JP2015137225A - 強化ガラスの加工方法および強化ガラス加工装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 圧縮応力層が厚い化学強化ガラスであっても、所定の形状に再現性よく加工することが可能であるとともに、切削・研削装置による機械加工が可能な強化ガラスの加工方法を提供する。
【解決手段】板厚の方向において対向する第一の板表面と第二の板表面にそれぞれ第一の応力層が形成され、前記板厚の方向における内部側に前記第一の応力層とは逆向きの第二の応力層が形成された強化ガラスの加工方法は、前記第一の板表面側から、超音波加工によって第一の凹部を形成する工程と、前記第二の板表面側から、超音波加工によって前記第一の凹部との間に薄肉部を形成するように該第一の凹部とは非同一形状の第二の凹部を形成する工程と、前記薄肉部を切断して前記第一の凹部と前記第二の凹部の内側領域において前記板厚を貫通する開口部を形成する工程と、を具備する。
【選択図】図3
【解決手段】板厚の方向において対向する第一の板表面と第二の板表面にそれぞれ第一の応力層が形成され、前記板厚の方向における内部側に前記第一の応力層とは逆向きの第二の応力層が形成された強化ガラスの加工方法は、前記第一の板表面側から、超音波加工によって第一の凹部を形成する工程と、前記第二の板表面側から、超音波加工によって前記第一の凹部との間に薄肉部を形成するように該第一の凹部とは非同一形状の第二の凹部を形成する工程と、前記薄肉部を切断して前記第一の凹部と前記第二の凹部の内側領域において前記板厚を貫通する開口部を形成する工程と、を具備する。
【選択図】図3
Description
本発明は、化学強化ガラスに穴開けや、特定形状物の切り出し等の加工を行う強化ガラスの加工方法および強化ガラス加工装置に関する。
近年、タッチパネルを搭載したいわゆるスマートデバイスといわれる多機能携帯端末が普及しており、そのタッチパネルのカバーガラスには、イオン交換等で強化したガラス(強化ガラス)が用いられつつある。強化ガラスは、未強化のガラスに比べて、機械的強度が高いため、本用途に好適である。
強化ガラスは、物理強化ガラスと化学強化ガラスに大別される。物理強化ガラスは、ガラスを軟化点近くまで加熱後に急冷することによってガラス表面に圧縮応力層を形成し、内部側に引張応力層を形成したものであり、圧縮応力層にクラックが生じると、そこを起点として一気に破砕してしまうため、強化後に切断や穴開け等の加工することは非常に困難である。一方、化学強化ガラスは、ソーダガラス表面にイオン交換による化学処理によって圧縮応力層を作り出すとともに内部側を引張応力層としたものであって、圧縮応力層のみを比較的薄く作成できる。このため、強化後の加工(レーザ加工、化学的エッチングを利用した加工、機械加工など)もソーダガラスと同様に可能である。
しかしながら、化学強化ガラスの場合でも、実際上、穴開け等の加工が可能であるのは圧縮応力層の厚みがせいぜい30μm〜40μm程度までのものである(例えば、特許文献1の実施例1では圧縮応力層の厚みが37.4μmである)。近年では化学強化ガラスが幅広い技術及び産業分野において採用されており、圧縮応力層の厚みが例えば、50μm超のものも量産化されているが、このように圧縮応力層の厚みが厚くなると、物理強化ガラスと同様に加工時の破砕またはひび割れが生じ、切断や穴開け等の加工が非常に困難となる。
なお、圧縮応力層の厚みが厚いものでも、圧縮応力層と引張応力層との応力差、与えられた力またはクラックの形状によって、偶然に破砕せずに切断や穴開けができる場合も考えられるが、再現性のあるものとはいえない。
すなわち現状では、圧縮応力層が厚い(例えば、60μm程度)の化学強化ガラスを、再現性よく所定の形状に加工する(例えば、直径10mm以下に穴開け加工する)技術として確立されているものはない。
また、(圧縮応力層が30μm〜40μm程度に薄い)化学強化ガラスを切断、加工する場合は、レーザ加工や化学的なエッチングを用いるものが一般的であり、ドリルやミルなどの切削・研削装置による機械加工と比較して装置のコストも高くなり、ひいては加工コストも増大するという問題がある。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、圧縮応力層が厚い化学強化ガラスであっても、所定の形状に再現性よく加工することが可能であるとともに、切削・研削装置による機械加工が可能な強化ガラスの加工方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の手段によって、上記課題を解決したものである。
(1)本発明は、板厚の方向において対向する第一の板表面と第二の板表面にそれぞれ第一の応力層が形成され、前記板厚の方向における内部側に前記第一の応力層とは逆向きの第二の応力層が形成された強化ガラスの加工方法であって、前記第一の板表面側から、切削加工によって第一の凹部を形成する工程と、前記第二の板表面側から、切削加工によって前記第一の凹部との間に薄肉部を形成するように該第一の凹部とは非同一形状の第二の凹部を形成する工程と、工具により前記薄肉部の一部に亀裂を生じさせることにより、前記薄肉部に沿って前記亀裂を進展させて切断する工程と、を具備する、ことを特徴とする強化ガラスの加工方法である。
(2)また、本発明は上記発明に関連して、前記第一の凹部と前記第二の凹部の少なくとも一方は、環状の溝であり、前記薄肉部を環状に形成することで、該薄肉部の内側領域を環状に切断する、ことを特徴とする強化ガラスの加工方法である。
(3)また、本発明は上記発明に関連して、前記第一の凹部は、環状の第一の溝であり、前記第二の凹部は、前記第一の溝の一部と前記板厚の方向において重畳するとともに前記第一の溝とは非同一形状の環状の第二の溝であり、前記第一の溝と前記第二の溝との重畳領域に形成された環状の前記薄肉部に沿って切断する、ことを特徴とする強化ガラスの加工方法である。
(4)また、本発明は上記発明に関連して、前記第一の溝の内周側側壁および外周側側壁のうち少なくともいずれかと、前記第二の溝の内周側側壁および外周側側壁のうち少なくともいずれかと、を前記板厚方向において非重畳となる位置に形成する、ことを特徴とする強化ガラスの加工方法である。
(5)また、本発明は上記発明に関連して、前記第一の凹部の側壁の少なくとも一部と、前記第二の凹部の側壁の少なくとも一部とを前記板厚の方向において非重畳となる位置に形成し、前記薄肉部の切断後に前記第一の凹部の側壁と前記第二の凹部の側壁とによって前記板厚方向において段差部を形成する、ことを特徴とする強化ガラスの加工方法である。
(6)また、本発明は上記発明に関連して、前記第一の凹部を第一の深さで形成後に前記第二の凹部を第二の深さで形成し、その後再び前記第一の凹部を前記第二の凹部に達しない第三の深さに掘り下げる、ことを特徴とする強化ガラスの加工方法である。
(7)また、本発明は上記発明に関連して、前記薄肉部の厚みは0.2mm以下である、ことを特徴とする強化ガラスの加工方法である。
(8)また、本発明は上記発明に関連して、前記第一の応力層の厚みは30μm以上である、ことを特徴とする強化ガラスの加工方法である。
(9)また、本発明は上記発明に関連して、前記内側領域の直径は10mm以下である、ことを特徴とする強化ガラスの加工方法である。
(10)また、本発明は上記発明に関連して、前記強化ガラスは、化学強化ガラスである、ことを特徴とする強化ガラスの加工方法である。
(11)また、本発明は、板厚の方向において対向する第一の板表面と第二の板表面にそれぞれ第一の応力層が形成され、前記板厚の方向における内部側に前記第一の応力層とは逆向きの第二の応力層が形成された化学強化ガラスの加工方法であって、前記第一の板表面および前記第二の板表面より前記板厚の方向の内部側の領域に環状の薄肉部を形成し、該薄肉部の近傍に、該薄肉部を基準として前記第一の板表面側に内在する応力と前記第二の板表面側に内在する応力とが不均衡となる領域を形成することにより、前記薄肉部を応力集中状態とする工程と、
前記薄肉部の一部を前記板厚方向に切断し、前記薄肉部の形状に沿って前記化学強化ガラスに亀裂を進展させて環状に分断する工程と、を具備する、ことを特徴とする強化ガラスの加工方法である。
(12)また、本発明は上記発明に関連して、前記第一の板表面側から形成した第一の溝と、前記第二の板表面側から形成した第二の溝によって形成され、前記第一の溝の側壁と前記第二の溝の側壁とは、面積が異なる、ことを特徴とする強化ガラスの加工方法である。
(13)また、本発明は上記発明に関連して、前記薄肉部は、前記第一の板表面側から形成した環状の第一の溝と、前記第二の板表面側から形成した環状の第二の溝によって形成され、前記第一の溝の側壁と前記第二の溝の側壁とは、円周方向の長さが異なる、ことを特徴とする強化ガラスの加工方法である。
(14)また、本発明は上記発明に関連して、前記薄肉部は、前記第二の応力層に形成する、ことを特徴とする強化ガラスの加工方法である。
(15)また、本発明は上記発明に関連して、工具の中心位置を互いにずらして加工することにより前記第一の溝と前記第二の溝を形成する、ことを特徴とする強化ガラスの加工方法である。
(16)また、本発明は、板厚の方向において対向する第一の板表面と第二の板表面にそれぞれ第一の応力層が形成され、前記板厚の方向における内部側に前記第一の応力層とは逆向きの第二の応力層が形成された強化ガラスを切断する強化ガラス加工装置であって、前記強化ガラスに接触して切削を行う加工工具と、該加工工具を移動させる駆動機構と、該駆動機構の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第一の板表面側から、前記加工工具により切削加工を行い、第一の凹部を形成する工程と、前記第二の板表面側から、前記加工工具により切削加工を行い、前記第一の凹部との間に薄肉部を形成するように該第一の凹部とは非同一形状の第二の凹部を形成する工程と、前記加工工具により前記薄肉部の一部に亀裂を生じさせることにより、前記薄肉部に沿って前記亀裂を進展させて切断する工程と、を実行させる手段を具備する、ことを特徴とする強化ガラス加工装置である。
本発明によれば、圧縮応力層が厚い化学強化ガラスであっても、所定の形状に再現性よく加工することが可能であるとともに、切削・研削装置による機械加工が可能な強化ガラスの加工方法および強化ガラス加工装置を提供することが可能となる。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る強化ガラスの加工方法について詳細に説明する。
図1は、本実施形態の強化ガラス1を示す概要図であり、図1(a)が加工前の強化ガラス1の断面図であり、図1(b)が加工後の強化ガラス1の上面図であり、図1(c)が加工後の強化ガラス1の断面図(図1(b)のA−A線断面図)である。
まず、図1(a)を参照して、本実施形態で加工する強化ガラス1とは、板厚Dの方向において対向する第一の板表面S1と第二の板表面S2にそれぞれ、第一の方向の応力(第一の方向に働く応力)が内在する第一の応力層11、12が形成され、板厚Dの方向における内部側に、第一の方向とは逆向きの応力(第一の方向とは逆の方向に働く応力)が内在する第二の応力層13が形成されたガラスである。第一の方向に働く応力とは例えば、板表面を圧縮する方向に働く応力であり、以下の説明では、第一の応力層11、12を圧縮応力層11,12という。また、第二の方向に働く応力とは例えば、板表面を伸張(引っ張る)する方向に働く応力であり、以下の説明では、第二の応力層13を引張応力層13という。より詳細には、強化ガラス1は、ソーダガラス表面にイオン交換による化学処理によって圧縮応力層11,12を作り出すとともに内部側を引張応力層13としたいわゆる化学強化ガラスである。本実施形態の強化ガラス1は一例として、圧縮応力層11、12の板厚D方向の厚みdが例えば、10μm〜100μm程度であり、好適には30μm以上、より好適には、40μm以上であり、60μm程度の場合もある。
そして本実施形態の加工方法は、一例として、同図(b)(c)に示すように、強化ガラス1の厚み方向に貫通する開口部OP(ここでは円形状の穴)を形成する方法、すなわち穴開け加工方法または刳り抜き加工方法である。あるいは、円盤状部材の切り出し加工方法である。開口部OPの直径Lは、例えば、加工具(例えばドリル)の直径以上、十数mm程度以下であり、好適には5mm〜12mm程度である。なお、同図を含め以下の図面においては、板厚D方向のサイズを強調した概要図を用いており、開口部OPの径方向と板厚D方向の縮尺は異なっている。
図2から図4を参照して、本実施形態の強化ガラス1の加工方法について説明する。図2(a)は、強化ガラス1の第一の表面S1側から見た上面図であり、図2(b)は図2(a)のA−A線に沿った強化ガラス1の断面図であり、図2(c)は、強化ガラス1の第二の表面S2側から見た上面図であり、図2(d)は図2(c)のA−A線に沿った強化ガラス1の断面図である。なお、同図(d)は、同図(a)と同様に図面の上方が第一の板表面S1となっている。また、図3〜図4は強化ガラス1の断面図である。
第1工程:まず、図2(a)(b)に示すように、強化ガラス1の第一の板表面S1側から、第一の加工を行い、第一の凹部21を形成する。第一の凹部21は、開口したい穴に沿って形成された例えば円環状の溝(第一の溝21)であり、例えばドリル(ダイアモンド(コア)ドリル、以下同様)等を用いた切削加工により、より詳細には超音波加工により形成する。
第一の溝21は、例えば、その外周縁(外周側側壁21oの位置)を開口したい穴の外周と一致するように形成する。溝の幅(円環状の第一の溝21の直径L1方向の幅W1)は、開口したい穴の直径の例えば1/5〜1/10程度とする。また、第一の加工における第一の溝21の深さ(第一の深さD1)は、例えば、第一の板表面S1側の圧縮応力層11の厚みと同等あるいはそれ以上の深さとする。
第2工程:次に、図2(c)(d)に示すように、強化ガラス1の第二の板表面S2側から、第二の加工を行い、第二の凹部22を形成する。なお、図2(c)では、第二の凹部22を実線で示し、第一の凹部21を破線で示している。第二の凹部22は、第一の溝21とは非同一の形状であるが、板厚D方向においてその一部が第一の溝21と重畳するような形状の円環状の溝(第二の溝22)であり、例えばドリル等を用いた切削加工により、より詳細には超音波加工によって形成する。
ここで、第一の溝21と非同一の形状とは、第二の溝22の形状、大きさ、溝の幅、中心位置などが、第一の溝21のそれらと異なる(不一致)であることをいう。この例では、第二の溝22は、第一の溝21と中心が一致する(同心円の)円環状の溝であるが、その直径L2が第一の溝21の直径L1よりも小さいものであり、また一部において、第一の溝21と重畳する。つまり、第二の溝22は、その外周縁(外周側側壁22oの位置)が第一の溝21の外周側側壁21oと内周側側壁21oとの間に内側に位置し、第二の溝22の内周縁(内周側側壁22iの位置)は、第一の溝21の内周側側壁21oよりも内側に位置する。また第二の溝22はその幅(円環状の第二の溝22の直径L2方向の幅W2)は、第一の溝21と同程度とする。このようにすることで、第一の溝21と第二の溝2とはそれぞれの底面部が一部で重畳するように形成できる。
また、第二の加工における第二の溝22の深さ(第二の深さD2)は、例えば、第二の板表面S2側の圧縮応力層12の厚みと同等あるいはそれ以上の深さとし、好適には、第一の深さD1よりも大きいものとするが、第一の溝21には達しない深さとする。
第3工程:次に、図3(a)に示すように、再び強化ガラス1の第一の板表面S1側から、例えばドリル等を用いた超音波加工によって第三の加工を行い、第一の溝21を、第二の溝22には達しない第三の深さD3分さらに掘り下げる。
第4工程:引き続き、図3(b)に示すように、第二の板表面S2側から、例えばドリル等を用いた超音波加工によって第四の加工を行い、第二の溝22を、第一の溝21には達しない第四の深さD4分さらに掘り下げる。第四の深さD4は例えば、第二の加工における第二の深さD2または第三の加工における第三の深さD3よりも浅いものとする。
このようにして、第一の加工から第四の加工までが終了すると、板厚D方向において、第一の溝21の底面と第二の溝22の底面の間に薄肉部25が形成される。薄肉部25は、第一の溝21および第2の溝22と同心円の円環状である。そして薄肉部25の内周側(内側)または外周側(外側)では、第一の溝21および第二の溝22が形成されることによって板厚Dの方向において応力が不均衡な領域が形成され、板厚D(薄肉部25の厚みDT)方向に撓みあるいは歪みが生じている。このことにより、薄肉部25(及びその付近)は全周に亘って応力集中状態となっている。つまり、本実施形態の薄肉部25は、その内周側にまたは外周側において応力が不均衡な領域が形成されることによって、薄肉部25に応力が集中するような厚みに形成する。具体的には、薄肉部25は、第一の板表面S1(または第二の板表面S2)から0.1mmより深い位置で、圧縮応力層11,12より深く、引張応力層13に位置するように形成する。より好適には、薄肉部25は板厚Dのほぼ中心付近に位置するように形成する。
第5工程:その後、図3(c)に示すように、第一の板表面S1側から加工工具31を使用して、円環状の薄肉部25の一部に亀裂を生じさせる。これにより、第一の溝21の外周端部および第二の溝22の外周縁に沿って円形状に亀裂を進展させる。亀裂は、第一の溝21と第二の溝22に沿って一瞬のうちに周方向に進展し、同図(d)に示すように強化ガラス1が環状に分断される。これにより板厚Dを貫通する開口部(穴)OPが形成される。
本実施形態では、第一の溝21の内周側側壁21iおよび外周側側壁21oのうち少なくともいずれかと、第二の溝22の内周側側壁22iおよび外周側側壁22oのうち少なくともいずれかとが、板厚D方向において非重畳となる位置に形成されている。具体的にこの例では、第一の溝21の外周側側壁21oと第二の溝22の外周側側壁22oと、第一の溝21の内周側側壁21iと第二の溝22の内周側側壁22iとはそれぞれ、直径方向においてずれた位置に形成されている。このため、図3(d)の状態(左図)では、開口部OPの形状は、第一の板表面S1側では、第一の溝21の外周側側壁21oの形状と一致し、第二の板表面S2側では、第二の溝22の外周側側壁22oの形状と一致している。つまり、同図に示す断面視において、第一の溝21の外周側側壁21oと第二の溝22の外周側側壁22oとによって板厚D方向において段差部26が形成されている。
第6工程:さらに、図4(a)に示すように、グラインダーなどの研磨工具によって、開口部OPの内周面を研磨して段差部26を取り除き、開口部OPの内周面を板厚D方向において平坦面とする。これにより、第一の溝21の外周側側壁21oに沿う形状の開口部OPが形成される(図4(b))。
なお、ここでは、強化ガラス1に開口部OPを形成する場合を例に説明したが、図3(d)の右図に示すように、分断した略円盤状体CR'の外周を研磨して段差部26を除去し、図4(c)に示すような円盤状体部材CRを最終製品として得るものであってもよい。
以上説明したように本実施形態によれば、レーザー加工を用いることなく、機械加工のみによって、強化ガラス(化学強化ガラス)1に所望の直径の開口部OP(刳り抜き穴)を形成するなど、強化ガラス1の加工をすることができる。従って、加工装置の低コスト化が実現する。
また、従来では、圧力応力層の厚みが60μm程度の強化ガラス(化学強化ガラス)は、内部との応力差が大きいため機械加工が非常に困難であった。しかし本実施形態では、圧力応力層11,12の応力差を有効活用して薄肉部25を撓ませながら切断するので、圧力応力層11,12の厚みが例えば、60μm程度の強化ガラス(化学強化ガラス)1であっても、例えば、直径5mm程度の開口部OP(刳り抜き穴)を形成することができる。
図5および図6は、本実施形態の加工方法をさらに説明する図である。図5は、強化ガラス1の上面図である。図6は、本実施形態の加工方法を説明するための図であり、同図(a)が強化ガラス1に設けた第一の溝21と第二の溝22の平面概要図、同図(b)(c)(d)が強化ガラス1の側面概要図であり、同図(e)が第一の溝21と第二の溝22の拡大図である。
一般に、化学強化ガラスを機械的に加工するため、その表面に加工傷Pを付けると、図5(a)に示すようにランダムな亀裂C(意図しない亀裂C)が生じて破砕する。
本実施形態において、所望の直径で円形の開口部OPが形成できるメカニズムの詳細は明らかにはなっていないが、本願出願人は、同図(b)に示すように、強化ガラス1の板厚D方向の内部側(略中心付近)において、円環状に応力集中状体となる領域(薄肉部25)を形成することによって、薄肉部25から放射状、かつ円弧状に亀裂Cが生じることを見いだした。そして、当該円弧状の亀裂Cの大きさと方向を制御することで、これらを連続した円形状の亀裂に制御することで、その内部を破砕してくり抜けると考えた。そして鋭意努力の結果、亀裂の大きさと方向を制御することに成功し、切削や研磨などの機械加工のみで、再現性よく、円形状の開口部(刳り抜き穴)OPの形成する上述の方法を確立した。
図6を参照してさらに説明する。図6は、上述の第一の加工から第四の加工までが終了し、薄肉部25が形成された状態(図3(b))を示している。また、図6(a)では、第一の溝21の内側側壁21iの位置と、第二の溝22の内側側壁22iの位置を透過的に示している。
同図(a)(b)に示すように、板厚D方向において一部が重畳するように、それぞれの中心からの距離(半径)が異なる第一の溝21と第二の溝22を、強化ガラス1の両表面側から形成し、その重畳領域には環状の薄肉部25を形成すると、第一の溝21および第二の溝22において内側に向かう(閉じるようとする方向)力が生じる。その結果、薄肉部25の内周側(内側)の領域(同図(b)の破線領域)において、応力が不均衡な領域が生じる。つまり、薄肉部25の内周側の破線領域に着目すると、一点鎖線で示す薄肉部25(の板厚D方向)の中心を基準として、それより第一の板表面S1側の領域では、外側(第一の溝21方向)に伸びようとする応力Aが内在し、薄肉部25(の厚みDT方向)の中心を基準として、それより第二の板表面S2側の領域では、外側(第二の溝22方向)に伸びようとする応力Bが内在する。そしてこのとき、第一の溝21の直径が第二の溝22の直径より大きいため、応力Aは応力Bより大きいものとなる。
このように、応力Aと応力Bに差が生じると(応力A>応力Bの場合)、図6(c)に示すように、薄肉部25の内周側の破線領域は上に凸状に撓み、薄肉部25の外周側は下に凸状(図の左右端部が上方に反るように)撓み、その結果、薄肉部25は応力集中状態となる。
この状態で、薄肉部25の外周部分(図では左右端部)を治具などで固定し、薄肉部25の一部に亀裂を生じさせることで、環状の薄肉部25の円周方向に沿って亀裂(意図した亀裂CC)が進展し、円形状の開口部OP(または円盤状部材CR)が形成されるように、強化ガラス1を分断することができる。
あるいは、同図(d)に示すように薄肉部25の内周側を治具などで押さえて平坦に近づけることで、相対的に外周部分が反り返り、応力集中状態となった薄肉部25に亀裂(意図した亀裂CC)を生じさせるものであってもよい。
すなわち、本実施形態は、第一の板表面S1および第二の板表面S2より板厚Dの方向の内部側の領域(例えば、板厚Dの中心付近の引張応力層13)に環状の薄肉部25を形成する。そして、薄肉部25の内周側または外周側に、板厚D方向において薄肉部25(一点鎖線)を基準として第一の板表面S1側に内在する応力(応力A)と第二の板表面S2側に内在する応力(応力B)とが不均衡となる領域を形成することにより、薄肉部を25を応力集中状態とする。その状態で、薄肉部25の一部に亀裂(意図した亀裂CC)を生じさせて、薄肉部25の形状に沿って強化ガラス1を分断するものである。
亀裂を所望の形状に沿って生じさせるように制御するには、薄肉部25はその厚みDTができる限り薄いことが望ましい。一例として厚みDTは、0.05mm〜0.2mm程度であり、より好適には0.1mm程度である。また、薄肉部25の板厚D方向の位置は、板厚Dの中央付近(好適には板厚D方向の中心位置)の引張応力層13に設けることが望ましい。そのため、本実施形態では第一の板表面S1側から第一の溝21を形成し、第二の板表面S2側から第二の溝22を形成する。
また、図6(e)の左図に拡大して示すように、第一の溝21の位置と第二の溝22の位置およびこれらの幅W1,W2が板厚D方向において完全に重畳していると、薄肉部25の強度が不足し、亀裂を制御できる程度に薄くする(厚みDTにする)以前に、意図しない亀裂Cが生じ、薄肉部25から破砕してしまう。
そこで本実施形態では、図6(e)の右図に示すように、第一の溝21と第二の溝22は、板厚D方向において互いに一部が重畳するように形成する。これにより、第一の溝21と第二の溝22は互いに溝の底部の裏側が、破線丸印で示すように他方の溝の底面角部(肩部)となる。これにより薄肉部25は、強度が確保されるので、意図しない亀裂Cが生じにくくなり、その厚みDTを亀裂CCの制御が可能な程度に薄く形成できる。
このように、本実施形態の加工方法によれば、板厚Dで0.5mm〜2mm程度、圧力応力層の厚みが10μm〜100μm(特に、従来加工が不可能であった60μm以上)の強化ガラス(化学強化ガラス)1に、直径が数mm〜十数mm程度の開口部OPを、機械加工のみで再現性よく形成することができる。
図7は、本実施形態の強化ガラス加工装置30の概要図である。強化ガラス加工装置30は、強化ガラス1に接触して切削を行う加工工具31と、加工工具31を移動させる駆動機構32と、駆動機構32の動作を制御する制御部33と、強化ガラス1を載置するステージ34と、強化ガラス1の治具35等を備える。
また制御部33は、第一加工手段331と、第二加工手段332と、第三加工手段333を少なくとも有している。
第一加工手段331は、第一の板表面S1側から、加工工具31により切削加工を行い、第一の凹部21を形成する工程を実行させる手段である。
第二加工手段332は、第二の板表面S2側から、加工工具31により切削加工を行い、第一の凹部21との間に薄肉部25を形成するように第一の凹部21とは非同一形状の第二の凹部22を形成する工程を実行させる手段である。
第三の加工手段333は、加工工具31により薄肉部25の一部に亀裂を生じさせることにより、薄肉部25の内側または外側の領域において亀裂25を進展させて切断する工程を実行させる手段である。
強化ガラス加工装置30の使用方法は、まずステージ34に被加工物である強化ガラス1を載置し、治具35により固定する。そして、制御部33により駆動機構32を制御し、加工工具31で強化ガラス1を加工する。制御部33によって、上述の本実施形態の強化ガラス1の加工方法の第1工程から第6工程が実行される。
なお、第一の凹部21と第二の凹部22を形成する際に、都度治具25から強化ガラス1を取り外し、強化ガラス1の表裏(第一の板表面S1と第二の板表面S2)を反転させてもよいし、ステージ34を移動可能とするなどして強化ガラス1(第一の板表面S1と第二の板表面S2)を挟むように、上下に2本の加工工具11を配置してもよい。この場合、上下に2本の加工工具で、第一の板表面S1側と第二の板表面S2側を交互に加工してもよいし、両面を同時に加工してもよい。
また、第一の凹部21、第二の凹部22を形成する加工工具11と、薄肉部25に亀裂を入れる加工工具11は同じ工具であってもよいし、別の工具であってもよい。
<変形例>
図8および図9を参照して、本実施形態の変形例について説明する。図8および図9は、強化ガラス1、第一の凹部(第一の溝)21、および第二の凹部(第二の溝)22の形状の概要を示す断面図である。
上述の実施形態では、第一の凹部21および第二の凹部22として対向する外周側側壁と内周側側壁を有する溝の場合を例に説明したが、第一の凹部21および第二の凹部22の少なくともいずれかは、図6(a)に示すように、外周縁のみに一つの側壁が形成され、内部が切削、研磨された盆状の凹部であってもよい。ここでは、第一の凹部21の直径L1は第二の凹部22の直径L2より大きい場合を例に示している。
このようにすると、薄肉部25の外周近傍の破線領域では、第一の凹部21の側壁21sの面積(円周方向の長さ)は、第二の凹部22の側壁22sの面積(円周方向の長さ)より大きくなり、両者の面積(円周方向の長さ)は不均衡となる(面積あるいは円周方向の長さが異なる)。この面積の不均衡によって、薄肉部25の外周側の破線領域において、板厚D方向の薄肉部25を基準として第一の板表面S1側と第二の板表面側S2で内在する応力に差が生じる。例えば、薄肉部25より第一の板表面S1側において、第一の凹部21の中心に向かう応力と、薄肉部25より第二の板表面S2側において、第二の凹部22の中心に向かう応力とに差が生じ、図示の左右端が上方に反り、薄肉部25が例えば上に凸状に撓む。これにより、結果として薄肉部25の外縁に応力集中が生じる。
この状態で薄肉部25の一部に亀裂を形成することで、薄肉部25に沿って円形状に強化ガラス1を分断できる。
また、第一の凹部21と第二の凹部22は非同一の形状であればよく、ここでの非同一の形状とは、外形状、大きさ、形成位置、環状の溝の場合には中心位置、溝の幅などが、互いに異なる(不一致)であることをいう。
具体的には、図6(b)〜(e)に示すように、第一の凹部(溝)21と第二の凹部(溝)22は、環状の溝の直径(最大径、最大長さ)L1、L2と、溝の幅W1、W2が異なるものであってもよい。その場合、互いの内周側側壁と外周側側壁とが直径方向において不一致の位置にある(同図(b)(c)(e))ものであってもよいし、内周側側壁または外周側側壁のいずれかが一致する位置にある(同図(d))ものであってもよい。同図(d)では内周側側壁が一致する位置にある。
また、第一の溝21と第二の溝22はそれぞれの一部が重畳するものであってもよいし(同図(b))、一方の溝(ここでは第二の溝22)の全てが他方の溝(第一の溝21)の一部と重畳するものであってもよい(同図(c)〜(e))。
同図(b)の場合、例えば薄肉部25の内周の破線領域では、第一の溝21の内側側壁21iと第二の溝22の内側側壁22iの面積が不均衡となる。この面積の不均衡によって、薄肉部25の内周側の領域において、板厚D方向の薄肉部25を基準として第一の板表面S1側と第二の板表面側S2で内在する応力に差が生じる。例えば、薄肉部25より第一の板表面S1側において、第一の溝21の中心に向かう応力と、薄肉部25より第二の板表面S2側において、第二の溝22の中心に向かう応力とに差が生じ、薄肉部25の内周領域が例えば上に凸状に撓む。これにより、結果として薄肉部25に応力集中が生じる。
この状態で薄肉部25の一部に亀裂を形成することで、薄肉部25に沿って円形状に強化ガラス1を分断できる。
また、同図(c)の場合、例えば薄肉部25の内周近傍の破線領域では、第一の溝21の内側側壁21iと第二の溝22の内側側壁22iの面積(または第一の溝21の外側側壁21oと第二の溝22の外側側壁22oの面積)が不均衡となる。この面積の不均衡によって、薄肉部25の内周側および外周側の領域において板厚D方向の薄肉部25を基準として第一の板表面S1側と第二の板表面側S2で内在する応力に差が生じる。例えば、薄肉部25より第一の板表面S1側において、第一の溝21の中心に向かう応力と、薄肉部25より第二の板表面S2側において、第二の溝22の中心に向かう応力とに差が生じ、図示の左右端が上方に反る。この場合、薄肉部25の内周領域において上に凸状に撓むと図6と同様となる。
また、第一の溝21の内周領域が図6の場合と比べて小さいため、図8(c)では第一の溝21の内周領域は下に凸状に撓み、全体として下に凸状に撓む場合もある。その場合も、薄肉部25の切断時に両端を治具によって、この図の場合には下方に押さえることで、相対的に薄肉部25が上方に撓み、結果として薄肉部25に応力集中が生じる。
この状態で薄肉部25の一部に亀裂を形成することで、薄肉部25に沿って円形状に強化ガラス1を分断できる。
また、同図(d)の場合、薄肉部25の外周近傍の破線領域では、第一の溝21の内側側壁21i(外側側壁21o)と第二の溝22の内側側壁22i(外側側壁22o)の面積が不均衡となる。この面積の不均衡によって、薄肉部25の外周側の領域において、板厚D方向の薄肉部25を基準として、内在する応力(例えば、第一の溝21と第二の溝22の中心に向かう応力)に差が生じ、結果として薄肉部25の外縁に応力集中が生じる。
この状態で薄肉部25の一部に亀裂を形成することで、薄肉部25に沿って円形状に強化ガラス1を分断できる。
また、同図(e)の場合、薄肉部25の内側の破線領域では、板厚D方向の薄肉部25を基準として、内在する応力(例えば、第一の溝21と第二の溝22の中心に向かう応力)に差が生じ、結果として薄肉部25に応力集中が生じる。
この状態で薄肉部25の一部に亀裂を形成することで、薄肉部25に沿って円形状に強化ガラス1を分断できる。
なお、同図(d)(e)の場合には、薄肉部25の内周側を円盤状部材CRとして活用する場合などに好適である。
また、図9(a)に示すように、第一の溝21の内周側に少なくとも一つの他の凹部(補助凹部)23を設けてもよい。補助凹部23は、第一の溝21と同様に環状に設けてもよいし、盆状の凹状部であってもよい。また補助凹部23は複数であってもよい。
開口部OPの径が大きいと、応力差が大きくなりすぎて、薄肉部25が環状を維持できず、加工途中に破損してしまう恐れがある。このような場合に、内側に1つ以上の環状の補助溝を形成することで、内側から少しずつ応力を緩和させることができる。
例えば、第一の溝21のみでは、外側に(第一の溝21の内周側が上に凸状に)撓ませる応力が大きすぎる場合に、同図(a)のように補助凹部23を設けて外側に撓む応力を緩和する。この場合例えば、同図(a)の矢印のように互いに対向する方向に撓むことで応力を緩和するように、補助凹部23を形成してもよいし、同図(b)の矢印のように、各溝の中心に向かって同じ方向に複数回撓むことで、全体として応力を緩和するように補助凹部23を設けるものであってもよい。
いずれの場合も、薄肉部25が環状の形状に維持され、具体的には、薄肉部25の切断後に第一の凹部21の側壁と第二の凹部22の側壁とによって板厚D方向において段差部26が形成され、薄肉部25を基準とした板厚D方向において、第一の板表面S1側と第二の板表面S2側に薄肉部25の内周または外周で応力差が形成されるように、第一の凹部21の側壁と第二の凹部22を形成することが望ましい。
<実施例>
再び図2から図4を参照して、強化ガラス1の実際の加工例について説明する。加工に使用した強化ガラス1は、板厚Dが0.7mmの化学強化ガラスであり、圧縮応力層11、12の板厚D方向の厚みはそれぞれ、60μm(0.06mm)である。
この強化ガラス1に直径5mmの開口部OPを形成するため、第一の板表面S1側から、ダイアモンドコアドリルによって超音波加工(第一の加工)を行い、外周側側壁21oまでの直径L1が5mm、溝の幅W1が0.6mm(内周側側壁21iまでの直径が3.8mm)の第一の溝21を形成した。第一の加工における第一の溝21の深さ(第一の深さD1)は、0.08mm(80μm)とした(図2(a)(b)参照)。
次に、強化ガラス1の第二の板表面S2側から、ダイアモンドコアドリルによって超音波加工(第二の加工)を行い、外周側側壁22oまでの直径が4.3mm、溝の幅W2が0.6mm(内周側側壁22iまでの直径が3.1mm)の第二の溝22を形成した。第二の加工における第二の溝22の深さ(第二の深さD2)は、0.2mmとした。第二の溝22は、第一の溝21と同心円状で、第一の溝21の一部と重畳し、それよりも内周側に位置している(図2(c)(d)参照)。
再び強化ガラス1の第一の板表面S1側から、ダイアモンドコアドリルによって超音波加工(第三の加工)を行い、第一の溝21の平面視の形状を維持したまま深さのみ掘り下げる。第三の加工において追加で掘り下げる深さ(第三の深さD3)は、例えば、0.2mm(当初からの合計深さは、0.28mm)とした(図3(a)参照)。
引き続き、第二の板表面S2側から、ダイアモンドコアドリルによって超音波加工(第四の加工)を行い、第二の溝22をさらに掘り下げた。第四の加工において追加で掘り下げる深さ(第四の深さD4)は、例えば、0.1mm(当初からの合計深さは、0.3mm)とした。
このようにして、板厚D方向において、第一の溝21と第二の溝22の間に環状の薄肉部25を形成する。薄肉部25の厚みDTは、0.12mmである。これにより、薄肉部25の内周側(内側)には、板厚Dの方向において応力が不均衡な領域が形成され、その内周側(内側)に歪みまたは撓みが生じる。そして歪みまたは撓みが生じることにより、その外周を囲む薄肉部25(及びその付近)は応力集中状態となる。(図3(b)参照)。
その後、円環状の薄肉部25の一部を例えば、第一の板表面S1側から切断する(図3(c)参照)。切断位置は例えば、第一の溝21の中心位置から、半径2.1mmの位置(1カ所)である。これにより、第一の溝21の外側側壁21oおよび第二の溝22の外側側壁22oに沿って円形状に亀裂が生じ、第一の溝21と第二の溝22の内側領域のみが破砕して、板厚Dを貫通する開口部(穴)OPが形成される(図3(d)参照)。
さらに、グラインダーなどの研磨工具によって、開口部OPの内周面を研磨して板厚D方向において平坦面とし、強化ガラス1を貫通する直径5mmの開口部OPを形成した(図4参照)。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨および技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
すなわち、第一の板表面S1および第二の板表面S2より内部側の領域に環状の薄肉部25を形成し、薄肉部25の内周側に、板厚Dの方向において応力が不均衡となることにより歪みまたは撓みが生じる領域を形成するとともに、薄肉部25を応力集中状態とし、薄肉部25の一部を板厚D方向に切断して、薄肉部25の形状に沿って強化ガラス1を破砕して開口部OPを形成するものであればよい。従って例えば、第一の凹部21は、複数の加工によって徐々にその深さを深くする方法に限らず、一度の工程で、図3(d)に示す最終の深さまで形成するものであってもよい。
また、第一の板表面S1側から第一の凹部21を連続する複数回の加工により形成し、第二の板表面S2側から第二の凹部22を連続する複数回の加工により連続して形成するものであってもよい。
また、第一の凹部21と第二の凹部22は、第一の板表面S1側と第二の板表面S2側から同時に形成するものであってもよい。
また、上記の実施形態では、強化ガラス1として化学強化ガラスの場合を例に説明したが、ガラスを軟化点近くまで加熱後に急冷することによってガラス表面に圧縮応力層11,12を形成し、内部側に引張応力層13を形成したいわゆる物理強化ガラスであっても同様に実施できる。
また、第一の凹部21と第二の凹部22の形状は、真円形状に限らず、真円に近い楕円形状や、真円に近い多角形状であってもよい。
1 強化ガラス
30 強化ガラス加工装置
11、12 圧縮応力層
13 引張応力層
21 第一の凹部
22 第二の凹部
30 強化ガラス加工装置
11、12 圧縮応力層
13 引張応力層
21 第一の凹部
22 第二の凹部
Claims (16)
- 板厚の方向において対向する第一の板表面と第二の板表面にそれぞれ第一の応力層が形成され、前記板厚の方向における内部側に前記第一の応力層とは逆向きの第二の応力層が形成された強化ガラスの加工方法であって、
前記第一の板表面側から、切削加工によって第一の凹部を形成する工程と、
前記第二の板表面側から、切削加工によって前記第一の凹部との間に薄肉部を形成するように該第一の凹部とは非同一形状の第二の凹部を形成する工程と、
工具により前記薄肉部の一部に亀裂を生じさせることにより、前記薄肉部に沿って前記亀裂を進展させて切断する工程と、を具備する、
ことを特徴とする強化ガラスの加工方法。 - 前記第一の凹部と前記第二の凹部の少なくとも一方は、環状の溝であり、
前記薄肉部を環状に形成することで、該薄肉部の内側領域を環状に切断する、
ことを特徴とする請求項1に記載の強化ガラスの加工方法。 - 前記第一の凹部は、環状の第一の溝であり、
前記第二の凹部は、前記第一の溝の一部と前記板厚の方向において重畳するとともに前記第一の溝とは非同一形状の環状の第二の溝であり、
前記第一の溝と前記第二の溝との重畳領域に形成された環状の前記薄肉部に沿って切断する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の強化ガラスの加工方法。 - 前記第一の溝の内周側側壁および外周側側壁のうち少なくともいずれかと、前記第二の溝の内周側側壁および外周側側壁のうち少なくともいずれかとを前記板厚方向において非重畳となる位置に形成する、
ことを特徴とする請求項3に記載の強化ガラスの加工方法。 - 前記第一の凹部の側壁の少なくとも一部と、前記第二の凹部の側壁の少なくとも一部とを前記板厚の方向において非重畳となる位置に形成し、
前記薄肉部の切断後に前記第一の凹部の側壁と前記第二の凹部の側壁とによって前記板厚方向において段差部を形成する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の強化ガラスの加工方法。 - 前記第一の凹部を第一の深さで形成後に前記第二の凹部を第二の深さで形成し、その後再び前記第一の凹部を前記第二の凹部に達しない第三の深さに掘り下げる、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の強化ガラスの加工方法。 - 前記薄肉部の厚みは0.2mm以下である、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の強化ガラスの加工方法。 - 前記第一の応力層の厚みは30μm以上である、
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の強化ガラスの加工方法。 - 前記内側領域の直径は10mm以下である、
ことを特徴とする請求項2に記載の強化ガラスの加工方法。 - 前記強化ガラスは、化学強化ガラスである、
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の強化ガラスの加工方法。 - 板厚の方向において対向する第一の板表面と第二の板表面にそれぞれ第一の応力層が形成され、前記板厚の方向における内部側に前記第一の応力層とは逆向きの第二の応力層が形成された化学強化ガラスの加工方法であって、
前記第一の板表面および前記第二の板表面より前記板厚の方向の内部側の領域に環状の薄肉部を形成し、該薄肉部の近傍に、前記板厚方向の前記薄肉部を基準として前記第一の板表面側に内在する応力と前記第二の板表面側に内在する応力とが不均衡となる領域を形成することにより、前記薄肉部を応力集中状態とする工程と、
前記薄肉部の一部を前記板厚方向に切断し、前記薄肉部の形状に沿って前記化学強化ガラスに亀裂を進展させて環状に分断する工程と、を具備する、
ことを特徴とする強化ガラスの加工方法。 - 前記薄肉部は、前記第一の板表面側から形成した第一の溝と、前記第二の板表面側から形成した第二の溝によって形成され、
前記第一の溝の側壁と前記第二の溝の側壁とは、面積が異なる、
ことを特徴とする請求項11に記載の強化ガラスの加工方法。 - 前記薄肉部は、前記第一の板表面側から形成した環状の第一の溝と、前記第二の板表面側から形成した環状の第二の溝によって形成され、
前記第一の溝の側壁と前記第二の溝の側壁とは、円周方向の長さが異なる、
ことを特徴とする請求項11に記載の強化ガラスの加工方法。 - 前記薄肉部は、前記第二の応力層に形成する、
とを特徴とする請求項11から請求項13のいずれかに記載の強化ガラスの加工方法。 - 工具の中心位置を互いにずらして加工することにより前記第一の溝と前記第二の溝を形成する、
とを特徴とする請求項12または請求項13に記載の強化ガラスの加工方法。 - 板厚の方向において対向する第一の板表面と第二の板表面にそれぞれ第一の応力層が形成され、前記板厚の方向における内部側に前記第一の応力層とは逆向きの第二の応力層が形成された強化ガラスを切断する強化ガラス加工装置であって、
前記強化ガラスに接触して切削を行う加工工具と、
該加工工具を移動させる駆動機構と、
該駆動機構の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第一の板表面側から、前記加工工具により切削加工を行い、第一の凹部を形成する工程と、
前記第二の板表面側から、前記加工工具により切削加工を行い、前記第一の凹部との間に薄肉部を形成するように該第一の凹部とは非同一形状の第二の凹部を形成する工程と、
前記加工工具により前記薄肉部の一部に亀裂を生じさせることにより、前記薄肉部に沿って前記亀裂を進展させて切断する工程と、を実行させる手段を具備する、
ことを特徴とする強化ガラス加工装置。
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JP2021080134A (ja) * | 2019-11-20 | 2021-05-27 | 有限会社アリューズ | 加工装置および加工方法 |
WO2021100705A1 (ja) * | 2019-11-20 | 2021-05-27 | 有限会社アリューズ | 加工装置および加工方法 |
-
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- 2014-10-01 JP JP2014202848A patent/JP2015137225A/ja active Pending
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