JP2015117169A - ガラスの製造方法および光学素子の製造方法 - Google Patents

ガラスの製造方法および光学素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、透過率に優れたガラスおよび光学素子の製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】 所定の調合工程、熔融工程、ガラス化工程および評価工程を含み、以上の工程を2サイクル以上繰り返すガラスの製造方法であって(nはサイクル数)、熔融工程では、熔融物中の水分量を高める操作を行い、目的とするガラスLxに求める特性をPxとし、第(n−1)サイクルで評価したガラスL(n−1)の特性をP(n−1)とし、PxとP(n−1)との差{P(n−1)−Px}をΔP(n−1)とした場合に、ΔP(n−1)が許容範囲内となるように、第nサイクルにおける組成Gnを調節する操作、または第nサイクルにおける熔融物中の水分量を調節する操作の少なくとも一方を行い、最終的に得られるガラスLは、TiO2、Nb2O5、WO3およびBi2O3の合計含有量が20モル%以上である、ガラスの製造方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、透過率に優れたガラスおよび光学素子の製造方法に関する。
近年、撮像光学系、投射光学系等の装置の高機能化、コンパクト化に伴い、有効な光学素子の材料として、高屈折率のガラスの需要が高まってきている。
高屈折率のガラスは、通常、ガラス成分としてTi、Nb、W、Bi等の高屈折率成分(以下、単に「高屈折率成分」ということがある)を多量に含有するのが一般的である。しかし、これら高屈折率成分は、ガラスの熔融過程で還元されやすく、還元された成分が可視光域の短波長側の光を吸収することにより、得られるガラスに着色(以下、「還元色」ということがある)が生じる問題がある。
このような問題を解決する手段として、特許文献1では、熔融ガラスを成形し、その後得られたガラスを熱処理して、ガラスの還元色を低減する技術が提案されている。
しかし、高屈折率成分を多く含むガラスほど、還元色が濃い傾向にあり、このような方法であっても、ガラスの透過率を十分に改善するには至っていなかった。
特開平6−345481号公報
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、透過率に優れたガラスおよび光学素子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意試験研究を重ねた結果、高屈折率成分を含むガラスにおいて、ガラス中の水分量を高めることにより、酸化性雰囲気中で熱処理した際のガラスの着色低減効果を大幅に向上できることを見出した。
このように、ガラス中の水分量を高める操作を行う程、熱処理した際のガラスの着色低減の効果は大きくなるが、一方でガラスの特性が変動しやすくなるという問題も発生することが判明した。そこで、本発明では、上記課題に加えて、ガラスの特性を所望の範囲に制御しながら安定してガラスを製造する方法を提供することを目的とする。
このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下の通りである。
[1] 原材料を調合して、組成Gを有するガラス原料を得る調合工程と、
上記ガラス原料を熔融容器内にて熔融する熔融工程と、
上記熔融物を冷却、ガラス化して、ガラスLを得るガラス化工程と、
上記ガラスLの特性Pを評価する評価工程と、を含み、
以上の工程を2サイクル以上繰り返すガラスの製造方法であって(nはサイクル数)、
上記熔融工程では、上記熔融物中の水分量を高める操作を行い、
目的とするガラスLに求める特性をPとし、第(n−1)サイクルで評価したガラスL(n−1)の特性をP(n−1)とし、上記Pと上記P(n−1)との差{P(n−1)−P}をΔP(n−1)とした場合に、ΔP(n−1)が許容範囲内となるように、上記第nサイクル(n≧2)における上記組成Gを調節する操作、または上記第nサイクル(n≧2)における上記熔融物中の水分量を調節する操作の少なくとも一方を行い、
最終的に得られるガラスLは、TiO、Nb、WOおよびBiから選択される少なくとも1つの成分を含み、その合計含有量が20モル%以上である、ガラスの製造方法。
[2] 上記第(n−1)サイクルと、上記第nサイクル(n≧2)とを、一連の工程として連続的に行う、上記[1]に記載のガラスの製造方法。
[3] 上記第(n−1)サイクルと、上記第nサイクル(n≧2)とを、独立した別の工程として行う、上記[1]に記載のガラスの製造方法。
[4] 上記組成Gを調節することなく、上記ΔP(n−1)を許容範囲内にするための操作として、上記第nサイクルにおける上記熔融物中の水分量を調節する操作を行う、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のガラスの製造方法。
[5] 上記熔融物中の水分量を調節することなく、上記ΔP(n−1)を許容範囲内にするため操作として、上記第nサイクルにおける上記組成Gを調節する操作を行う、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のガラスの製造方法。
[6] 上記特性PおよびPが、光学特性である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のガラスの製造方法。
[7] 上記特性PおよびPが、屈折率ndである、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のガラスの製造方法。
[8] 上記第nサイクル(n≧2)で得られるガラスLにおいて、屈折率に基づくΔP(n−1)が、±0.00050以内である、上記[7]に記載のガラスの製造方法。
[9] 上記最終的に得られるガラスLは、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物の少なくとも一方の成分を含み、その合計含有量が15モル%以上である、上記[1]〜[8]のいずれかに記載のガラスの製造方法。
[10] 上記最終的に得られるガラスLは、リン酸塩系ガラスである、上記[1]〜[9]のいずれかに記載のガラスの製造方法。
[11] 上記最終的に得られるガラスLは、光学ガラスである、上記[1]〜[10]のいずれかに記載のガラスの製造方法。
[12] 上記最終的に得られるガラスLを酸化性雰囲気下で熱処理する工程をさらに有する、上記[1]〜[11]のいずれかに記載のガラスの製造方法。
[13] 上記[1]〜[12]のいずれかに記載の製造方法により得られたガラスを用いる、光学素子の製造方法。
本発明によれば、高屈折率成分を含むガラスの透過率を劇的に改善できると共に、ガラスの特性も所望の範囲に調整できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る、ガラス原料の調合からガラスの製造までの工程をフローチャートで表したものである(フローチャート1−1)。 図2は、本発明の別の一実施形態に係る、ガラス原料の調合からガラスの製造までの工程をフローチャートで表したものである(フローチャート1−2)。 図3は、本発明の別の一実施形態に係る、ガラス原料の調合からガラスの製造までの工程をフローチャートで表したものである(フローチャート1−3)。 図4は、本発明の別の一実施形態に係る、ガラス原料の調合からガラスの製造までの工程をフローチャートで表したものである(フローチャート2−1)。 図5は、本発明の別の一実施形態に係る、ガラス原料の調合からガラスの製造までの工程をフローチャートで表したものである(フローチャート2−2)。 図6は、本発明の別の一実施形態に係る、ガラス原料の調合からガラスの製造までの工程をフローチャートで表したものである(フローチャート2−3)。
本発明に係るガラスの製造方法は、熔融工程において、熔融物(熔融ガラス)中の水分量を高める操作を行うにより、ガラスの水分量(βOHの値)を高めることを特徴としている。このような本実施形態に係る製造方法により得られたガラスは、含水量が高いため、熱処理による着色低減の効果が極めて優れている。特に、βOHの値が大きいガラスほど、短時間の熱処理により効率的に着色を改善できる。
しかし、ガラスのβOHの値を高めていくと、ガラスの特性が変動しやすくなるという問題が発生することが判明した。例えば、熔融工程において、熔融ガラスの水分量を高める処理として、熔融ガラスに水蒸気を付加する処理を行った場合には、行わなかった場合に比べて、屈折率が増加し、目的とするガラスの特性値からずれていく傾向にあることが確認された。また、このような熔融を行った後の熔融炉内では、多量の付着物(例えば、アルカリ土類金属元素等を含む付着物)の発生が確認された。
このような現象が起こる原因として、本発明者は、次のように推測している。例えば、熔融ガラスに水蒸気を付加する処理を行った場合、付加した水蒸気が熔融ガラス中に含まれる特定の成分(例えば、アルカリ土類金属成分等)と選択的に反応し、揮発性物質を生成する。
このような揮発性物質が、熔融ガラスから揮発し、その一部が炉内に付着しているものと考えられる。そのため、熔融ガラスから特定の成分が選択的に失われ、Ti、Nb、WおよびBi等の高屈折率成分の比率がガラス中で相対的に高まった結果、熔融ガラスに水蒸気を付加する処理を行って製造したガラスにおいては、屈折率の上昇が確認されたものと考えられる。
このような現象の発生は、アルカリ土類金属成分を含むガラスやアルカリ金属成分を含むガラスにおいて顕著であるが、リン、ホウ素などを含むガラスでも生じる。
また、変動する特性としては、屈折率の他、屈折率から算出されるアッベ数、部分分散比などの光学特性、ガラス転移温度、屈伏点、比重、熱膨張係数などの諸特性、熱的特性、機械的特性などが挙げられる。また、例えば、ガラス転移温度、屈伏点、比重などについては、水分量の増加に伴い上昇し、熱膨張係数等は、水分量の増加に伴い減少する傾向にある。
そこで、本発明に係るガラスの製造方法では、上記のような問題点を解決し、所望の特性を有する高屈折率ガラスを安定して製造するため、先に行った製造条件を参考に、ガラスの特性変動の度合いに応じて、次に行う製造条件を補正する。
本発明に係るガラスの製造方法は、
原材料を調合して、組成Gを有するガラス原料を得る調合工程と、
上記ガラス原料を熔融容器内にて熔融する熔融工程と、
上記熔融物を冷却、ガラス化して、ガラスLを得るガラス化工程と、
上記ガラスLの特性Pを評価する評価工程と、を含み、
以上の工程を2サイクル以上繰り返すことを特徴とする。
なお、nは、上記工程を繰り返す際のサイクル数である。
さらに、上記熔融工程では、上記熔融物中の水分量を高める操作を行い、
目的とするガラスLに求める特性をPとし、第(n−1)サイクルで評価したガラスL(n−1)の特性をP(n−1)とし、上記Pと上記P(n−1)との差をΔP(n−1)とした場合に、ΔP(n−1)が許容範囲内となるように、上記第nサイクル(n≧2)における上記組成Gを調節する操作、または上記第nサイクル(n≧2)における上記熔融物中の水分量を調節する操作の少なくとも一方を行い、
最終的に得られるガラスLは、TiO、Nb、WOおよびBiから選択される少なくとも1つの成分を含み、その合計含有量が20モル%以上であることを特徴とする。
なお、本発明においては、次の用語を以下の意味で用いる。
「組成G」とは、ガラス原料の組成である。ガラス原料は、特に限定されず、原材料を混合して得られる調合原料(バッチ原料)であってもよいし、カレット原料を調合してなる調合カレットであってもよい。
「ガラスL」とは、第nサイクルのガラス化工程で得られたガラスであり、ガラス製品として用いるか否かを問わない。また、「目的とするガラスL」とは、本発明において製造しようとする設計上のガラスである。さらに、「最終的に得られるガラスL」とは、本発明の製造方法により得られたガラスL(n≧2)であり、かつガラス製品として用い得るガラスである。これらのガラスは、いずれもアモルファス状のガラスであり、結晶化ガラスではない。さらに、「熔融物」とは、ガラス原料を熔融して得られた「熔融ガラス」を意味する。
また、「特性P」とは、第nサイクルで得られたガラスLが有する各種特性(例えば、屈折率ndやアッベ数ν等)であり、実測値を意味する。「特性P」は、目的とするガラスLが有する各種特性であり、目的値(設計値)を意味する。
さらに、ΔP(n−1)は、得られたガラスLと目的とするガラスLとの、特性の差を意味する。すなわち、ΔP(n−1)がゼロに近いことは、本実施形態に係る製造方法により得られたガラスが、目的とする(設計通りの)ガラスに近いことを意味する。
なお、ΔP(n−1)は、下記式(1)により算出することができる。
ΔP(n−1)=P(n−1)−P ・・・(1)
ここで、nは、2以上の整数である。
また、「許容範囲」とは、特性Pに応じて、予め設定しておくΔP(n−1)の範囲である。本発明においては、ΔP(n−1)はゼロに近いほど好ましいが、必ずしもゼロである必要はなく、目的値からの多少のずれは許容される。
このような本発明の製造方法によれば、所望の特性を有するガラスを安定的に生産することができると共に、得られたガラスを熱処理した際の透過率の改善効果を大幅に向上することができる。
以下、本発明に係るガラスの製造方法および、本発明の製造方法により得られたガラスを用いた光学素子の製造方法について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の趣旨を限定するものではない。
<ガラスの製造方法>
本実施形態に係るガラスの製造方法では、下記のサイクルを、1サイクルとカウントし、2回以上繰り返すことを特徴とする。
すなわち、本実施形態に係る1サイクルは、
原材料を調合して、組成Gを有するガラス原料を得る調合工程と、
上記ガラス原料を熔融容器内にて加熱、熔融する熔融工程と、
上記熔融物を冷却、ガラス化して、ガラスLを得るガラス化工程と、
上記ガラスLの特性Pを評価する評価工程と、を含む。
ここで、nは、上記サイクルの繰り返し回数である。
また、上記熔融工程では、上記熔融物中の水分量を高める操作を行う。
さらに、本実施形態に係るガラスの製造方法では、目的とするガラスLに求める所望の特性をPとし、第(n−1)サイクルで評価したガラスL(n−1)の特性をP(n−1)とし、上記特性Pと上記特性P(n−1)との差をΔP(n−1)とした場合に、第2サイクル以降では、ΔP(n−1)が許容範囲内となるように、上記第nサイクル(n≧2)における上記組成Gを調節する操作、または上記第nサイクル(n≧2)における上記熔融物中の水分量を調節する操作の少なくとも一方を行うことを特徴とする。
なお、ΔP(n−1)は、第(n−1)サイクルで得られたガラスL(n−1)の測定値(特性P(n−1))と、所望のガラスLの目標値(特性P)の差を意味し、下記式(1)により算出することができる。
ΔP(n−1)=P(n−1)−P ・・・(1)
ここで、特性PおよびPは、特に限定されるものではなく、屈折率の他、屈折率から算出されるアッベ数、部分分散比等の光学特性、ガラス転移温度、屈伏点、比重、熱膨張係数等の諸特性、熱的特性、機械的特性等、各種特性が挙げられる。特に、本実施形態に係る製造方法により得られるガラスを光学ガラスとして用いる場合には、光学特性に着目するのが好ましく、より好ましくは、特性PおよびPは、屈折率ndとする。
また、ΔP(n−1)の許容範囲とは、求める特性に応じて適宜設定することができる。
特に、本実施形態に係る特性Pが屈折率ndである場合には、第nサイクル(n≧2)で得られるガラスLにおける、屈折率に基づくΔP(n−1)は、毎時10℃の降温スピードで冷却したガラスの屈折率ndについて、±0.00050以内以下であることが好ましい。以下では、主に特性Pが屈折率ndである場合を例にとり説明するが、本発明における特性Pはこれに限定されない。
本実施形態に係る組成Gを調節する操作は、ガラス原料の段階から、特性のずれを低減する操作である。上述のように、本実施形態のガラスの製造方法では、熔融物中の水分量を高める処理を行うため、熔融工程で特定の成分が揮発しやすくなっている。そのため、先に行ったサイクル(第(n−1)サイクル)の特性評価の結果に基づき、次に行うサイクル(第nサイクル)で用いるガラス原料を補正するのが好ましい。具体的には、先のサイクルで用いたガラス原料の組成のうち、例えば、揮発しやすい成分が増えるようにガラス原料を補正することが好ましい。
また、本実施形態に係る熔融物中の水分量を調節する操作は、熔融工程で供給する水分量を調節することで、特性のずれを低減する操作である。上述のように、本実施形態のガラスの製造方法では、熔融物中の水分量を高めるほど、揮発成分が生成される。そのため、先に行ったサイクル(第(n−1)サイクル)の特性評価の結果に基づき、次に行うサイクル(第nサイクル)における、熔融物中の水分量を高める処理の条件(水分の供給量)を補正することが好ましい。
本実施形態に係る製造方法においては、上記第nサイクルにおける上記組成Gを調節する操作、または上記第nサイクルにおける上記熔融物中の水分量を調節する操作の少なくとも一方を行うが、ガラスのβOHの値を、極力一定に保ち、安定した透過率改善効果を有するガラスを得る観点から、上記第nサイクルにおける上記組成Gを調節する操作のみを行うことがより好ましい。
なお、必要に応じて2つの操作を同時に(同じサイクル内で同時に、または、製造方法全体として同時に)行ってもよいが、主として、組成Gを調節する操作を行い、水分量を調節する操作は補助的手段とすることが好ましい。
具体的な方法について、図1に示すフローチャート1を例に詳説する。
第1サイクル
まず、目的とするガラスLに求める特性として、例えば、屈折率ndを決める。さらに、熔融物中の水分量を高める操作を行わずに、大気雰囲気中でガラスを熔融した場合を想定し、得られるガラスの屈折率がndとなるように、原材料を調合し、組成Gのガラス原料を得る(調合工程)。
次に、得られたガラス原料を熔融炉内に配置された熔融容器(例えば白金坩堝)中に投入し、熔解工程により、容器内でガラス原料を加熱、熔解し、得られた熔融物(以下、「熔融ガラス」ということがある)を清澄工程により脱泡、清澄し、均質化工程により均質化する(熔融工程)。このような熔融工程では、熔融物中の水分量を高める操作を行う。
次に、このようにして得られた熔融ガラスを、坩堝底部に取り付けた白金製のガラス流出パイプから流出し、鋳型に流し込んで冷却し、ガラス化して、成形する(ガラス化工程)。
ガラス化して得られたガラスLを屈折率モニター用サンプルとして少量サンプリングし、特性評価として、屈折率を測定する(評価工程)。なお、ガラスの屈折率は成形後の徐冷条件により、僅かに変化するため、屈折率を厳密に制御する場合は、最終製品となるガラスLの徐冷速度と屈折率モニター用サンプルの徐冷速度とを等しくすることが好ましい。
このようにして測定されたガラスLの屈折率ndについて、上記目的とするガラスLの屈折率ndとのずれを評価する。すなわち、Δndは、nd−ndである。なお、ガラスの屈折率ndの場合、熔融物中の水分量を高めることにより、nd<ndとなる傾向にある。
第2サイクル
第2サイクルでは、得られるガラスLの屈折率ndを、目的とするガラスLの屈折率ndに近づけるため、第2サイクルにおける組成Gを調節する操作を行う。
まず、熔融物中の水分量を高める操作を行わずに、大気雰囲気中でガラスを熔融した場合を想定し、得られるガラスの設計上の屈折率が、ndー(nd−nd)となるように、原材料を調合し、組成Gのガラス原料を得る(調合工程)。
次に、得られたガラス原料を熔融炉内に配置された熔融容器(例えば白金坩堝)中に投入し、容器内で加熱、熔融して熔融物(熔融ガラス)とする(熔解工程)。さらに、サイクル1と同様の条件で、熔融工程では、熔融物中の水分量を高める操作を行う。
さらに、熔解工程を経た熔融ガラスを清澄工程により脱泡、清澄し、均質化工程により均質化する。
次に、このようにして得られた熔融ガラスを、坩堝底部に取り付けた白金製のガラス流出パイプから流出し、鋳型に流し込んで冷却し、ガラス化して、成形する(ガラス化工程)。
ガラス化して得られたガラスLを屈折率モニター用サンプルとして少量サンプリングし、特性評価として、屈折率を測定する(評価工程)。
このようにして測定されたガラスLの屈折率ndについて、上記目的とするガラスLの屈折率ndとの差Δndを評価する。すなわち、Δndはnd−ndである。
第2サイクルを経て、本実施形態に係る製造方法により得られたガラスLは、高い含水率を有していても、所望の特性(nd)に非常に近い特性を有している。すなわち、第2サイクルでは、第1サイクルで得られたガラスの特性に基づいて、ガラス原料の組成を補正しているため、Δndは、上記Δndよりもゼロに近づく。
ここで、Δndが、許容範囲内である場合には、第2サイクルと同じ条件(ガラス原料の組成および水蒸気の供給量等)に条件を固定してガラスの製造を続けることができ、これにより一定の品質を有するガラスを安定的に生産することが可能となる。
一方、Δndが、許容範囲外である場合には、第3サイクルとして、Δndに基づき、第3サイクルにおける組成Gを調節する操作を行う。第3サイクルについても、Δndが許容範囲外の場合には、同様の方法で次のサイクルを行う。すなわち、目的の特性を有するガラスが得られるまで、上記サイクルを繰り返してもよい。
ここで、組成Gの調節方法としては、具体的には、ΔP(n−1)に応じて、ガラス原料のうち特定の成分(例えば、揮発し難い成分や揮発しやすい成分等)に対応する原材料を増減させればいい。例えば、熔融ガラスの水分量を高める処理を行わなかった場合と比較して、上記第1サイクルで得られるガラスの屈折率ndが大きかった場合、第2サイクルで用いる原材料の組成Gでは、組成Gよりも、高屈折率成分に比べて屈折率を低下させる働きのある成分を増加、高屈折率成分の含有量の減少、あるいはこの両方を行えばよい。
この時、増減させる各種成分や、その量は、予め、各成分の含有量の変化に伴う屈折率の変化量を測定しておいて、各成分の増減量と屈折率の変化量を対応付けておき、屈折率がndに近づくように決めればよい。
なお、上述のフローチャート1−1の例では、組成Gは、大気雰囲気中で熔融、ガラス化したガラスLの屈折率ndとなるように原料を調合したが、必ずしもガラスLの組成に一致させる必要はない。すなわち、Δndの値に基づいて、その後のサイクルの組成G等を補正するため、1回もしくは数回の補正によって目標値の屈折率ndを有するガラスLが得られるように最初の原料調合を行えばよく、最初に調合する原料の組成は限定されない。
ここまで、フローチャート1−1を例に説明してきたが、図2に示すフローチャート1−2のように、得られるガラスLの屈折率ndを、目的とするガラスLの屈折率ndに近づけるため、第2サイクルにおける熔融物中の水分量を調節する操作を行うこともできる。
第1サイクルで得られたガラスLの屈折率ndを測定した結果、目的とするガラスLの屈折率ndから僅かにずれている場合、第2サイクルにおける熔融物中の水分量を調節することにより、屈折率ndを屈折率ndに近づけることができる。具体的には、熔融雰囲気への水蒸気の供給量、バブリングガス中の水蒸気の量、バブリングガスの供給量などを調整して、熔融ガラス中の水分量を調整する。
すなわち、nd>ndである場合には、水蒸気の付加量を減少させて、第2サイクルにより得られたガラスの屈折率ndを、屈折率ndよりも低くする。一方、nd<ndである場合には、水蒸気の付加量を増加させて屈折率を上げる。
また、本実施形態に係る製造方法では、第2サイクル以降において、ΔP(n−1)が許容範囲内となるように、上記第nサイクルにおける上記組成Gを調節する操作、および上記第nサイクルにおける上記熔融物中の水分量を調節する操作を両方行ってもよい(例えば、図3に示すフローチャート1−3)。なお、ガラスのβOHの値を極力一定に保ち、安定した透過率改善効果を有するガラスを得る観点から、組成Gを調節する操作による屈折率の補正を主とし、水分量を調節する操作による屈折率補正を補助的手段とすることが好ましい。
さらに、本実施形態に係るガラスの製造方法では、所望の特性を有するガラスが得られるように、先に行ったサイクル(第(n−1)サイクル)により得られたガラスの特性に基づいて、次に行うサイクル(第nサイクル)における製造条件(原料組成および熔融ガラスの水分量の少なくとも一方の条件)を決定することを特徴とするが、各サイクルは連続であっても、独立であってもよい。
すなわち、本実施形態のガラスの製造方法において、第nサイクル(n≧2)は、好ましくは、第(n−1)サイクルから一連の工程として連続的に(以下、第1の態様)、または、第(n−1)サイクルから独立した別の工程として(以下、第2の態様)、行うことができる。
例えば、nが2である場合、第1サイクルと、第2サイクルは連続(第1の態様)、または独立(第2の態様)した工程として行うことができる。
第1の態様において、第nサイクル(n≧2)は、好ましくは第(n−1)サイクルから一連の工程として連続的に行うことを特徴とする。
すなわち、熔融ガラス中の水分量を高める操作により変動するガラスの特性値について、変化量(ΔP(n−1))を求め(第(n−1)サイクル)、速やかに同じ工程内で、諸条件を変更し、次のサイクル(第nサイクル)で得られるガラスの特性Pを目標値Pに近づける。
したがって、本態様に係る第nサイクルの熔融工程は、第(n−1)サイクルと同じ熔融容器内にて行われる。ここで、同じ熔融容器とは、先のサイクルで熔解された熔融物を保持したままの(使用中の)熔融容器を意味する。
上述のフローチャート1−1、1−2および1−3は、いずれも第1の態様を想定したフローチャートであるが、これに限定されるものではなく、図4〜6に示すフローチャート2−1、2−2および2−3のように行うこともできる。
以下、図4〜6に示すガラスの製造方法のフローチャートを例に、本発明の別の一態様について説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付してその説明は繰り返さない。なお、以下に示す部分以外は、第1の態様と同様な構成および作用効果を有し、重複する記載は一部省略する。
第2の態様では、第nサイクル(n≧2)は、好ましくは第(n−1)サイクルから独立した別の工程として行うことを特徴とする。
すなわち、熔融ガラス中の水分量を高める操作により変動するガラスの特性値について、予め変化量(ΔP(n−1))を求めておく(第(n−1)サイクル)。さらに、ΔP(n−1)をゼロに近づける(許容範囲とする)ために必要な、ガラス原料の調合比、熔融雰囲気への水蒸気の供給量、バブリングガス中の水蒸気の濃度、バブリングガスの供給量なども予め算出しておく。
これらのデータに基づいて、ガラスを製造する際(第nサイクル)の条件を設定することで、熔融ガラス中の水分量を高める操作がガラスの特性値に与える影響を予め条件に織り込むことで、その影響を低減し、得られるガラスのPを目標値Pに近づける。
したがって、本態様に係る第nサイクルの熔融工程は、第(n−1)サイクルとは異なる熔融容器内にて行われる。ここで、異なる熔融容器とは、先のサイクルで熔解された熔融物を保持していない(未使用の、あるいは熔融物を除去した後の)熔融容器を意味する。したがって、一度熔融物を除去し、清掃していれば、先のサイクルで用いられた熔融容器と同じ熔融容器であってもよい。
例えば、フローチャート2−1に示す方法では、異なる熔融容器で作製された第1サイクルのガラスLの屈折率ndに基づいて、第2サイクルにおける組成Gを調節する操作を行う。なお、その他の熔融条件(熔融雰囲気への水蒸気供給量等)は、第1サイクルと同じ条件とすることが望ましい。
なお、フローチャート2−1では、ガラス原料Gの調合比率を調整しているが、これに換えて、熔融物中の水分量を調節する操作(例えば、熔融雰囲気への水蒸気供給量、バブリングガス中の水蒸気の濃度、バブリングガスの供給量等の調整)を行ってもよい。この場合にも、その他の熔融条件(ガラス原料の組成等)は、第1サイクルと同じ条件とすることが望ましい。
なお、このような第1の態様と第2の態様は、組み合わせて実施することもできる。
例えば、フローチャート2−2および2−3に示すように、第2の態様に基づき、第(n−1)サイクルと第nサイクルとを独立の工程として行い、必要に応じて第(n+1)サイクル以降を第1の態様により連続的に行うことができる。
すなわち、フローチャート2−2の方法では、第1サイクルのガラスLの屈折率ndに基づいて、第2サイクルで熔融物中の水分量を調節する操作を行い、第3サイクルでさらに熔融物中の水分量を調節する操作(例えば、熔融雰囲気への水蒸気供給量、バブリングガス中の水蒸気の濃度、バブリングガスの供給量等の調整)を行う。このような方法によれば、屈折率ndを目標値ndにさらに近づけることができる。
またフローチャート2−3の方法では、第3サイクルで、熔融物中の水分量を調節する操作と共に、ガラス原料の組成Gを調節する操作を併用することにより、屈折率ndを目標値ndにさらに近づけることができる。
これらの方法は、第2サイクル以降で作製したガラスの屈折率ndが目標値ndから僅かにずれている場合、このずれ量をより一層ゼロに近づける際に好適である。
上記各方法において、特性の測定値と目標値との差をゼロに近づけるために調整するパラメータ以外の条件については、所望の特性を有するガラスを安定して製造する観点から、一定条件とすることが好ましい。
先に説明したように、熔融ガラス中の水分量を高める操作により、特性値が変動しやすいガラスは、アルカリ土類金属成分やアルカリ金属成分を含むガラスである。したがって、本実施形態に係るガラスの製造方法は、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ金属酸化物の合計含有量(すなわち、MgO,CaO、SrO、BaO、LiO、NaOおよびKOの合計含有量)が、好ましくは15モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは25モル%以上、一層好ましくは30モル%以上のガラスの製造に好適である。
また、アルカリ土類金属成分、アルカリ金属成分以外にも、BiおよびWについても、熔融ガラス中の水分量を高める操作により、各成分が揮発する傾向がある。通常、アルカリ土類金属成分およびアルカリ金属成分の揮発は、ガラスの屈折率を増加させる傾向にあるが、BiおよびWの揮発は、ガラスの屈折率を低下させる傾向にある。
そのため、BiおよびWOの合計含有量が15モル%を超えるガラスでは、アルカリ土類金属成分およびアルカリ金属成分の揮発による屈折率の増加と、BiおよびWの揮発による屈折率の低下により、屈折率の変化は、比較的小さくなる傾向にある。一方、BiおよびWOの合計含有量が15モル%以下のガラスでは、BiおよびWOの合計含有量が15モル%を超えるガラスに比べて、屈折率の変化が大きくなる傾向にある。そのため、特に、BiおよびWOが少ないガラスにおいて、熔融ガラス中の水分量を高める操作による屈折率の変動の問題は顕著となる。
したがって、本実施形態に係るガラスの製造方法は、BiおよびWOの合計含有量が、好ましくは15モル%以下、より好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下、一層好ましくは1モル%以下であるガラスの製造に好適である。
すなわち、本実施形態に係るガラスの製造方法は、MgO,CaO、SrO、BaO、LiO、NaOおよびKOの合計含有量がより多く、且つ、BiおよびWOの合計含有量がより少ないガラスの製造に、特に好適である。
本実施形態の製造方法の基本工程について
まず、本発明に係るガラスの製造方法は、基本の工程として、
原材料を調合して、ガラス原料を得る調合工程と、
上記ガラス原料を熔融容器内にて熔融する熔融工程と、
上記熔融物を冷却、ガラス化して、ガラスを得るガラス化工程と、
上記熔融工程では、上記熔融物中の水分量を高める操作を行うことを特徴とする。
本実施形態のガラスの製造方法において、熔融物中(以下、「熔融ガラス」ということがある)の水分を高める操作は、好ましくは、熔融容器内に水分を供給すること(以下、第一の操作態様)、または、ガラス原料が水分を含むとともに、熔融工程において、熔融容器が略密閉されていること(第二の操作態様)により行われる。
なお、「熔融物中の水分量を高める操作」とは、このような操作を行わなかった場合の熔融ガラス中の水分量よりも、熔融ガラス中の水分量を高めることである。熔融ガラス中の水分量を高める操作を行わない場合、熔融物ガラスの水分量は時間の経過とともに減少する。このような熔融ガラス中の水分量の減少を低減、抑制する操作も、熔融ガラス中の水分量を高める操作に含まれる。
このような本実施形態の製造方法によって作製されたガラスは、高屈折率成分(TiO、Nb、WOおよびBiの少なくとも一種以上の成分)を含み、ガラスが濃く着色している場合であっても、後工程において、このガラスに対し、酸化性雰囲気中で熱処理することにより、ガラスの着色を大幅に低減できる。すなわち、熱処理後において、本実施形態の製造方法により得られたガラスは、着色が少なく、極めて優れた透過率を有する。
本実施形態に係る製造方法により得られるガラスにおいて、このような着色低減が得られる原因としては、次のような理由が挙げられる。
まず、本発明者は、酸化性雰囲気下での熱処理によりガラスの着色が低減される機構として、ガラス中に還元状態で存在するTi、Nb、W、Biなどの各イオンが、熱処理により酸化されて各イオンの可視光吸収が弱まっているものと考えている。
本発明者は、上記の機構を前提に、ガラスの着色低減の効果を高めるためには、熱処理時のTi、Nb、W、Biの酸化速度を大きくすればよいと考え、ガラス中に移動しやすいイオンを導入することを見出し、得られるガラス中の水分量を高めることを考えた。
すなわち、ガラス中に移動しやすいイオンがあれば、熱処理時に当該イオンがガラス中を速やかに移動して電荷を受け渡し、還元されたTi、Nb、W、Biを速やかに酸化し、着色を短時間で低減することが可能になる。また、このようなイオンとしてはHが適していると考えた。Hをより移動しやすくするために、ガラス構造中にOHを導入し、OHを起点にHがホッピングできるようにすることで、熱処理時の酸化速度を増加させることができると考え、ガラスの含水量をできるだけ大きくすることに着目した。
従来のガラスの製造方法では、仮に含水量の多い原料成分を用いても、ガラス原料を熔解して熔融ガラスを得る工程で水分が蒸散してしまっていた。また、カレット原料(詳しくは後述する)を用いてガラスを得る場合でも、バッチ原料中に当初含まれていた水分はカレット化する際(ラフメルト工程)に失われ、さらに熔融容器中で再熔融する過程(リメルト工程)でも、水分が失われてしまっていた。このように、通常であれば、得られるガラスの含水量は極めて小さくなるため、当該ガラスを熱処理しても、着色を大幅に低減することは難しかった。
これに対し、本実施形態に係るガラスの製造方法によれば、積極的に熔融ガラスに対して水分量を高める操作を行うことで、ガラスの含水量を大きくすることができ、ガラスの着色低減の効果を高めることができる。
例えば、熔融物中の水分量を高める操作として、熔融ガラスに対して外部から水分供給を行えば、高温の熔融ガラスから蒸散して失われた水分を補うことができ、ガラスの含水量を大きくすることが容易となる。
また、熔融物中の水分量を高める操作としては、水分を含むガラス原料を使用すると共に、熔融工程において、熔融容器を略密閉してもよい。この場合も熔融容器の気密性が高まるため、熔融容器中でガラス原料を熔融する際、ガラス原料に含まれる水分が熔融容器の外へ蒸散するのを抑制できる。それゆえ、結果的に、ガラスの含水量を大きくすることが容易となる。
なお、水分を含むガラス原料は、上記のように正リン酸や水酸化物などを用いて得ることができる。また、この他にも、水分を含むガラス原料は、粗熔解して得た熔解物を水に導入してカレット化することによっても得ることができる。このようにして作製したカレット原料(水分を含むガラス原料)では、その表面に付着した水分はカレットを乾燥する際に除去される。しかし、カレットの内部に取り込まれた水分は再熔融(熔融工程)によって得られる熔融ガラス中の水分量の増加に寄与する。
また、ガラスの含水量をできるだけ大きくするためには、ガラス中に水分を取り込み、保持する作用の強いガラス成分、すなわちリン酸成分(例えば、正リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩など)をガラス原料として用いることも有効である。
それゆえ、本実施形態のガラスの製造方法では、リン酸成分を含むガラス原料を用いることが特に好ましい。ここでリン酸成分としては、代表的には正リン酸(HPO)が挙げられるが、その他にも、ピロリン酸(H)や各種のリン酸塩(特に水和物)など各種公知のリン酸化合物も利用でき、2種類以上を組み合わせて利用してもよい。
また、本実施形態のガラスの製造方法では、得られるガラスの含水量が高く、結果的にガラスを熱処理した際に、着色を大幅に低減することが可能となる。特に、本実施形態のガラスの製造方法において、熔融ガラス中の水分を高める操作が、第一の操作態様により行われる場合は、第二の操作態様を単独で行った場合よりもガラスの含水量を一層高めることができ、着色の低減効果も高い。
なお、上述した第一の操作態様では、熔融ガラス中の水分を高める操作が、熔融工程において、熔融容器内に水分を供給することにより行われる。これにより熔融ガラスに対して外部から水分を供給でき、結果的にガラスの含水量を大きくすることができる。熔融容器内への水分の供給態様としては特に限定されないが、熔融ガラスの液面近傍の雰囲気中へ水蒸気を供給する第一の供給態様、熔融ガラス中に水蒸気をバブリングしながら供給する第二の供給態様、および、第一の供給態様と第二の供給態様とを組み合わせた第三の供給態様、から選択されるいずれかであることが好ましい。なお、水分は、通常、水蒸気(気体)の形態で供給されることが好ましいが、例えば、水分を除いた残り成分がガラスと略同一の成分からなる含水量の多いガラス原料粉末(固体)の形態で供給してもよい。
一方、熔融ガラスの液面近傍の雰囲気における水蒸気分圧が低い場合は、熔融ガラス中の水分が外部へと蒸散しやすくなる。しかしながら上述した第二の操作態様では、熔融ガラス中の水分を高める操作が、水分を含むガラス原料を使用すると共に、熔融工程において、熔融容器を略密閉することにより行われる。すなわち、水分を含む熔融ガラスは熔融容器という極めて狭い空間内に密閉される。このため、熔融ガラスの液面近傍の雰囲気における水蒸気分圧を高くして水分が蒸散するのを抑制できる。その結果、ガラスの含水量を高めることができる。
なお、熔融容器を略密閉する方法としては特に限定されないが、例えば、熔融容器が開口部を有する容器であれば、熔融容器の開口部に蓋をすればよい。この場合、熔融容器と蓋とで囲まれた密閉空間内に熔融ガラスを閉じ込めた状態で熔融工程を実施する。なお、蓋は熔融容器の開口部を塞ぐように熔融容器上に載置するだけでもよい。この場合、密閉された熔融容器内の圧力が高まれば、熔融容器のガスが外部へと少しずつ漏れるものの略密閉した状態を確保できる。しかしながら、熔融容器の開口部に蓋をした後、蓋が開口部に圧接するように押圧力を加えて蓋を熔融容器に対して強く固定する、あるいは、開口部を封止処理する等によって、熔融容器内の気密性をさらに高めてもよい。
また、「熔融容器を略密閉する」ことには、(1)熔融容器の開口部に直接蓋をしたりあるいは開口部を直接封止する実施態様以外にも、(2)開口部が開口した状態の熔融容器を、この熔融容器を収納する収納容器内に配置した上で、この収納容器の開口部に直接蓋をしたりあるいは開口部を直接封止する実施態様、および、(3)開口部が開口した状態の熔融容器を、この熔融容器を熔解炉内の密閉式の熔融容器収納室に配置する実施態様、も含まれる。そして、上記(1)〜(3)の実施態様を適宜組み合わせて実施してもよい。
なお、熔融ガラス中の水分量を効率よく高める観点から、本実施形態のガラスの製造方法において、熔融ガラス中の水分量を高める操作としては、上記第一の操作態様により行われることがより好ましい。すなわち、熔融ガラス中の水分量を高める操作として、少なくとも、熔融雰囲気に水蒸気を付加する処理および熔融物内に水蒸気を含むガスをバブリングする処理のいずれか一方を行うことが好ましい。
熔融雰囲気に水蒸気を付加する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、内部に熔融容器(坩堝)が設置されている熔融装置(熔融炉)内に開口部を設け、耐熱性の連結パイプの一端を坩堝内へ挿入し、他端をガスの発生源(例えばボイラー等)に接続し、必要に応じてこのパイプを通して水蒸気を含むガスを坩堝の空間へと供給する方法等が挙げられる。
坩堝内の空間に供給する水蒸気を含むガスの流量は、特に限定されず、試験的に作製したガラス中の水分量(後述するβOHの値によって評価する、以下において同じ。)の測定結果をもとに調整できる(第1サイクル)。例えば、略密閉された熔融容器内に水蒸気を供給する場合は、比較的少量の水蒸気を供給すれば、所望の水分量を有するガラスが得られる。一方、蓋をしない坩堝をガラス熔融炉内に配置してガラスを熔融する場合は、ガラス熔融炉内の体積が坩堝内の体積に比べて大きくなるため、水分量を所望の値にするには、ガラス熔融炉内に比較的多量の水蒸気を供給することになる。
このように、試験的に作製したガラスの水分量の測定値に基づいて、水蒸気の供給量、すなわち、ガスの流量を次の生産(第2サイクル)にフィードバックすることで、所望の水分量を有するガラスを生産できる。なお、以下、ガスの流量、水蒸気の流量、雰囲気付加流量、水蒸気の供給量は、25℃、1気圧に換算した値である。
なお、ガスの流量は、ガスの供給源と、連結パイプの間に設置された流量計より管理することができる。すなわち、水蒸気を含むガスの流量をモニターした結果に基づいて、熔融雰囲気へと供給する水蒸気量、熔融ガラスにバブリングする水蒸気量が適正な値になるよう調整する。水蒸気量の調整は、例えば、ボイラーの出力を増減する、ボイラーから流量計の間の水蒸気流路にバルブを配置し、バルブの開閉度合いを調整するなどして行う。
また、バブリング方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、白金製または白金合金製のパイプを熔融容器中の熔融物中に差し込み、パイプを通して水蒸気を含むガスを熔融物中に吹き込む方法、熔融容器の底部付近に熔融容器の材料と同じ材料からなるパイプを取り付け、このパイプから熔融物中に水蒸気を含むガスを吹き込む方法などが挙げられる。
熔融物中に吹き込む水蒸気を含むガスの気泡径は、好ましくは直径0.01〜100mmであり、より好ましくは0.1〜30mmである。上記範囲とすることで、熔融ガラス中の水分量を効果的に高めることができると考えられる。なお、気泡径が小さすぎる場合には、熔融物に挿入するバブリング用の管が詰まりやすい等の問題がある。
熔融物中に吹き込む水蒸気を含むガスの流量は、特に限定されず、試験的に作製したガラスの水分量の測定結果をもとに調整できる(第1サイクル)。例えば、試験的に作製したガラスの水分量を測定し、測定結果が所望の値よりも小さい場合は、ガスの流量を増加させ、逆に測定結果が所望の水分量値より大きい場合は、ガスの流量を減少させる調整を行う。このように試験的にガラスの水分量を求め、測定結果からガスの流量を調整すればよい。
このように、試験的に作製したガラスの水分量の測定値に基づいて、水蒸気の供給量、すなわち、ガスの流量を次の生産(第2サイクル)にフィードバックすることで、所望の水分量を有するガラスを生産できる。なお、以下、ガスの流量、水蒸気の流量、雰囲気付加流量、水蒸気の供給量は、25℃、1気圧に換算した値である。
なお、ガスの流量は、熔融雰囲気に水蒸気を供給する場合と同様にして管理、調節できる。
水蒸気を含むガス中の水蒸気の含有量は、好ましくは3体積%以上である。水蒸気の含有量は、高いほど好ましく、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、さらに好ましくは30体積%以上、一層好ましくは40体積%以上、より一層好ましくは50体積%以上、さらに一層好ましくは60体積%以上、なお一層好ましくは70体積%以上、特に好ましくは80体積%以上、さらに特に好ましくは90体積%以上である。特に上記範囲とすることで、最終的に得られるガラスにおいて、着色の低減効果を高めることができると共に、貴金属の含有量を低減でき、かつ清澄性を改善できる。
なお、水蒸気を含むガスは、生成したものや、市販のものを用いることができ、他のガスとの混合ガスであってもよい。他のガスとしては、例えば、非酸化性ガスや空気等が挙げられる。中でも、非酸化性ガスが好ましい。
なお、水蒸気を含むガスは、生成したものや、市販のものを用いることができ、他のガスとの混合ガスであってもよい。他のガスとしては、例えば、非酸化性ガスや空気等が挙げられる。中でも、非酸化性ガスが好ましい。
また、本実施形態に係る光学ガラスの製造方法では、上記処理水蒸気を付加する処理および熔融物内に水蒸気をバブリングする処理のいずれかまたは両方において、水蒸気と共に非酸化性ガスを供給するのが好ましい。
本実施形態では、熔融雰囲気および/または熔融物中に水蒸気を供給することで、ガラスの水分量を高め、熱処理による還元色の低減効果を高めている。しかし、多量に水蒸気を供給し続けると、熔融ガラスからのガラス成分の揮発が増加する傾向を示す。
そのため、本実施形態では、熔融ガラスからのガラス成分の揮発を抑制する観点から、供給する水蒸気の一部を、非酸化性ガスに置換することが好ましい。これにより、過剰な水分供給を抑えることができ、ガラス成分の揮発を抑制できる。また、置換するガスを非酸化性ガスとすることで、貴金属の含有量を低減する効果は維持できる。
非酸化性ガスとしては、特に限定されないが、例えば、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、ヘリウムおよびヨウ素などが挙げられる。好ましくは、アルゴンなどの不活性ガスである。
非酸化性ガスの供給量は、特に限定されないが、好ましくは、供給するガス(水蒸気を含むガス)の体積を100体積%とした場合に、非酸化性ガスが占める割合が0体積%を超え、97体積%以下であり、より好ましい上限は90体積%、以下、80体積%、70体積%、60体積%、50体積%、40体積%、30体積%、20体積%、10体積%の順に上限が小さくなるほど、熱処理による着色低減効果を大きくする上から好ましい。一方、非酸化性ガスが占める割合の下限は、10体積%、20体積%、30体積%、40体積%、50体積%、60体積%、70体積%、80体積%、90体積%の順に下限が大きくのるほど、熔融ガラスからのガラス成分の揮発を抑制する上で好ましい。なお、非酸化性ガスを供給する際の水蒸気を含むガスにおける水蒸気が占める割合は、好ましくは3体積%以上、100体積%未満である。
また、熔融ガラス中の水分量を高めるため、水蒸気を付加した熔融雰囲気中で、熔融物を攪拌してもよい。
なお、ガラス中の含水量を高めて、酸化性雰囲気中での熱処理により着色の低減がより容易となる観点からは、本実施形態において、熔融ガラス中の水分を高める操作は、第一の操作態様と第二の操作態様とを組み合わせて実施することが特に好ましい。
また、本実施形態の製造方法によれば、熔融容器等に由来する貴金属(例えば白金等)のガラス中への溶け込みを有効に防止でき、得られるガラスにおいて、貴金属イオンに由来する着色を一層低減できる。
以下の説明では、熔融容器が白金(Pt)の場合を例にとるが、白金以外の貴金属等の金属材料からなる熔融容器等を用いる場合についても同様である。
通常、ガラスの熔融は大気雰囲気中で行われ、大気中の酸素が熔融容器の材料である白金等の貴金属材料と反応することがある。特に、熔融容器が白金系材料である場合、二酸化白金(PtO)が生成し熔融物中に溶け込む、あるいは、熔融物と白金系材料との界面から白金イオン(Pt4+)として熔融物に溶け込むことがある。熔融ガラス中に溶け込んだ貴金属イオンは可視光を吸収するため、ガラスの着色が増加する傾向にある。
このような白金イオンに由来する着色を低減するためには、熔融雰囲気を還元雰囲気にすることで、熔融ガラスへの貴金属イオンの溶け込みを抑制する方法等が挙げられる。しかし、熔融ガラスを過剰に還元側にすると、熔融容器が合金化し、熔融容器の強度、耐久性が著しく低下する。また、熔融雰囲気を不活性ガスで置換する方法等もあるが、Arなどの不活性ガスは高価で、長時間の熔融に適さない。
これに対し、本実施形態に係るガラスの製造方法では、熔融工程において、熔融物中の水分量を高める操作を行うことより、熔融雰囲気中の酸素分圧を低減し、熔融容器を構成する白金材料が酸化されるのを防止する。その結果、熔融雰囲気中の酸素が白金材料等と反応して生成する二酸化白金や白金イオン(Pt4+)が、熔融物(ガラス)中に溶け込むことを有効に防止でき、得られる光学ガラスにおいて、白金(Pt)の溶け込み量が一層低減される。その結果、得られる光学ガラスの貴金属含有量を好ましくは4ppm未満とすることができる。
水蒸気の供給には、熔融雰囲気中の酸素分圧低減効果に加え、次の効果があると考えられる。HOが白金の表面に到達すると、白金の触媒効果によってHとOHに分解し、OHの一部が白金イオンと結合し、白金の酸化を防ぐと考えられる。アルゴン、窒素などの不活性ガスには、上記効果を期待できない。実際、水蒸気を含むガスを供給することにより、乾燥状態の非酸化性ガスを供給するよりも、ガラス中の白金等の貴金属含有量を一層低減することができる。
このように本実施形態の製造方法により作製されたガラスは、熔融容器等の製造器具に由来するPtなどの貴金属の含有量が極めて少ない。したがって、ソラリゼーションと呼ばれる紫外線照射によるガラスの着色が少ない。そのため、このようなガラスを例えば光学素子として用いた場合には、透過率の経年変化が少ない。また、紫外線硬化型接着剤を用いて光学素子を固定する時、光学素子に紫外線を照射しても、透過率が低下しないという効果も得られる。また、紫外線硬化型接着剤を用いて光学素子を固定する時、光学素子に紫外線を照射しても、透過率が低下しないという効果も得られる。
貴金属イオンに起因するガラスの着色の低減、透過率の改善、ソラリゼーションの低減、貴金属異物の低減などの観点から、好ましくは、得られるガラス中の貴金属の含有量は、4ppm以下である。貴金属の含有量の上限値は低いほど好ましく、3ppm、2.7ppm、2.5ppm、2.2ppm、2.0ppm、1.8ppm、1.6ppm、1.4ppm、1.2ppm、1.1ppm、1.0ppm、0.9ppmの順に上限値が低いほどより一層好ましい。貴金属の含有量の下限は、特に制限されないが不可避的に0.001ppm程度は含まれる。
貴金属としては、Pt、Au、Rh、Ir等の金属単体、Pt合金、Au合金、Rh合金、Ir合金などの合金を例示することができる。熔融容器材料や熔融器具材料としては、貴金属の中でも耐熱性、耐蝕性に優れるPtまたはPt合金が好ましい。したがって、PtまたはPt合金製の熔融容器、熔融器具を用いて作製したガラスについては、ガラス中に含まれるPtの含有量が4ppm以下であることが好ましい。Ptの含有量のより好ましい上限については、ガラス中に含まれる貴金属の含有量のより好ましい上限と同じである。また、Ptの含有量の下限は、特に制限されないが、不可避的に0.001ppm程度は含まれる。
さらに、本実施形態のガラスの製造方法によれば、清澄性を大幅に改善できる。
一般に、ガラスの製造では、均質で泡の少ないガラスが求められる。このような泡の少ないガラスを得るためには、通常、熔融ガラス中の溶存ガスを放出(脱泡)させる清澄工程を設けるのが一般的であるが、ガラスの清澄性は、熔融ガラス中の溶存ガス量に依存する。このような溶存ガス量は、ガラスの組成(特に原材料の種類)や、ガラスの熔融時間や熔融回数に大きな影響を受ける。しかし、熔融工程において溶存ガスを補うことができれば、清澄性の問題は解決される。
本実施形態の製造方法により作製されるガラスは、熔融ガラス中の水分量を高める操作(例えば、熔融容器内に水分を供給する等)を行うことにより、熔融ガラス中の溶存ガス量を高めることができると考えられる。すなわち、熔融ガラス中に積極的に導入された水分(例えば、水蒸気)は、溶存ガスとしての役割を果たし、ガラスの清澄性を改善すると考えられる。
このような本実施形態のガラスの製造方法によれば、ガラスが優れた清澄性を有することから、清澄工程に要する時間を短縮でき、生産性が向上する。
なお、清澄工程を行う清澄槽も、白金や白金合金等の金属材料により構成されているのが一般的である。そのため、清澄工程が長時間になるほど、白金イオンの熔融物への溶け込みによる透過率劣化等の問題が顕著となる。しかし、本実施形態のガラスの製造方法によれば、清澄工程に要する時間を短縮することができるため、熔融ガラスと熔融容器等との接触時間を低減でき、白金等の貴金属イオンの熔融物への溶け込みも、より低減できると考えられる。
本実施形態のガラスの製造方法において、本願明細書において説明した事項以外については、ガラス原料の調整法、ガラス原料の加熱法、熔融法、熔融ガラスの成形法については公知の方法が適宜採用できる。また、本実施形態のガラスの製造方法に用いられるガラス原料や熔融容器を構成する材料についても公知の材料が適宜利用できる。
ここで、ガラスの作製に際して用いられる熔融容器等を構成する材料としては、通常、熔融ガラスを熔融する温度・雰囲気において耐熱性と耐侵蝕性と有する材料(例えば、金属材料や石英材料等)を適宜利用できる。
ただし、作製しようとするガラス組成によっては、著しい侵蝕性を示す熔融生成物が生成したり、熔融ガラスが熔融容器等を構成する材料と反応し、熔融容器が溶けたりする場合もある。そのため、熔融容器等を構成する材料を選択する際には、ガラス組成に応じて適宜材料を選択することが好ましい。
例えば、高屈折率成分を含有するリン酸塩ガラス(Pと、TiO、Nb、WOおよびBiから選択される少なくとも1種の酸化物とを含むガラス)の場合、特に、バッチ原料を加熱・熔解する際に、著しい侵蝕性を示す熔解生成物が生成する。このような熔融生成物は、白金等の耐蝕性に優れた材料をも侵蝕する傾向があるため、白金等の貴金属材料は、上記熔融生成物により侵蝕され、熔融物中に溶け込み、異物として生成したり、ガラスの着色を増大させたりする問題がある。
そのため、高屈折率成分を含有するリン酸塩ガラスの場合には、バッチ原料を加熱・熔解する際の熔融容器は、熔融工程の後半や清澄工程等とは別に、熔融容器等の材料を選択することが好ましい。バッチ原料を加熱・熔解する際に用いる熔融容器等としては、石英製など、耐火物製の容器や器具が好適である。石英などの耐火物は、上記熔融生成物により侵蝕されるが、侵蝕されて熔融物中に混入してもガラス組成物の一部となるため、貴金属材料のような問題は少ないためである。熔融工程の後半や清澄工程等では、熔融生成物が貴金属材料をも侵蝕するという問題は少ないため、白金製や白金合金製等の貴金属製の容器や器具を用いるのが好適である。
他方、Bと、高屈折率成分を含有するホウ酸塩ガラス(TiO、Nb、WOおよびBiから選択される少なくとも1種の酸化物を含むガラス)の場合には、上記リン酸塩ガラスのような熔融生成物が貴金属材料をも侵蝕するという問題は少ない。むしろ、ホウ酸ガラスの場合、石英などの耐火物容器は著しく侵蝕される傾向にある。そのため、熔融容器等としては、ガラスの製造過程で侵蝕され難い白金製や白金合金製等の貴金属製の容器や器具を用いるのが好適である。
本実施形態のガラスの製造方法では、ガラスの作製に際して用いられる熔融容器を構成する材料としては、金属材料を使用することが好ましい。ここで、金属材料は、貴金属および貴金属合金から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。本実施形態のガラスの製造方法では、熔融雰囲気に水蒸気を付加する処理等を行うため、過剰な還元雰囲気にすることなく、熔融雰囲気の酸素分圧を低減できる。これにより、熔融ガラスによって上述の貴金属あるいは貴金属合金が侵蝕されず、かつ還元された高屈折率成分が熔融容器を構成する材料と合金化されない酸化還元状態に、熔融ガラスを維持できる。なお、耐侵蝕性、耐熱性が特に優れる観点から、貴金属としては白金、金などを、貴金属合金としては白金合金、金合金などを用いることが好ましい。
本実施形態のガラスの製造方法では、熔融工程は、通常、ガラス原料を加熱することで熔解して熔融ガラスにする熔解工程に加えて、熔融ガラスの脱泡を促進する清澄工程と、清澄後の熔融ガラスを降温して成形に適した粘度にするとともに攪拌して均質化する均質化工程とを含むことが好ましい。
ガラス原料としては、所望の特性の光学ガラスが得られるように、ガラス成分に対応する原材料を秤量し、十分混合して得られた調合原料(バッチ原料)や、調合カレットを用いることができる。
ガラス原料としてカレットを使用する場合には、バッチ原料を粗熔解してカレット化するカレット化工程(ラフメルト工程)が、熔解工程(リメルト工程)の前に実施される。また、カレットは、好ましくは事前に屈折率測定の測定が行われている。なお、屈折率の測定値が所望の値と等しい場合には、カレットをそのまま調合カレットとし、屈折率の測定値が所望の値からずれている場合には、所望の値より高い屈折率を有するカレットと所望の値より低い屈折率を有するカレットを混合して、調合カレットとすることができる。
なお、カレットはガラスからなるが、均質なガラスである必要はない。また、カレットは気泡を含むものであってもよい。さらに、バッチ原料の未熔解物を含むものであってもよい。カレットの組成、光学特性(例えば、屈折率、アッベ数など)は、カレットを再熔融して均質で泡を含まないガラスを作り、このガラスの組成、光学特性をそれぞれカレットの組成、光学特性とする。
カレットを作製する方式(ラフメルトーリメルト方式)であっても、バッチ原料を直接熔解工程で熔解する方式(バッチダイレクト方式)であっても、Ti、Nb、WおよびBiの過剰な還元を抑えるとともに、熔融容器が金属材料から構成される場合にその金属材料のイオン化を抑制し、ガラス中の含水量を確保する観点から、熔融工程中のガラスの加熱温度は、800〜1500℃に維持することが好ましく、より好ましくは1400℃以下、さらに好ましくは1300℃以下に維持することが好ましい。さらに清澄性を改善しつつ、ガラスを酸化性雰囲気中で熱処理した際の着色の大幅な低減を容易とする観点からは、熔融工程中のガラスの加熱温度が清澄工程で最も高くなるように設定する、すなわち、清澄温度以下でガラスを熔融することが好ましい。
また、熔融工程の開始から終了までの時間を長くすると、高屈折率成分の還元、熔融容器が金属材料からなる場合においてその金属材料のイオン化を助長し、ガラス中の含水量も低下傾向を示すことになる。このため、熔融工程の開始から終了までの時間は100時間以内にすることが好ましい。なお、熔融工程の開始から終了までの時間は熔融容器の容量の大小などにより適宜調整すればよい。
本実施形態のガラスの製造方法は、より好ましくは、ラフメルト−リメルト方式で行われる。
すなわち、本実施形態のガラスの製造方法は、好ましくは、
調合原料を熔融してカレットを得るラフメルト工程と、上記カレットを再熔融してガラスを得るリメルト工程と、を有し、
上記ラフメルト工程および上記リメルト工程のうち少なくともいずれか一方において、熔融物中の水分量を高める操作を行う。
特に、ラフメルト−リメルト方式でガラスを作製する場合には、ラフメルト時のバッチ原料の熔解温度(粗熔解温度)は、800〜1400℃の範囲とすることが好ましい。ただし、溶存ガスの溶解度は熔融物の温度上昇とともに減少するため、清澄効果をより高める上で、ラフメルト工程における熔融物の温度は、リメルト工程におけるカレットの熔融温度(再熔解温度)以下であることが好ましく、特にリメルト工程における清澄温度よりも低くすることが好ましい。
また、ラフメルト工程における熔解時間は、坩堝の容量、調合原料(バッチ原料)の坩堝への投入量を考慮して適宜調整でき、例えば、熔解時間を0.1〜100時間、より好ましくは0.1〜20時間の範囲としてもよい。
また、リメルト工程における調合カレットの熔解温度(再熔解温度)は、800〜1500℃の範囲にすることが好ましい。ただし、清澄効果をより高める上から、この再熔解温度を清澄温度よりも低くすることが好ましい。リメルト工程における熔解時間は坩堝の容量、調合カレットの坩堝への投入量を考慮して適宜調整でき、例えば、再熔融時の熔解時間を0.1〜100時間、より好ましくは2〜20時間の範囲としてもよい。
なお、本実施形態のガラスの製造方法において、熔融時の雰囲気は、特に限定されるものではないが、熔融ガラス中の水分量を効果的に高める観点から、熔融雰囲気に水蒸気が付加されていることが好ましい。
熔融雰囲気は、はじめ大気雰囲気や窒素雰囲気などの水蒸気以外の熔融雰囲気で熔融を開始し、熔融ガラス中の水分量を高める操作により、途中から熔融雰囲気に水蒸気が付加されてもよいし、熔融雰囲気を予め水蒸気雰囲気に調整しておいてもよい。
熔融ガラス中の水分量を高める操作を行う際の、熔融雰囲気の水蒸気分圧は、大気中の水蒸気分圧よりも高く、より好ましくは酸素分圧よりも高い。さらに、水蒸気分圧の上限は、特に限定されるものではなく、例えば熔融雰囲気を全て水蒸気で置換することもできる。
また、熔融工程全体を通して、熔融雰囲気中の水蒸気分圧が高いことで、酸素が白金等の貴金属材料からなる熔融容器と反応することを有効に防止でき、ガラス中へのPt等の溶け込み量を低減でき、透過率の劣化(低下)を効果的に防ぐことができる。さらに、溶存ガス量を清澄工程の直前まで維持することで、清澄性の改善効果が高まる。
また、熔融工程は、熔融物の均質化を目的として、熔融物の攪拌を伴うこともできる。攪拌方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、気体を熔融物にバブリングする方法や攪拌棒により攪拌する方法などが挙げられる。
特に、水蒸気を含むガスを用いたバブリングや、水蒸気を付加した熔融雰囲気中での熔融物の攪拌は、熔融物の均質化を図ると共に、熔融ガラス中の水分量を高める観点で好適である。
ここまで、熔融工程について詳しく説明してきたが、本実施形態に係るガラスの製造方法は、熔融工程後に、熔融物を冷却し、ガラス化して、ガラスLを得るガラス化工程を有する。
ガラス化工程は、好ましくは上記熔融物を上記熔融容器外に流出する工程と、上記熔融物を冷却する工程と、を含む。
流出工程では、例えば、清澄・均質化した熔融ガラスを熔融容器底部に取り付けたガラス流出パイプより流出する。ガラス流出パイプの温度は、流れる熔融ガラスが失透しない温度域であって、成形に適した粘度になるように調整、維持する。また、別な方法としては、清澄・均質化した熔融ガラスを、専用の柄杓で適量掬い取り、熔融容器外に流出してもよい。
冷却工程では、流出させた熔融ガラスを冷却し、ガラス化できる方法であれば、公知の如何様な冷却方法も利用できる。また、冷却に際して、熔融ガラスを、特定の形状に成形してもよいし、意図的に成形しなくてもよい。
なお、成形する場合には、鋳型に流し込んでブロック状としてもよく、パイプから流下させた線状の熔融ガラス流を、一定の長さ(一定の量)ごとに切断してガラス塊としてもよい。
また、後工程において、より精度の高い形状加工を行う場合は、ガラス化されて得られる個々のガラスの形状は大きくばらついていてもよい。また、得られたガラスは濃く着色していてもよく、後工程において、熱処理を行うことにより着色は低減できる。
本実施形態のガラスの製造方法では、流出工程および冷却工程の少なくともいずれか1つの工程を酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。これにより、ガラスの還元色を効率よく低減できる。
通常、高屈折率成分に由来する還元色は、ガラスを酸化性雰囲気で熱処理することで低減できる。特に、Ti、Nb、WおよびBi等の酸化は、ガラスの温度が高いほど速やかに進む傾向にある。
そのため、できるだけ高温のガラス、すなわち熔融工程のガラスを酸化性雰囲気に晒すとよいとも考えられる。しかし、熔融容器や清澄槽等が貴金属材料等で構成されている場合、熔融工程のガラスは、貴金属材料と接する状態にあるため、熔融雰囲気を酸化性雰囲気にすると、貴金属材料が雰囲気中の酸素と反応し、ガラス中に貴金属のイオンが溶け込む等の問題がある。
一方、流出工程および冷却工程のガラスは、熔融工程のガラスに比べて温度が低いが、成形後に降温したガラスに比べれば、なお十分に高温に保たれているといえる。そのため、これらの工程でも、ガラスを酸化性雰囲気に晒すことによるガラスの着色低減の効果は十分に期待できる。さらに、流出工程および冷却工程では、ガラスが熔融容器等を構成する貴金属材料と接触することもないため、上記のような問題は生じ難いと考えられる。
そのため、流出工程および冷却工程の少なくともいずれか1つの工程を酸化性雰囲気とすることで、熔融ガラスへの貴金属材料等の溶け込みを危惧することなく、効率よく還元色を低減できる。
また、熔融ガラス流の方が、鋳型中のガラスブロックよりも、単位体積あたり、酸化性雰囲気に晒されるガラスの表面積が大きくなるため、より効率よく還元色を低減できる。
また、流出工程および成形工程冷却工程の少なくともいずれか1つの工程で、ガラスの還元色の低減が図られていることにより、冷却工程後のガラスについて、気泡や析出物の有無などガラス内部の検査が容易にできる。その結果、早い段階で良質のガラスを精査でき、歩留まりも向上する。
以上のようにして得られたガラスは、下記に示すような熱処理を経ることにより、優れた透過率の改善効果を示し、優れた透過率を有するガラスとなる。
本実施形態のガラスの製造方法は、好ましくは、ガラス化されたガラスを、熱処理する熱処理工程を有する。熱処理は、酸化性雰囲気中で行うことが好ましい。これにより得られるガラスの着色を大幅に低減できる。熱処理工程を経て得られたガラスは、着色が少なく透明度が高い、すなわち、可視域における透過率が高い。
熱処理工程において、熱処理温度および熱処理時間は、所望の光学特性が得られるように適宜設定すればよい。例えば、熱処理温度は、ガラスの軟化点よりも低く、ガラス転移温度Tgよりも100℃低い温度(Tg−100℃)以上の温度が好ましい。
なお、ガラスの着色を所定のレベルまで低減する際、熱処理温度が高ければ、熱処理時間を短縮できる。また、酸化性雰囲気中の酸素分圧を高めても熱処理時間を短縮できる。このように熱処理時間は、熱処理温度や酸化性雰囲気中の酸素分圧により変わるが、ガラスの着色が所望のレベルになるように設定すればよい。熱処理時間は、典型的には、0.1時間〜100時間であることが好ましい。
なお、上記流出工程、ガラス化工程および熱処理工程において、酸化性雰囲気とは、大気雰囲気、または大気よりも酸素分圧が高い雰囲気であり、好ましくは大気よりも酸素分圧が高い雰囲気である。
酸化性雰囲気とするための方法は、特に限定されるものではないが、例えば酸化性雰囲気ガスを供給する方法などが挙げられる。酸化性雰囲気ガスとしては、酸素を含むガスであればよく、酸素濃度は、例えば、空気と同程度前後かそれ以上であればよい。このような酸化性雰囲気ガスとしては、例えば、空気、空気に酸素を加えたガス、実質的に酸素のみからなるガスなどを挙げることができる。
本実施形態の製造方法により得られるガラスLについて
(水分量:βOH)
本実施形態の製造方法で得られたガラスLは、熔融ガラス中の水分量を高める操作により、水分を多く含むため、熱処理後は、着色が低減され、優れた透過率を有する。このようなガラス中に含まれる水分(ガラス中の含水量)は、OHに起因する赤外線吸収量として、分光光度計によって定量的に把握することが可能である。
ガラス中の含水量は、例えば、下式(2)に示すβOH値により把握できる。
βOH=−[ln(B/A)]/t ・・・(2)
ここで、上記式(2)中、tは外部透過率の測定に用いる上記ガラスの厚み(mm)を表し、Aは上記ガラスに対してその厚み方向と平行に光を入射した際の波長2500nmにおける外部透過率(%)を表し、Bは上記ガラスに対してその厚み方向と平行に光を入射した際の波長2900nmにおける外部透過率(%)を表す。また、上記式(2)中、lnは自然対数である。βOHの単位はmm−1である。
なお、「外部透過率」とは、ガラスに入射する入射光の強度Iinに対するガラスを透過した透過光の強度Ioutの比(Iout/Iin)、すなわち、ガラスの表面における表面反射も考慮した透過率であり、後述する「内部透過率」とは、ガラスの表面における表面反射がない場合の透過率(すなわちガラスを構成するガラス材料自体の透過率)である。それぞれの透過率は、分光光度計を用いて、透過スペクトルを測定することにより得られる。
上記式(2)で表されるβOHは、水酸基に起因する吸光度を意味する。そのため、βOHを評価することにより、ガラス中に含まれる水分(および/または水酸化物イオン、以下、単に「水」という。)の濃度を評価することができる。すなわち、βOHが高いほど、ガラス中の含水量が高いことを意味する。
一般に、ガラスのβOHは、ガラス組成や製造条件等によって異なる。例えば、同じ製造条件で作製されたガラスの場合、水を取り込みやすいガラス組成のガラスは、水を取り込み難いガラス組成のガラスに比べて、βOHが高くなる傾向にある。また、同じガラス組成で比較した場合、熔融ガラス中の水分量を高める操作が行われることにより、βOHは高くなる傾向にある。
したがって、本実施形態の製造方法により得られるガラスについて、ガラス中の水分量が高められているか否かを評価する際にも、水の取り込みやすさが同程度のもので比較する必要がある。
本実施形態の製造方法においては、ガラスのβOHの値は、調整できる限り、特に制限されるものではないが、ガラスの着色低減やガラス中の貴金属量低減等の効果を高める観点から、βOHの値は高いほど好ましい。
特に、熱処理後におけるガラスの透過率改善の観点からは、本実施形態の製造方法により作製されるガラスは、下記式(3)を満たすことが好ましい。
βOH≧C×ln(1/HR)+C ・・・(3)
上記式(3)中のlnは自然対数であり、定数Cは0.4891mm−1、定数Cは2.48mm−1である。
本実施形態の製造方法においては、得られるガラスのβOHが、上記(3)式を満足する程度まで、熔融ガラス中の水分量を高める操作を行うことが好ましい。これにより、得られるガラスの熱処理後における、ガラスの着色低減効果をさらに一層高めることができる。
なお、熔融工程において、熔融ガラス中の水分量を高める操作を行わない場合には、得られるガラスは上記(3)式を満足しない傾向にある。したがって、ガラスがこれらの式を満足するか否の結果は、熔融ガラス中の水分量を高める操作が行われたか否かを判断するための指標にもなり得ると考えられる。
また、特に、ガラス中の貴金属量低減の観点からは、本実施形態の製造方法により作製されるガラスは、下記式(4)を満足することが好ましい。
βOH≧D×nd−3−D×nd−2+D×nd−1−D ・・・(4)
上記式(4)中の定数Dは181.39mm−1、定数Dは325.75mm−1、定数Dは194.85mm−1、定数Dは38.1mm−1である。
本実施形態の製造方法においては、得られるガラスのβOHが、上記(4)式を満足する程度まで、熔融ガラス中の水分量を高める操作を行うことが好ましい。これにより、熔融雰囲気中の酸素分圧が十分に低減され、熔融容器が貴金属材料等で構成された場合であっても、熔融雰囲気中の酸素と貴金属材料とが反応することを有効に防止でき、得られるガラス中の貴金属含有量をより一層低減できる。
なお、熔融工程において、熔融ガラス中の水分量を高める操作を行わない場合には、得られるガラスは上記(4)式を満足しない傾向にある。したがって、ガラスがこれらの式を満足するか否の結果は、熔融ガラス中の水分量を高める操作が行われたか否かを判断するための指標にもなり得ると考えられる。
また、本実施形態のガラスの製造方法により得られるガラスのβOHの上限も、ガラスの種類や製造条件によって異なり、調整できる限り、特に制限されるものではない。βOHを高めていくと、熔融ガラスからの揮発物量が増加する傾向にあるため、熔融ガラスからの揮発を抑制する上から、好ましくはβOHが10mm−1以下、より好ましくは8mm−1以下、さらに好ましくは6mm−1以下、一層好ましくは5mm−1以下、より一層好ましくは4mm−1以下、さらに一層好ましくは3mm−1以下、なお一層好ましくは2mm−1以下とすることができる。
なお、赤外光は、濃く着色したガラスであっても透過するため、βOHはガラスの着色の有無(還元色の有無)によらず評価できる。また、通常、熱処理はガラスの軟化点よりも低い温度で行われるため、その前後でガラスのβOHの値は実質的に変化せず、熱処理の前後いずれで測定してもよい。したがって、ガラスのβOHは、熱処理(着色の低減する処理)を経た透明なガラス、および熱処理を経ていない濃く着色しているガラスのいずれで測定してもよい。
(屈折率)
本実施形態の製造方法により得られるガラスの屈折率ndは、1.75以上であることが好ましい。また、屈折率ndのより好ましい下限は1.80、さらに好ましくは1.85、特に好ましくは1.90である。また、屈折率ndの上限は、ガラスが得られる限り制限はないが、例えば2.5程度とすることができる。屈折率の高いガラスからなる光学素子を用い、光学系を構成することによって、光学系のコンパクト化、高機能化が可能なる。このような観点から、屈折率ndは高いほど好ましい。しかし、屈折率を高めるとガラスの耐失透性が低下する傾向を示す。そのため、耐失透性を維持する上から、屈折率ndの好ましい上限は2.4、より好ましくは2.3である。
(ガラス組成)
以下、特記しない限り、ガラス成分の含有量、合計含有量、添加剤の含有量は、酸化物換算のモル%で表示する。
本実施形態に係るガラスは、リン酸塩系ガラスであり、ガラス成分として、TiO、Nb、WOおよびBiから選択される少なくともいずれか1種の酸化物(以下、「高屈折率成分」ということがある)を含有する。好ましくは、ガラス中に含まれるTiO、Nb、WOおよびBiの合計含有量は、30モル%以上であり、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは37モル%以上、特に好ましくは38モル%以上、一層好ましくは38.5モル%以上、より一層好ましくは39モル%以上、さらに一層好ましくは40モル%以上、なお一層好ましくは43モル%以上、特に一層好ましくは50モル%以上である。TiO、Nb、WOおよびBiの合計含有量が85%を超えると耐失透性が悪化傾向を示すため、耐失透性を維持する観点から、TiO、Nb、WOおよびBiの合計含有量は85%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、75%以下であることがさらに好ましい。
リン酸塩系ガラスであることは、ガラス中のTiO、Nb、WOおよびBiの含有量を高める観点からも好ましい。リン酸塩系ガラス中では、加熱処理時のHの移動速度が速く、他の組成系に比べると短時間の加熱処理で着色を低減できる。
このようなガラスとしては、モル%表示において、Pの含有量がSiOの含有量よりも大きくかつBの含有量よりも多いガラスや、Pの含有量がSiOとBの合計含有量よりも多いガラスを挙げることができる。
本実施態様は、実施例に例示する組成に加え、TiO、Nb、WOおよびBiの含有量が上記範囲にある公知の組成を含むガラス組成に適用できる。
次に、本実施態様における好ましいガラス組成について説明する。
は、ガラスネットワーク形成成分であり、ガラスの熱的安定性を維持する働きがある。Pの含有量が7%未満であると、熱的安定性が低下傾向を示すため、Pの含有量を7%以上にすることが好ましい。Pの含有量が40%より大きいと、屈折率が低下する。したがって、Pの含有量を7〜40%の範囲にすることが好ましい。Pの含有量のより好ましい下限は10%、さらに好ましい下限は12%、一層好ましい下限は15%、より一層好ましい下限は18%である。Pの含有量のより好ましい上限は35%、さらに好ましい上限は33%、一層好ましい上限は30%、より一層好ましい上限は28%である。
SiOは、P系組成のガラスには溶け難く、多量に導入すると溶け残りが生じてガラスの均質性が悪化する傾向を示す。溶け残りが生じないよう熔融温度を高めると、貴金属含有量が増加し、ガラスの着色も増大する。そのため、SiOの含有量は、Pの含有量(M)よりも少ない。SiOの含有量を上記M(Pの含有量[%])との関係を表すと、好ましいSiOの含有量の範囲は0%〜0.8×M[%]であり、より好ましい範囲は0%〜0.5×M[%]、さらに好ましい範囲は0%〜0.3×M[%]、一層好ましい範囲は0%〜0.15×M[%]である。
は、少量を含有させることにより耐失透性を改善する働きをする。Bの含有量を上記M(Pの含有量[%])との関係を表すと、Bの含有量の範囲は0%以上、M[%]未満であり、好ましい範囲は0%〜0.9×M[%]、より好ましい範囲は0%〜0.7×M[%]、さらに好ましい範囲は0%〜0.6×M[%]、一層好ましい範囲は0%〜0.5×M[%]、より一層好ましい範囲は0%〜0.4×M[%]、さらに一層好ましい範囲は0%〜0.35×M[%]である。
TiO、Nb、WOおよびBiは屈折率を高めるとともに、分散を高める働きをし、化学的耐久性を改善する働きをする成分である。しかし、TiO、Nb、WOおよびBiの含有量がそれぞれ多くなると耐失透性が悪化する傾向を示す。
耐失透性を維持する観点から、TiOの含有量の好ましい上限は40%、より好ましい上限は35%、さらに好ましい上限は33%、一層好ましい上限は30%である。TiOの導入効果を得る上から、TiOの含有量の好ましい下限は1%、より好ましい下限は3%である。TiOの含有量を0%にすることもできる。
耐失透性を維持する観点から、Nbの含有量の好ましい上限は45%、より好ましい上限は40%、さらに好ましい上限は35%である。Nbの導入効果を得る上から、Nbの含有量の好ましい下限は5%、より好ましい下限は8%、さらに好ましい下限は11%である。Nbの含有量を0%にすることもできる。
WOの含有量の好ましい範囲は0〜30%である。上記WOの導入効果を得る観点から、WOの含有量の好ましい下限は1%、より好ましい下限は3%、さらに好ましい下限は5%である。一方、耐失透性を維持する上で、WOの含有量の好ましい上限は27%、より好ましい上限は24%、さらに好ましい上限は20%、一層好ましい上限は18%である。WOの含有量を0%にすることもできる。
Biの含有量の好ましい範囲は0〜35%である。上記Biの導入効果を得る上で、Biの含有量の好ましい下限は1%、より好ましい下限は3%、さらに好ましい下限は5%である。一方、耐失透性を維持する観点から、Biの含有量の好ましい上限は30%、より好ましい上限は28%、さらに好ましい上限は24%である。Biの含有量を0%にすることもできる。
なお、前述のように、BiおよびWOの合計含有量が15モル%以下のガラスでは、熔融ガラス中の水分量を高める操作により、屈折率の変動の問題が顕著となる。したがって、本実施形態に係る製造方法は、BiおよびWOの合計含有量が、好ましくは15モル%以下、より好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下、一層好ましくは1モル%以下のガラス(すなわち、元来、屈折率の変動が大きいガラス)の製造に対して好適である。
BiとBの合計含有量の好ましい範囲は、50%未満、より好ましい範囲は45%未満、さらに好ましい範囲は40%である。
BaO、SrO、CaO、MgO、ZnO等の二価金属成分は、ガラスの熔融性を改善し、ガラスの着色を低減する働きをする。また、適量であれば耐失透性を改善する働きをする。しかし、過剰量の含有により屈折率が低下し、耐失透性が悪化する傾向を示す。したがって、上記観点からは、BaO、SrO、CaO、MgOおよびZnOの合計含有量が0〜40%であることが好ましく、0〜32%であることがより好ましい。BaO、SrO、CaO、MgOおよびZnOの合計含有量の好ましい上限は30%、より好ましい上限は27%、さらに好ましい上限は25%である。BaO、SrO、CaO、MgOおよびZnOの合計含有量の好ましい下限は0.1%、より好ましい下限は0.5%、さらに好ましい下限は1%である。
これら2価金属成分のうち、BaOは高屈折率を維持する上で有効な成分であることから、BaOの含有量を0〜40%の範囲にすることが好ましく、0〜32%の範囲にすることがより好ましい。BaOの含有量の好ましい上限は30%、より好ましい上限は27%、さらに好ましい上限は25%である。BaOの含有量の好ましい下限は0.1%、より好ましい下限は0.5%、さらに好ましい下限は1%である。BaOの含有量を0%にすることもできる。
LiO、NaO、KO等のアルカリ金属酸化物はガラスの熔融性を改善し、ガラスの着色を低減する働きをする。またガラス転移温度、軟化温度を低下させ、ガラスの加熱処理温度を低下させる働きもする。しかし、過剰量の含有により屈折率が低下し、耐失透性が悪化する傾向を示す。したがって、上記観点からは、LiO、NaOおよびKOの合計含有量が0〜40%であることが好ましく、0〜35%であることがより好ましく、0〜32%であることがさらに好ましく、0〜30%であることが一層好ましい。LiO、NaOおよびKOの含有量をそれぞれ0%にすることもできる。特に、アルカリ金属酸化物としてLiOを用いる場合、高屈折率ガラスを得る観点から、その含有量は製造されるガラス中において0%を超え10%未満であることがより好ましく、0%を超え9%以下であることがさらに好ましく、0%を超え8%以下であることが特に好ましい。
なお、上述のように本実施形態に係る製造方法は、特に熔融ガラス中の水分量を高める操作により特性値が大きく変動しやすいガラスの製造に好適であるといえる。したがって、このような観点からは、本実施形態に係る製造方法は、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ金属酸化物の合計含有量(すなわち、MgO,CaO、SrO、BaO、LiO、NaOおよびKOの合計含有量)が、好ましくは15モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは25モル%以上、一層好ましくは30モル%以上のガラスの製造に好適である。
Alは少量であれば耐失透性を改善する働きをするが、過剰量の含有により屈折率が低下する。したがって、Alの含有量の好ましい範囲は0〜12%、より好ましい範囲は0〜7%、さらに好ましい範囲は0〜3%である。
ZrOは屈折率を高める働きをし、少量であれば耐失透性を改善する働きをする。しかし、過剰量の含有により、耐失透性や熔融性が悪化傾向を示すため、ZrOの含有量の好ましい範囲は0〜16%、より好ましい範囲は0〜12%、さらに好ましい範囲は0〜7%、一層好ましい範囲は0〜3%である。
GeOは耐失透性を維持しつつ、屈折率を高める働きをする。また、GeOは屈折率を高める働きを有するが、TiO、Nb、WOおよびBiと異なり、ガラスの着色を増大させない。しかし、他の成分と比較して非常に高価な成分であるため、ガラスの製造コストを低減する上からGeOの含有量は少ないほどよい。したがって、高屈折率ガラス製品を広く普及するためには、GeOの含有量を削減しつつ、透過率の優れた高屈折率ガラスを提供することが望まれる。本実施態様によれば、TiO、Nb、WOおよびBiの合計含有量を20%以上とすることにより、多量のGeOを使用しなくても、透過率の優れた高屈折率ガラスを提供できる。
このような観点から、GeOの含有量の好ましい範囲は0〜10%、より好ましい範囲は0〜5%、さらに好ましい範囲は0〜3%、一層好ましい範囲は0〜2%、より一層好ましい範囲は0〜1%、さらに一層好ましい範囲は0〜0.5%であり、GeOを含有しなくてもよい。なお、製造コストを考慮しなければ、有効量で好適に用いることができる。
TeOは耐失透性を維持しつつ、屈折率を高める働きをする。しかし、環境への負荷を軽減する上からTeOの含有量の好ましい範囲は0〜10%、より好ましい範囲は0〜5%、さらに好ましい範囲は0〜3%、一層好ましい範囲は0〜2%、より一層好ましい範囲は0〜1%、さらに一層好ましい範囲は0〜0.5%であり、TeOを含有しなくてもよい。
Sbは酸化作用を有し、TiO、Nb、WOおよびBiの還元を抑制する働きをする。しかし、Sb自体が可視域に吸収を有し、その酸化作用により貴金属製の熔融容器を酸化して貴金属イオンの熔融ガラスへの溶け込みを助長する。したがって、Sbの含有量の好ましい範囲は0ppm以上1000ppm未満である。上記観点から、Sbの含有量の上限は、900ppm、800ppm、700ppm、600ppm、500ppm、400ppm、300ppm、200ppm、100ppmの順に少ない値ほど一層好ましい。Sbを含有させなくてもよい。
上記成分以外の成分を多量に含有させると、ガラスの耐失透性が悪化し、液相温度が上昇する傾向を示す。そのため、ガラス熔融温度を高めなければならず、貴金属製熔融容器の侵蝕が増大し、ガラスに溶け込む貴金属の量が増加する。また、TiO、Nb、WOおよびBiの還元色も増大する。
こうした貴金属量の増加を抑制し、ガラスの着色を抑制する上から、P、SiO、B、TiO、Nb、WO、Bi、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、LiO、NaO、KO、Al、ZrO、GeO、TeOおよびSbの合計含有量を90%以上とすることが好ましく、92%以上とすることがより好ましく、95%以上とすることがさらに好ましく、96%以上とすることが一層好ましく、97%以上とすることがより一層好ましく、98%以上とすることがさらに一層好ましく、99%超とすることがなお一層好ましい。なお、上記合計含有量を100%としてもよい。
Ta、Y、La、Gd、Yb、In、Ga、SnO、CeO、Fなども少量であれば含有させることができる。Ta、Y、La、Gd、Yb、In、GaおよびFの合計含有量を0〜10%とすることが好ましく、0〜7%とすることがより好ましく、0〜5%とすることがさらに好ましく、0〜3%とすることが一層好ましく、0〜1%とすることがより一層好ましく、0〜0.5%とすることがさらに一層好ましい。
Fは、熔融ガラスの揮発性を高め、均質なガラスを得る上からも、安定した光学特性を有するガラスを得る上からも、多量に含有させるべき成分ではない。Fの含有量の好ましい範囲は0〜3%、より好ましい範囲は0〜1%、さらに好ましい範囲は0〜0.5%であり、実質的にFを含まないことが一層好ましい。
環境への負荷を低減する上から、Pb、As、Cd、U、Th、Tlを実質的に含有しないことが好ましい。
ガラスの着色を低減する上から、Cu、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、V、Mo、Nd、Eu、Er、Tb、Ho、Prなどの可視域に吸収を有する成分、添加剤を実質的に含有しないことが好ましい。
しかしながら、本実施形態に係る光学ガラスにおいて、不可避的不純物の含有を排除するものではない。
なお、「実質的に含有しない」とは、含有量が0.5モル%未満であることを目安にすることができる。実質的に含有しない成分や添加剤は、ガラスに含まれないことが好ましいから、その含有量が0.1モル%未満であることが好ましく、0.08モル%未満であることがより好ましく、0.05モル%未満であることがさらに好ましく、0.01モル%未満であることが一層好ましく、0.005モル%未満であることがより一層好ましい。
なお、ガラス原料としては、ガラス成分に応じて、酸化物、リン酸、リン酸塩(ポリリン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩など)、ホウ酸、無水ホウ酸、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物など、公知のガラス原料を使用することができる。
本実施形態の製造方法により得られるガラスの用途は、特に限定されるものではないが、例えば光学ガラスとして好適に用いることができる。
上述のように、高屈折率成分(Ti、Nb、W、Bi等)を多量に含有した光学ガラスは、ガラスの着色(還元色)の問題が顕著であるが、本実施形態の製造方法によれば、高屈折率でありながら、優れた透過率を有する光学ガラスを容易に得ることができる。
すなわち、本実施形態の製造方法により得られる光学ガラスは、上記のような高屈折率成分を多量に含有した場合であっても、熱処理によって効率よく還元色を低減できる。さらに、熔融容器等として白金等の貴金属材料を用いた場合であっても、貴金属材料が熔融ガラス中に溶け込むことを効果的に抑制でき、貴金属イオンに由来する着色も極めて少ない。このような本実施形態の製造方法により得られる光学ガラスは、優れた透過性を有する。
また、本実施形態の製造方法によれば、熔融ガラス中の水分量を高める操作により、熔融ガラス中の溶存ガス量を高めることができ、清澄性を大幅に改善できる。その結果、泡の少ない均質な光学ガラスを短時間で得ることができる。
光学素子の製造
上記のガラスを使用して光学素子を作るには、公知の方法を適用すればよい。例えば、熔融ガラスを成形してプレス成形用ガラス素材を作製する。次に、このガラス素材を再加熱、プレス成形して光学素子ブランクを作製する。さらに光学素子ブランクの研磨を含む工程により加工して光学素子を作製する。
あるいは、熔融ガラスを成形してプレス成形用ガラス素材を作製し、このガラス素材を加熱、精密プレス成形して光学素子を作製する。
上記の各工程において、熔融ガラスを成形してガラス成形体を作製し、ガラス成形体を加工してプレス成形用ガラス素材を作製してもよい。
あるいは、熔融ガラスを成形してガラス成形体を作製し、この成形体を加工して光学素子を作製する。
作製した光学素子の光学機能面には使用目的に応じて、反射防止膜、全反射膜などをコーティングしてもよい。
光学素子としては、球面レンズ、非球面レンズ、マクロレンズ、レンズアレイなどの各種レンズ、プリズム、回折格子などを例示することができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
また、本実施形態に係るガラスは、光学素子用の材料として好適であるため、非晶質性(アモルファス)のガラスであることが好ましい。ガラス製の光学素子を作製する方法には、例えば、ガラス材料を加熱、軟化させて成形する方法がある。ガラス質の中に結晶相が分散した結晶化ガラスは、上記成形方法には不向きである。また、結晶化ガラス中の結晶相が光を散乱し、光学素子としての性能を低下させることもある。非晶質性ガラスには、このような問題はない。
また、本実施形態では、ガラスの製造方法の一例として、主として坩堝を用いて原材料を熔融する方法を例示しているが、熔融容器としては、両端が開口した石英製のチューブ等を用いてもよい。
具体的には、ガラス熔解炉内に、石英製等のチューブを傾斜状態で固定する。ガラス熔解炉の底部には、チューブの低位置側の開口端下方に相当する位置に開口部を設けておく。チューブの高位置側の開口端からチューブ内に原材料(バッチ原料、またはカレット)を導入し、チューブ内で熔解(または熔融)して熔融物とする。熔融物はチューブ中をゆっくりと流動し、チューブの低位置側の開口側から次々に流出する。
例えば、ラフメルト工程で上記チューブ等を用いる場合には、流出物は炉底の開口部を通過し、予めガラス熔解炉の底部の開口部下方に配置した水槽中の水へと、次々に滴下され、カレットになる。
上記の方法では、石英製等のチューブを用いて原材料を熔融したが、チューブの替わりに、石英製等の坩堝を用いてもよい。まず石英製等の坩堝の中に原材料を入れて熔融し、熔融物とし、次いで、熔融物を水中に流し出したり、冷却した耐熱板上に流し出したりしてカレットを作製してもよい。
(比較例1)
[バッチ原料の調製]
まず、所望の特性を備えた光学ガラスを作製するにあたり、ガラスの原材料として、リン酸、メタリン酸バリウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化ビスマス、ホウ酸、炭酸バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび酸化ケイ素をそれぞれ準備した。次に、得られるガラス(カレット)のガラス組成が、表1に示す酸化物組成I〜VIとなるように、上記原材料を適宜選択、秤量し、十分混合してバッチ原料I〜VIを作製した。
Figure 2015117169
[カレット作製(ラフメルト工程)]
調合されたバッチ原料I〜VIを、各光学ガラスのガラス原料とした。このガラス原料を石英製坩堝に投入し、大気雰囲気中で900〜1350℃で熔解して熔融物を得た。このようにして得られた熔融物を水中に滴下してカレットを得た。
水中から取り出したカレットを乾燥させ、カレットの一部を屈折率測定用にサンプリングし、白金製坩堝に入れて熔解し、得られたガラス融液を清澄、均質化した後、鋳型に鋳込んで成形し、ガラス転移温度付近の温度で保持した後、10℃/時の降温速度で冷却し、測定用試料(幅150mm×厚さ10mmのブロック状のガラス)を作製した。得られた測定用試料について、日本光学硝子工業会規格で定められた屈折率測定法により、屈折率nd、ng、nF、ncを測定した。さらに、これら屈折率の測定値より、アッベ数νdを算出した。結果を表1に示す。
また、上記と同様の方法で作製した均質化後のガラス融液を、鋳型に鋳込んで成形し、大気雰囲気中で、+100℃/時の速度で昇温し、それぞれのガラス転移温度付近で1.5〜8時間保持し、−10℃/時の速度で降温して、歪を除去し、ガラスブロック(幅150mm×厚10mm)を得た。次に、このガラスブロックを、円柱形状の測定用試料(直径5mm、高さ20mm)に加工し、熱機械分析装置(TMA)を用い、昇温速度+4℃/分の条件で、ガラス転移温度Tgを測定した。結果を表1に示す。
[熔融炉の設定]
次に、熔融炉を準備した。熔融炉は、熔解工程を行う熔解槽、清澄工程を行う清澄槽、均質化工程を行う作業槽を内蔵する。熔解槽、清澄槽、作業槽は白金製であり、熔解槽と清澄槽、清澄槽と作業槽とがそれぞれ白金製のパイプで連結されている。また、作業槽の底部に白金製のガラス流出パイプが接続されている。
熔融炉の近くにボイラーを設置し、ボイラーで発生した水蒸気を熔解槽、清澄槽、作業槽の各槽へと導く耐熱性材料からなるパイプが配管されている。パイプの途中には、流量計と流量調整バルブが設置されている。
また、ボイラーで発生した水蒸気を熔解槽、清澄槽内の熔融ガラスにバブリングするための耐熱性パイプが配管してあり、途中に流量計と流量調整バルブが設置されている。
なお、熔融炉内の容積(坩堝を収納する耐火物製の炉内空間の体積)は40Lである。
[光学ガラスの作製(リメルト工程)]
次に、上記熔融炉の熔解槽に、表4に示すカレットをガラス原料としてそれぞれ投入し、800〜1350℃の範囲内で加熱、熔融し、熔融ガラスとした(熔融工程)。
その後、熔融ガラスは熔解槽から、清澄槽へと流れ、清澄温度(900〜1450℃の範囲)にまで昇温し、清澄した(清澄工程)。続けて、作業槽へと流れ、均質化温度にまで降温し、攪拌器具で攪拌して均質化した(均質化工程)。
なお、熔融炉内での熔融ガラスの滞在時間(熔解槽にカレットを投入してから、作業槽で熔融ガラスを流出するまでの時間)は、ガラス組成に応じて表4に示す時間とした。
また、比較例1では、熔融炉内へ水蒸気の投入は行っていない。さらに、熔解工程から清澄工程を経て均質化工程に至るまで、白金製の蓋はせずに、熔融容器を開放した状態で、全て大気雰囲気下で行った。
このようにして均質化した熔融ガラスを、大気雰囲気中で、流出パイプより流出し(流出工程)、流出パイプの下方に配置した鋳型に流し込むことで、長尺のガラスブロック(幅150mm×厚10mm)を成形した(成形工程)。
その後、上記ガラスブロックを、大気雰囲気中で、+100℃/時の速度で昇温し、それぞれのガラス転移温度付近で1.5〜8時間保持し、−10℃/時の速度で降温して(アニール工程)、歪を除去した光学ガラスを得た(試料1〜試料6)。
[特性評価]
得られた各種ガラスの測定は、次の方法で行った。
[1]屈折率nd
作業槽から均質化後の熔融ガラスを適量採取し、鋳型に鋳込んで成形し(幅150mm×厚さ10mmのブロック状のガラスとし)、ガラス組成から予測されるガラス転移温度付近の温度で保持した後、−10℃/時の降温速度で冷却し、サンプルAとした。得られたサンプルAについて、日本光学硝子工業会規格で定められた屈折率測定法により、屈折率ndを測定した。測定値を表4に示す。さらに、目標値と測定値との差を、Δndとして表4に示す。
[2]βOH
作業槽から均質化後の熔融ガラスを適量採取し、鋳型に鋳込んで成形し(幅150mm×厚さ10mmのブロック状のガラスとし)、大気雰囲気中で、+100℃/時の速度で昇温し、ガラス組成から予測されるガラス転移温度付近で1.5〜8時間保持し、−10℃/時の速度で降温して(アニール工程)、歪を除去し、サンプルBとした。このようにして得られたサンプルBを加工して、両面が互いに平行かつ平坦に光学研磨された厚さ1mmの板状ガラス試料を準備した。この板状ガラス試料の研磨面に垂直方向から光を入射して、波長2500nmにおける外部透過率Aおよび波長2900nmにおける外部透過率Bを、分光光度計を用いてそれぞれ測定し、下記式(1)により、βOHを算出した。
βOH=−[ln(B/A)]/t ・・・(1)
上記式(1)中、lnは自然対数であり、厚さtは上記2つの平面の間隔に相当する。また、外部透過率は、ガラス試料表面における反射損失も含み、ガラス試料に入射する入射光の強度に対する透過光の強度の比(透過光強度/入射光強度)である。また、βOHの値は、高いほど、ガラス中に水が多く含まれていることを意味する。結果を表4に示す。
[3]T450(H)
上記サンプルBを、大気雰囲気中で、+100℃/時の速度で昇温し、所定の保持温度で100時間保持して、−30℃/時の速度で降温して、熱処理した。なお、保持温度は、組成に応じて異なるため、それぞれの光学ガラスサンプルの酸化物組成に応じて、表2に示す温度とした。
Figure 2015117169
熱処理後の光学ガラスサンプルを加工して、両面が互いに平行かつ平坦に光学研磨された厚さ10mmの板状ガラス試料を準備した。このようにして得られた板状ガラス試料について、分光光度計を用いて450nmにおける外部透過率T450(H)を求めた。T450(H)の値が大きいほど、透過率に優れ、ガラスの着色は低減されていることを意味する。結果を表4に示す。
[5]Pt含有量
作業槽から適量採取した均質化後の熔融ガラスをガラス化し、これをアルカリ融解して、Ptを分離する処理した後、ICP−MS法によりガラス中のPt量を定量した。結果を表4に示す。
[6]着色度λ70
まず、上記サンプルBを、T450(H)の場合と同様の条件で熱処理した。
熱処理後の光学ガラスサンプルを加工して、両面が互いに平行かつ平坦に光学研磨された厚さ10mm±0.1mmの板状ガラス試料を準備した。この板状ガラス試料の研磨面に垂直方向から光を入射して、波長280nm〜700nmの範囲で表面反射損失を含む分光透過率を、分光光度計を用いて測定し、分光透過率(外部透過率)が70%になる波長を、着色度λ70とした。λ70の値は、小さいほど、ガラスの着色が少ないことを意味する。結果を表4に示す。
[7]T450(L)
作業槽から均質化後の熔融ガラスを0.5〜0.7cc採取し、浮上成形用の鋳型(熔融ガラスを受ける凹部が多孔質体で形成され、多孔質体を通して凹部表面からガスが噴出する構造になっている鋳型)の凹部に流し込み、凹部からガスを噴出し、凹部上の熔融ガラス塊に上向きの風圧を加え、ガラス塊を浮上状態で成形した。
その後、上記ガラス塊を、+100℃/時の速度で昇温し、所定の保持温度および保持時間で保持し、−30℃/時の速度で降温して、熱処理後の球状光学ガラスサンプルを得た。なお、保持温度および保持時間は、組成に応じて異なるため、それぞれの光学ガラスサンプルの酸化物組成に応じて、表3に示す温度および時間とした。
Figure 2015117169
得られた球状光学ガラスサンプルを加工して、両面が互いに平行かつ平坦に光学研磨された厚さ5mmの板状ガラス試料を準備した。このようにして得られた板状ガラス試料について、分光光度計を用いて450nmにおける外部透過率T450(L)を求めた。T450(L)の値は、大きいほど透過率に優れ、短時間の熱処理でもガラスの着色が低減されていることを意味する。
[8]泡切れ
清澄工程を開始する前の熔融ガラス(ガラス融液)を40cc採取し、大気中で別の白金坩堝で一定時間清澄し、ガラス融液を白金坩堝中で冷却し、固化させた。この過程で、ガラス中に含まれる泡の数をカウントできる程度に着色を低減した。次に固化したガラスを白金坩堝から取り出した。
このようにして得られた測定用サンプルについて、光学顕微鏡(倍率20〜100倍)を用いてガラス内部を拡大観察(100倍)し、ガラス中に含まれる泡の数をカウントした。清澄時間の異なる測定用サンプルのそれぞれについて同様の観察を行い、ガラス中に残留する泡数が100個/kg以下になる測定用試料の清澄時間を、泡切れの時間として評価した。泡切れ時間は、短いほど清澄性に優れている。結果を表4に示す。
(比較例2)
比較例2では、熔融工程、清澄工程、均質化工程において、熔融雰囲気に水蒸気を付加する処理および熔融物内に水蒸気をバブリングする処理の少なくともいずれか一方を行った以外は、比較例1と同様の方法で表4に示すカレットを熔融し、光学ガラスを得た(試料11〜試料62)。
具体的には、熔融炉の近くにボイラーから水蒸気(HO 100体積%)を炉内の空間へと供給した。このように、熔融雰囲気への水蒸気の付加は、大気に水蒸気を付加することにより行った。各試料において供給した水蒸気の流量は、表4に示す。
また、必要に応じて、熔融炉の下部に設置した管から、熔融物中に水蒸気(HO 100体積%)をバブリングした。このように、熔融物内への水蒸気バブリングは、大気雰囲気中の熔融物、または、大気に水蒸気を付加した熔融雰囲気中の熔融物に対して水蒸気バブリングすることにより行った。各試料において供給した水蒸気の流量は、表4に示す。
なお、表4中に示す、水蒸気の流量は常温、常圧での流量に換算した値であり、単位はリットル/分である。
また、得られたガラスについては、比較例1と同様の方法で、ガラスの特性を評価した。評価結果を表4に示す。
Figure 2015117169
表4に示されるように、熔融物中の水分量を高める操作を行っていない試料(試料1〜6)では、目的とする屈折率ndを有するガラスが得られたものの、着色低減効果は十分に得られていなかった。さらに、Ptの含有量も高く、清澄性も劣っていた。
これに対し、熔融物中の水分量を高める操作を行った試料(試料11〜63)では、着色低減の効果に優れ、Ptの溶け込み量も低減され、清澄性も向上していた。しかし、各種試料の屈折率ndの測定値は、目標値からずれており、その差は許容範囲(目標値±0.00050以内、以下において同じ)を超えていた。
(実施例1)
実施例1では、比較例2を第1サイクルとし、比較例1で作製した各種試料の屈折率ndの測定値と、目標値との差を許容範囲内とするために、ガラス原料を補正した以外は、比較例2と同様の方法で光学ガラスを得た(試料11−1〜試料62−1)。ガラス原料の補正は、具体的には以下のように行った。
実施例1では、まず、カレットI〜VIのガラス組成よりも、Pの含有量が僅かに多くなるように、原材料を混合し、バッチ原料I’〜VI’それぞれを準備した。当該バッチ原料をシリカ製容器に入れて粗熔解(ラフメルト)し、熔融物を水中に滴下し、カレットI’〜VI’を得た。なお、Pの含有量をどの程度多くするかは、バッチ原料I〜VIとバッチ原料I’〜VI’の混合比を考慮して適宜決めればよいが、本実施例では、カレットI’〜VI’におけるP含有量の増加量を、0.01〜0.2質量%程度とした。
次に、第1サイクル(比較例2)で作製した各種試料(L)の屈折率ndの測定値(nd)と目標値(nd)の差(Δnd)に応じて、各試料のガラス原料に対応する調合カレットを準備した。
例えば、第1サイクルで作製した試料11では、ガラス原料としてカレットIを用いていた。そこで、試料11−1では、試料11で熔解槽に投入したカレットIの一部をカレットI’に置換した調合カレットを準備した。
なお、試料12は、試料11よりもΔndが大きい。そのため、試料12−1では、試料11−1よりも、カレットI’の置換量を多くした。
このような手法で、その他の試料(試料13−1〜試料63−1)についても、第1サイクルで作製した試料(試料13〜63)のΔndに応じて、これを補正するような調合カレットを準備し、第2サイクルのガラス原料とした。
さらに、第2サイクルでも、均質化した熔融ガラスを掬い取り、屈折率ndを測定し、目標値ndとの差(Δnd)を算出した。Δndが許容範囲内だった試料は、サイクルを終了し、他の特性(T450等)を評価した。また、Δndが許容範囲外だった試料については、Δndが許容範囲になるまでガラス原料(調合カレット)を補正するサイクルを続けた。各試料について行ったサイクル数(n)を表5に示す。
なお、第2サイクル以降は、ガラス原料の組成を調整したのみであって、熔融工程における水分量を高める操作(熔融雰囲気に供給する水蒸気の流量等)については、第1サイクルの条件から変更していない。
また、Δndが許容範囲内に補正できたガラスについては、比較例1と同様の方法で、ガラスの特性を評価した。評価結果を表5に示す。
Figure 2015117169
表5に示されるように、ガラス原料の組成(調合カレット)を調整することで、水蒸気を投入した際の特性変動の影響を低減できることが確認された。
(実施例2)
実施例2では、比較例2を第1サイクルとし、比較例1で作製した各種試料の屈折率ndの測定値と、目標値との差を許容範囲内とするために、ガラス原料を補正すると共に、熔融雰囲気に供給する水蒸気の流量を補正した以外は、比較例2と同様の方法で光学ガラスを得た(試料11−2〜試料62−2)。ガラス原料の補正は、具体的には以下のように行った。
例えば、試料11−2では、第2サイクルとして、実施例1の試料11−1で作製した調合カレットよりも、カレットI’の量を低減した調合カレットを準備し、これをガラス原料として熔融ガラスを得た。
均質化した熔融ガラスを掬い取り、屈折率ndを測定し、目標値ndとの差Δndを、第3サイクルで熔融雰囲気に供給する水蒸気の流量を低減させることでさらに調整した。
このような手法で、その他の試料(試料12−2〜試料63−2)についても、第1サイクルで作製した試料(試料13〜63)のΔndに応じて、これを補正するようなガラス原料(調合カレット)および熔融雰囲気に供給する水蒸気の流量の調整を行った。
さらに、第3サイクルでも、均質化した熔融ガラスを掬い取り、屈折率ndを測定し、目標値ndとの差(Δnd)を算出した。Δndが許容範囲内だった試料は、サイクルを終了し、他の特性(T450等)を評価した。また、Δndが許容範囲外だった試料については、Δndが許容範囲になるまでガラス原料(調合カレット)および/または熔融雰囲気に供給する水蒸気の流量を補正するサイクルを続けた。各試料について行ったサイクル数(n)を表6に示す。
また、Δndが許容範囲内に補正できたガラスについては、比較例1と同様の方法で、ガラスの特性を評価した。評価結果を表6に示す。
Figure 2015117169
表6に示されるように、ガラス原料の組成(調合カレット)および熔融雰囲気に供給する水分量を調整することで、水蒸気を投入した際の特性変動の影響を低減できることが確認された。
(実施例3)
実施例3では、比較例2を第1サイクルとし、比較例1で作製した各種試料の屈折率ndの測定値と、目標値との差を許容範囲内とするために、熔融雰囲気に供給する水蒸気の流量を補正した以外は、比較例2と同様の方法で光学ガラスを得た(試料11−3〜試料62−3)。ガラス原料の補正は、具体的には以下のように行った。
例えば、第1サイクルの試料11では、熔融雰囲気に40リットル/分で水蒸気を供給していた。そこで、試料11−3では、第2サイクルとして、熔融炉に供給する水蒸気量を減らして熔融ガラスを得た。
このような手法で、その他の試料(試料12−3〜試料63−3)についても、第1サイクルで作製した試料(試料13〜63)のΔndに応じて、これを補正するような熔融雰囲気に供給する水蒸気の流量の調整を行った。
さらに、第2サイクルでも、均質化した熔融ガラスを掬い取り、屈折率ndを測定し、目標値ndとの差(Δnd)を算出した。Δndが許容範囲内だった試料は、サイクルを終了し、他の特性(T450等)を評価した。また、Δndが許容範囲外だった試料については、Δndが許容範囲になるまで熔融雰囲気に供給する水蒸気の流量を補正するサイクルを続けた。各試料について行ったサイクル数(n)を表7に示す。
また、Δndが許容範囲内に補正できたガラスについては、比較例1と同様の方法で、ガラスの特性を評価した。評価結果を表7に示す。
Figure 2015117169
表7に示されるように、熔融雰囲気に供給する水分量を調整することで、水蒸気を投入した際の特性変動の影響を低減できることが確認された。

Claims (13)

  1. 原材料を調合して、組成Gを有するガラス原料を得る調合工程と、
    上記ガラス原料を熔融容器内にて熔融する熔融工程と、
    上記熔融物を冷却、ガラス化して、ガラスLを得るガラス化工程と、
    上記ガラスLの特性Pを評価する評価工程と、を含み、
    以上の工程を2サイクル以上繰り返すガラスの製造方法であって(nはサイクル数)、
    前記熔融工程では、前記熔融物中の水分量を高める操作を行い、
    目的とするガラスLに求める特性をPとし、第(n−1)サイクルで評価したガラスL(n−1)の特性をP(n−1)とし、前記Pと前記P(n−1)との差{P(n−1)−P}をΔP(n−1)とした場合に、ΔP(n−1)が許容範囲内となるように、前記第nサイクル(n≧2)における前記組成Gを調節する操作、または前記第nサイクル(n≧2)における前記熔融物中の水分量を調節する操作の少なくとも一方を行い、
    最終的に得られるガラスLは、TiO、Nb、WOおよびBiから選択される少なくとも1つの成分を含み、その合計含有量が20モル%以上である、ガラスの製造方法。
  2. 前記第(n−1)サイクルと、前記第nサイクル(n≧2)とを、一連の工程として連続的に行う、請求項1に記載のガラスの製造方法。
  3. 前記第(n−1)サイクルと、前記第nサイクル(n≧2)とを、独立した別の工程として行う、請求項1に記載のガラスの製造方法。
  4. 前記組成Gを調節することなく、前記ΔP(n−1)を許容範囲内にするための操作として、前記第nサイクルにおける前記熔融物中の水分量を調節する操作を行う、請求項1〜3のいずれかに記載のガラスの製造方法。
  5. 前記熔融物中の水分量を調節することなく、前記ΔP(n−1)を許容範囲内にするため操作として、前記第nサイクルにおける前記組成Gを調節する操作を行う、請求項1〜3のいずれかに記載のガラスの製造方法。
  6. 前記特性PおよびPが、光学特性である、請求項1〜5のいずれかに記載のガラスの製造方法。
  7. 前記特性PおよびPが、屈折率ndである、請求項1〜6のいずれかに記載のガラスの製造方法。
  8. 前記第nサイクル(n≧2)で得られるガラスLにおいて、屈折率に基づくΔP(n−1)が、±0.00050以内である、請求項7に記載のガラスの製造方法。
  9. 前記最終的に得られるガラスLは、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物の少なくとも一方の成分を含み、その合計含有量が15モル%以上である、請求項1〜8のいずれかに記載のガラスの製造方法。
  10. 前記最終的に得られるガラスLは、リン酸塩系ガラスである、請求項1〜9のいずれかに記載のガラスの製造方法。
  11. 前記最終的に得られるガラスLは、光学ガラスである、請求項1〜10のいずれかに記載のガラスの製造方法。
  12. 前記最終的に得られるガラスLを酸化性雰囲気下で熱処理する工程をさらに有する、請求項1〜11のいずれかに記載のガラスの製造方法。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法により得られたガラスを用いる、光学素子の製造方法。
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