以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を模式的に示している場合があり、また、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態として図1に示す顕微鏡システム1について説明する。
なお、図1は、第1実施形態に係る顕微鏡システム1の概略構成図である。
顕微鏡システム1は、図1に示すように、顕微鏡装置1Aと、該顕微鏡装置1Aに接続されることで各部の制御を行う制御部6と、を備えている。顕微鏡装置1Aは、観察対象である被検体Sに照明光Lを照射し、この被検体Sからの透過光によって得られた被検体Sの拡大像を観察する明視野顕微鏡である。
顕微鏡装置1Aは、照明光Lを出射する光源2と、光源2からの照明光Lを被検体Sに照射する照明光学系3と、被検体Sからの透過光Lpを結像する結像光学系4と、結像光学系4により結像された透過光Lpを受光し電気信号に変換して被検体Sの画像を生成する画像生成素子5とを備えている。
制御部6は、コンピュータ(CPU)等からなり、その内部に記録された制御プログラムに従って、顕微鏡装置1Aの各部を駆動するための制御等を行う。また、制御部6は、各部の制御を実行するための演算等を行う。また、制御部6には、例えば液晶表示パネルなどのモニター(表示部)16が接続されている。
また、照明光学系3と結像光学系4との間には、ステージ7が配置されている。このステージ7は、被検体Sが載置される載置面7aを有している。また、ステージ7は、その面内において互いに直交する2つの方向(図1中に示すX軸方向及びY軸方向)に移動操作される。これにより、被検体Sの観察位置を任意に変更することが可能となっている。さらに、ステージ7は、高さ方向(図1中に示すZ軸方向)に移動操作される構成であってもよい。
なお、以下の説明では、光源2から出射された照明光Lの光軸(光束の中心軸)をZ軸方向とし、このZ軸と直交する面内において互いに直交する2つの方向をX軸方向及びY軸方向として説明するものとする。なお、図1では、光源2から出射された照明光Lを破線で模式的に示している。
光源2は、例えば白色光などの可視光又はその近傍の波長域の光を照明光Lとして照射する。光源2には、反射鏡等を利用して自然光や白色蛍光灯、白色電球などの外部光源からの光を照明光Lとして用いることができる。また、光源2には、ハロゲンランプやタングステンランプなどの内部光源からの光を照明光Lとして用いることができる。
また、光源2には、発光ダイオード(LED)等を用いてもよい。この場合、光源2は、例えば赤、青、緑の各波長の光を発するLEDの組み合わせにより構成することができる。また、これら波長の異なるLEDの点灯及び消灯を制御することによって、光源2が発する照明光の波長を可変に制御できるため、このようなLEDを光源2に用いた場合は、後述する波長フィルタ9を省略することも可能である。
照明光学系3は、光源2側から順に、コリメートレンズ8と、波長フィルタ9と、空間光変調素子(第1の空間光変調素子)10と、マイクロレンズアレイ11と、コンデンサレンズ12とが配置された構成を有している。
このうち、コリメートレンズ8は、光源2から出射された照明光Lを平行化するためのものであり、コンデンサレンズ12は、照明光Lをステージ7上の被検体Sに集光させるためのものである。
一方、波長フィルタ9は、照明光Lの波長を特定の範囲内に制限するものである。この波長フィルタ9には、例えば特定範囲の波長の光のみを透過するバンドパスフィルタが用いられる。また、波長フィルタ9は、着脱可能とされており、それぞれ異なる波長の光を透過する複数のバンドパスフィルタを予め用意しておき、その入れ替えを行うことによって、波長フィルタ9を透過する照明光Lの波長を選択的に調整することが可能となっている。
なお、波長フィルタ9は、画像生成素子5において特定の波長の光を受光させることを目的としているため、その配置については特に限定されることはなく、上述したコリメートレンズ8と空間光変調素子10との間に配置された構成に限らず、光源2と画像生成素子5との間の何れの光路中に配置することが可能である。
空間光変調素子10は、結像光学系4の瞳位置に対して共役となる位置に配置されている。空間光変調素子10は、被検体Sに照射される照明光Lの照明瞳形状(光角度分布)を可変に調整するもの(絞り)であり、この絞りの開口(照明光Lを通過させる領域)の形状や大きさ等を自由に変化させることが可能となっている。
結像光学系4は、対物レンズ15から構成される。この対物レンズ15は、被検体Sからの透過光Lpを画像生成素子5の受光面上に結像させるものである。
画像生成素子5は、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどの受光波長の異なる受光素子を複数有するものからなり、上述した結像光学系4により結像された透過光Lpを受光し電気信号(画像信号)に変換して制御部6に出力する。
図2は空間光変調素子10の概略構成を示す図である。
空間光変調素子10は、図2に示すように、一対のガラス基板30,31間に液晶32を挟持した液晶パネルから構成されており、複数の画素35を有している。ガラス基板30の内面側には、各画素35に対応して画素電極33がそれぞれ設けられており、ガラス基板31の内面側には、全ての画素35に亘って共通電極34が設けられている。空間光変調素子10は、上記画素電極33および共通電極34間に電圧を印加することで液晶32を画素35毎に選択的に駆動させ、各々の画素35について光源2からの照明光Lの光線を選択的に通過させることが可能となっている。なお、空間光変調素子10は、一対のガラス基板30,31の両側外面に配置された一対の偏光板を含む。
ところで、明視野顕微鏡では、被検体に照射される照明光の照明瞳形状によって観察される画像が変化する。これは、最終的な光学像が照明瞳形状(光角度分布)およびサンプルの構造に依存するためである。すなわち、ある被検体にとって最適な照明パターンが一様照明であるとは限らない。例えば、被検体が高周波成分を多く有する構造である場合、輪帯型の照明瞳形状を有する照明光を用いることで高周波成分を格段に見え易くすることが可能となる。また、被検体が特定方向に強い構造である場合、この方向に沿った2つの開口を持つ照明瞳形状による照明光(2極照明)を用いることでこのような構造を格段に見え易くすることが可能となる。
このような課題に対し、本実施形態に係る顕微鏡装置1Aでは、空間光変調素子10の光射出面側にマイクロレンズアレイ11を配置することで、被検体Sに照射される照明光Lの照明瞳形状を被検体Sの所定部分ごとに調整した観察画像を良好に得ることを可能としている。
ここで、独立して照明光Lの照明瞳形状(光の角度分布)を変形させることができる被検体部分の細かさ(以下、サンプル分割数と称す)は、マイクロレンズアレイ11のレンズ11aのレンズ数(N)により規定される。図1に示したように、マイクロレンズアレイ11は、複数のレンズ11aを含む。
図3は、空間光変調素子10の光出射面側における平面構成を示す図であり、空間光変調素子10とマイクロレンズアレイ11との配置関係を示す平面図である。
各レンズ11aは、図3に示すように、空間光変調素子10の光射出面を分割した複数の分割領域(所定領域)10aに対応するように配置されている。本実施形態において、空間光変調素子10は、光射出面が例えば、例えば25個に分割されており、分割領域10aにレンズ11aがそれぞれ配置されている。すなわち、本実施形態において、マイクロレンズアレイ11は、空間光変調素子10の光射出面に5行5列で2次元的に配列された25個のレンズ11aを含む。本実施形態において、レンズ数はN=25となる。
N=25の場合、サンプル分割数も25セクターということになる。すなわち、本実施形態において、被検体Sにおける25カ所の部分(以下、セクターSCと称す)ごとに照明光Lの照明瞳形状を最適化することが可能である。ここで、セクターSCとは、画像生成素子5において照明光Lの照明瞳形状の調整が行われる分割領域を規定するものである。
変形することのできる瞳形状の自由度は、各セクターに内在する空間光変調素子10のピクセル数(画素35の数)で決まる。本実施形態において、空間光変調素子10は、例えば、ピクセル数2000×2000の画素構造を有する。このとき、各分割領域10aは、ピクセル数400×400の画素構造を有する。各分割領域10aを透過した照明光Lは、レンズ11aを介して被検体Sの全域に重畳して照明される。
各分割領域10aは、各セクターSCに対応した瞳形状調整領域20を複数(25個)含む。瞳形状調整領域20は、80×80ピクセルの画素構造を有している。各瞳形状調整領域20は、それぞれセクターSCに1対1で対応している。そのため、瞳形状調整領域20により照明瞳形状が調整された照明光Lは、被検体Sにおける対応するセクターSCにそれぞれ照射される。つまり、各セクターSCでの照明瞳形状の設計自由度は80×80ピクセルということになる。
本実施形態において、空間光変調素子10は、照明光Lの照明瞳形状(光角度分布)を調整する絞りとして分割領域10a(瞳形状調整領域20)を機能させることができ、この絞り(瞳形状調整領域20)の開口(照明光Lを通過させる領域)の形状や大きさ等を自由に変化させることが可能となっている。具体的に、空間光変調素子10は、瞳形状調整領域20において、各画素35を選択的にON/OFFすることで通過させる照明光Lの形状を調整する。これにより、各セクターSCに照射される照明光Lの瞳形状を異ならせることができる。なお、上述した空間光変調素子10における分割領域10aの数、瞳形状調整領域20の数、画素35の数、およびレンズ11aの数は一例であり、これらの数値に限定されることはなく、適宜変更可能である。
図1に示したように、分割領域10a(瞳形状調整領域20)を通過してレンズ11aに入射した照明光Lは、コンデンサレンズ12を介してステージ7の載置面7aに載置された被検体Sに入射される。マイクロレンズアレイ11は、空間光変調素子10の分割領域10aを通過した照明光Lの光束を重畳して被検体Sに入射させる。また、分割領域10aにおける各瞳形状調整領域20を通過した照明光の光束は、被検体Sにおける対応するセクターSCに照射される。よって、瞳形状調整領域20における絞りの開口形状を調整することでセクターSCごとに照射される照明光Lの瞳形状を調整することができる。
なお、空間光変調素子10としては、例えばエレクトロクロミック素子(図示せず。)を用いてもよい。このエレクトロクロミック素子は、透明電極とエレクトロクロミック層とを組み合わせた積層構造からなり、エレクトロクロミック層に電圧が印加されると、その電圧が印加された領域のエレクトロクロミック層が可逆的に電解酸化又は還元反応して、その領域での照明光Lの透過又は不透過が可逆的に変化することを利用したものである。したがって、空間光変調素子10として、このようなエレクトロクロミック素子を用いた場合も、被検体Sに照射される照明光Lの照明瞳形状を任意に変化させることが可能である。なお、エレクトロクロミック素子については、例えば特開平8−220568号公報に開示されているものなどを用いることができる。
また、空間光変調素子10としては、例えば電気刺激の印加によって透過率等の特定の光学特性が変化する電気活性材料が封入され、TFT等の電極が形成された複数の空間を有する光学素子(図示せず。)を用いてもよい。この光学素子は、密封封止されアレイ状に形成されたセルを有しており、各セルには電気活性材料が封入されている。そして、各セルには電極が形成されてセル毎に独立に電圧を印加することができ、各セルの印加電圧を制御することで、セルを光が透過する状態及び光を透過しない状態を可逆的に変化させることができる。
したがって、空間光変調素子10として、このような光学素子を用いた場合も、被検体Sに照射される照明光Lの照明瞳形状を任意に変化させることが可能である。なお、このような光学素子については、例えば特表2010−507119号公報に開示されているものを用いることができる。
以上のような構造を有する顕微鏡システム1では、光源2から出射された照明光Lがコリメートレンズ8を通過することによって、平行な照明光Lに変換された後、この平行な照明光Lが波長フィルタ9を透過することによって、特定の波長の照明光Lが空間光変調素子10に入射することになる。
そして、空間光変調素子10の分割領域10a(瞳形状調整領域20)を通過した照明光Lがマイクロレンズアレイ11の各レンズ11aを介してコンデンサレンズ12を通過することで集光されてステージ7に載置された被検体Sに裏面側から照射される。
そして、被検体Sからの透過光Lpを対物レンズ15が画像生成素子5の受光面上に結像させることによって、画像生成素子5が受光した透過光Lpを電気信号(画像信号)に変換して制御部6に出力する。これにより、制御部6が被検体Sの画像を生成し、その画像をモニター16に表示することが可能となる。
図4は、顕微鏡装置1Aの動作を説明するための図である。なお、図4では図を見易くするため、ステージ7に載置される被検体Sの図示を省略している。なお、本実施形態において、制御部6は、被検体Sのセクターごとに最適な照明光Lの照明瞳形状(光角度分布)を得ることが可能な瞳形状調整領域20の絞りの開口形状を記憶している。
制御部6は、図4に示すように、分割領域10aにおいて、瞳形状調整領域20の各画素35(図3参照)をON/OFF制御し、瞳形状調整領域20ごとに照明光Lの光角度分布を調整する。なお、本実施形態では、全ての分割領域10aにおいて、同じセクターSCに対応する瞳形状調整領域20における照明光Lの光角度分布を等しくしている。
図4では、分割領域10a1(所定の瞳形状調整領域20)を通過することで角度分布が調整された照明光Lを3つの光線L1で示し、分割領域10a2(所定の瞳形状調整領域20)を通過することで角度分布が調整された照明光Lを1つの光線L2で示し、分割領域10a3(所定の瞳形状調整領域20)を通過することで角度分布が調整された照明光Lを2つの光線L3で示している。
図4に示されるように、分割領域10a1を通過した光線L1は、レンズ11aおよびコンデンサレンズ12を介してステージ7(被検体S)の第1部分7a1、第2部分7a2および第3部分7a3に入射する。また、分割領域10a2を通過した光線L2は、レンズ11aおよびコンデンサレンズ12を介してステージ7(被検体S)の第2部分7a2に重畳して入射する。また、分割領域10a3を通過した光線L3は、レンズ11aおよびコンデンサレンズ12を介してステージ7(被検体S)の第1部分7a1および第2部分7a2に重畳して入射する。ステージ7における第1部分7a1、第2部分7a2および第3部分7a3は、画像生成素子5における第1セクターSC1、第2セクターSC2および第3セクターSC3にそれぞれ対応する。
具体的に、顕微鏡装置1Aは、被検体Sのうち第1部分7a1に対応する部分(第1セクターSC1)において光線L1,L3による2極照明を照射し、被検体Sのうち第2部分7a2に対応する部分(第2セクターSC2)において光線L1,L2,L3による一様照明を照射し、被検体Sのうち第3部分7a3に対応する部分(第3セクターSC3)において光線L1による斜入射照明を照射することができる。
なお、図4においては、被検体Sの全セクターSC(25個)のうち、3つのセクターSC(第1セクターSC1、第2セクターSC2、および第3セクターSC3)のみを図示しているが、他のセクターSCについても同様に最適な角度分布の照明光Lが入射される。
このように、本実施形態によれば、被検体Sに照射される照明光Lの照明瞳形状(光角度分布)を瞳形状調整領域20ごとに調整することができる。よって、被検体SのセクターSCごとに照明光Lの光角度分布を最適化することができる。これにより、被検体Sには、最適化された照明光Lが照射される。
したがって、画像生成素子5は、被検体Sについて高分解能且つ高コントラストな画像を生成することができる。
以上のように本実施形態に係る顕微鏡システム1(顕微鏡装置1A)によれば、被検体Sを最適な状態で観察した画像を取得することができる。
また、第1実施形態においては、制御部6に記憶されたデータ(セクターSCごとにおける照明光Lの最適角度分布)に基づいて空間光変調素子10の各分割領域10aの画素35のON/OFFを制御することで照明光Lの照明瞳形状を最適化して被検体Sの観察画像を取得する場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ユーザーに選択された条件に基づいて、照明光Lを最適化することで被検体Sの観察画像を生成するようにしてもよい。
この場合、制御部6は第1ステップを実行する。
第1ステップにおいて、制御部6は、全てのセクターSCにおける照明光Lの照明瞳形状(光角度分布)が等しくなるように空間光変調素子10の各分割領域10aにおける瞳形状調整領域20を駆動させた状態で画像生成素子5により被検体Sの画像を生成する画像生成動作を、照明瞳形状を調整する度に繰り返し実行し、調整した照明瞳形状に対応した複数の被検体Sの画像を取得する。これにより、照明光Lの光角度分布条件(照明瞳形状)が異なる複数の被検体Sの画像が生成され、制御部6に記憶される。
続いて、制御部6は、第2ステップを実行する。
第2ステップにおいて、制御部6は、セクターSCごとに第1ステップにより取得した複数の被検体Sの画像の中からユーザーにより選択された画像を用いて、被検体Sの全体画像を生成する。
ユーザーによる画像の選択は、例えば、以下のようにして行われる。
制御部6は、第1ステップで生成した複数の画像をモニター16に表示する。本実施形態では、例えば、第1ステップにおいて照明瞳形状を5パターンで調整したものとする。この場合において、制御部6は、モニター16に5パターンの被検体Sの画像を表示する。モニター16に表示された被検体Sの各画像(5パターンの画像)には、例えば、図5(a)に示すようにセクターSC数(25個)に対応した分割線S1が表示されている。
ユーザーは、モニター16に表示された5パターンの被検体Sの画像の中から、例えば、あるセクターSCにおいて最も高画質(高解像度あるいは高コントラスト)な画像を上記5パターンの中から選択する。制御部6は、選択された画像に対応する照明瞳形状(照明光Lの角度分布形状)を記憶する。
続いて、ユーザーは、モニター16に表示された5パターンの被検体Sの画像の中から、別のセクターSCにおいて最も高画質の画像を選択する。制御部6は、選択された画像に対応する照明瞳形状(照明光Lの角度分布形状)を記憶する。以下、同様に上記動作を繰り返し、全てのセクターSC(本実施形態では25個)についてモニター16に表示された5パターンの被検体Sの画像の中から最も高画質の画像を選択し、選択された画像に対応する照明瞳形状(照明光Lの角度分布形状)を制御部6に記憶させる。以上により、第2ステップが完了する。
制御部6は各セクターSCにおける最適な照明瞳形状を得るように空間光変調素子10を駆動し、被検体Sの全体画像を生成する。これにより、モニター16には、図5(b)に示すように、分割線S1で区画される各セクターSCが最適な画像によって構成された全体画像が表示されることとなる。なお、全体画像を表示する際、分割線S1をモニター16に表示させないようにしても構わない。
このように本実施形態に係る顕微鏡システム1によれば、ユーザーの選択によって照明光LがセクターSCごとに最適化された被検体Sの全体画像を得ることができる。
上記説明では、全てのセクターSCに対してユーザーが画像選択を行う場合を例に挙げたが、一部のセクターSC(例えば、四隅のセクターSC)のみについて画像選択を行い、残りのセクターSCについては制御部6が補完するようにしても良い。これによれば、セクターSCの数が多い場合においても、被検体Sの全体画像を短時間で生成することができる。
なお、制御部6は、照明光LがセクターSC毎に最適化された被検体Sの全体画像を自動的に生成することも可能である。この場合、制御部6は、上記第2ステップにおけるユーザーによる画像の選択を自動的に行う。例えば、制御部6は、第1ステップで取得した複数の画像について、セクターSCごとに空間周波数分布の広がりや方向性などを分析し、被検体Sの形状を推定しながら、この演算結果を照明光Lの照明瞳形状に反映させる。なお、このように被検体Sの画像から空間周波数分布を分析する方法については、例えば特開2012−220801号公報、特開2012−222672号公報、あるいは特開2012−242532号公報、に開示されているものを用いることができる。
このようにして、制御部6は、全てのセクターSCごとに照明光Lの最適な照明瞳形状(光角度分布)を求めることができる。制御部6は選択した画像データを用いて、被検体Sの全体画像を高分解能且つ高コントラストで生成し、モニター16に表示する。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る顕微鏡システムについて説明する。図6は、第2実施形態に係る顕微鏡システム101の概略構成図である。
本実施形態に係る顕微鏡システム101は、図6に示すように、顕微鏡装置101Aと、該顕微鏡装置101Aに接続されることで各部の制御を行う制御部55と、を備えている。顕微鏡装置101Aは、観察対象である被検体Sに照明光Lを照射し、この被検体Sからの透過光Lpの位相差を明暗差に変換することによって得られた被検体Sの拡大像を観察する位相差顕微鏡である。
具体的に、顕微鏡装置101Aは、照明光Lを出射する光源51と、光源51からの照明光Lを被検体Sに照射する照明光学系53と、被検体Sからの透過光Lpを結像する結像光学系54と、結像光学系54により結像された透過光Lpを受光し電気信号に変換して被検体Sの画像を生成する画像生成素子5とを備えている。
制御部55は、コンピュータ(CPU)等からなり、その内部に記録された制御プログラムに従って、顕微鏡装置101Aの各部を駆動するための制御等を行う。また、制御部55は、各部の制御を実行するための演算等を行う。また、制御部55には、例えば液晶表示パネルなどのモニター16が接続されている。
また、照明光学系53と結像光学系54との間には、ステージ17が配置されている。
ステージ17は、その面内において互いに直交する2つの方向(図6中に示すX軸方向及びY軸方向)に移動操作される。これにより、被検体Sの観察位置を任意に変更することが可能となっている。また、ステージ17は、高さ方向(図6中に示すZ軸方向)に移動操作される構成であってもよい。
なお、以下の説明では、光源51から出射された照明光Lの光軸(光束の中心軸)をZ軸方向とし、このZ軸と直交する面内において互いに直交する2つの方向をX軸方向及びY軸方向として説明するものとする。なお、図6では、光源51から出射された照明光Lを破線で模式的に示している。
本実施形態において、光源51は、例えば赤、青、緑の各波長の光を発するLEDの組み合わせにより構成されている。これら波長の異なるLEDの点灯及び消灯を制御することによって、光源51が発する照明光の波長が可変に制御される。そのため、本実施形態においては、図1に示したような波長フィルタ9を省略することが可能である。
照明光学系53は、光源51側から順に、コリメートレンズ8と、空間光変調素子10と、マイクロレンズアレイ11と、コンデンサレンズ12とが配置された構成を有している。
本実施形態において、空間光変調素子10は、光射出面が例えば、例えば49個に分割されており、分割領域10aにレンズ11aがそれぞれ配置されている。すなわち、本実施形態において、マイクロレンズアレイ11は、空間光変調素子10の光射出面に7行7列で2次元的に配列された49個のレンズ11aを含む。本実施形態において、レンズ数はN=49となる。この場合、サンプル分割数が49セクターとなる。すなわち、図6においては、空間光変調素子10の光射出面に対し、X方向に沿ってレンズ11aが7個配置されており、図示を省略するものの、Y方向に沿ってもレンズ11aが7個配置されている。
すなわち、本実施形態においては、被検体Sにおける49カ所の部分(セクターSC)ごとに照明光Lの照明瞳形状を最適化することが可能である。
本実施形態において、空間光変調素子10は、例えば、ピクセル数2450×2450の画素構造を有する。このとき、各分割領域10aは、ピクセル数350×350の画素構造を有する。各分割領域10aを透過した照明光Lは、被検体Sの全域に重畳して照明される。
各分割領域10aは、各セクターSCに対応した瞳形状調整領域20を複数(49個)含む。本実施形態において、瞳形状調整領域20は、50×50ピクセルの画素構造を有している。そのため、各セクターSCでの照明瞳形状の設計自由度は50×50ピクセルということになる。
本実施形態において、結像光学系54は、上記ステージ17側から順に、第1対物レンズ60aと、前段側空間光変調素子(第2の空間光変調素子)61と、後段側空間光変調素子(第3の空間光変調素子)62と、第2対物レンズ60bとが配置された構成を有している。
第1対物レンズ60aは、被検体Sからの透過光Lpを前段側空間光変調素子61の表面上に結像させるものであり、第2対物レンズ60bは、後段側空間光変調素子62からの透過光を画像生成素子5の受光面上に結像させるものである。
前段側空間光変調素子61は、結像光学系54の瞳位置又はその近傍に配置されている。また、空間光変調素子10と前段側空間光変調素子61とは、互いに共役な位置に配置されている。
前段側空間光変調素子61および後段側空間光変調素子62は、空間光変調素子10と同様、液晶パネルから構成されている。すなわち、図2に示したように、前段側空間光変調素子61および後段側空間光変調素子62は、一対のガラス基板間に液晶を挟持した液晶パネルから構成されている。
前段側空間光変調素子61は、被検体Sからの透過光Lpの透過率の空間分布を可変に調整するものである。すなわち、前段側空間光変調素子61は、各画素を選択的にON/OFFすることで透過光Lpの振幅(輝度)を調整可能である。本実施形態において、前段側空間光変調素子61は、被検体Sからの透過光Lpのうち、被検体Sを通過した直接光(0次光)の振幅を小さくする(減光する)。
前段側空間光変調素子61は、被検体Sからの透過光Lpのうち、直接光Lp1を減光させた状態で透過させる振幅変調領域61aと、この振幅変調領域61aの周囲に被検体Sで回折した回折光Lp2をそのままの減光させることなく透過させる回折光透過領域61bとを含む。前段側空間光変調素子61は、各画素における印可電圧を調整することで、回折光透過領域61bに対して振幅変調領域61aの形状や大きさ等を自由に変化させることが可能である。すなわち、前段側空間光変調素子61は、振幅変調領域61aに対応する画素のみを選択的に駆動して光の透過率を小さくする。これにより、透過光Lpのうち光強度が強い直接光(0次光)の光強度を弱める調整を行うことができる。
後段側空間光変調素子62は、被検体Sからの透過光Lpに付加する位相の空間分布を可変に調整するものであり、透過光Lpに付加する位相を0°又は±90°に調整する。後段側空間光変調素子62は、被検体Sからの透過光Lpのうち、被検体Sを通過した直接光(0次光)Lp1を4分の1波長(±90°)だけ位相がずれた状態で透過させる位相変調領域62aと、この位相変調領域62aの周囲に被検体Sで回折した回折光Lp2をそのままの位相(0°)で透過させる回折光透過領域62bとを含む。後段側空間光変調素子62は、各画素における印可電圧を調整することで、回折光透過領域62bに対して位相変調領域62aの形状や大きさ等を自由に変化させることが可能である。すなわち、後段側空間光変調素子62は、位相変調領域62aに対応する画素のみを選択的に駆動して光の位相をずらす。これにより、透過光Lpのうち直接光の位相を回折光に対してずらすことができる。
ところで、本実施形態のような位相差顕微鏡においても、被検体に照射される照明光の照明瞳形状によって観察される画像が変化する。本実施形態に係る顕微鏡装置101Aでは、空間光変調素子10の光射出面側にマイクロレンズアレイ11を配置することで、被検体Sに照射される照明光Lの照明瞳形状を被検体Sの所定部分ごとに調整した観察画像を良好に得ることを可能としている。
以下、本実施形態に係る顕微鏡装置101Aの動作について説明する。なお、本実施形態において、制御部55は、被検体Sの観察部分(セクター)ごとの最適な照明光Lの照明瞳形状を得ることが可能な瞳形状調整領域20の絞りの開口形状と、空間光変調素子10により最適化された照明光Lの被検体Sからの透過光Lpに対する振幅変調領域61aおよび位相変調領域62aの最適形状(直接光が入射する領域の形状)と、を記憶しているものとする。
制御部55は、被検体Sのセクター毎に照明光Lの照明瞳形状を最適化すべく、空間光変調素子10の分割領域10aにおいて各画素35をON/OFF制御することで通過させる照明光Lの照明瞳形状を調整する。図6では、分割領域10a1(瞳形状調整領域20)を通過することで角度分布が調整された照明光Lを3つの光線L11で示し、分割領域10a3(瞳形状調整領域20)を通過することで角度分布が調整された照明光Lを3つの光線L13で示している。
分割領域10a1を通過した光線L1は、レンズ11aおよびコンデンサレンズ12を介して載置面17a(被検体S)の第1部分17a1、第2部分17a2および第3部分17a3に入射する。また、分割領域10a3を通過した光線L3は、レンズ11aおよびコンデンサレンズ12を介して載置面7a(被検体S)の第1部分17a1、第2部分17a2および第3部分17a3に重畳して入射する。ステージ17における第1部分17a1、第2部分17a2および第3部分17a3は、画像生成素子5における第1セクターSC1、第2セクターSC2および第3セクターSC3にそれぞれ対応する。
本実施形態において、顕微鏡装置101Aは、被検体Sのうち第1部分17a1に対応する部分(第1セクターSC1)に光線L11,L13による2極照明を照射し、被検体Sのうち第2部分17a2に対応する部分(第2セクターSC2)に光線L11,L13による2極照明を照射し、被検体Sのうち第3部分17a3に対応する部分(第3セクターSC3)に光線L11,L13による2極照明を照射することができる。
なお、図6においては、被検体Sの全セクターSC(49個)のうち、3つのセクターSC(第1セクターSC1、第2セクターSC2、および第3セクターSC3)のみを図示しているが、他のセクターSCについても同様に最適な角度分布の照明光Lを入射させることができる。
本実施形態によれば、被検体Sに照射される照明光Lの照明瞳形状(光角度分布)を瞳形状調整領域20ごとに調整することができるため、被検体SのセクターSCごとに光角度分布が最適化された照明光Lを照射することができる。
被検体Sに照射された照明光Lは被検体Sを透過して透過光Lpとなる。被検体Sからの透過光Lpは第1対物レンズ60aを通過した後、前段側空間光変調素子61に入射する。制御部55は、予め記憶された情報(最適な振幅変調領域の形状に関する情報)に基づいて、透過光Lpのうち直接光Lp1が入射する振幅変調領域に対応する画素を選択的に駆動させるように前段側空間光変調素子61を制御する。これにより、被検体Sからの透過光Lpのうち、直接光Lp1が減光された状態で後段側空間光変調素子62の位相変調領域に入射する。
続いて、制御部55は、予め記憶された情報(最適な位相変調領域の形状に関する情報)に基づいて、透過光Lpのうち直接光Lp1が入射する位相変調領域に対応する画素を選択的に駆動させるように後段側空間光変調素子62を制御する。これにより、減光された直接光Lp1は4分の1波長だけ位相がずれた状態で第2対物レンズ60bにより画像生成素子5の受光面上に結像される。
一方、被検体Sからの透過光Lpのうち、回折光Lp2は減光されない状態で前段側空間光変調素子61を通過し、後段側空間光変調素子62の回折光透過領域に入射する。回折光Lp2はそのままの位相(0°)状態で第2対物レンズ60bにより画像生成素子5の受光面上に結像される。
本実施形態において、画像生成素子5は、受光面上で直接光Lp1および回折光Lp2が干渉する。画像生成素子5は、位相の変化を光の明暗として観察する。画像生成素子5は受光した干渉光を電気信号(画像信号)に変換して制御部55に出力する。これにより、制御部55が被検体Sの画像を生成し、その画像をモニター16に表示することができる。
本実施形態によれば、被検体SのセクターSCごとに最適な角度分布の照明光Lを照射できるので、明るい光を生成することができる。よって、画像生成素子5の受光面上に干渉光を良好に生じさせることができ、画像生成素子5が被検体Sの高分解能且つ高コントラストな画像を生成することができる。
以上のように本実施形態に係る顕微鏡システム101(顕微鏡装置101A)によれば、被検体Sを最適な状態で観察することができる。
また、第2実施形態においては、制御部55に記憶されたデータ(セクターSCごとにおける照明光Lの最適角度分布、振幅変調領域および位相変調領域の最適形状)に基づいて空間光変調素子10、前段側空間光変調素子61および後段側空間光変調素子62を制御することで被検体Sの観察画像を取得する場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ユーザーに選択された条件に基づいて、最適化された被検体Sの観察画像を生成するようにしてもよい。
この場合、制御部55は第1ステップを実行する。なお、第1ステップを実行する際、制御部55は、前段側空間光変調素子61および後段側空間光変調素子62を所定の初期条件で駆動させる。
第1ステップにおいて、制御部55は、全てのセクターSCにおける照明光Lの照明瞳形状(光角度分布)が等しくなるように空間光変調素子10の各分割領域10aにおける瞳形状調整領域20を駆動させた状態で画像生成素子5により被検体Sの画像を生成する画像生成動作を、照明瞳形状を調整する度に繰り返し実行し、調整した照明瞳形状に対応した複数の被検体Sの画像を取得する。これにより、照明光Lの光角度分布条件(照明瞳形状)が異なる複数の被検体Sの画像が生成され、制御部55に記憶される。
続いて、制御部55は、第2ステップを実行する。
第2ステップにおいて、制御部55は、セクターSCごと(本実施形態では、49個のセクターSC)に第1ステップにより取得した複数の被検体Sの画像の中からユーザーにより選択された画像を用いて、被検体Sの全体画像を生成する。
制御部55は、第1ステップで生成した複数の画像をモニター16に表示する。本実施形態では、例えば、第1ステップにおいて照明瞳形状を5パターンで調整したものとする。この場合において、制御部55はモニター16に5パターンの被検体Sの画像を表示する。モニター16に表示された被検体Sの画像にはセクターSCに対応した分割線が表示されている(図5参照)。
ユーザーは、モニター16に表示された5パターンの被検体Sの画像の中から、例えば、あるセクターSCにおいて最も高画質(高解像度あるいは高コントラスト)な画像を上記5パターンの中から選択する。制御部55は、選択された画像に対応する照明瞳形状(照明光Lの角度分布形状)を記憶する。
続いて、ユーザーは、モニター16に表示された5パターンの被検体Sの画像の中から、別のセクターSCにおいて最も高画質の画像を選択する。制御部55は、選択された画像に対応する照明瞳形状(照明光Lの角度分布形状)を記憶する。以下、同様に上記動作を繰り返し、全てのセクターSC(本実施形態では49個)についてモニター16に表示された5パターンの被検体Sの画像の中から最も高画質の画像を選択し、選択された画像に対応する照明瞳形状(照明光Lの角度分布形状)を制御部55に記憶させる(図5参照)。
続いて、制御部55は、上記第2ステップでユーザーにより選択された照明瞳形状が各セクターSCにおいて得られるように空間光変調素子10を制御した状態とし、前段側空間光変調素子61および後段側空間光変調素子62を複数の異なる条件で駆動させる度に画像生成素子5により被検体Sの画像を生成する画像生成動作を実行し、画像生成動作ごとに複数の被検体Sの画像を取得する。これにより、前段側空間光変調素子61および後段側空間光変調素子62の駆動条件が異なる複数の被検体Sの画像が生成され、制御部55に記憶される。
制御部55は、前段側空間光変調素子61および後段側空間光変調素子62における駆動条件が異なる複数の画像をモニター16に表示する。本実施形態は、前段側空間光変調素子61および後段側空間光変調素子62の駆動条件を例えば5パターンに設定した。この場合において、制御部55はモニター16に5パターンの被検体Sの画像を表示する。
ユーザーは、モニター16に表示された5パターンの被検体Sの画像の中から、例えば最も高画質(高解像度あるいは高コントラスト)な画像を選択する。これにより、制御部55はユーザーに選択された画像から被検体Sの全体画像を生成し、モニター16に表示させる。この構成によれば、ユーザーの選択によって照明光LがセクターSCごとに最適化された被検体Sの全体画像を得ることができる。
なお、制御部55は、上記ステップ(被検体Sの全体画像の生成ステップ)を自動的に行うことも可能である。この場合、制御部55は、上記第2ステップにおけるユーザーによる画像の選択を自動的に行う。
例えば、制御部55は、第1ステップで取得した複数の画像について、セクターSCごとに空間周波数分布の広がりや方向性などを分析し、被検体Sの形状を推定しながら、この演算結果を照明光Lの照明瞳形状に反映させる。なお、このように被検体Sの画像から空間周波数分布を分析する方法については、例えば特開2012−220801号公報、特開2012−222672号公報、あるいは特開2012−242532号公報、に開示されているものを用いることができる。
このようにして、制御部55は、全てのセクターSCごとに照明光Lの最適な照明瞳形状を求めることができる。
続いて、制御部55は、上記第1ステップで自動的に選択した照明瞳形状が各セクターSCにおいて得られるように空間光変調素子10を制御した状態とし、前段側空間光変調素子61および後段側空間光変調素子62を複数の異なる条件で駆動させる度に画像生成素子5により被検体Sの画像を生成する画像生成動作を実行し、画像生成動作ごとに複数の被検体Sの画像を取得する。これにより、前段側空間光変調素子61および後段側空間光変調素子62の駆動条件が異なる複数の被検体Sの画像が生成され、制御部55に記憶される。
続いて、制御部55は、前段側空間光変調素子61および後段側空間光変調素子62における駆動条件が異なる複数の画像の選択を上記分析方法により自動的に行う。
このようにして、制御部55は、全てのセクターSCごとに最適な照明瞳形状(光角度分布)を得る空間光変調素子10の駆動条件、前段側空間光変調素子61および後段側空間光変調素子62の最適な駆動条件を自動的に判別することができる。以上のようにして、制御部55は被検体Sの高分解能且つ高コントラストな全体画像を自動的に生成し、モニター16に表示させることができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る顕微鏡システムについて説明する。図7は、第3実施形態に係る顕微鏡システム201の概略構成図である。
本実施形態に係る顕微鏡システム201は、図7に示すように、顕微鏡装置201Aと、該顕微鏡装置201Aに接続されることで各部の制御を行う制御部75と、を備えている。顕微鏡装置201Aは、観察対象である被検体Sに照明光Lを照射し、この被検体Sからの透過光によって得られた被検体Sの拡大像を明視野および暗視野を併用した状態で観察可能な顕微鏡である。
具体的に、顕微鏡装置201Aは、照明光Lを出射する光源71と、光源71からの照明光Lを被検体Sに照射する照明光学系72と、被検体Sからの透過光Lpを結像する結像光学系73と、結像光学系73により結像された透過光Lpを受光し電気信号に変換して被検体Sの画像を生成する画像生成素子5とを備えている。
制御部75は、コンピュータ(CPU)等からなり、その内部に記録された制御プログラムに従って、顕微鏡装置101Aの各部を駆動するための制御等を行う。また、制御部75は、各部の制御を実行するための演算等を行う。また、制御部75には、例えば液晶表示パネルなどのモニター16が接続されている。
また、照明光学系72と結像光学系73との間には、ステージ27が配置されている。
ステージ27は、その面内において互いに直交する2つの方向(図7中に示すX軸方向及びY軸方向)に移動操作される。これにより、被検体Sの観察位置を任意に変更することが可能となっている。また、ステージ27は、高さ方向(図7中に示すZ軸方向)に移動操作される構成であってもよい。
なお、以下の説明では、光源71から出射された照明光Lの光軸(光束の中心軸)をZ軸方向とし、このZ軸と直交する面内において互いに直交する2つの方向をX軸方向及びY軸方向として説明するものとする。なお、図7では、光源71から出射された照明光Lを破線で模式的に示している。
光源71は、第2実施形態同様、例えば赤、青、緑の各波長の光を発するLEDの組み合わせにより構成されている。そのため、本実施形態においても、図1に示したような波長フィルタ9を省略することが可能である。
照明光学系72は、光源71側から順に、コリメートレンズ8と、空間光変調素子10と、マイクロレンズアレイ11と、コンデンサレンズ12とが配置された構成を有している。
本実施形態において、空間光変調素子10は、第2実施形態と同様、光射出面が例えば49個に分割されており、分割領域10aにレンズ11aがそれぞれ配置されている。そのため、本実施形態において、サンプル分割数は49セクターとなっている。
各分割領域10aは、各セクターSCに対応した瞳形状調整領域20を複数(49個)含む。本実施形態において、瞳形状調整領域20は、50×50ピクセルの画素構造を有している。すなわち、各セクターSCでの照明瞳形状の設計自由度は50×50ピクセルである。
本実施形態において、結像光学系73は、上記ステージ7側から順に、第1対物レンズ70aと、第2の空間光変調素子76と、第2対物レンズ70bとが配置された構成を有している。
第1対物レンズ70aは、被検体Sからの透過光Lpを第2の空間光変調素子76の表面上に結像させるものであり、第2対物レンズ70bは、第2の空間光変調素子76からの透過光Lpを画像生成素子5の受光面上に結像させるものである。
第2の空間光変調素子76は、結像光学系73の瞳位置又はその近傍に配置されている。また、空間光変調素子10と第2の空間光変調素子76とは、互いに共役な位置に配置されている。
第2の空間光変調素子76は、空間光変調素子10と同様、液晶パネルから構成されている。すなわち、図2に示したように、第2の空間光変調素子76は、一対のガラス基板間に液晶を挟持した液晶パネルから構成されている。
第2の空間光変調素子76は、被検体Sからの透過光Lpの透過率の空間分布を可変に調整するもの(絞り)であり、この絞りの開口(透過光Lpを通過させる領域)の形状や大きさ等を自由に変化させることが可能である。
本実施形態において、第2の空間光変調素子76は、結像光学系73の開口数(NA)を規定する。すなわち、第2の空間光変調素子76は、被検体Sからの透過光Lpの所定の角度成分を選択的に通過させることで画像生成素子5の受光面上での視野状態を調整する。ここで、受光面上での視野状態とは、明視野領域および暗視野領域のいずれか一方に切り替わった状態、あるいは、明視野領域および暗視野領域が混在した状態を意味する。
以下、本実施形態に係る顕微鏡装置201Aの動作について説明する。なお、本実施形態において、制御部75は、被検体Sの観察部分(セクターSC)ごとの最適な照明光Lの照明瞳形状を得ることが可能な瞳形状調整領域20の絞りの開口形状を記憶しているものとする。また、制御部75は、空間光変調素子10により最適化された照明光Lの被検体Sにおける透過光Lpを観察する場合において、画像生成素子5の受光面上における最適な視野状況に関する情報を記憶しているものとする。
制御部75は、被検体SのセクターSC毎に照明光Lの照明瞳形状を最適化すべく、空間光変調素子10の分割領域10aにおいて各画素35をON/OFF制御することで通過させる照明光Lの照明瞳形状を調整する。図7では、分割領域10a1(瞳形状調整領域20)を通過することで角度分布が調整された照明光Lを2つの光線L21で示し、分割領域10a2(瞳形状調整領域20)および分割領域10a3(瞳形状調整領域20)を通過することで角度分布が調整された照明光Lをそれぞれ1つの光線L22、L23でそれぞれ示し、分割領域10a4(瞳形状調整領域20)を通過することで角度分布が調整された照明光Lを2つの光線L24で示している。
分割領域10a1を通過した光線L21は、レンズ11aおよびコンデンサレンズ12を介して載置面27a(被検体S)の一部(第2部分27a2および第3部分27a3)に入射される。また、分割領域10a2を通過した光線L22は、レンズ11aおよびコンデンサレンズ12を介して載置面27a(被検体S)の一部(第1部分27a1)に入射する。また、分割領域10a3を通過した光線L23は、レンズ11aおよびコンデンサレンズ12を介して載置面27a(被検体S)の一部(第1部分27a1)に入射する。また、分割領域10a4を通過した光線L24は、レンズ11aおよびコンデンサレンズ12を介して載置面27a(被検体S)の一部(第2部分27a2および第3部分27a3)に入射する。ステージ27における第1部分27a1、第2部分27a2、第3部分27a3および第4部分27a4は、画像生成素子5における第1セクターSC1、第2セクターSC2、第3セクターSC3および第4セクターSC4にそれぞれ対応する。
本実施形態において、顕微鏡装置201Aは、被検体Sのうち第1部分27a1に対応する部分(第1セクターSC1)に光線L22,L23による2極照明を照射し、被検体Sのうち第2部分27a2に対応する部分(第2セクターSC2)に光線L21,L24による2極照明を照射し、被検体Sのうち第3部分27a3に対応する部分(第3セクターSC3)に光線L21,L24による2極照明を照射することができる。
なお、図7においては、被検体Sの全セクターSC(49個)のうち、3つのセクターSC(第1セクターSC1、第2セクターSC2、および第3セクターSC3)のみを図示しているが、他のセクターSCについても同様に最適な角度分布の照明光Lを入射させることができる。
本実施形態においても、被検体Sに照射される照明光Lの照明瞳形状(光角度分布)を瞳形状調整領域20ごとに調整することができるため、被検体SのセクターSCごとに光角度分布が最適化された照明光Lを照射することができる。
被検体Sに照射された照明光L(光線L21,L22,L23,L24)は被検体Sを透過することで透過光Lpとなる。
本実施形態において、第1部分27a1に入射した光線L22,L23は、第1対物レンズ70aを透過して第2の空間光変調素子76に入射する。第2部分27a2に入射した光線L21,L24は、第1対物レンズ70aを透過して第2の空間光変調素子76に入射する。第3部分27a3に入射した光線L21,L24は、第1対物レンズ70aを透過して第2の空間光変調素子76に入射する。
制御部75は、記憶された情報(最適な位相変調領域の形状に関する情報)に基づいて、後述のように所定の画素を選択的に駆動するように第2の空間光変調素子76を制御する。
第3部分27a3に入射した光線L21,L24のうち直接光L21a´,L24a´は、第2の空間光変調素子76に形成された絞りの開口76aの外側の領域によって遮光される。一方、第3部分27a3に入射した光線L21,L24のうち回折光L21b´,L24b´は、第2の空間光変調素子76に形成された絞りの開口76aを通過し、第2対物レンズ70bにより画像生成素子5の受光面上の第1領域5aに入射する。画像生成素子5において、第1領域5aは、被検体Sの第1セクターSC1に対応する領域であり、回折光L21b´,L24b´が入射する。そのため、画像生成素子5は、被検体Sの第3セクターSC3に対応した第3領域5cが暗視野となる。
第2部分7a2に入射した光線L21,L24のうち直接光L21a,L24aは、第2の空間光変調素子76に形成された絞りの開口76aの外側の領域によって遮光される。一方、光線L21,L24のうち回折光L21b,L24bは、第2の空間光変調素子76に形成された絞りの開口76aを通過し、第2対物レンズ70bにより画像生成素子5の受光面上の第2領域5bに入射する。画像生成素子5において、第2領域5bは、被検体Sの第2セクターSC2に対応する領域であり、回折光L21b,L24bが入射する。そのため、画像生成素子5は、被検体Sの第2セクターSC2に対応した第2領域5bが暗視野となる。
第1部分7a1に入射した光線L22,L23のうち直接光L22a,L23aは、第2の空間光変調素子76に形成された絞りの開口76aを通過し、第2対物レンズ70bにより画像生成素子5の受光面上の第3領域5cに入射する。画像生成素子5において、第3領域5cは、被検体Sの第3セクターSC3に対応する領域であり、直接光L22a,L23aが入射する。そのため、画像生成素子5は、被検体Sの第1セクターSC1に対応した第1領域5aが明視野となる。
本実施形態によれば、画像生成素子5の受光面上において暗視野領域(第2領域5bおよび第3領域5c)と明視野領域(第1領域5a)とを混在させた状態とすることが可能である。制御部75は、視野状況が最適化された被検体Sの全体画像を生成し、モニター16に表示させる。したがって、ユーザーは、被検体Sの場所毎に最適な明るさの視野で観察を行うことができる。
また、本実施形態においては、制御部75に記憶されたデータ(セクターSCごとにおける照明光Lの最適角度分布、画像生成素子5の受光面上における視野状況に関する情報)に基づいて空間光変調素子10および第2の空間光変調素子76を制御することで被検体Sの観察画像を取得する場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ユーザーに選択された条件に基づいて、最適化された被検体Sの観察画像を生成するようにしてもよい。
この場合、制御部75は第1ステップを実行する。なお、第1ステップを実行する際、制御部75は、第2の空間光変調素子76を所定の初期条件で駆動させる。
第1ステップにおいて、制御部75は、全てのセクターSCにおける照明光Lの照明瞳形状(光角度分布)が等しくなるように空間光変調素子10の各分割領域10aにおける瞳形状調整領域20を駆動させた状態で画像生成素子5により被検体Sの画像を生成する画像生成動作を、照明瞳形状を調整する度に繰り返し実行し、調整した照明瞳形状に対応した複数の被検体Sの画像を取得する。これにより、照明光Lの光角度分布条件(照明瞳形状)が異なる複数の被検体Sの画像が生成され、制御部75に記憶される(図5参照)。
続いて、制御部75は、第2ステップを実行する。
第2ステップにおいて、制御部75は、第2実施形態と同様に、セクターSCごとに第1ステップにより取得した複数の被検体Sの画像の中からユーザーにより選択された画像を得るように空間光変調素子10を駆動し、被検体Sの全体画像を生成する。
ユーザーは、全てのセクターSCにおいてモニター16に表示された複数の被検体Sの画像の中から最も高画質の画像を選択し、選択された画像に対応する光強度分布(照明光Lの形状)を制御部75に記憶させる。
続いて、制御部75は、上記第2ステップでユーザーにより選択された照明瞳形状が各セクターSCにおいて得られるように空間光変調素子10を制御した状態とし、第2の空間光変調素子76を複数の異なる条件で駆動させる度に画像生成素子5により被検体Sの画像を生成する画像生成動作を実行し、画像生成動作ごとに複数の被検体Sの画像を取得する。これにより、第2の空間光変調素子76の駆動条件が異なる複数の被検体Sの画像が生成され、制御部75に記憶される。
制御部75は、第2の空間光変調素子76における駆動条件が異なる複数の画像をモニター16に表示する。本実施形態は、第2の空間光変調素子76の駆動条件として、例えば、絞りの開口76aの大きさ又は形状を異ならせた5パターンを用意する。これにより、モニター16には、異なる視野状況に対応した5パターンの被検体Sの画像が表示される。
ユーザーは、モニター16に表示された5パターンの被検体Sの画像の中から、例えば最も高画質(高解像度あるいは高コントラスト)な画像を選択する。これにより、制御部75はユーザーに選択された画像から被検体Sの全体画像を生成し、モニター16に表示させる。この構成によれば、ユーザーの選択によって照明光LがセクターSCごとに最適化され、且つ視野状況が被検体SのセクターSC毎に最適化された全体画像を得ることができる。
なお、制御部75は、上記ステップ(視野状況が最適化された被検体Sの全体画像の生成ステップ)を自動的に行うことも可能である。この場合、制御部75は、上記第2ステップにおけるユーザーによる画像の選択を自動的に行う。例えば、制御部75は、第1ステップで取得した複数の画像について、セクターSCごとに空間周波数分布の広がりや方向性などを分析し、被検体Sの形状を推定しながら、この演算結果を照明光Lの形成に反映させる。なお、このように被検体Sの画像から空間周波数分布を分析する方法については、例えば特開2012−220801号公報、特開2012−222672号公報、あるいは特開2012−242532号公報、に開示されているものを用いることができる。
このようにして、制御部75は、全てのセクターSCごとに最適な照明瞳形状(光強度分布)を求めることができる。
続いて、制御部75は、上記第ステップで自動的に選択した照明瞳形状が各セクターSCにおいて得られるように空間光変調素子10を制御した状態とし、第2の空間光変調素子76を複数の異なる条件(開口76aの大きさ又は形状を異ならせる条件)で駆動させる度に画像生成素子5により被検体Sの画像を生成する画像生成動作を実行し、画像生成動作ごとに複数の被検体Sの画像を取得する。これにより、第2の空間光変調素子76の駆動条件が異なる複数の被検体Sの画像が生成され、制御部75に記憶される。
続いて、制御部75は、第2の空間光変調素子76における駆動条件が異なる複数の画像の選択を上記分析方法により自動的に行う。このようにして、制御部75は、全てのセクターSCごとに最適な照明瞳形状(光角度分布)を得る空間光変調素子10の駆動条件、第2の空間光変調素子76の最適な駆動条件(最適な視野状況を得る駆動条件)を自動的に判別することができる。以上のようにして、制御部75は視野状況が最適化された被検体Sの全体画像を自動的に生成し、モニター16に表示させることができる。
第3実施形態に係る顕微鏡システム201は、第2実施形態に係る顕微鏡システム101の構成を用いても実現可能である。例えば、顕微鏡システム101が備える後段側空間光変調素子62における位相変調機能をOFF(全画素をON状態とすることで照明光Lを全透過させる状態)し、前段側空間光変調素子61を第2の空間光変調素子76として機能させればよい。
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本発明の顕微鏡装置は、上述した明視野顕微鏡や位相差顕微鏡を構成するものの以外にも、被検体Sからの反射光や散乱光によって得られた被検体Sの拡大像を観察する暗視野顕微鏡を構成するもの等であってもよい。
また、本発明の顕微鏡装置は、上述したモニター16,62に表示された被検体Sの画像を観察するものに限らず、接眼レンズ(図示略)を通して被検体Sの画像を観察するものであってもよい。