JP2015145205A - 車両挙動制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】オーバーステア状態を抑制するための制動力を適切に調整して、車両挙動制御中にアンダーステア状態が発生することを抑制することができる車両挙動制御装置を提供する。
【解決手段】車両挙動制御装置の制御部100は、車両の旋回外輪に、設定した目標制動力で制動力を与えることにより車両の挙動を安定させる挙動安定制御を実行する挙動安定制御手段160を備える。挙動安定制御手段160は、最初の急旋回である第1旋回の場合よりも、第1旋回以外の急旋回である第2旋回の場合に目標制動力を小さく設定する目標液圧設定部168を有する。
【選択図】図3

Description

本発明は、車両の挙動を安定させる車両挙動制御装置に関する。
車両の挙動を安定させる挙動安定制御装置として、車両の急旋回中に旋回外輪に制動力を与えることでオーバーステア状態を抑制するように構成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2010−64720号公報
ところで、車両の走行状態が、例えば、直進から左旋回、右旋回、左旋回のように交互に変化する場合においては、2番目以降の旋回時に旋回外輪に対して1番目の旋回のときと同様の制動力を与えると、アンダーステア状態を引き起こす可能性がある。
そこで、本発明は、オーバーステア状態を抑制するための制動力を適切に調整して、車両挙動制御中にアンダーステア状態が発生することを抑制することができる車両挙動制御装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決する本発明は、車両の旋回外輪に、設定した目標制動力で制動力を与えることにより車両の挙動を安定させる挙動安定制御を実行する挙動安定制御手段を備え、前記挙動安定制御手段は、最初の急旋回である第1旋回の場合よりも、前記第1旋回以外の急旋回である第2旋回の場合に前記目標制動力を小さく設定する目標制動力設定部を有することを特徴とする。
このような構成によると、第1旋回の場合よりも第2旋回の場合に目標制動力を小さく設定できることで、第2旋回時の車両挙動制御中にアンダーステア状態が発生することを抑制することができる。また、言い換えれば、第1旋回の場合に第2旋回の場合よりも目標制動力を大きくできるので、最初の急旋回時に強い制動力を与えることができ、第1旋回時の車両挙動制御中におけるオーバーステア状態を効果的に抑制することができる。
ここで、本発明において、急旋回とは、挙動安定制御が実行される旋回状態をいうものとする。そして、第1旋回とは、直進状態や、挙動安定制御が実行されない緩やかな旋回状態からの最初の急旋回をいうものとし、第2旋回とは、第1旋回から引き続いて行われる2回目以降の急旋回をいうものとする。
前記した装置は、横加速度を取得する横加速度取得手段と、前記横加速度を、当該横加速度の絶対値が増加するときには、これに倣って増加し、減少するときには、減少しにくい値とした補正横加速度を算出する補正横加速度算出手段と、前記補正横加速度の変化量を算出する変化量算出手段と、操舵角を取得する操舵角取得手段と、車両速度を取得する車両速度取得手段と、前記車両速度と、前記操舵角とに基づいて車両の規範ヨーレートを算出する規範ヨーレート算出手段とを備え、前記目標制動力設定部は、前記挙動安定制御を開始するときに前記補正横加速度の変化量が第1判定閾値以上であって前記規範ヨーレートが第2判定閾値を超えた場合を前記第1旋回の場合と判定し、前記挙動安定制御を開始するときに前記補正横加速度の変化量が前記第1判定閾値未満であって前記規範ヨーレートが前記第2判定閾値を超えた場合を前記第2旋回の場合と判定する構成とすることができる。
また、前記した装置は、横加速度を取得する横加速度取得手段と、前記横加速度を、当該横加速度の絶対値が増加するときには、これに倣って増加し、減少するときには、減少しにくい値とした補正横加速度を算出する補正横加速度算出手段と、操舵角を取得する操舵角取得手段と、前記操舵角が旋回判定閾値を超えたときに旋回中であると判定し、前記操舵角が前記旋回判定閾値以下のときに旋回中でないと判定する旋回判定手段とを備え、前記目標制動力設定部は、前記旋回判定手段が旋回中であると判定しているときに前記補正横加速度が第3判定閾値よりも小さい値から前記第3判定閾値以上の値に変化した場合に判定フラグを0から1とし、前記旋回判定手段が旋回中でないと判定したときに前記判定フラグが1である場合は0とし、前記旋回判定手段が旋回中であると判定しているときに前記判定フラグが1である場合の旋回を前記第1旋回の場合と判定し、前記旋回判定手段が旋回中であると判定しているときに前記判定フラグが0である場合の旋回を前記第2旋回の場合と判定する構成とすることができる。
前記した装置において、前記挙動安定制御手段は、前記第1旋回の場合よりも、前記第2旋回の場合に前記挙動安定制御が開始されやすいように構成することができる。
このような構成によると、第1旋回の場合よりも車両の挙動が不安定になりやすい第2旋回の場合に、第1旋回の場合よりも挙動安定制御が実行されやすくなるので、車両の挙動をより安定させることができる。
本発明の車両挙動制御装置によれば、オーバーステア状態を抑制するための制動力を適切に調整して、車両挙動制御中にアンダーステア状態が発生することを抑制することができる。
本発明の一実施形態に係る車両挙動制御装置を備えた車両の構成図である。 液圧ユニットの構成を示す構成図である。 制御部の構成を示すブロック図である。 操舵角、横加速度、補正横加速度および横加速度変化量の変化を示すタイミングチャートである。 操舵角速度とオフセット量の関係を示すマップである。 目標液圧を設定するための、規範ヨーレートと限界ヨーレートの偏差と、目標液圧との関係を示すマップである。 終了処理モードにおける今回の目標液圧PTを設定するための、前回の目標液圧PTn−1と今回の目標液圧PTの関係を示すマップである。 挙動安定制御の全体処理を示すフローチャートである。 目標液圧設定の処理を示すフローチャートである。 制御終了判定の処理を示すフローチャートである。 車両挙動制御の動作を説明するための、車両速度、横加速度変化量、各種のヨーレート、操舵角速度および目標液圧の変化を示すタイミングチャートである。 従来の車両挙動制御装置における、(a)操舵角、実ヨーレートおよびスリップ角の変化、(b)各車輪のブレーキ液圧の変化、を示すタイミングチャートである。 本実施形態の車両挙動制御装置における、(a)操舵角、実ヨーレートおよびスリップ角の変化、(b)各車輪のブレーキ液圧の変化、を示すタイミングチャートである。 比較例の車両挙動制御装置における、(a)操舵角、実ヨーレートおよび横加速度の変化、(b)各車輪のブレーキ液圧の変化、を示すタイミングチャートである。 本実施形態の車両挙動制御装置における、(a)操舵角、実ヨーレートおよび横加速度の変化、(b)各車輪のブレーキ液圧の変化、(c)制御モードの変化、を示すタイミングチャートである。 変形例における制御部の構成を示すブロック図である。 変形例における旋回の判定を説明するための、補正横加速度、各種のヨーレート、目標液圧および各種のフラグの変化を示すタイミングチャートである。
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、一実施形態に係る車両挙動制御装置Aは、車両CRの各車輪Wに付与する制動力を適宜制御する装置である。車両挙動制御装置Aは、油路や各種部品が設けられる液圧ユニット10と、液圧ユニット10内の各種部品を適宜制御するための制御部100とを主に備えている。
各車輪Wには、それぞれ車輪ブレーキFL,RR,RL,FRが備えられ、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRには、液圧源としてのマスタシリンダMCから供給される液圧により制動力を発生するホイールシリンダHが備えられている。マスタシリンダMCとホイールシリンダHとは、それぞれ液圧ユニット10に接続されている。そして、ブレーキペダルBPの踏力(運転者の制動操作)に応じてマスタシリンダMCで発生したブレーキ液圧が、制御部100および液圧ユニット10で制御された上でホイールシリンダHに供給される。
制御部100には、マスタシリンダMCの圧力を検出する圧力センサ91と、各車輪Wの車輪速度を検出する車輪速センサ92と、ステアリングSTの操舵角θを検出する操舵角センサ93と、車両CRの横方向に作用する加速度(横加速度AY)を検出する横加速度センサ94が接続されている。そして、この制御部100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)および入出力回路を備えており、各センサ91〜94からの入力と、ROMに記憶されたプログラムやデータに基づいて各種演算処理を行うことによって、制御を実行する。なお、制御部100の詳細は、後述することとする。
図2に示すように、液圧ユニット10は、運転者がブレーキペダルBPに加える踏力に応じたブレーキ液圧を発生する液圧源であるマスタシリンダMCと、車輪ブレーキFR,FL,RR,RLとの間に配置されている。液圧ユニット10は、ブレーキ液が流通する油路(液圧路)を有する基体であるポンプボディ10a、油路上に複数配置された入口弁1、出口弁2等から構成されている。マスタシリンダMCの二つの出力ポートM1,M2は、ポンプボディ10aの入口ポート121に接続され、ポンプボディ10aの出口ポート122が、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに接続されている。そして、通常時はポンプボディ10a内の入口ポート121から出口ポート122までが連通した油路となっていることで、ブレーキペダルBPの踏力が各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに伝達されるようになっている。
ここで、出力ポートM1から始まる油路は、前輪左側の車輪ブレーキFLと後輪右側の車輪ブレーキRRに通じており、出力ポートM2から始まる油路は、前輪右側の車輪ブレーキFRと後輪左側の車輪ブレーキRLに通じている。なお、以下では、出力ポートM1から始まる油路を「第一系統」と称し、出力ポートM2から始まる油路を「第二系統」と称する。
液圧ユニット10には、その第一系統に各車輪ブレーキFL,RRに対応して二つの制御弁手段VLが設けられており、同様に、その第二系統に各車輪ブレーキRL,FRに対応して二つの制御弁手段VLが設けられている。また、この液圧ユニット10には、第一系統および第二系統のそれぞれに、リザーバ3、ポンプ4、オリフィス5a、調圧弁(レギュレータ)R、吸入弁7が設けられている。また、液圧ユニット10には、第一系統のポンプ4と第二系統のポンプ4とを駆動するための共通のモータ9が設けられている。
なお、以下では、マスタシリンダMCの出力ポートM1,M2から各調圧弁Rに至る油路を「出力液圧路A1」と称し、第一系統の調圧弁Rから車輪ブレーキFL,RRに至る油路および第二系統の調圧弁Rから車輪ブレーキRL,FRに至る油路をそれぞれ「車輪液圧路B」と称する。また、出力液圧路A1からポンプ4に至る油路を「吸入液圧路C」と称し、ポンプ4から車輪液圧路Bに至る油路を「吐出液圧路D」と称し、さらに、車輪液圧路Bから吸入液圧路Cに至る油路を「開放路E」と称する。
制御弁手段VLは、マスタシリンダMCまたはポンプ4側から車輪ブレーキFL,RR,RL,FR側(詳細には、ホイールシリンダH側)への液圧の行き来を制御する弁であり、ホイールシリンダ圧(ホイールシリンダH内の圧力)を増加、保持または低下させることができる。そのため、制御弁手段VLは、入口弁1、出口弁2、チェック弁1aを備えて構成されている。
入口弁1は、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRとマスタシリンダMCとの間、すなわち車輪液圧路Bに設けられた常開型の電磁弁である。入口弁1は、通常時に開いていることで、マスタシリンダMCから各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRへブレーキ液圧が伝達するのを許容している。また、入口弁1は、制御部100により適宜閉塞されることで、ブレーキペダルBPから各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに伝達するブレーキ液圧を遮断する。
出口弁2は、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRと各リザーバ3との間、すなわち車輪液圧路Bと開放路Eとの間に介設された常閉型の電磁弁である。出口弁2は、通常時に閉塞されているが、制御部100により適宜開放されることで、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに作用するブレーキ液圧を各リザーバ3に逃がす。
チェック弁1aは、各入口弁1に並列に接続されている。このチェック弁1aは、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RR側からマスタシリンダMC側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、ブレーキペダルBPからの入力が解除された場合に、入口弁1を閉じた状態にしたときにおいても、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RR側からマスタシリンダMC側へのブレーキ液の流入を許容する。
リザーバ3は、開放路Eに設けられており、各出口弁2が開放されることによって逃がされるブレーキ液圧を貯留する機能を有している。また、リザーバ3とポンプ4との間には、リザーバ3側からポンプ4側へのブレーキ液の流れのみを許容するチェック弁3aが介設されている。
ポンプ4は、出力液圧路A1に通じる吸入液圧路Cと車輪液圧路Bに通じる吐出液圧路Dとの間に介設されており、リザーバ3で貯留されているブレーキ液を吸入して吐出液圧路Dに吐出する機能を有している。
オリフィス5aは、ポンプ4から吐出されたブレーキ液の圧力の脈動および後述する調圧弁Rが作動することにより発生する脈動を減衰させている。
調圧弁Rは、通常時に出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流れを許容するとともに、ポンプ4が発生したブレーキ液圧によりホイールシリンダH側の圧力を増加するときには、この流れを遮断しつつ、吐出液圧路D、車輪液圧路Bおよび制御弁手段VL(ホイールシリンダH)側の圧力を設定値に調節する機能を有し、切換弁6およびチェック弁6aを備えて構成されている。
切換弁6は、マスタシリンダMCに通じる出力液圧路A1と各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに通じる車輪液圧路Bとの間に介設された常開型のリニアソレノイド弁である。
チェック弁6aは、各切換弁6に並列に接続されている。このチェック弁6aは、出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流れを許容する一方向弁である。
吸入弁7は、吸入液圧路Cに設けられた常閉型の電磁弁であり、吸入液圧路Cを開放する状態および遮断する状態を切り換えるものである。
圧力センサ91は、出力液圧路A1のブレーキ液圧を検出するものであり、その検出結果は制御部100に入力される。
次に、制御部100の詳細について説明する。
制御部100は、液圧ユニット10を制御して車両CRの旋回外輪に設定した目標制動力で制動力を与えることにより車両CRの挙動を安定化させる制御を実行する装置である。このため、制御部100は、図3に示すように、操舵角取得手段110、横加速度取得手段111、車両速度算出手段120、操舵角速度算出手段130、規範ヨーレート算出手段140、限界ヨーレート設定手段150、補正横加速度算出手段151、変化量算出手段152、挙動安定制御手段160および記憶手段190を備えて構成されている。なお、圧力センサ91の出力は、本発明の車両挙動制御装置Aの特徴的構成にとって必要でないので、図3においては省略している。また、以下の説明において、横加速度AY、操舵角θ、操舵角速度ωなどの各変数は、左旋回時の値を正とし、右旋回時の値を負とする。
操舵角取得手段110は、操舵角センサ93から、制御サイクルごとに操舵角θの情報を取得する手段である。操舵角θは、操舵角速度算出手段130および規範ヨーレート算出手段140に出力される。
横加速度取得手段111は、横加速度センサ94から、制御サイクルごとに横加速度AYの情報を取得する手段である。横加速度AYは、補正横加速度算出手段151に出力される。
車両速度算出手段120は、車両速度取得手段の一例であり、車輪速センサ92から、制御サイクルごとに車輪速の情報(車輪速センサ92のパルス信号)を取得し、公知の手法で車輪速度および車両速度Vを算出する手段である。算出した車両速度Vは、規範ヨーレート算出手段140および限界ヨーレート設定手段150に出力される。
操舵角速度算出手段130は、操舵角θから操舵角速度ωを算出する手段である。操舵角速度ωは、操舵角θを微分したり、前回の操舵角θn−1と今回の操舵角θの差を算出することで得ることができる。算出した操舵角速度ωは、挙動安定制御手段160に出力される。なお、本明細書において、変数の後に付する添え字nは、変数が今回値であることを示し、n−1は、前回値であることを示す。
規範ヨーレート算出手段140は、操舵角θと車両速度Vに基づいて、公知の手法により、運転者の意図するヨーレートとしての規範ヨーレートYSを算出する手段である。算出された規範ヨーレートYSは、挙動安定制御手段160に出力される。
限界ヨーレート設定手段150は、車両速度Vと路面摩擦係数に基づき、車両が安定して走行できる限界のヨーレートである限界ヨーレートYLを設定する手段である。具体的には、限界ヨーレートYLは、図11の各種ヨーレートの変化のグラフに示すように、第1限界ヨーレートYL1と第2限界ヨーレートYL2の2種類を設定し、各限界ヨーレートYL1,YL2について右旋回用と左旋回用の2つの値(合計4つの値)を算出する。第2限界ヨーレートYL2は、第1限界ヨーレートYL1よりも所定の割合で小さくした値の路面摩擦係数を用いて算出する。これにより、第2限界ヨーレートYL2の絶対値は、第1限界ヨーレートYL1の絶対値よりも小さくなっている。限界ヨーレートYL1,YL2は、車両速度Vが大きいほど小さい値に設定される。なお、本実施形態においては、第1限界ヨーレートYL1を算出するときの路面状態がドライ路面であると仮定しているが、制御部100が信頼できる推定路面摩擦係数を保持しているときには、その推定路面摩擦係数を用いて限界ヨーレートYL1,YL2を算出してもよい。算出した限界ヨーレートYL(YL1,YL2)は、挙動安定制御手段160に出力される。
補正横加速度算出手段151は、横加速度AYをフィルタ処理した値である補正横加速度AYCを算出する手段である。具体的には、図4に示すように、横加速度AYの絶対値|AY|を計算し、この絶対値|AY|が増加するときには、これに倣って増加するように絶対値|AY|の値と同じ値とし、絶対値|AY|が減少するときには、減少しにくい値となるように、所定の変化量の範囲内で前回の値より小さくするように変化させた、補正横加速度AYCを算出する。算出した補正横加速度AYCは、変化量算出手段152に出力される。
変化量算出手段152は、補正横加速度AYCの時間的変化量である横加速度変化量AYDを算出する手段である。横加速度変化量AYDは、例えば、前回の補正横加速度AYCn−1と今回の補正横加速度AYCの差を算出することで得ることができる。算出した横加速度変化量AYDは、挙動安定制御手段160に出力される。
挙動安定制御手段160は、車両CRの旋回外輪に、設定した目標制動力で制動力を与えることにより車両CRの挙動を安定させる挙動安定制御を実行する手段である。本実施形態においては、目標制動力に相当する値として、目標液圧PTを設定し、旋回外輪の車輪ブレーキFL,RR,RL,FRのホイールシリンダ圧が目標液圧PTとなるように液圧ユニット10を制御する。この制御のために、挙動安定制御手段160は、制御介入閾値設定部163、制御介入判定部164、制御終了判定部165、変化量判定部174、目標制動力設定部の一例としての目標液圧設定部168および制御実行部169を有する。
制御介入閾値設定部163は、限界ヨーレートYLと、操舵角速度ωとに基づいて、制御介入閾値YSthを設定する手段である。具体的には、第1限界ヨーレートYL1に、操舵角速度ωの絶対値に依存したオフセット量YDを加算(右旋回用について負側に加算)することで第1制御介入閾値YSth1を算出し、第2限界ヨーレートYL2に、オフセット量YDを加算することで第2制御介入閾値YSth2を算出する。オフセット量YDは、図5に示すように、操舵角速度ωの絶対値が0から所定値ω1までの間は、一定値YD1であり、所定値ω1から所定値ω2までの間は、操舵角速度ωの絶対値が大きくなるほど小さくなり、所定値ω2より大きい範囲では、YD1より小さな一定値YD2とされている。このため、制御介入閾値YSth1,YSth2の絶対値は、操舵角速度ωの絶対値が大きいほど小さく設定される。図11の各種ヨーレートの変化のグラフに示すように、制御介入閾値YSth1,YSth2は、それぞれ、右旋回用と左旋回用の2つの値(合計4つの値)を算出する。本実施形態においては、第2限界ヨーレートYL2の絶対値が第1限界ヨーレートYL1の絶対値よりも小さいため、第2制御介入閾値YSth2の絶対値は、第1制御介入閾値YSth1の絶対値よりも小さい値となる。制御介入閾値設定部163は、算出した制御介入閾値YSth(YSth1,YSth2)を、制御介入判定部164に出力する。
変化量判定部174は、横加速度変化量AYDが第1判定閾値の一例としての変化量閾値AYth以上であるか否かを判定する手段である。変化量閾値AYthは、規範ヨーレートYSの絶対値が制御介入閾値YSth1,YSth2の絶対値を超える前に、横加速度変化量AYDが超えうる程度の値として設定される。変化量判定部174は、判定結果を制御介入判定部164に出力する。
制御介入判定部164は、規範ヨーレートYSの絶対値が、制御介入閾値設定部163が設定した制御介入閾値YSthの絶対値を超えた場合に挙動安定制御を開始すると判定する手段である。具体的には、変化量判定部174が、横加速度変化量AYDが変化量閾値AYth以上であると判定している場合は、規範ヨーレートYSの絶対値が第1制御介入閾値YSth1の絶対値を超えた場合に挙動安定制御を開始すると判定し、変化量判定部174が、横加速度変化量AYDが変化量閾値AYth未満であると判定している場合は、規範ヨーレートYSの絶対値が第2制御介入閾値YSth2の絶対値を超えた場合に挙動安定制御を開始すると判定する。なお、規範ヨーレートYSが正の場合には、左旋回用の制御介入閾値YSth1,YSth2と比較し、負の場合には、右旋回用の制御介入閾値YSth1,YSth2と比較する。
制御介入判定部164は、規範ヨーレートYSの絶対値が第1制御介入閾値YSth1の絶対値を超えることで挙動安定制御を開始すると判定すると、制御モードMを、非制御中(M=0)から第1旋回における制御中(M=1)に変更し、規範ヨーレートYSの絶対値が第2制御介入閾値YSth2の絶対値を超えることで挙動安定制御を開始すると判定すると、制御モードMを、非制御中(M=0)から第2旋回における制御中(M=2)に変更する。なお、制御介入閾値YSth1,YSth2は、操舵角速度ωに基づいて設定されているので、制御介入判定部164は、操舵角速度ωに基づいて挙動安定制御の開始を判定している。
本実施形態においては、第2制御介入閾値YSth2の絶対値が第1制御介入閾値YSth1の絶対値よりも小さいため、規範ヨーレートYSの絶対値は、第2制御介入閾値YSth2の絶対値を超えやすくなっている。つまり、本実施形態において、制御介入判定部164は、制御モードMが1(第1旋回)の場合よりも、制御モードMが2(第2旋回)の場合に挙動安定制御が開始されやすいように構成されている。
制御終了判定部165は、挙動安定制御の終了を判定する手段である。具体的には、規範ヨーレートYSの絶対値が第1制御介入閾値YSth1の絶対値を超えて挙動安定制御を開始したとき、つまり、制御モードMが1のときには、規範ヨーレートYSの絶対値が制御終了閾値としての第1限界ヨーレートYL1の絶対値より小さくなった場合に挙動安定制御の終了を判定する。また、規範ヨーレートYSの絶対値が第2制御介入閾値YSth2の絶対値を超えて挙動安定制御を開始したとき、つまり、制御モードMが2のときには、規範ヨーレートYSの絶対値が制御終了閾値としての第2限界ヨーレートYL2の絶対値より小さくなった場合に挙動安定制御の終了を判定する。制御終了判定部165は、挙動安定制御の終了を判定すると、制御モードMを終了処理中(M=3)とする。
目標液圧設定部168は、制御モードMが制御中(M=1または2)であるか、終了処理中(M=3)であるかに応じて目標液圧PTを設定する手段である。まず、制御中の場合について説明する。制御中において、目標液圧設定部168は、規範ヨーレートYSと、限界ヨーレートYL(YL1,YL2)とに基づいて、目標液圧PTを設定する。
目標液圧設定部168は、規範ヨーレートYSと、限界ヨーレートYLの偏差ΔYに基づいて、この偏差ΔYが大きいほど目標液圧PTを大きい値に設定する。ここで、ΔYは、規範ヨーレートYSと限界ヨーレートYLの差の絶対値|YS−YL|が増加する場合には、そのまま|YS−YL|の値とし、減少する場合には、前回の値を保持するように計算する。すなわち、ΔYは、|YS−YL|がピークを迎えた後は、ピーク値を保持するように変化する。図6は、目標液圧PTを設定するためのマップMP1,MP2であり、ΔYが大きいほど、目標液圧PTが大きい値になるように決められている。詳細には、マップMP1は、偏差ΔYが0から所定の値d1までは、目標液圧PTは徐々に大きくなり、偏差ΔYが所定の値d1以上では、目標液圧PTは、一定の上限値PTm1とされている。また、マップMP2は、マップMP1よりも目標液圧PTが小さな値に設定されており、偏差ΔYが0から所定の値d1までは、目標液圧PTは徐々に大きくなり、偏差ΔYが所定の値d1以上では、目標液圧PTは、PTm1より小さな一定の上限値PTm2とされている。
ここで、偏差ΔYは、車両CRの挙動の乱れを反映しているので偏差ΔYの大きさに応じて目標液圧PTを設定することで、予測される車両CRの挙動の乱れの大きさに応じた制動力を旋回外輪に与えることができるため、車両CRの挙動の乱れを軽減することができる。
目標液圧設定部168は、まず、制御モードMが1である場合(挙動安定制御を開始するときに横加速度変化量AYDが変化量閾値AYth以上であって、かつ、規範ヨーレートYSが第2判定閾値の一例としての制御介入閾値YSth、具体的には、第1制御介入閾値YSth1を超えた場合)を第1旋回の場合と判定し、制御モードMが2である場合(挙動安定制御を開始するときに横加速度変化量AYDが変化量閾値AYth未満であって、かつ、規範ヨーレートYSが制御介入閾値YSth、具体的には、第2制御介入閾値YSth2を超えた場合)を第2旋回の場合と判定する。
目標液圧設定部168は、第1旋回の場合と判定したとき(制御モードMが1のとき)、規範ヨーレートYSと、第1限界ヨーレートYL1の偏差ΔYからマップMP1に基づいて目標液圧PTを設定する。また、第2旋回の場合と判定したとき(制御モードMが2のとき)、規範ヨーレートYSと、第2限界ヨーレートYL2の偏差ΔYからマップMP1よりも小さな値のマップMP2に基づいて目標液圧PTを設定する。これにより、目標液圧設定部168は、図11に示すように、第1旋回の場合よりも、第2旋回の場合に目標液圧PTを小さく設定する。
次に、終了処理中の場合の目標液圧PTの設定について説明する。終了処理中において、目標液圧設定部168は、前回の目標液圧PTn−1に基づき、図7のマップに基づいて今回の目標液圧PTを設定する。図7のマップは、前回の目標液圧PTn−1が大きいほど今回の目標液圧PTが大きいが、今回の目標液圧PTは、前回の目標液圧PTn−1よりも少し小さい値になるように設定されている。なお、前回の目標液圧PTn−1が所定値より小さい場合には、今回の目標液圧PTは0となるように設定されている。今回の目標液圧PTが0となる場合には、目標液圧設定部168は、制御モードMを非制御中(M=0)に変更する。
制御実行部169は、目標液圧設定部168が設定した目標液圧PTに基づいて、液圧ユニット10を制御して、旋回外輪のホイールシリンダ圧を目標液圧PTに制御する手段である。この制御は公知であるので詳細な説明は省略するが、簡単に説明すると、モータ9を作動させることでポンプ4を駆動し、吸入弁7を開けた上で、調圧弁Rに適宜な電流を流すように制御する。
記憶手段190は、制御部100の動作に必要な定数、パラメータ、制御モード、マップ、計算結果などを適宜記憶する手段である。
以上のように構成された車両挙動制御装置Aの制御部100による処理について図8を参照して説明する。なお、図8の処理は、制御サイクルごとに繰り返し行われる。また、制御モードMの初期値は0である。
まず、横加速度取得手段111は、横加速度センサ94から横加速度AYを取得し、操舵角取得手段110は、操舵角センサ93から操舵角θを取得し、車両速度算出手段120は、車輪速センサ92から車輪速度を取得する(S101)。そして、補正横加速度算出手段151は、横加速度AYから補正横加速度AYCを算出し、操舵角速度算出手段130は、操舵角θから操舵角速度ωを算出し、車両速度算出手段120は、車輪速度から車両速度Vを算出する(S102)。次に、規範ヨーレート算出手段140は、操舵角θと車両速度Vに基づいて規範ヨーレートYSを算出する(S110)。また、限界ヨーレート設定手段150は、車両速度Vと路面摩擦係数に基づいて限界ヨーレートYL1,YL2を設定する(S111)。
次に、制御介入閾値設定部163は、限界ヨーレートYL1,YL2と操舵角速度ωに基づいて、制御介入閾値YSth1,YSth2を設定する(S112)。このとき、前記したように、限界ヨーレートYL1,YL2に、図5に示したような、操舵角速度ωの絶対値が大きくなるほど小さくなるオフセット量YDを加算して制御介入閾値YSth1,YSth2を設定するので、制御介入閾値YSth1,YSth2は、操舵角速度ωの絶対値が大きいほどその大きさが小さくなる。
次に、変化量算出手段152は、補正横加速度AYCから横加速度変化量AYDを算出する(S121)。そして、変化量判定部174は、横加速度変化量AYDが変化量閾値AYth以上であるか否かを判定する(S122)。横加速度変化量AYDが変化量閾値AYth以上である場合(S122,Yes)、制御介入判定部164は、規範ヨーレートYSの絶対値が、右旋回用または左旋回用のうち対応する第1制御介入閾値YSth1の絶対値より大きいか否か判定する(S123)。規範ヨーレートYSの絶対値が第1制御介入閾値YSth1の絶対値より大きい場合(S123,Yes)、制御介入判定部164は、制御の開始を判定し、制御モードMを1にする(S124)。
ステップS122において、横加速度変化量AYDが変化量閾値AYth未満である場合(S122,No)、制御介入判定部164は、規範ヨーレートYSの絶対値が、右旋回用または左旋回用のうち対応する第2制御介入閾値YSth2の絶対値より大きいか否か判定する(S125)。規範ヨーレートYSの絶対値が第2制御介入閾値YSth2の絶対値より大きい場合(S125,Yes)、制御介入判定部164は、制御の開始を判定し、制御モードMを2にする(S126)。
規範ヨーレートYSの絶対値が第1制御介入閾値YSth1の絶対値より大きくない場合(S123,No)や、規範ヨーレートYSの絶対値が第2制御介入閾値YSth2の絶対値より大きくない場合(S125,No)、制御介入判定部164は、制御モードMを変更することなくステップS130へ進む。
そして、挙動安定制御手段160は、制御モードMが0か否か、つまり、非制御中か否か判定し、制御モードMが0でない場合(S130,No:M=1、2または3の場合)、ステップS200〜S300の処理を行い、制御モードMが0である場合(S130,Yes)、処理を終了する。
ステップS200において、挙動安定制御手段160は、目標液圧PTを設定する。図9に示すように、目標液圧設定部168は、制御モードMが3か否かを判定し、3である場合、つまり、終了処理中の場合(S210,Yes)、図7のマップに基づき、前回の目標液圧PTn−1に基づいて、今回の目標液圧PTを決定する(S220)。そして、今回の目標液圧PTが0である場合には(S221,Yes)、終了処理が完了したということなので制御モードMを0にする(S222)。一方、今回の目標液圧PTが0でない場合には(S221,No)、制御モードMを変更することなく処理を終了する。
ステップS210において、制御モードMが3でない場合(S210,No)、目標液圧設定部168は、制御モードMが1か否かを判定する(S230)。制御モードMが1である場合(S230,Yes)、第1旋回なので、目標液圧設定部168は、規範ヨーレートYSと、第1限界ヨーレートYL1の偏差ΔYに基づき、図6のマップMP1から目標液圧PTを設定する(S231)。一方、制御モードMが1でない場合、つまり、制御モードMが2である場合(S230,No)、第2旋回なので、目標液圧設定部168は、規範ヨーレートYSと、第2限界ヨーレートYL2の偏差ΔYに基づき、図6のマップMP2から目標液圧PTを設定する(S232)。
このようにして目標液圧PTが設定されると、図8に戻り、制御実行部169が、旋回外輪のホイールシリンダH内の液圧が目標液圧PTになるように、液圧ユニット10を制御する(S131)。
次に、制御終了判定部165は、ステップS300で制御の終了判定を行う。具体的には、図10に示すように、制御終了判定部165は、制御モードMが1か否かを判定する(S310)。制御モードMが1である場合(S310,Yes)、規範ヨーレートYSの絶対値が、左右の対応する第1限界ヨーレートYL1の絶対値より小さいか否か判定し、小さい場合には(S320,Yes)、挙動安定制御を終了することを判定し、制御モードMを終了処理中である3に変更する(S340)。また、制御モードMが2である場合(S310,No)、規範ヨーレートYSの絶対値が、左右の対応する第2限界ヨーレートYL2の絶対値より小さいか否か判定し、小さい場合には(S330,Yes)、挙動安定制御を終了することを判定し、制御モードMを3に変更する(S340)。
規範ヨーレートYSの絶対値が、第1限界ヨーレートYL1の絶対値より小さくない場合(S320,No)や、第2限界ヨーレートYL2の絶対値より小さくない場合(S330,No)には、制御終了判定部165は、制御モードMを変更することなく処理を終了する。
以上のような制御による各種のパラメータの変化について図11を参照しながら説明する。なお、図11においては操舵角θを示していないが、操舵角θは、規範ヨーレートYSと略同じ位相で変化する。また、以下の説明において、各パラメータの値は大きさについて議論しており、「絶対値」は省略し、右旋回時も各パラメータについて正の値と同様に表現する。
図11の規範ヨーレートYSの変化に示すように、車両CRは、直進状態から、時刻t11〜t14の間、左にステアリングSTが切り込まれ、時刻t14〜t18までの間、右にステアリングSTが切り返され、時刻t18〜t20の間、左にステアリングSTが切り戻されることで、時刻t11〜t16の間に左旋回をし、時刻t16〜t20の間に右旋回をしている。
限界ヨーレートYL1,YL2は、車両速度Vが大きい程小さい値となるので、時刻t11以後、車両速度Vが徐々に小さくなることで、限界ヨーレートYL1,YL2は徐々に大きくなっている。左旋回用の制御介入閾値YSth1,YSth2は、時刻t11の後の操舵角速度ωの左側への増加に応じて急激に小さくなり、また、時刻t12〜t14にかけての操舵角速度ωの減少に応じて大きくなる。一方、右旋回用の制御介入閾値YSth1,YSth2は、時刻t14の後の操舵角速度ωの右側への増加に応じて小さくなり、また、時刻t15付近からt18付近までにかけての操舵角速度ωの減少に応じて大きくなる。
時刻t11から左にステアリングSTが切り込まれていくと、規範ヨーレートYSと横加速度変化量AYDが大きくなり、時刻t12において、まず、横加速度変化量AYDが変化量閾値AYth以上となる。そして、右に切返し始める前である時刻t13において、規範ヨーレートYSが左旋回用の第1制御介入閾値YSth1を超えると、第1旋回であると判定され、制御モードMが0から1になり、図6のマップMP1に基づき目標液圧PTが設定される。左向きの規範ヨーレートYSが減少し、時刻t15において、規範ヨーレートYSが制御終了閾値としての第1限界ヨーレートYL1より小さくなると、第1旋回が終了し、制御モードMが1から3になり、終了処理が実行されて目標液圧PTが小さくなる。そして、終了処理が終わると制御モードMが3から0になる。時刻t11〜t16の間の左旋回は、時刻t13において挙動安定制御を開始するときに横加速度変化量AYDが変化量閾値AYth以上であるので、時刻t13〜t15において第1旋回(制御モードM=1)となる。
時刻t14以降、横加速度変化量AYDは、変化量閾値AYth未満となる。時刻t17において、規範ヨーレートYSが右旋回用の第2制御介入閾値YSth2を超えると、第2旋回であると判定され、制御モードMが0から2になり、図6のマップMP2に基づき、時刻t13〜t15の間の第1旋回の場合よりも小さな目標液圧PTが設定される。右向きの規範ヨーレートYSが減少し、時刻t19において、規範ヨーレートYSが制御終了閾値としての第2限界ヨーレートYL2より小さくなると、第2旋回が終了し、制御モードMが2から3になり、終了処理が実行されて目標液圧PTが小さくなる。そして、終了処理が終わると制御モードMが3から0になる。時刻t16〜t20の間の右旋回は、時刻t17において挙動安定制御を開始するときに横加速度変化量AYDが変化量閾値AYth未満であるので、時刻t17〜t19において第2旋回(制御モードM=2)となる。
以上のような車両挙動制御装置Aの効果について図12〜図15を参照して説明する。
図12、図13は、車両が直進状態から左旋回、右旋回、左旋回して直進に戻る場合の各パラメータの変化を示している。図12は、従来技術における制御の開始判定を用いた場合である。この開始の判定は、特開2011−102048号公報と同様に、横加速度に基づいて上限設定された修正規範ヨーレートと実ヨーレートとの偏差が閾値を超えた場合に制御を開始すると判定している。そして、閾値については、操舵角速度に応じて変更されていない。
従来技術においては、図12(a)のように、左にステアリングを切ったことにより操舵角θがピークを迎えた後、つまり、右に切り返し始めた後である時刻t21に制御の開始が判定されている。そして、図12(b)のように、ブレーキ液圧は、最初の操舵である左旋回中(第1旋回中)には十分に発生せず、2回目の操舵である右旋回中に初めて十分な大きさで発生している。そのため、図12(a)に示すように、時刻t25において、実ヨーレートが減少しており、操舵角と実ヨーレートの乖離が大きくなってアンダーステア傾向となっている。そして、時刻t24において車両の挙動の乱れの状態を示すスリップ角β(車両の進行方向と操舵方向のずれ角)は、変動が大きく、車両の挙動が乱れている。
一方、本実施形態の車両挙動制御装置Aにおいては、図13(a)に示すように、操舵角θがピークを迎える前の時刻t31において、つまり、最初のステアリングSTの切り込み時において制御の開始が判定されている。そして、図13(b)に示すように最初の操舵である左旋回中(第1旋回中)に十分に大きなブレーキ液圧が発生している。このため、車両の挙動の乱れが抑制され、図13(a)に示すように、右に旋回中の時刻t35において、スリップ角βは小さく抑えられている。
図14、図15は、車両が直進状態から左旋回(第1旋回)、右旋回(第2旋回)、左旋回して直進に戻る場合の各パラメータの変化を示している。図14は、第2旋回の場合の目標液圧を第1旋回の場合と同じマップに基づいて設定した比較例の場合であり、図15は、第2旋回の場合に第1旋回の場合よりも目標液圧PTを小さく設定した本実施形態の場合である。
比較例においては、第2旋回の場合の目標液圧を第1旋回の場合と同じマップに基づいて設定していることで、図14(a),(b)に示すように、第2旋回の場合に、第1旋回の場合と略同等の大きなブレーキ液圧が発生する。このため、比較例においては、第2旋回中に制動力が過剰になり、図14(a)に示すように、時刻t45において、実ヨーレートが減少し、操舵角θと実ヨーレートの乖離が大きくなってアンダーステア傾向となっている。
一方、本実施形態においては、図15(a),(b)に示すように、第2旋回の場合に、第1旋回の場合よりも小さなブレーキ液圧が発生する。これは、図15(c)に示すように、第1旋回の場合と第2旋回の場合とで制御モードMが異なるため、具体的には、第2旋回の場合、第1旋回の場合に用いられるマップMP1よりも小さな値のマップMP2に基づいて目標液圧PTを設定しているためである。そのため、本実施形態においては、第2旋回の場合のブレーキ液圧が小さくなることで、図15(a)に示すように、第2旋回中における実ヨーレートの減少が抑えられ、アンダーステア傾向となることが抑制されている。
以上のように、本実施形態の車両挙動制御装置Aによれば、第1旋回の場合よりも第2旋回の場合に目標液圧PTを小さく設定することができるので、第2旋回時の車両挙動制御中にアンダーステア状態が発生することを抑制することができる。また、言い換えれば、第1旋回の場合に第2旋回の場合よりも目標液圧PTを大きくできるので、第1旋回時に強い制動力を与えることができ、第1旋回時の車両挙動制御中におけるオーバーステア状態を効果的に抑制することができる。
また、車両挙動制御装置Aは、第1旋回の場合よりも車両CRの挙動が不安定になりやすい第2旋回の場合に、第1旋回の場合よりも挙動安定制御が実行されやすくなるので、車両CRの挙動をより安定させることができる。
また、車両挙動制御装置Aは、実ヨーレートに基づかずに、操舵角θ、操舵角速度ωおよび車両速度Vに基づいて挙動安定制御の開始を判定することができるので、ステアリングSTの操舵の結果が実際の車両CRの挙動に現れる前に挙動安定制御を開始すると判定することができる。そのため、早期に挙動安定制御を開始することができ、車両CRの挙動の乱れを抑制することができる。
そして、車両挙動制御装置Aは、操舵角速度ωの絶対値が大きいほど制御介入閾値YSth1,YSth2が小さくなるので、直進状態からステアリングSTを切り込んだ初期の段階で挙動安定制御を開始することができる。
また、車両挙動制御装置Aは、規範ヨーレートYSと限界ヨーレートYL(YL1,YL2)との偏差ΔYが大きいほど、目標液圧PTを大きくするので、予測される車両CRの挙動の乱れの大きさに応じた制動力を旋回外輪に与えることができるため、車両CRの挙動の乱れを軽減することができる。
以上に本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で実施できる。
前記実施形態においては、目標液圧設定部168(目標制動力設定部)は、図11に示すように、時刻t13で挙動安定制御を開始するときに横加速度変化量AYDが変化量閾値AYth以上であって規範ヨーレートYSが第1制御介入閾値YSth1を超えた場合を第1旋回の場合と判定し、時刻t17で挙動安定制御を開始するときに横加速度変化量AYDが変化量閾値AYth未満であって規範ヨーレートYSが第2制御介入閾値YSth2を超えた場合を第2旋回の場合と判定するように構成されていたが、これに限定されるものではない。
例えば、図16に示すように、制御部100は、操舵角θが所定値(旋回判定閾値)を超えたときに旋回フラグをONとして旋回中であると判定し、操舵角θが所定値以下のときに旋回フラグをOFFとして旋回中でないと判定する旋回判定手段153を備え、目標液圧設定部168は、図17に示すように、旋回フラグがONのとき(旋回判定手段153が旋回中であると判定しているとき)に、時刻t63に示すように、補正横加速度AYCが第3判定閾値の一例としての判定閾値Cthよりも小さい値から判定閾値Cth以上の値に変化した場合に判定フラグを0から1とし、その後、時刻t66に示すように、旋回フラグがOFFとなったとき(旋回判定手段153が旋回中でないと判定したとき)に判定フラグが1である場合は0とするように構成することができる。この場合、目標液圧設定部168は、旋回フラグがONのときに判定フラグが1である場合の旋回を第1旋回の場合と判定し、旋回フラグがONのときに判定フラグが0である場合の旋回を第2旋回の場合と判定するように構成することができる。
このような構成によれば、時刻t61〜t67に示すように、旋回フラグがONとなる旋回中において、時刻t63で補正横加速度AYCが判定閾値Cthよりも小さい値から判定閾値Cth以上の値に変化したとき、判定フラグが0から1となり、目標液圧設定部168は、この場合の旋回を、第1旋回の場合と判定する。また、時刻t66で旋回フラグがOFFとなって判定フラグが1から0となった後、時刻t67〜t72に示すように、再び旋回フラグがONとなる旋回中に補正横加速度AYCが判定閾値Cthよりも小さい値から判定閾値Cth以上の値に変化しない場合、判定フラグが0のまま変化しないので、目標液圧設定部168は、この場合の旋回を第2旋回の場合と判定する。
そして、第1旋回の場合は、時刻t64で規範ヨーレートYSが第1制御介入閾値YSth1より大きくなったときに挙動安定制御を開始し、図6のマップMP1に基づいて目標液圧PTを設定し、時刻t65で規範ヨーレートYSが第1限界ヨーレートYL1より小さくなった後に終了処理を行う。また、第2旋回の場合は、時刻t69で規範ヨーレートYSが第2制御介入閾値YSth2より大きくなったときに挙動安定制御を開始し、図6のマップMP2に基づいて第1旋回の場合よりも小さい目標液圧PTを設定し、時刻t70で規範ヨーレートYSが第2限界ヨーレートYL2より小さくなった後に終了処理を行う。
前記実施形態においては、挙動安定制御手段160が第1旋回の場合よりも第2旋回の場合に挙動安定制御が開始されやすいように構成されていた。具体的には、挙動安定制御手段160が、制御開始閾値としての制御介入閾値YSthと、制御終了閾値としての限界ヨーレートYLを、それぞれ、第1旋回用と第2旋回用の2種類設定するように構成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、挙動安定制御手段は、制御開始閾値と制御終了閾値を1種類ずつ設定し、第1旋回の場合と第2旋回の場合とで同一の閾値を用いて挙動安定制御の開始と終了を判定するように構成されていてもよい。
前記実施形態においては、目標制動力の一例として目標液圧を設定したが、目標制動力そのものを目標値として設定してもよい。
前記実施形態においては、旋回外輪のうち、前輪と後輪を区別せずに目標液圧PTを設定していたが、前後輪の重量配分に応じて目標液圧PTの大きさを車輪ごとに調整してもよい。
前記実施形態においては、車両挙動安定制御を実行する場合についてのみ説明したが、車両挙動制御装置Aにおいて、アンチロックブレーキ制御等を併せて行うように構成してもよい。
前記実施形態においては、マスタシリンダMCの液圧がホイールシリンダHに伝わる構成のブレーキシステムにおいて本発明を適用したが、本発明の車両挙動制御装置は、電動モータによりブレーキ液を加圧してブレーキ力を発生する、いわゆるバイ・ワイヤ式のブレーキ装置に適用することもできる。
10 液圧ユニット
100 制御部
110 操舵角取得手段
111 横加速度取得手段
120 車両速度算出手段
130 操舵角速度算出手段
140 規範ヨーレート算出手段
150 限界ヨーレート設定手段
151 補正横加速度算出手段
152 変化量算出手段
160 挙動安定制御手段
163 制御介入閾値設定部
164 制御介入判定部
165 制御終了判定部
168 目標液圧設定部
174 変化量判定部
A 車両挙動制御装置

Claims (4)

  1. 車両の旋回外輪に、設定した目標制動力で制動力を与えることにより車両の挙動を安定させる挙動安定制御を実行する挙動安定制御手段を備え、
    前記挙動安定制御手段は、最初の急旋回である第1旋回の場合よりも、前記第1旋回以外の急旋回である第2旋回の場合に前記目標制動力を小さく設定する目標制動力設定部を有することを特徴とする車両挙動制御装置。
  2. 横加速度を取得する横加速度取得手段と、
    前記横加速度を、当該横加速度の絶対値が増加するときには、これに倣って増加し、減少するときには、減少しにくい値とした補正横加速度を算出する補正横加速度算出手段と、
    前記補正横加速度の変化量を算出する変化量算出手段と、
    操舵角を取得する操舵角取得手段と、
    車両速度を取得する車両速度取得手段と、
    前記車両速度と、前記操舵角とに基づいて車両の規範ヨーレートを算出する規範ヨーレート算出手段とを備え、
    前記目標制動力設定部は、前記挙動安定制御を開始するときに前記補正横加速度の変化量が第1判定閾値以上であって前記規範ヨーレートが第2判定閾値を超えた場合を前記第1旋回の場合と判定し、前記挙動安定制御を開始するときに前記補正横加速度の変化量が前記第1判定閾値未満であって前記規範ヨーレートが前記第2判定閾値を超えた場合を前記第2旋回の場合と判定することを特徴とする請求項1に記載の車両挙動制御装置。
  3. 横加速度を取得する横加速度取得手段と、
    前記横加速度を、当該横加速度の絶対値が増加するときには、これに倣って増加し、減少するときには、減少しにくい値とした補正横加速度を算出する補正横加速度算出手段と、
    操舵角を取得する操舵角取得手段と、
    前記操舵角が旋回判定閾値を超えたときに旋回中であると判定し、前記操舵角が前記旋回判定閾値以下のときに旋回中でないと判定する旋回判定手段とを備え、
    前記目標制動力設定部は、前記旋回判定手段が旋回中であると判定しているときに前記補正横加速度が第3判定閾値よりも小さい値から前記第3判定閾値以上の値に変化した場合に判定フラグを0から1とし、前記旋回判定手段が旋回中でないと判定したときに前記判定フラグが1である場合は0とし、前記旋回判定手段が旋回中であると判定しているときに前記判定フラグが1である場合の旋回を前記第1旋回の場合と判定し、前記旋回判定手段が旋回中であると判定しているときに前記判定フラグが0である場合の旋回を前記第2旋回の場合と判定することを特徴とする請求項1に記載の車両挙動制御装置。
  4. 前記挙動安定制御手段は、前記第1旋回の場合よりも、前記第2旋回の場合に前記挙動安定制御が開始されやすいように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両挙動制御装置。
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