以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態は、モータ装置を車両に用いた例である。図1に示された車両10は、フロントウィンドガラス11を有している。また、車両10は、フロントウィンドガラス11を払拭する第1ワイパ装置12及び第2ワイパ装置13を備えている。第1ワイパ装置12と第2ワイパ装置13とは、車両10の幅方向で異なる位置に配置されている。第1ワイパ装置12と第2ワイパ装置13とは、概ね左右対称の構造であるため、以下、便宜上、第1ワイパ装置12について説明する。第1ワイパ装置12は、ピボット軸14を中心として揺動するワイパアーム15と、ワイパアーム15に取り付けられたワイパブレード16と、を有する。また、第1ワイパ装置12は、ワイパアーム15を駆動するモータ装置17を有している。モータ装置17は、ブラシレスモータ18と、ブラシレスモータ18の動力をピボット軸14に伝達する減速機構19と、を備えている。
ブラシレスモータ18は、図2〜図4に示すように構成されている。本実施形態におけるブラシレスモータ18は、有底円筒形状のモータケース20を有しており、モータケース20の内周に固定子としての電機子21が設けられている。電機子21は、ステータコア22と、ステータコア22に巻かれた電機子コイルV1,V2,U1,U2,W1,W2とを有する。ステータコア22は、導電性の金属板を積層したものであり、ステータコア22の内周には、複数、具体的には6個のティース23が円周方向に間隔をおいて設けられている。6個のティース23は、機械角60°の間隔で配置されている。電機子コイルV1,V2,U1,U2,W1,W2は、6個のティース23に別々に巻かれている。
電機子コイルV1,V2はV相に対応し、電機子コイルU1,U2はU相に対応し、電機子コイルW1,W2はW相に対応する。そして、図4では、電機子21の時計回りに、電機子コイルU1、電機子コイルV1、電機子コイルW1、電機子コイルU2、電機子コイルV2、電機子コイルW2の順序で設けられている。電機子コイルU1と電機子コイルU2とは、機械角180°の位置関係にあり、電機子コイルV1と電機子コイルV2とは、機械角180°の位置関係にあり、電機子コイルW1と電機子コイルW2とは、機械角180°の位置関係にある。
電機子21の構成を、図5及び図6により説明する。電機子コイルU1と電機子コイルU2とが直列に接続され、電機子コイルV1と電機子コイルV2とが直列に接続され、電機子コイルW1と電機子コイルW2とが直列に接続されている。また、電機子コイルU1の端部Uaと、電機子コイルW2の端部Ubとを、端子24により結線している。また、電機子コイルU2の端部Vbと、電機子コイルV1の端部Vaとを、端子25により結線している。さらに、電機子コイルW1の端部Waと、電機子コイルV2の端部Wbとを、端子26により結線している。このように、ブラシレスモータ18は、6本の電機子コイルV1,V2,U1,U2,W1,W2を、デルタ結線により接続している。
一方、ブラシレスモータ18は回転子27を有し、回転子27は、電機子21の内側に設けられている。ブラシレスモータ18は、回転子27が、固定子としての電機子21の内側に配置されたインナロータ形の構造である。回転子27は、ロータ軸28と、ロータ軸28の外周にロータコア30を介して固定した4極の永久磁石29N,29Sとを有する。2個の永久磁石29Nの極性はN極であり、2個の永久磁石29Sの極性はS極であり、永久磁石29Nと永久磁石29Sとが、ロータ軸28の円周方向に沿って交互に配置されている。ブラシレスモータ18は、永久磁石の数は4極、電機子コイルの数は6本であり、4極6スロット構造ある。
このように、ブラシレスモータ18は、SPM(Surface Permanent Magnet)構造である。SPM構造は、ロータコア30の外周面に永久磁石29N,29Sを固定したものである。ロータコア30は、鉄系の磁性材料で成形されている。また、ロータ軸28は、複数、つまり、2個の軸受49により回転可能に支持されている。
一方、モータ装置17は、減速機構19を収容するギヤケース31を備えおり、ギヤケース31とモータケース20は、図示しない締結部材により固定されている。ロータ軸28は、長さ方向の一部がモータケース20の内部に配置され、残りの部分がギヤケース31内に配置されている。ロータ軸28のうちギヤケース31内に配置された部分の外周に、ウォーム32が形成されている。ギヤケース31内にはウォームホイール33が設けられている。このウォームホイール33の外周にはギヤ33aが形成されており、ギヤ33aとウォーム32とが噛合されている。
ピボット軸14はウォームホイール33と同心状に配置されており、ピボット軸14はウォームホイール33と一体回転する。ウォーム32及びギヤ33aは、本実施形態における減速機構19である。この減速機構19は、回転子27の動力をピボット軸14に伝達する際に、回転子27の回転数(入力回転数)よりもピボット軸14の回転数(出力回転数)を低くする機構である。本実施形態における回転数は、単位時間あたりの回転数であり、回転速度と同義である。
さらに、図3において、ギヤケース31の上部には、図示しない軸孔が設けられている。ピボット軸14におけるウォームホイール33が固定された端部とは反対側の端部は、ギヤケース31の軸孔を経由して外部に露出している。ワイパアーム15は、ピボット軸14におけるギヤケース31の外部に露出した部分に連結されている。
一方、ロータ軸28のうちギヤケース31内に配置された箇所には、センサマグネット34が取り付けられている。センサマグネット34は、ロータ軸28と一体回転する。センサマグネット34は円筒形状であり、センサマグネット34は、ロータ軸28の円周方向に沿って、N極とS極とが交互に並ぶように着磁されている。
ギヤケース31における軸孔とは反対側の部分には開口部が設けられている。この開口部は、ギヤケース31の内部にウォームホイール33、ピボット軸14等を挿入するために形成されたものである。そして、開口部を塞ぐアンダーカバー35が設けられている。アンダーカバー35はトレイ形状を有しており、そのアンダーカバー35とギヤケース31とにより取り囲まれた空間に、制御基板36が設けられている。
この制御基板36には、図6のように、ブラシレスモータ18を制御する駆動装置37が設けられている。駆動装置37は、6本の電機子コイルV1,V2,U1,U2,W1,W2に対する通電を制御するインバータ回路38を有する。インバータ回路38は、端子24,25,26に接続されている。また、アンダーカバー35にはコネクタ39が設けられており、外部電源40に接続された電源ケーブルをコネクタ39に接続することにより、外部電源40とインバータ回路38とが接続される。外部電源40は、車両10に搭載されたバッテリまたはキャパシタ等を含む。
また、インバータ回路38は、外部電源40から6本の電機子コイルV1,V2,U1,U2,W1,W2に至る電流の供給経路を、別々に接続または遮断する複数、つまり、6個のスイッチング素子38a〜38fを備えている。6個のスイッチング素子38a〜38fは、例えば、FET等の半導体素子により構成されている。より具体的には、U相に対応し、外部電源40の正極に接続される正極側のスイッチング素子38aと、U相に対応し、外部電源40の負極側に接続される負極側のスイッチング素子38dと、が設けられている。
さらに、V相に対応し、外部電源40の正極に接続される正極側のスイッチング素子38bと、V相に対応し、外部電源40の負極側に接続される負極側のスイッチング素子38eと、が設けられている。さらに、W相に対応し、外部電源40の正極に接続される正極側のスイッチング素子38cと、W相に対応し、外部電源40の負極側に接続される負極側のスイッチング素子38fと、が設けられている。
ここで、スイッチング素子38a,38b,38cは、互いに並列に接続され、スイッチング素子38d,38e,38fは、互いに並列に接続されている。また、スイッチング素子38aとスイッチング素子38dとが直列に接続され、スイッチング素子38bとスイッチング素子38eとが直列に接続され、スイッチング素子38cとスイッチング素子38fとが直列に接続されている。さらに、スイッチング素子38aのソース及びスイッチング素子38dのドレインは、端子24へ接続されている。さらに、スイッチング素子38bのソース及びスイッチング素子38eのドレインは、端子25へ接続されている。さらに、スイッチング素子38cのソース及びスイッチング素子38fのドレインは、端子26へ接続されている。
さらに、駆動装置37は、6個のスイッチング素子38a〜38fを制御する制御回路50を備えている。制御回路50は、CPU、RAM、ROM等を備えた公知のマイクロコンピュータである。また、駆動装置37は、PWM信号発生回路51を有しており、PWM信号発生回路51の信号は、制御回路50に入力される。この制御回路50は、6個のスイッチング素子38a〜38fを別々に制御する駆動信号を出力し、その駆動信号にPWM信号が重畳される。つまり、6個のスイッチング素子38a〜38fは、PWM制御により駆動されて各通電期間において、それぞれが断続的にオン・オフされる。
そして、6個のスイッチング素子38a〜38fが、別個にオンされる割合、すなわち、デューティ比を制御することにより、6本の電機子コイルV1,V2,U1,U2,W1,W2に供給する電流値が制御される。つまり、6本の電機子コイルV1,V2,U1,U2,W1,W2に給電される通電区間を、通電可能な全区間に対して0%〜100%の間で増減することができる。ここで、電機子コイルV1,V2,U1,U2,W1,W2のそれぞれに通電する波形を電気角で表したとき、前記「区間」は、電気角を意味する。
さらに、本実施形態におけるブラシレスモータ18は、スイッチング素子38aのオン及びオフを切り替え制御して、6本の電機子コイルV1,V2,U1,U2,W1,W2に対する通電の向きを反転させることにより、回転子27を正逆に回転させることが可能である。
制御基板36は、ピボット軸14の第1軸線A1に対して垂直な平面方向に沿って配置されている。第1軸線A1はピボット軸14が回転する際の中心でである。制御基板36には3個の検出センサ41,42,43が取り付けられている。3個の検出センサ41,42,43は共にホールICであり、3個の検出センサ41,42,43は、センサマグネット34と非接触で制御基板36に固定されている。本実施例では、検出センサ41がW相に対応するスイッチング信号を出力し、検出センサ42がV相に対応するスイッチング信号を出力し、検出センサ43がU相に対応するスイッチング信号を出力する。3個の検出センサ41,42,43は、制御基板36の平面視で図2のように、ロータ軸28の第2軸線B1と交差する方向に並べられている。第2軸線B1は、ロータ軸28が回転する際の中心である。
第2軸線B1に沿った方向で、3個の検出センサ41,42,43の配置範囲と、センサマグネット34の配置範囲とが、少なくとも一部で重なっている。また、制御基板36が水平に配置されていると仮定すると、図3のように、V相に対応する検出センサ42は、第2軸線B1の真下に配置されている。3個の検出センサ41,42,43は、第2軸線B1と交差する方向に等間隔で配置されている。また、検出センサ42は、検出センサ41と検出センサ43との間に配置されている。
3個の検出センサ41,42,43は、回転子27が回転してセンサマグネット34の磁極が移動するとスイッチング動作し、3個の検出センサ41,42,43は、それぞれスイッチング信号(出力信号)を別々に発生する。制御回路50は、3個の検出センサ41,42,43のスイッチング信号に基づいて、回転子27の回転位相及び回転数を検出することができる。回転子27の回転位相は、予め定めた位置を基準とする回転方向の角度、もしくは位置である。制御回路50は、3個の検出センサ41,42,43のスイッチング信号に基づいて、ワイパアーム50の動作負荷を推定する機能も有する。
さらに、車両10の室内にはワイパスイッチ44が設けられており、運転者がワイパスイッチ44を操作して低速モードまたは高速モードを選択すると、ワイパスイッチ44の操作信号は制御回路50に入力される。さらに、車両10の走行速度を検出する車速センサ45が設けられており、車速センサ45の検出信号が制御回路50に入力される。
さらに、制御回路50は、ブラシレスモータ18の回転子27の出力、つまり、回転数及びトルクを制御するために、6本の電機子コイルV1,V2,U1,U2,W1,W2に対する通電パターンのデータ等を記憶している。具体的に説明すると、制御回路50には、ワイパスイッチ44の操作信号、車速センサ45の検出信号、ワイパアーム15の作動負荷等、各種の条件に基づいて、インバータ回路38のスイッチング素子38a〜38fをオン・オフするタイミング、スイッチング素子38aをオンとする継続時間等を制御するデータ等が予め記憶されている。
ワイパアーム15の作動負荷は、具体的には、検出センサ41,42,43のスイッチング信号から推定可能である。制御回路50は、例えば、高速モードが選択されていると、高速モードにおけるワイパアーム15の目標払拭速度を達成するべき回転子27の目標回転数を求め、回転子27の実回転数が目標回転数となるように、通電制御を行う。制御回路50は、回転子27の実回転数が目標回転数にならない場合に、雪等によりワイパアーム15動作抵抗、すなわち、ワイパアーム15の作動負荷が増加していると推定することが可能である。
また、車速が異なると、ワイパアーム15が受ける風圧が変化するため、ワイパアーム15の作動負荷が異なる。さらに、フロントウィンドガラス11の傾斜角度が異なると、ワイパアーム15が受ける風圧が変化するため、ワイパアーム15の作動負荷が異なる。フロントウィンドガラス11の傾斜角度は、水平面に対するフロントウィンドガラス11の鋭角側の傾斜角度で表される。さらに、ワイパブレード16の長さが異なると、ワイパアーム15の作動負荷が異なる。
なお、ギヤケース31には、取り付け部46が複数、例えば3箇所設けられており、取り付け部46には、ぞれぞれ軸孔が設けられている。また、取り付け部46の軸孔に、それぞれ緩衝材47が取り付けられている。緩衝材47は、環状に成形された合成ゴムであり、ねじ部材が緩衝材47の孔47aに挿入されて、モータ装置17が車体48に取り付けられる。
次に、第1ワイパ装置12及び第2ワイパ装置13のそれぞれの動作を制御するために、モータ装置17で実行可能な制御例を説明する。モータ装置17の制御回路50は、ワイパスイッチ44の操作信号、あるいは、ワイパスイッチ44の操作信号以外の条件により、複数のスイッチング素子38aのオン・オフを制御する。また、制御回路50は、3個の検出センサ41,42,43の検出信号に基づいて、回転子27の回転位相を検出し、回転子27の回転位相に基づいた通電制御を行う。つまり、正極側のスイッチング素子38a,38b,38cを、所定の電気角で別々にオン・オフするとともに、負極側のスイッチング素子38d,38e,38fを、所定の電気角で別々にオン・オフして、電機子コイルU1,U2,V1,V2,W1,W2に対する通電状態を切り替えて相電流を転流させる。
上記の制御が繰り返されると、電機子21により回転磁界が形成され、回転子27が回転する。ブラシレスモータ18は、スイッチング素子38a〜38fのオン及びオフを切り替え制御して、電機子コイルU1,U2,V1,V2,W1,W2に対する通電の向きを反転させることにより、回転子27を正回転・停止・逆回転させることができる。回転子27の動力が、減速機構19を介してピボット軸14に伝達されると、ワイパアーム15が所定角度の範囲内で往復動作し、ワイパブレード16によりフロントウィンドガラス11が払拭される。
図1において、ワイパアーム15は、例えば、実線で示す下反転位置D1と、二点鎖線で示す上反転位置D2との間で往復動作する。上反転位置D2は、モータ装置17が取り付けられた車体48に対して下反転位置D1よりも遠い位置である。モータ装置17が取り付けられている箇所は、例えば、ルーバーの下方である。
また、ワイパアーム15が下反転位置から上反転位置D2に向けて動作する範囲が往路であり、ワイパアーム15が上反転位置D2から下反転位置D1に向けて動作する範囲が復路である。なお、ワイパアーム15が往路を動作する場合、図3に示す回転子27は、例えば、反時計回りに回転し、ワイパアーム15が復路を動作する場合、回転子27は時計回りに回転するものとする。
上記のように、制御回路50は、各スイッチング素子38a〜38fをオンまたはオフする電気角のタイミング、スイッチング素子38a〜38fをオンする電気角の区間等を制御することにより、回転子27の出力を制御できる。電気角のタイミングは、電気角のポイントと呼ぶことも可能である。ブラシレスモータ18は、電流値が高くなることに伴い回転子27の回転数が上昇する特性を有する。さらに、ブラシレスモータ18は、回転子27の回転数が上昇することに伴い、回転子27のトルクが低下する特性を有する。
さらに、本実施形態のブラシレスモータ18は、回転子27の出力、すなわち、回転数及びトルクを制御するにあたり、第1の通電制御、第2の通電制御としての弱め界磁制御、第3の通電制御を切り替えて実行可能である。第1の通電制御、弱め界磁制御、第3の通電制御は、ワイパスイッチ44の検出信号、車速センサ45の検出信号、ワイパアーム15の負荷、ワイパアーム15の動作方向等、各種の条件により切り替えられる。特に、弱め界磁制御は、第1の通電制御に比べて、回転子27の回転数を上昇させる要求がある場合に実行可能である。これに対して、第3の通電制御は、第1の通電制御に比べて、回転子27のトルクを上昇させる要求がある場合に実行可能である。すなわち、第3の通電制御は、フロントウィンドガラス11に積雪がある場合等のように、ワイパアーム15の動作負荷が高い場合に実行される。
第1の通電制御における各スイッチング素子38a〜38fの駆動パターンを、図7及び図8のタイムチャートにより説明する。図7は、ワイパアーム15が往路を動作する際におけるスイッチング素子38a〜38fの駆動パターンであり、図8は、ワイパアーム15が往路を動作する際におけるスイッチング素子38a〜38fの駆動パターンである。
図7及び図8の駆動パターンは、各検出センサ41,42,43から出力されるスイッチング信号の立ち上がりエッジ、または、立ち下がりエッジを起点として、6つの通電ステージST1〜ST6に分けられており、この場合、各通電ステージは予め定めた電気角(度)で区切られている。図7及び図8の例では、各通電ステージが電気角60°の範囲(区間)で区切られている。スイッチング信号の立ち上がりは、スイッチング信号がオフからオンに切り替わることを意味し、スイッチング信号の立ち下りは、スイッチング信号がオンからオフに切り替わることを意味する。
図7及び図8では、検出センサ41,42,43のスイッチング信号は、ぞれぞれオン区間が電気角180°に設定され、検出センサ41,42,43のスイッチング信号のオン区間が、互に電気角60°ずれるように設定されている。
図7はワイパアーム15の往路に対応する駆動パターンであり、U相に対応する検出センサ43のスイッチング信号が、電気角0°のタイミングでオンされ、かつ、電気角180°のタイミングでオフされている。U相に対応する検出センサ43のスイッチング信号がオンされている間に、電気角60°のタイミングで、W相に対応する検出センサ41のスイッチング信号がオンされている。このU相に対応する検出センサ43のスイッチング信号は、電気角240°のタイミングでオフされている。
さらに、W相に対応する検出センサ41のスイッチング信号がオンされている間に、電気角120°のタイミングで、V相に対応する検出センサ42のスイッチング信号がオンされている。このV相に対応する検出センサ42のスイッチング信号は、電気角300°のタイミングでオフされている。制御回路50は、検出センサ41,42,43のスイッチング信号に基づいて、スイッチング素子38a〜38fを以下のように制御する。
U相の正極側のスイッチング素子38aは、電気角30°のタイミングから、電気角150°のタイミングに至る電気角120°の区間で常時オンされ、電気角210°のタイミングから、電気角330°のタイミングに亘る電気角120°の区間では、オンとオフとが交互に切り替えられている。また、U相の負極側のスイッチング素子38dは、電気角210°のタイミングから、電気角330°のタイミングに亘る電気角120°の区間において、オンとオフとが交互に切り替えられている。
また、V相の正極側のスイッチング素子38bは、電気角330°のタイミングから、電気角90°のタイミングに亘る電気角120°の区間において、オンとオフとが交互に切り替えられている。さらに、V相の正極側のスイッチング素子38bは、電気角150°のタイミングでオンされ、電気角270°のタイミングでオフされるまでの間、常時オンされている。一方、V相の負極側のスイッチング素子38eは、電気角330°のタイミングから、電気角90°のタイミングに亘る電気角120°の区間において、オンとオフとが交互に切り替えられている。
さらに、W相の正極側のスイッチング素子38cは、電気角270°のタイミングから、電気角30°のタイミングに亘る電気角120°の区間において、常時オンされている。さらに、W相の正極側のスイッチング素子38cは、電気角90°のタイミングから電気角210°のタイミングに亘る電気角120°の区間でオンとオフとが交互に切り替えられている。さらに、W相の負極側のスイッチング素子38cは、電気角90°のタイミングから電気角210°のタイミングに亘る電気角120°の区間でオンとオフとが交互に切り替えられている。
一方、図8はワイパアーム15の復路に対応する駆動パターンであり、U相に対応する検出センサ43のスイッチング信号が、電気角0°のタイミングでオンされ、かつ、電気角180°のタイミングでオフされている。U相に対応する検出センサ43のスイッチング信号がオンされている間に、電気角60°のタイミングで、V相に対応する検出センサ42のスイッチング信号がオンされている。このV相に対応する検出センサ42のスイッチング信号は、電気角240°のタイミングでオフされている。
さらに、V相に対応する検出センサ42のスイッチング信号がオンされている間に、電気角120°のタイミングで、W相に対応する検出センサ41のスイッチング信号がオンされている。このW相に対応する検出センサ41のスイッチング信号は、電気角300°のタイミングでオフされている。制御回路50は、検出センサ41,42,43のスイッチング信号に基づいて、スイッチング素子38a〜38fを以下のように制御する。
U相の正極側のスイッチング素子38aは、電気角30°のタイミングから、電気角150°のタイミングに至る電気角120°の区間で、オンとオフとが交互に切り替えられる。また、電気角210°のタイミングから、電気角330°のタイミングに亘る電気角120°の区間では、スイッチング素子38aが常時オンされている。これに対して、U相の負極側のスイッチング素子38dは、電気角30°のタイミングから、電気角1500°のタイミングに亘る電気角120°の区間において、オンとオフとが交互に切り替えられている。
また、V相の正極側のスイッチング素子38bは、電気角90°のタイミングから、電気角210°のタイミングに亘る電気角120°の区間において、常時オンされている。さらに、V相の正極側のスイッチング素子38bは、電気角270°のタイミングから、電気角30°のタイミングに至る電気角120°の区間において、オンとオフとが交互に切り替えられる。一方、V相の負極側のスイッチング素子38eは、電気角270°のタイミングから、電気角30°のタイミングに至る電気角120°の区間において、オンとオフとが交互に切り替えられる。
さらに、W相の正極側のスイッチング素子38cは、電気角330°のタイミングから、電気角90°のタイミングに亘る電気角120°の区間において、常時オンされている。さらに、W相の正極側のスイッチング素子38cは、電気角150°のタイミングから電気角270°のタイミングに亘る電気角120°の区間でオンとオフとが交互に切り替えられている。さらに、W相の負極側のスイッチング素子38fは、電気角150°のタイミングから電気角270°のタイミングに亘る電気角120°の区間でオンとオフとが交互に切り替えられている。
次に、第2の通電制御である弱め界磁制御における各スイッチング素子38a〜38fの駆動パターンを、図9に基づいて説明する。弱め界磁制御は、ワイパアーム15が往路を動作する場合に実行され、ワイパアーム15が復路を動作する場合は、第1の通電制御が実行される。図9においても、図7と同様に通電ステージST1〜通電ステージST6及び電気角0°〜電気角360°が示されている。図9において、検出センサ41〜43のスイッチング信号のオン・オフタイミングは、図7におけ検出センサ41〜43のスイッチング信号のオン・オフタイミングと同じである。
図9はワイパアーム15の往路に対応する各スイッチング素子38a〜38fの駆動パターンであり、図9に示すスイッチング素子38a〜38fの制御タイミングは、図7に示すスイッチング素子38a〜38fの制御タイミングに比べて、電気角30°の区間分、早められて、つまり、進角されている。
まず、U相の正極側のスイッチング素子38aは、電気角15°のタイミングから、電気角135°のタイミングに至る電気角120°の区間で常時オンされ、電気角195°のタイミングから、電気角315°のタイミングに亘る電気角120°の区間では、オンとオフとが交互に切り替えられている。また、U相の負極側のスイッチング素子38dは、電気角195°のタイミングから、電気角315°のタイミングに亘る電気角120°の区間において、オンとオフとが交互に切り替えられている。
また、V相の正極側のスイッチング素子38bは、電気角315°のタイミングから、電気角75°のタイミングに亘る電気角120°の区間において、オンとオフとが交互に切り替えられている。さらに、V相の正極側のスイッチング素子38bは、電気角135°のタイミングでオンされ、電気角255°のタイミングでオフされるまでの間、常時オンされている。一方、V相の負極側のスイッチング素子38eは、電気角315°のタイミングから、電気角75°のタイミングに亘る電気角120°の区間において、オンとオフとが交互に切り替えられている。
さらに、W相の正極側のスイッチング素子38cは、電気角255°のタイミングから、電気角15°のタイミングに亘る電気角120°の区間において、常時オンされている。さらに、W相の正極側のスイッチング素子38cは、電気角75°のタイミングから電気角195°のタイミングに亘る電気角120°の区間でオンとオフとが交互に切り替えられている。さらに、W相の負極側のスイッチング素子38cは、電気角75°のタイミングから電気角195°のタイミングに亘る電気角120°の区間でオンとオフとが交互に切り替えられている。
上記の弱め界磁制御は、第1の通電制御に比べて、電機子21が形成する磁界を弱くする制御である。この弱め界磁制御を行うと、電機子コイルU1,U2,V1,V2,W1,W2に生じる逆起電力が減少し、回転子27の回転数が上昇する。図10は、ブラシレスモータ18の特性を示す線図である。図10においては、縦軸にブラシレスモータ18の回転数が示され、横軸にブラシレスモータ18のトルクが示されている。また、図10には、低速モード用特性の一例、及び高速モード特性の一例が示されている。低速モードと高速モードとの切り替えは、運転者がワイパスイッチ44を操作して行う。
本実施形態のブラシレスモータ18は、その定格を設定するにあたり、図10の低速用モード特性に対応する回転数及びトルクを得ることができるように、例えば実線で示す位置に単体特性が存在している。このため、低速モードが選択されていると、第1の通電制御を実行することにより、単体特性以下の範囲内で、要求されている回転数及びトルクを得ることができる。
単体特性は、車両10の実車速が基準車速以下であるときの目標出力、つまり、低速モードを満足する特性である。見掛け上の特性は、車両10の実車速が基準車速を超えたときの目標出力、つまり、高速モード用特性を満足する特性である。目標出力は、回転子27の回転数及びトルクで表される。目標出力を決定する条件は、ワイパスイッチ44の検出信号、車速センサ45の検出信号、ワイパアーム15の負荷等、各種の条件を含む。
これに対して、例えば、高速モードが選択されて、回転子27に対して要求されるトルク及び回転数が単体特性を超えたときは、制御回路50が弱め界磁制御を実行することにより、単体特性を超える回転数及びトルクを得ることができる。これにより、ブラシレスモータ18の特性は、見かけ上、図10に一点鎖線で示す位置にあることと同等となる。
すなわち、ブラシレスモータ18は、設計上、低速モードを基準として定格を決定することができ、ブラシレスモータ18の体格をなるべく小さくすることができる。そして、電流値を変えずにブラシレスモータ18の回転数を上昇させて、トルクを上昇させることができるということは、トルク定数が相対的に大きくなることを意味する。言い換えれば、本実施形態のブラシレスモータ18は、より少ない消費電力でなるべく高トルクを発生することができ、モータ効率が向上する。
次に、第3の通電制御におけるスイッチング素子38a〜39fの駆動パターンを、図11に基づいて説明する。第3の通電制御は、ワイパアーム15が往路を動作する場合に実行され、ワイパアーム15が復路を動作する場合は、第1の通電制御が実行される。制御回路50は、ワイパアーム15が往路または復路のいずれを動作しているかを、回転子27の回転方向に基づき検出する。
図11においても、図7と同様に通電ステージST1〜通電ステージST6及び電気角0°〜電気角360°が示されている。図11において、検出センサ41〜43のスイッチング信号のオン・オフタイミングは、図7におけ検出センサ41〜43のスイッチング信号のオン・オフタイミングと同じである。
図11に示すスイッチング素子38a〜38fの制御タイミングは、図7に示すスイッチング素子38a〜38fの制御タイミングに比べて、電気角30°の区間分、進角されている。この点は弱め界磁制御と同じである。
まず、U相の正極側のスイッチング素子38aは、電気角15°のタイミングから、電気角165°のタイミングに至る電気角150°の区間で常時オンされ、電気角195°のタイミングから、電気角345°のタイミングに亘る電気角150°の区間では、オンとオフとが交互に切り替えられている。また、U相の負極側のスイッチング素子38dは、電気角195°のタイミングから、電気角345°のタイミングに亘る電気角150°の区間において、オンとオフとが交互に切り替えられている。
また、V相の正極側のスイッチング素子38bは、電気角315°のタイミングから、電気角105°のタイミングに亘る電気角150°の区間において、オンとオフとが交互に切り替えられている。さらに、V相の正極側のスイッチング素子38bは、電気角135°のタイミングでオンされ、電気角285°のタイミングでオフされるまでの電気角150°の区間で、常時オンされている。一方、V相の負極側のスイッチング素子38eは、電気角315°のタイミングから、電気角105°のタイミングに亘る電気角150°の区間において、オンとオフとが交互に切り替えられている。
さらに、W相の正極側のスイッチング素子38cは、電気角255°のタイミングから、電気角45°のタイミングに亘る電気角150°の区間において、常時オンされている。さらに、W相の正極側のスイッチング素子38cは、電気角75°のタイミングから電気角225°のタイミングに亘る電気角150°の区間でオンとオフとが交互に切り替えられている。さらに、W相の負極側のスイッチング素子38cは、電気角75°のタイミングから電気角225°のタイミングに亘る電気角150°の区間でオンとオフとが交互に切り替えられている。
このように、第3の通電制御は、スイッチング素子38a〜38fを、それぞれオンする電気角150°の区間は、第1の通電制御及び弱め界磁御においてスイッチング素子38a〜38fをそれぞれオンする電気角120°の区間よりも電気角30°分長い。すなわち、電気角120°の区間の前後において電気角15°分ずつ長い。
次に、制御基板36に検出センサ41〜43を取り付けるにあたり、取り付け位置に誤差が生じて検出センサ41〜43同士の相互の距離が、目的とする距離とは異なる場合を想定する。このような場合に、検出センサ41〜43のスイッチング信号に基づいて回転子27の回転位置を推定すると、回転子27の実際の回転位置と、推定される回転位置とに差が生じる。このため、検出センサ41〜43のスイッチング信号に基づいて、第1の通電制御、弱め界磁制御、第3の通電制御を実行すると、スイッチング素子38a〜38fをオン・オフするタイミング及び通電期間が、不適切になる可能性がある。
このような不都合を回避するために、駆動装置37は以下のような制御を行うことができる。まず、検出センサ41〜43のスイッチング信号の理想波形の一例を、図12のタイムチャートに示す。図12のタイムチャートは、便宜上、電気角を60°毎の区間で示してある。検出センサ41〜43のスイッチング信号の理想波形は、電気角60°毎にオンからオフにエッジが切り替わり、かつ、オフからオンにエッジが切り替わる。
駆動装置37は、検出センサ41〜43のスイッチング信号の位相ずれを補正するために、所定のスイッチング信号のエッジ切り替わりタイミングに基づいて、その後に生じるエッジ切り替わりタイミングを推定する。
例えば、エッジタイミングの切り替わり毎に、電気角120°先のエッジ切り替わりタイミングを算出するとすれば、U相の検出センサ43のスイッチング信号のエッジ切り替わりタイミングに基づき、V相の検出センサ43のスイッチング信号のエッジ切り替わりタイミングを推定する。また、V相の検出センサ43のスイッチング信号のエッジ切り替わりタイミングに基づき、W相の検出センサ43のスイッチング信号のエッジ切り替わりタイミングを推定する。さらに、W相の検出センサ43のスイッチング信号のエッジ切り替わりタイミングに基づき、U相の検出センサ43のスイッチング信号のエッジ切り替わりタイミングを推定する。
ここで、図13に示すタイムチャートにおいて、U相の検出センサ43のスイッチング信号のエッジ切り替えタイミングに基づき、電気角120°先におけるV相の検出センサ42における理想のエッジ切り替えタイミングの算出方法は、以下の式(1)、式(2)で表すことができる。
電気角120°分の時間(Δt120)=Δt180×0.67 ・・・式(1)
電気角120°先のタイミング(p120)=Δt120+FRT ・・・式(2)
ここで、0.67は、スイッチング信号のオンまたはオンが継続される電気角180°の区間に対する電気角120°分の係数、Δt180は、電気角180°の区間に対応する時間、FRTは、駆動装置37のタイマーで計測される時間である。つまり、検出センサ43のスイッチング信号のエッジ切り替わりタイミング毎に、そのタイミングから電気角120°後で生じるV相の検出センサ42のスイッチング信号における理想の切替わりタイミングを推定する。
本実施形態における駆動装置37は、理想の切り替わりタイミングをベースとして、実際に検出されるスイッチング信号の切り替わりタイミングとの位相差を電気角で求め、その位相差を補正することで、スイッチング信号の理想波形を求める。そして、駆動装置37は、第1の通電制御、弱め界磁制御、第3の通電制御を行う場合に、スイッチング信号の理想波形に基づいて、スイッチング素子38a〜38fのオン・オフを制御する。
次に、スイッチング信号の具体的な補正例を説明する。ここでは、V相に対応する検出センサ42のスイッチング信号を基準信号として、他の検出センサ41,43のスイッチング信号を補正する例を説明する。これは、検出センサ41〜43のうち、検出センサ42が最もセンサマグネット34に近く、安定した信号を検出できるからである。
(補正例1)
まず、図14のタイムチャートを参照して、V相の検出センサ42を基準として、U相の検出センサ43のスイッチング信号を補正する例を説明する。図14に示す検出センサ41〜43のスイッチング信号は、図7に示す検出センサ41〜43のスイッチング信号と同じとしてある。図14のタイムチャートは、便宜上、電気角を60°毎の区間で示してある。
検出センサ43のスイッチング信号の理想波形は、破線で示すように、電気角0°でオンされ、かつ、電気角180°の区間に亘ってオンが継続された後、電気角180°のタイミングでオフに切り替わる。つまり、検出センサ43のスイッチング信号の理想波形は、検出センサ42のスイッチング信号がオンされる電気角120°のタイミングから、電気角120°の区間遅れた電気角60°(p1)のタイミングでオフされる。
これに対して、検出センサ43のスイッチング信号の実際の波形が、実線のように、電気角30°のタイミングでオンされ、かつ、電気角180°の区間に亘ってオフされた後、電気角210°(p1´)のタイミングでオフされる場合を想定する。つまり、理想的な電気角180°と実際の電気角210°では、電気角30°の区間に相当する位相差(ずれ)がある。これは、式(3)で表すことができる。
位相差=p1´−p1 ・・・式(3)
駆動装置37は、検出センサ43のスイッチング信号で電気角180°の区間に相当する時間Δt180を、常時、検出している。そして、検出センサ42がオンされるタイミングから、検出センサ43がオフされるタイミングまでの理想的な電気角60°の区間に相当する理想時間Δt60を算出する。さらに、駆動装置37は、検出センサ42がオンされたタイミングから、検出センサ43がオフされるタイミングまでの実際の電気角60°の区間に相当する実測時間Δtreal60を算出する。さらに、駆動装置37は、理想時間Δt60と実測時間Δtreal60との差から、検出センサ43のスイッチング信号の調整値(補正値)AdjPhaseを求める。この処理は、式(4)、式(5)で表すことができる。
Δt60=Δt180×0.334 ・・・式(4)
AdjPhase=Δt60−Δtreal60 ・・・式(5)
ここで、0.334は、スイッチング信号のオンまたはオンが継続される電気角180°の区間に対する電気角60°の区間の係数である。
そして、駆動装置37は、検出センサ43のスイッチング信号のオフタイミングを、電気角210°から電気角30°の区間で進角させた電気角180°(p1)のタイミングに補正する処理を行う。つまり、検出センサ42のスイッチング信号がオンされたタイミングから、検出センサ43のスイッチング信号がオフされるタイミングまでの電気角の区間を、理想的な電気角60°にすることができる。
(補正例2)
次に、図15のタイムチャートを参照して、V相の検出センサ42を基準として、W相の検出センサ41のスイッチング信号を補正する例を説明する。図15に示す検出センサ41〜43のスイッチング信号は、図7に示す検出センサ41〜43のスイッチング信号と同じとしてある。図15のタイムチャートは、便宜上、電気角を60°毎の区間で示してある。検出センサ41のスイッチング信号の理想波形は、破線で示すように、電気角60°でオフされ、かつ、電気角180°の区間に亘ってオフにが維持された後、電気角240°でオンに切り替わる。つまり、検出センサ41のスイッチング信号の理想波形は、検出センサ42のスイッチング信号がオンされる電気角120°のタイミングから、電気角120°の区間遅れた電気角240°(p1)のタイミングでオフされる。
これに対して、検出センサ41のスイッチング信号の実際の波形が、実線のように、電気角30°のタイミングでオンされ、かつ、電気角180°の区間に亘ってオフされた後、電気角210°(p1´)のタイミングでオンされる場合を想定する。つまり、理想的な電気角240°と実際の電気角210°では、電気角30°の区間に相当する位相差(ずれ)がある。この位相差は、式(6)で表される。
位相差=p1−p1´ ・・・式(6)
駆動装置37は、検出センサ41のスイッチング信号で電気角180°の区間に相当する時間Δt180を、常時、検出している。そして、検出センサ42がオンされるタイミングから、検出センサ41がオフされるタイミングまでの理想的な電気角120°の区間に相当する理想時間Δt120を算出する。さらに、制御回路50は、検出センサ42がオンされたタイミングから、検出センサ41がオフされるタイミングまでの実際の電気角90°の区間に相当する実測時間Δtreal120を算出する。さらに、制御回路50は、理想時間Δt120と実測時間Δtreal120との差から、検出センサ41のスイッチング信号の調整値(補正値)AdjPhaseを求める。この処理は、式(7)で表される。
AdjPhase=Δt120−Δtreal120 ・・・式(7)
そして、制御回路50は、検出センサ41の補正されたスイッチング信号のオフタイミングである電気角240°から、電気角120°の区間をおいた電気角360°(p2)のタイミングで、検出センサ43のスイッチング信号をオンする。つまり、検出センサ41のスイッチング信号がオンされたタイミングから、検出センサ43のスイッチング信号がオンされるタイミングまでの電気角の区間を、理想的な電気角120°にすることができる。この処理は、式(8)で表される。
p2=p120+AdjPhase ・・・式(8)
この式(8)は、電気角210°のタイミングから、電気角120°(p120)おいたタイミングでオンされるスイッチング信号の電気角のタイミングP2を、調整値(補正値)AdjPhaseを用いて求めることを意味する。
なお、検出センサ41のスイッチング信号の調整前のオフタイミングである電気角210°から、電気角120°の区間をおいた電気角330°(p2´)のタイミングで検出センサ43のスイッチング信号をオンさせる補正を行うと、理想的な電気角360°とは電気角30°の区間に相当する位相差が生じる。
次に、上記した制御方法を、図16のフローチャートにより包括して説明する。駆動装置37は、U相の検出センサ43、V相の検出センサ42、W相の検出センサのうち、いずれかの検出センサのスイッチング信号のエッジ切り替わりタイミングを検出する(ステップS1)、と、ステップS2〜ステップS5の処理を実行する。
ステップS2の処理は、
Tn−3=Tn−2
で表され、ステップS3の処理は、
Tn−2=Tn−1
で表され、ステップS4の処理は、
Tn−1=Tn
で表される。
Tnは、電気角60°の区間に対応する最新の計測時間であり、Tn−1は、最新の計測時間よりも1回前の電気角60°に対応する計測時間であり、Tn−2は、最新の計測時間よりも2回前の電気角60°に対応する計測時間であり、Tn−3は、最新の計測時間よりも3回前の電気角60°に対応する計測時間である。つまり、ステップS2〜ステップS4では、1回前〜3回前の電気角60°の計測時間を更新することを意味する。駆動装置37は、ステップS5において電気角60°の区間に対応する最新の計測時間を取得する。
駆動装置37は、ステップS5に次ぐステップS6において、U相の検出センサ43のスイッチング信号のエッジが切り替わるタイミングであるか否かを判断する。駆動装置37は、ステップS6でYESと判断すると、ステップS7に進む。例えば、ステップS6でYESと判断される例は、図13の電気角360°のタイミングである。そして、駆動装置37は、ステップS7において、検出センサ43のスイッチング信号の電気角180°の区間に対応する時間Δt180から、電気角120°の区間に対応する時間Δt120を求める。
駆動装置37は、ステップS7に次いで、ステップS8〜ステップS11の処理を実行し、ステップS17の処理を実行して制御ルーチンを終了する。ステップS8〜ステップS11の処理は、図14のタイムチャートを参照して説明した処理である。まず、ステップS8の処理は、U相の検出センサ43のスイッチング信号の電気角180°の区間に対応する時間Δt180から、理想の電気角60°の区間に対応する理想の時間Δt60を求める処理である。
ステップS9の処理は、検出センサ42がオンされたタイミングから、検出センサ43がオフされるタイミングまでの実際の電気角60°の区間に相当する実測時間Δtreal60を求め処理である。
ステップS10の処理は、理想の電気角60°の区間と、実際の電気角60°の区間との位相差(ずれ)を求める処理である。この処理は、
位相差=Δt60−Δt60´
で表される。ここで、Δt60´は、式(5)におけるΔtreal60と同じ意味である。
また、ステップS11では、検出センサ43のスイッチング信号のオフタイミングを、電気角210°から電気角30°の区間で進角させた電気角180°(p1)のタイミングに補正する処理を行う。
ステップS17の処理は、基準となるスイッチング信号、補正後のスイッチング信号を用いて、第1の通電制御、弱め界磁制御、第3の通電制御のいずれかを選択して実行する。
一方、駆動装置37は、ステップS6でNOと判断すると、ステップS12において、検出センサ41のスイッチング信号が切り替わるタイミングであるか否かを判断する。駆動装置37は、ステップS12でYESと判断すると、ステップS13〜ステップS16の処理を実行し、ステップS17を経由して制御ルーチンを終了する。
ステップS13からステップS16の処理は、図15のタイムチャートを参照して説明した処理である。まず、ステップS13の処理は、W相の検出センサ41のスイッチング信号の電気角180°の区間に対応する時間Δt180から、理想の電気角120°の区間に対応する理想の時間Δt120を求める処理である。
ステップS14の処理は、直近において検出センサ42がオンされたタイミングから、検出センサ43がオンされるまでの理想の電気角120°の区間に対応する時間Δt120´を、
Δt120´=Tn−Tn−1
として求める処理である。
ステップS15の処理は、理想の電気角120°の区間と、実際の電気角90°の区間との位相差(ずれ)を求める処理である。この処理は、
位相差=Δt120−Δt120´
で表される。
また、ステップS16では、検出センサ41のスイッチング信号のオンタイミングを、電気角210°から電気角30°の区間で遅らせた電気角240°(p1)のタイミングに補正する処理を行う。
以上のように、モータ装置17は、検出センサ41,43のスイッチング信号を、検出センサ42のスイッチング信号に基づいて補正することが可能である。このため検出センサ41,42,43同士の距離が、理想の距離に対して誤差があった場合でも、補正されたスイッチング信号を用いて、第1の通電制御、弱め界磁制御、第3の通電制御を適切に行うことができる。すなわち、ワイパアーム15の動作位置、動作の向き、負荷、モード等の条件に合わせて、ブラシレスモータ18の回転子27の回転数、トルク等を得ることができる。したがって、モータ装置17の効率を向上することができ、騒音を抑制でき、振動を回避できる。
さらに、検出センサ41,42,43のスイッチング信号を補正可能であるため、検出センサ41,42,43を制御基板36の同一平面に配置することができる。このため、回転子の周囲に、3個の検出センサを取り付けるために専用のセンサ支持部材を設けずに済む。このため、専用のセンサ支持部材に設けられた3個の検出センサと、制御回路とを接続するリード線等を設けずに済む。したがって、モータ装置17の小型化、低コスト化を図ることができる。
上記の実施形態で説明した駆動装置37が、本発明の信号補正部、素子制御部に相当する。第1の通電制御において、スイッチング素子38aがオンされる電気角30°のタイミングが、本発明における第1のタイミングに相当し、弱め界磁制御、第3の通電制御でスイッチング素子38aがオンされる電気角15°のタイミングが、本発明における第2のタイミングに相当する。また、減速機構19、ピボット軸14が、本発明の動力伝達機構に相当する。さらに、ステップS7〜ステップS11、ステップS13〜ステップS16が、本発明における第1のステップに相当し、ステップS17が、本発明における第2のステップに相当する。
本発明の駆動装置は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、U相の検出センサのスイッチング信号を用いて、他の検出センサのスイッチング信号を補正することも可能である。また、W相の検出センサのスイッチング信号を用いて、他の検出センサのスイッチング信号を補正することも可能である。さらに、本発明のブラシレスモータは、電機子コイルがY字状に接続されているスター結線の構造を含む。本発明のブラシレスモータは、回転子が、IPM(Interior Permanent Magnet)構造であるものを含む。IPM構造は、ロータコアの内部に永久磁石を埋め込んだものである。また、第1の期間は電気角120°に限定されず、電気角120°未満でもよいし、電気角120°を超えてもよい。
本発明のブラシレスモータは、回転子が固定子の内側に配置されたインナロータ形の構造、回転子が固定子の外側に配置されたアウタロータ形の構造を含む。
本発明のワイパ装置は、ワイパブレードがリヤガラスを払拭するものを含む。即ち、本発明のワイパ装置におけるウィンドガラスは、フロントウィンドガラス及びリヤガラスを含む。また、本発明のワイパ装置は、2本のワイパアームを、1個のブラシレスモータにより単独で駆動する構成を含む。
本実施形態のブラシレスモータは、ワイパ装置を動作させるワイパモータの他、車両に設けられるパワースライドドア装置、サンルーフ装置、パワーウィンド装置等において、ドア、ルーフ、ガラス等の動作部材を動作させるために設けられるブラシレスモータを含む。