まず、トラクタ1について簡単に説明する。なお、本発明の技術的思想は、他の農業機械車両や建設機械車両などにも適用することが可能である。
図1は、トラクタ1を示している。図中には、トラクタ1の前後方向及び上下方向を表す。
トラクタ1は、主に、フレーム11と、エンジン12と、トランスミッション13と、フロントアクスル14と、リヤアクスル15と、で構成されている。また、トラクタ1には、キャビン2が設けられている。
フレーム11は、トラクタ1の骨格をなす。以下に説明するエンジン12などは、フレーム11に取り付けられる。
エンジン12は、燃料を燃焼させて得たエネルギーを回転運動に変換する。エンジン12は、オペレータがアクセルペダル16を操作すると、その操作に応じて運転状態を変更する。また、エンジン12は、負荷が変化しても回転速度を一定に維持する。
トランスミッション13は、トラクタ1の前後進の切り換えや変速を行なう。トランスミッション13は、オペレータがシフトレバー17を操作すると、その操作に応じて作動状態を変更する。トランスミッション13は、変速装置として油圧−機械式の無段変速装置(HMT若しくはiHMT)を備えている。
フロントアクスル14は、エンジン12の回転動力をフロントタイヤ141に伝達する。フロントアクスル14には、トランスミッション13を介してエンジン12の回転動力が入力される。なお、フロントアクスル14には、操舵装置が並設されている。操舵装置は、オペレータがハンドル18を操作すると、その操作に応じてフロントタイヤ141の舵角を変更する。
リヤアクスル15は、エンジン12の回転動力をリヤタイヤ151に伝達する。リヤアクスル15には、トランスミッション13を介してエンジン12の回転動力が入力される。なお、リヤアクスル15には、PTO出力機構が設けられている。PTO出力機構は、牽引する作業機械に回転動力を入力する。
キャビン2は、トラクタ1の操縦室を構成する。キャビン2は、アクセルペダル16やシフトレバー17、ハンドル18のほか、多数の操縦具を覆っている。また、キャビン2は、運転座席19を覆っている。オペレータは、キャビン2の内側に入り、運転座席19に座った状態で操縦を行なう。
なお、本トラクタ1は、オペレータが操作するレバー類をアームレスト110に配置したという特徴を有する。これにより、本トラクタ1は、操作性が向上している。更に、本トラクタ1は、ハンドル18の角度や高さを調節自在としている(矢印a及び矢印h参照)。これにより、本トラクタ1は、快適性が向上している。
次に、キャビン2について詳細に説明する。
図2は、キャビン2を示している。図3は、キャビン2のフレーム構造を示している。図中には、トラクタ1の前後方向、上下方向、及び左右方向を表す。
キャビン2は、主に、フロアプレート21と、フェンダプレート22と、フロントピラー23と、リヤピラー24と、で構成されている。また、キャビン2は、ルーフ3を備えている。
フロアプレート21は、キャビン2の底面の一部となる。左側のフロアプレート21は、ロワフレーム25の上面に取り付けられている。また、右側のフロアプレート21も、ロワフレーム25の上面に取り付けられている。そして、これら左右のフロアプレート21は、エアカットプレート26などを介して互いに連結されている。なお、フロントプレート27は、直線状に形成され、各フロアプレート21の前面に沿って固定される。また、サイドプレート28は、直線状に形成され、各フロアプレート21の側面に沿って固定される。サイドプレート28は、ドアフレーム(ドア4となるサイドガラス53が納まる枠)の一部を構成する。本トラクタ1においては、サブステップ29がサイドプレート28に固定される。
フェンダプレート22は、キャビン2の側面の一部となる。左側のフェンダプレート22は、その下端部がロワフレーム25に取り付けられている。また、右側のフェンダプレート22も、その下端部がロワフレーム25に取り付けられている。そして、これら左右のフェンダプレート22は、リヤフレーム210などを介して互いに連結されている。なお、シールプレート211は、円弧状に形成され、各フェンダプレート22の上面に沿って固定される。シールプレート211は、ドアフレーム(ドア4となるサイドガラス53が納まる枠)の一部を構成する。本トラクタ1においては、ガスダンパ(図示せず)がシールプレート211に固定される。
フロントピラー23は、天面となるルーフ3の前端部分を支持する。左側のフロントピラー23は、その下端部がフロアプレート21に取り付けられている。また、右側のフロントピラー23も、その下端部がフロアプレート21に取り付けられている。そして、これら左右のフロントピラー23は、フロントビーム212を介して互いに連結されている。更に、各フロントピラー23は、サイドビーム213を介してリヤピラー24とも連結されている。フロントピラー23は、ドアフレーム(ドア4となるサイドガラス53が納まる枠)の一部を構成する。なお、フロントガラス51は、その両端部分が左右のフロントピラー23に固定される。本トラクタ1においては、サイドミラー214がステー214Sを介してフロントピラー23に固定されている。また、ワークランプ215やウインカー216もフロントピラー23に固定される。
リヤピラー24は、天面となるルーフ3の後端部分を支持する。左側のリヤピラー24は、その下端部がフェンダプレート22に取り付けられている。また、右側のリヤピラー24も、その下端部がフェンダプレート22に取り付けられている。そして、これら左右のリヤピラー24は、リヤビーム217を介して互いに連結されている。更に、各リヤピラー24は、サイドビーム213を介してフロントピラー23とも連結されている。リヤピラー24は、ドアフレーム(ドア4となるサイドガラス53が納まる枠)の一部を構成する。なお、リヤガラス52は、その両端部分が左右のリヤピラー24に固定される。本トラクタ1においては、ドア4のヒンジ41もリヤピラー24に固定される。
ここで、本フレーム構造における第一の特徴について説明する。
図4は、図3に示す矢印Xの方向から見た図である。図中には、トラクタ1の前後方向及び上下方向を表す。
本フレーム構造の第一の特徴として、フェンダプレート22にシールプレート211が固定されている。そして、シールプレート211は、後方へ向かうに従って徐々に下縁から上縁までの寸法Hが大きくなる。また、シールプレート211は、その後端部がリヤピラー24に溶接されている。つまり、シールプレート211は、リヤピラー24に近づくに従って徐々に高さ寸法Hが大きくなり、該リヤピラー24に固定されるのである。これにより、シールプレート211がリブとしての機能を果たす。従って、リヤピラー24の倒伏強度を増すことができる。ひいては、キャビン2の強度を高めることが可能となる。
加えて、シールプレート211は、該シールプレート211の上縁形状(二点鎖線U参照)がリヤピラー24の前縁形状(二点鎖線F参照)に対して垂直となる若しくは略垂直となる。これにより、シールプレート211がリブとしての機能を効果的に発揮するので、更にキャビン2の強度を高めることが可能となる。
次に、本フレーム構造における第二の特徴について説明する。
図5は、図3に示す矢印Yの方向から見た図である。図中には、トラクタ1の前後方向及び左右方向を表す。
本フレーム構造の第二の特徴として、サイドプレート28にサブステップ29が固定されている。そして、サブステップ29は、オペレータが斜め後方を向いて上れるように配置されている。つまり、サブステップ29は、斜め後方に向けて配置されるのである。これにより、オペレータが乗車したときの移動方向が斜め後方となる。従って、オペレータを内奥へ導くことができる。ひいては、乗り込みやすいキャビン2にすることが可能となる。
加えて、サブステップ29は、該サブステップ29の動線Lが運転座席19へ向く若しくは運転座席19の前側近傍へ向くように配置される。これにより、オペレータを運転座席19へ導くことができるので、更に乗り込みやすいキャビン2にすることが可能となる。
この点、サブステップ29は、該サブステップ29の動線Lがハンドル18と運転座席19の間へ向くように配置されるともいえる。これにより、オペレータがハンドル18をかわしやすく、オペレータを運転座席19へ導くことができる。
次に、本フレーム構造における第三から第五の特徴について説明する。
図6は、図3に示す矢印Zの方向から見た図である。図中には、トラクタ1の前後方向及び上下方向を表す。
本フレーム構造の第三の特徴として、フロントピラー23とリヤピラー24がサイドビーム213によって連結されている。そして、サイドビーム213は、山なりに形成されている。つまり、サイドビーム213は、該サイドビーム213の中央部分が上方に反るように形成されているのである。これにより、サイドガラス53の面積が大きくなる。従って、オペレータの視界を広くすることができる。ひいては、快適性を向上させることが可能となる。
本フレーム構造の第四の特徴として、フロントピラー23がサイドビーム213よりも上方へ突出している(矢印J参照)。そして、フロントビーム212は、フロントピラー23の上端部に溶接されている。これにより、フロントガラス51の面積が大きくなる。従って、オペレータの視界を広くすることができる。ひいては、快適性を向上させることが可能となる。
本フレーム構造の第五の特徴として、リヤビーム217は、リヤピラー24の上端部から少しだけ低い部分に溶接されている。これは、リヤビーム217の上方に空調ユニット61を搭載するためである(図13参照)。これにより、キャビン2内の空間が広くなる。従って、オペレータの圧迫感を低減させることができる。ひいては、快適性を向上させることが可能となる。
次に、本フレーム構造における第六の特徴について説明する。
図7は、図3に示す領域Ra・Rbを拡大した図である。図8は、フレーム構造体を吊り上げた際の荷重がかかる方向を示している。なお、矢印Plは、フレーム構造体を吊り上げた際にアイボルトBeにかかる荷重を表す。矢印Paは、サイドビーム213からフロントピラー23に伝わる荷重を表す。また、矢印Pbは、サイドビーム213からリヤピラー24に伝わる荷重を表す。
本フレーム構造の第六の特徴として、サイドビーム213にボルトベース218が固定されている。より詳細には、サイドビーム213の中央部分にボルトベース218が固定されている。つまり、ボルトベース218は、サイドビーム213の頂部若しくは頂部近傍に配置されるのである。そして、ボルトベース218には、ネジ孔218hが設けられており、該ネジ孔218hにアイボルトBeが脱着自在となる。これにより、かかるフレーム構造体を吊り上げた際にフロントピラー23若しくはリヤピラー24のいずれかに荷重が集中しない。つまり、フロントピラー23とリヤピラー24に荷重を分散させることが可能となる。
更に、ボルトベース218は、フレーム構造体の重心よりも少し後方に配置されている。これにより、フレーム構造体を吊り上げた際に前傾姿勢(前側が下がった姿勢)となるので、該フレーム構造体を車体に取り付ける作業が容易となる。詳細には、フロントピラー23をフロアプレート21が支持する状態とした後に、リヤピラー24をフェンダプレート22が支持する状態とすることで、取り付け作業が容易となるのである。なお、かかる特徴は、フレーム構造体に予め艤装(装備品の取り付け作業)が施された状態であっても得られる。
次に、ルーフ3について詳細に説明する。
図9は、ルーフ3の上面を示している。図10は、ルーフ3の下面を示している。図11は、ルーフ3の側面を示している。また、図12は、ルーフ3の断面を示している。そして、図13は、ルーフ3の内部構造を示している。図中には、トラクタ1の前後方向、上下方向、及び左右方向を表す。
ルーフ3は、アウターパネル31と、インナーパネル32と、サイドパネル33と、で構成されている。また、ルーフ3は、その内部にオーディオ機器34などを収納している。更に、ルーフ3は、その内部に空調システム6を収納している。
アウターパネル31には、開口部31a・31bが設けられている。開口部31aは、天窓3Sの形状に合わせて設けられ、該天窓3Sを開けたときに外気又は内気の通路となる。つまり、開口部31aは、キャビン2内の空気の入れ換えを可能とする。また、開口部31bは、ボルトベース218の直上に設けられ、該ボルトベース218にアイボルトBeを取り付け可能としている。
なお、アウターパネル31には、開口部31aの前側に円錐状の膨らみが形成されている。そして、その膨らみの内側にワークランプ22が嵌め込まれている。ワークランプ31Lは、前方を照らすことにより、夜間作業などを可能とする。
インナーパネル32には、開口部32a・32bが設けられている。開口部32aは、天窓3Sの直下に設けられ、該天窓3Sを開けたときに外気又は内気の通路となる。つまり、開口部32aは、キャビン2内の空気の入れ換えを可能とする。また、開口部32bは、防音材(ウレタン)35の直下に設けられ、該防音材35の一部が見える状態となっている。
なお、インナーパネル32には、開口部32bの右側に空調システム6のコントローラ6Cが配置されている。また、開口部32bの左側にオーディオ機器34が配置されている。更に、開口部32aの前側と開口部32bの左右両側に吹出口32c・32dが配置されている。吹出口32cは、曇り止めなどのため、フロントガラス51やサイドガラス53に向かって空気を吹き付けられるように設けられている。吹出口32dは、快適性を高めるため、オペレータに向かって空気を吹き付けられるように設けられている。
サイドパネル33には、吸込口33aが設けられている。吸込口33aには、ダクト(図示せず)が接続され、空調システム6へ供給される外気の通路となる。つまり、吸込口33aは、空調システム6の外気導入口である。
ここで、空調システム6について詳しく説明する。
空調システム6は、空調ユニット61と、空調ダクト62と、で構成されている。
空調ユニット61は、シロッコファンやエバポレータ、ヒータなどで構成されている。空調ユニット61は、その前端側がリヤビーム217によって支持され、その後端部がブラケット219によって支持されている。なお、ブラケット219は、リヤビーム217に固定されている。
具体的に説明すると、ブラケット219は、リヤビーム217に固定され、該リヤビーム217から後方に突出している。そして、空調ユニット61は、リヤビーム217とブラケット219によって支持される。このとき、空調ユニット61は、リヤビーム217に跨って配置される。即ち、空調ユニット61は、リヤビーム217の上に載置され、一部が該リヤビーム217よりも前方に出た状態(図14におけるLa参照)、かつ一部が該リヤビーム217よりも後方に出た状態(図14におけるLb参照)で配置される。
空調ユニット61は、ケーシング63に納められている。ケーシング63は、左上部に吸気部63aが設けられ、前部に吐出部63bが設けられている。また、空調ユニット61の右方には、仕切板64が配置され、空調ユニット61の左方には、切換装置65が配置されている。これらは、アンダーカバーによって覆われている。
切換装置65は、モータ66やアーム67、ロッド68、シャッター69、などで構成されている。即ち、切換装置65は、モータ66がアーム67やロッド68を介してシャッター69を回動できるように構成したものである。こうして、切換装置65は、空調ユニット61へ外気を導く状態と空調ユニット61へ内気を導く状態との切り換えを可能としている。また、切換装置65は、空調ユニット61へ導く外気と内気の比率を調節可能としている。
空調ダクト62は、空調ユニット61が温度などを調整した調整空気を案内する。空調ダクト62は、オーディオ機器34などを囲むように二方向に分岐している。以下に、空調ダクト62について詳細に説明する。
図14は、空調システム6の一部を拡大した図である。なお、図中の矢印Aは、調整空気の流れ方向を示している。図中には、トラクタ1の前後方向及び左右方向を表す。
空調ダクト62は、右側の吹出口32c・32dへ調整空気を案内する右送風ダクト62Rと、左側の吹出口32c・32dへ調整空気を案内する左送風ダクト62Lと、で構成されている。また、空調ダクト62は、ケーシング63の吐出部63bから各送風ダクト62L・62Rへ調整空気を案内する接続ダクト62Cを備えている。
接続ダクト62Cは、左右に分岐する平面視T字状の分岐管である。接続ダクト62Cは、左右方向に対して平行となる長管部62Caに、前後方向に対して平行となる短管部62Cbを連結して形成される。なお、長管部62Ca及び短管部62Cbは、ともに矩形断面となっている。
このような構成により、空調ユニット61から送り出された調整空気は、短管部62Cbを通って長管部62Caに流入する。そして、調整空気は、長管部62Caの前面壁62Cwに衝突して二つに分流される。こうして、一方の調整空気は、右送風ダクト62Rに流入し、他方の調整空気は、左送風ダクト62Lに流入するのである。
また、長管部62Caの前面壁62Cwには、後方に向かって凸となる断面V字形状の突起部62Cpが設けられている。突起部62Cpは、長管部62Caに流入した調整空気の流れ方向に対して対向するように配置されている。このため、長管部62Caに流入した調整空気は、右送風ダクト62Rと左送風ダクト62Lに確実に振り分けられるのである。なお、左右の風量配分は、突起部62Cpの突出高さ・開き角・位置などを変更するだけで容易に調整することができる。
更に、右送風ダクト62Rについて詳細に説明すると、右送風ダクト62Rは、調整空気の流れ方向に沿って、後屈曲管部62Raと、右分流部62Rbと、前屈曲管部62Rcと、で構成されている(図13参照)。後屈曲管部62Raは、接続ダクト62Cで分流された調整空気を右分流部62Rbへ案内する。なお、右分流部62Rbには、上述した吹出口32dが設けられている。また、前屈曲管部62Rcには、上述した吹出口32cが設けられている。吹出口32c・32dには、調整空気の風量や風向を自在に変更できるフィン32cf・32dfが設けられている(図10、図13、図15参照)。
同様に、左送風ダクト62Lについて詳細に説明すると、左送風ダクト62Lは、調整空気の流れ方向に沿って、後屈曲管部62Laと、左分流部62Lbと、前屈曲管部62Lcと、で構成されている(図13参照)。後屈曲管部62Laは、接続ダクト62Cで分流された調整空気を左分流部62Lbへ案内する。なお、左分流部62Lbには、上述した吹出口32dが設けられている。また、前屈曲管部62Lcには、上述した吹出口32cが設けられている。吹出口32c・32dには、調整空気の風量や風向を自在に変更できるフィン32cf・32dfが設けられている(図10、図13、図16参照)。
以下に、右分流部62Rb及び左分流部62Lbについて詳細に説明する。
図15は、右分流部62Rbの流路構造を示している。図15の(A)は、右分流部62Rbの上面を示しており、図15の(B)は、その内部構造を示している。また、図16は、左分流部62Lbの流路構造を示している。図16の(A)は、左分流部62Lbの上面を示しており、図16の(B)は、その内部構造を示している。なお、図中の矢印Aは、調整空気の流れ方向を示している。
右分流部62Rbは、支持板71と、カバー部材72と、で構成されている。支持板71は、右分流部62Rbの右側面を構成する。また、カバー部材72は、支持板71を内側から挟むようにして右分流部62Rbの上下面と左側面を構成する。
カバー部材72は、天板部721と底板部722、傾斜板部723で構成されている。天板部721と底板部722は、ともに水平に設けられている。傾斜板部723は、天板部721と底板部722の内辺間を連結するとともに、右斜め下方に傾斜している。そして、傾斜板部723には、吹出口32dが設けられている。
更に詳細に説明すると、天板部721の右縁部を上方へ屈曲して形成された取付部は、支持板71の上縁部にボルトB1によって締結されている。また、支持板71の下縁部を外側へ屈曲して形成された取付部は、底板部722の右縁部にボルトB2によって締結されている。こうして、筒状の右分流部62Rbが仕組まれている。
このような構造により、各ボルトB1・B2を取り外すだけで、右分流部62Rbを分解できる。ひいては、右送風ダクト62Rを構成する後屈曲管部62Raや前屈曲管部62Rcから右分流部62Rbを容易に取り外すことができる。反対に、各ボルトB1・B2を取り付けるだけで、右分流部62Rbを組み立てることができる。ひいては、右送風ダクト62Rを構成する後屈曲管部62Raや前屈曲管部62Rcに右分流部62Rbを容易に取り付けることができる。
また、支持板71の上縁部には、ステー711・712が内方に向かって設けられている。ステー711には、吊下具が取り付けられており、該吊下具に天板部721とステー711の間を通るワイヤー91が留められている。一方、ステー712は、天板部721に固定されたアクチュエータ(以降、本実施形態ではモータとする)92を覆うように形成されている。
モータ92は、その駆動軸92Sがステー712の切欠を通って突出している。そして、駆動軸92Sには、アームプレート931が取り付けられている。更に、アームプレート931には、リンクロッド932が接続されている。
右分流部62Rbには、天板部721と底板部722によって回動軸933が支持されている。回動軸933には、バルブプレート934が取り付けられている。また、回動軸933は、その上端部分が天板部721から突出している。そして、回動軸933には、リンクプレート935が固定されている。なお、上述したワイヤー91は、リンクプレート935の一端に接続している。上述したリンクロッド932は、リンクプレート935の他端に接続している。
このような構造により、モータ92の駆動軸92Sが回ると、アームプレート931やリンクロッド932を介してリンクプレート935が回動される。そして、回動軸933が回動することにより、バルブプレート934が可動するのである。なお、ワイヤー91は、リンクプレート935の回動に応じて押し引きされる。
左分流部62Lbは、支持板81と、カバー部材82と、で構成されている。支持板81は、左分流部62Lbの左側面を構成する。また、カバー部材82は、支持板81を内側から挟むようにして左分流部62Lbの上下面と右側面を構成する。
カバー部材82は、天板部821と底板部822、傾斜板部823で構成されている。天板部821と底板部822は、ともに水平に設けられている。傾斜板部823は、天板部821と底板部822の内辺間を連結するとともに、左斜め下方に傾斜している。そして、傾斜板部823には、吹出口32dが設けられている。
更に詳細に説明すると、天板部821の左縁部を上方へ屈曲して形成された取付部は、支持板81の上縁部にボルトB3によって締結されている。また、支持板81の下縁部を外側へ屈曲して形成された取付部は、底板部822の左縁部にボルトB4によって締結されている。こうして、筒状の左分流部62Lbが仕組まれている。
このような構造により、各ボルトB3・B4を取り外すだけで、左分流部62Lbを分解できる。ひいては、左送風ダクト62Lを構成する後屈曲管部62Laや前屈曲管部62Lcから左分流部62Lbを容易に取り外すことができる。反対に、各ボルトB3・B4を取り付けるだけで、左分流部62Lbを組み立てることができる。ひいては、左送風ダクト62Lを構成する後屈曲管部62Laや前屈曲管部62Lcに左分流部62Lbを容易に取り付けることができる。
左分流部62Lbには、天板部821と底板部822によって回動軸943が支持されている。回動軸943には、バルブプレート944が取り付けられている。また、回動軸943は、その上端部分が天板部821から突出している。そして、回動軸943には、リンクプレート945が固定されている。更に、リンクプレート945には、アームロッド946が接続されている。上述したワイヤー91は、アームロッド946の一端に接続している。
このような構造により、ワイヤー91が押し引きされると、リンクプレート945が回動される。そして、回動軸943が回動することにより、バルブプレート944が可動するのである。
以上のように、本トラクタ1においては、右分流部62Rbのバルブプレート934と左分流部62Lbのバルブプレート944が連動する。より詳しくは、モータ92によって直接的に可動するバルブプレート934は、バルブプレート944に対して駆動側部材として作動する。一方、ワイヤー91によって間接的に可動するバルブプレート944は、バルブプレート934に対して従動側部材として作動する。
このように、本トラクタ1においては、リンクプレート935、ワイヤー91、アームロッド946、及びリンクプレート945で連動機構95が構成されている。また、リンク機構95に加え、モータ92、アームプレート931、リンクロッド932、回動軸933、バルブプレート934、回動軸943、及びバルブプレート944で流路切換装置96が構成されている。
なお、他の実施形態として、バルブプレート934・944毎にモータ92を備え、各モータ92を同期させることによって、一方のバルブプレート934(944)と他方のバルブプレート944(934)が連動するとしてもよい。或いは、モータ92を備えずに各バルブプレート934・944を機械的に連結し、手動による操作によって連動するとしてもよい。つまり、バルブプレート934とバルブプレート944が連動すればよく、その構成について限定するものではない。
以下に、右分流部62Rb内の流路と左分流部62Lb内の流路について説明し、上述した流路切換装置96の動作態様について述べる。
右分流部62Rb内の流路は、調整空気を後方からそのまま前方に送る本流路Fmと、本流路Fmから左方に分岐する分岐流路Fbと、がある。本流路Fmは、支持板71と、カバー部材72の天板部721及び底板部722の右半部によって囲まれた空間により構成されている。また、分岐流路Fbは、カバー部材72の左半部の袋状の部分によって囲まれた空間により構成されている。
更に、回動軸933は、前屈曲管部62Rcの左面壁62Rwの近傍に配置されており、該回動軸933と左面壁62Rwの隙間は小さく設計されている。そのため、本流路Fm内の調整空気が、分岐流路Fbに混入するのを防止している。反対に、分岐流路Fb内の調整空気が、本流路Fmに混入するのを防止している。
同様に、左分流部62Lb内の流路は、調整空気を後方からそのまま前方に送る本流路Fmと、本流路Fmから右方に分岐する分岐流路Fbと、がある。本流路Fmは、支持板81と、カバー部材82の天板部821及び底板部822の左半部によって囲まれた空間により構成されている。また、分岐流路Fbは、カバー部材82の右半部の袋状の部分によって囲まれた空間により構成されている。
更に、回動軸943は、前屈曲管部62Lcの右面壁62Lwの近傍に配置されており、該回動軸943と右面壁62Lwの隙間は小さく設計されている。そのため、本流路Fm内の調整空気が、分岐流路Fbに混入するのを防止している。反対に、分岐流路Fb内の調整空気が、本流路Fmに混入するのを防止している。
このような構成において、モータ92の駆動軸92Sが回転すると、アームプレート931は、矢印R1の方向に位置Raから位置Rbまで回動する。そして、リンクロッド932が後方に引っ張られることにより、リンクプレート935が、矢印R2の方向に位置Rcから位置Rdまで回動する。すると、リンクプレート935とともに回動軸933も回動するので、該回動軸933に取り付けられたバルブプレート934が可動するのである。つまり、バルブプレート934は、矢印R3の方向に位置Reから位置Rfまで回動するのである。なお、バルブプレート934が位置Reにあるときは、本流路Fmを開き、分岐流路Fbを塞ぐこととなる。また、バルブプレート934が位置Rfにあるときは、本流路Fmを塞ぎ、分岐流路Fbを開くこととなる。
これにより、右分流部62Rb内を通り前屈曲管部62Rcへ向かっていた調整空気は、バルブプレート934に沿って方向を変え、分岐流路Fb内に流入する(矢印Fx参照)。そして、調整空気は、吹出口32dのみからキャビン2内へ吹き出すのである。
同時に、リンクプレート935は、ワイヤー91を前方へ押す。すると、左分流部62Lbにおいて、ワイヤー91が後方へ押し出されることにより、リンクプレート945が、矢印R4の方向に位置Rgから位置Rhまで回動する。すると、リンクプレート945とともに回動軸943も回動するので、該回動軸943に取り付けられたバルブプレート944が可動するのである。つまり、バルブプレート944は、矢印R5の方向に位置Riから位置Rjまで回動するのである。なお、バルブプレート944が位置Riにあるときは、本流路Fmを開き、分岐流路Fbを塞ぐこととなる。また、バルブプレート934が位置Rjにあるときは、本流路Fmを塞ぎ、分岐流路Fbを開くこととなる。
これにより、左分流部62Lb内を通り前屈曲管部62Lcへ向かっていた調整空気は、バルブプレート944に沿って方向を変え、分岐流路Fb内に流入する(矢印Fy参照)。そして、調整空気は、吹出口32dのみからキャビン2内へ吹き出すのである。
なお、調整空気が吹出口32cのみからキャビン2内へ吹き出すようにするには、バルブプレート934を位置Reとし、バルブプレート944を位置Riとすればよい。つまり、モータ92の駆動軸92Sを逆方向に回転させて各バルブプレート934・944を逆方向へ可動させればよい。これにより、調整空気は、前屈曲管部62Rcへ向うので、吹出口32cのみからキャビン2内へ吹き出すこととなる。
更に、調整空気が吹出口32cと吹出口32dの両方からキャビン2内へ吹き出すようにするには、バルブプレート934を任意の位置Rmとし、バルブプレート944を任意の位置Rnとすればよい。つまり、モータ92の駆動軸92Sを所定の位相まで回転させて各バルブプレート934・944を任意の角度で停止させればよい。これにより、調整空気は、吹出口32cと吹出口32dの両方からキャビン2内へ吹き出すのである。なお、各バルブプレート934・944の角度を調節することにより、吹出口32cから吹き出す風量と吹出口32dから吹き出す風量を変更できる。
以上より、モータ92を動力源としてバルブプレート934・944を動かすことにより、調整空気が吹き出す吹出口32c・32dを変更することができる。また、各吹出口32c・32dから吹き出す風量も変更できる。
これにより、フロントガラス51の曇り具合などに迅速に対応することが可能となる。更に、キャビン2の快適性を向上させることも可能となる。特に、所望の吹出口32c・32dのみから調整空気を吹き出したり調整空気の吹き出しを完全に停止させたりできるので、フィン32cf・32dfの操作が不要となり、オペレータの作業負荷を大きく軽減できる。更に、バルブプレート934・944を一のモータ92によって可動させるので、部品点数を減らすことができ、コストの低減やキャビン2の小型化・軽量化を実現することが可能となる。
なお、上述したように、右分流部62Rbと左分流部62Lbは、各送風ダクト62R・62Lの途中部から着脱可能である。右分流部62Rbは、駆動側部材であるバルブプレート934などを備えるので、右送風ダクト62Rから右分流部62Rbと一緒にバルブプレート934などを着脱することができる。また、左分流部62Lbは、従動側部材であるバルブプレート944などを備えるので、左送風ダクト62Lから左分流部62Lbと一緒にバルブプレート944などを着脱することができる。
これにより、修理・交換が容易となってメンテナンス性の向上が図られる。また、異なる構造の分流部(右分流部62Rbと左分流部62Lb)に交換でき、様々な仕様の空調ダクト62を実現することが可能となる。ひいては、空調システムの汎用性を高めることができる。
また、かかる構造は、アウターパネル31とインナーパネル32の間に設けられていることから、アウターパネル31を取り外すと容易にアクセス可能となる。そして、モータ92の駆動力を一の仮想平面Ps上で伝達するので(主な部品類が平面上に配置され、略二次元の空間内で動力が伝達するように設計されている:図13参照)、構造の把握が容易である。
これにより、更に修理・交換が容易となってメンテナンス性の向上が図られる。また、動力伝達効率が高くなるので、モータ92などの小型化を実現することが可能となる。ひいては、設計自由度を高めることができる。
更に、上述したように、長管部62Caの前面壁62Cwには、後方に向かって凸となる断面V字形状の突起部62Cpが設けられている。そして、突起部62Cpは、長管部62Caに流入した調整空気の流れ方向に対して対向するように配置されている。
これにより、調整空気を分岐させて各送風ダクト(右送風ダクト62Rと左送風ダクト62L)に確実に振り分けられる。
次に、天窓(以降、サンルーフという)3Sに関する構造について説明する。
以降の説明については、図9から図12を用いて行なう。
サンルーフ3Sは、アウターパネル31の開口部31aに嵌め込まれている。サンルーフ3Sは、透明又は半透明のガラス板によって構成されている。なお、サンルーフ3Sは、前端側を支点として後端側が開閉自在となっている(矢印A参照)。
本トラクタ1においては、サンルーフ3Sの前方にサンバイザー36が設けられている。サンバイザー36は、オペレータの目を太陽の直射から守り、該オペレータの視界を確保するために用いられる。サンバイザー36は、前端側を支点として後端側が回動自在となっている(矢印B参照)。
更に、本トラクタ1においては、サンルーフ3Sの後方に遮光部材37が設けられている。遮光部材(以降、ロールカーテンという)37は、サンルーフ3Sの一辺側に捲回して収納されている。ロールカーテン37は、サンルーフ3Sを覆うことにより、オペレータを太陽の直射から守るために用いられる。なお、ロールカーテン37は、オペレータが引っ張ることによって回転し、生地を引き出し自在としている(矢印C参照)。
以下に、サンルーフ3Sを設け、該サンルーフ3Sを覆うロールカーテン37を備えた効果について説明する。
本トラクタ1のキャビン2によれば、サンルーフ3Sから日光を取り入れることができるので、キャビン2内での快適性を向上させることが可能となる。また、サンルーフ3Sは、開閉自在であるので、キャビン2内の空気の入れ換えが可能となる。そして、生地を引き出し自在としたロールカーテン37が備えられているので、オペレータを太陽の直射から守ることも可能である。
更に、本トラクタ1のキャビン2は、インナーパネル32に開口部32bが設けられ、防音材35の一部が見える状態となっている。つまり、オペレータの頭上で防音材35が剥き出しとなっている。このため、その部分のみ質感が異なり、キャビン2の意匠性の向上に寄与している。また、オペレータの頭上近傍で防音材35が剥き出しとなった構造は、頭上周辺における騒音の反射を弱めることができる。ひいては、キャビン2内での快適性を向上させることが可能となる。
この点について、更に詳しく説明すると、本トラクタ1は、空調ユニット61がルーフ3の後端側に配置されている。また、空調ユニット61から送り出された調整空気は、右送風ダクト62Rと左送風ダクト62Lによって案内される。このような構造を採用したことにより、サンルーフ3Sと空調ユニット61の間、かつ右送風ダクト62Rと左送風ダクト62Lの間に防音材35を配置できたのである。そして、かかる位置は、オペレータの頭上にあたるので、部分的に防音材35を露出させることにより、騒音の反射を弱めるとしたのである。
次に、フロントガラス51に関する構造について説明する。
図17は、フロントガラス51の貼り付け代Mを示している。図中には、トラクタ1の上下方向及び左右方向を表す。
フロントガラス51は、キャビン2の下端から上端まで、かつ左端から右端までを覆う一枚のガラス板によって構成されている。つまり、フロントガラス51は、フロントプレート27からフロントビーム212まで、かつ一方のフロントピラー23から他方のフロントピラー23までを覆う一枚のガラス板によって構成されている。
本トラクタ1において、フロントガラス51は、エアカットプレート26の外側に配置され、該エアカットプレート26と重ねられる。つまり、フロントガラス51は、エアカットプレート26の外側面に重ねられている。換言すると、エアカットプレート26は、フロントガラス51の内側面に重ねられている。
エアカットプレート26は、左右に脚部261・261が形成された半楕円形状の構造体である。エアカットプレート26は、エンジンルームとキャビン2を仕切り、エンジン2の熱や騒音がキャビン2内へ伝達するのを防止している。
エアカットプレート26は、その上下方向の下端部から上部まで、かつ左右方向の略中央部分に凹部26dが形成されている。そして、凹部26dの下端には、左右方向に対して平行にリブ26Rが設けられている。
このような構造により、フロントガラス51は、その下端の中央部分がリブ26Rに貼り付けられる(斜線で表す貼り付け代M参照)。また、フロントガラス51は、その下端の左右部分が脚部261・261からフロントプレート27にかけて貼り付けられる(斜線で表す貼り付け代M参照)。なお、フロントガラス51の左端及び右端は、左右のフロントピラー23に貼り付けられ、フロントガラス51の上端は、フロントビーム212に貼り付けられる(斜線で表す貼り付け代M参照)。
以下に、かかる構造としたことによる効果について説明する。
従来のトラクタにおけるキャビンは、その前面がフレームによって複数個所に区画され、各区画にフロントガラスが嵌め込まれていた。従って、フレームがオペレータの視界を狭めるという問題を有していた。
しかし、本トラクタ1のキャビン2によれば、フロントガラス51が下端から上端まで、かつ左端から右端までを覆う一枚のガラス板によって構成されている。そのため、オペレータの視界を広く確保できる。ひいては、キャビン2内での快適性を向上させることが可能となる。
また、本トラクタ1のキャビン2によれば、フロントガラス51が一枚のガラス板によって構成されているので、部品点数を減らすことができ、コストの低減や生産性の向上を実現することが可能となる。更に、貼り付け代Mの長さを短縮でき、該フロントガラス51を取り付けるための作業工数を削減できる。
加えて、本トラクタ1のキャビン2によれば、フロントガラス51とエアカットプレート26によってエンジンルームとキャビン2を仕切るので、エンジン2の熱や騒音を十分に遮断できる。そのため、断熱材や防音材を減らすことができ、コストの低減や生産性の向上を実現することも可能となる。
また、エアカットプレート26の凹部26dに、左右方向に対して平行にリブ26Rを設けたことにより、キャビン2の左右方向への強度が向上している。
次に、ドア4に関する構造について説明する。
ドア4は、オペレータの乗降口となる。そして、左側のドア4(詳細にはドアパネル42)は、その後端部がヒンジ41に取り付けられている。また、右側のドア4(詳細にはドアパネル42)も、その後端部がヒンジ41に取り付けられている。そして、これら左右のドア4(詳細にはドアパネル42)は、ヒンジ41の回動軸を中心として回動する構造となっている。即ち、左右のドア4は、前開きとなるドア構造を採用したものである。なお、ドア4の詳細な構造については以降に説明する。
以降に、ドア4の詳細な構造について説明する。ここでは、左側のドア4を例示して説明する。
図18は、ドア4の外側を示している。また、図19は、ドア4の内側を示している。図中には、トラクタ1の前後方向及び上下方向を表す。
ドア4は、主に、ヒンジ41と、ドアパネル42と、ドアロックモジュール43と、で構成されている。
ヒンジ41は、ドアパネル42を回動自在に支持する。ヒンジ41は、その基端側がリヤピラー24に取り付けられている。また、その動端側にドアパネル42が固定される。詳細には、ヒンジ41の動端側と該動端側に締結されるプレート41Pによってドアパネル42が挟まれた状態で固定される。こうして、ヒンジ41は、ドアパネル42を回動自在に支持するのである。
ドアパネル42は、キャビン2の側面を構成する。ドアパネル42は、その前縁がフロントピラー23の形状に沿うように形成されている。また、その後縁がリヤピラー24の形状に沿うように形成されている。このため、ドアパネル42は、フロントピラー23とリヤピラー24の間に嵌め込まれ、キャビン2の側面を構成するのである。なお、本トラクタ1において、ドアパネル42は、一枚のサイドガラス53によって構成されている。
ドアロックモジュール43は、ドアパネル42の回動を制限するロック機構のほか、回動を許容するロック解除機構を構成している。ドアロックモジュール43は、その室外レバー431の操作によってロックを解除するように設計されている。また、その室内レバー438の操作によってロックを解除するように設計されている。このように、ドアロックモジュール43は、オペレータの操作によって回動を許容するロック解除機構を構成しているのである。
以降に、ドアロックモジュール43の詳細な構造について説明する。但し、本願の発明と関係がない部分については省略する。
図20及び図21は、ドアロックモジュール43の動作態様を示している。図中には、トラクタ1の前後方向、上下方向、及び左右方向を表す。なお、図中に示す矢印は、ドアロックモジュール43を構成する各部品の動作方向を表している。
ドアロックモジュール43は、室外レバー431や室内レバー438のほか、多くの部品で構成されている。
室外レバー431は、ドアパネル42の外側に設けられている。また、室外レバー431は、その基端側431sに対して動端側431dが上方となるように取り付けられている。そして、ドアロックモジュール43は、室外レバー431の動端側431dが回動軸(図示せず)を中心としてドアパネル42から離れる方向に回動すればロックを解除するように設計されている。
具体的に説明すると、室外レバー431は、基端側431sに設けられた回動軸を中心として回動自在となっている。そのため、オペレータは、室外レバー431を掴み、その動端側431dをドアパネル42から離れる方向に回動させることができる(動端側431dを引っ張り出すような動作:矢印A参照)。すると、室外レバー431の回動に伴ってプレート432が回動し、該プレート432に取り付けられているロッド433を上方へ押し上げる。そして、コントロールアーム434が上方へ回動すると、それに伴ってリンクアーム435も回動することとなる。最後に、リンクアーム435の回動によってラッチ436も回動し、該ラッチ436がストライカ437から外れるのである。
このように、本トラクタ1のドアロックモジュール43は、室外レバー431を備え、該室外レバー431の動端側431dがドアパネル42から離れる方向に回動すればロックを解除する。これにより、ドア4を開く動作が容易となるので、操作性を向上させることができる。
加えて、本トラクタ1では、サブステップ29の上方に室外レバー431が配置されている(図18参照)。そして、室外レバー431は、その基端側431sに対して動端側431dが上方となるように取り付けられている。これにより、トラクタ1の車高が高い場合において、オペレータは、室外レバー431を掴んで体を引き上げることができる。また、オペレータは、下方から室外レバー431を掴み、動端側431dを引き下ろせばロックが解除されるので、ドア4を開く動作が容易となる。
室内レバー438は、ドアパネル42の内側に設けられている。また、室内レバー438は、その基端側438sに対して動端側438dが後方となるように取り付けられている。そして、ドアロックモジュール43は、室内レバー438の動端側438dが回動軸438Aを中心としてドアパネル42から離れる方向に回動すればロックを解除するように設計されている。
具体的に説明すると、室内レバー438は、基端側438sに設けられた回動軸を中心として回動自在となっている。そのため、オペレータは、室内レバー438を指に掛け、その動端側438dをドアパネル42から離れる方向に回動させることができる(動端側438dを引っ張り出すような動作:矢印B参照)。すると、室内レバー438の回動に伴ってロッド439が後方へ引っ張られ、コントロールアーム434を上方へ回動させる。そして、コントロールアーム434が上方へ回動すると、それに伴ってリンクアーム435も回動することとなる。最後に、リンクアーム435の回動によってラッチ436も回動し、該ラッチ436がストライカ437から外れるのである。
このように、本トラクタ1のドアロックモジュール43は、室内レバー438を備え、該室内レバー438の動端側438dがドアパネル42から離れる方向に回動すればロックを解除する。これにより、ドア4を開く動作が容易となるので、操作性を向上させることができる。
加えて、本トラクタ1では、運転座席19よりも前側に室内レバー438が配置されている(図19参照)。そして、室内レバーは、その基端側に対して動端側が後方となるように取り付けられている。これにより、前開きとなるドア構造において、オペレータは、後方から室内レバー438に指を掛け、動端側431dを引き起こせばロックが解除されるので、ドア4を開く動作が容易となる。また、オペレータは、室内レバー438を押すことによってドア4を開くことができる。
次に、上述したドア構造の他の特徴点について説明する。
本ドア構造は、サイドフレーム44と、フレームカバー45と、を備える。
サイドフレーム44は、ドアロックモジュール43に連結されている。詳細に説明すると、サイドフレーム44は、その一端がドアロックモジュール43に連結され、その他端がヒンジ41に連結されている。こうして、サイドフレーム44は、ドアパネル42を横切るように配置されている(図18、図19参照)。なお、サイドフレーム44は、炭素鋼鋼管を曲げて形成したものである。
フレームカバー45は、サイドフレーム44を覆っている。詳細に説明すると、フレームカバー45は、サイドフレーム44に沿うように形成され、該サイドフレーム44の周囲を覆っている。こうして、フレームカバー45は、サイドフレーム44と一体となって配置されている。なお、フレームカバー45は、樹脂材を固化して形成したものである。フレームカバー45には、レバーガードが設けられている。レバーガードとは、室内レバー438を囲うための凹部45dである。
このように、本トラクタ1のドア構造は、ドアロックモジュール43に連結されたサイドフレーム44を具備する。また、サイドフレーム44を覆うフレームカバー45を具備する。そして、フレームカバー45は、室内レバー438を囲うための凹部45dを有する。これにより、金属部品の露出が少なくなるので、高級感を向上させることができる。また、フレームカバーによって室内レバー438を囲うので、該室内レバー438の誤操作を防止できる。
加えて、本トラクタ1では、フレームカバー45にグリップ部45gが形成されている(図18、図19参照)。そして、グリップ部45gは、少なくとも運転座席19の近傍部分からドアロックモジュール43まで徐々に高さが低くなる(図18、図19における矢印S参照)。これにより、フレームカバー45がオペレータの視線(オペレータが運転座席19に座って操縦をしているときのやや下向きの視線:図18、図19における矢印E参照)に沿うとともにドアロックモジュール43と重なるので、視界を広く確保することができる。