JP2015129533A - グランドパッキン - Google Patents
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PTFE材料によるグランドパッキンの場合、最高使用圧力は比較的低いため、高圧条件にて使用する場合は、「はみ出し」が生じて漏洩につながるおそれがあった。この「はみ出し」とは、例えば、パッキン押えによる押圧力により、スタフィンボックスの底部とステムとの間の隙間や、グランド押えとステム及びスタフィンボックスとの間の隙間に、グランドパッキンが部分的に変形して入り込む現象である。
この場合、一般にグランドパッキンに使用されるフッ素樹脂粉末の典型的な例としては、PTFE粒子が水分散されたものであるPTFEディスパージョンが挙げられる。
良好なシール性、低摩擦性、摺動耐久性を発揮するには、少なくともパッキン本体の外周辺部にPTFEディスパージョンが含浸されておれば良い。
つまり、余分なPTFEディスパージョンが含浸されることがないから、昇温降温に伴うPTFEの膨張収縮が少なくなり、そのことに起因した漏洩が回避されるようになる。
従って、グランドパッキンとして組み込む機器のグランド部の深さを従来に比べて浅くできるので、機器の省スペース化や軽量化を実現可能とさせることができる。
従って、グランドパッキンの締付時や増し締め時にシリコーンオイルがバルブステムとパッキン内周面との間に染み出るので、摩擦力を低減してPTFE層の耐摩耗性が向上し、長期に亘り良好なシール性能を維持することができる。
従って、シリコーンオイルの重量比が0.4%〜1.2%であることにより、応力緩和を少なくしながら良好な摩擦力の低減効果が得られる利点がある。
詳しくは、膨張黒鉛ヤーン3の編組による編組体で形成されるパッキン本体1に、PTFEディスパージョンを含浸することでグランドパッキンAが構成されている。PTFEディスパージョンの含浸による表面層2は、内周面2a、外周面2b、一方の環状面2c、他方の環状面2dのそれぞれであり、それらの総称でもある。
なお、グランドパッキンAは、パッキン本体1にPTFEディスパージョンが含浸された状態における焼成処理がなされたものでも良い。
(実施形態2):パッキン本体1は、これにPTFEディスパージョンが含浸された状態における焼成処理がなされたものであるグランドパッキンA。例えば、PTFEディスパージョンが含浸された紐状体4〔図3(b)参照〕を予め焼成処理し、それからダイモールド成型などによってリング状に形成してグランドパッキンAを構成する。また、図3(b)に示す紐状体4をダイモールド成型などによってリング状に形成し、それから焼成処理されたグランドパッキンAとする構成でも良い。
(実施形態4):パッキン本体1は、焼成処理後にシリコーンオイルが含浸されている構成のグランドパッキンA。
(実施形態5):パッキン本体1は、焼成処理後にシリコーンオイルが重量比(グランドパッキンAの全体重量に対する重量比)が0.4%〜1.2%に設定される状態に含浸されている構成のグランドパッキンA。
(実施形態6):パッキン本体1に含浸されるPTFEディスパージョンとして、黒鉛が含まれているものが使用されているグランドパッキンA。
(実施形態7):内周面のPTFE層の表面に油系溶剤(例:灯油)と共に防食材(例:亜硝酸ナトリウム)が塗布されているグランドパッキンA。
(1)PTFEの熱膨張率(100×10−6/℃)は、弁などの機器に使用される金属の熱膨張率(10〜20×10−6/℃)やパッキンに使用される膨張黒鉛の熱膨張率(0.4〜27×10−6/℃)に比べて大きい。
膨張黒鉛ヤーンにPTFEディスパージョンを含浸し、これを編組した編組体であるグランドパッキンは、パッキン断面中心部にまでPTFEが含浸される。そのため、その中心部にまで及ぶ余分なPTFEも、パッキン使用時における昇温・降温に伴って膨張・収縮し、漏洩が生じる。
(3)PTFEディスパージョンに含まれる界面活性剤がバルブのステムを腐食させ、そのためにシール性が損なわれる、という問題もある。
(4)PTFEは容易にクリープする。そのため、PTFEを備えるグランドパッキンは、パッキンとしての使用時に応力緩和が起き、その結果、シール性能が損なわれる。
しかしながら、近年、使用が増加しつつあるボール弁やバタフライ弁などのクォーターターン弁は、その構造や特性からグランド部においても省スペース化が求められてきており、それに対処する必要が生じてきている。
未焼成のPTFE層のPTFE粒子間には隙間があるので、そこに潤滑剤を含浸させると、潤滑剤はPTFE粒子間に入り込んでPTFE粒子の粘着力を阻害させ、容易にPTFE層のクリープが発生するようになる。
(A)PTFEディスパージョンは、グランドパッキンとしての外周辺部(表面部分)に含浸される。一方、編組された編組体であるパッキン本体は、ヤーンが交絡しているため、PTFEディスパージョンはパッキン本体の断面中心部にまでは含浸されない。良好なシール性、低摩擦性、摺動耐久性を発揮するグランドパッキンとするには、少なくともパッキン本体の外周辺部にPTFEディスパージョンが含浸されておれば良い。余分なPTFEディスパージョンが含浸されていないため、昇温降温後のPTFEの膨張収縮が少なく、漏洩しないようになる。
(B)焼成によりPTFE高分子粒子どうしが融着し強固なPTFE層が形成する。そのため、バルブのステムとパッキン内周面との摺動部において、PTFE層の耐摩耗性が向上することにより、長期に亘りシール性能を維持できる。膨張黒鉛は、PTFEを焼成する温度に対して耐熱性を有する。
(C)焼成処理により、PTFEディスパージョンに含まれる界面活性剤が分解される。(D)焼成することで、PTFEのクリープが低減されるため、グランドパッキンとしての使用時に応力緩和が起こり難い。
(F)焼成によりPTFE高分子粒子どうしが融着し、強固なPTFE層を形成する。そのため、グランドパッキンの剛性が増加し、パッキン高さがパッキン幅の半分といった具合にパッキン幅より少ない寸法であっても、形状保持特性に優れるものとなる。また、グランドパッキンを組み込む機器のグランド深さを、従来の半分といった具合に、従来よりも小さくできるので、機器の省スペース化、軽量化が実現できる。
(G)シリコーンオイルは焼成されないため、シリカを生成せず、また、焼成PTFE高分子粒子間に入り込まない。パッキン締付時及び増し締め時にシリコーンオイルがバルブステムとパッキン内周面との間に染み出て、摩擦力を低減し、PTFE層の耐摩耗性が向上し、長期に亘りシール性を維持できる。
(H)グランドパッキンの全体に対するシリコーンオイルの比が、0.4重量%未満の場合は摩擦力低減の効果が少なくなり、1.2%を超える場合は染み出し量が多くなって応力緩和が大きくなる傾向のあることが知見された。従って、重量比を0.4%〜1.2%とすれば、十分な摩擦力低減効果と少ない応力緩和との両立を高次元で発揮させることが可能になる。
(E)PTFEの耐摩耗性の向上。
(I)より一層の防食効果が得られる。
図5に摺動抵抗評価を行うための試験機(摺動抵抗評価試験機)Bの概略構成を示す。この試験機Bは、油圧シリンダ6を備える油圧ユニット5、軸荷重測定用の第1荷重変換器7、締付圧測定用の第2荷重変換器8、パッキンボックス9、加熱ヒーター10、制御部11などを有して構成されている。
シール装置Sに供給されるシール対象流体の圧を検出する圧力計13、その圧を制御用信号に変換する圧力変換器14、シール対象流体の温度を検出する温度センサ15が装備されている。
制御部11は、データロガー18、ペン書き記録計19、動歪計20などを有して構成されており、締付圧、流体圧力、軸荷重の記録などが行われる。
パッキンボックス9の内部構造は、詳細は割愛するが、複数のグランドパッキンが軸心方向で直列に配備されてシール装置Sが形成されている。
図5に示す試験機Bによる摺動耐久試験は、次のとおりの条件にて行った。即ち、グランドパッキン寸法:φ32(内径)×φ48(外径)×t8(厚み)、グランドパッキン本数:6本(6個)、締付面圧:20N/mm2、ステム速度(ステム移動速度)10mm/sec、ステム距離(ステム移動距離):50mm/1往復、である。
後述する示差走査熱量測定は、試験速度(昇温速度):10℃/分、供試体(試料)質量:10mg、雰囲気:窒素ガス、という条件にて行った。なお、示差走査熱量測定とは、試料と基準物質との間の熱量の差を計測することで、融点や転移点などを測定する熱分析の手法である。一定の熱を与えながら、基準物質と試料の温度を測定して、試料の熱物性を温度差として捉え、試料の状態変化による吸熱反応や発熱反応を測定する。
実施例1によるグランドパッキンAについて説明する。
平行に引き揃えた複数本の膨張黒鉛製テープ(図示省略)の外周を、ステンレス細線(図示省略)によって編組被覆することにより、基本的構成要素として1本の膨張黒鉛ヤーン3(図1,2を参照)が形成されている(特開2005−3056号公報の段落0031,0032を参照)。
膨張黒鉛は緻密な組織構造を有し、成形性および形状保持性に優れた材料であり、ステンレス細線の編成被覆により、いわゆるニット編み補強として強度向上処理が施された構成の膨張黒鉛ヤーン3とされている。
前記紐状体4を、処理温度340℃〜380℃にて2〜5時間加熱することにより、PTFE粒子を焼成する。この加熱後の紐状体4の示差走査熱量測定を行った結果、即ち、実施例1による場合の結果を図6(c)に示す。
そして、前記加熱後の紐状体4をリング状にダイモールド成型し、図1,2に示される如くのグランドパッキンAを作製した。
図5に示すように、弁を模した前述の試験機Bに実施例1によるグランドパッキンAを装填し、図9に示す条件のとおり、温度を昇温させた後、降温させた(温度サイクル負荷)。その後、窒素ガスを負荷した後の漏洩量を測定した。比較例1(後述)のものに比べて、温度サイクル負荷後の漏洩量は少なく、優れたシール性を示している。
図5に示す試験機Bに実施例1によるグランドパッキンAを装填し、前述の段落「0044」に示される条件にてステム17を往復動させ、そのときのステム17の摺動荷重の変化を記録する、という摺動耐久試験を行った。ここでは、摺動荷重が往復動1回目の摺動荷重の1.5倍を超えた往復回数を耐久摺動回数とした。
その結果、実施例1によるグランドパッキンAでは、図7,8に示されるように、耐久摺動回数は50,000回以上であった(50,000回までに耐久摺動回数に達せず、試験を終了した)。
また、焼成により内部のPTFE粒子どうしが融着し、強固なPTFE層を形成する。そのため、被シール流体であるガスは容易に通過し難く、シール性能が向上した。
実施例2によるグランドパッキンAについて説明する。
前述の実施例1における紐状体4(PTFEディスパージョンが重量比5%〜25%で含浸されている紐状体4)を340℃〜380℃にて1時間加熱し、PTFE粒子を焼成した。この加熱後の紐状体4を示差走査熱量測定を行い、その結果を図6(b)に示す。二つの吸熱ピークは、327℃と340℃であった。
1.黒鉛
実施例1のグランドパッキンAにおいて、PTFEディスパージョンに代えて、黒鉛ディスパージョンを1重量%でPTFEディスパージョンに混合させた混合液(黒鉛を有するPTFEディスパージョン)を用いたものを試した。その結果、耐摩耗性が向上した。
実施例1に記載の手段で作製された紐状体4(PTFEディスパージョンが重量比5%〜25%で含浸されている紐状体4)を、シリコーンオイルに浸漬させ、紐状体4におけるシリコーンオイルの重量比が0.4%〜1.2%となる状態にシリコーンオイルを含浸させる。このシリコーンオイルの含浸された紐状体4を使ってリング状のグランドパッキンAを作製する。
シリコーンオイル含浸グランドパッキンAでは、機器に組付けての締付時及び増し締め時に潤滑液(シリコーンオイル)がバルブステムとパッキン内周面との間に染み出し、摩擦力を低減させてPTFE層の耐摩耗性が向上し、長期に亘り所期のシール性能が維持されることが知見された。
従って、シリカに変化し難く、かつ、摩擦力の低減効果をより有効に得るには、シリコーンの重量比を0.4%〜1.2%に設定するのが望ましい。
実施例1に記載の手段で作製されたグランドパッキンAの内周面に、適当な溶剤に希釈された亜硝酸ナトリウムを塗布したものを試作した。
焼成によりPTFE粒子どうしが融着し強固なPTFE層を形成するため、防食剤を塗布した場合においても防食剤はPTFE層の表面に位置し、長期間その機能を発揮することが知見された。
特開2007−138315号公報にて示されるヤーン(膨張黒鉛編組糸)をPTFEディスパージョンに浸漬させ、PTFE粒子を含浸させた。即ち、ここで言うヤーンは、「繊維材を編む又は組むことによって成る筒状部材内に、幅を厚みで除した値である縦横比が1〜5に設定される断面を有する繊維状膨張黒鉛を充填して形成されるヤーン」である。繊維材としては、インコネル線、ステンレス線等である。
図5に示す試験機Bに比較例1によるグランドパッキンAを装填し、図9に示す条件のとおり、温度を昇温させた後、降温させた(温度サイクル負荷)。その後、窒素ガスを負荷した後の漏洩量を測定した。実施例1のものに比べ、温度サイクル負荷後の漏洩量は多く、シール性に劣っている。
比較例2のグランドパッキンAは、実施例1のものにおいて焼成処理を行わなかったものである。即ち、「膨張黒鉛ヤーンの編組による編組体で形成されるパッキン本体1に、PTFEディスパージョンを含浸することでなるグランドパッキンA」である。
そして、図5に示す試験機Bにより、比較例2によるグランドパッキンの摺動耐久試験を行い、その結果を図7,8に示す。これらより、摺動耐久回数は20,000回であることが判った。
前述の比較例2による紐状体を、処理温度400℃にて1〜5時間加熱し、PTFE粒子を焼成した紐状体を作製した。この二次処理テープの示差走査熱量測定の結果は、図6(d)に示されるとおりである。この図6(d)から、吸熱のピークを示さず、従って、PTFEが分解されたことを確認した。この比較例3のものでは、上記の条件で加熱することによりPTFEは「分解」されてしまっており、本発明に言う「焼成」とは異なるものである。
h 高さ寸法
w 幅寸法
Claims (5)
- 膨張黒鉛ヤーンの編組による編組体で形成されるパッキン本体によりなるとともに、前記パッキン本体は、PTFEディスパージョンが含浸された状態における焼成処理がなされたものであるグランドパッキン。
- 前記パッキン本体は、その高さ寸法が幅寸法の2/5〜3/5に設定されている請求項1に記載のグランドパッキン。
- 前記パッキン本体は、前記焼成処理後にシリコーンオイルが含浸されたものである請求項1又は2に記載のグランドパッキン。
- 前記シリコーンオイルの重量比が0.4%〜1.2%に設定されている請求項3に記載のグランドパッキン。
- 前記PTFEディスパージョンには黒鉛が含まれている請求項1〜4の何れか一項に記載のグランドパッキン。
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