JP6111460B2 - 吸音材料および吸音材料成形物 - Google Patents
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Description
上記の軽量で吸音性が良く成形性に優れた材料として、本発明者はパルプ繊維からなり、クレープ加工及びエンボス加工した延伸性紙材を用いた吸音材(特許文献1)を先に提案した。また、更に紙を用いた成形物や伸びを向上した紙の製造方法等も知られている。
特許文献2は、表層、中間層、裏層からなり発泡剤混合により成形条件等が複雑になり、抄紙工程も複雑になる。
特許文献3は、伸張紙を成形するものであり、加湿の手間がかかる。
特許文献4は、PPC用紙のカール防止に関するものであり、表裏の繊維長差を0.1mm以下にしたものであり、またこの用紙を成形することに関しては特に記載はない。
特許文献5は、環境問題等から天然パルプ100%からなる伸張紙で、溝を設けたロールを用いて高い縦横の伸びができる伸張紙の製造方法に関するものであるが、特別に成形性や吸音性についての記載もない。
特許文献6は、特許文献4と同様カール防止であり、紙の表裏の密度差をなくすようにしたものである。
特許文献7は、同じくカール防止であり、紙の表裏の差をなくすためにパルプ繊維長を0.63〜0.70mmと、非常に小さくしたものである。
特許文献8は、同じくカール防止であり、離解濾水度差を30ml以下と非常に小さくしたものである。
特許文献9は、食品や飲料水の容器として使用される伸張紙に関するものであり、溝を設けたロールによって処理することにより縦横共に20%以上の伸びを示すものであるが、その用途から通気性は小さく設定されており、吸音材としての効果は期待出来ない。
また、上記紙にはクレープ加工および/またはエンボス加工が施されて延伸性が付与されていることが望ましく、更に上記紙の単位面積当りの質量は15g/m2〜80g/m2、厚さは0.05mm〜0.5mm、通気抵抗は0.10kPa・s/m〜10.0kPa・s/mに設定されていることが望ましい。
本発明では、更に上記吸音材料を所定形状に成形した吸音材料成形物が提供される。通常、上記吸音材料の成形は、加熱した吸音材料を冷間プレス成形する加熱−冷間プレス成形によって行われる。
本発明の吸音材料は、紙と多孔質基材との積層物からなり、該紙は、長繊維が裏面側に偏在することで、表面側と裏面側とで剛軟性が異なるものになる。該紙は、カンチレバー法によって測定した剛軟性において、裏面を上側に向けて測定した場合の剛軟性L1(mm)と表面を上側に向けて測定した場合の剛軟性L2(mm)との比L1/L2が1.2〜3.5の範囲に設定されている。そして、該紙の裏面を該多孔質基材側に向け、該紙と該多孔質基材とを積層した場合、該紙は該多孔質基材の表面形状に好適に追従し、成形によっても紙の破れが生じにくくなる。上記L1/L2の比が1.2に満たない場合には、上記紙の上記多孔質基材面への追従が不充分になって、上記紙に破れを生ずるおそれが高くなる。またL2/L1が3.5を越える場合には、基材側に接する上記紙の裏面の強度が不充分になって成形等の外力によって破れが生じ易くなる。
本発明では、軽量かつ高い吸音性を有し、成形性も良い吸音材料が提供される。
〔紙〕
本発明の紙に使用するパルプ繊維は、長繊維と短繊維との混合繊維であり、長繊維は通常は針葉樹パルプ繊維または合成樹脂であって、両者は併用されてもよく、短繊維は通常は広葉樹パルプ繊維である。
上記パルプ繊維は、通常は針葉樹や広葉樹のチップを原料とし、叩解度がJIS P 8121−1995の4.カナディアン・スタンダード・フリーネスに規定されるカナダ標準型ろ水度で250〜700ml(CSF)の範囲の多孔質パルプ繊維である。
上記叩解は、通常コニカルリファイナー、ディスクリファイナー等によって行われる。パルプ繊維の叩解度が700ml(CSF)を超えている場合には、フィブリル化や同心円状の緩みが不充分となり、パルプ繊維の多孔質化が不充分となり空隙率が低下して吸音材料の吸音性能に悪影響が及ぼされる。一方、250ml(CSF)を下回るとパルプ繊維のフィブリル化が進んで細分化されてしまい、微細繊維が増加するので、かかるパルプ繊維からなる紙の密度が高くなり、吸音材料の吸音特性に悪影響が及ぼされる。
なお上記長繊維とは、繊維の長さが平均で3.0mm〜5.0mmのものであり、上記短繊維とは、繊維の長さが平均で0.5mm〜2.0mmのものである。そして上記長繊維と上記短繊維との混合比率は、95:5〜50:50質量比に設定される。
上記抄造工程における上記ワイヤーパート工程は、ワイヤー(すき網)上で紙料を走行させつつ脱水することで紙層を形成して抄造シートを得る工程であるが、該ワイヤーパート工程ではワイヤーに接している面側から脱水される。このため、該ワイヤーに接している面側、つまり裏面側付近では、その反対側の面である表面側よりも紙料中の長繊維が多く偏在している状態となる。これは脱水時において、短繊維は水と共にワイヤーから脱してしまうが、長繊維はワイヤーを抜けられずに該ワイヤー上に残るためと考えられる。上記紙は、故意に該状態とすることで、裏面側に長繊維を偏在させて得られる。
上記紙において、単位面積当たりの繊維の本数は、長繊維を偏在させた裏面側で少なくなり、表面側で多くなることから、単位面積当たりの質量(密度)は、繊維が粗になる裏面側で低くなり、繊維が密になる表面側で高くなると考えられる。このため、得られた上記紙は、高密度の表面側が低密度の裏面側に比べ、コシが強く、伸びや変形に好適に耐えるものになり、特に凹凸のある成形を行なった場合に、該紙の表面側に破れや裂けが生じにくくなると考えられる。
但し、上記紙において、裏面側の密度と表面側の密度とを分けて調べることは非常に困難である。そこで本発明では、上記紙が裏面側への長繊維の偏在により、裏面側と表面側とで剛軟性が異なることに着目し、裏面側を上側にして測定した剛軟性L1(mm)と、表面側の上側にして測定した剛軟性L2(mm)をJIS L 1096:2010の8.21剛軟度におけるA法(45°カンチレバー法)に準じた方法によって測定する。この場合、剛軟性は紙試料の抄造方向に沿って測定される。
本発明に使用する紙は、上記L1と上記L2との比L1/L2が、1.2〜3.5の範囲になるように設定される。L1/L2が1.2に満たない場合、紙の裏面側と表面側とで剛軟性の差が殆ど無くなり、上記紙の上記多孔質基材面への追従が不充分になって、上記紙に破れを生ずるおそれが高くなる。つまり、L1/L2が1.2に満たない紙を使用して凹凸のある成形を行なった場合に、裏面側に比べて伸びや変形が顕著な表面側で破れを生ずるおそれが高くなる。一方、L1/L2が3.5を超える場合、基材側に接する上記紙の裏面の強度が不充分になって成形等の外力によって破れが生じ易くなる。つまり、L1/L2が3.5を超える紙を使用した場合、紙の裏面側へ長繊維が過剰に偏在することで、該紙の裏面側が凹凸のある成形を行うことが出来ない程度まで低密度になるおそれがある。
上記紙に上記クレープ加工を施す場合には、湿紙の状態でプレスロールやドクターブレード等を用いて縦方向(抄造方向)に圧縮して皺付けを行なうウェットクレープと、シートをヤンキードライヤーやカレンダーで乾燥した後、ドクターブレード等を用いて縦方向に圧縮して皺付けを行なうドライクレープとがある。例えばクレープ加工された繊維シートは、クレープ率が10〜50%であることが望ましい。
ここで、該クレープ率は、
クレープ率(%)=(A/B)×100(Aは紙製造工程における抄紙速度、Bは紙の巻き取り速度)
又は
クレープ率(%)=(A´/B´)×100(A´はクレープ加工前の長さ、B´はクレープ加工後の長さ)
換言すれば、該クレープ率は紙がクレーピングで縦方向(紙の場合は抄造方向)に圧縮される割合である(参考:特開2002−327399、特表平10−510886)。
ここで、クレープ率が10%に満たないとクレープ加工による吸音性能の向上が顕著でなくなり、かつ伸縮性も不足して深絞り成形に対応困難となり、一方、該クレープ率が50%を越えると、成形時に皺が入り易くなる。
上記エンボス加工は、表面に多数の凹凸が彫られたロール(エンボスロール)やプレート(エンボスプレート)を紙に押圧して該紙の表面に多数の突起を形成したものであり、該突起の突起高さが0.02〜2.00mmであり、かつ、突起数が20〜200個/cm2であることが望ましい。該突起高さが0.02mmに満たないと、エンボス加工による吸音性能の向上が顕著でなくなり、かつ伸縮性も不足して深絞り成形に対応困難となり、また、突起高さが2.00mmを越えた場合には、成形時に皺が入り易い。また、突起数が20個/cm2に満たないと、エンボス加工による吸音性能の向上が顕著でなくなり、突起数が200個/cm2を越えた場合には、エンボス加工紙の吸音性能の向上が見られなくなる。
なおまた、上記エンボス加工工程において、原紙にクレープ加工紙を用いれば、エンボスクレープ加工紙が得られる。
ここで、上記の通気抵抗(Pa・s/m)とは、通気性材料の通気の程度を表す尺度である。この通気抵抗の測定は定常流差圧測定方式により行われる。
図1に示すように、シリンダー状の通気路W内に試験片Tを配置し、一定の通気量V(図中矢印の向き)の状態で図中矢印の始点側の通気路W内の圧力P1と、図中矢印の終点P2の圧力差を測定し、次式より通気抵抗Rを求めることが出来る。
R=ΔP/V
ここで、ΔP(=P1−P2):圧力差(Pa)、V:単位面積当りの通気量(m3/m2・s)である。
通気抵抗は、例えば、通気性試験機(製品名:KES−F8−AP1、カトーテック株式会社製、定常流差圧測定方式)によって測定することが出来る。
なお、本発明の紙の通気抵抗の調整は、紙に使用するパルプ繊維の叩解度、パルプ繊維相互の絡みや目付量、クレープ率ならびに塗布および/または含浸および/または混合される合成樹脂の量で調整することができる。
本発明で使用される多孔質基材としては、通常繊維シートが使用される。
上記多孔質基材として使用される繊維シートの繊維としては、上記した通常繊維と同様なものが使用されるが、上記紙に使用される多孔質繊維を50質量%以上含む繊維からなる繊維シートを多孔質シートとして使用してもよい。
また、上記多孔質基材として使用される繊維シートには、上記繊維の全部または一部として、融点が180℃以下である低融点熱可塑性繊維を使用することができる。
上記低融点熱可塑性繊維としては、例えば融点180℃以下のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリウレタン繊維、ポリエステル繊維、ポリエステル共重合体繊維、ポリアミド繊維、ポリアミド共重合体繊維等がある。これらの低融点熱可塑性繊維は、単独あるいは2種以上組み合わせて使用される。該低融点熱可塑性繊維の繊度は、0.1〜60dtexの範囲であることが好ましい。本発明に使用する望ましい低融点熱可塑性繊維としては、例えば上記通常繊維を芯部分とし、該低融点熱可塑性繊維の材料樹脂である融点100〜180℃の低融点熱可塑性樹脂を鞘とする芯鞘型複合繊維がある。該芯鞘型複合繊維を使用すると、得られる繊維シートの剛性や耐熱性が低下しない。
なお、本発明に係る多孔質基材の目付量、厚みは、任意に設定可能であるが、望ましくは、目付量30〜600g/m2、更に望ましくは35〜300g/m2、厚み1〜10mm、更に望ましくは2.0〜5.0mmに設定される。
図2(a),(b)に示すように、本発明の吸音材料10A,10Bは、紙11を多孔質基材12の片面または両面に、該紙11の裏面11a側を多孔質基材側として、積層することによって製造される。
つまり、上記紙11は、裏面11a側への長繊維の偏在によって表面11b側の密度を裏面11a側の密度よりも高くして、裏面11a側に柔軟性を付与するとともに、表面11b側に剛性を付与することで、凹凸のある成形を行うことが出来るように対応したものである。よって、上記多孔質基材12で上記紙11の裏面側11aを補強するべく、該紙11の裏面11a側を上記多孔質基材12側として、該紙11と該多孔質基材12とを積層する。
上記紙11と多孔質基材12とを積層する場合は、通常の溶液型や水性エマルジョン型の接着剤、粉末状、くもの巣状、溶液型、あるいは水性エマルジョン型のホットメルト接着剤等が使用される。粉末状、くもの巣状のホットメルト接着剤の場合には通気性接着剤層となるため通気性を確保でき、吸音材料10A,10Bの通気性を阻害しない。
溶液型あるいは水性エマルジョン型の接着剤の場合にはスプレー塗装あるいはシルク印刷塗装、オフセット印刷塗装等によって点状に接着剤を塗布し、積層材の通気性を確保することが望ましい。
また該多孔質基材12に上記の低融点熱可塑性繊維が混合されているのであれば、上記接着剤に代えて、上記多孔質基材12中に混合されている上記低融点熱可塑性繊維を接着剤として使用することも可能である。接着剤として上記低融点熱可塑性繊維を使用した場合には、通気性接着剤層となるため通気性を確保でき、吸音材料10A,10Bの通気性を阻害しない。
なお、上記吸音材料10A,10Bの通気抵抗は0.40〜20.0kPa・S/m、望ましくは0.40〜15.0kPa・s/mの範囲に設定することが望ましい。該通気抵抗が0.40に満たない場合は、好適な吸音性が得られないおそれがあり、該通気抵抗が20.0kPa・s/mを超える場合は、吸音特性および成形性が低下するおそれがある。
前記したように、本発明に係る紙および/または多孔質基材に、剛性や成形性を付与するために、あるいは通気性を調節するために、合成樹脂等を塗布および/または含浸および/または混合させてもよい。合成樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂が例示される。
上記熱可塑性樹脂は、2種以上混合使用されてもよく、また熱可塑性シートの熱可塑性樹脂を阻害しない程度で若干量の熱硬化性樹脂の1種または2種以上を混合使用してもよい。該熱可塑性樹脂は取り扱いが容易な点から水溶液、水性エマルジョン、水性ディスパージョンの形のものを使用することが好ましいが、有機溶剤溶液の形のものを使用してもよい。
上記熱硬化性樹脂あるいは合成樹脂前駆体は二種以上混合使用されてもよい。
上記合成樹脂、特に熱硬化性樹脂の添加は、紙および多孔質シートの成形形状保持性と剛性を共に向上せしめる。
上記フェノール系樹脂に使用されるフェノール系化合物としては、一価フェノールであってもよいし、多価フェノールであってもよいし、一価フェノールと多価フェノールとの混合物であってもよいが、一価フェノールのみを使用した場合、硬化時および硬化後にホルムアルデヒドが放出され易いため、好ましくは多価フェノールまたは一価フェノールと多価フェノールとの混合物を使用する。
本発明では上記フェノール系化合物とホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド供与体が縮合せしめられるが、上記ホルムアルデヒド供与体とは分解するとホルムアルデヒドを生成供与する化合物またはそれらの二種以上の混合物を意味する。このようなアルデヒド供与体としては例えばパラホルムアルデヒド、トリオキサン、ヘキサメチレンテトラミン、テトラオキシメチレン等が例示される。
水溶性フェノール系樹脂の安定性を改良するために使用できるスルホメチル化剤としては、例えば、亜硫酸、重亜硫酸またはメタ重亜硫酸と、アルカリ金属またはトリメチルアミンやベンジルトリメチルアンモニウム等の第四級アミンもしくは第四級アンモニウムとを反応させて得られる水溶性亜硫酸塩や、これらの水溶性亜硫酸塩とアルデヒドとの反応によって得られるアルデヒド付加物が例示される。
該アルデヒド付加物とは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロラール、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒドと、上記水溶性亜硫酸塩とが付加反応したものであり、例えばホルムアルデヒドと亜硫酸塩からなるアルデヒド付加物は、ヒドロキシメタンスルホン酸塩である。
水溶性フェノール系樹脂の安定性を改良するために使用できるスルフィメチル化剤としては、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート(ロンガリット)、ベンズアルデヒドナトリウムスルホキシラート等の脂肪族、芳香族アルデヒドのアルカリ金属スルホキシラート類、ナトリウムハイドロサルファイト、マグネシウムハイドロサルファイト等のアルカリ金属、アルカリ土類金属のハイドロサルファイト(亜ジチオン酸塩)類、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩等のヒドロキシアルカンスルフィン酸塩等が例示される。
スルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤の添加は、縮合反応前、反応中、反応後のいずれの段階で行ってもよい。
スルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤の総添加量は、フェノール系化合物1モルに対して、通常0.001〜1.5モルである。0.001モル以下の場合はフェノール系樹脂の親水性が充分でなく、1.5モル以上の場合はフェノール系樹脂の耐水性が悪くなる。製造される初期縮合物の硬化性、硬化後の樹脂の物性等の性能を良好に保持するためには、0.01〜0.8モル程度とするのが好ましい。
初期縮合物をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化するために添加されるスルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤は、該初期縮合物のメチロール基および/または該初期縮合物の芳香環と反応して、該初期縮合物にスルホメチル基および/またはスルフィメチル基が導入される。
上記本発明の吸音材料に使用する紙および/または多孔質基材には、難燃剤が添加されてもよい。上記難燃剤としては、例えば燐系難燃剤、窒素系難燃剤、硫黄系難燃剤、ホウ素系難燃剤、臭素系難燃剤、グアニジン系難燃剤、燐酸塩系難燃剤、燐酸エステル系難燃剤、アミノ樹脂系難燃剤、膨張黒鉛等がある。
本発明においては特に水に難溶または不溶の粉末状の固体難燃剤が使用されることが望ましい。水に難溶または不溶の粉末状の固体難燃剤は吸音材料に耐水性、耐久性に優れた難燃性を付与する。特に本発明の吸音材料である繊維シートおよび/または多孔質シートは粗構造を有しているから、上記粉末状の固体難燃剤が内部にまで円滑に浸透して高度な難燃性ないし不燃性を付与する。
また、上記撥水剤、撥油剤としては、天然ワックス、合成ワックス、フッ素樹脂、シリコン系樹脂等がある。
上記吸音材料または紙または多孔質基材に上記合成樹脂等を塗布含浸するには、通常上記合成樹脂の水性エマルジョンあるいは水性ディスパーションに該吸音材料または多孔質シートを浸漬するか、あるいはナイフコーター、ロールコーター、フローコーター等によって塗布する。
上記合成樹脂を含浸または塗布した吸音材料または紙または多孔質基材中の樹脂量を調節するには、合成樹脂を含浸または塗布後、該吸音材料または紙または多孔質基材を絞りロールやプレス盤を使用して絞る。この場合、該吸音材料または紙または多孔質基材はその厚みを減少させるが、該多孔質基材として繊維シートを用いた場合には該繊維シートが低融点繊維からなるか、あるいは低融点繊維が含まれているのであれば、上記合成樹脂の含浸前に該繊維シートを加熱して低融点繊維を溶融させ、繊維を該溶融物によって結着しておくことが望ましい。そうすると該多孔質基材としての繊維シートは強度および剛性が更に向上し、樹脂含浸の際の作業性が向上し、また絞り後の厚みの復元も顕著になる。
上記多孔質基材としての繊維シートに上記樹脂を含浸または塗布した後は、上記多孔質シートとしての繊維シートを常温または加熱して乾燥させる。
上記吸音材料は、通常所定形状に成形される。上記紙および/または多孔質基材に熱可塑性樹脂が塗布および/または含浸および/または混合されているか、あるいは上記多孔質基材が低融点繊維からなるか、あるいは低融点繊維を含む場合には、上記吸音材料を上記熱可塑性樹脂あるいは低融点繊維の軟化温度以下でホットプレスを行なうか、あるいは上記軟化温度以上に加熱した上で冷間プレス成形を行なう。また上記紙および/または多孔質基材に熱硬化性樹脂が塗布または含浸されている場合には、通常上記吸音材料を上記熱硬化性樹脂の硬化温度以上の温度に加熱した上で、冷間プレス成形を行なう。
上記加熱・冷間プレス成形に代えて、上記熱硬化性樹脂の硬化温度あるいはそれ以上の温度加熱プレスを行なってもよい。
(実施例1)
混合繊維の質量比が、長繊維(平均繊維長が3.0〜5.0mmの針葉樹パルプ繊維)/短繊維(平均繊維長が0.5〜2.0mmの広葉樹パルプ繊維)の場合に、A:95/5質量%、B:70/30質量%、C:50/50質量%の割合からなる3種類の原料スラリー(紙料)を用い、各々についてカナディアンフリーネススタンダード(CFS)550mlで叩解後、通常の機械抄紙機として長網抄紙機を用い、フローボックス工程、ワイヤーパート工程、フェルトパート工程、プレスパート工程、乾燥工程、巻き取り工程を経て得られたクレープ加工紙、A,B,Cを得た。
得られた紙の目付量、厚さ、クレープ率、通気抵抗と、剛軟性において、裏面を上側とした値L1、表面を上側とした値L2、L1とL2の比(L1/L2)を測定した結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1の(紙の製造)において、長繊維(平均繊維長が3.0〜5.0mmの針葉樹パルプ繊維)/短繊維(平均繊維長が0.5〜2.0mmの広葉樹パルプ繊維)の場合に、D:98/2質量%、E:45/55質量%の割合からなる2種類の原料スラリー(紙料)を用いた他は、同様にしてクレープ加工紙D,Eを得た。得られた紙の目付量、厚さ、クレープ率、通気抵抗と、剛軟性において、裏面を上側とした値L1、表面を上側とした値L2、L1とL2の比(L1/L2)を測定した結果を表1に示す。
目付量(g/m2):縦横各1mの正方形状に試料(紙)を裁断し、天秤にて該試料の重量を測定し、単位面積(1m2)当たりの重量に換算した。
厚さ(mm):ピーコック測定器(直径10mm)にて測定した。
クレープ率(%):抄紙工程中のクレープ率は、クレープ率(%)=(A/B)×100として算出した。但しA=抄紙速度,B=紙の巻き取り速度である。
通気抵抗(kPa・s/m):カトーテック社製のKES−F8−AP1を用いて測定した。
剛軟性:JIS L 1096:2010の8.21剛軟度におけるA法(45°カンチレバー法)に準じ、紙の抄造方向(縦方向)における剛軟性を測定した。該紙においては、紙の裏面=紙層が形成されるときのワイヤー面側、紙の表面=紙層が形成されるときのワイヤー面と反対側、と定め、裏面を上側に向けて測定した値をL1(mm)、表面を上側に向けて測定した値をL2(mm)として、L1とL2の比(L1/L2)を算出した。
上記〔紙の製造〕で得られた紙を後述の形態で用い、該紙と多孔質基材(融点120℃の低融点ポリエステル線維が20質量%配合されたポリエステル線維からなる目付量500g/m2の繊維シートウエブ)との間に、ホットメルト接着剤として融点120℃のポリエステル粉末を5g/m2の塗布量で撒布し、200℃で加熱後、冷却しながら所定形状にプレス成形して吸音材料の成形物を製造した。該成形物の成形性を評価した結果を表2に示す。
なお、成形性及びその評価については以下とする。
成形性:紙と多孔質材料との積層物を200℃で加熱−冷却成形後、成形型の凹凸部における紙の表面の破れや皺等の発生の状態を観察して、下記の◎〜×で評価し、◎又は○を合格とした。
◎:紙の破れ、皺等がなく外観良好。
○:凹凸部の大きい部分のみで若干皺が発生するが、通気に影響する程でもない。
△:凹凸部分の箇所全体に皺と破れが発生する。
×:破れ、皺、裂けの部分が大きく、外観および通気性に大きな影響を与える。
上記〔紙の製造〕(実施例1)で得られたクレープ加工紙、A,B,Cについて、その製造時のワイヤーパート工程でワイヤー面に接触している面を裏面とし、該裏面を上記多孔質基材面側に向けたものを吸音材料成形物A−1,B−1,C−1とした。
(比較例1)
上記〔紙の製造〕(比較例1)で得られたクレープ加工紙D,Eについて、その製造時のワイヤーパート工程でワイヤー面に接触している面を裏面とし、該裏面を上記多孔質基材面側に向けたものを吸音材料D−1,E−1とした。
(比較例2)
上記〔紙の製造〕(実施例1)で得られたクレープ加工紙、A,B,Cについて、その製造時のワイヤーパート工程でワイヤー面に接触している面を裏面とし、該裏面とは反対側の表面を上記多孔質基材面側に向けたものを吸音材料F−1,G−1,H−1とした。
表1および表2の結果により、実施例1即ち、平均繊維長が3.0mm〜5.0mmの長繊維/平均繊維長が0.5mm〜2.0mmの短繊維=95/5〜50/50質量%の割合の混合繊維の紙料を使用し、通常の長網抄紙機を用いて抄造した紙は、その工程中において生じた紙の裏面、表面で剛軟性に差が生じ、この差による剛軟性比が1.2〜3.5であり、さらにこの紙の柔軟な面、即ち紙の裏面側を多孔質基材面に重なるように設定して成形すると、紙の破れ、皺等の外観上の不良がなくなることが分かった。
表2の比較例1より、混合繊維における長繊維/短繊維の割合を95/5〜50/50質量%の範囲外として、紙の剛軟性比が1.2〜3.5の範囲外になると、成形性が悪くなり、紙の破れ、皺等の発生が生ずることが認められた。
表2の比較例2より、紙の剛軟性比が1.2〜3.5の範囲内である実施例1と同じ紙を用いても、紙の剛性のある面、即ち紙の表面側を多孔質基材面に向けて積層して成形すると、紙の破れ、皺等が発生しやすくなることが認められた。
長繊維として平均繊維長が3.0〜5.0mmの針葉樹パルプ繊維50質量%、ポリエステル繊維(繊度:1.7dtex、繊維長:4.0mm)20質量%、低融点ポリエステル繊維(繊度:1.7dtex、繊維長:4.0mm、融点:110℃)10質量%を用い、短繊維として平均繊維長が0.5〜2.0mmの広葉樹パルプ繊維20質量%を用いてなる配合比率の紙原料スラリー(紙料)を、カナディアンアンフリーネススタンダード(CFS)350mlで叩解後、通常の長網抄紙機を用い、実施例2の紙として、目付量:40g/m2、厚さ:0.16mm、通気抵抗:0.84kPa・s/mのクレープエンボス加工紙(クレープ率30%。エンボス高さ1.0mm)を得た。
なお、実施例2の紙の剛軟性比(L1/L2)=2.31であった。
次に融点110℃の低融点ポリエステル線維が30質量%配合されたポリエステル繊維からなる目付量500g/m2の繊維シートウエブを多孔質基材とし、上記で得られた紙製造時のワイヤーパート工程において、ワイヤー面に接触している面を裏面として、該裏面が上記該繊維シートウエブである多孔質基材面に向くように重合積層し、200℃で加熱−冷却プレス成形し、所定形状の吸音材料成形物を得た。得られた吸音材料成形物は紙の破れや皺等の外観異常がなく、吸音性能の優れたものであった。
11 紙
11a 裏面
11b 表面
12 多孔質基材
Claims (6)
- 紙と多孔質基材との積層物からなり、
上記紙は、平均長さが3.0mm〜5.0mmの長繊維と、平均長さが0.5mm〜2.0mmの短繊維との混合物からなり、上記長繊維と上記短繊維との95:5〜50:50質量比の混合繊維を含む紙料を使用し、抄造によって製造されているとともに、JIS L 1096:2010の8.21剛軟度におけるA法(45°カンチレバー法)に準じて抄造方向に沿って測定した剛軟性の値で、裏面を上側に向けて測定した値L1(mm)と、表面を上側に向けて測定した値L2(mm)との比L1/L2が1.2〜3.5の範囲にあるものであり、
上記紙がその裏面を上記多孔質基材側に向けて積層されていることを特徴とする吸音材料。 - 上記長繊維は針葉樹パルプ繊維からなり、上記短繊維は広葉樹パルプ繊維からなり、
叩解度がJIS P 8121−1995の4 カナディアン・スタンダード・フリーネスに規定されるカナダ標準型ろ水度で250ml〜700ml(CSF)の多孔質パルプ繊維である請求項1に記載の吸音材料。 - 上記紙にはクレープ加工および/またはエンボス加工が施されて延伸性が付与されている請求項1または請求項2に記載の吸音材料。
- 上記紙の単位面積当りの質量は15g/m2〜80g/m2、厚さは0.05mm〜0.5mm、通気抵抗は0.10kPa・s/m〜10.0kPa・s/mに設定されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸音材料。
- 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の吸音材料を所定形状に成形したことを特徴とする吸音材料成形物。
- 上記吸音材料の成形は、加熱した吸音材料を冷間プレス成形する加熱−冷間プレス成形によって行われる請求項5に記載の吸音材料成形物。
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