本発明の一実施形態による着色樹脂粒子分散体(以下、単に「分散体」という場合がある)は、色材、蛍光増白剤並びに固体樹脂を含む着色樹脂粒子、塩基性分散剤及び非水系溶剤を含むことを特徴とする。
これによって、用いる色材の種類を問わず、耐擦過性、耐水性及び耐マーカー性が良好で、かつ、発色性が良く、保存安定性に優れる着色樹脂粒子分散体及びインクを提供することができる。
本実施形態によれば、同じ着色樹脂粒子中に色材と蛍光増白剤とがともに含まれることで、色材の発色性を高めることができる。その結果、従来のように色材の発色性を高めるために色材量を増やす必要がないため、保存安定性等の特性を損なうことなく色材の発色性を高めることができる。
このような発色性及び保存安定性向上の作用は、着色樹脂粒子中に色材と蛍光増白剤が含まれることで、色材の種類によらず得ることができる。
また、色材が固体樹脂に包含されて着色樹脂粒子が形成されることで、印刷物の耐摩耗性を高めることができる。特に、耐擦過性を高めることができる。
また、色材が固体樹脂に包含されて着色樹脂粒子が形成されることで、印刷物の耐マーカー性を高めることができる。印刷物をマーカーでなぞる場合、印刷物がマーカーによって擦られて、場合によってはマーカーに含まれる溶剤とインクが作用することがある。色材が固体樹脂に包含されることで、耐擦過性とともに溶剤耐性をより高めることができ、耐マーカー性を高めることができる。
また、固体樹脂として耐水性を有する固体樹脂を用いることで、印刷物の発色性及び耐摩耗性とともに、耐水性に優れた着色樹脂粒子分散体を提供することができる。
(着色樹脂粒子)
本実施形態による着色樹脂粒子は、色材、蛍光増白剤、及び固体樹脂を含むことを特徴とする。
この着色樹脂粒子は、色材と蛍光増白剤と固体樹脂とが均一に混合されて、粒子形状となっていることが好ましい。
[蛍光増白剤]
蛍光増白剤は、一般的には無色又は淡黄色の物質であって、近紫外部に吸収を持ち、青色の蛍光を発する発蛍光団を持つ物質であり、太陽光線の中の目に見えない短波長側の紫外線を選択的に吸収し、これを目に見える紫〜青色の光に変えて照射する能力を有するものである。蛍光増白剤としては従来公知のものを用いることができるが、例えば、400nmより短波長側の光を吸収して400〜450nm付近の蛍光を発する蛍光性化合物を用いることができる。
具体的には、例えば、少なくとも1個の複素環式の5員環または6員環を有する、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、トリアゾール、ピラゾール、フラン、チオフェン、ペリジカルボン酸アミド、又はクマリン環を有する蛍光性化合物を使用することができる。このような蛍光性化合物としては、例えば、ベンズオキサゾイル系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、ピラゾリン系化合物及びクマリン系化合物等が挙げられる。
クマリン系化合物としては、クマリン、4−メチル−7−ヒドロキシ−クマリンなどのアルキル−ヒドロキシクマリン、4−メチル−7−ジエチルアミノクマリンなどのアルキル−置換アミノクマリン、3−フェニル−7−アミノクマリンなどのアリール−アミノクマリン等が挙げられる。また、ピラゾリン系化合物としては、1−フェニル−3−(パラ−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−(4−アミドスルホニルフェニル)−3−(4−クロロフェニル)−2−ピラゾリン等が挙げられる。
上記蛍光増白剤として、市販品されているものとしては、例えば、Blamkophor並びにTasphor(いずれも商品名、バイエル(株)製)、Hakkol(商品名、昭和化学(株)製)、Hostalux、Hostalux Ksn並びにLeucophor(いずれも商品名、クラリアントジャパン(株)製)、Illuminarl(商品名、昭和化工(株)製)、Kayaphor(商品名、日本化薬(株)製)、Kaycoll(商品名、日本曹達(株)製)、Mikawhite(商品名、日本化薬(株)・三菱化学(株)製)、Miephor(商品名、三井ビーエーエスエフ染料(株)製)、Nikkabright(商品名、(株)日本化学工業所製)、及び、Whitex(商品名、住友化学(株)製)等が挙げられる。
また、クマリン系化合物としては、Hakkol P、PHD、W、WP、PCL(いずれも商品名、昭和化学工業(株)製)、Whitex WS(商品名、住友化学(株)製)、Kayaphor WN、E(商品名、日本化薬(株)製)、Miephor WS(商品名、三井ビーエーエスエフ染料(株)製)、Kaycoll WS(商品名、日本曹達(株)製)、等が挙げられる。
また、ピラゾリン系化合物としては、Kaycoll C(日本曹達(株)製)等が挙げられる。
これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記した蛍光増白剤の配合量は、着色樹脂粒子全体に対し、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。
また、蛍光増白剤の配合量は、着色樹脂粒子中の色材全量に対し、1質量%以上、60質量%以下が好ましく、5質量%以上、30質量%以下がより好ましい。
[固体樹脂]
固体樹脂としては、室温(23℃)で固体状の樹脂であることが好ましい。
固体樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、粒子形状を安定化するために、30℃以上であることが好ましく、より好ましくは40℃以上である。固体樹脂のガラス転移温度は、制限されないが、150℃以下であることが好ましく、より好ましくは120℃以下である。
また、固体樹脂の溶融温度(Tm)としては、粒子形状を安定化させるために、30℃以上であることが好ましく、より好ましくは、40℃以上である。固体樹脂の溶融温度は、制限されないが、250℃以下であることが好ましく、より好ましくは200℃以下である。
固体樹脂の質量平均分子量としては、3000〜100000が好ましく、より好ましくは5000〜80000である。この範囲で、着色樹脂粒子の形状の安定性を高めることができる。また、着色樹脂粒子の製造工程において、固体樹脂を含む原料を溶剤により均一に混合することができ、結果として成分が均一な着色樹脂粒子を提供することができる。
ここで、樹脂の質量平均分子量は、GPC法により、標準ポリスチレン換算により求めることができる。以下同じである。
固体樹脂としては、Hansenの溶解性パラメーター(HSP値)が22〜27MPa/cm3であることが好ましい。また、固体樹脂は、分散項δdが13〜20、極性項δpが5〜12、水素結合項δhが10〜20であることが好ましい。この範囲とすることで、着色樹脂粒子分散体としてのインクが用紙に塗布される際に、着色樹脂粒子と非水系溶剤を速やかに分離させ、耐摩耗性をより向上することができる。
溶解性パラメーターの算出方法を以下に説明する。本発明では、1967年にHansenが提唱した3次元溶解性パラメーターを用いる。
Hansenの溶解性パラメーターは、Hildebrandによって導入された溶解性パラメーターを分散項δd、極性項δp、水素結合項δhの3成分に分割し、3次元空間で表したものである。分散項は、分散力による効果、極性項は、双極子間力による効果、水素結合項は、水素結合力の効果を示す。より詳細には、POLYMER HANDBOOK.FOURTH EDITION.(Editors.J.BRANDRUP,E.H.IMMERGUT,andE.A.GRULKE.)等に説明されている。
Hansenの溶解性パラメーターについては、下記に説明する通り、実験から求めることができる。
まず、分散項δd、極性項δp、水素結合項δhが既知である表1に示す溶剤に対して対象物(固体樹脂等)の溶解性(10mass%)を調査する。次いで、対象物が溶解する溶剤の範囲に相当する分散項δd、極性項δp、水素結合項δhの範囲(最小値と最大値)を求め、その中間の値(3次元溶解性パラメーターの範囲の中心の値)をその対象物の3次元溶解性パラメーターとする。つまり、良溶媒が内側、貧溶媒が外側にくる最大の直方体を考えて、その直方体の中心を対象物の溶解性パラメーター(HSP値)と定める。
分散項δd=(δdmax−δdmin)/2
極性項δp=(δpmax−δpmin)/2
水素結合項δh=(δhmax−δhmin)/2
HSP2=δd2+δp2+δh2
溶解性試験に供する溶剤は、溶解性パラメーター(HSP値)がなるべく異なる3次元空間上に位置するものを選択することが好ましい。表1に、各溶剤の溶解性パラメーター(HSP値)、分散項δd、極性項δp、水素結合項δhを示す。
固体樹脂は、上記物性を備えるものを好ましく用いることができ、その種類は限定されない。
固体樹脂の具体例としては、アルキルフェノール樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン(メタ)アクリル系樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、メトキシメチル化ナイロン等のポリアミド樹脂、ケトン樹脂、ロジン樹脂、酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、リン酸エステル化固体樹脂、硝酸エステル化固体樹脂、アルコキシ基含有固体樹脂、ポリシルセスキオキサン、メトキシシルセスキオキサン、エトキシシルセスキオキサン、これらの樹脂の誘導体等を挙げることができる。
これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル樹脂及び/またはアクリル樹脂を意味し、メタクリル単位とアクリル単位とをそれぞれ単独で有する重合体とともに、メタクリル単位とアクリル単位とをともに有する共重合体を意味する。スチレン(メタ)アクリル系樹脂も同じである。
アルキルフェノール樹脂としては、ノボラック型アルキルフェノール樹脂及びレゾール型アルキルフェノール樹脂のいずれであってもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。
ノボラック型アルキルフェノール樹脂は、アルキルフェノールとアルデヒドとを酸触媒の存在下で反応させ製造することができる。
レゾール型アルキルフェノール樹脂は、アルキルフェノールとアルデヒドとをアルカリ触媒の存在下で反応させ製造することができる。
また、変性アルキルフェノール樹脂を用いてもよい。変性アルキルフェノール樹脂としては、ロジン変性アルキルフェノール樹脂、アルコキシ基含有シラン変性アルキルフェノール樹脂等を挙げることができる。
原料であるアルキルフェノールとしては、炭素数1〜12のアルキル基を有することが好ましい。アルキルフェノールとしては、一例として、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、アミルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF等を用いることができる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、これらのアルキルフェノールの置換基の位置は限定されない。
アルデヒドとしては、一例として、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、テトラオキサン等、またはこれらの組み合わせを用いることができる。
ポリビニルアルコールとしては、一般的に、ポリ酢酸ビニルを原料に用いて、ポリ酢酸ビニルの酢酸基を水酸基に置換して製造されため、置換の割合に応じて水酸基とともに酢酸基とを含む樹脂である。
ポリビニルアルコールを構成する全単位に対し、ヒドロキシ基を有する単位のモル比をnとし、酢酸基(−O−CO−CH3)を有する単位のモル比をmとする場合、けん化度は((n/(n+m))×100)、重合度はn+mで表される。
ポリビニルアルコールのけん化度((n/(n+m))×100)としては、0〜60であることが好ましく、より好ましくは1〜50である。
ポリビニルアルコールの重合度(n+m)としては、10〜1000であることが好ましく、より好ましくは20〜500である。
ポリビニルアセタール樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂をアセタール化して製造されるものを用いることができる。具体的には、PVA樹脂を酸触媒でアルデヒドと反応させて、PVA樹脂の水酸基の一部または全部をアセタール化して、ポリビニルアセタール樹脂を製造することができる。
ポリビニルアセタール樹脂を調製する際に必要なポリビニルアルコールのけん化度((n/(n+m))×100)としては、2以上であることが好ましく、より好ましくは5以上である。このヒドロキシ基の割合はアセタール化に適する。
また、ポリビニルアルコールの重合度(n+m)としては、10〜1000であることが好ましく、より好ましくは20〜500である。
アルデヒドとしては、一例として、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、テトラオキサン、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、等を用いることができる。
また、アルデヒドとしては、脂環族アルデヒド類及び芳香族アルデヒドを用いることができる。
脂環族アルデヒド類としては、シクロヘキサンカルボキシアルデヒド、5−ノルボルネン−2−カルボキシアルデヒド、3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド、ジメチル−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド等を挙げることができる。
芳香族アルデヒド類としては、2,4,6−トリメチルベンズアルデヒド(メシトアルデヒド)、2,4,6−トリエチルベンズアルデヒド、2,6−ジメチルベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、2−メトキシ−1−ナフトアルデヒド、2−エトキシ−1−ナフトアルデヒド、2−プロポキシ−1−ナフトアルデヒド、2−メチル−1−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、その他置換基を有する1−ナフトアルデヒド、置換基を有する2−ナフトアルデヒド、9−アントラアルデヒド、置換基を有する9−アントラアルデヒド等を挙げることができる。
上記アルデヒドに加えて、または代えて、ケトンを用いてもよい。
ケトンとしては、2−メチルアセトフェノン、2,4−ジメチルアセトフェノン等のアセトフェノン類、2−ヒドロキシ−1−アセトナフトン、8’−ヒドロキシ−1’−ベンゾナフトン、アセトナフトン等のナフトン類等を挙げることができる。
これらのアルデヒド及びケトンは単独で、または組み合わせて用いてもよい。
ポリビニルアセタール樹脂は、アセチル基が10mol%以下であることが好ましく、より好ましくは5mol%以下であり、一層好ましくは3mol%以下である。これによって、酢酸臭の発生を防止することができる。
一方、ポリビニルアセタール樹脂中のアセチル基の下限値は特に制限されず、通常、0mol%以上である。
ここで、固体樹脂のアセチル基の割合は、固体樹脂を構成する全単位(mol)に対する、アセチル基を有する単位(mol)の割合として表すことができる。以下同じである。
ポリビニルアセタール樹脂は、アセタール化度が40〜95mol%であることが好ましく、より好ましくは50〜85mol%である。これによって、着色樹脂粒子の製造工程において、固体樹脂を色材等と溶剤に混合する際に、固体樹脂の溶剤への溶解性を向上することができる。結果として、着色樹脂粒子の成分の均一性や形状の安定性を高めることができる。
ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、ポリビニルアルコール樹脂の水酸基のうちアセタール化された水酸基の割合として表すことができる。ポリビニルブチラール樹脂の場合は、JISK6728に準拠して測定することができる。
このアセタール化度は、ポリビニルアルコール樹脂をブチルアルデヒドでアセタール化した割合は、特にブチラール化度と称することがある。このブチラール化度は、上記したアセタール化度と同じ範囲であることが好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基が60mol%以下であることが好ましく、より好ましくは50mol%以下である。これによって、着色樹脂粒子の製造工程において、固体樹脂を色材等と溶剤に混合する際に、固体樹脂の溶剤への溶解性を向上することができる。結果として、着色樹脂粒子の成分の均一性や形状の安定性を高めることができる。
ここで、固体樹脂の水酸基の割合は、固体樹脂を構成する全単位(mol)に対する、水酸基を有する単位(mol)の割合として表すことができる。以下同じである。
ポリビニルアセタール樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂をブチルアルデヒドによってアセタール化して得られるポリビニルブチラール樹脂(以下、単にブチラール樹脂と称することがある。)、ポリビニルアルコール樹脂をホルムアルデヒドによってアセタール化して得られるポリビニルホルマール樹脂(ビニロン)を好ましく用いることができる。
ポリビニルブチラール樹脂の市販品としては、例えば、積水化学工業株式会社製のエスレックBシリーズ「BL−2H」、「BL−10」、「BL−S」、「BM−1」、「BM−2」、「MN−6」、「BX−L」等;株式会社クラレ製のモビタールBシリーズ「16H」、「20H」、「30T」、「30H」、「30HH」、「45M」、「45H」等を用いることができる。
ポリビニルホルマール樹脂の市販品としては、例えば、JNC株式会社製のビニレックシリーズ「ビニレックK」、「ビニレックC」等;株式会社クラレ製のビニロン繊維等を用いることができる。
これらは単独でも、2種以上を合わせて用いてもよい。
セルロース系樹脂としては、セルロースアセテート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、ニトロセルロース等を挙げることができる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、メタクリル単位及び/またはアクリル単位を有する(メタ)アクリル樹脂の他、メタクリル単位及び/またはアクリル単位とともにその他の単位を有する共重合体を用いることができる。その他の単位としては、スチレン系単位、カルボン酸ビニル単位、α−オレフィン単位、ジエン系単位、エチレン性不飽和酸単位、エチレン性不飽和酸無水物単位、不飽和カルボン酸のモノアルキルエステル単位、スルホン酸単位、ニトリル、ピリジン、ピロリドン等の含窒素単位、エーテル系単位等を挙げることができる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、公知の(メタ)アクリル単量体の重合によって得ることができる。(メタ)アクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等のアルキル基が1〜22の炭化水素基である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の2〜8の炭化水素基の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(アルキレングリコール単位数は2以上)のモノ(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等のポリアルキレンオキシド骨格を含む(メタ)アクリル酸のエステル、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアクリルアミドなどの含窒素単量体、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸、スルホエチルアクリレート、(メタ)アクリロキシベンゼンスルホン酸などの不飽和スルホン酸などが挙げられ、これらは2種類以上併用されてもよい。
また、(メタ)アクリル単量体以外の単量体(以下、その他の単量体という。)を併用できる。その他の単量体は、(メタ)アクリル単量体と共重合可能であればよく特に制限はないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル、エチレン、プロピレン、ブテン−1等のα−オレフィン単量体、ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等のエチレン性不飽和酸とその無水物、マレイン酸モノエステル、フマル酸モノエステル、イタコン酸モノエステル等の不飽和カルボン酸のモノアルキルエステル、(メタ)アクリルニトリル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の含窒素不飽和単量体、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル及びビニルフェニルエーテル等のビニルエーテル系単量体等が挙げられ、これらは2種類以上併用されてもよい。
(メタ)アクリル系樹脂としては、数平均分子量(Mn)は5000〜25000であることが好ましく、酸価は、0〜300mgKOH/gであることが好ましく、30〜300mgKOH/gであることが更に好ましい。
また、スチレン単位を有する(メタ)アクリル系樹脂は、スチレン(メタ)アクリル系樹脂として好ましく用いることができる。この場合、スチレン単位と(メタ)アクリル単位の比率(モル比)は0:10から7:3であることが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂の市販品としては、東亜合成株式会社製ARUFONシリーズの「UC−3000」;星光PMC株式会社製ハイロスーXシリーズの「TS−1315」、「RS−1190」等、スチレン(メタ)アクリル系樹脂の市販品としては、東亜合成株式会社製ARUFONシリーズの「UC−3920」、「UC−5041」;星光PMC株式会社製ハイロスーXシリーズの「VS−1047」、「VS−1291」等を用いることができる。
スチレンマレイン酸樹脂としては、スチレンと無水マレイン酸との共重合体である。また、スチレンマレイン酸樹脂としては、スチレンマレイン酸樹脂をエステル化して、カルボキシ基またはヒドロキシ基を導入したエステル化物を用いることができる。
スチレンマレイン酸樹脂及びそのエステル化物の市販品としては、例えば、
川原油化株式会社製SMAレジンシリーズ「SMA1440F」、「SMA1440」、「SMA17352」、「SMA2625」、「SMA3840」等のスチレンマレイン酸樹脂のエステル化物;
川原油化株式会社製SMAレジンシリーズ「SMA1000」、「SMA2000」、「SMA3000」等のスチレンマレイン酸樹脂等を用いることができる。
ポリアミド樹脂としては、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン4−6、共重合ナイロン等を用いることができる。
また、ポリアミド樹脂をアルコキシメチル化したアルコキシ基を有するポリアミド樹脂を用いることができる。
ポリアミド樹脂をアルコキシメチル化することで、アルコール溶剤への溶解性を高めることができる。そのため、樹脂粒子の製造工程において、色材及び樹脂分を溶剤中に、より均一に安定して混合することができる。
アルコキシメチル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基等を挙げることができる。
ポリアミド樹脂の市販品としては、例えば、株式会社T&K TOKA社製のトーマイドシリーズ、PAシリーズ、株式会社鉛市製ファインレジンシリーズ「FR−101」、「FR−104」、「FR−105」、「FR−301」等;ナガセケムテックス株式会社製のトレジンシリーズ「トレジンF-30K」、「トレジンEF-30T」等が挙げられる。
固体樹脂としては、含窒素樹脂を用いることで、着色樹脂粒子を製造する際に色材である顔料の分散性を高めることができる。これによって、含窒素樹脂のみで、別に顔料分散剤を用いることなく、着色樹脂粒子を製造することができる。含窒素樹脂としては、上記した中から、ニトロセルロース、メトキシメチル化ナイロン等のポリアミド樹脂等を好ましく用いることができる。
また、固体樹脂として芳香環含有樹脂を用いることで、色材である顔料と芳香環含有樹脂とのπ-π相互作用が期待できるため、顔料の分散性を高めることができる。芳香環含有樹脂としては、上記した中から、スチレン(メタ)アクリル系樹脂、スチレンマレイン酸樹脂等のスチレン系樹脂等を好ましく用いることができる。
上記した固体樹脂の配合量は、着色樹脂粒子全体に対し、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上である。
一方、固体樹脂の配合量は、着色樹脂粒子全体に対し、70質量%以下であることが好ましく、より好ましくは50質量%以下である。
着色樹脂粒子には、本発明の効果を損なわない限り、上記した樹脂以外のその他の樹脂が含まれてもよい。その他の樹脂としては、後述する着色樹脂粒子分散体の製造方法で説明しているように、顔料分散剤や添加剤等がある。
[色材]
着色樹脂粒子に含まれる色材としては、顔料及び染料のいずれであってもよく、これらの組み合わせであってもよい。詳細については後述する。
色材は、着色樹脂粒子全体に対して、発色性の観点から、0.1〜50質量%で配合されることが好ましく、1〜40質量%であることがより好ましい。
[酸性化合物]
着色樹脂粒子には、酸性基を有する液体有機化合物(酸性化合物)を含ませることができる。ここで、酸性基を有する液体有機化合物としては、23℃で液体状であり酸性基を有する有機化合物である。
酸性化合物を添加することで、印刷物の発色性及び耐摩耗性をより向上させることができる。これは、酸性化合物によって、色材と固体樹脂とをより均一に安定して配合することが可能になるからである。
また、固体樹脂に、酸価が低く耐水性が高い樹脂を用いる場合、耐摩耗性が低下することがあるが、この固体樹脂とともに酸性化合物を添加することで、耐水性とともに耐摩耗性を向上させることができる。酸価が低く耐水性が高い樹脂としては、例えば、アルキルフェノール樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンマレイン酸樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、メトキシメチル化ナイロン等のポリアミド樹脂、ケトン樹脂、ロジン樹脂、酢酸ビニル等を挙げることができる。
また、酸性化合物は、着色樹脂粒子分散体の製造工程において、油中油型エマルションの安定性を維持するために配合することができる。
酸性化合物の融点としては、室温で液体状を維持するために、23℃以下であることが好ましく、より好ましくは15℃以下である。
酸性化合物は、酸性化合物を非水系溶剤に溶解させるときに、酸性化合物の濃度が高くなるほど酸化還元電位(ORP)値が高くなるものであることが好ましい。
例えば、酸性化合物を溶解可能な溶媒に酸性化合物を溶解させる際に、酸性化合物を0.5質量%溶解させたときのORP値に比べて、酸性化合物を5.0質量%溶解させたときのORP値が高い値を示すものであることが好ましい。
また、酸性化合物をメタノールに5.0質量%溶解させたときのORP値は200mV以上であることが好ましく、より好ましくは300mV以上である。
一方、酸性化合物に酸性基とともに塩基性基が含まれる場合は、このORP値が高くなる傾向を示す範囲内であれば、塩基性基が含まれていても、酸性化合物として好ましく用いることができる。なお、酸性化合物は、塩基性基を含まないことがより好ましい。
ここで、酸化還元電位(ORP値)は、作用電極に銀電極、参照電極に塩化銀電極を用いて、測定温度23℃で、各種材料の溶液に作用電極及び参照電極を挿入して測定したものである。酸化還元電位は、一例として、ポータブルpHメータ「pH−208」にORP電極「ORP−14」(ともに、株式会社FUSO製)を用いて測定することができる。以下同じである。
酸性化合物の溶解性パラメーターとしては、Hansenの溶解性パラメーター(HSP値)が22〜27MPa/cm3であることが好ましい。また、酸性化合物は、分散項δdが13〜20、極性項δpが5〜12、水素結合項δhが10〜20であることが好ましい。この範囲とすることで、着色樹脂粒子の各成分をより均一に配合することができて、粒子形状が安定化され経時安定性をより向上することができるととともに、発色性、耐摩耗性をより向上することができる。
酸性化合物の酸性基としては、リン酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸エステル基、硫酸エステル基、硝酸エステル基、亜リン酸基、ホスホン酸基、スルフィン酸基等を挙げることができる。これらは、1分子中に1種、または2種以上組み合わせて含まれてもよい。酸性基は、酸性化合物1分子中に2個以上有することが好ましい。
酸性化合物は、オリゴマー、ポリマー、低分子量化合物のいずれであってもよい。
オリゴマーまたはポリマーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂等を、単独で、または併用して用いることができる。また、これらの樹脂を構成するモノマーまたはオリゴマーの共重合体を用いてもよい。
酸性基としては、オリゴマーまたはポリマーを構成するモノマーに由来して、各構成単位の主鎖または側鎖に酸性基が結合して導入されていてもよい。例えば、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸の共重合体等を挙げることができる。この場合、カルボキシ基がアクリル酸の割合に応じて導入される。また、(メタ)アクリル酸エステルとアシッド・ホスホキシ・(メタ)アクリレートの共重合体等を挙げることができる。この場合、リン酸基が導入される。
また、酸性基としては、オリゴマーまたはポリマーをリン酸エステル化して導入されていてもよい。この場合、水酸基の位置及び割合に応じてリン酸基が導入される。オリゴマーまたはポリマーの両末端に水酸基を有する場合、オリゴマーまたはポリマーの両末端にリン酸基が導入されて、合計2個のリン酸基を有する。
酸性化合物がオリゴマーまたはポリマーである場合は、質量平均分子量が500〜10000であることが好ましく、より好ましくは1000〜5000である。
酸性化合物としてのオリゴマーまたはポリマーの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンリン酸エステル等のポリオキシアルキルのリン酸エステル、ポリエーテルポリエステルリン酸エステル等のリン酸エステル化合物;アルキルポリホスホン酸;カルボキシ基含有(メタ)アクリルポリマー等を挙げることができる。これらは、単独で、または複数種を併用してもよい。
酸性化合物としては、リン酸エステル、硫酸エステル、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸等の低分子化合物を用いてもよい。
酸性化合物は、酸価を持つことが好ましい。酸性化合物の酸価は、好ましくは30KOHmg/g以上であり、より好ましくは60KOHmg/g以上であり、一層好ましくは90KOHmg/g以上である。
ここで、酸価は、不揮発分1g中の全酸性成分を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数である。以下同じである。
中でも、酸価が30KOHmg/g以上であるリン酸基、ホスホン酸基、リン酸エステル基及びカルボキシ基の1種以上を有する液体有機化合物であることが好ましく、リン酸基が特に好ましい。また、酸性化合物の両末端にリン酸基を有するものが一層好ましい。
市販されているもののなかから、酸性化合物として用いることができるものとしては、例えば、
ビックケミー・ジャパン社製「DISPERBYK102、110、111」(いずれも商品名)、巴工業社製「TEGODisper655」、EFKA社製「Efca6230」、キレスト株式会社製「PH−210」、東亞合成株式会社製「ARUFON UC3510」、ユニケミカル株式会社製「CM292P」等を挙げることができる。
「DISPERBYK111」は、エチレングリコールとポリカプロラクトンのブロック共重合体のリン酸エステル化合物であり、共重合体の両末端にリン酸基を有する。
「CN294P」は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック共重合体のリン酸エステル化合物であり、共重合体の両末端にリン酸基を有する。
「ARUFON UC3510」は、アクリル酸エステルとアクリル酸の共重合体であり、カルボキシ基を複数有する。
「キレストPH210」は、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸であり、2個のホスホン酸基を有する低分子量化合物である。
酸性化合物は、着色樹脂粒子全体に対して、0.1〜50質量%で配合されることが好ましく、より好ましくは1〜40質量%である。これによって、着色樹脂粒子の成分の均一性及び安定性を維持する一方で、その他の原料への作用を防ぐことができる。
[可塑剤]
着色樹脂粒子は、上記した酸性化合物に加えて、酸性基を有していない、液体状の有機化合物(以下、単に「可塑剤」と称することがある。)をさらに含むことができる。これによって、印刷物の耐摩耗性をより高めることができる。
可塑剤は、固体樹脂軟化領域を下げ可塑性を付与し、着色樹脂粒子の固体樹脂及び色材を混合する際に、可塑剤が配合されていることで、上記した固体樹脂と色材とをより均一に混合することができる。これによって、着色樹脂粒子の成分が均一となって、耐摩耗性をより高めることができる。
可塑剤の非水系溶剤に対する溶解度は23℃で3g/100g以下であることが好ましく、着色樹脂粒子の固体樹脂に可塑性を付与するとともに、非水系溶剤への溶解を防いで、着色樹脂粒子の形状安定性を維持することができる。また、着色樹脂粒子分散体を製造する際に、固体樹脂及び色材を含む分散相の合一を防いで、油中油型エマルションの安定性をより高めることができる。結果として、着色樹脂粒子の成分をより均一にすることができる。
この溶解度は、より好ましくは23℃で1g/100g以下であり、一層好ましくは0.5g/100g以下である。最も好ましくは、着色樹脂粒子分散体の配合割合において、可塑剤は非水系溶剤に実質的に溶解しないものである。
可塑剤の融点としては、23℃以下であることが好ましく、より好ましくは15℃以下である。これによって、着色樹脂粒子の固体樹脂及び色材をより均一に混合することができる。
可塑剤としては、低分子化合物、高分子化合物及びこれらの組み合わせのいずれであってもよい。例えば、アルコール類、エステル類、エーテル類、(メタ)アクリルポリマー類等を用いることができる。ここで、(メタ)アクリルポリマー類は、メタクリルポリマー、アクリルポリマー、これらの共重合体を意味する。
アルコール類としては、低級多価アルコール及び/または高級多価アルコールを好ましく用いることができる。アルコール類のヒドロキシ基数は1〜10であることが好ましい。
低級多価アルコールの炭素数としては、4〜6であることが好ましい。
低級多価アルコールの具体例としては、1,5ペンタンジオール、1,6ヘキサンジオール、3メチル1,5ペンタンジオール等のジオール類を挙げることができる。
高級多価アルコールの炭素数としては、10〜250であることが好ましい。
高級多価アルコールの具体例としては、ヒマシ油ポリオール等のポリオール類を挙げることができる。
エステル類としては、低分子エステルを好ましく用いることができる。
低分子エステルの炭素数としては、8〜30であることが好ましい。
低分子エステルの具体例としては、フタル酸ジイソノニル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル等を挙げることができる。
可塑剤としては、ポリエステル類、ポリエーテル類、(メタ)アクリルポリマー類等の高分子化合物を好ましく用いることができる。
高分子化合物の質量平均分子量としては、300〜8000であることが好ましく、より好ましくは1000〜5000である。これによって、着色樹脂粒子の形状の安定性と可塑性をバランス良く与えることができる。
ポリエステル類としては、低分子量のポリオールと二塩基酸とをエステル化反応して得られるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトン、ポリ−β−メチル−δ−バレロラクトン等を挙げることができる。
ポリエステルポリオールとしては、アジピン酸ジエチレングリコール(AA−DEG)、アジピン酸ネオペンチルグリコール(AA−NPG)、アジピン酸トリメチロールプロパン/ジエチレングリコール(AA−TMP/DEG)等を挙げることができる。
ポリエーテル類としては、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール等のポリエーテルポリオール等を挙げることができる。
(メタ)アクリルポリマー類としては、メタクリル単位及び/またはアクリル単位を有する(メタ)アクリル樹脂の他、メタクリル単位及び/またはアクリル単位とともにその他の単位を有する共重合体を用いることができる。その他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル、スチレン等を用いることができる。
市販品としては、東亜合成株式会社製「ARUFONUP−1010」、「ARUFONUP−1190」、「ARUFONUH−2000、「ARUFONUH−2190」、「ARUFONUH−2041」、「ARUFONUG−4010」、「ARUFONUS−6100」等を挙げることができる。
これらの可塑剤は単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、ポリエステル類、ポリエーテル類、(メタ)アクリルポリマー類を単独で、または組み合わせて好ましく用いることができる。
上記した可塑剤の配合量は、着色樹脂粒子全体に対し、5質量%〜40質量%であることが好ましい。
着色樹脂粒子の平均粒子径は、10μm以下程度であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが一層好ましい。記録媒体の種類に応じて着色樹脂粒子の平均粒子径を適宜調整してもよく、例えば、コート紙を用いた印刷物の裏抜けを抑制するとともに定着性を向上させるためには、この平均粒子径は100〜250nm程度であることが好ましく、裏抜け抑制の観点から、150〜200nmであることがより好ましい。
ここで、着色樹脂粒子の平均粒子径は、動的散乱方式による体積基準の平均粒子径であり、例えば、株式会社堀場製作所製の動的光散乱式粒径分布測定装置「LB−500」等を用いて測定することができる。以下同じである。
(着色樹脂粒子分散体)
本実施形態による着色樹脂粒子分散体は、上記した着色樹脂粒子とともに、非水系溶剤及び塩基性分散剤を含む。非水系溶剤及び塩基性分散剤については、後述の着色樹脂粒子分散体の製造方法で説明する通りである。非水系溶剤としては、着色樹脂粒子を分散可能である溶剤であることが好ましい。塩基性分散剤としては、非水系溶剤中で着色樹脂粒子を分散させるために配合される。また、塩基性分散剤は、後述する着色樹脂粒子の製造工程において、エマルションの調製のために配合されることもある。
塩基性分散剤は、分散性の観点から、分散体全体に対して、0.1〜10質量%で配合されることが好ましく、より好ましくは1〜5質量%である。
本実施形態による着色樹脂分散体において、着色樹脂粒子は分散体全体に対し1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上である。これによって、インクとして呈色性に優れ、溶剤量を低減して乾燥性を高めることができる。
一方、着色樹脂粒子は分散体全体に対し50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。これによって、分散性及び保存安定性を高めることができる。
(着色樹脂粒子分散体の製造方法)
以下、本実施形態による着色樹脂粒子分散体の製造方法の一例について説明する。なお、本実施形態による着色樹脂粒子分散体は、以下の製造方法で製造されたものに限定されない。
着色樹脂粒子分散体の調製方法は、化学的方法、物理化学的方法に大別される。化学的手法としては、界面重縮合法、界面反応法(in situ重合法)、液中硬化皮膜法(オリフィス法)などが挙げられる。物理化学的手法としては、液中乾燥法(水中乾燥法、油中乾燥法)、コアセルベーション法、融解分散冷却法などが挙げられる。
本実施形態による着色樹脂粒子分散体は、例えば、上記の物理化学的方法を用いて調製が可能であり、特に、液中乾燥法を好ましく用いることができ、油中油型エマルションの油中乾燥法を特に好ましく用いることができる。
油中油型エマルションの油中乾燥法を用いることで、上記記載の材料を用いて、平均粒子径が小さくかつ、粒子径分布が狭い着色樹脂粒子を調製することが可能であり、また、粘度が低い着色樹脂粒子分散体を調製することが可能である。これによって、特に、インクジェット吐出に適するインクを得ることができ、更に、耐擦過性に優れるインクジェットインクを得ることできる。
本実施形態による油中油型エマルションの油中乾燥法を用いた着色樹脂粒子分散体は、塩基性分散剤及び非水系溶剤(以下、連続相の非水系溶剤を溶剤Aと称することがある。)を少なくとも含む相を連続相とし、色材、蛍光増白剤、固体樹脂及び非水系溶剤(以下、分散相の非水系溶剤を溶剤Bと称することがある。)を少なくとも含む相を分散相とし、連続相と分散相とを混合して油中油(O/O)型エマルションを作製し、これから分散相のうち溶剤Bを除去して得ることができる。
油中油型エマルションを安定して作製するために、溶剤Bは、溶剤Aに対して溶解度が低いことが好ましい。また、溶剤Bを除去するために、溶剤Bは、溶剤Aに対して沸点が低いことが好ましい。
油中油型エマルションを安定して作製するために、塩基性分散剤は、溶剤Bよりも溶剤Aに対する溶解度が高いことが好ましい。また、着色樹脂粒子の形状を安定させるために、樹脂は溶剤Aよりも溶剤Bに対する溶解度が高いことが好ましい。
<連続相>
連続相は、溶剤Aと塩基性分散剤とを含む。
[溶剤A]
溶剤Aとしては、後述する酸性分散剤、溶剤B及び固体樹脂との関係性を満たすように、各種非水系溶剤から適宜選択して用いることができる。
非水系溶剤としては、非極性有機溶剤及び極性有機溶剤の何れも使用できる。これらは、単独で使用してもよく、単一の相を形成する限り、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
非極性有機溶剤としては、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤等の石油系炭化水素溶剤を好ましく挙げることができる。脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素溶剤としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系の溶剤が挙げられる。例えば、以下の商品名で販売されているものが挙げられる。テクリーンN−16、テクリーンN−20、テクリーンN−22、ナフテゾールL、ナフテゾールM、ナフテゾールH、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、アイソゾール300、アイソゾール400、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号、カクタスノルマルパラフィンN12、N13、N14、YHNP、SHNP(いずれもJX日鉱日石エネルギー株式会社製);アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、エクソールD40、エクソールD80、エクソールD100、エクソールD130、及びエクソールD140(いずれも東燃ゼネラル石油株式会社製)。芳香族炭化水素溶剤としては、グレードアルケンL、グレードアルケン200P(いずれもJX日鉱日石エネルギー株式会社製)、ソルベッソ200(東燃ゼネラル石油株式会社製)等が挙げられる。非極性有機溶剤の50%留出点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがいっそう好ましい。50%留出点は、JIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定される、質量で50%の溶剤が揮発したときの温度を意味する。
極性有機溶剤としては、非水溶性の極性有機溶剤として、エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等を好ましく挙げることができる。例えば、ラウリル酸メチル、ラウリル酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、リノール酸メチル、リノール酸イソブチル、リノール酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、モノカプリン酸プロピレングリコール、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル等の、1分子中の炭素数が14以上のエステル系溶剤;イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等の、1分子中の炭素数が8以上の高級アルコール系溶剤;イソノナン酸、イソミリスチン酸、ヘキサデカン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の、1分子中の炭素数が9以上の高級脂肪酸系溶剤等が挙げられる。
これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、溶剤Aとして、非極性有機溶剤が好ましく、より好ましくはナフテン系、パラフィン系、イソパラフィン系等の炭化水素溶剤である。
溶剤Aは、Hansenの溶解性パラメーター(HSP値)が14〜18MPa/cm3であることが好ましい。また、溶剤Aは、分散項δdが12〜20、極性項δpが0〜4、水素結合項δhが0〜4であることが好ましい。
溶剤Aの溶解性パラメーターが上記範囲であるとともに、着色樹脂粒子の酸性化合物及び固体樹脂の溶解性パラメーターが上記範囲であることで、着色樹脂粒子の溶媒Aに対する分散安定性を向上することができる。また、着色樹脂粒子分散体を用いて印刷する際に、用紙上で着色樹脂粒子と非水系溶剤の分離をより促進することができ、着色樹脂粒子の用紙への定着性をより高めて、耐摩耗性をより向上することができる。このような定着性の効果は、コート紙等の難浸透紙に印刷した際により発揮することができる。
固体樹脂と溶剤Aとの組み合わせとしては、下記ΔHSP値の範囲が14〜25であることが好ましい。
ΔHSP2=(δd固体樹脂−δd溶剤A)2+(δp固体樹脂−δp溶剤A)2+(δh固体樹脂−δh溶剤A)2
酸性化合物と溶剤Aとの組み合わせとしては、同様に、下記ΔHSP値の範囲が14〜25であることが好ましい。
ΔHSP2=(δd酸性化合物−δd溶剤A)2+(δp酸性化合物−δp溶剤A)2+(δh酸性化合物−δh溶剤A)2
ΔHSPを上記範囲とすることで、着色樹脂粒子の溶媒Aに対する分散安定性をより向上することができるとともに、用紙上で着色樹脂粒子と非水系溶剤の分離をより促進し、用紙への定着性をより向上することができる。
溶剤Aの50%留出点としては、400℃以下であることが好ましく、より好ましくは300℃以下である。一方、溶剤Aの50%留出点の下限値は、溶剤Aの揮発を防止して着色樹脂粒子分散体の安定性を保つために、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
[塩基性分散剤]
塩基性分散剤は、塩基性基を有する分散剤である。塩基性分散剤としては、溶剤Bよりも溶剤Aに対する溶解度が高いことが好ましい。
好ましくは、塩基性分散剤は、溶剤Bに対する溶解度が23℃で3g/100g以下であり、より好ましくは0.5g/100g以下である。また、好ましくは、塩基性分散剤は、溶剤Aに対する溶解度が23℃で3g/100g以上であり、より好ましくは5g/100g以上である。さらに好ましくは、油中油型エマルションの配合割合において、溶剤Aに塩基性分散剤が実質的に全て溶解し、溶剤Bに塩基性分散剤が実質的に溶解しないように、塩基性分散剤が選択される。
塩基性分散剤は、塩基性分散剤を非水系溶剤に溶解させるときに、塩基性分散剤の濃度が高くなるほど酸化還元電位(ORP値)が低くなるものであることが好ましい。
例えば、塩基性分散剤を溶解可能な溶媒に塩基性分散剤を溶解させる際に、塩基性分散剤を0.5質量%溶解させたときのORP値に比べて、塩基性分散剤を5.0質量%溶解させたときのORP値が低い値を示すものであることが好ましい。
また、塩基性分散剤をドデカンに5.0質量%溶解させたときのORP値は、0mV以下であることが好ましい。
一方、塩基性分散剤に塩基性基とともに酸性基が含まれる場合は、このORP値が低くなる傾向を示す範囲内であれば、酸性基が含まれていても、塩基性分散剤として好ましく用いることができる。なお、塩基性分散剤は、酸性基を含まないことが好ましい。
塩基性分散剤の塩基性基としては、例えばアミノ基及びピリジル基等を挙げることができ、中でもアミノ基であることが好ましい。また、塩基性分散剤の塩基性基としては、ウレタン結合やアミド結合等を有する窒素含有の官能基を挙げることができる。また、ウレタン結合やアミド結合等の窒素含有の構成単位が塩基性分散剤に導入されていてもよい。
塩基性分散剤としては、例えば、変性ポリウレタン、塩基性基変性ポリ(メタ)アクリレート、塩基性基変性ポリエステル、ポリエステルアミン、第4級アンモニウム塩、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩及び脂肪酸アミン塩等を挙げることができる。これらは、単独で、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
塩基性分散剤として、市販されているものとしては、例えば、
日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース13940(ポリエステルアミン系)、17000、18000(脂肪酸アミン系)、11200、22000、24000、28000」(いずれも商品名)、
ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERKBYK116、2096、2163」(いずれも商品名)、
花王株式会社製「アセタミン24、86(アルキルアミン塩系)」(いずれも商品名)、
楠本化成株式会社製「ディスパロンKS−860、KS−873N4(高分子ポリエステルのアミン塩)」(いずれも商品名)等を挙げることができる。
塩基性分散剤は、塩基価を持つことが好ましい。塩基性分散剤の塩基価は、好ましくは1KOHmg/g以上であり、より好ましくは10KOHmg/g以上であり、一層好ましくは20KOHmg/g以上である。これによって、微細かつ安定な着色樹脂粒子分散体を作製することができる。
ここで、塩基価は、不揮発分1gに含まれる全塩基性成分を中和するのに必要な塩酸と当量の水酸化カリウムのミリグラム数である。以下同じである。
塩基性分散剤としては、塩基性基を有する(メタ)アクリルブロックポリマーを含むことが好ましい。ここで、「(メタ)アクリルブロックポリマー」は、メタクリルブロックポリマー及びアクリルブロックポリマーを意味するものであり、メタクリル単位、アクリル単位を単独で含むものの他、メタクリル単位及びアクリル単位をともに含む共重合体をも含む。
塩基性分散剤として、塩基性基を有する(メタ)アクリルブロックポリマーを用いることで、着色樹脂粒子分散体の粘度を低く抑えることが可能となり、また、着色樹脂粒子の平均粒子径を小さくすることができる。これによって、特に、インクジェット吐出に適するインクを得ることができる。
塩基性基を有する(メタ)アクリルブロックポリマーの好ましい一例としては、炭素数12以上のアルキル基を有する単位を含む第1ブロックと、アミノ基を有する単位を含む第2ブロックとを有するブロック共重合体である。
これによって、アルキル基部分が溶剤親和性を示し、アミノ基部分が着色樹脂粒子親和性を示すため、着色樹脂粒子の分散性を高めることができる。また、油中油型エマルション作製時の乳化安定性を高めることもできる。ブロックポリマーであるため、アルキル基部分が局在化して、アルキル基部分が溶剤側に配向しやすくなり、溶剤親和性をより高めることができる。
炭素数12以上のアルキル基としては、直鎖または分岐鎖のアルキル基であってよく、一例としては、ドデシル基、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基、イソドデシル基、イソステアリル基等を挙げることができる。
これらの炭素数12以上のアルキル基は、第1ブロックに単独で、または2種以上組み合わせて含まれてもよい。
アミノ基としては、一例として、般式−NR1R2で表される基であって、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素、炭素数18以下の炭化水素基、炭素数8以下のアルカノール基等である基を用いることができる。
炭素数18以下の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の鎖状炭化水素基、シクロヘキシル基、フェニル基等の環状炭化水素基を挙げることができる。炭素数8以下のアルカノール基としては、エタノール基、イソプロパノール基等を挙げることができる。
好ましくは、アミノ基は、一般式−N(HOR)2(Rは2価の炭化水素基)で示されるジアルカノールアミノ基である。
第1ブロックと第2ブロックとのモル比としては、20:80〜90:10であることが好ましく、より好ましくは30:70〜70:30である。
第1及び第2ブロックには、それぞれの単位が有する炭素数12以上のアルキル基及びアミノ基以外のその他の基が含まれてもよい。その他の基としては、炭素数12未満のアルキル基、ベンジル基等を挙げることができる。
塩基性基を有する(メタ)アクリルブロックポリマーの好ましい一例としては、炭素数12以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(A)(以下、「モノマー(A)」ともいう。)を含むモノマー混合物aのブロックAと、アミノ基と反応しうる官能基を有する反応性(メタ)アクリレート(B)(以下、「モノマー(B)」ともいう。)を含むモノマー混合物bのブロックBとのブロック共重合体(以下、このブロック共重合体を単に「(メタ)アクリルブロックポリマー」ともいう。)であって、アミノ基と反応しうる官能基とアミノアルコールとの反応により、アミノ基が導入されたものである。以下、単にアミン変性(メタ)アクリルブロックポリマーと称することがある。
このアミン変性(メタ)アクリルブロックポリマーは、導入したアミノアルコールの部分が油中油型エマルションの界面への吸着基並びに、着色樹脂粒子の吸着基となり、また、炭素数12以上のアルキル基が溶剤親和性を示し、油中油型エマルションの乳化安定性並びに、着色樹脂粒子の分散性をより高めることができる。
炭素数12以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(A)としては、例えば、ドデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等を例示できる。これらは、複数種が含まれていてもよい。好ましくは、アルキル基の炭素数は12〜25である。
反応性(メタ)アクリレート(B)におけるアミノ基と反応しうる官能基としては、グリシジル基、ビニル基、および(メタ)アクリロイル基等を好ましく例示できる。グリシジル基を有するモノマー(B)としては、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられ、ビニル基を有するモノマー(B)としては、ビニル(メタ)アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)としては、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、複数種が含まれていてもよい。
モノマー混合物a及びbは、それぞれ、本発明の効果を阻害しない範囲内で、上記のモノマー(A)、(B)以外の、これらと共重合しうるモノマー(C)を含むことができる。
このモノマー(C)としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル系ポリマー;マレイン酸エステル、フマル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−オレフィン等が挙げられる。また、アルキル鎖長の炭素数が12未満のアルキル(メタ)アクリレート、たとえば2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート等を使用することもできる。また、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート、ヘキサジオン(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリルアミド等のβ−ジケトン基またはβ−ケト酸エステル基を有する(メタ)アクリレートを使用することもできる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
アミノアルコールとしては、モノメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等を例示できる。なかでも、2個のヒドロキシ基を提供して油中油型エマルションの界面への吸着を促進させることができることから、一般式(HOR)2NH(Rは2価の炭化水素基)で示されるジアルカノールアミン(2級アルカノールアミン)であることが好ましい。これらのアミノアルコールは、複数種を組み合わせて用いることもできる。
このアミノアルコールは、アミノ基を導入して着色樹脂粒子の分散を十分に行うために、上記モノマー(B)のアミノ基と反応しうる官能基に対し、0.05〜1モル当量で反応させることが好ましく、0.5〜1モル当量で反応させることがより好ましい。アミノアルコールが1モル当量より少ない場合は、モノマー(B)において未反応の官能基が残ることになるが、残った官能基は着色樹脂粒子の吸着基として作用すると考えられる。
アミン変性(メタ)アクリルブロックポリマーの合成方法の一例としては、まず、第1段階で、モノマー(A)を含むモノマー混合物a及びモノマー(B)を含むモノマー混合物bのうち一方を重合して一方のブロックを得て、第2段階で、この第1ブロックの存在下で、他方のモノマー混合物を重合して、一方のブロックの端部に他方のブロックがつながって重合した(メタ)アクリルブロックポリマーを得て、次いで、第3段階で、この(メタ)アクリルブロックポリマーにジエタノールアミンを反応させてアミン変性(メタ)アクリルブロックポリマーを得ることができる。
アミン変性(メタ)アクリルブロックポリマーの分子量(質量平均分子量)は、特に限定されないが、インクジェットインクとして用いる場合には、インクの吐出性の観点から10000〜100000程度であることが好ましく、10000〜80000程度であることがより好ましい。さらに本実施形態の分散剤では、分子量が20000〜50000程度で、優れた分散安定性を得ることができる。
このアミン変性(メタ)アクリルブロックポリマーの分子量は、アミノアルコールとの反応前の(メタ)アクリルブロックポリマーの分子量とほぼ等しくなるため、(メタ)アクリルブロックポリマーの重合工程において分子量を調整することで、所望の範囲の分子量のアミン変性(メタ)アクリルブロックポリマーを得ることができる。
アミン変性(メタ)アクリルブロックポリマーのうち、モノマー(A)を含むモノマー混合物aから重合されたブロックA部分の質量平均分子量は、5000〜40000程度であることが好ましく、8000〜30000程度であることがより好ましい。これによって、ブロックA部分の溶剤親和性をより適した範囲にすることができる。
塩基性基を有する(メタ)アクリルブロックポリマーの他の例としては、炭素数12以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(A)を含むモノマー混合物aのブロックAと、アミノ基を有する反応性(メタ)アクリレート(B)を含むモノマー混合物bのブロックBとのブロック共重合体である。
この例で、アミノ基を有する(メタ)アクリレート(B)としては、3級アミノ基を有する(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。具体的には、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等をそれぞれ単独で、または複数種を組み合わせて用いることができる。
この塩基性基を有する(メタ)アクリルブロックポリマーは、第1段階で、モノマー(A)を含むモノマー混合物a及びアミノ基を有するモノマー(B)を含むモノマー混合物bのうち一方を重合して一方のブロックを得て、第2段階で、この第1ブロックの存在下で、他方のモノマー混合物を重合して、一方のブロックの端部に他方のブロックがつながって重合して得ることができる。
連続相中の塩基性分散剤は、エマルションの安定性及び着色樹脂粒子の分散性の観点から、連続相全体に対し0.1〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。
溶剤B除去後の塩基性分散剤の含有量としては、着初稿樹脂粒子の分散性の観点から、着色樹脂粒子分散体全体に対し0.1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜15質量%である
連続相には、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、表面張力調整剤及び消泡剤等のその他の任意成分を添加してもよい。
<分散相>
分散相としては、溶剤Bと色材と蛍光増白剤と固体樹脂とを含む。
[溶剤B]
溶剤Bは、上記した溶剤Aに対する溶解度が23℃で3g/100g以下であり、溶剤Aよりも沸点が低いものであることが好ましい。
溶剤Bとしては、好ましくは極性有機溶剤であり、より好ましくは低級アルコール系溶剤である。低級アルコール系溶剤としては、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール等を挙げることができる。さらに好ましくは、炭素数4以下の低級アルコール系溶剤である。
溶剤Bのその他の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等を挙げることができ、さらに、上記した溶剤A、塩基性分散剤及び樹脂との関係性を満たすものを適宜選択して用いることができる。
これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用することができる。
溶剤Bの溶剤Aに対する溶解度は23℃で3g/100gであることが好ましく、より好ましくは、23℃で1g/100g以下であり、さらに好ましくは0.5g/100g以下であり、一層好ましくは、実質的に溶解しないことである。
溶剤Bと溶剤Aとの沸点の差は、10℃以上であることが好ましく、より好ましくは20℃以上であり、更に好ましくは、50℃以上である。この場合、石油系炭化水素溶剤等の混合溶剤の場合、50%留出点を沸点とする。また、溶剤Bの沸点は、100℃以下であることが好ましく、より好ましくは90℃以下である。一方、溶剤Bの沸点の下限値は、溶剤Bが−20〜90℃の範囲で液状であれば特に制限されない。
溶剤Bは、Hansenの溶解性パラメーター(HSP値)が18〜30MPa/cm3であることが好ましく、より好ましくは20〜30MPa/cm3である。また、溶剤Bは、分散項δdが14〜17、極性項δpが5〜15、水素結合項δhが5〜25であることが好ましく、より好ましくは、分散項δdが14〜17、極性項δpが5〜15、水素結合項δhが15〜25である。
溶剤Bの溶解性パラメーターが上記範囲であることで、溶剤Aに対して溶解性が低く、かつ、着色樹脂粒子及び固体樹脂をそれぞれ溶解させる能力を有することができる。着色樹脂粒子及び固体樹脂の溶解性パラメーターとしては、上記範囲のものであれば、溶剤Bに溶解し、溶剤Aに対して不溶性で分散安定性を得ることができる。
また、溶剤Aが炭化水素系溶剤であり、溶剤Bが炭素数4以下のアルコール系溶剤であることが好ましい。炭化水素系溶剤の好ましい例としては、ナフテン、パラフィン、イソパラフィン等であり、炭素数4以下のアルコール系溶剤の好ましい例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等であり、より好ましくはメタノールである。
[色材]
色材としては、染料及び顔料のいずれであってもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。
染料としては、当該技術分野で一般に用いられているものを任意に使用することができ、例えば、酸性染料、塩基性染料、直接染料、可溶性バット染料、酸性媒染染料、媒染染料、反応染料、バット染料、硫化染料、金属錯塩染料、造塩染料等を挙げることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
染料としては、具体的には、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン系染料、金属フタロシアニン系染料、トリアリールメタン染料、ローダミン染料、スルホローダミン染料、メチン染料、アゾメチン染料、キノン染料、フタロシアニン系染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料、メチレンブルー等を挙げることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて用いてよい。
染料としては、分散相中で溶解可能または分散可能であれば、油溶性染料及び水溶性染料のいずれであってもよい。好ましくは油溶性染料を用いることで、分散相への溶解性を高めることができる。
油溶性染料としては、例えば、上記各種染料のうち油溶性の染料を用いることができる。
水溶性染料としては、例えば、上記各種染料のうち水溶性の染料及び還元等により水溶性にされた染料等を用いることができる。
塩基性染料としては、例えば、アントラキノン染料、ローダミン染料、トリアリールメタン染料、アゾ染料、キサンテン染料、メチン染料等を好ましく用いることができる。
また、酸性染料としては、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン系染料、キサンテン染料、キノリン染料、インジゴ染料等を挙げることができる。
また、造塩染料としては、酸性染料と塩基性染料とを反応させた造塩染料、酸性染料を有機アミン等の塩基によって造塩した造塩染料、塩基性染料を有機酸等の酸によって造塩した造塩染料を用いることができる。造塩染料は酸性度が低いため、分散相に好ましく配合することができる。
塩基性染料としては、例えば、和光純薬工業株式会社製ローダミン6G、ローダミンB、ローダミン123等;
保土谷化学株式会社製AizenCathilonYellow3GLH、AizenCathilonPinkFGH等を用いることができる。
金属錯塩染料としては、例えば、
オリヱント化学工業株式会社製「VALIFAST COLORシリーズ」のValifastBlack3804、3810(ソルベントブラック29)、3820、3830、3840(ソルベントブラック27)、3870、ValifastBlue1605、2606、2620、2670、ValifastOrange3209、3210、ValifastPink2310N、2312、ValifastRed3304、3311、3312、3320、ValifastYellow3108、3170、4120、4121等;
BASF社製「オラゾールシリーズ」のオラゾールブラックRLI、ブルーGN、ピンク5BLG、イエロー2RLN等;
保土谷化学工業株式会社製「AizenSpilonシリーズ」のアイゼンスピロンBlackBH、RLH、アイゼンスピロンVioletRH、アイゼンスピロンRedCBH、BEH、アイゼンスピロンYellowGRH、アイゼンSPTBlue26、アイゼンSPTBlue121、アイゼンSBNYellow510等を用いることができる。
金属フタロシアニン系染料としては、例えば、オリヱント化学工業株式会社製「VALIFAST COLORシリーズ」のValifastBlue1605、2606、2620、2670等を用いることができる。
造塩染料としては、例えば、オリヱント化学工業株式会社製「VALIFAST COLORシリーズ」のValifastBlack1815、1821、ValifastBlue1613、1621、1631、ValifastRed1308(ベーシックレッド1とアシッドイエロー23の混合物)、1355、1362、1364、1388、ValifastYellow1101、1151、ValifastViolet1731等を用いることができる。
その他の油溶性染料としては、例えば、オリヱント化学工業株式会社製「OIL COLORシリーズ」のOILBlue613、OILYellow107、SpilitBlackAB、ROB−B等を用いることができる。
その他の酸性染料としては、例えば、オリヱント化学株式会社製Water Blue3、105、Water Red3、9、Water Yellow1、6、Water BlackR−455、R−500、R−510等;日本化薬株式会社製Kayacyl Yellow GG、Kayacyl Blue HRL等を用いることができる。
その他の水溶性染料としては、例えば、オリヱント化学工業株式会社製「WATER COLORシリーズ」のWaterBlue9、WaterRed1、2、27(アシッドレッド52)、WaterPink2、WaterYellow6C等;
ダイワ化成株式会社製DirectBlue199、DaiwaIJBlue109H、ReactiveBlue49、AcidRed289、DaiwaIJRed311H、ReactiveRed218、DaiwaIJYellow214H等を用いることができる。
好ましくは、染料は、溶剤Aよりも溶剤Bに対する溶解度が高いことで、分散相中で溶剤Bに染料とともに樹脂が溶解して着色樹脂粒子分散体を安定して提供することができる。
ここで、染料は、溶剤Aに対する溶解度が23℃で0.5g/100g以下であることが好ましく、より好ましくは0.1g/100g以下である。また、染料は、溶剤Bに対する溶解度が23℃で0.5g/100g以上であることが好ましく、より好ましくは1g/100g以上である。さらに好ましくは、油中油型エマルションの配合割合において、溶剤Bに染料が実質的に全て溶解し、溶剤Aに染料が実質的に溶解しないように、染料が選択される。
また、染料は、着色樹脂粒子の耐水性の観点から、油溶性染料であることが好ましい。また、酸性染料を用いることで、連続相に塩基性分散剤が含まれ、分散相に酸性の酸性染料が含まれるため、油中油型エマルションをより安定化することができる。より好ましくは金属錯塩染料である。
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料、及び、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキシサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックが挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
顔料の平均粒子径は、300nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下である。これによって、分散相中での顔料の分散性を良好に保つことができ、また、最終的な着色樹脂粒子の粒子サイズを適正にすることができる。
色材に顔料を用いる場合では、上記した固体樹脂に、あらかじめ顔料を分散させた固形チップを用いることができる。この場合、顔料と樹脂の親和性が向上し定着性をより向上させることができる。また、インク製造上も有利である。固体樹脂に顔料を分散させる方法としては、二本ロールミル等を用いることができる。
分散相中の色材は、染料及び顔料の総量として、分散相全体に対し、0.1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜40質量%であり、さらに好ましくは2〜20質量%である。これによって、溶剤Bへの溶解性または分散性を安定にすることができる。
溶剤Bの除去後、色材の含有量としては、染料及び顔料の総量として、着色樹脂粒子分散体全体に対し、0.1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜40質量%であり、さらに好ましくは2〜20質量%である。これによって、着色樹脂粒子の呈色を適正にして、形状を安定化することができる。
[蛍光増白剤]
蛍光増白剤の詳細については、上記した通りである。
蛍光増白剤は、溶剤Aよりも溶剤Bに対する溶解度が高いことが好ましい。溶剤Aよりも溶剤Bに対する溶解度が高いことで、分散相中で溶剤Bに染料とともに樹脂が溶解して着色樹脂粒子分散体を安定して提供することができる。
具体的には、蛍光増白剤は、溶剤Bに対する溶解度が23℃で0.5g/100g以上であることが好ましく、より好ましくは1g/100g以上である。さらに好ましくは、油中油型エマルションの配合割合において、溶剤Bに蛍光増白剤が実質的に全て溶解するように、蛍光増白剤が選択される。
分散相中の蛍光増白剤の含有量は、分散相中の色材量に対し、好ましくは1〜60質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
溶剤B除去後の蛍光増白剤の含有量は、着色樹脂粒子中の色材量に対し、好ましくは1〜60質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
[顔料分散剤]
色材に顔料を用いる場合は、分散相中、すなわち溶剤B中で顔料を安定して分散させるために、顔料分散剤を分散相に含ませてもよい。
顔料分散剤としては、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤及びノニオン性分散剤のいずれを用いてもよく、エマルションのその他成分に応じて適宜選択すればよい。また、顔料分散剤は、また、高分子量化合物及び低分子量化合物(界面活性剤)のいずれを用いてもよい。
顔料分散剤としては、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、高分子量ポリカルボン酸の塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、ポリエステルポリアミン、ステアリルアミンアセテート、高分子量不飽和酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート等を用いることができる。
これらは単独で用いられるほか、複数種を組み合わせて使用してもよい。
顔料分散剤は、溶剤Bに対する溶解度が溶剤Aに対する溶解度よりも高いことが好ましく、例えば、溶剤Bに対する溶解度が23℃で3g/100g以上であることが好ましく、より好ましくは5g/100g以上である。さらに好ましくは、油中油型エマルションの配合割合において、溶剤Bに顔料分散剤が実質的に全て溶解し、溶剤Aに顔料分散剤が実質的に溶解しないように、顔料分散剤が選択される。
アニオン性分散剤としては、上記した酸性化合物のなかから顔料分散性を備えるものを用いてもよい。
アニオン性分散剤として使用可能な酸性化合物として、市販されているものとしては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製「DISPERBYK102、108、110、111、180」(いずれも商品名)、巴工業社製「TEGODisper655」、EFKA社製「Efca6230」等を挙げることができる。これらはいずれも溶剤Bに対する溶解性が良好である。
カチオン性分散剤としては、例えば、アミノ基、アミド基、ピリジル基、ウレタン結合等を有する含窒素化合物を好ましく用いることができ、中でもアミノ基を有する含窒素化合物であることが好ましい。
カチオン性分散剤として、市販されているものとしては、例えば、ルーブリゾール社製「ソルスパース71000」、ビックケミー・ジャパン社製「DISPERBYK2155、9077」等を用いることができる。これらはいずれも溶剤Bに対する溶解性が良好である。
顔料分散剤としてカチオン性分散剤を用いる場合は、カチオン性分散剤の塩基価は、好ましくは1KOHmg/g以上であり、より好ましくは10KOHmg/g以上であり、一層好ましくは20KOHmg/g以上である。これによって、顔料親和性が高まり、分散性能を高めることができる。
分散相中の顔料分散剤の配合量は、適宜設定できるが、顔料分散性の観点から、質量比で、顔料1部に対し0.05〜2.0部程度であることが好ましく、0.1〜1.0部であることがより好ましく、0.2〜0.6であることがさらに好ましい。
[固体樹脂]
固体樹脂としては、室温(23℃)で固体状の樹脂であることが好ましい。詳細については、上記した通りである。
この固体樹脂は、油中油型エマルションによって着色樹脂粒子を製造する場合は、溶剤Aよりも溶剤Bに対する溶解度が高いものであることが好ましい。
固体樹脂の溶剤Bに対する溶解度は23℃で10g/100g以上であることが好ましく、より好ましくは20g/100g以上である。また、固体樹脂の溶剤Aに対する溶解度は23℃で3g/100g以下であることが好ましく、より好ましくは1g/100g以下であり、さらに好ましくは0.5g/100g以下である。一層好ましくは、固体樹脂は、油中油型エマルションの配合割合において、溶剤Bに実質的に全て溶解し、溶剤Aに実質的に溶解しないものである。
分散相全量に対する固体樹脂の含有量は、0.1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜40質量%であり、一層好ましくは2〜20質量%である。これによって、溶剤Bへの固体樹脂の溶解性を適正にして、着色樹脂粒子の成分をより均一にすることができる。
溶剤B除去後の着色樹脂粒子分散体全量に対する固体樹脂の含有量は、0.1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜15質量%である。これによって、着色樹脂粒子の呈色を適正にして、形状を安定化することができる。
固体樹脂に対する色材と蛍光増白剤の質量比は、(固体樹脂の質量)/(色材と蛍光増白剤の総量)≧0.5であることが好ましい。この範囲で、連続相と分散相とを混合及び攪拌したときに、乳化安定性に優れた油中油型エマルションを提供することができる。
[酸性化合物]
着色樹脂粒子に酸性化合物が含まれる場合は、分散相に酸性化合物を添加することができる。酸性化合物は、酸性基を有する液体有機化合物であり、詳細については、上記した通りである。
酸性化合物を添加することで、印刷物の発色性及び耐摩耗性をより向上させることができる。これは、酸性化合物によって、色材と固体樹脂とをより均一に安定して配合することが可能になるからである。
また、固体樹脂に、酸価が低く耐水性が高い樹脂を用いる場合、耐摩耗性が低下することがあるが、この固体樹脂とともに酸性化合物を添加することで、耐水性とともに耐摩耗性を向上させることができる。
また、酸性化合物は、着色樹脂粒子分散体の製造工程において、油中油型エマルションの安定性をより高めることができる。
酸性化合物は、特に制限されないが、溶剤Aよりも溶剤Bに対する溶解度が高いことが好ましい。酸性化合物の溶剤Bに対する溶解度は23℃で1g/100g以上であることが好ましく、より好ましくは2g/100g以上である。また、酸性化合物の溶剤Aに対する溶解度は23℃で3g/100g以下であることが好ましく、より好ましくは1g/100g以下であり、さらに好ましくは0.5g/100g以下である。一層好ましくは、酸性化合物は、油中油型エマルションの配合割合において、溶剤Bに実質的に全て溶解し、溶剤Aに実質的に溶解しないものである。
分散相全量に対する酸性化合物の含有量は、0.1〜25質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量%である。これによって、エマルションをより安定化することができる。
溶剤B除去後の着色樹脂粒子分散体全量に対する酸性化合物の含有量は、0.1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜15質量%である。これによって、耐摩耗性をより高めることができる。
酸性化合物に対する色材と蛍光増白剤の質量比は、(酸性化合物の質量)/(色材と蛍光増白剤の総量)≧0.5であることが好ましい。この範囲で、連続相と分散相とを混合及び攪拌したときには、乳化安定性に優れた油中油型エマルションを提供することができる。
[可塑剤]
分散相は、液体状である有機化合物(可塑剤)をさらに含むことができる。可塑剤の詳細については、上記した通りである。
これによって、上記した固体樹脂及び色材を溶剤Bに混合する際に、溶解性をより高めることができる。これによって、油中油型エマルションにおいて、連続相中で分散相をより安定して分散させることができる。結果として、着色樹脂粒子の成分をより均一にすることができ、印刷物の耐摩耗性等の効果をより高めることができる。
可塑剤の溶剤Bに対する溶解度は23℃で3g/100g以上であることが好ましく、より好ましくは10g/100g以上であり、さらに好ましくは20g/100g以上である。また、可塑剤の溶剤Aに対する溶解度は23℃で3g/100g以下であることが好ましく、より好ましくは1g/100g以下であり、さらに好ましくは0.5g/100g以下である。一層好ましくは、可塑剤は、油中油型エマルションの配合割合において、溶剤Bに実質的に全て溶解し、溶剤Aに実質的に溶解しないものである。
分散相中の可塑剤の含有量は、分散相全量に対し、1質量%〜20質量%であることが好ましい。
溶剤B除去後の可塑剤の含有量としては、着色樹脂粒子分散体全量に対し、5質量%〜40質量%である。
分散相には、本発明の効果を損なわない範囲で、消泡剤、酸化防止剤、表面張力調整剤、架橋剤等のその他の任意成分を添加してもよい。
[分散体調製方法]
着色樹脂粒子分散体の調製方法としては、特に限定されず、上記した連続相に上記した分散相を分散させて油中油型エマルションを作製し、この油中油型エマルションから、減圧及び/または加熱により分散相中の非水系溶剤Bを除去することで調製することができる。
例えば、連続相及び分散相は、上記した各成分を混合して調製することができる。その後、連続相に分散相を滴下しながら混合及び攪拌することで、連続相に分散相を分散させることができる。このとき、混合及び攪拌は、超音波ホモジナイザーを用いて行うことができる。得られた油中油型エマルションから減圧及び/または加熱により非水系溶剤Bを除去する。このとき、減圧及び/または加熱の程度は、非水系溶剤Bが除去されるが、非水系溶剤Aは残るように調整する。
色材に顔料を用いる場合は、分散相中での顔料の分散方法としては、ボールミル、ビーズミル、超音波、ホモミキサー及び高圧ホモジナイザー等の一般的な湿式分散機を用いることができる。
また、油中油型エマルションの連続相と分散相との質量比は、40:60〜95:5の範囲で調整することができる。非水系溶剤Bの添加量は、油中油型エマルション全体に対し、5〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜30質量%である。また、非水系溶剤Bの除去量は、配合された非水系溶剤B全量であることが望ましいが、配合された非水系溶剤B全量に対し90質量%以上であればよい。
着色樹脂粒子分散体の製造方法の他の例としては、例えば、分散相の成分を複数の混合液として別々に調製し、それぞれの混合液を同時もしくは順次、連続相に滴下することで、油中油型エマルションを調製することができる。
具体的には、例えば、塩基性分散剤及び非水系溶剤(溶剤A)を少なくとも含む相を連続相とし、色材、蛍光増白剤及び固体樹脂を含まず、非水系溶剤(溶剤B)を少なくとも含む相を分散相とし、連続相と分散相とを混合して油中油(O/O)型プレエマルションを作製し、このプレエマルションに、色材、蛍光増白剤、固体樹脂及び非水系溶剤(溶剤B)を含む混合液をさらに添加して油中油型(O/O)エマルションを作製し、これから分散相及び混合液として添加された溶剤Bを減圧及び/または加熱することで除去して得る方法を用いることができる。以下、この方法を2段階乳化方法と称することがある。
着色樹脂粒子に酸性化合物を含ませる場合は、最初の分散相に酸性化合物を含ませることが好ましい。
油中油型エマルションを安定して作製するために、溶剤Bは、溶剤Aに対して溶解度が低いことが好ましい。また、溶剤Bを除去するために、溶剤Bは、溶剤Aに対して沸点が低いことが好ましい。
油中油型エマルションを安定して作製するために、塩基性分散剤は、溶剤Bよりも溶剤Aに対する溶解度が高いことが好ましい。また、着色樹脂粒子の形状を安定させるために、樹脂は溶剤Aよりも溶剤Bに対する溶解度が高いことが好ましい。
この2段階乳化方法では、着色樹脂粒子を作製する過程で、色材の凝集を防いで、より微細な着色樹脂粒子を提供することができる。着色樹脂粒子の作製行程では、色材が他の成分と作用して凝集する場合があるが、この2段階乳化方法によれば、色材を後から単独で添加することができ、このような凝集を防止することができる。
微細な粒子径の着色樹脂粒子は、特にインクジェットインクに適する。
2段階乳化方法において、油中油型エマルションに用いられる各成分は、特に説明のない限り、上記したものと共通する。色材としては、顔料及び染料のいずれにおいても、凝集の問題を改善することができる。
連続相において、塩基性分散剤及び溶剤Aの配合量は、上記した1段階乳化方法と共通する。
分散相において、蛍光増白剤は、分散相全体に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量%である。
分散相において、酸性化合物は、分散相全体に対して、1〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜50質量%である。
混合液において、色材は、混合液全体に対して、5〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。色材が顔料である場合は、顔料分散剤を混合液にさらに添加することができる。
混合液において、固体樹脂は、混合液全体に対して、5〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。
2段階乳化方法によって得られる着色樹脂粒子分散体は、上記した1段階乳化方法と同様に、各成分を所定の割合で含むことが好ましい。
着色樹脂粒子分散体において、着色樹脂粒子の平均粒子径は、上記した通りであることが好ましい。
着色樹脂粒子の平均粒子径は、連続相に配合される塩基性分散剤の量、または、分散相に配合される不揮発分の量等を調整することで制御することができる。酸性化合物を配合することで、着色樹脂粒子の平均粒子径をより小さく制御することが可能である。
(インク)
本実施形態によるインクとしては、上記した着色樹脂粒子分散体を含むインクである。このインクは、インクジェット印刷、オフセット印刷、孔版印刷及びグラビア印刷等の印刷インク全般として用いることができる。特に、分散安定性が良好であるため、インクジェットインクとして用いることが好ましい。
インクジェットインクとして用いる場合、着色樹脂粒子分散体をそのまま用いることも可能であり、また、必要に応じて、本発明の目的を阻害しない範囲内で、当該分野において通常用いられている各種添加剤を含ませることができる。例えば、ノズルの目詰まり防止剤、酸化防止剤、導電率調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤及び酸素吸収剤等を適宜添加することができる。これらの種類は、特に限定されることはなく、当該分野で使用されているものを用いることができる。また、着色樹脂粒子分散体を上記した非水系溶剤で希釈してもよい。
インクジェットインクとしての粘度は、インクジェット記録システムの吐出ヘッドのノズル径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、23℃において5〜30mPa・sであることが好ましく、5〜15mPa・sであることがより好ましく、約10mPa・s程度であることがさらに好ましい。ここで粘度は、23℃において0.1Pa/sの速度で剪断応力を0Paから増加させたときの10Paにおける値を表す。
インクジェットインクを用いた印刷方法としては、特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式及びサーマル方式等、いずれの方式のものであってもよい。インクジェット記録装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから本実施形態によるインクを吐出させ、吐出されたインク液滴を記録媒体に付着させるようにすることが好ましい。
本実施形態において、記録媒体は、特に限定されるものではなく、普通紙、コート紙、特殊紙等の印刷用紙、布、無機質シート、フィルム、OHPシート、これらを基材として裏面に粘着層を設けた粘着シート等を用いることができる。これらの中でも、インクの浸透性の観点から、普通紙、コート紙等の印刷用紙を好ましく用いることができる。
ここで、普通紙とは、通常の紙の上にインクの受容層やフィルム層等が形成されていない紙である。普通紙の一例としては、上質紙、中質紙、PPC用紙、更紙、再生紙等を挙げることができる。普通紙は、数μm〜数十μmの太さの紙繊維が数十から数百μmの空隙を形成しているため、インクが浸透しやすい紙となっている。
また、コート紙としては、インクジェット用コート紙や、いわゆる塗工印刷用紙を好ましく用いることができる。ここで、塗工印刷用紙とは、従来から凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等で使用されている印刷用紙であって、上質紙や中質紙の表面にクレーや炭酸カルシウム等の無機顔料と、澱粉等のバインダーを含む塗料により塗工層を設けた印刷用紙である。塗工印刷用紙は、塗料の塗工量や塗工方法により、微塗工紙、上質軽量コート紙、中質軽量コート紙、上質コート紙、中質コート紙、アート紙、キャストコート紙等に分類される。塗工印刷用紙は、普通紙、インクジェット用コート紙と比較して紙表面の空隙が少ないため、インクの浸透が遅く、インク成分が紙表面に留まりやすい。そのため、本実施形態によるインクは、塗工印刷用紙に対する定着性を向上させることに適している。
以下に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に説明のない限り、「%」は「質量%」を示す。
<インク調製>
表2に、溶剤B除去前の実施例1〜7及び比較例1〜3の各油中油型エマルションの処方を示す。表2に示す色材と蛍光増白剤と固体樹脂と酸性化合物を、同表に示す溶剤Bと混合し分散相を調製した。次に、表2に示す溶剤Aと塩基性分散剤を混合し連続相を調製した。
表中、各成分の詳細は以下の通りである(以下同じ)。
炭化水素系溶剤:東燃ゼネラル石油株式会社製「アイソパー M」。
塩基性分散剤:日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース17000」、塩基価2KOHmg/g、不揮発分100%。
メタノール:炭素数1のアルコール系溶剤、和光純薬工業株式会社製。
ブルー染料:保土ヶ谷化学工業株式会社製「Aizen S.P.T. Type26」。
レッド染料:BASFジャパン株式会社製「オラゾール ピンク 5BLG」。
蛍光増白剤1:昭和化学工業株式会社製「Hakkol P」(クマリン系化合物)。
蛍光増白剤2:昭和化学工業株式会社製「Hakkol PHD」(クマリン系化合物)。
蛍光増白剤3:日本曹達株式会社製「Kaycoll C」(ピラゾリン系化合物)。
アルキルフェノール樹脂:荒川化学株式会社製「タマノル7509」。
酸性基を有する液体有機化合物:2個のリン酸基を有する液体有機化合物(共重合体の両末端にリン酸基を有するリン酸エステル化合物)、ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPER BYK111」、酸価129KOHmg/g、不揮発分95.0%。
溶剤Bであるメタノールは、溶剤Aである炭化水素系溶剤(アイソパーM)に対する溶解度が23℃で0.4g/100gである。また、メタノールの沸点は64.7℃であり、アイソパーMの50%留出点はおよそ234℃である。
塩基性分散剤であるソルスパース17000は、表2及び表3に示す連続相の配合割合で溶剤Aに溶解し、溶剤Bに対する溶解度が23℃で3g/100g未満であった。
顔料は、それぞれ、表2及び表3に示す分散相の配合割合で溶剤Bに溶解し、溶剤Aに対する溶解度が23℃で3g/100g未満であった。
固体樹脂は、それぞれ、表2及び表3に示す分散相の配合割合で溶剤Bに溶解し、溶剤Aに対する溶解度が23℃で3g/100g未満であり、水に対する溶解度が23℃で3g/100g未満であった。
酸性化合物は、表2及び表3に示す分散相の配合割合で溶剤Bに溶解し、溶剤Aに対する溶解度が23℃で3g/100g未満であった。
各成分の溶解性パラメーター(HSP値)は以下の通りである。単位は「MPa/cm3」である。また、分散項δd、極性項δp、水素結合項δhを併せて示す。
溶剤A「アイソパーM」:16(δd=16、δp=0、δh=0)。
溶剤B「メタノール」:29.6(δd=15.1、δp=12.3、δh=22.3)。
固体樹脂:22〜27(δd=12〜20、δp=5〜12、δh=10〜20)の範囲内であった。
酸性化合物:22〜27(δd=12〜20、δp=5〜12、δh=10〜20)の範囲内であった。
各成分の酸化還元電位(ORP値)は以下の通りである。単位は「mV」である。
ソルスパース17000:ドデカンに0.5質量%溶解させたときのORP値に比べて、5.0質量%溶解させたときのORP値が低く、ドデカンに5.0質量%溶解させたときのORP値は325であった。
DISPERBYK−111:メタノールに0.5質量%溶解させたときのORP値に比べて、5.0質量%溶解させたときのORP値が高く、メタノールに5.0質量%溶解させたときのORP値は350であった。
連続相をマグネティックスターラーで撹拌した状態で、この連続相に、予め混合しておいた分散相を滴下しながら、超音波ホモジナイザー「Ultrasonic processor VC―750」(ソニックス社製)を10分間照射し、油中油(O/O)型エマルションを得た。
得られたエマルションを、エバポレーターで減圧しながら、分散相中の溶剤Bを除去して、実施例1〜7及び比較例1〜3の着色樹脂粒子分散体(インク)を得た。比較例1〜3の各着色樹脂粒子分散体(インク)は蛍光増白剤を含有していない。
表5に各着色樹脂粒子分散体(インク)の組成を示す。
上記実施例及び比較例とは別に、表3に示す色材と蛍光増白剤と固体樹脂と酸性化合物を、同表に示す溶剤Bと混合して分散相を調製した。次に、表3に示す溶剤Aと塩基性分散剤を混合し連続相を調製した。
上記実施例及び比較例と同様の方法により各油中油(O/O)型エマルションa〜cを得た。
得られたエマルションを、エバポレーターで減圧しながら、分散相中の溶剤Bを除去して、着色樹脂粒子分散体a’〜c’を得た。
表4に得られた各着色樹脂粒子分散体の組成を示す。
得られた着色樹脂粒子分散体a’に蛍光増白剤を外添して、表5の比較例4の組成となるよう調製し比較例4の着色樹脂粒子分散体(インク)とした。
また、得られた着色樹脂粒子分散体b’及びc’を質量比1:1で混合して比較例5の着色樹脂粒子分散体(インク)とした。
表5に比較例4及び5の着色樹脂粒子分散体(インク)の組成を示す。
<評価>
上記した各インクを用いて、耐擦過性、耐水性、耐マーカー性、発色性及び保存安定性について評価を行った。結果を表5に併せて示す。
(耐擦過性)
上記した各インクをライン式インクジェットプリンタ「オルフィスX9050」(理想科学工業株式会社製)に装填し、上質コート紙「オーロラコート」(日本製紙株式会社製)に、ベタ画像を印刷して、印刷物を得た。印刷は、解像度300×300dpiにて、1ドット当りのインク量が42plの吐出条件で行った。なお、「オルフィスX9050」は、ライン型インクジェットヘッドを使用し、主走査方向(ノズルが並んでいる方向)に直交する副走査方向に用紙を搬送して印刷を行うシステムである。
印刷後24時間放置後に、印刷物のベタ画像部分を指で強く5回擦った時の状態を目視で観察し、耐擦過性を次の基準で評価した。
A:画像のはがれがほとんど確認されないレベル。
B:画像のはがれが確認されるが実際の使用上問題ないレベル。
C:画像のはがれが顕著であり実際の使用上問題あるレベル。
(耐水性)
上記した耐擦過性と同様にして印刷物を得た。印刷後24時間放置後、印刷物のベタ画像部分に0.5mlの水を垂らして、そのにじみ具合を目視で観察して、耐水性を次の基準で評価した。
A:印刷画像部分がにじまないレベル。
B:印刷画像部分が若干にじむが実際の使用上問題ないレベル。
C:印刷画像部分がにじみ実際の使用上問題あるレベル。
(耐マーカー性)
上記した耐擦過性と同様にして印刷物を得た。印刷後24時間放置後、コート紙印字部の文字上を、コクヨ株式会社製ラインマーカーペン「PM−L103Y」で線を描き、その状態を目視で観察して、耐マーカー性を次の基準で評価した。
A:印刷画像部分が汚れない、または印刷画像部分の周りがわずかに汚れるレベル。
B:印刷画像部分の周りが汚れたが実際の使用上問題ないレベル。
C:印刷画像部分の周りが汚れ実際の使用上問題あるレベル。
(発色性)
上記した耐擦過性と同様にして印刷物を得た。印刷後24時間放置後の塗膜の濃度を目視にて観察して、発色性を次の基準で評価した。
A:画像が均一かつ、十分な濃度が得られている。
B:画像は均一であるが、濃度が薄い。
C:画像が不均一かつ濃度が薄い。
(保存安定性)
ガラス瓶(容量10ml)に7gのインクを充填し、蓋を閉めた後、70℃の恒温槽で保管した。保管2週間後に沈殿の有無を観察して、保存安定性を次の基準で評価した。
A:沈殿がない。
B:流動性のある沈殿が少量ある。
C:流動性のない沈殿がある。
上記各表に示す通り、分散相に蛍光増白剤を含有する各実施例のインクは、いずれの評価も良好であった。特に、分散相に酸性化合物を含有する実施例1〜6については、発色性及び保存安定性が優れるだけでなく、耐擦過性、耐水性及び耐マーカー性についても優れた結果を示した。
一方、蛍光増白剤を含有しない比較例1及び2については発色性に劣り、色材を多く含有する比較例3については、発色性は優れるものの、色材量が多いために保存安定性及び耐擦過性に劣る結果となった。比較例4は実施例1とほぼ同じ組成であるが、蛍光増白剤を含まない着色樹脂粒子分散体を調製した後に蛍光増白剤を外添していることから、蛍光増白剤は連続相中に存在し、着色樹脂粒子中に色材と蛍光増白剤を含まないため、発色性に劣る結果となった。比較例5は実施例5と同様の組成であるが、同一の着色樹脂粒子中に色材と蛍光増白剤を含まないため、発色性に劣る結果となった。