が著しく粗大化してしまうため、熱延鋼板の強度および耐疲労性が低下する。一方、仕上げ圧延終了温度が920℃を超えると、加工オーステナイトが再結晶化して、オーステナイトに導入された転位が消滅してしまう。その結果、仕上げ圧延終了後にセメンタイトを微細分散させることができず、熱延鋼板の耐疲労性が低下する。したがって、仕上げ圧延終了温度を820℃以上920℃以下とする。好ましくは840℃以上910℃以下である。
仕上げ圧延終了後、強制冷却を開始するまでの時間:3s以内
仕上げ圧延終了後の鋼板を、高温状態に長時間保持すると、仕上げ圧延により調整した加工オーステナイトが再結晶化してしまい、粒状セメンタイトが微細分散した組織が得られなくなる。また、Tiを含む炭化物が高温で析出を開始するため、Tiを含む炭化物が粗大化して、析出強化量が低下する。そのため、熱延鋼板の耐疲労性向上を図る観点、および、強度確保の観点から、熱間圧延終了後速やかに強制冷却を開始する必要があり、仕上げ圧延終了後、少なくとも3秒以内に強制冷却を開始する。好ましくは1.5秒以内である。
平均冷却速度:10℃/s以上120℃/s以下
上記のとおり、仕上げ圧延終了後の鋼板を高温状態に長時間保持することは好ましくない。そこで、本発明においては、所定の冷却速度で冷却することで、仕上げ圧延終了後の鋼板を速やかに冷却する。仕上げ圧延終了後の鋼板を冷却する際の平均冷却速度が10℃/sを下回ると、仕上げ圧延により調整した加工オーステナイトが再結晶化してしまい、粒状セメンタイトが微細分散した組織が得られなくなる。
一方、仕上げ圧延終了後の鋼板を冷却する際の平均冷却速度が120℃/sを上回ると、冷却停止温度の制御が困難となり低温変態相が形成される可能性が高まり、スリット加工後の形状凍結性に優れた熱延鋼板を安定的に得ることが困難となる。したがって、上記平均冷却速度を10℃/s以上120℃/s以下とする。好ましくは、15℃/s以上100℃/s以下である。なお、上記平均冷却速度は、仕上げ圧延終了温度から、後述する冷却停止温度までの温度域における平均冷却速度である。
冷却停止温度および巻取り温度:580℃以上680℃以下
冷却停止温度(強制冷却を停止する温度)および巻取り温度が580℃を下回ると、低温変態相が形成されるため、スリット加工後の形状凍結性に優れた熱延鋼板が得られない。一方、冷却停止温度および巻取り温度が680℃を上回ると、フェライト相の粒界上に析出する粒状セメンタイトやフェライト相の結晶粒内に析出する炭化物(Tiを含む炭化物)が粗大化するため、熱延鋼板の耐疲労性と強度が低下する。したがって、冷却停止温度および巻取り温度は580℃以上680℃以下とする。好ましくは600℃以上660℃以下である。
巻き取り後の熱延鋼板は、表面にスケールが付着した状態であっても、酸洗を行うことによりスケールを除去した状態であっても、その特性が変わることはなく、いずれの状態においても前記した優れた特性を発現する。また、本発明では、巻き取り後の熱延鋼板にめっき処理を施して、熱延鋼板表面にめっき層を形成してもよい。
めっき層の種類は特に問わず、電気めっき層、無電解めっき層のいずれも適用可能である。また、めっき層の合金成分も特に問わない。亜鉛めっき層、特に溶融亜鉛めっき層、合金化溶融亜鉛めっき層などが好適な例として挙げられるが、勿論、これらに限定されない。めっき処理の方法も特に問わず、例えば、熱延鋼板を連続めっきラインに通板し、めっき浴に鋼板を浸漬して引き上げる方法などが挙げられる。また、めっき処理後にガス炉などの炉内で鋼板表面を加熱して合金化処理を施してもよい。なお、本発明の熱延鋼板にめっき処理や合金化処理を施しても、焼鈍温度が720℃以下であれば前記した本発明の効果を損なうことはない。
表1に示す組成を有する肉厚220mm〜260mmの鋼素材に、表2に示す熱延条件で熱間圧延を施して板厚2.0〜12.0mm、板幅1220mmの熱延鋼板とした。得られた熱延鋼板について、以下の方法にしたがい組織観察、抽出残渣分析、引張試験および疲労試験を行った。また、得られた熱延鋼板にスリット加工を施してフープとし、フープに発生した曲がり量を測定することで、スリット加工後の形状凍結性の評価を行った。
(1)組織観察
得られた熱延鋼板について組織観察を行い、フェライト相の面積率、フェライト相以外の組織の面積率、フェライト相の粒界上に析出した粒状セメンタイトの平均粒子径、フェライト相の粒界上に析出した粒状セメンタイトのうち粒子径が0.5μm以下である粒状セメンタイトの単位面積あたりの個数、フェライト相の結晶粒内に析出した炭化物(Tiを含む炭化物)の平均粒子径を求めた。
フェライト相の面積率は、以下の手法により求めた。
得られた熱延鋼板の、圧延方向に平行な断面の板厚中心部について、5%ナイタールによる腐食現出組織を走査型光学顕微鏡で1000倍に拡大して10視野分撮影した。フェライト相は粒内に腐食痕やセメンタイトが観察されない形態を有する組織である。また、ポリゴナルフェライト、ベイニティックフェライト、アシキュラーフェライトおよびグラニュラーフェライトをフェライトとして面積率を求めた。フェライト相の面積率は、画像解析によりフェライト相とベイナイト相やパーライト等のフェライト相以外を分離し、観察視野に対するフェライト相の面積率によって求めた。セメンタイトとフェライト相とがラミナー構造を形成している領域は、パーライトとしてその面積率を求めた。線状の形態として観察される粒界はフェライト相の一部として計上した。
なお、フェライト相以外の組織(粒状セメンタイト、パーライト等)の面積率についても、上記と同様に、観察視野に対する各組織の面積率によって求めた。なお、粒状セメンタイトの面積率を測定するうえで、パーライトを構成するセメンタイトは測定対象外とした。
フェライト相の粒界上に析出した粒状セメンタイトの平均粒子径、およびフェライト相の粒界上に析出した粒状セメンタイトのうち粒子径が0.5μm以下である粒状セメンタイトの単位面積当たりの個数は、以下の手法により求めた。
上記撮影写真を用い、フェライト相の粒界上に析出したセメンタイトの粒子径(前記(1)式で算出される円相当直径)を測定し、その平均を平均粒子径とした。セメンタイトの粒子径を測定するうえで、パーライトを構成するセメンタイトは測定対象外とした。フェライト相の粒界上に析出した粒状セメンタイトのうち粒子径が0.5μm以下である粒状セメンタイトの単位面積あたりの個数は、平均粒子径を測定したセメンタイトを対象に、0.5μm以下の粒子径を有するセメンタイトの個数を求め、この個数を測定視野面積で除することにより算出した。なお、粒子径が0.5μm以下である粒状セメンタイトには、長辺の長さが1.0μm以下であり且つ前記(1)式で計算される円相当直径が0.5μm以下であるセメンタイトも含まれる。また、1000倍の観察写真から観察可能なセメンタイトの粒子径下限は0.1μm程度である。
フェライト相の結晶粒内に析出した炭化物(Tiを含む炭化物)の平均粒子径は、以下の手法により求めた。
得られた熱延鋼板の板厚中央部から薄膜法によって薄膜サンプルを作製し、透過型電子顕微鏡(倍率:135000倍)の暗視野で観察し、観察される炭化物のうちTiを含む炭化物100点以上について粒子径(円相当直径)を測定し、これらの平均値を算出することによって求めた。炭化物の同定には、透過型電子顕微鏡に付帯するEDXを用い、炭化物にTiが含まれていることを確認した。この炭化物の平均粒子径を算出するうえで、粒子径が1.0μm以上の粗大なセメンタイトや窒化物は含まないものとした。
(2)抽出残渣分析
得られた熱延鋼板の表裏面について、板厚に対し1/4に相当する厚さを除去し、残りの板厚の中央となる位置からサンプルを採取し、以下の手法により抽出残渣分析を行い、固溶Ti量を求めた。
10%AA系電解液(10vol%アセチルアセトン−1mass%塩化テトラメチルアンモニウム−メタノール)中で、サンプルの約0.2gを電流密度20mA/cm2で定電流電解し、電解液中の残渣を分離したのち、電解液中に含まれるTi量をICP発光分析装置により定量した。電解したサンプル重量と電解液に含まれるTi量から固溶Ti量(質量比)を求めた。
(3)引張試験
得られた熱延鋼板から、引張方向が圧延方向と垂直方向(C方向)となるJIS5号引張試験片を作製し、JIS Z 2241(2011)の規定に準拠した引張試験を行い、降伏強さ(YS)、引張強さ(TS)、全伸び(El)を求めた。降伏強さは、下降伏点または0.2%耐力とした。
(4)疲労試験
得られた熱延鋼板から、試験片長手方向が圧延方向と垂直方向となるJIS1号試験片を作製し、JIS Z 2275(1978)に準拠した平面曲げ疲れ試験(片振り応力、周波数25Hz)を行い、繰り返し数107回までの疲労限度(疲れ強さ)を求めた。
(5)フープ板面内の曲がり量測定(スリット加工後の形状凍結性の評価)
得られた熱延鋼板(板幅:1220mmの熱延コイル)に対し、コイルの両端各10mmをトリムするとともに、長手方向にスリット加工(条取り)を施して3条のフープ(幅:400mm)とした。次いで、各フープにせん断加工を施して、フープ長手方向中央部から長さ5m×幅400mmの短冊状試料を切り出し、短冊状試料の板面内の曲がり量を測定した。図1に、短冊状試料の形状(短冊状試料の板面の法線と平行な方向から観察される短冊状試料形状の概略図)を示す。短冊状試料の板面内の曲がり量は、図1に示すように、短冊状試料の長手方向両端部(図1中のA点およびB点)を線分で結び、その線分と短冊状試料の長手方向中心部(図1中のC点)との距離(絶対値)を測定することにより求めた。そして、3条のフープから切り出した短冊状試料について測定された曲がり量の平均値を、フープ板面内の曲がり量とした。
以上の結果を表3に示す。表3において、降伏強さ:600MPa以上、疲労限度:350MPa以上、スリット加工後の板面内の曲がり量:4.5mm以下の全ての条件を満足する場合は、本発明で求める材質のものとして評価を良好“○”とした。一方、上記条件のいずれか1つでも満足しない場合は、評価を不良“×”とした。
Figure 0006123551
Figure 0006123551
Figure 0006123551
本発明例はいずれも、降伏強さYS:600MPa以上であり、耐疲労性およびスリット加工後の形状凍結性にも優れた熱延鋼板となっている。更に、V添加により降伏強さが700MPa以上の熱延鋼板が得られていることがわかる。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、所定の降伏強さが得られていないか、耐疲労性やスリット加工後の形状凍結性が不十分である。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C :0.06%以上0.13%以下、 Si:0.5%超1.5%以下、
    Mn:1.0%以上1.8%以下、 P :0.03%以下、
    S :0.006%以下、 Al:0.08%以下、
    N :0.0080%以下、 Ti:0.09%以上0.16%以下
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、フェライト相および粒状セメンタイト、或いは更にパーライトからなり、前記フェライト相の面積率が85%以上97%以下、前記粒状セメンタイトのうち前記フェライト相の粒界上に析出した粒状セメンタイトの下記式(1)で求められる円相当直径を粒子径として平均粒子径が0.5μm以下、前記粒界上に析出した粒状セメンタイトのうち前記粒子径が0.5μm以下である粒状セメンタイトの単位面積当たりの個数が1.5×105個/mm2以上であり、前記フェライト相の結晶粒内に析出したTiを含む炭化物の平均粒子径が10nm以下であり、固溶Ti量が質量%で0.03%以下である組織を有し、降伏強さが600MPa以上、疲労限度が350MPa以上、スリット加工後の板面内の曲がり量が4.5mm以下であることを特徴とする耐疲労性およびスリット加工後の形状凍結性に優れた高強度熱延鋼板。

    (円相当直径)=(4×(粒状セメンタイトの長辺)×(粒状セメンタイトの短辺)/π) 1/2
    ・・・(1)
  2. 前記組成に加えて更に、質量%でV:0.001%以上0.10%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐疲労性およびスリット加工後の形状凍結性に優れた高強度熱延鋼板。
  3. 鋼素材を加熱し、粗圧延および仕上げ圧延からなる熱間圧延を施した後、冷却し、巻き取り、熱延鋼板とするにあたり、前記鋼素材を、質量%で、
    C :0.06%以上0.13%以下、 Si:0.5%超1.5%以下、
    Mn:1.0%以上1.8%以下、 P :0.03%以下、
    S :0.006%以下、 Al:0.08%以下、
    N :0.0080%以下、 Ti:0.09%以上0.16%以下
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とし、前記加熱の加熱温度を1180℃以上1350℃以下とし、前記粗圧延で5回以上のひずみを与え、前記仕上げ圧延前の板厚を30mm以上とし、前記仕上げ圧延の仕上げ圧延終了温度を820℃以上920℃以下とし、前記冷却を仕上げ圧延終了後3s以内に開始し、前記冷却の平均冷却速度を10℃/s以上120℃/s以下とし、前記冷却の停止温度および前記巻き取りの巻取り温度を580℃以上680℃以下とし、フェライト相および粒状セメンタイト、或いは更にパーライトからなり、前記フェライト相の面積率が85%以上97%以下、前記粒状セメンタイトのうち前記フェライト相の粒界上に析出した粒状セメンタイトの下記式(1)で求められる円相当直径を粒子径として平均粒子径が0.5μm以下、前記粒界上に析出した粒状セメンタイトのうち前記粒子径が0.5μm以下である粒状セメンタイトの単位面積当たりの個数が1.5×105個/mm2以上であり、前記フェライト相の結晶粒内に析出したTiを含む炭化物の平均粒子径が10nm以下であり、固溶Ti量が質量%で0.03%以下である組織を有し、降伏強さが600MPa以上、疲労限度が350MPa以上、スリット加工後の板面内の曲がり量が4.5mm以下である板厚10mm以下の熱延鋼板とすることを特徴とする耐疲労性およびスリット加工後の形状凍結性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。

    (円相当直径)=(4×(粒状セメンタイトの長辺)×(粒状セメンタイトの短辺)/π) 1/2
    ・・・(1)
  4. 前記組成に加えて更に、質量%でV:0.001%以上0.10%以下を含有することを特徴とする請求項3に記載の耐疲労性およびスリット加工後の形状凍結性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
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