JP2015112667A - 研磨対象物保持材および被研磨物製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐磨耗性に優れ、研磨対象物へのスクラッチが付きにくい、耐久性に優れた長寿命の研磨対象物保持材を提供する。
【解決手段】JIS L1013に従って測定した際の繊維の引張強さが10cN/dtex以上であり初期引張抵抗度が350cN/dtex以上であるポリエチレン繊維を含有した不織布を用いたポリエチレン繊維基材であって、カッターの刃先角度を20°に設定して測定した際のカッター切断抵抗が250gf以上であるポリエチレン繊維基材をからなる層を1つまたは複数層用いた、研磨対象物を保持するための研磨対象物保持材100。
【選択図】図2
【解決手段】JIS L1013に従って測定した際の繊維の引張強さが10cN/dtex以上であり初期引張抵抗度が350cN/dtex以上であるポリエチレン繊維を含有した不織布を用いたポリエチレン繊維基材であって、カッターの刃先角度を20°に設定して測定した際のカッター切断抵抗が250gf以上であるポリエチレン繊維基材をからなる層を1つまたは複数層用いた、研磨対象物を保持するための研磨対象物保持材100。
【選択図】図2
Description
本発明は、半導体ウエハー、シリコンウエハー、ハードディスク用アルミディスク、ガラスディスク、液晶表示用ガラス基板等の表面研磨において、これらの研磨対象物を保持するための研磨対象物保持材に関する。また、本発明は、研磨対象物保持材を用いた被研磨物製造方法に関する。
半導体ウエハー等の研磨対象物を平面研磨装置により研磨加工して被研磨物を製造する際に、貫通穴を備え、該貫通穴内に研磨対象物を嵌め込んで保持する研磨対象物保持材が一般に用いられている。研磨対象物保持材は研磨装置に装着される。研磨装置は、研磨装置の研磨部材を、研磨対象物保持材に嵌め込まれた研磨対象物の研磨対象面と接触させた状態で、研磨対象物保持材を面方向に回転運動させることによって、研磨対象物の表面研磨を行う。
例えば、ステンレス等の金属板、あるいはガラス繊維等の無機繊維または有機繊維を基材として樹脂を含浸させ乾燥させたプリプレグを積層し加熱加圧成形して得た積層板から形成された、種々の研磨対象物保持材が知られている。
研磨対象物保持材は、研磨装置による研磨においてそれ自体が磨耗すると、磨耗した材料の粉末を発生する。金属およびガラスは相対的に硬度が高く磨耗し難い材質であるがゆえに、金属板またはガラス繊維を基材とした積層板から形成された保持材がいったん磨耗すると、生じた粉末は研磨対象物の表面にスクラッチ(研磨傷)を生じさせやすいという問題がある。研磨対象物にスクラッチが生じると、研磨歩留まりが低下する。
研磨対象物におけるスクラッチの発生を抑制するために、ガラス繊維等の無機繊維よりも硬度が低い、柔らかい有機繊維からなる基材を用いた研磨対象物保持材が提案されている。例えば特許文献1は、パラ系アラミド繊維を主成分とするアラミド繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグを加熱加圧成形して得た研磨対象物保持材を開示している。
しかしながら、アラミド繊維基材を用いた研磨対象物保持材において、研磨装置による研磨時に、研磨対象物を嵌め込んだ貫通穴の壁面に、嵌め込まれた研磨対象物の端面が繰り返し衝突することにより、研磨対象物の端面にスクラッチが発生することがある。有機繊維の一種であるアラミド繊維は、ガラス繊維等の無機繊維に比べて硬度が低い。また、アラミド繊維は、一般に、有機繊維の中では、硬度が高く、繊維弾性率が高く、耐摩耗性に優れるが、摩擦係数はポリオレフィン繊維に比べて高い。アラミド繊維基材を用いた研磨対象物保持材において貫通穴の壁面に表出するアラミド繊維は、このような物性に基づき研磨対象物を擦過しやすいために、研磨対象物の表面研磨時に端面のスクラッチが発生するものと推定される。
これに対し、別の有機繊維として、例えばポリエステルのような繊維弾性率の比較的低い繊維からなる基材を用いれば、貫通穴内壁にクッション性を付与することができ、研磨対象物の端面におけるスクラッチの発生を抑制可能であると考えられる。しかしながら、ポリエステル繊維やナイロン繊維からなる基材で作製された保持材は、耐磨耗性はアラミド繊維に比べ不十分であり、また、研磨中に研磨対象物保持材が変形して引き裂かれるクラッシュと呼ばれる現象が発生しやすく、使用寿命が短い傾向にある。
本発明の目的は、研磨対象物の表面および端面の両方におけるスクラッチの発生を抑制することができる耐久性の高い長寿命の研磨対象物保持材、およびそれを用いた被研磨物の製造方法を提供することにある。
1.上記目的を達成するための本発明の1つの態様は、JIS L1013に従って測定した際の繊維の引張強さが10cN/dtex以上であり初期引張抵抗度が350cN/dtex以上であるポリエチレン繊維を含有した不織布を用いたポリエチレン繊維基材であって、カッターの刃先角度を20°に設定して測定した際のカッター切断抵抗が250gf以上であるポリエチレン繊維基材を用いた、研磨対象物を保持するための研磨対象物保持材である。
2.上記目的を達成するための本発明の別の態様は、前記不織布は湿式不織布であり、前記ポリエチレン繊維基材は前記ポリエチレン繊維基材中の全繊維量を基準として50質量%以上の割合で前記ポリエチレン繊維を含むことを特徴とする1.に記載の研磨対象物保持材である。
3.上記目的を達成するための本発明の別の態様は、前記ポリエチレン繊維基材は、エチレン−(メタ)アクリル酸系樹脂およびプロピレン−(メタ)アクリル酸系樹脂のうちの少なくとも1種を含有した融点が50℃以上の樹脂バインダーを含有することを特徴とする1.または2.に記載の研磨対象物保持材である。
4.上記目的を達成するための本発明の別の態様は、前記ポリエチレン繊維基材には熱硬化性樹脂が含浸されており、前記研磨対象物保持材は、前記ポリエチレン繊維基材を加圧加熱成形して得たものであり、略円板の形状を有し、周囲にギアが形成され、研磨対象物を保持するための開口部を備えていることを特徴とする1.〜3.のいずれか1つに記載の研磨対象物保持材である。
5.上記目的を達成するための本発明の別の態様は、前記研磨対象物保持材は、熱硬化性樹脂を含浸させた繊維基材を複数積層させて加熱加圧成形して得たものであり、積層された複数の前記熱硬化性樹脂を含浸させた繊維基材のうちの表層の少なくとも一方に、前記ポリエチレン繊維基材を用いたことを特徴とする1.から4.のいずれか1つに記載の研磨対象物保持材である。
6.上記目的を達成するための本発明の別の態様は、積層された複数の前記熱硬化性樹脂を含浸させた繊維基材は、熱硬化性樹脂を含浸させた前記ポリエチレン繊維基材と、ポリエチレン繊維、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリアリレート繊維、ポリエーテル・エーテル・ケトン繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリエステル繊維、ポリアセタール繊維、ポリカーボネート繊維、およびナイロン繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維を用いた不織布または織布に熱硬化性樹脂を含浸させて得た基材と、を含むことを特徴とする5.に記載の研磨対象物保持材である。
7.上記目的を達成するための本発明の別の態様は、ポリエチレン繊維基材と樹脂とからなる複合材料であって、JIS K7204に従って評価した際の磨耗量が180mg未満であることを特徴とする研磨対象物保持材である。
8.上記目的を達成するための本発明の別の態様は、周囲にギアが形成された、研磨対象物を保持するための研磨対象物保持材を、インターナルギアと太陽ギアとを有した研磨装置に搭載する工程と、前記工程の前後のいずれかにおいて、前記研磨対象物保持材に研磨対象物を保持させる工程と、前記研磨装置によって、前記研磨対象物保持材を前記研磨装置の研磨部材に対して相対移動させることにより、前記研磨対象物を研磨する工程と、
を含む被研磨物の製造方法において、前記研磨対象物保持材として、1.〜7.のいずれか1つに記載の研磨対象物保持材を用いることを特徴とする被研磨物の製造方法である。
を含む被研磨物の製造方法において、前記研磨対象物保持材として、1.〜7.のいずれか1つに記載の研磨対象物保持材を用いることを特徴とする被研磨物の製造方法である。
本発明によれば、耐磨耗性に優れるとともに、研磨対象物の表面および端面の両方においてスクラッチの発生を抑制できる、耐久性の高い長寿命の研磨対象物保持材を提供することができる。本発明によれば、そのような研磨対象物保持材を用いた、スクラッチが付きにくく研磨歩留まりが高い被研磨物製品の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を具体的に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
[構成]
図1および図2を参照して、本発明の実施形態に係る研磨対象物保持材の構成について説明する。以下、本明細書において、研磨対象物保持材を単に保持材ともいう。
図1および図2を参照して、本発明の実施形態に係る研磨対象物保持材の構成について説明する。以下、本明細書において、研磨対象物保持材を単に保持材ともいう。
図1(a)は、本発明の実施形態に係る研磨対象物保持材を示す上面図である。研磨対象物保持材100は、平面研磨装置で研磨対象物を研磨加工して被研磨物を製造する際に、研磨対象物を所定の位置に保持するために用いられる。保持材100は、概して円板10の形状を有し、周囲にギア20が形成されており、研磨対象物を嵌めて保持するための開口部として貫通穴30を備える。本実施形態では貫通穴30は3つ形成されているが、本発明ではこれに限定されず、貫通穴30の数は1つであってもよく3つ以外の複数であってもよい。
研磨対象物の例は、半導体ウエハー、シリコンウエハー、ハードディスク用アルミディスク、ガラスディスク、および液晶表示用ガラス基板等を製造するためのワークピースを含む。
図1(b)は、研磨対象物保持材100の使用例を示す上面図である。保持材100は、インターナルギア40および太陽ギア50を有する平面研磨装置200に搭載され、貫通穴30に研磨対象物を嵌め込んだ状態で遊星運動するように駆動される。保持材100の平面研磨装置200への搭載と保持材の貫通穴30への研磨対象物の嵌め込みとの順番は、この順であってもよく、またはその反対であってもよい。保持材100が平面研磨装置200の保持部材に対して相対移動をすることにより、保持材100によって保持される研磨対象物の一方の表面が平面研磨装置200によって研磨される。
図2は、研磨対象物保持材100の層構成の例を示す断面図である。本発明に係る保持材は、シート状の繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸させ乾燥してプリプレグとし、プリプレグを加熱加圧成形して積層板とし、積層板を貫通穴およびギアを有する形態に加工することによって得ることができる。本例において、保持材100は、10枚のプリプレグが積層されてなる積層板から形成されたものであり、2つの表層とそれらの間に配置された8つの中層とを含む。ただし、本発明において、保持材100が含む層すなわちプリプレグの数は、10層(10枚)に限定されず、研磨対象物の種類や研磨条件等に応じて設定可能であり、1層(1枚)であってもよく、10層(10枚)とは異なる複数層(複数枚)であってもよい。
[材料]
本発明の実施形態に係る研磨対象物保持材に用いることのできる材料について説明する。
本発明の実施形態に係る研磨対象物保持材に用いることのできる材料について説明する。
本発明に係る保持材は、前述のとおり、シート状の繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸させ乾燥してプリプレグとし、プリプレグを加熱加圧成形して積層板とし、積層板を所望の形状に加工することによって得られる。本発明の保持材は、ポリエチレン繊維基材からなるプリプレグを、保持材を構成するプリプレグの層の全て、少なくとも表層、または少なくとも1つの表層に用いることを特徴とする。
本発明に用いることのできるポリエチレン繊維基材は、伸びや強度の無方向性、地合の均一性、および表面の平滑性等の観点から、好ましくは不織布として、より好ましくは湿式不織布として、シート状に作製される。
本発明に用いることのできるポリエチレン繊維は、ステープル、フィブリル、チョップドファイバーなどの短繊維であり、繊維の形態に特に制限はない。繊維基材を湿式不織布として作製するためには、ポリエチレン繊維は水中に均一に分散することのできることを要する。
ポリエチレン繊維の繊維長は、1〜15mm程度が適当である。シート状の繊維基材とした際に、繊維長が1mm未満ではシート強度が低い傾向があり、15mmを超えると基材の地合が劣り表面性に望ましく無い影響を与えるおそれがある。1つのポリエチレン繊維基材の中で、長さの異なる繊維を併用してもよい。
ポリエチレン繊維の繊維径は、特に制限はないが、5〜20μm程度が好ましい。繊維径が5μm未満であると、シート状の繊維基材を作製する際の乾燥処理時、平滑化処理時、あるいは繊維基材からなるプリプレグを積層して加熱加圧成形を行う際の寸法安定性が低い傾向がある。繊維径が20μmを超えると、シート状の繊維基材とした際に、表面の均一性、および繊維と基材作製に用いた樹脂バインダーとの接着性が低いおそれがある。
ポリエチレン繊維の物性として、保持材とした際の耐磨耗性、剛性および耐久性等の観点から、ある程度高い繊維強度および弾性率を有することが好ましい。繊維強度として、例えば、JIS L1030に従って測定した際の繊維の引張強さは、10cN/dtex以上であることが好ましく、24cN/dtex以上であることがさらに好ましい。また、繊維弾性率として、例えば、JIS L1030に従って測定した際の繊維の初期引張抵抗度は、350cN/dtex以上であることが好ましく、700cN/dtex以上であることがさらに好ましい。このような繊維強度および弾性率が得られる繊維は、直鎖状の数十万以上の高分子量のポリエチレン繊維であり、特に平均分子量が150万以上のものは超高分子量ポリエチレン繊維と呼ばれる。
本発明に用いることのできるポリエチレン繊維の具体的な商品名として、ダイニーマ(登録商標:日本ダイニーマ株式会社製)、ツヌーガ(登録商標:東洋紡株式会社製)、スペクトラ(登録商標:米国ハネウェル社製)などが挙げられる。1つのポリエチレン繊維基材中の繊維として、1種類のポリエチレン繊維を好ましく使用することができ、また、上述の要件を満たすポリエチレン繊維であって物性の異なる複数種類のポリエチレン繊維を組み合わせて使用してもよい。
ポリエチレン繊維基材には、必要とされる品質や物性によって、上述のポリエチレン繊維以外の繊維を併用してもよい。併用する繊維の配合率は、本発明の目的とする効果が得られる限り特に制限はない。例えば、ポリエチレン繊維基材中の全繊維量を基準にして、ポリエチレン繊維の配合率は、50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上である。また、ポリエチレン繊維基材中の全繊維量を基準にして、併用する繊維の配合率は、50質量%未満であることが好ましく、30質量%未満であることがより好ましい。
併用することのできる繊維として、化学繊維、天然繊維等が挙げられる。化学繊維の例は、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリブテン繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリ塩化ビニル繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリイミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、ビニロン繊維、ポリカーボネート繊維、エチレンビニルアセテート繊維、エチレンビニルアルコール繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、アラミド繊維(パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維)、ポリエーテル・エーテル・ケトン繊維、およびポリアセタール繊維を含む。天然繊維の例は、セルロース繊維、綿、羊毛、絹、および麻を含む。芯鞘繊維、サイドバイサイド繊維等の、複数の樹脂からなる複合繊維を使用しても構わない。
本発明に係るポリエチレン繊維基材は、上述の繊維を用いたウェブを形成し、ウェブ内の繊維を樹脂バインダーにより結合させることにより作製される。本発明において用いることのできる樹脂バインダーとして、エチレン−(メタ)アクリル酸系樹脂およびプロピレン−(メタ)アクリル酸系樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は、エチレンまたはプロピレンと、アクリル酸またはメタクリル酸と、を共重合させて得ることができ、好ましくは、エチレンまたはプロピレンの使用割合は70〜95質量%、アクリル酸またはメタクリル酸の使用割合は5〜30質量%である。また、これらの樹脂の分子量は5000〜50000、ガラス転移点は0℃以下、および酸価は10〜60である。これらの樹脂は、末端に反応基を有することが好ましい。また、これらの樹脂は水分散性樹脂であることが望ましい。
樹脂バインダーの融点は、50℃以上であることが好ましい。樹脂バインダーの融点が50℃未満であると、研磨時に保持材の温度が融点以上となる可能性があり、樹脂バインダーが溶融することにより保持材の剛性が低下し、クラッシュが発生するおそれがある。一方、融点の上限はないが、融点が160℃を超えると、乾燥時に乾燥温度において繊維表面上のバインダー樹脂が拡がりにくいため、強度発現性がやや低下する傾向にある。
市販されている水分散性エチレン−(メタ)アクリル酸系樹脂としては、住友精化株式会社製のザイクセン(登録商標)L、ザイクセン(登録商標)AC、東邦化学工業株式会社製のハイテック(登録商標)S3121、ハイテック(登録商標)S3148、ハイテック(登録商標)S6254、ハイテック(登録商標)S6254B、ハイテック(登録商標)S9242等を挙げることができる。また、水分散性プロピレン−(メタ)アクリル酸系樹脂としては、東邦化学工業株式会社製のハイテック(登録商標)E8045を挙げることができる。これらの樹脂は、必要に応じ、2種あるいは3種以上を併用しても構わない。
樹脂バインダーには、これらの樹脂に加え、必要に応じて、他の樹脂を併用することもできる。併用可能な樹脂としては、塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン/アクリル酸エステル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂や、SBR、NBR等のゴム系エマルジョンなどが挙げられる。
樹脂バインダーの樹脂の含有量は、ポリエチレン繊維基材の質量を基準にして、1〜30質量%が適当であり、好ましくは5〜15質量%である。因みに、1質量%未満ではバインダーとしての効果に乏しい。また、30質量%を越えると繊維の特性が損なわれる場合が多く、また、多量の使用は経済面から必要性に乏しい。
ポリエチレン繊維基材の作製にあたり、必要に応じて、助剤を添加することが可能である。添加可能な助剤としては、例えば、エポキシ系、イソシアネート系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤や、アミノ基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、メルカプトロ基等の官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。助剤の添加量としては、通常、樹脂バインダーの固形分に対して10質量%以下である。
ポリエチレン繊維基材の作製にあたり、必要に応じて、添加剤を加えることができる。添加剤の例としては、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、増粘剤、造核剤、中和剤、滑剤、ブロッキング防止剤、分散剤、流動性改良剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、着色剤、濡れ剤、炭酸カルシウム、カオリン、プラスチックピグメント等の充填材が挙げられる。これらの成分の含有量は、通常、ポリエチレン繊維基材の質量を基準にして5質量%以下である。
本発明に係るポリエチレン繊維基材の米坪量は、特に制限されないが、通常10〜300g/m2程度である。また、本発明に係るポリエチレン繊維基材の密度は0.15g/cm3以上であり、好ましくは0.18g/cm3以上である。密度が0.15g/cm3未満である場合は、ポリエチレン繊維基材を構成する繊維間の距離が長いことによってポリエチレン繊維基材の引張強度が発現し難い場合がある。必要に応じて、カレンダー処理またはプレス処理のような加圧処理が行われていてもよい。
本発明に係るポリエチレン繊維基材は、保持材に加工して使用する際に、ギア部分や、研磨対象物を嵌め込んで保持する貫通穴において、端面に露出した繊維が引き裂かれることのないような強度を有する必要がある。本発明者らは、基材についてのカッター切断抵抗を、そのような強度を推し量るための指標の1つとして設けた。本明細書において、カッター切断抵抗とは、次の方法で測定した値である。すなわち、架台上にポリエチレン繊維基材を載置し、その上にカッターを刃先角度20°に設定して配置し、カッターの上部に錘を載せてポリエチレン繊維基材上を通過させ、ポリエチレン繊維基材が切断されたときの錘の重量を測定する。カッター切断抵抗は、上述のような保持材の耐久性の観点から大きいほど好ましく、例えば、好ましくは250gf以上であり、より好ましくは300gf以上である。
本発明に係る保持材は、前述のように、繊維基材からなるプリプレグの1つまたは複数の層で構成されている。繊維基材として、上述の本発明に係るポリエチレン繊維基材のみを用いることができ、これによって本発明の好ましい効果が得られる。保持材がプリプレグの複数の層からなる積層板である場合は、少なくとも、2つの表層のプリプレグのうちの一方に本発明に係るポリエチレン繊維基材を用いることによって、本発明の効果を得ることができる。このとき、必要に応じて、中層の全てまたは一部、および/または2つの表層のうちの他方に、本発明に係るポリエチレン繊維基材とは別の、有機繊維からなる基材を使用しても構わない。乾燥による収縮の表裏差に起因する保持材の反りを防止するためには、ポリエチレン繊維基材からなる同一のプリプレグを、表層の両方に用いることが好ましい。また、同じ理由から、本発明に係るポリエチレン繊維基材と、それとは別の有機繊維からなる基材を併用する場合、保持材の層構成は、各種基材が厚さ方向において対称的に配置されている構成であることが好ましい。併用することができる基材として、例えば、保持材に加工された際の剛性を上げるために、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリアリレート繊維、パラ系アラミド繊維からなる基材を使用することができる。また、耐磨耗性を大きく損なわない範囲で、メタ系アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエーテル・エーテル・ケトン繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリエステル繊維、ポリアセタール繊維、ポリカーボネート繊維、ナイロン繊維からなる基材なども使用できる。また、本発明に係るポリエチレン繊維基材とは別のポリエチレン繊維基材を併用することもできる。
本発明に係る保持材の物性として、使用中に変形を生じるおそれが無い程度の弾性率を有する必要がある。例えば、3点曲げ弾性率は、3GPa以上であることが好ましい。3GPa未満だと、使用中に変形を生じるおそれがある。本明細書における3点曲げ弾性率は、JIS K7017に準拠する3点曲げ試験にて測定される値である。
[ポリエチレン繊維基材の製造方法]
本発明に係るポリエチレン繊維基材は、これに限定されるものではないが、例えば次のようにして製造することができる。
本発明に係るポリエチレン繊維基材は、これに限定されるものではないが、例えば次のようにして製造することができる。
ポリエチレン系の短繊維を希薄濃度で水中に均一分散させて、湿式抄紙の原料とする。分散機には、通常の分散機を使用できるが、ブレンダータイプの分散機が好ましい。このとき、必要に応じて、原料に添加剤を添加しても構わない。添加剤の例は、分散剤、消泡剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、中和剤、滑剤、ブロッキング防止剤、流動性改良剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、着色剤、および炭酸カルシウムやタルク等の充填材を含む。
次いで、短繊維の量が原料の質量を基準にして通常0.01〜2質量%となるように原料の濃度を調整する。上記の添加剤は、短繊維の分散時に限らず、原料の濃度調整時に加えても構わない。
濃度を調整した原料を、抄紙機のワイヤー上で抄き取って、ウェブを形成する。抄紙に用いるワイヤーは、繊維が通過せず、且つ水はけが良くウェブの抄造速度が遅くなりすぎないことが重要である。ワイヤーの材質は、特に制限はないが、有機ポリマーからなる不織布、織物、または多孔膜であることが好ましい。有機ポリマーとしてはポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。
形成されたウェブに対し、水分散性エチレン−(メタ)アクリル酸系樹脂または水分散性プロピレン−(メタ)アクリル酸系樹脂を含むバインダー液を含有させる。含有は、含浸機による含浸、スプレーでの噴霧、またはカーテンコーター等の塗工機による塗布等の方法を用いて行うことができる。いずれの方法でも構わないが、含浸または噴霧の方法を用いることが好ましい。
水分散性エチレン−(メタ)アクリル酸系樹脂または水分散性プロピレン−(メタ)アクリル酸系樹脂が含有されたウェブは、次いで乾燥される。乾燥する方法に特に制限はなく、常法を用いることができる。例えば、送風乾燥、減圧乾燥、または加圧乾燥をすることができる。また、加熱乾燥をしても構わない。使用することのできる乾燥装置の例としては、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤー、エアーフローティングドライヤ−、赤外線ドライヤー等が挙げられる。
乾燥を行う際の加熱温度は、30℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、また130℃未満が好ましい。加熱温度が低すぎると、乾燥に時間を要し乾燥が不十分になる可能性がある。高密度ポリエチレンや高分子量ポリエチレン樹脂の融点は130〜140℃程度であるので、加熱温度が高すぎると、これらの繊維の結晶化度や分子量等が変化して繊維の特性が損なわれる可能性がある。
以上のようにして、本発明に係るポリエチレン繊維基材を、不織布の形態で得ることができる。得られたポリエチレン繊維基材に対し、必要に応じて、カレンダー処理またはプレス処理等の加圧処理を行うことができる。また。乾燥を行う前のウェブの状態の基材に対し、予めプレス処理を行っても構わない。使用することのできるカレンダーには、多段ロールカレンダー、ソフトニップカレンダー等があり、特に制限はない。
加圧処理は、ポリエチレン繊維基材の密度が0.15g/cm3以上、望ましくは0.18g/cm3以上となるように行う。密度が低すぎると繊維間の距離が広く、シート強度が発現し難くなる場合がある。
[プリプレグの製造方法]
有機繊維基材からなるプリプレグは、有機繊維基材に対し、熱硬化性樹脂を含浸させることにより製造する。
有機繊維基材からなるプリプレグは、有機繊維基材に対し、熱硬化性樹脂を含浸させることにより製造する。
有機繊維基材に含浸させることのできる熱硬化性樹脂としては、特に制限されないが、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等があり、中でもエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂や可撓性エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は必要に応じ2種類以上を併用することもできる。この他、通常用いられる一般的なエポキシ樹脂の硬化剤、および硬化促進剤なども併用することが望ましい。
含浸の方法としては、特に制限はなく、含浸機による含浸の他、樹脂液の塗布、流し込み、または樹脂液への浸漬等、種々の常法を用いることができる。
[積層板の製造方法]
積層板の形成方法に特に制限はなく、常法を用いることができる。例えば、上述のようにして作製したプリプレグを、目的に応じて必要枚数だけ積層させて、各層間が未接着の状態である積層体を形成する。積層体の表裏、すなわち重ね合わせたプリプレグの最上面および最下面に離型フィルムを貼り合わせ、これをステンレス製のあて板の間に挟み、プレス熱板間で加熱および加圧を行う。これにより、未接着の状態であったプリプレグの各層を接着および硬化させて、積層板とする。離型フィルムは取り除く。加熱および加圧の条件は、プリプレグに用いる材料の種類によって異なる。
積層板の形成方法に特に制限はなく、常法を用いることができる。例えば、上述のようにして作製したプリプレグを、目的に応じて必要枚数だけ積層させて、各層間が未接着の状態である積層体を形成する。積層体の表裏、すなわち重ね合わせたプリプレグの最上面および最下面に離型フィルムを貼り合わせ、これをステンレス製のあて板の間に挟み、プレス熱板間で加熱および加圧を行う。これにより、未接着の状態であったプリプレグの各層を接着および硬化させて、積層板とする。離型フィルムは取り除く。加熱および加圧の条件は、プリプレグに用いる材料の種類によって異なる。
[保持材の製造方法]
積層板を所定の輪郭形状に成形し、研磨対象物を保持するための必要な数の貫通穴を形成することにより、本発明に係る研磨対象物保持材が得られる。保持材の成形および貫通穴の形成方法に特に制限はなく、常法を用いることができる。例えば、抜き打ち加工やレーザー加工等により、輪郭成形および貫通穴の形成を行う。
積層板を所定の輪郭形状に成形し、研磨対象物を保持するための必要な数の貫通穴を形成することにより、本発明に係る研磨対象物保持材が得られる。保持材の成形および貫通穴の形成方法に特に制限はなく、常法を用いることができる。例えば、抜き打ち加工やレーザー加工等により、輪郭成形および貫通穴の形成を行う。
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
<繊維基材の製造>
短繊維として繊維長5mmのダイニーマ(登録商標、日本ダイニーマ株式会社製)を0.2%の濃度にて水に分散した分散液を調製した。この分散液を原料として、湿式抄紙法にて、繊維配列がランダムなウェブを形成した。得られたウェブに対し、接着剤を、原料繊維量に対して10質量%となるように噴霧した。接着剤としては、水分散性エチレン−(メタ)アクリル酸系樹脂(ハイテック(登録商標)S−9242(東邦化学株式会社製):エチレン/アクリル酸=80質量%/20質量%を用いた。次いでこれを110℃の温度に設定した熱風乾燥機にて乾燥し、60g/m2の湿式不織布の形態の繊維基材を得た。
<繊維基材の製造>
短繊維として繊維長5mmのダイニーマ(登録商標、日本ダイニーマ株式会社製)を0.2%の濃度にて水に分散した分散液を調製した。この分散液を原料として、湿式抄紙法にて、繊維配列がランダムなウェブを形成した。得られたウェブに対し、接着剤を、原料繊維量に対して10質量%となるように噴霧した。接着剤としては、水分散性エチレン−(メタ)アクリル酸系樹脂(ハイテック(登録商標)S−9242(東邦化学株式会社製):エチレン/アクリル酸=80質量%/20質量%を用いた。次いでこれを110℃の温度に設定した熱風乾燥機にて乾燥し、60g/m2の湿式不織布の形態の繊維基材を得た。
<積層板の製造>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂に、硬化剤としてジシアンジアミド、および硬化促進剤として2−エチルー4メチルイミダゾールを配合し、エポキシ樹脂ワニスを調製した。上述のようにして作製した繊維基材にエポキシ樹脂ワニスを含浸させ、乾燥させて、樹脂付着量50質量%のプリプレグを作製した。このプリプレグを10枚積層し、得られた積層体の表裏に離型フィルムを貼り合わせ、これをステンレス製のあて板の間に挟みプレス熱板間で120℃に加熱加圧し、次いで離型フィルムを取り除いて、板厚0.9mmの積層板を作製した。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂に、硬化剤としてジシアンジアミド、および硬化促進剤として2−エチルー4メチルイミダゾールを配合し、エポキシ樹脂ワニスを調製した。上述のようにして作製した繊維基材にエポキシ樹脂ワニスを含浸させ、乾燥させて、樹脂付着量50質量%のプリプレグを作製した。このプリプレグを10枚積層し、得られた積層体の表裏に離型フィルムを貼り合わせ、これをステンレス製のあて板の間に挟みプレス熱板間で120℃に加熱加圧し、次いで離型フィルムを取り除いて、板厚0.9mmの積層板を作製した。
[実施例2]
短繊維を、ダイニーマ(登録商標、日本ダイニーマ株式会社製)100質量%の単独使用からダイニーマ80質量%および繊維長3mmのツヌーガ(登録商標、東洋紡株式会社製)20質量%の混合使用に変更した以外は実施例1と同様にして積層板を作製した。
短繊維を、ダイニーマ(登録商標、日本ダイニーマ株式会社製)100質量%の単独使用からダイニーマ80質量%および繊維長3mmのツヌーガ(登録商標、東洋紡株式会社製)20質量%の混合使用に変更した以外は実施例1と同様にして積層板を作製した。
[実施例3]
短繊維として、繊維長6mmのパラ系アラミド繊維(ケブラー(登録商標)29、デュポン社製)を0.2%の濃度にて水に分散した分散液を調製した。この分散液を原料として、湿式抄紙法にて、繊維配列がランダムなウェブを形成した。得られたウェブに対し、接着剤として水溶性エポキシ樹脂バインダーを、原料繊維量に対して10質量%となるように噴霧した。次いでこれを180℃の温度に設定した熱風乾燥機にて乾燥し、60g/m2の湿式不織布の形態で繊維基材を得た。
短繊維として、繊維長6mmのパラ系アラミド繊維(ケブラー(登録商標)29、デュポン社製)を0.2%の濃度にて水に分散した分散液を調製した。この分散液を原料として、湿式抄紙法にて、繊維配列がランダムなウェブを形成した。得られたウェブに対し、接着剤として水溶性エポキシ樹脂バインダーを、原料繊維量に対して10質量%となるように噴霧した。次いでこれを180℃の温度に設定した熱風乾燥機にて乾燥し、60g/m2の湿式不織布の形態で繊維基材を得た。
この繊維基材にエポキシ樹脂ワニスを含浸させ、乾燥させて、樹脂付着量50質量%のプリプレグを作製した。実施例1にて作製したプリプレグを、このプリプレグを8枚積層させた積層体の表裏に各1枚配置し、計10枚のプリプレグを積層した積層体を得た。得られた積層体の表裏に離型フィルムを貼り合わせ、これをステンレス製のあて板の間に挟みプレス熱板間で120℃に加熱加圧し、次いで離型フィルムを取り除いて、板厚0.9mmの積層板を作製した。
[比較例1]
実施例1にて作製した繊維基材の代わりに実施例3にて作製したパラ系アラミド繊維からなる繊維基材を用いた以外は実施例1と同様にして、板厚0.9mmの積層板を作製した。
実施例1にて作製した繊維基材の代わりに実施例3にて作製したパラ系アラミド繊維からなる繊維基材を用いた以外は実施例1と同様にして、板厚0.9mmの積層板を作製した。
[比較例2]
短繊維としてパラ系アラミド繊維の代わりに繊維長5mmのポリエステル繊維(テピルス(登録商標)TA04N、帝人株式会社製)を用いた以外は実施例3と同様にして、60g/m2の湿式不織布の形態の繊維基材を得た。実施例1にて作製した繊維基材の代わりにこの繊維基材を用いた以外は実施例1と同様にして、板厚0.9mmの積層板を作製した。
短繊維としてパラ系アラミド繊維の代わりに繊維長5mmのポリエステル繊維(テピルス(登録商標)TA04N、帝人株式会社製)を用いた以外は実施例3と同様にして、60g/m2の湿式不織布の形態の繊維基材を得た。実施例1にて作製した繊維基材の代わりにこの繊維基材を用いた以外は実施例1と同様にして、板厚0.9mmの積層板を作製した。
[比較例3]
実施例1にて作製した繊維基材の代わりに米坪量60g/m2のガラス繊維不織布(繊維長7mm)を用いた以外は実施例1と同様にして、板厚0.9mmの積層板を作製した。
実施例1にて作製した繊維基材の代わりに米坪量60g/m2のガラス繊維不織布(繊維長7mm)を用いた以外は実施例1と同様にして、板厚0.9mmの積層板を作製した。
上記の実施例および比較例の作製に用いた繊維の物性(繊維強度、繊維弾性率)および繊維長、ならびに繊維基材の物性(カッター切断抵抗)を図3の第1表に示す。各物性は、以下の方法で測定した。
<繊維の物性の測定方法>
繊維強度として、JIS L1030(化学繊維フィラメント糸試験方法)に従う繊維の引張強さを測定した。また、繊維弾性率として、JIS L1030(化学繊維フィラメント糸試験方法)に従う繊維の初期引張抵抗度を測定した。
繊維強度として、JIS L1030(化学繊維フィラメント糸試験方法)に従う繊維の引張強さを測定した。また、繊維弾性率として、JIS L1030(化学繊維フィラメント糸試験方法)に従う繊維の初期引張抵抗度を測定した。
<カッター切断抵抗の測定方法>
有機繊維基材から、有機繊維の流れ目が縦目および横目のそれぞれとなる長さ10cm×巾5cmのサンプルを切り出した。サンプル1枚を架台上に載置し、その上にカッターを刃先角度20°に設定して配置し、カッターの上部に錘を載せてサンプル上を巾方向に通過させ、サンプルが完全に切断されたときの錘の重量を測定した。縦目および横目のサンプルをそれぞれ5回測定した際の錘の重量の平均値を、カッター切断抵抗とした。なお、カッターはNTカッター(登録商標)eL500(エヌティー株式会社製)を使用した。
有機繊維基材から、有機繊維の流れ目が縦目および横目のそれぞれとなる長さ10cm×巾5cmのサンプルを切り出した。サンプル1枚を架台上に載置し、その上にカッターを刃先角度20°に設定して配置し、カッターの上部に錘を載せてサンプル上を巾方向に通過させ、サンプルが完全に切断されたときの錘の重量を測定した。縦目および横目のサンプルをそれぞれ5回測定した際の錘の重量の平均値を、カッター切断抵抗とした。なお、カッターはNTカッター(登録商標)eL500(エヌティー株式会社製)を使用した。
また、実施例および比較例の積層板についての評価試験結果を図4の第2表に示す。試験項目および方法は、以下の通りである。
<耐磨耗性>
JIS K7204(プラスチック−磨耗輪による磨耗試験方法、磨耗輪はH18を使用)に従って、積層板の表層の摩耗量を評価した。
JIS K7204(プラスチック−磨耗輪による磨耗試験方法、磨耗輪はH18を使用)に従って、積層板の表層の摩耗量を評価した。
<3点曲げ弾性率>
JIS K7017に準拠する3点曲げ試験により、積層板の曲げ弾性率を測定した。
JIS K7017に準拠する3点曲げ試験により、積層板の曲げ弾性率を測定した。
<評価結果および考察>
図4の第2表を参照して、実施例1から3の積層板は、比較例1から3の積層板と比べて磨耗量が極めて少なく、耐磨耗性が良好であった。したがって、少なくとも表層にポリエチレン繊維基材を備える本発明の構成により、磨耗によって生じる粉体に起因する研磨対象物の表面のスクラッチの発生を抑制することができると考えられる。本発明において、磨耗量は、180mg未満であることが好ましく、150mg以下であることがさらに好ましい。
図4の第2表を参照して、実施例1から3の積層板は、比較例1から3の積層板と比べて磨耗量が極めて少なく、耐磨耗性が良好であった。したがって、少なくとも表層にポリエチレン繊維基材を備える本発明の構成により、磨耗によって生じる粉体に起因する研磨対象物の表面のスクラッチの発生を抑制することができると考えられる。本発明において、磨耗量は、180mg未満であることが好ましく、150mg以下であることがさらに好ましい。
実施例1から3および比較例1から3の積層板はいずれも、3GPa以上の3点曲げ弾性率を有していた。そのため、実施例1から3の積層板を保持材に加工して使用したとき、使用中に変形が生じにくいと考えられる。
図3の第1表を参照して、実施例1から3に使用される繊維基材はいずれも、相対的に高いカッター切断抵抗を有していた。そのため、これらを用いた実施例1から3の積層板を保持材に加工して使用したとき、ギア部分や、研磨対象物を嵌め込んで保持する貫通穴において、端面に露出した繊維の引き裂きが生じないような強度を呈することができると考えられる。すなわち、保持材として使用した際に、繊維がちぎれ難く、クラッシュが生じにくく、端面の耐磨耗性に優れると考えられる。
また、実施例1から3のポリエチレン繊維を使用した積層板は、比較例1のアラミド繊維を使用した積層板に比べ、静摩擦係数、動摩擦係数が共に20%程度低く、摺動性に優れていた。そのため、実施例に係る積層板は、保持材に加工された際に、貫通穴の内壁において、研磨対象物の衝突による応力を緩和でき、研磨対象物の端面におけるスクラッチの発生を抑制することができると考えられる。
以上のように、本発明によれば、耐磨耗性に優れ、研磨対象物の表面および端面の両方におけるスクラッチの発生を抑制することができ、耐久性が良好な長寿命の研磨対象物保持材を提供することができる。また、本発明によれば、そのような研磨対象物保持材のための基材およびプリプレグを提供することができる。
上述の実施例3では、積層板の層構成のうち2つの表層の両方に、本発明に係るポリエチレン繊維基材を用いていた。しかし、少なくとも研磨装置の研磨部材と接触して削られることになる一方の表層のみに本発明に係るポリエチレン繊維基材を用いれば、良好な耐磨耗性が得ることができる。したがって、そのような構成も本発明の範囲である。
また、上述の実施例1から3および比較例1を参照して、積層板の層構成において、本発明に係るポリエチレン繊維基材以外の基材を併用することにより、積層板の物性は、その基材の物性に影響を受けることが分かる。例えば、積層板に必要とされる剛性に応じて、相対的に剛性の高いパラ型アラミド繊維基材の積層板の層構成における使用枚数を増減させることができる。このように、本発明によれば、目的に応じて中層または研磨装置の研磨部材と接触しない方の表層に本発明に係るポリエチレン繊維基材以外の基材を用いることにより、得られる積層板およびそれから形成される研磨対象物保持材の物性を適宜調整することができる。
本発明の研磨対象物保持材を用いて研磨を行うことにより、研磨歩留まりが高く、スクラッチが少ない被研磨物を製造することができる。
10 研磨対象物
20 ギア
30 貫通穴
40 インターナルギア
50 太陽ギア
100 研磨対象物保持材(保持材)
200 研磨装置
20 ギア
30 貫通穴
40 インターナルギア
50 太陽ギア
100 研磨対象物保持材(保持材)
200 研磨装置
Claims (8)
- JIS L1013に従って測定した際の繊維の引張強さが10cN/dtex以上であり初期引張抵抗度が350cN/dtex以上であるポリエチレン繊維を含有した不織布を用いたポリエチレン繊維基材であって、カッターの刃先角度を20°に設定して測定した際のカッター切断抵抗が250gf以上であるポリエチレン繊維基材を用いた、研磨対象物を保持するための研磨対象物保持材。
- 前記不織布は湿式不織布であり、前記ポリエチレン繊維基材は前記ポリエチレン繊維基材中の全繊維量を基準として50質量%以上の割合で前記ポリエチレン繊維を含むことを特徴とする請求項1に記載の研磨対象物保持材。
- 前記ポリエチレン繊維基材は、エチレン−(メタ)アクリル酸系樹脂およびプロピレン−(メタ)アクリル酸系樹脂のうちの少なくとも1種を含有した融点が50℃以上の樹脂バインダーを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の研磨対象物保持材。
- 前記ポリエチレン繊維基材には熱硬化性樹脂が含浸されており、前記研磨対象物保持材は、前記ポリエチレン繊維基材を加圧加熱成形して得たものであり、略円板の形状を有し、周囲にギアが形成され、研磨対象物を保持するための開口部を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の研磨対象物保持材。
- 前記研磨対象物保持材は、熱硬化性樹脂を含浸させた繊維基材を複数積層させて加熱加圧成形して得たものであり、積層された複数の前記熱硬化性樹脂を含浸させた繊維基材のうちの表層の少なくとも一方に、前記ポリエチレン繊維基材を用いたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の研磨対象物保持材。
- 積層された複数の前記熱硬化性樹脂を含浸させた繊維基材は、熱硬化性樹脂を含浸させた前記ポリエチレン繊維基材と、ポリエチレン繊維、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリアリレート繊維、ポリエーテル・エーテル・ケトン繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリエステル繊維、ポリアセタール繊維、ポリカーボネート繊維、およびナイロン繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維を用いた不織布または織布に熱硬化性樹脂を含浸させて得た基材と、を含むことを特徴とする請求項5に記載の研磨対象物保持材。
- ポリエチレン繊維基材と樹脂とからなる複合材料であって、JIS K7204に従って評価した際の磨耗量が180mg未満であることを特徴とする研磨対象物保持材。
- 周囲にギアが形成された、研磨対象物を保持するための研磨対象物保持材を、インターナルギアと太陽ギアとを有した研磨装置に搭載する工程と、
前記工程の前後のいずれかにおいて、前記研磨対象物保持材に研磨対象物を保持させる工程と、
前記研磨装置によって、前記研磨対象物保持材を前記研磨装置の研磨部材に対して相対移動させることにより、前記研磨対象物を研磨する工程と、
を含む被研磨物の製造方法において、
前記研磨対象物保持材として、請求項1〜7のいずれか1項に記載の研磨対象物保持材を用いることを特徴とする被研磨物の製造方法。
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JP2013255351A JP2015112667A (ja) | 2013-12-10 | 2013-12-10 | 研磨対象物保持材および被研磨物製造方法 |
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