JP2015129730A - 光学的測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】鮮明な光断層画像を得ることができる光学的測定方法を提供する。
【解決手段】本実施形態の光学測定方法は、当該干渉光スペクトルを取得する第1ステップと、干渉光スペクトルに分散の影響を変化させる関数を乗じ、当該関数を乗じた干渉光スペクトルのフーリエ変換の結果に基づき、光断層画像を取得する第2ステップと、測定原点よりも光源部10側で生じる拡散反射光L4に対応する像がフーリエ変換により測定原点で折り返されて形成される折り返し像A,Bを光断層画像から除いた後、光断層画像の鮮明さに関する指標値を算出する第3ステップと、を備え、関数を様々に設定して第2ステップおよび第3ステップを複数回繰り返し、複数の関数のうち情報エントロピーを最大とさせる関数を分散補償関数に決定し、当該分散補償関数を用いて第2ステップを行って取得される光断層画像を分散補償後の光断層画像とする。
【選択図】図1
【解決手段】本実施形態の光学測定方法は、当該干渉光スペクトルを取得する第1ステップと、干渉光スペクトルに分散の影響を変化させる関数を乗じ、当該関数を乗じた干渉光スペクトルのフーリエ変換の結果に基づき、光断層画像を取得する第2ステップと、測定原点よりも光源部10側で生じる拡散反射光L4に対応する像がフーリエ変換により測定原点で折り返されて形成される折り返し像A,Bを光断層画像から除いた後、光断層画像の鮮明さに関する指標値を算出する第3ステップと、を備え、関数を様々に設定して第2ステップおよび第3ステップを複数回繰り返し、複数の関数のうち情報エントロピーを最大とさせる関数を分散補償関数に決定し、当該分散補償関数を用いて第2ステップを行って取得される光断層画像を分散補償後の光断層画像とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、光学的測定方法に関するものである。
光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:OCT)に拠る光学的測定方法は、光の干渉を用いて対象物の深さ方向の反射量分布を測定することができる。この光学的測定方法は、高い空間分解能で対象物の内部の構造を画像化することができることから、近年では生体計測に応用されている。
OCTの方式は、TD−OCT(Time-Domain OCT、時間領域OCT)とFD−OCT(Fourier-Domain OCT、フーリエ領域OCT)とに大別される。TD−OCTでは、低コヒーレント光を2分岐して参照光と測定光とし、参照光を反射体に照射したときに該反射体で生じる反射光と、測定光を対象物に照射したときに対象物で生じる拡散反射光とを互いに干渉させ、両光の間の光路長差を走査しながら当該干渉光の強度を求め、各光路長差における干渉光強度に基づいて対象物の光断層画像を求める。また、FD−OCTでは、広帯域光を2分岐して参照光と測定光とし、参照光を反射体に照射したときに該反射体で生じる反射光と、測定光を対象物に照射したときに対象物で生じる拡散反射光とを互いに干渉させて干渉光スペクトルを取得し、当該干渉光スペクトルのフーリエ変換の結果に基づいて対象物の光断層画像を求める。
FD−OCTは、TD−OCTと比べて短時間に光断層画像を取得することができることから、現在では主流となってきている。また、FD−OCTは、広帯域光源および分光器を用いる構成(Spectral-domain OCT)と、波長掃引型光源および単一または複数の検出器を用いる構成(Swept-source OCT)とに分けられる。
FD−OCTでは、装置に分散、即ち、屈折率の波長依存性があると測定光と参照光との光路長差にも波長依存性が生じるため、得られる光断層画像が不鮮明になる場合がある。そこで、干渉光スペクトルに分散補償関数を乗じてからフーリエ変換し、光断層画像を得ることが行われている。この分散補償関数を決定する際には、予め様々な関数を干渉光スペクトルに乗じて分散の影響を変化させ、得られた光断層画像を最も鮮明にする関数を分散補償関数に決定する手法が採用されている。
また、光断層画像の鮮明さに関する指標として、例えば、反射ピークを形成するデータ点数(非特許文献1参照)や、画像の輝度分布を定量化した情報エントロピーという値(非特許文献2参照)を用いることが提案されている。
Wojtkowski,"Ultrahigh-resolution,high-speed,Fourier domain optical coherence tomography and methods for dispersion compensation",OPTICS EXPRESS,31 May 2004,Vol.12,No.11,pp2404-2422
Yasuno,"In vivo high-contrast imaging of deep posterior eye by 1-μm swept source optical coherence tomography and scattering optical coherence angiography",OPTICS EXPRESS,14 May 2007,Vol.15,No.10,pp6121-6139
しかし、上記のようにして決定した分散補償関数によっては鮮明な光断層画像が得られない場合があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、鮮明な光断層画像を得ることができる光学的測定方法を提供することを目的とする。
本発明の光学的測定方法は、広帯域光源から出力される広帯域光を2分岐して参照光および測定光とし、参照光を反射体に照射したときに該反射体で生じる反射光と、測定光を対象物に照射したときに該対象物で生じる拡散反射光とを互いに干渉させ、当該干渉光スペクトルを取得する第1ステップと、干渉光スペクトルに分散の影響を変化させる関数を乗じ、当該関数を乗じた干渉光スペクトルのフーリエ変換の結果に基づき、測定光の光路上における位置であって、参照光の光路上における反射体の位置に対応する位置を測定原点とするとともに、当該測定原点よりも広帯域光源の逆側を測定範囲とする光断層画像を取得する第2ステップと、測定原点よりも広帯域光源側で生じる拡散反射光に対応する像がフーリエ変換により測定原点で折り返されて形成される折り返し像を光断層画像から除いた後、光断層画像の鮮明さに関する指標値を算出する第3ステップと、を備え、関数を様々に設定して第2ステップおよび第3ステップを複数回繰り返し、複数の関数のうち指標値を最大とさせる関数を分散補償関数に決定し、当該分散補償関数を用いて第2ステップを行って取得される光断層画像を分散補償後の光断層画像とする。
本発明の光学的測定方法は、第3ステップが、折り返し像を光断層画像から除く操作に加えてDC成分の像および多重反射の像を光断層画像から除く操作を含んでもよい。
本発明の光学的測定方法は、広帯域光源から出力される広帯域光を2分岐して参照光および測定光とし、参照光を反射体に照射したときに該反射体で生じる反射光と、測定光を対象物に照射したときに該対象物で生じる拡散反射光とを互いに干渉させ、当該干渉光スペクトルを取得する第1ステップと、干渉光スペクトルに分散の影響を変化させる関数を乗じ、当該関数を乗じた干渉光スペクトルのフーリエ変換の結果に基づき、測定光の光路上における位置であって、参照光の光路上における反射体の位置に対応する位置を測定原点とするとともに、当該測定原点よりも広帯域光源の逆側を測定範囲とする光断層画像を取得する第2ステップと、光断層画像の鮮明さに関する指標値を算出する第3ステップと、測定原点よりも広帯域光源側で生じる拡散反射光に対応する像がフーリエ変換により測定原点で折り返されて形成される折り返し像の光断層画像における位置に基づいて測定光と参照光との光路長差を調整することで、折り返し像が第3ステップにおいて算出される指標値に与える影響を低減する第4ステップと、を備え、第4ステップにおいて光路長差の調整を行った後に第1ステップを行うとともに、関数を様々に設定して第2ステップおよび第3ステップを複数回繰り返し、複数の関数のうち指標値を最大とさせる関数を分散補償関数に決定し、当該分散補償関数を用いて第2ステップを行って取得される光断層画像を分散補償後の光断層画像とする。
本発明によれば、鮮明な光断層画像を得ることができる。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
(第1実施形態)
図1は、光学的測定装置1の構成を示す図である。光学的測定装置1は、FD−OCTによって対象物2の光断層画像を取得するものであって、光源部(広帯域光源)10、干渉部20、参照部30、測定部40、検出部50、解析部60および表示部70を備える。
光源部10は広帯域光を出力する。OCTでは、対象物2の深さ方向の空間分解能は光の帯域幅に反比例し、スペクトル形状にも依存する。したがって、光源部10として、広帯域かつ平坦度の高いスペクトルを有した光を出力することができるものが好ましい。光源部10は、帯域幅10nm以上の連続した波長帯域において強度−30dBm/nm以上である広帯域光を出力するのが好適である。
光源部10として、例えば、希土類元素が添加されたガラスを光増幅媒体として備え広帯域の自然放出(ASE)光を出力することができるASE光源、光導波路における非線形光学現象によって帯域が拡大されたスーパーコンティニウム(SC)光を出力することができるSC光源、スーパールミネッセントダイオード(SLD)を含む光源、等が好適に用いられる。また、光源部10は、波長可変レーザ光源のように時間的に波長を掃引することで全体の帯域幅が10nmとなるものであってもよいし、複数の光源それぞれから出力される各波長帯域の光を用いることで全体の帯域幅が10nmとなるものであってもよい。
干渉部20は、光源部10からから出力される広帯域光を2分岐して参照光L1および測定光L2とし、参照光L1を反射体31に照射するとともに当該照射に伴う反射体31からの反射光L3を入力し、測定光L2を対象物2に照射するとともに当該照射に伴う対象物2からの拡散反射光L4を入力し、これら反射光L3と拡散反射光L4とを互いに干渉させて当該干渉光L5を検出部50へ出力する。
参照部30は、干渉部20と反射体31との間の光学系を含み、干渉部20からの参照光L1を反射体31へ導き、反射体31からの反射光L3を干渉部20へ導く。また、反射体31の位置を干渉部20に近づく方向および遠ざかる方向に移動させ、参照光L1の光路長を変化させる移動部32が設けられている。
測定部40は、干渉部20と対象物2との間の光学系を含み、干渉部20からの測定光L2を対象物2へ導き、対象物2からの拡散反射光L4を干渉部20へ導く。また、対象物2への測定光L2の照射位置を走査する走査部41が設けられている。
検出部50は干渉部20から出力される干渉光L5のスペクトルを検出する。解析部60は、検出部50により検出された干渉光スペクトルに分散の影響を変化させる関数を乗じてから、当該関数を乗じた干渉光スペクトルをフーリエ変換し、そのフーリエ変換の結果に基づいて光断層画像を取得する。光断層画像は、測定光L2の光路上における位置であって、参照光L1の光路上における反射体31の位置に対応する位置を測定原点とするとともに、当該測定原点よりも光源部10の逆側(測定原点のプラス側という)を測定範囲とするものである。解析部60は、走査部41により対象物2への測定光L2の照射位置を走査することで、その走査の際の各照射位置において光断層画像を取得して、2次元または3次元の光断層画像を取得することができる。
また、解析部60は光断層画像の鮮明さに関する指標値を算出する。この指標値としては、例えば非特許文献1に開示されるような反射ピークのデータ点数や、非特許文献2に開示されるような情報エントロピーを用いることができる。OCTはもともと20μm程度の高分解能を特徴とし、装置の分散による画像のぼけが無視できないことが多い。このため、解析部60は、算出した指標値に基づいて分散補償関数を決定し、分散補償後の光断層画像を取得する分散補償処理を更に行う。当該分散補償処理については後述する。表示部70は、解析部60により取得された光断層画像を表示する。
図2は、測定部に用いられる測定プローブの構成を示す図である。測定プローブ42は、光ファイバ43、レンズ44、プローブ内装体45、およびプローブ外装体46を備える。光ファイバ43は、一端43a側から測定光L2を入力するとともに、レンズ44と融着された他端43b側から測定光L2を出力する。レンズ44は、光ファイバ43の他端43bと融着され測定光L2を入力する入力面44aと、入力した測定光L2の進行方向に対して45°傾斜した傾斜面44bと、測定光L2の進行方向に平行な出力面44cとを有する。レンズ44は、測定光L2を入力面44aから入力し、傾斜面44bで90°反射させ、出力面44cから対象物2へと出力する。プローブ内装体45は、レンズ44を取り囲むようにして設けられている。プローブ外装体46は、光ファイバ43およびレンズ44を全体的に取り囲むようにして設けられている。
本実施形態の光学的測定方法では、このような光学的測定装置1を用いて、対象物2の光断層画像を取得することができる。本実施形態の光学的測定方法は、以下のような第1〜3ステップを備えている。第1ステップおいて、光源部10から出力される広帯域光を2分岐して参照光L1および測定光L2とし、参照光L1を反射体に照射したときに該反射体で生じる反射光L3と、測定光L2を対象物に照射したときに該対象物で生じる拡散反射光L4とを互いに干渉させ、干渉光スペクトルを取得する。当該第1ステップは検出部50により実施される。
このとき検出される干渉光スペクトルは、干渉にかかわらない成分I0と干渉成分との和で表され、波数をk、測定原点からの対象物2の深さ方向の距離をz、対象物2内での光の反射強度に関する項をC(z)、分散の影響による遅延をΦ(k)とすると、概念的には以下の式で表される。この式において、1行目の第2項が干渉の項で、2行目の第2項がフーリエ変換後に通常の光断層画像として現れる成分である。
I(k)=I0+∫dz{2C(z)cos(2kz+Φ(k))}
=I0+∫dz{C(z)exp(i2kz+iΦ(k))}+∫dz{C(z)exp(-i2kz-iΦ(k))}
I(k)=I0+∫dz{2C(z)cos(2kz+Φ(k))}
=I0+∫dz{C(z)exp(i2kz+iΦ(k))}+∫dz{C(z)exp(-i2kz-iΦ(k))}
分散の影響による遅延Φ(k)、およびこれを補償する分散補償関数exp(-iΦ(k))が未知であるため、分散補償処理を行うにはこれらを決定する必要がある。そこでまず、第2ステップにおいて、干渉光スペクトルに分散の影響を変化させる関数exp(-iΦ´(k))を乗じ、当該関数を乗じた干渉光スペクトルをフーリエ変換する。このフーリエ変換の結果に基づき、光断層画像を取得する。当該第2ステップは解析部60により実施される。
図3は、第2ステップで得られる光断層画像である。この光断層画像は、図2の測定プローブ42におけるレンズ44の傾斜面44b上のX点を測定原点とし、測定範囲内に測定プローブ42のみがある状態で測定したものである。同図には、折り返し像A,Bおよび通常の像Cが示されている。OCTの光断層画像には、測定原点よりも光源部10側(測定原点のマイナス側という)の位置で生じる拡散反射光L4に対応する像が測定原点で折り返されて測定原点のプラス側に折り返し像として形成される性質がある。折り返し像A,Bは、測定原点のマイナス側の測定範囲外で生じる拡散反射光L4に対応する像がフーリエ変換により測定原点で折り返されて形成されたものであり、本実施形態では、例えば光ファイバ43とレンズ44との融着面の像である。通常の像Cは、測定範囲内で生じる拡散反射光L4に対応する像であり、本実施形態では、例えばプローブ内装体45およびプローブ外装体46の像である。
続いて、第3ステップにおいて、折り返し像A,Bを光断層画像から除いた後、光断層画像の鮮明さに関する指標値を算出する。ここでは、指標値として上述の情報エントロピーを用いる。情報エントロピーとは、単純に言えば画像の輝度分布の様子を定量化したもので、輝度分布が一様だと大きくなり、輝度分布が偏っていると小さくなる。例えば突出した高い輝度を示すピクセルがあると、その画像の情報エントロピーは低くなる。当該第3ステップは解析部60により実施される。
本実施形態の光学的測定方法は、このような第1〜3ステップを備え、関数exp(-iΦ´(k))を様々に設定して第2ステップおよび第3ステップを複数回繰り返す。ここで、関数exp(-iΦ´(k))を様々に設定する際は、Φ´(k)を以下のような多項式と仮定し、その係数を変化させたものをΦ´(k)とする。
Φ´(k)=c0+c1k+c2k2+c3k3+c4k4…
Φ´(k)=c0+c1k+c2k2+c3k3+c4k4…
一般的には低次の項の方が支配的と考えられるので低次の項の係数c0,c1,c2,c3,c4の順に決定していく。しかし、kの0次の項の係数c0は干渉縞全体の位相が同じだけ回転するので光断層画像に影響はなく、kの一次の項の係数c1は光断層画像を深さ方向に平行移動させるだけなので、実際にはkの二次以降の項の係数を決定していけばよい。
図4は、各係数に対する情報エントロピーの変化を示すグラフである。この図に示されるように、各係数c2,c3,c4のそれぞれを順に−10から10まで変化させ、情報エントロピーが最少となる各係数c2,c3,c4の値を決定する。図5は、波数に対する補償量の関係を示すグラフである。Φ(k)は、kの四次の項の係数c4まで計算して決定したものである。Φ(k)の量が分散補償による補償量とされる。
複数の関数exp(-iΦ´(k))のうち情報エントロピーを最大とさせる関数を分散補償関数exp(-iΦ(k))に決定し、当該分散補償関数を用いて第2ステップを行って取得される光断層画像を分散補償後の光断層画像とする。ここで、分散補償関数を用いて第2ステップを再度行って分散補償後の光断層画像を得てもよいし、当該分散補償関数に決定された関数を用いて第2ステップを行った際に得た光断層画像がメモリ等の記憶装置に保存されていれば、それを分散補償後の光断層画像としてもよい。このような分散補償処理は、解析部60により実施される。
本実施形態の光学測定方法の作用効果について以下に説明する。本実施形態の光学測定方法は、光源部10から出力される広帯域光を2分岐して参照光L1および測定光L2とし、参照光L1を反射体31に照射したときに該反射体31で生じる反射光L3と、測定光L2を対象物2に照射したときに該対象物2で生じる拡散反射光L4とを互いに干渉させ、当該干渉光スペクトルを取得する第1ステップと、干渉光スペクトルに分散の影響を変化させる関数を乗じ、当該関数を乗じた干渉光スペクトルのフーリエ変換の結果に基づき、測定光L2の光路上における位置であって、参照光L1の光路上における反射体31の位置に対応する位置を測定原点とするとともに、当該測定原点のプラス側を測定範囲とする光断層画像を取得する第2ステップと、測定原点のマイナス側で生じる拡散反射光L4に対応する像がフーリエ変換により測定原点で折り返されて形成される折り返し像A,Bを光断層画像から除いた後、光断層画像の鮮明さに関する指標値として情報エントロピーを算出する第3ステップと、を備え、関数を様々に設定して第2ステップおよび第3ステップを複数回繰り返し、複数の関数のうち情報エントロピーを最大とさせる関数を分散補償関数に決定し、当該分散補償関数を用いて第2ステップを行って取得される光断層画像を分散補償後の光断層画像とする。
これによれば、正しく分散補償を行うと逆にぼけて分解能を低下させる傾向がある折り返し像A,Bをデータ処理により光断層画像から除いた後、光断層画像の鮮明さに関する指標値として情報エントロピーを算出するので、折り返し像A,Bの影響を受けずに光断層画像の鮮明さの定量化を正しく行うことができる。このように鮮明さの定量化を正しく行うことができるので、鮮明な光断層画像を得ることが可能となる。
OCT装置は基本的には測定原点のマイナス側に拡散反射光L4を生じさせる反射点がないように設計される。しかし、測定プローブ42における測定光L2の出力部付近では、例えば、光ファイバ43とレンズ44との融着面といった部分により、拡散反射光L4の発生が避けられない場合もある。また、これらの拡散反射光L4に対応する像が折り返し像を形成した場合でも、対象物2の像と重なるほど原点のマイナス側にはないため、光断層画像としては気にされない。しかし、上述のように鮮明さの定量化においては障害となるため、本実施形態の光学的測定方法により折り返し像を除いて光断層画像の鮮明さの定量化を行うことで、鮮明な光断層画像を得ることが可能となる。
なお、本実施形態では光断層画像から折り返し像のみを除去することとしたが、これに限られない。図6は、DC成分の像および多重反射の像を有する光断層画像である。同図(a)は、測定原点を図2のX点とする光断層画像である。同図(b)は、移動部32により反射体31の位置を干渉部20に近づく方向に移動させ、参照光L1の光路長を短くすることで、測定原点をX点よりマイナス側の位置、即ち、X点より干渉部20に近い位置に移動させて測定した光断層画像である。測定光L2と参照光L1との光路長差の調整による測定原点の移動に伴い、通常の像Cは移動するのに対し、像Dおよび像Eは移動しない。
DC成分の像Dは干渉縞にDC成分があるとフーリエ変換後に光断層画像の原点付近に現れる。多重反射の像Eは測定装置内の多重反射を主な発生原因とし、測定原点の位置に関係なく光断層画像の同じ位置に現れる。例えば、これらのDおよび像Eについても指標値の計算から除去することとしてもよい。これらの2つの像は、上述のように測定原点の移動に伴っては移動しないので、データ処理により除去することが好ましい。具体的には、上記第3ステップが、折り返し像A,Bを光断層画像から除く操作に加えてDC成分の像Dおよび多重反射の像Eを光断層画像から除く操作を含むこととする。なお、光断層画像における各像が、DC成分の像Dおよび多重反射の像Eに該当するか否かは、測定原点を移動させたときに光断層画像における位置が変わるか否かで判断することができる。
また、本実施形態では、分散補償関数を決定する際に用いる光断層画像のデータとして同じ光学的測定装置1で測定した同じ対象物2、ここでは測定プローブ42の光断層画像のデータを用いることとしたが、同じ光学的測定装置1で測定した別の対象物2の光断層画像のデータを用いることとしてもよい。例えば、分散補償関数を決定する際に測定プローブ42だけによる光断層画像を用い、分散補償関数を決定後に生体測定を行うようにしてもよい。
(第2実施形態)
(第2実施形態)
第2実施形態の光学的測定方法は、第1実施形態と同じ光学的測定装置1を用いて、対象物2の光断層画像を取得することができる。本実施形態の光学的測定方法は、以下のような第1〜4ステップを備えている。第1ステップおよび第2ステップは第1実施形態の第1ステップおよび第2ステップと同じである。
第3ステップにおいて、光断層画像の鮮明さに関する指標値を算出する。ここでは、指標値として上述の情報エントロピーを用いる。第3ステップは、折り返し像A,Bを光断層画像から除く必要がない点で第1実施形態の第3ステップと相違している。当該第3ステップは、解析部60により実施される。
第4ステップにおいて、折り返し像A,Bの光断層画像における位置に基づいて測定光L2と参照光L1との光路長差を調整することで、折り返し像A,Bが指標値に与える影響を低減する。ここでは、移動部32により反射体31の位置を干渉部20に近づく方向に移動させ、参照光L1の光路長を短くすることで、測定原点をレンズ44の傾斜面44bから干渉部20に近い位置、即ちマイナス側に移動させる。当該第4ステップは解析部60により実施される。
図7は、図3の光断層画像を測定したときよりもマイナス側に測定原点を移動させて測定した光断層画像である。測定原点がマイナス側に移動したことにより、図3の光断層画像においてz方向の中央付近に存在した折り返し像A,Bが、通常の像A,Bとなってz方向の原点付近に移動している。また、図3の光断層画像においてz方向の原点寄りに存在した通常の像Cが、z方向に原点から遠ざかる位置に移動している。
本実施形態の光学的測定方法は、以上のような第1〜4ステップを備え、第4ステップにおいて光路長差の調整を行った後に第1ステップを行うとともに、関数exp(-iΦ´(k))を様々に設定して第2ステップおよび第3ステップを繰り返す。このとき第1実施形態と同様に、Φ´(k)を多項式と仮定し、その係数c2,c3,c4のそれぞれを順に変化させてΦ´(k)を様々に設定する。そして、複数の関数exp(-iΦ´(k))のうち情報エントロピーを最大とさせる関数を分散補償関数exp(-iΦ(k))に決定し、当該分散補償関数を用いて第2ステップを行って取得される光断層画像を分散補償後の光断層画像とする。ここで、分散補償関数を用いて第2ステップを再度行って分散補償後の光断層画像を得てもよいし、当該分散補償関数に決定された関数を用いて第2ステップを行った際に得た光断層画像がメモリ等の記憶装置に保存されていれば、それを分散補償後の光断層画像としてもよい。このような分散補償処理は、解析部60により実施される。
図8は、図7の光断層画像について分散補償した後の光断層画像である。通常の像A,B,Cのそれぞれは図7よりも図8において輝度分布が偏り鮮明になっている。
本実施形態の光学測定方法の作用効果について以下に説明する。本実施形態の光学測定方法は、光源部10から出力される広帯域光を2分岐して参照光L1および測定光L2とし、参照光L1を反射体31に照射したときに該反射体31で生じる反射光L3と、測定光L2を対象物2に照射したときに該対象物2で生じる拡散反射光L4とを互いに干渉させ、当該干渉光スペクトルを取得する第1ステップと、干渉光スペクトルに分散の影響を変化させる関数を乗じ、当該関数を乗じた干渉光スペクトルのフーリエ変換の結果に基づき、測定光L2の光路上における位置であって、参照光L1の光路上における反射体31の位置に対応する位置を測定原点とするとともに、当該測定原点のプラス側を測定範囲とする光断層画像を取得する第2ステップと、光断層画像の鮮明さに関する指標値として情報エントロピーを算出する第3ステップと、測定原点のマイナス側で生じる拡散反射光L4に対応する像がフーリエ変換により測定原点で折り返されて形成される折り返し像A,Bの光断層画像における位置に基づいて測定光L2と参照光L1との光路長差を調整することで、折り返し像A,Bを通常の像A,Bとし、折り返し像A,Bが第3ステップにおいて算出される情報エントロピーに与える影響を低減する第4ステップと、を備え、第4ステップにおいて光路長差の調整を行った後に第1ステップを行うとともに、関数を様々に設定して第2ステップおよび第3ステップを複数回繰り返し、複数の関数のうち情報エントロピーを最大とさせる関数を分散補償関数に決定し、当該分散補償関数を用いて第2ステップを行って取得される光断層画像を分散補償後の光断層画像とする。
これによれば、正しく分散補償を行うと逆にぼける傾向がある折り返し像A,Bを、測定光L2と参照光L1との光路長差を調整することにより、折り返し像としてではなく通常の像A,Bとして光断層画像に現れるようにした後、光断層画像の鮮明さに関する指標値として情報エントロピーを算出するので、折り返し像A,Bの影響を受けずに光断層画像の鮮明さの定量化を正しく行うことができる。このように鮮明さの定量化を正しく行うことができるので、鮮明な光断層画像を得ることが可能となる。
折り返し像A,Bを光断層画像からデータ処理により除く第1実施形態の方法は、簡便で実用的であるものの、折り返し像A,Bが測定したい対象物2の通常の像Cに重なっている場合は実施が困難である。測定光L2と参照光L1との光路長差を調整することにより折り返し像A,Bが情報エントロピーに与える影響を低減する本実施形態の方法は、このような場合に優位性を有する。
なお、本実施形態では、折り返し像A,Bを全て通常の像A,Bとするまで測定光L2と参照光L1との光路長差を調整することとしたが、これに限られない。例えば、折り返し像Aだけを通常の像Aとすることによっても、折り返し像A,Bが第3ステップにおいて算出される情報エントロピーに与える影響を低減することができる。
2…対象物、10…光源部(広帯域光源)、31…反射体、L1…参照光、L2…測定光、L3…反射光、L4…拡散反射光。
Claims (3)
- 広帯域光源から出力される広帯域光を2分岐して参照光および測定光とし、前記参照光を反射体に照射したときに該反射体で生じる反射光と、前記測定光を対象物に照射したときに該対象物で生じる拡散反射光とを互いに干渉させ、当該干渉光スペクトルを取得する第1ステップと、
前記干渉光スペクトルに分散の影響を変化させる関数を乗じ、当該関数を乗じた干渉光スペクトルのフーリエ変換の結果に基づき、前記測定光の光路上における位置であって、前記参照光の光路上における前記反射体の位置に対応する位置を測定原点とするとともに、当該測定原点よりも前記広帯域光源の逆側を測定範囲とする光断層画像を取得する第2ステップと、
前記測定原点よりも前記広帯域光源側で生じる前記拡散反射光に対応する像がフーリエ変換により前記測定原点で折り返されて形成される折り返し像を前記光断層画像から除いた後、前記光断層画像の鮮明さに関する指標値を算出する第3ステップと、
を備え、
前記関数を様々に設定して前記第2ステップおよび前記第3ステップを複数回繰り返し、複数の前記関数のうち前記指標値を最大とさせる関数を分散補償関数に決定し、当該分散補償関数を用いて前記第2ステップを行って取得される光断層画像を分散補償後の光断層画像とする、光学的測定方法。 - 前記第3ステップが、前記折り返し像を前記光断層画像から除く操作に加えてDC成分の像および多重反射の像を前記光断層画像から除く操作を含む、請求項1に記載の光学的測定方法。
- 広帯域光源から出力される広帯域光を2分岐して参照光および測定光とし、前記参照光を反射体に照射したときに該反射体で生じる反射光と、前記測定光を対象物に照射したときに該対象物で生じる拡散反射光とを互いに干渉させ、当該干渉光スペクトルを取得する第1ステップと、
前記干渉光スペクトルに分散の影響を変化させる関数を乗じ、当該関数を乗じた干渉光スペクトルのフーリエ変換の結果に基づき、前記測定光の光路上における位置であって、前記参照光の光路上における前記反射体の位置に対応する位置を測定原点とするとともに、当該測定原点よりも前記広帯域光源の逆側を測定範囲とする光断層画像を取得する第2ステップと、
前記光断層画像の鮮明さに関する指標値を算出する第3ステップと、
前記測定原点よりも前記広帯域光源側で生じる前記拡散反射光に対応する像がフーリエ変換により前記測定原点で折り返されて形成される折り返し像の前記光断層画像における位置に基づいて前記測定光と前記参照光との光路長差を調整することで、前記折り返し像が前記第3ステップにおいて算出される前記指標値に与える影響を低減する第4ステップと、
を備え、
前記第4ステップにおいて前記光路長差の調整を行った後に前記第1ステップを行うとともに、前記関数を様々に設定して第2ステップおよび第3ステップを複数回繰り返し、複数の前記関数のうち前記指標値を最大とさせる関数を分散補償関数に決定し、当該分散補償関数を用いて前記第2ステップを行って取得される光断層画像を分散補償後の光断層画像とする、光学的測定方法。
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