JP2015112292A - 被検体の情報取得装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】再構成した画像のアーチファクトを低減し、装置を小型化することができる被検体の情報取得装置を提供する。【解決手段】光源100と、該光源が発する光を被検体へ照射する光照射手段200と、光照射により被検体内で発生する光音響波を受信し電気信号に変換する複数の音響検出素子300を備え、複数の音響検出素子のそれぞれは高感度受信軸を有し、複数の音響検出素子のうち少なくとも一部の音響検出素子における高感度受信軸は被検体内で放射状に配置されるように構成されている【選択図】図1

Description

本発明は、光照射により被検体内で発生する音響波を取得し、被検体内の光学特性などの情報を取得する被検体の情報取得装置に関する。
レーザーなどの光源から被検体である生体に光を照射し、入射した光に基づいて得られる生体内の情報を画像化する光イメージング装置の研究が医療分野で積極的に進められている。この光イメージング技術の一つとして、Photoacoustic Tomography(PAT:光音響トモグラフィ)がある。PATでは、光源から発生したパルス光を生体に照射し、生体内で伝播・拡散したパルス光のエネルギーを吸収した生体組織から発生した音響波(典型的には超音波)を検出する。この光音響波発生機序を、光音響効果と呼ぶ。光音響効果により発生した音響波を光音響波(photoacoustic wave)とも呼ぶ。
腫瘍などの被検部位は、その周辺組織に対して光エネルギーの吸収率が高いことが多いため、周辺組織よりも多くの光を吸収して瞬間的に膨張する。この膨張の際に発生する音響波(光音響波)をトランスデューサで検出し、受信信号を得る。この受信信号をバックプロジェクションなどで数学的に解析処理することにより、被検体内の、光音響効果により発生した光音響波の音圧分布を画像化することができる。ここで、バックプロジェクションとは、被検体中の音響波の伝播速度を考慮し、各受信信号を逆に伝搬させ、重ね合わせることにより信号源を特定する計算手法である。このようにして得られる光音響画像データを基にして、生体内の光学特性分布、特に、吸収係数分布を得ることができる。これらの情報は、被検体内の特定物質、例えば血液中に含まれるグルコースやヘモグロビンなどの定量的計測や、血液の酸素飽和度の計測にも利用できる。
光音響効果を利用した装置の例として、広い検査領域を感度が均一でSN比が高い信号で測定することを目的とした装置が特許文献1に開示されている。特許文献1の装置は、複数の音響検出素子から構成された小型のトランスデューサアレイを機械的に走査駆動し、被検体の同一位置において、異なる時間に異なる音響検出素子で受信した音響波の信号を加算することにより、上述の目的を達成している。
また、光音響効果を利用した装置の他の例として、感度を保ちながら高い分解能で場所依存なく測定することを目的とした装置が特許文献2に開示されている。特許文献2の装置は、高感度に光音響波を受信することができるトランスデューサアレイの有効受信範囲が被検体内で重なる重畳領域を形成し、異なる角度から受信した光音響波の信号から画像を生成ことにより、上述の目的を達成している。
特開2012−148169号公報 特開2012−223567号公報
音響検出素子は受信面の法線方向が高感度に受信でき、受信面に音響波が入射する角度が大きくなるほど受信感度が低くなる。
特許文献1に示されている装置では、平面のアレイ型の音響検出器を用いるため、高感度に音響波を受信できる角度が限定される。このような受信信号を用いてバックプロジェクションで再構成した画像は、アーチファクトが多く含まれてしまう課題がある。
特許文献2においては、平面に近い形状の被検体を測定する場合、トランスデューサアレイの有効受信範囲が被検体内で重なる重畳領域を形成しつつ、音響波を受信する角度を広げなければならない。しかし、その場合、トランスデューサアレイの受信面の間隔を広くして配置せねばならない。このため装置が大型化してしまう課題がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、再構成した画像のアーチファクトを低減し、装置を小型化することができる被検体の情報取得装置を提供することである。
本発明の被検体の情報取得装置は、光源と、該光源が発する光を被検体へ照射する光照射手段と、前記光照射により被検体内で発生する光音響波を受信し電気信号に変換する複数の音響検出素子を備え、前記複数の音響検出素子のそれぞれは高感度受信軸を有し、前記複数の音響検出素子のうち少なくとも一部の音響検出素子における高感度受信軸は前記被検体内で放射状に配置されるように構成されていることを特徴としている。
本発明によれば、再構成した画像のアーチファクトを低減し、装置を小型化することができる被検体内画像化装置を提供することができる。
実施例1の被検体の情報取得装置の構成を示す図 実施例1の装置の動作を説明するための図 実施例1の装置の作用を説明するための図 音響検出素子の感度特性を示した図 実施例1における音響検出器の構成を示す図 実施例1の装置における光照射手段の変形例を示す図 実施例1の装置における光照射手段の別の変形例を示す図 実施例1の装置における音響検出器の変形例を示す図 実施例1の装置における音響検出器の別の変形例を示す図 実施例1の装置における音響検出器の別の変形例を示す図 実施例1の装置における音響検出器の別の変形例を示す図 実施例1の装置における音響検出器の別の変形例を示す図 実施例2の被検体の情報取得装置の構成を示す図
以下に図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態について説明する。ただし、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状及びそれらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
本発明を実施するための最良の形態を、以下の実施例により説明する。
[実施例1]
本発明の好適な実施例の被検体の情報取得装置の構成を示した概略図を図1、図2、図3に示す。
図1に示す被検体の情報取得装置は、被検体E(例えば、乳房)の光学特性などの特性情報を光音響効果の利用により取得し、被検体E内の画像を作成するものである。
また、被検体の情報取得装置は、光源100、光照射手段200、音響検出素子300、音響検出器400、音響検出器位置変更手段500、処理手段600、被検体保持手段700、音響マッチング剤800から構成されている。
まず、被検体の保持について説明する。被検体Eは被検体保持手段700によって保持されている。図1のように2つの保持器71,72の間に被検体を保持するようにしても良いし、1つの保持器を被検体に押圧して保持するようにしても良い。
被検体Eを保持手段により保持することにより、測定中の被検体Eの位置が固定されるので、被検体内画像がぼけてしまう不具合を低減することができる利点がある。
また、保持器を被検体Eに押圧して保持する場合は、被検体Eを圧迫により薄くすることで深部まで光を到達させて効率良く光音響波を受信することができるので、深部の特性情報を取得することができる。
次に、音響検出素子と音響検出器について説明する。
音響検出素子300は、光音響波を受信して電気信号に変換する。また、受信感度が高くなる軸方向を有し、該軸方向に光音響波を高感度に受信する受信領域が形成される。
本発明においては、「受信感度が最も高くなる軸方向」を「高感度受信軸」と呼称する。なお、図1の被検体E内で放射状に広がる線分が、各音響検出素子300の高感度受信軸を示している。
図4は、音響検出素子300の感度特性の一例を示したものである。図示のように音響検出素子は、円形の平面形状の受信面を有している。図4においては、音響検出素子の面積中心を通る、前記受信面に対する法線軸に対する音響波の入射角度と感度との関係を示している。図示の例では、受信面の法線方向から入射する場合の感度が最も高く、入射角度が大きくなるほど感度が低くなる。
また、感度の最大値Sに対して最大値の半分S/2になる時の入射角度がαとなる。本実施例においては、音響検出素子の受信面に入射角α以下で光音響波が入射する領域を高感度に受信可能な領域とする。本発明においては、「高感度に受信可能な領域」を「高感度受信領域」と呼称する。
このように、音響検出素子300は、高感度受信軸を有し、高感度受信軸の周りに光音響波を高感度に受信する高感度受信領域が形成されている。
音響検出器400は、複数の音響検出素子300から構成されている。音響検出器400の複数の音響検出素子300うち少なくとも一部の高感度受信軸が異なる角度を成し、さらに該軸方向が被検体内で交差しないようにアレイ状に配列されている。換言すれば、異なる角度を成した高感度受信軸は、被検体外の位置で集束するように配置されている。その結果、高感度受信軸は、被検体内では放射状に配置されることとなる。このため音響検出器400を小型にすることができる。
次に、音響検出器400の走査駆動について説明する。位置変更手段500は、被検体保持手段700によって保持されている被検体Eに対する音響検出器400の位置を、図1AのX方向、Y方向、Z方向に機械的に走査駆動して変更する。これにより小型の音響検出器400を用いても被検体Eの広範囲を測定することが可能になる。
次に、被検体内の画像を生成する工程について説明する。被検体Eが、被検体保持手段700によって保持される。音響検出器400が、位置変更手段500により第一測定位置(測定開始位置)に設置される。
第一測定位置における各音響検出素子の位置と高感度受信軸の方向の情報が処理手段600に送られ、メモリーなどの記憶装置に第一測定位置情報として保存される。
光源100を発光し、発光した光が、光照射手段200によって被検体保持手段700を介して保持された被検体Eに照射される。被検体Eに照射された光が、被検体E内で吸収され光音響波が発生する。被検体E内で発生した光音響波が、被検体保持手段700と音響マッチング剤800を介して音響検出器400によって受信され、電気信号に変換される。変換された電気信号が処理手段600に送られ、前述の第一測定位置情報と関連付けされて、メモリーなどの記憶装置に第一測定位置における第一電気信号として保存される。
次に、音響検出器400が、位置変更手段500により、図1Bに示す矢印方向(+X方向)に走査駆動され、第二測定位置に設置される。第二測定位置における各音響検出素子の位置と高感度受信軸の方向の情報が処理手段600に送られ、メモリーなどの記憶装置に第二測定位置情報として保存される。
以下、第一測定位置の測定と同じシーケンスにより、第二測定位置における第二電気信号が処理手段600に保存される。
図2は、第一測定位置における左から3番目の音響検出素子と、第二測定位置における右から3番目の音響検出素子の高感度受信軸と高感度受信領域の位置関係を示したものである。
前述したように、第一測定位置における左から3番目の音響検出素子の位置、高感度受信軸の方向ベクトルは、第一測定位置情報として保存されている。また、図4で説明したように、音響波を高感度に受信可能な高感度受信軸を0度とした時の入射角度をαとする。この時、音響検出素子の位置と受信角度の関係から、第一測定位置において左から3番目の音響検出素子が被検体E内に形成する高感度受信領域の位置を特定することができる。また、この時に形成される高感度受信領域を第一受信領域とする。
同様に、第二測定位置における右から3番目の音響検出素子の位置、高感度受信軸の方向ベクトルは、第二測定位置情報として保存されている。また、音響波を高感度に受信可能な高感度受信軸を0度とした時の入射角度をαとする。この時、音響検出素子の位置と受信角度の関係から、第二測定位置において右から3番目の音響検出素子が被検体E内に形成する高感度受信領域の位置を特定することができる。また、この時に形成される高感度受信領域を第二受信領域とする。
さらに、図2でハッチングされた領域Dに示すように、前述の第一と第二受信領域が交差した領域が形成される。
処理手段600は、第一測定位置において左から3番目の音響検出素子によって取得された第一電気信号と、第二測定位置において右から3番目の音響検出素子によって取得された第二電気信号を用いてこのような領域Dの光音響波の発生強度分布を算出する。
このように処理手段600は、記憶装置に記憶された第一と第二測定位置情報から第一と第二受信領域が被検体E内で交差する組合せを選択し、交差する組合せの第一と第二電気信号を用いて、該交差する領域の光音響波の発生強度分布を算出する。
また、算出した光音響波の発生強度分布に基づき、吸収係数部分布などの光学特性分布を算出し、被検体E内の画像を作成する。
図3は、上述の音響検出器400を図示の+X方向に順次走査駆動した時の各音響検出素子の高感度受信軸の状態を示したものである。
図3において、被検体E内で交差する高感度受信軸が密になる領域では、多方向から光音響波を受信できる。このような受信信号を用いてバックプロジェクションで再構成した画像は、アーチファクトが低減される。
図2、図3は、音響検出器400を図示のX方向に走査駆動する場合を例示したが、Y方向、Z方向に走査駆動するようにしても良い。また、これらの走査駆動を組合せて音響検出器400を二次元、三次元に走査駆動しても良い。
次に図1に示す被検体内画像化装置を構成するための具体的な部材について説明する。
(光源100)
光源100は、特定波長のナノ秒オーダーのパルス光を発する。光源100が発する光の波長は、生体組織を構成する水、脂肪、タンパク質、酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビン、などの光吸収特性に応じた波長を選定する。一例としては、生体内部組織の主成分である水の吸収が小さいため光が良く透過し、脂肪、酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビンの光吸収特性に特徴がある600−1500nm範囲が適当である。具体的な光源100の例としては、異なる波長を発生する半導体レーザー、波長可変レーザーなどで構成すると良い。
(光照射手段200)
光照射手段200は、レンズや光ファイバーなどから成る光学系を備え、光源100が発光した光を、被検体保持手段700を介して被検体Eに導くものである。光照射手段200を構成する部材としては、レンズ、ミラー、プリズム、光ファイバー、拡散板、などを用いることができる。
生体組織に照射することが許される光の強度は、以下に示す安全規格によって最大許容露光量(MPE:maximum permissible exposure)が定められている。例えば、IEC 60825−1:Safety of laser productsなど。最大許容露光量は、単位面積あたりに照射することができる光の強度を規定している。このため被検体Eの表面を広い面積で一括して光を照射することにより、多くの光を被検体Eに導くことができるので、光音響波を高いSN比で受信することができる。
(音響検出素子300)
音響検出素子300は、光音響波を受信して電気信号に変換する素子である。
音響検出素子300を構成する部材としては、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミック材料や、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電膜材料などを用いることができる。また、圧電素子以外の素子を用いても良い。例えば、CMUT(Capacitive Micro−machined Ultrasonic Transducers)などの静電容量型の素子を用いることができる。
(音響検出器400)
図1に音響検出器400の一例を示す。音響検出器400は、複数の音響検出素子300から構成されている。また、音響検出器400は、シール部材42を設けたハウジング41の中に収められている。音響検出器400の複数の音響検出素子300の高感度受信軸が異なる角度を成し、さらに該軸が被検体内で交差しないように半球凹面にアレイ状に配列されている。図1は半球面の中心軸で切断した断面図であり、被検体Eに放射状に広がる線分が、音響検出素子300の高感度受信軸を示している。
このように図1に示した音響検出器400の例では、各音響検出素子の高感度受信軸が互いに異なる角度を成し交差するが、被検体E内では高感度受信軸が交差しないように構成している。
ハウジング41とシール部材42は、音響検出器400と被検体保持手段700の間に音響マッチング剤800を保持するものである。ハウジング41とシール部材42の接合部は、隙間から音響マッチング剤800が漏れ出ないように密着してシールする。シール部材42は、ゴムや樹脂などの弾性材料で構成している。シール部材42を被検体保持手段700に適当な荷重で押し付けて隙間なく密着することにより、音響マッチング剤800がシール部材42と被検体保持手段700の間から漏れ出ないようにする。
図5は音響検出器400の構造の一例を示すものである。
半球凹面の保持器43の内表面に音響検出素子300が規則性を持って複数個配列されている。また、音響検出素子300の音響波の検出面には音響整合層44が設けられている。各音響検出素子300はリード線45が接続されている。
音響検出素子300と音響マッチング剤800の音響インピーダンスが異なると、界面での反射が大きくなり音響波を効率よく伝達することができない。このため音響検出素子300と音響マッチング剤800の間に中間的な音響インピーダンスを有する物質で構成した音響整合層44を挿入して超音波を効率よく伝達するようにしている。
リード線45は、音響検出素子300が取得した電気信号を処理手段600に送信するために用いられる。
(位置変更手段500)
図1の位置変更手段500は、音響検出器400を収めたハウジング41と、ハウジング41に取付けたシール部材42を図1のX方向、Y方向、Z方向に機械的に走査駆動する。これにより被検体保持手段700によって保持されている被検体Eに対する音響検出器400の位置を変更する。
走査駆動時にシール部材42と被検体保持手段700の接触部は滑らかに摺動する。また、走査駆動時に音響マッチング剤800が音響検出器400と被検体保持手段700の間に保持される。
駆動機構は、音響検出器400を走査駆動させることができる機構であれば何を用いても良く、リードスクリュー機構、リンク機構、ギア機構、油圧機構、などを用いることができる。
なお、Z方向への走査駆動時にシール部材42と被検体保持手段700との離間を防ぐために、シール部材42を被検体保持手段700に付勢するように構成しておくと良い。具体的には、シール部材42をばね材を介してハウジング41に支持する構成であるとよい。
(処理手段600)
図1の処理手段600は、ワークステーションなどのコンピュータが用いられる。処理手段600は、音響検出器400から入力された電気信号を保存するメモリを有する。また、音響検出器400から入力された電気信号を用いて被検体E内の光学特性などの特性情報を生成し、特性情報に基づいて被検体E内の画像を生成する。さらに、処理手段600は、光源100の発光制御と位置変更手段500の駆動制御などの被検体の情報取得装置を動作させる処理を行っている。
(被検体保持手段700)
被検体保持手段700は、図1に示すように、被検体Eを介して対向配置された一対の板状部材からなる。被検体Eは、この一対の板状部材により挟持されることにより圧迫保持される。被検体保持手段700は、第一保持部材71、第二保持部材72から構成されている。一対の板状部材である第一保持部材71と第二保持部材72のうち、いずれか一方は、不図示の駆動機構により、第一保持部材71と第二保持部材72との間隔を変えるように移動可能である。
第一保持部材71の片面は被検体Eが接触し、その対向面に音響検出器400が設けられている。音響検出器400は第一保持部材71を通して光音響波を受信する。
このため第一保持部材71は、被検体E(音響インピーダンス1.5〜1.6×10kg/msec)との音響整合性が高く、光音響波に対して高透過特性と低減衰特性を有する材料を用いることが好ましい。これに適用する材料としては、ポリメチルペンテンポリマー、などが好適である。
第二保持部材72の片面は被検体Eが接触し、その対向面に光照射手段200が設けられている。光源100が発光した光は、第二保持部材72を通して被検体Eに照射される。
このため第二保持部材72は、光源100が発光する光に対して高透過特性を有する材料を用いることが好ましい。これに適用する材料の例としては、ガラス、ポリメチルペンテンポリマー、ポリカーボネート、アクリル、などがある。
(音響マッチング部材800)
また、第一保持部材71と音響検出器400との間に、音響整合性を高めるための音響マッチング剤800が設けられている。これに適用する材料としては、第一保持部材71と音響インピーダンスが略等しく、光音響波に対して高透過特性と低減衰特性を有する超音波検査用ジェル、水、などが好適である。
(光照射手段200の変形例)
光照射手段200の変形例の構成を示した概略図を図6、図7に示す。図1と同じ番号を付けた部材は、図1で説明した部材と同じ機能を有するものである。
図1では、第二保持部材72側から光を照射しているが、図6、図7に示すように、光は第一保持部材73側から照射しても良い。
図6の例は、図1に対して第二光源101と第二光照射手段201を追加し、第一保持部材71を第一保持部材73に変更している。
第二光源101は、光源100で説明したものと同じものを使用することができる。第二光照射手段201は、レンズや光ファイバーなどから成る光学系によって、第二光源101が発光する光を被検体Eに導く。第二光照射手段201は、光照射手段200で説明したものと同じ部材で構成することができる。
図7の例は、図6の第二光照射手段201の変形例である。第二光照射手段202は、複数の音響検出素子300の隙間に複数の光ファイバーなどから成る光学系よって、第二光源101が発光する光を被検体Eに導く。第二光照射手段202は、音響検出素子300の高感度受信軸の方向に光を照射する。生体組織の光の散乱は前方散乱が支配的であるので、このように光を照射することにより、高感度受信軸の周りに形成される光音響波を高感度に受信する受信領域に効率良く光を導くことができる。第二光照射手段202は、光照射手段200で説明したものと同じ部材で構成することができる。
図6、図7の例では、音響検出器400は第一保持部材73を通して光音響波を受信し、且つ、光源101が発光した光は第一保持部材73を通して被検体Eに照射される。このため第一保持部材73は、被検体E(音響インピーダンス1.5〜1.6×10kg/msec)との音響整合性が高い材料を用いることが好ましい。更に、光音響波に対して高透過特性と低減衰特性を有し、光源101が発光する光に対して高透過特性を有する材料を用いることが好ましい。これに適用する材料としては、ポリメチルペンテンポリマー、などが好適である。
図6、図7では、第二光源101を設けたものを示したが、光源100が発光する光を分岐して、光照射手段200と第二光照射手段に導くように構成しても良い。
図6、図7の例では、光が第一保持部材73及び第二保持部材72の両側から照射される。前述のように被検体に対して単位面積あたりに照射することができる光の強度として最大許容露光量が定められている。このため被検体Eの両側から広い面積で一括して光を照射することにより、片側から光を照射する場合に比べて多くの光を被検体Eに照射することができるので、光音響波を高いSN比で受信することができる。
また、図6、図7に示した例から、光源100と光照射手段200と第二保持部材72を取り除くことができる。この場合、被検体Eの片面から測定を行う反射型の被検体の情報取得装置を構成することができる。
(音響検出器400の変形例)
音響検出器400の変形例の構成を示した概略図を図8、図9、図10に示す。図1と同じ番号を付けた部材は、図1で説明した部材と同じ機能を有するものである。
図8の音響検出器401は、複数の音響検出素子300の高感度受信軸が被検体内で交差しないように平面形状の器の上に音響検出素子300を配列したものである。
このように図8に示した音響検出器401の例では、各音響検出素子の高感度受信軸が互いに異なる角度を成し互いに交差するが、被検体E内では高感度受信軸が交差しないように構成している。
図9の音響検出器402は、一部の音響検出素子300の高感度受信軸を平行に配列した第一音響検出素子群と、該高感度受信軸と異なる方向に高感度受信軸を平行に配列した第二音響検出素子群を備えている。第一と第二音響検出素子群の高感度受信軸が被検体内で交差しないように配列している。
このように図9に示した音響検出器402の例では、複数の音響検出素子から成る平面アレイを互いに傾けて配置しており、一部の音響検出素子の高感度受信軸が互いに異なる角度を成し互いに交差しない。
図10の音響検出器403は、複数の音響検出素子300の高感度受信軸が被検体内で交差しないように半球凸面形状の器の表面に沿って音響検出素子300を配列したものである。
このように図10に示した音響検出器403の例では、各音響検出素子の高感度受信軸が互いに異なる角度を成し互いに交差しない。
図10の例では、音響マッチング剤800を満たした容器で第一保持部材74を構成している。第一保持部材74は、第一保持部材71で説明したものと同じ材料で構成することができる。音響検出器403は、音響マッチング剤800が満たされている第一保持部材74の中を走査駆動する。
また、シリンドリカル凹曲面、シリンドリカル凸曲面、図11に示すような平面を組合せた多面体の平面に音響検出素子300を配列して音響検出器を構成しても良い。図12は、図11のXZ平面における断面図である。図示の様に図5で説明したような音響整合層44を音響検出素子300の音響波の受信面に設けても良い。
シリンドリカル凹曲面或いは凸曲面や図11の形状は、一方向に長い音響検出器を形成することができ、長手方向に多くの音響検出素子300が配列できる。長手方向に多くの音響検出素子300を備えた音響検出器では、音響検出器を長手方向に走査駆動する必要が無くなるので、装置構成を簡素化して低価格にすることができる。
また、上述の実施例では、平面形状の第一保持部材に対して音響検出器を走査駆動するものを例示したが、曲面形状の被検体の保持器や被検体に押圧することにより変形する保持器にも用いることができる。
以上説明したように、音響検出器は、複数の音響検出素子うち少なくとも一部の高感度受信軸が異なる角度を成し、さらに該軸方向が被検体内で交差しないようにアレイ状に配列する。処理手段は、第一測定位置で各音響検出素子が高感度に受信する第一受信領域と、第二測定位置で各音響検出素子が高感度に受信する第二受信領域が被検体内で交差する組合せの第一と第二電気信号を用いて、該交差する領域の光音響波の発生強度分布を算出する。
上述の音響検出器と処理手段を備えた被検体情報取得は、再構成した画像のアーチファクトを低減し、装置を小型化することができる。
[実施例2]
本発明の好適な実施例の被検体の情報取得装置の構成を示した概略図を図13に示す。図1と同じ番号を付けた部材は、図1で説明した部材と同じ機能を有するものである。
実施例1においては、図1に示すように、複数の音響検出素子うち少なくとも一部の高感度受信軸が異なる角度を成し、さらに該軸方向が被検体内で交差しないようにアレイ状に配列した音響検出器の例を示した。
実施例2では、図13に示すように、音響レンズ900を用いて高感度に受信できる軸方向を屈折するものである。音響レンズ900は、高感度受信軸が同じ方向になるようにアレイ状に配置された複数の音響検出素子300の該軸方向を被検体内で交差しないように屈折させるものである。換言すれば、平行な角度を成した高感度受信軸は、音響レンズ900により被検体外の位置で集束するように屈折される。その結果、高感度受信軸は、被検体内では放射状に配置されることとなる。このため音響検出器400を小型にすることができる。なお、上記の「平行な角度」とは、完全に平行でなくても実質的に平行な場合を含むものである。
次に、音響レンズと音響検出器について説明する。音響検出素子300は、実施例1と同じものであり、高感度受信軸を有している。
アレイ状に配置された複数の音響検出素子300と被検体Eの間に音響レンズ900が設けられている。音響レンズ900は、音響検出素子300の複数の高感度受信軸のうち少なくとも一部が異なる角度を成し、さらに該軸方向が被検体内で交差しないように屈折させる。図13の被検体Eに放射状に広がる線分が、音響レンズ900によって屈折された音響検出素子300の高感度受信軸を示している。音響レンズ900を構成する材料は、被検体Eと音響マッチング剤800との音響マッチングを考慮して選定することが好ましく、例としてシリコーンゴムなどがある。このように音響マッチングを考慮することで、界面における音響波のロスを低減することができる。
音響検出器404は、複数の音響検出素子300と音響レンズ900から構成されている。このような音響検出器404は、音響検出素子の高感度受信軸が被検体内で交差するように配置されるものと比べて、平面に近い形状の被検体の光音響波を広い角度で受信する場合においても音響検出素子の間隔を広くせずに配置することができる。このため音響検出器404を小型にすることができる。
続いて、被検体内の画像を生成する工程について説明する。被検体Eが、被検体保持手段700によって保持される。次に、音響検出器404が、位置変更手段500により第一測定位置(測定開始位置)に設置される。そして、第一測定位置における各音響検出素子の位置と高感度受信軸の方向の情報が処理手段600に送られ、メモリーなどの記憶装置に第一測定位置情報として保存される。
次に、光源100を発光し、発光した光が、光照射手段200によって被検体保持手段700を介して保持された被検体Eに照射される。そして、被検体Eに照射された光が、被検体E内で吸収され光音響波が発生する。
被検体E内で発生した光音響波は、被検体保持手段700と音響マッチング剤800を介して音響検出器404によって受信され、電気信号に変換される。変換された電気信号が処理手段600に送られ、前述の第一測定位置情報と関連付けされて、メモリーなどの記憶装置に第一測定位置における第一電気信号として保存される。
次に、音響検出器404が、位置変更手段500により走査駆動され、第二測定位置に設置される。そして、第二測定位置における各音響検出素子の位置と高感度受信軸の方向の情報が処理手段600に送られ、メモリーなどの記憶装置に第二測定位置情報として保存される。
以下、第一測定位置の測定と同じシーケンスにより、第二測定位置における第二電気信号が処理手段600に保存される。
処理手段600は、各音響検出素子から取得した第一と第二測定位置情報から第一と第二受信領域が被検体E内で交差する組合せを選択し、交差する組合せの第一と第二電気信号を用いて、該交差する領域の光音響波の発生強度分布を算出する。
また、算出した光音響波の発生強度分布に基づき、吸収係数分布などの光学特性分布を求め、被検体E内の画像を作成する。
音響検出器404を順次走査駆動することにより、被検体E内で交差する高感度受信軸を密にすることができる。高感度受信軸が密になる領域では、多方向から光音響波を受信できる。このような受信信号を用いてバックプロジェクションで再構成した画像は、アーチファクトが低減される。
100 光源
200,201,202 光照射手段
300 音響検出素子
400,401,402,403,404 音響検出器
500 位置変更手段
600 処理手段
700 被検体保持手段
800 音響マッチング剤
900 音響レンズ
41 ハウジング
42 シール部材
43 保持器
44 音響整合層
45 リード線
71,73,74 第一保持部材
72 第二保持部材
E 被検体

Claims (8)

  1. 光源と、該光源が発する光を被検体へ照射する光照射手段と、前記光照射により被検体内で発生する光音響波を受信し電気信号に変換する複数の音響検出素子を備え、
    前記複数の音響検出素子のそれぞれは高感度受信軸を有し、前記複数の音響検出素子のうち少なくとも一部の音響検出素子における高感度受信軸は前記被検体内で放射状に配置されるように構成されていることを特徴とする被検体の情報取得装置。
  2. 前記複数の音響検出素子のうち少なくとも一部の音響検出素子は、前記高感度受信軸が互いに異なる角度を成すようにアレイの表面に沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載の被検体の情報取得装置。
  3. 前記複数の音響検出素子と前記被検体との間に前記音響検出素子の高感度受信軸を屈折させる音響レンズを有し、前記複数の音響検出素子のうち少なくとも一部の音響検出素子は高感度受信軸が互いに平行になるようにアレイの表面に沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載の被検体の情報取得装置。
  4. 前記音響検出素子は、凹曲面、凸曲面、シリンドリカル凹曲面、シリンドリカル凸曲面、平面の繋がりからなる多面体のいずれかに配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の被検体の情報取得装置。
  5. 前記被検体と前記音響検出素子の間に音響マッチング部材を備えていることを特徴とする請求項1乃至4に記載の被検体の情報取得装置。
  6. 前記被検体と前記音響マッチング部材の間に被検体保持手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の被検体の情報取得装置。
  7. 前記音響検出素子はハウジングを備え、該ハウジングに前記光照射手段が設置されることを特徴とする請求項1乃至6に記載の被検体の情報取得装置。
  8. 前記被検体に対する前記音響検出素子の位置を変更する位置変更手段と、前記位置変更手段により前記音響検出素子が第一測定位置で光音響波を受信して第一電気信号を取得し、さらに前記音響検出素子が第二測定位置で光音響波を受信して第二電気信号を取得し、前記第一測定位置で各音響検出素子が高感度に受信する第一受信領域と、前記第二測定位置で各音響検出素子が高感度に受信する第二受信領域が被検体内で交差する組合せの前記第一と第二電気信号から、前記交差する領域の光音響波の発生強度分布を算出する処理手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の被検体の情報取得装置。
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