JP2015134555A - サスペンション装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 直線走行時と旋回走行時の両方でそれぞれ理想に近いジオメトリ設計が可能な、設計自由度の高いサスペンション装置を提供する。【解決手段】 直線走行中のピッチやバウンス時には、両側のロッカーリンク12に作用する力は車体2の左右で均衡してこれらのロッカーリンク12は車体2に対して中立位置で保持されている。この時、車体2両側のアッパアーム6は、それぞれ、ロッカーリンク12上の軸13回りに、左右対称に上下にストロークする。一方、旋回走行中、車体2が遠心力を受けてロールすると、ロッカーリンク12は、アッパーム6とほぼ一体になって軸11回りに回動し、旋回外側の車輪3のキャンバ角をネガティブ方向に変化させる。【選択図】 図1

Description

本発明は、自動車のサスペンション装置に関し、特に、ロワアームとアッパアームとを備えたダブルウィッシュボーン形式やマルチリンク形式のサスペンション装置に関する。
従来の自動車の車輪のサスペンション装置の形式には、独立懸架式、車軸懸架式、及び、可撓梁懸架式の3種類が存在する。この中で、独立懸架式は部品点数が多く構造が複雑であるため高価であるが、設計自由度はもっと高い利点がある。
独立懸架式のサスペンション装置の1つとして、高級車、スポーツカー、フォーミュラ1(Formula One、略称F1)などの各種レースで利用されているダブルウッシュボーン形式のものがある。この形式のサスペンション装置の概略的な構造は、図14に示すように、車体A1と、車輪(タイヤが装着されたホイール)A2を支持する車輪支持部(アップライト)A3との間を、ロアアームA4とアッパアームA5の2本の平面視略A字側のアームによって上下方向に相対変位可能に連結し、車体A1とロアアームA4間に緩衝ばねA6とショックアブソーバA7を組み込んだものである。
このような、ダブルウィッシュボーン形式のサスペンション装置においては、走行路面のうねりや、自動車の加速減速、旋回時に車体に作用する慣性力によって、各アームが上下にストロークするが、直線走行時に加速や減速を行うときは、その車体はピッチングとバウンスのみを行う。
この場合には、車体の姿勢は上下方向にしか変化しないので、少しでもタイヤの設置面積を多く確保してトラクションを稼ぎ、また、ブレーキング時のタイヤのグリップを稼ぐため、対地キャンバを常に0°、もしくは僅かにネガティブにし、且つ、トレッド(左右のタイヤの中心間距離)の変化をなるべく小さくするジオメトリ設計を行うことが望ましい。
図14は、ピッチングに適したジオメトリ設計のサスペンション装置を模式的に示すものである。同図に示すサスペンション装置では、車体A1と車輪支持部A3との間を上下方向に揺動可能に連結するロアアームA4とアッパアームA5の2つのアームを、長さが等しく平行に設けてあり、路面Sに対して車体A1が上下動しても対地キャンバは変化しない。
なお、各アームの上下ストロークに伴うトレッドの変化を防ぐためには、ロアアームA4とアッパアームA5の長さを無限に長くすることが理想的だが、実際は、車体A1の横幅は有限であるので、実設計上のこれらのアームの最大長さは車体幅の半分程度が限界となっている。
一方、自動車が等速で旋回する場合には、車体の重心に作用する遠心力によって、ロールモーメントのみが生じる。(なお、ここでは、説明を簡単にするため、車輪の舵角は無いものとする。)
図15は、ローリングに適するジオメトリ設計のサスペンション装置を模式的に示すものである。同図に示すように、この場合には、自動車の走行安定性を確保するため、ロール時に、車体A1に対して、ロアアームA4とアッパアームA5が作る車輪A2の瞬間中心aが、走行路面Sの近傍、あるいは走行路面Sよりも下方に位置している。
なお、ロールセンターOは、車体A1の重心Gより下方で、左右の車輪A2の瞬間中心aと走行路面Sとの接地点の中心b間を結ぶそれぞれの直線どうしの交点にある。
さらに、タイヤのグリップを良好にするには、車体A1がロールして、旋回外側の車輪A2が車体A1に対して相対的に上方に持ち上がる(車体はロールして下方に下がる)ほど、車体A1に対する当該車輪A2のキャンバがネガティブに変化する必要があるため、同図に示すように、アッパアームA5はロアアームA4よりも短く、且つ外側(車輪A2側)が上方に傾斜しているジオメトリ設計を行うことが望ましい。
このように、従来の一般的なダブルウィッシュボーン形式のサスペンション装置では、構造上直進加減速時(ピッチ時)やバウンス時に理想とするジオメトリ設計概念と、旋回時(ロール時)に理想とするジオメトリ設計概念が異なるため、現状においては、これらの双方の設計概念を妥協したジオメトリ設計が行われている。
一方、従来において、直線走行における加減速時と旋回時で、ジオメトリが変化するようにしたダブルウィッシュボーン形式のサスペンション装置が提案されている。
例えば、特許文献1に記載されている「車両のサスペンション装置」では、アッパアームが車体側に連結された第1アームと車輪支持部材(ナックル)側に連結された第2アームの2つの部分から構成されていて、第1アームと第2アームがトーションバーで連結され、また、車体両側の第1アームどうしがスタビライザで連結されている。
このような構成により、このサスペンション装置は、直進走行時には、スタビライザはアッパアームにはほとんど影響を与えす、第1アームと第2アームは一体となって上下にストロークし、アッパアーム全体のアーム長を一定に保つことができ、旋回走行時には、車体にロールが発生すると、旋回外側ではスタビライザによって第1アームの揺動が拘束されるため、第1アームと第2アーム間のトーションバーが捩られて、第1アームに対して第2アームが屈曲し、アッパアーム全体のアーム長を変化させることができるので、直線走行時と旋回走行時で、キャンパ角の変化特性を別々に設定することを可能としている。
また、特許文献2に記載されている「サスペンション装置」では、車体側部材とそれぞれブッシュで弾性的に連結されている車体両側のアッパアームどうしをスタビライザで連結し、車両旋回時にスタビライザによって生じる反力によって、旋回外側の車輪のキャンパ角がネガティブ方向に変化するように、これらのブッシュの剛性に異方性を持たせ、直進時と旋回時でキャンバ特性が変化するようにしている。
さらに、特許文献3に記載されている「自動車用サスペンション」では、ローリング時とバウンシング時の安定性向上を両立させるために、車体両側のロアアーム間にスタビライザが連結されており、このスタビライザの中央部に水平に湾曲突出したアッパアーム支持部材を設け、当該支持部材に両側のアッパアームの車輪支持部材側と反対側の端部を連結することにより、キャンバ角のネガティブ方向の変化を、ローリング時には大きく、バウンシング時には小さくなるようにしている。
特開平5−229326号公報 特開2006−182174号公報 実開平5−35409号公報
前述した、特許文献1に記載されている「車両のサスペンション装置」においては、アッパアームがトーションバーで連結された第1アームと第2アームの2つの部分から構成されているため、重くなり、慣性が増加するため車輪の接地性が低下する問題がある。
また、車体両側の第1アームどうしがスタビライザで連結されている構造であるため、激しいコーナリングを行ったり、タイヤが石等に乗り上げた場合のように、車輪に大きなモーメントが作用した場合のキャンバ剛性が不足する問題がある。
一方、特許文献2に記載されている「サスペンション装置」においては、直進時と旋回時の間でキャンバ特性が瞬時に切り換わらず、ブッシュが弾性変形する間は、両者の中間のキャンバ特性となる過渡期が存在し、また、ロールするにつれて、ロールセンタ高が急激に下方に移動して、ロール剛性が低下するため走行安定性が悪くなる可能性が高い。また、ブッシュの弾性変形のみでジオメトリを変化させているため、アッパアームの揺動支点の位置の変化幅を大きくとれず、直進時と旋回時の両方で理想的なジオメトリ設計が行えない問題がある。
また、特許文献3に記載されている「自動車用サスペンション」においては、スタビライザの中央部に形成したアッパアーム支持部材にアッパアームを取り付けているため、ローリング時にアッパアーム支持部材が車体の前後方向に傾き、これとともにアッパアームの揺動軸線も傾くため、アンチダイブ(前輪側の場合)やアンチスクウォート、アンチリフト(後輪側の場合)の特性に影響を及ぼす問題がある。
また、アッパアームが、スタビライザと一体に弾性変形するアッパアーム支持部材に連結されているため、キャンバ剛性が低下する問題があるとともに、スタビライザの捩れの大きさに応じて生じるアッパアーム支持部材の弾性変形によって、アッパアームの揺動中心の高さを変化させる構造であるため、ローリング時とバウンシング時における理想的なジオメトリ設計を個別に行うことができない問題がある。
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題点を解決し、直線走行時と旋回走行時の両方でそれぞれ理想に近いジオメトリ設計が可能な、設計自由度の高いサスペンション装置を提供することを目的とする。
本発明のサスペンション装置は、車体両側でそれぞれ車輪を回転可能に支持する車輪支持部材を、ロアアームとアッパアームを介して車体に対し上下に揺動可能に連結したサスペンション装置であって、中立位置において、車体の前後方向に略垂直な面内で車体幅方向中央位置に対して左右が対称的な配置をとるように、当該車体にそれぞれ第1軸回りに揺動可能に連結された一対のロッカーリンクと、前記一対のロッカーリンクどうしを同じ向きに揺動するように連動させる連動機構と、前記一対のロッカーリンクを前記中立位置に向けて付勢する付勢部材と、前記一対のロッカーリンクの揺動を制動するダンパを備え、各アッパアームの車体内側の端部はそれぞれ、対応するロッカーリンクに対して第1軸と略平行で且つこの軸よりも上方に位置する第2軸回りに上下に揺動可能に連結され、車体両側のロアアームとアッパアームの少なくとも一方は、直接または伝達機構を介して緩衝ばねとショックアブソーバに連結され、これらの緩衝ばねとショックアブソーバの反力を各ロッカーリンクが受けるようにしたことを特徴としている。
本発明のサスペンション装置においては、一対のロッカーリンクのそれぞれにこれらのロッカーリンクの揺動変位を許容する保持機構を介して両端近傍を捩り変形可能に保持したトーションバーを有する、スタビライザを備えていることが好ましい。
請求項1に記載された発明に係るサスペンション装置によれば、車体のピッチング及びバウンス時と、ローリング時のそれぞれに対する理想に近い対地キャンバ変化を、パッシブな機構のみで実現できるジオメトリ設計が可能となる。また、直進から旋回、あるいは旋回から直進に走行状態が変わる際に、それぞれの走行状態に適合したジオメトリに瞬時に移行できるので、走行安定性を高めることができる。
また、ばね下重量をほとんど増加することなく、ロール時の安定性や接地性を確保することができるため、高速走行時の振動数の高い揺れに対する路面追従性が損なわれることがない。さらに、電子制御に頼ることなく、純機械的な簡単で丈夫な構造であるため、信頼性が高く、製造や保守が容易である利点を有する。
請求項2に記載された発明に係るサスペンション装置によれば、前記請求項1の発明の効果に加えてさらに、ロール剛性を高めることができ、旋回走行時の車体の傾きを少なくすることができる。また、車体前後のサスペンション装置間で、ロール剛性の個別の設定を容易に行うことができる。
本発明のサスペンション装置の第1実施形態を示す、模式的な正面図である。 本発明のサスペンション装置の第1実施形態を示す、模式的な平面図である。 本発明のサスペンション装置の第1実施形態を示す、模式的な側面図である。 本発明のサスペンション装置の第1実施形態における、車体のバウンス時の状態を示す模式的な正面図である。 本発明のサスペンション装置の第1実施形態における、車体のロール時の状態を示す模式的な正面図である。 本発明のサスペンション装置の第1実施形態の変形例を示す、模式的な正面図である。 本発明のサスペンション装置の第2実施形態を示す模式的な正面図である。 本発明のサスペンション装置の第3実施形態を示す模式的な正面図である。 本発明のサスペンション装置の第4実施形態を示す模式的な正面図である。 本発明のサスペンション装置の第5実施形態を示す模式的な正面図である。 本発明のサスペンション装置の第6実施形態を示す模式的な正面図である。 本発明のサスペンション装置の第6実施形態を示す模式的な平面図である。 本発明のサスペンション装置の第6実施形態を示す模式的な側面図である。 直進加速、減速を優先してジオメトリ設計された従来のダブルウィッシュボーン形式のサスペンション装置の模式図である。 旋回を優先してジオメトリ設計された従来のダブルウィッシュボーン形式のサスペンション装置の模式図である。
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明のサスペンション装置の第1実施形態を示す模式的な正面図、図2は平面図、図3は側面図である。これらの図に示すサスペンション装置1は、従来のダブルウィッシュボーン型のサスペンション装置と同様に、車体2の左右それぞれの側で、車輪3を回転可能に支持する車輪支持部材4を、車体2に対して上下揺動可能に連結するロアアーム5とアッパアーム6を有している。
また、図示は簡略化しているが、車輪3は、ホイールとその外周に装着されているタイヤから構成されており、ホイールの中心部は、車輪支持部材4にベアリングで回転可能に支持されているホイールハブ7(図3では、図示省略)に固定されている。
ロアアーム5の外側(車輪3に近い側)の端部は、車輪支持部材4の下端部にボールジョイント8で連結され、内側(車体2の中心側)の端部は車体2の下部に、車体2の前後方向に2箇所の軸9で上下方向に揺動可能に連結されている。また、アッパアーム6の外側の端部は、車輪支持部材4の上端部にボールジョイント10で連結されている。
なお、説明を簡略化するため、ここでは、サスペンション装置1は、前輪用のものと後輪用のものを区別して図示していない。実際には、前輪用のものでは車輪支持部材4にステアリングロッドが連結されており、また、後輪用のものではトーコントロールアームが連結されている。
したがって、車輪支持部材4の下端部のボールジョイント8の中心と、上端部のボールジョイント10の中心を通る軸線回りの車輪支持部材4の自由な回動変位は、これらの部材によって拘束されている。なお、これらのボールジョイント8、10の中心間を結ぶ軸線は、従来のダブルウィッシュボーン形式のサスペンションと同様に、キングピン角やキャスタ角を有していてもよい。
また、アッパアーム6の内側の端部は、車体2側に設けられた取付腕2Aに下端部が、車体の前後方向に平行な、第1軸としての軸11で揺動可能に連結されているロッカーリンク12に対して、前記軸11と平行な第2軸としての軸13で揺動可能に連結されている。
図1に示すように、ロッカーリンク12は、車体2の前後方向に略垂直な面内で、車体2の反対側のものと左右対称な輪郭形状を有しており、左右両側のロッカーリンク12は、それぞれの上方部分が車体2の外側に向けて湾曲し、その端部近傍には、ショックアブソーバ14の上端部が軸15で揺動可能に連結されている。
ショックアブソーバ14は、略A型のアッパアーム6の内側を通して配置されており、図1に示すように、その伸縮ロッド14Aの下端部が、軸16でロアアーム5に揺動可能に連結されている。伸縮ロッド14Aには緩衝ばね17が同軸に装着されており、この緩衝ばね17によって、ショックアブソーバ14の伸縮ロッド14Aは常時下方に伸長する向きに付勢されている。
車体2の左右両側に配置されている2つのロッカーリンク12どうしは、連動機構としての連動リンク18の両端部に、それぞれ軸19で揺動可能に連結されている。本実施形態のものにおいては、連動リンク18、左右2つのロッカーリンク12、及び、取付腕2Aを含む車体2によって、車体2を固定節とする平行リンク機構を構成しており、左右のロッカーリンク12どうしが車体2に対して同じ向きに連動して揺動変位できるようになっている。
また、連動リンク18の長手方向中央位置には、下端側が車体2に対して揺動可能に支持されている戻しリンク20の上端部が、軸21で揺動可能に連結されている。この戻しリンク20の下端部は、図2に示すように、一方の端部が車体2側に固定部材2Bで固定されている付勢部材としてのトーションバー22に対して、その反対側の端部近傍に固定されている。
なお、軸21と、戻しリンク20の揺動中心となるトーションバー22の中心軸線間の距離は、前記平行リンク機構の一部を構成する連動リンク18の動きを可能とするため、左右それぞれのロッカーリンク12における、軸11と軸19間の中心間距離に等しくなるように設定してある。
また、図1に示すように、連動リンク18で連結された左右のロッカーリンク12は、戻しリンク20が垂直になった位置で、左右で対称的な中立位置となり、この位置では、トーションバー22は捩れ変形を生じていない。
この中立位置からこれらのロッカーリンク12が左右何れかの側に揺動変位すると、トーションバー22は、戻しリンク20により捻られて弾性変形し、その捩り変形量応じた復元トルクを発生して、これらのロッカーリンク12を戻しリンク20と連動リンク18を介して中立位置に戻すように付勢する。また、車体2の中央には、戻しリンク20を介して両側のロッカーリンク12の揺動運動を制動するロータリーダンパ23が、トーションバー22の他方の端部と連結されて設けられている。
次に、前述したように構成されているサスペンション装置1の動作について説明する。
図4は、車体2のバウンス時(ピッチ時)の状態を示しており、車体2に作用する慣性力Fにより、車体2の両側のロッカーリンク12にはそれぞれ、アッパアーム6と、ショックアブソーバ14及び緩衝ばね17を介して、互いに軸11回りに反対向きに回動させようとする力が作用する。
しかしながら、左右のロッカーリンク12どうしは、連動アーム18によって同じ向きに動くように連結されているため、これらの力は互いに拮抗して打ち消し合うため、2つのロッカーリンク12は中立位置に保持される。その結果、車体2の両側のロアアーム5とアッパアーム6はそれぞれ、軸9と軸13回りに揺動し、車輪支持部材4とともに車体2に対して左右対称的に上下にストロークする。
この際、ロアアーム5とアッパアーム6の長さが等しく、ロッカーリンク12が中立位置のときにロアアーム5とアッパアーム6が平行になるように設計されていれば、両側の車輪3は車体2に対して並進的に運動するため、初期の対地キャンバが0°に設定されていれば、ピッチ時にもその状態が維持される。
また、図5は、車体2の旋回時(ロール時)の状態を示しており、この時は車体2の旋回外側(図においては右側を想定)に向け、その重心に作用する遠心力で生じるロールモーメントによって、車体2は、走行路面Sに対して同図で矢印Aの向きに傾く。
そうすると、走行路面Sから左右両側の車輪3が受ける反力が不均衡になるため、同図右側のロッカーリンク12に、これに連結されているショックアブソーバ14と緩衝ばね17、及びアッパアーム6から受ける力が、連動リンク18で連結されている反対側のロッカーリンク12に作用する力よりも大きくなる。
その結果、これらのロッカーリンク12は、連動リンク18と戻しリンク20を介してトーションバー22をその弾性に抗して、車体2に対して相対的に矢印Bの向きに捩りながら、それぞれ軸11を中心に、車体2に対して同図反時計回りに回動変位する。
このとき、旋回外側のアッパアーム6は、軸13回りにはほとんど揺動しないで、ロッカーリンク12とほぼ一体的に、車体2に対して軸11回りに回動するため、車体2に対する車輪3のキャンバ角はネガティブ方向に変化し、その結果ロール時の走行安定性を高めることができる。
この際、戻しリンク20は、中立位置に戻る方向にトーションバー22から付勢されているため、自動車が旋回走行から直線走行に移行して、車体2に遠心力が作用しなくなると、これらのロッカーリンク12は、図4に示す中立位置に復帰する。この際、前述したロータリダンパ23によってロッカーリンク12の振動が抑制される。
なお、前述したサスペンション装置1においては、車輪3の初期キャンバは0°でなくてもよい。例えば、図6に示すサスペンション装置1’のように、車輪支持部材4に対してホイールハブ7の回転軸線を傾けて取付け、初期キャンバ(同図において車体2の静止状態における車輪3の路面Sに対する角度α)をネガティブに設定することも可能である。
また、本実施形態のように、トーションバー22とロータリダンパー23を戻しリンク20と連動リンク18を介して左右のロッカーリンク12に連係する構造に代えて、左右両方、もしくは一方のロッカーリンク12の軸11の位置に、トーションバーとロータリダンパを組み込んでもよいし、一方の軸11の位置にトーションバーを組み込み、他方の軸11の位置にロータリダンパを組み込んでもよい。
なお、図示による説明は省略するが、車体2の両側のロアアーム5の軸9やアッパアーム6の軸13の中心軸線は、平面視において車体2の前後方向に平行でなくてもよく、サスペンションストローク時に、意図したトー変化が得られるように、左右対称的にそれぞれ同じか個別の角度、水平面内で僅かに傾斜させてもよい。
同様に、これらの軸9や軸13の中心軸線は、側面視において走行路面Sに平行でなくてもよく,加速時や制動時に車体が大きくピッチすることを避けるために、車体前後方向にそれぞれ同じか個別の角度、垂直面内で僅かに傾斜させて、アンチスクウォートやアンチダイブの特性を持たせてもよい。
次に、図7は、本発明のサスペンション装置の第2実施形態を示す模式的な正面図であって、同図に示すサスペンション装置1Aは、一部を除いて前述したサスペンション装置1と共通な基本構造を有している。
このサスペンション装置1Aでは、左右それぞれのロッカーリンク12Aに、略3角形の中継リンク24を軸25で揺動可能に連結し、当該ロッカーリンク12Aの内側の上端部と中継リンク24との間に、ショックアブソーバ26と緩衝ばね27を横向きに組み込んであり、ショックアブソーバ26の本体とその伸縮ロッド26Aをそれぞれ、中継リンク24とロッカーリンク12Aに軸28、29で揺動可能に連結してある。
また、中継リンク24には、プッシュロッド30の上端部が軸31で揺動可能に連結されている。プッシュロッド30はアッパアーム6の内側を通ってその下端部がロアアーム5に軸32で揺動可能に連結されている。
なお、本実施形態におけるサスペンション装置1Aでは、ショックアブソーバ26と緩衝ばね27を中継リンク24とプッシュロッド30を介してロアアーム5に連結しているが、前述したサスペンション装置1と機能は同じである。
図8は、本発明のサスペンション装置の第3実施形態を示す模式的な正面図であって、同図に示すサスペンション装置1Bでは、ロッカーリンク12Bの下端部が、ロアアーム5の内側から下方に突出し、その下端部には、中継リンク33の一端部が軸34で揺動可能に連結されている。
また、中継リンク33の他端部には、プルロッド35の下端部が軸36によって揺動可能に連結されている。前記プルロッド35は、ロアアーム5の内側を通ってその上端部がアッパアーム6に軸37で揺動可能に連結されている。
また、中継リンク33とロッカーリンク12Bとの間には、ショックアブソーバ38と緩衝ばね39が組み込んであり、ショックアブソーバ38とその伸縮ロッド38Aを、ロッカーリンク12Bと中継リンク33にそれぞれ、軸40、41で揺動可能に連結してある。
図9は、本発明のサスペンション装置の第4実施形態を示す模式的な正面図であって、同図に示すサスペンション装置1Cは、先に、図7で説明した第2実施形態のサスペンション装置1Aと類似した構造であるが、このサスペンション装置1Cは、ショックアブソーバ42と緩衝ばね43を一組だけ用いたモノショック形式で、前述のサスペンション装置1Aより部品点数が少なく構造が簡略化されている。
すなわち、このサスペンション装置1Cにおいては、左右両側のロッカーリンク12Cの上端部外側位置にそれぞれ略3角形の中継リンク44を軸45で揺動可能に連結し、これらの中継リンク44の一方にショックアブソーバ42の本体側を、他方にその伸縮ロッド42Aをそれぞれ軸46で揺動可能に連結してあり、また、伸縮ロッド42Aの外周に緩衝ばね43を組み込んである。
また、左右それぞれの中継リンク44は、前述した図7のサスペンション装置1Aと同様に、下端側がロアアーム5と軸47で揺動可能に連結されているプッシュロッド48の上端部に、軸49で揺動可能に連結されている。なお、その他の部分は、先に説明した第1実施形態のサスペンション装置1と同一構成である。
図10は、本発明のサスペンション装置の第5実施形態を示す模式的な正面図であって、同図に示すサスペンション装置1Dは、左右のロッカーリンク12Dどうしを連動させる連動機構として、シリンダ装置50を用いている。
前記シリンダ装置50は、それぞれ内部にピストンPを摺動可能に組み込んだ一対のシリンダ50Aを有している。これらのシリンダ50Aはそれぞれ、ピストンPを挟んで同じ側のシリンダ室どうしが連通管M1と連通管M2で連結されていて、これらの連通管M1、M2とシリンダ室内には油が満たされている。
また、それぞれのシリンダ50Aには、途中位置にピストンPが固定されたピストンロッド50Bが軸方向に摺動可能に貫通していて、これらのピストンロッド50Bの同じ側の端部がそれぞれ、左右のロッカーリンク12Dとアッパアーム6とを連結している軸13に揺動可能に連結されている。また、それぞれのシリンダ50Aは、車体2’側に軸51で揺動可能に連結されている。
このような構造により、一方のシリンダ50Aのピストンロッド50Bと他方のシリンダ50Aのピストンロッド50Bとは、連通管M1、M2を流通する油により、伸縮動作が逆向きに連動し、両方のロッカーリンク12Dを軸13回りに同じ向きに連動させる。
さらに、本実施形態のものにおいては、シリンダ装置50が両方のロッカーリンク12Dの揺動運動を制動するダンパの役割を兼ねている。また、図10では隠れて見えないため図示していないが、本実施形態のサスペンション装置1Dは、これらのロッカーリンク12Dを中立位置に復帰させるための付勢部材としてのトーションバーを各ロッカーリンク12Dと車体2’の取付腕2Aとを連結している軸11の位置に同軸に組み込んである。
なお、左右のロッカーリンクを連動させる機構は、ここで説明したシリンダ装置50や、先に説明した図1に示すような連動リンク18に限定するものではなく、チェーンによる伝動機構や歯車伝動機構等で構成してもよい。
次に、図11は、本発明のサスペンション装置の第6実施形態を示す模式的な正面図、図12はその平面図、図13はその側面図であって、これらの図に示すサスペンション装置1Eは、先に説明した図1に示すサスペンション装置1にスタビライザ52を設けたものである。
図11乃至図13に示すように、スタビライザ52は、トーションバー53とその両端部に同じ向きに固定された一対の捩りアーム54と、これらの捩りアーム54にそれぞれボールジョイント55を介して上端部が揺動可能に連結されている連結ロッド56から構成されており、これらの連結ロッド56の下端部はそれぞれ、左右のロアアーム5に軸57で揺動可能に連結されている。
また、トーションバー53は、両端近傍でそれぞれ受けリンク58に組み込まれている球面軸受59に支持されている。また、これらの受けリンク58の下端部はそれぞれ、軸60で対応するロッカーリンク12Eの上端部に揺動可能に連結されている。
ここで、受けリンク58、球面軸受59、及び軸60は保持機構を構成しており、それぞれ保持機構を介して左右のロッカーリンク12でトーションバー53を保持して、ロッカーリンクが揺動変位できるようにしてある。
球面軸受59は、中心部にトーションバー52をその中心軸線回りに回転変位可能に保持する、径方向に貫通する貫通孔を有しており、またその外面は球面で形成されている。一方、受けリンク58側には、前記球面に適合する球状凹部が形成されており、球面軸受59は、前記球状凹部内で様々な向きに回動可能に支持されている。
また、トーションバー53の両側の球面軸受59と、捩りアーム54の間にはそれぞれ、これらの受けリンク58に対するトーションバー53の軸方向の移動を規制するための筒状のカラー61が組み込まれている。
次に、前述したように構成されているサスペンション装置1Eの動作について説明する。
サスペンション装置1Eは、バウンス時(ピッチ時)には、先に図1乃至図3に基づいて説明した、第1実施形態のサスペンション装置1の場合と同様に、図11において、車体2両側のロアアーム5とアッパアーム6は、左右のロッカーリンク12Eを中立位置に保ったまま、左右対称に上下にストロークする。
このとき、車体2の左右両側のロアアーム5の動きは、それぞれ連結ロッド56を介して、トーションバー53の両端部に固定されている捩りアーム54を、同じ向きに同一角度回動させる。このときには、トーションバー53には、その中心軸線回りに捩れ変形は発生せず、一対の球面軸受59に支持された状態で、全体が剛体的に回動するため、スタビライザ52は機能していない。
一方、旋回時(ロール時)においては、一般に、自動車のホイールベースはトレッドより長いため、スタビライザ52を有していない場合、この反力をロアアーム5を介して同じ緩衝ばね14で受けるため、ピッチ時よりもロール時の方が、車体2の姿勢(角度)変化が激しくなる。
この場合、緩衝ばね17は、ショックアブソーバ14とともに、ロッカーリンク12Eに連結され、車体2には直接連結されておらず、また、ロッカーリンク12Eは、トーションバー22の弾性で中立位置に向けて付勢されているため、車体2両側の緩衝ばね17とトーションバー22の各ばね要素が直列に連結された状態になっている。その結果、緩衝ばね17が車体2に直接連結されている、従来のサスペンション装置と比較して、ばね要素が柔らかくなるため、ロール時の車体2の傾きが大きくなる。
ところが、スタビライザ52を有していると、旋回時(ロール時)には、車体2が旋回外側に傾く結果、旋回外側のロアアーム5は反対側のロアアーム5より大きく車体2に対して上方へ揺動して、トーションバー53の両端部に固定されている2つの捩りアーム54の回動角度に差が生じ、旋回外側の捩りアーム54の方が大きく回動する。
その結果、トーションバー53は捩られて、捩りを戻す向きのトルクが発生し、旋回外側のロアアーム5は、連結ロッド56を介して下方に揺動する向きに押されて車体2の傾きが制限されるので、ロール剛性を高めることができる。
また、トーションバー53の捩り剛性が大きくなるほど、緩衝ばね17はほとんど変位しなくなり、ロール運動はトーションバー22とロータリダンパ23により支配的に制御され、また、ピッチ運動はショックアブソーバ14と緩衝ばね17によって支配的に制御されるようになる。
そして、トーションバー53が剛体と見なせるほど捩り剛性が極めて大きい場合には、ロールとピッチのそれぞれに制振とジオメトリを独立して設計することが可能となり、また、ロール剛性を車体2の中央のトーションバー22の捩り剛性によって調整することが可能となる。
さらに、本実施形態のサスペンション装置1Eにおいては、スタビライザ52のトーションバー53の捩れ剛性によって、ロール剛性を調整することができるため、車体2前後のサスペンション装置1E間でロール剛性の個別の設定を容易に行うことができる。
なお、スタビライザ52を用いなくても、車体2の前後の各サスペンション装置におけるトーションバー22の捩り剛性を調整することによって、ロール剛性を前後個別に調整可能であるが、スタビライザ52を設けることで、車体2前後のロール剛性の調整幅をより拡げることができる。
1 、1’、1A、1B、1C、1D、1E サスペンション装置
2 車体
2A 取付腕
2B 固定部材
3 車輪
4 車輪支持部材
5 ロアアーム
6 アッパアーム
7 ホイールハブ
8 ボールジョイント
9 軸
10 ボールジョイント
11 軸(第1軸)
12、12A、12B、12C、12D、12E ロッカーリンク
13 軸(第2軸)
14 ショックアブソーバ
14A 伸縮ロッド
15、16 軸
17 緩衝ばね
18 連動リンク(連動機構)
19 軸
20 戻しリンク
21 軸
22 トーションバー(付勢部材)
23 ロータリダンパ(ダンパ)
24 中継リンク
25 軸
26 ショックアブソーバ
26A 伸縮ロッド
27 緩衝ばね
28、29 軸
30 プッシュロッド
31、32 軸
33 中継リンク
34 軸
35 プルロッド
36、37、38 軸
38 ショックアブソーバ
38A 伸縮ロッド
39 緩衝ばね
40、41 軸
42 ショックアブソーバ
42A 伸縮ロッド
43 緩衝ばね
44 中継リンク
45、46、47 軸
48 プッシュロッド
49 軸
50 シリンダ装置(連動機構)
50A シリンダ
50B ピストンロッド
52 スタビライザ
53 トーションバー
54 捩りアーム
55 ボールジョイント
56 連結ロッド
57 軸
58 受けリンク(保持機構)
59 球面軸受(保持機構)
60 軸(保持機構)
61 カラー

Claims (2)

  1. 車体両側でそれぞれ車輪を回転可能に支持する車輪支持部材を、ロアアームとアッパアームを介して車体に対し上下に揺動可能に連結したサスペンション装置であって、
    中立位置において、車体の前後方向に略垂直な面内で車体幅方向中央位置に対して左右が対称的な配置をとるように、当該車体にそれぞれ第1軸回りに揺動可能に連結された一対のロッカーリンクと、
    前記一対のロッカーリンクどうしを同じ向きに揺動するように連動させる連動機構と、
    前記一対のロッカーリンクを前記中立位置に向けて付勢する付勢部材と、
    前記一対のロッカーリンクの揺動を制動するダンパを備え、
    各アッパアームの車体内側の端部はそれぞれ、対応するロッカーリンクに対して第1軸と略平行で且つこの軸よりも上方に位置する第2軸回りに上下に揺動可能に連結され、
    車体両側のロアアームとアッパアームの少なくとも一方は、直接または伝達機構を介して緩衝ばねとショックアブソーバに連結され、
    これらの緩衝ばねとショックアブソーバの反力を各ロッカーリンクが受けるようにしたことを特徴とするサスペンション装置。
  2. 一対のロッカーリンクのそれぞれに、これらの揺動変位を許容する保持機構を介して両端近傍を捩り変形可能に保持されたトーションバーを有する、スタビライザを備えたことを特徴とする請求項1に記載のサスペンション装置。
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