JP2015113801A - 圧縮機 - Google Patents

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樋口 順英
Yorihide Higuchi
順英 樋口
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Abstract

【課題】冷媒の漏れ損失を低減して効率を向上できると共に、製造および管理コストを低減できる圧縮機を提供する。【解決手段】シリンダ室(22)の真円の内周面の内径をφDs、ローラ部(26)の真円の外周面の外径をφDr、偏心部(122)の主軸(121)に対する偏心量をεとしたとき、(φDs−φDr)/2<εを満たす。フロント側軸受部およびリア側軸受部は、滑り軸受である。フロント側軸受部の中心(52a)およびリア側軸受部の中心(62a)は、シリンダ室(22)の中心(22a)に対して、中心角度が180?以上でかつ270?以下の方向に、偏心している。ローラ部(26)の外周面とシリンダ室(22)の内周面とは、中心角度が180?以上でかつ270?以下の範囲で、互いに対向する第1対向部分(261,211)を有し、シリンダ室(22)の内周面の第1対向部分(211)に、第1切り欠き部(211a)が設けられている。【選択図】図3

Description

この発明は、圧縮機に関する。
従来、圧縮機としては、特開2003−214369号公報(特許文献1)に記載されたものがある。この圧縮機は、シリンダ室を有するシリンダと、偏心部を有するシャフトと、ローラ部を有するローラピストンとを備え、偏心部は、シリンダ室に位置し、ローラ部は、偏心部に嵌合していた。そして、ローラ部が、シリンダ室内を旋回することで、シリンダ室の冷媒は、圧縮されていた。
上記シリンダ室の内周面は、真円の曲率を含まない複数の曲率よりなる非円形に、形成され、運転中のローラ部の外周面とシリンダ室の内周面との径方向の隙間(以下、CP隙間という)を小さくして、冷媒の漏れ損失を低減し効率を向上させていた。
特開2003−214369号公報
ところで、上記従来の圧縮機では、上記シリンダ室の内周面は、真円の曲率を含まない複数の曲率よりなる非円形に、形成されているので、シリンダ室の内周面の加工には、高度なNC制御された加工機が必要であり、コストがかかっていた。また、CP隙間が、ローラ部の1回転において、微少でかつ均一であることを保証するために、加工されたシリンダの形状の管理が、煩雑でコストがかかっていた。
そこで、この発明の課題は、冷媒の漏れ損失を低減して効率を向上できると共に、製造および管理コストを低減できる圧縮機を提供することにある。
上記課題を解決するため、この発明の圧縮機は、
シリンダ室を有するシリンダと、
主軸と、上記主軸に固定され上記シリンダ室に位置する偏心部とを有するシャフトと、
上記偏心部に嵌合するローラ部を有するローラピストンと、
上記シリンダに固定され、上記主軸を支持する軸受部と
を備え、
上記シリンダ室の真円の内周面の内径をφDs、上記ローラ部の真円の外周面の外径をφDr、上記偏心部の上記主軸に対する偏心量をεとしたとき、(φDs−φDr)/2<εを満たし、
上記軸受部は、滑り軸受であり、
上記主軸の中心方向からみて、上記シリンダ室の中心を原点とし、上記ローラピストンの上死点の中心角度を0°とし、上記ローラピストンの回転方向を正方向としたとき、
上記軸受部の中心は、上記シリンダ室の中心に対して、上記中心角度が180°以上でかつ270°以下の方向に、偏心しており、
上記ローラ部の外周面と上記シリンダ室の内周面とは、上記中心角度が180°以上でかつ270°以下の範囲で、互いに対向する第1対向部分を有し、
上記ローラ部の外周面の上記第1対向部分、または、上記シリンダ室の内周面の上記第1対向部分の少なくとも一方に、第1切り欠き部が設けられていることを特徴としている。
この発明の圧縮機によれば、(φDs−φDr)/2<εであるので、シリンダと軸受部を意識せずに固定組立すると運転中にローラ部がシリンダ室の内周面にぶつかってしまう。しかし、軸受部は、滑り軸受であるので、運転中に、シャフトは、軸受部とのクリアランスを移動する。また、軸受部の中心は、シリンダ室の中心に対して、中心角度が180°以上でかつ270°以下の方向に、偏心し、ローラ部の外周面とシリンダ室の内周面とは、中心角度が180°以上でかつ270°以下の範囲で、互いに対向する第1対向部分を有し、ローラ部の外周面の第1対向部分、または、シリンダ室の内周面の第1対向部分の少なくとも一方に、第1切り欠き部が設けられているので、この第1切り欠き部により、ローラ部の外周面とシリンダ室の内周面とが互いに干渉しない。これにより、ローラ部は、シリンダ室の内周面にぶつからず、しかも、ローラ部の外周面とシリンダ室の内周面との径方向の隙間(以下、CP隙間という)を小さくすることができる。
また、シリンダ室の内周面とローラ部の外周面は、第1切り欠き部を除いて真円であるので、シリンダ室の内周面の形状やローラ部の外周面の形状を、真円の曲率を含まない複数の曲率よりなる非円形とする場合に比べて、製造および管理コストを低減できる。
したがって、運転中のローラ部の外周面とシリンダ室の内周面との隙間を小さくして、冷媒の漏れ損失を低減し効率を向上できると共に、シリンダおよびローラピストンの製造および管理コストを低減できる。
また、一実施形態の圧縮機では、
上記ローラ部の外周面と上記シリンダ室の内周面とは、上記中心角度が90°以上でかつ180°以下の範囲で、互いに対向する第2対向部分を有し、
上記ローラ部の外周面の上記第2対向部分、または、上記シリンダ室の内周面の上記第2対向部分の少なくとも一方に、第2切り欠き部が設けられている。
この実施形態の圧縮機によれば、ローラ部の外周面とシリンダ室の内周面とは、中心角度が90°以上でかつ180°以下の範囲で、互いに対向する第2対向部分を有し、ローラ部の外周面の第2対向部分、または、シリンダ室の内周面の第2対向部分の少なくとも一方に、第2切り欠き部が設けられている。これにより、第2切り欠き部は、ローラ部の外周面とシリンダ室の内周面との干渉を、吸収でき、ローラ部は、シリンダ室の内周面にぶつからない。
また、一実施形態の圧縮機では、上記シリンダ室の内周面の上記第1対向部分は、上記第1切り欠き部を有する。
この実施形態の圧縮機によれば、上記シリンダ室の内周面の上記第1対向部分は、上記第1切り欠き部を有するので、ロータリ圧縮機およびスイング圧縮機の両方に適用できる。
また、一実施形態の圧縮機では、
上記シリンダ室の内周面の上記第1対向部分は、上記第1切り欠き部を有し、
上記シリンダ室の内周面の上記第2対向部分は、上記第2切り欠き部を有する。
この実施形態の圧縮機によれば、上記シリンダ室の内周面の上記第1対向部分は、上記第1切り欠き部を有し、上記シリンダ室の内周面の上記第2対向部分は、上記第2切り欠き部を有するので、ロータリ圧縮機およびスイング圧縮機の両方に適用できる。
また、一実施形態の圧縮機では、
上記ローラピストンは、上記ローラ部に固定されたブレード部を有し、
上記ローラ部の外周面の上記第1対向部分は、上記第1切り欠き部を有する。
この実施形態の圧縮機によれば、上記ローラ部の外周面の上記第1対向部分は、上記第1切り欠き部を有するので、ローラ部が自転しないスイング圧縮機に適用できる。
また、一実施形態の圧縮機では、
上記ローラピストンは、上記ローラ部に固定されたブレード部を有し、
上記ローラ部の外周面の上記第1対向部分は、上記第1切り欠き部を有し、
上記ローラ部の外周面の上記第2対向部分は、上記第2切り欠き部を有する。
この実施形態の圧縮機によれば、上記ローラ部の外周面の上記第1対向部分は、上記第1切り欠き部を有し、上記ローラ部の外周面の上記第2対向部分は、上記第2切り欠き部を有するので、ローラ部が自転しないスイング圧縮機に適用できる。
また、一実施形態の圧縮機では、上記シリンダ室内に流入される冷媒は、R32である。
この実施形態の圧縮機によれば、上記シリンダ室内に流入される冷媒は、R32であるため、冷媒による環境負荷を少なくできる。R32は、圧縮温度が高くなりやすい性質を有するが、本実施形態では、この冷媒の漏れを抑制できて、シリンダから吐出される冷媒の温度を低減できる。
この発明の圧縮機によれば、(φDs−φDr)/2 < εを満たし、軸受部は、滑り軸受であり、軸受部の中心は、シリンダ室の中心に対して、中心角度が180°以上でかつ270°以下の方向に、偏心しており、ローラ部の外周面の第1対向部分、または、シリンダ室の内周面の第1対向部分の少なくとも一方に、第1切り欠き部が設けられている。これにより、冷媒の漏れ損失を低減して効率を向上できると共に、製造および管理コストを低減できる。
本発明の第1実施形態の圧縮機を示す縦断面図である。 圧縮要素の平面図である。 圧縮要素の要部拡大図である。 ローラピストンの回転角度とCP隙間との関係を示すグラフである。 本発明の第2実施形態の圧縮機を示す要部拡大図である。
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、この発明の圧縮機の第1実施形態である縦断面図を示している。この圧縮機は、密閉容器1と、この密閉容器1内に配置された圧縮要素2と、上記密閉容器1内に配置され、上記圧縮要素2をシャフト12を介して駆動するモータ3とを備えている。
この圧縮機は、いわゆる縦置きの高圧ドーム型のロータリ圧縮機であって、上記密閉容器1内に、上記圧縮要素2を下に、上記モータ3を上に、配置している。このモータ3のロータ6によって、上記シャフト12を介して、上記圧縮要素2を駆動するようにしている。
上記圧縮要素2は、アキュームレータ10から吸入管11を通して冷媒ガスを吸入する。この冷媒ガスは、この圧縮機とともに、冷凍システムの一例としての空気調和機を構成する図示しない凝縮器、膨張機構、蒸発器を制御することによって得られる。冷媒としては、R32を用いる。この場合、R32からなる単一冷媒であってもよく、または、R32を主成分とする混合冷媒であってもよい。
上記圧縮機では、上記圧縮要素2にて圧縮した高温高圧の冷媒ガスを、圧縮要素2から吐出して密閉容器1の内部に満たすと共に、モータ3のステータ5とロータ6との間の隙間を通して、モータ3を冷却した後、上記モータ3の上側に設けられた吐出管13から外部に吐出するようにしている。
上記密閉容器1内の高圧領域の下部には、潤滑油が溜められた油溜まり部9が形成されている。この潤滑油は、油溜まり部9から、シャフト12に設けられた油通路を通って、圧縮要素2やモータ3のベアリング等の摺動部に移動して、この摺動部を潤滑する。この潤滑油は、例えば、(ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等の)ポリアルキレングリコール油や、エーテル油や、エステル油や、鉱油である。
上記モータ3は、ロータ6と、このロータ6の外周側を囲むように配置されたステータ5とを有する。
上記ロータ6は、円筒形状のロータコア610と、このロータコア610に埋設された複数の磁石620とを有する。ロータコア610は、例えば積層された電磁鋼板からなる。ロータコア610の中央の孔部には、上記シャフト12が取り付けられている。磁石620は、平板状の永久磁石である。複数の磁石620は、ロータコア610の周方向に等間隔の中心角度で、配列されている。
上記ステータ5は、円筒形状のステータコア510と、このステータコア510に巻き付けられたコイル520とを有する。ステータコア510は、積層された複数の鋼板からなり、密閉容器1に、焼き嵌めなどによって、嵌め込まれている。コイル520は、ステータコア510の各ティース部にそれぞれ巻かれており、このコイル520は、いわゆる集中巻きである。
上記圧縮要素2は、上記シャフト12を支持するフロント側軸受部50およびリア側軸受部60と、上記フロント側軸受部50と上記リア側軸受部60との間に配置されるシリンダ21と、上記シリンダ21内に配置されるローラピストン25とを有する。
上記シリンダ21は、密閉容器1の内周面に取り付けられている。シリンダ21は、シリンダ室22を有する。上記フロント側軸受部50は、リア側軸受部60よりも、モータ3側(上側)に配置されている。フロント側軸受部50は、シリンダ21の上側の開口端に、固定され、リア側軸受部60は、シリンダ21の下側の開口端に、固定されている。
上記シャフト12は、主軸121と、主軸121に固定されシリンダ室22に位置する偏心部122とを有する。この偏心部122には、ローラピストン25が、嵌合されている。ローラピストン25は、シリンダ室22に公転可能に配置され、シリンダ室22を偏心回動して、シリンダ室22の冷媒を圧縮する。
上記フロント側軸受部50は、円板状の端板部51と、この端板部51の中央でシリンダ21と反対側(上方)に設けられたボス部52とを有する。ボス部52は、シャフト12の主軸121を支持している。フロント側軸受部50は、滑り軸受であり、ボス部52と主軸121との径方向の隙間に、潤滑油が介在している。
上記端板部51には、上記シリンダ室22に連通する吐出孔51aが設けられている。端板部51に関してシリンダ21と反対側に位置するように、端板部51に吐出弁31が取り付けられている。吐出弁31は、例えば、リード弁であり、吐出孔51aを開閉する。
上記端板部51には、シリンダ21と反対側に、吐出弁31を覆うように、カップ型のマフラカバー40が取り付けられている。マフラカバー40には、ボス部52が貫通している。
上記マフラカバー40の内部は、吐出孔51aを介して、シリンダ室22に連通している。マフラカバー40は、マフラカバー40の内側と外側とを連通する孔部43を有する。
上記リア側軸受部60は、円板状の端板部61と、この端板部61の中央でシリンダ21と反対側(下方)に設けられたボス部62とを有する。ボス部62は、シャフト12の主軸121を支持している。リア側軸受部60は、滑り軸受であり、ボス部62と主軸121との径方向の隙間に、潤滑油が介在している。
図2は、上記圧縮要素2の平面図を示す。図2に示すように、上記ローラピストン25は、ローラ部26と、ローラ部26の外周面に固定されたブレード部27とを有する。
上記ブレード部27でシリンダ室22内を仕切っている。シリンダ室22には、吐出孔51aと、吸入管11が連通する吸入孔21aとが、開口する。
上記ブレード部27は、シリンダ室22を、吸入孔21aに通じる低圧室(吸入室)221と吐出孔51aに通じる高圧室(吐出室)222とに、区画する。すなわち、ブレード部27の右側の室は、低圧室221を形成し、ブレード部27の左側の室は、高圧室222を形成している。
上記ブレード部27の両面には、半円柱状の揺動ブッシュ28,28が密着して、シールを行っている。ブレード部27と揺動ブッシュ28,28との間は、潤滑油で潤滑を行っている。
上記揺動ブッシュ28,28は、シリンダ室22に臨んで形成されたブッシュ嵌合穴21b内に回動自在に嵌合され、ブレード部27を両側から挟んで揺動自在にかつ進退自在に支持する。
上記ローラ部26は、偏心部122に嵌合する。偏心部122が、偏心回転することで、ローラ部26は、このローラ部26の外周面をシリンダ室22の内周面に接して、公転する。
上記ローラ部26は、シリンダ室22内で公転するに伴って、ブレード部27は、このブレード部27の両側面を揺動ブッシュ28,28によって保持されて進退動する。すると、吸入管11から低圧の冷媒ガスを低圧室221に吸入して、高圧室222で圧縮して高圧にした後、吐出孔51aから高圧の冷媒ガスを吐出する。この吐出孔51aから吐出された冷媒ガスは、マフラカバー40の外側に排出される。
上記シリンダ室22の内周面は、真円であり、上記ローラ部26の外周面は、真円である。ここで、シリンダ室22の内周面の内径をφDsとし、ローラ部26の外周面の外径をφDrとし、偏心部122の中心122aの主軸121の中心121aに対する偏心量をεとしたとき、(φDs−φDr)/2<εを満たす。
上記フロント側軸受部50(ボス部52)の中心52aおよび上記リア側軸受部60(ボス部62)の中心62aは、上記シリンダ室22の中心22aに対して偏心している。なお、図2では、主軸121の中心121aは、フロント側軸受部50の中心52aおよびリア側軸受部60の中心62aに一致しているが、厳密には、運転中、主軸121の中心121aは、フロント側軸受部50の中心52aおよびリア側軸受部60の中心62aに対してずれた位置にある。
上記主軸121の中心121a方向からみて、上記シリンダ室22の中心22aを原点とし、上記ローラピストン25の上死点の中心角度を0°とし、上記ローラピストン25の回転方向を正方向としたとき、フロント側軸受部50の中心52aおよびリア側軸受部60の中心62aは、シリンダ室22の中心22aに対して、中心角度が180°以上でかつ270°以下の方向に、偏心している。ローラピストン25の上死点とは、ブレード部27がブッシュ嵌合穴21bに最も進入した位置にあるときをいう。
上記吐出孔51aは、中心角度が270°〜360°の範囲で、360°に近い位置に、開口している。上記吸入孔21aは、中心角度が0°〜90°の範囲で、0°に近い位置に、開口している。
図3に示すように、上記ローラ部26の外周面と上記シリンダ室22の内周面とは、上記中心角度が180°以上でかつ270°以下の範囲で、互いに接近して対向する第1対向部分261,211を有する。シリンダ室22の内周面の第1対向部分211に、第1切り欠き部211aが設けられている。
上記ローラ部26の外周面と上記シリンダ室22の内周面とは、上記中心角度が90°以上でかつ180°以下の範囲で、互いに接近して対向する第2対向部分262,212を有する。シリンダ室22の内周面の第2対向部分212に、第2切り欠き部212aが設けられている。
上記第1切り欠き部211aと上記第2切り欠き部212aは、連続しており、仮想線にて示す真円よりも、径方向外側に位置する。第1、第2切り欠き部211a,212aは、例えば、同一の曲率半径を有する。第1、第2切り欠き部211a,212aは、例えば、中心角度が135°以上でかつ210°以下の範囲に位置する。
上記構成の圧縮機によれば、(φDs−φDr)/2<εであるので、シリンダ21とフロント側軸受部50およびリア側軸受部60とを意識せずに固定組立すると運転中にローラ部26がシリンダ室22の内周面にぶつかってしまう。しかし、フロント側軸受部50およびリア側軸受部60は、滑り軸受であるので、運転中に、シャフト12は、フロント側軸受部50およびリア側軸受部60とのクリアランスを移動する。また、フロント側軸受部50の中心52aおよびリア側軸受部60の中心62aは、シリンダ室22の中心22aに対して、中心角度が180°以上でかつ270°以下の方向に、偏心しており、シリンダ室22の内周面の第1対向部分211に、第1切り欠き部211aが設けられているので、この第1切り欠き部211aにより、ローラ部26の外周面とシリンダ室22の内周面とが互いに干渉しない。これにより、ローラ部26は、シリンダ室22の内周面にぶつからず、しかも、ローラ部26の外周面とシリンダ室22の内周面との径方向の隙間(以下、CP隙間という)を小さくすることができる。
上記フロント側軸受部50の中心52aおよびリア側軸受部60の中心62aは、シリンダ室22の中心22aに対して、中心角度が180°以上でかつ270°以下の方向に、偏心している。これにより、フロント側軸受部50の中心52aおよびリア側軸受部60の中心62aを、圧縮される冷媒の圧力が高くなるローラピストン25の回転角度の方向に、偏心させており、このローラピストン25の回転角度におけるCP隙間を低減でき、高圧の冷媒の漏れ損失を有効に低減できる。以下、具体的に説明する。
図4は、ローラピストン25の回転角度とCP隙間との関係を示すグラフである。実線は、実施例1を示し、点線は、実施例2を示し、仮想線は、比較例を示す。
実施例1では、(φDs−φDr)/2<εであり、フロント側軸受部50の中心52aおよびリア側軸受部60の中心62aが、シリンダ室22の中心22aに対して、中心角度が240°の方向に、偏心している。実施例1によれば、運転中のCP隙間の変化を抑えることができて、漏れ損失を低減できる。
実施例2では、(φDs−φDr)/2<εであり、フロント側軸受部50の中心52aおよびリア側軸受部60の中心62aが、シリンダ室22の中心22aに対して、中心角度が260°の方向に、偏心している。実施例2によれば、運転中のCP隙間の変化を抑えることができて、漏れ損失を低減できる。
比較例では、(φDs−φDr)/2>εであり、フロント側軸受部の中心およびリア側軸受部の中心が、シリンダ室の中心に対して、中心角度が270°の方向に、偏心している。比較例によれば、運転中のCP隙間の変化が大きくなって、漏れ損失が大きくなる。 ここで、比較例において、(φDs−φDr)/2>εとしているのは、従前では、加工精度がよくなく、シリンダ室の内径やローラ部の外径のばらつきが、大きかったためである。要するに、(φDs−φDr)/2>εとしないと、CP隙間にて、この製品毎のばらつきを吸収できず、ローラ部がシリンダ室の内周面にぶつかるおそれがある。
これに対して、実施例1、2において、(φDs−φDr)/2<εとしているのは、現在では、加工精度がよくなり、シリンダ室22の内径やローラ部26の外径のばらつきが、小さくなったためである。要するに、(φDs−φDr)/2<εとしても、CP隙間にて、この製品毎のばらつきを吸収でき、ローラ部26がシリンダ室22の内周面にぶつかるおそれがない。
また、上記構成の圧縮機によれば、シリンダ室22の内周面は、第1、第2切り欠き部211a,212aを除いて真円であり、ローラ部26の外周面は、真円であるので、シリンダ室22の内周面の形状やローラ部26の外周面の形状を、真円の曲率を含まない複数の曲率よりなる非円形とする場合に比べて、製造および管理コストを低減できる。要するに、シリンダ室22の内周面の加工には、高度なNC制御された加工機が必要でない。また、加工されたシリンダ21の形状を管理しなくても、CP隙間を微少でかつ均一とできる。
したがって、上記構成の圧縮機によれば、運転中のローラ部26の外周面とシリンダ室22の内周面との隙間を小さくして、冷媒の漏れ損失を低減し効率を向上できると共に、シリンダ21およびローラピストン25の製造および管理コストを低減できる。
上記構成の圧縮機によれば、シリンダ室22の内周面の第2対向部分212に、第2切り欠き部212aが設けられているので、この第2切り欠き部212aにより、ローラ部26の外周面とシリンダ室22の内周面とが互いに干渉しない。
上記構成の圧縮機によれば、上記シリンダ室22内に流入される冷媒は、R32であるため、冷媒による環境負荷を少なくできる。R32は、圧縮温度が高くなりやすい性質を有するが、本実施形態では、この冷媒の漏れを抑制できて、シリンダ21から吐出される冷媒の温度を低減できる。
これに対して、冷媒が漏れ出ると、シリンダ21から吐出される冷媒の温度が高くなる。この結果、圧縮機を構成する部材に対して、熱劣化や、熱膨張が発生して、品質が低下する。
(第2の実施形態)
図5は、この発明の第2実施形態の圧縮機を示す要部拡大図である。この第2の実施形態は、上記第1の実施形態とは、切り欠き部の構成のみが相違する。この相違する構成のみを以下に説明する。なお、この第2の実施形態において、上記第1の実施形態と同一の符号は、上記第1の実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
図5に示すように、上記ローラ部26の外周面と上記シリンダ室22の内周面とは、中心角度が180°以上でかつ270°以下の範囲で、互いに接近して対向する第1対向部分261,211を有する。ローラ部26の外周面の第1対向部分261に、第1切り欠き部261aが設けられている。
上記ローラ部26の外周面と上記シリンダ室22の内周面とは、中心角度が90°以上でかつ180°以下の範囲で、互いに接近して対向する第2対向部分262,212を有する。ローラ部26の外周面の第2対向部分262に、第2切り欠き部262aが設けられている。
上記第1切り欠き部261aと上記第2切り欠き部262aは、連続しており、仮想線にて示す真円よりも、径方向内側に位置する。第1、第2切り欠き部261a,262aは、例えば、同一の曲率半径を有する。
要するに、上記第2実施形態の圧縮機では、シリンダ室22の内周面でなく、ローラ部26の外周面に、第1、第2切り欠き部261a,262aを設けている。つまり、シリンダ室22の内周面は、真円である一方、ローラ部26の外周面は、第1、第2切り欠き部261a,262aを除いて真円である。
上記構成の圧縮機によれば、上記第1実施形態の作用効果に加え、さらに、ローラ部26の外周面は、第1、第2切り欠き部261a,262aを有するので、ローラ部26が自転しないスイング圧縮機に好適である。
なお、この発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
上記第1、上記第2実施形態では、冷媒として、R32を用いたが、二酸化炭素や、HCや、R410A等のHFCや、R22等のHCFC等の冷媒を用いてもよい。
上記第1、上記第2実施形態では、シリンダの数量を1つとしたが、シリンダの数量を2つ以上としてもよい。
上記第1、上記第2実施形態では、ローラピストンにおいて、ブレード部をローラ部に一体に固定したが、ブレード部をローラ部と別体としてもよい。つまり、スイング圧縮機の代わりに、ロータリ圧縮機としてもよい。そして、このロータリ圧縮機では、切り欠き部を、ローラ部の外周面でなく、シリンダ室の内周面に設ける。
上記第1、上記第2実施形態において、中心角度が270°以上でかつ360°以下の範囲で、ローラ部の外周面とシリンダ室の内周面との互いに対向する第3対向部分において、ローラ部の外周面の第3対向部分、または、シリンダ室の内周面の第3対向部分の少なくとも一方に、第3切り欠き部を設けるようにしてもよい。
上記第1、上記第2実施形態では、切り欠き部を、シリンダ室の内周面またはローラ部の外周面の何れか一方に設けたが、シリンダ室の内周面およびローラ部の外周面の両方に設けるようにしてもよい。
上記第1実施形態では、シリンダ室の内周面に、第1切り欠き部と第2切り欠き部を設けたが、第1切り欠き部のみ設けるようにしてもよい。
上記第2実施形態では、ローラ部の外周面に、第1切り欠き部と第2切り欠き部を設けたが、第1切り欠き部のみ設けるようにしてもよい。
上記第1、上記第2実施形態では、シャフトの偏心部に関して、ローラピストンのローラ部を支持する軸受としての作用を説明していないが、偏心部をすべり軸受とすると、運転中に、ローラ部は、偏心部とのクリアランスを移動することになって、ローラ部は、益々、シリンダ室の内面にぶつからなくなる。
1 密閉容器
2 圧縮要素
3 モータ
12 シャフト
121 主軸
121a 中心
122 偏心部
122a 中心
21 シリンダ
211 第1対向部分
211a 第1切り欠き部
212 第2対向部分
212a 第2切り欠き部
22 シリンダ室
22a 中心
25 ローラピストン
26 ローラ部
261 第1対向部分
261a 第1切り欠き部
262 第2対向部分
262a 第2切り欠き部
27 ブレード部
50 フロント側軸受部
51 端板部
52 ボス部
52a 中心
60 リア側軸受部
61 端板部
62 ボス部
62a 中心

Claims (7)

  1. シリンダ室(22)を有するシリンダ(21)と、
    主軸(121)と、上記主軸(121)に固定され上記シリンダ室(22)に位置する偏心部(122)とを有するシャフト(12)と、
    上記偏心部(122)に嵌合するローラ部(26)を有するローラピストン(25)と、
    上記シリンダ(21)に固定され、上記主軸(121)を支持する軸受部(50,60)と
    を備え、
    上記シリンダ室(22)の真円の内周面の内径をφDs、上記ローラ部(26)の真円の外周面の外径をφDr、上記偏心部(122)の上記主軸(121)に対する偏心量をεとしたとき、(φDs−φDr)/2<εを満たし、
    上記軸受部(50,60)は、滑り軸受であり、
    上記主軸(121)の中心(121a)方向からみて、上記シリンダ室(22)の中心(22a)を原点とし、上記ローラピストン(25)の上死点の中心角度を0°とし、上記ローラピストン(25)の回転方向を正方向としたとき、
    上記軸受部(50,60)の中心(52a,62a)は、上記シリンダ室(22)の中心(22a)に対して、上記中心角度が180°以上でかつ270°以下の方向に、偏心しており、
    上記ローラ部(26)の外周面と上記シリンダ室(22)の内周面とは、上記中心角度が180°以上でかつ270°以下の範囲で、互いに対向する第1対向部分(261,211)を有し、
    上記ローラ部(26)の外周面の上記第1対向部分(261)、または、上記シリンダ室(22)の内周面の上記第1対向部分(211)の少なくとも一方に、第1切り欠き部(261a,211a)が設けられていることを特徴とする圧縮機。
  2. 請求項1に記載の圧縮機において、
    上記ローラ部(26)の外周面と上記シリンダ室(22)の内周面とは、上記中心角度が90°以上でかつ180°以下の範囲で、互いに対向する第2対向部分(262,212)を有し、
    上記ローラ部(26)の外周面の上記第2対向部分(262)、または、上記シリンダ室(22)の内周面の上記第2対向部分(212)の少なくとも一方に、第2切り欠き部(262a,212a)が設けられていることを特徴とする圧縮機。
  3. 請求項1に記載の圧縮機において、
    上記シリンダ室(22)の内周面の上記第1対向部分(211)は、上記第1切り欠き部(211a)を有することを特徴とする圧縮機。
  4. 請求項2に記載の圧縮機において、
    上記シリンダ室(22)の内周面の上記第1対向部分(211)は、上記第1切り欠き部(211a)を有し、
    上記シリンダ室(22)の内周面の上記第2対向部分(212)は、上記第2切り欠き部(212a)を有することを特徴とする圧縮機。
  5. 請求項1に記載の圧縮機において、
    上記ローラピストン(25)は、上記ローラ部(26)に固定されたブレード部(27)を有し、
    上記ローラ部(26)の外周面の上記第1対向部分(261)は、上記第1切り欠き部(261a)を有することを特徴とする圧縮機。
  6. 請求項2に記載の圧縮機において、
    上記ローラピストン(25)は、上記ローラ部(26)に固定されたブレード部(27)を有し、
    上記ローラ部(26)の外周面の上記第1対向部分(261)は、上記第1切り欠き部(261a)を有し、
    上記ローラ部(26)の外周面の上記第2対向部分(262)は、上記第2切り欠き部(262a)を有することを特徴とする圧縮機。
  7. 請求項1から6の何れか一つに記載の圧縮機において、
    上記シリンダ室(22)内に流入される冷媒は、R32であることを特徴とする圧縮機。
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