JP2015110195A - 浸漬型膜分離装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】散気エアを均一に発生可能な、一定長以上の微細気泡散気管を具備した浸漬型膜分離装置を提供する。【解決手段】複数の微細気泡散気管9が、分離膜エレメントの膜面に交差する方向に延びている浸漬型膜分離装置13において、微細気泡散気管9は、少なくとも、周面に複数の孔が設けられた筒状の支持管と、微細スリットが形成された弾性シートとを有し、弾性シートは支持管の外周を覆うように配置され、支持管は長手方向の長さが1000mm以上であり、前記弾性シートに設けられた前記微細スリットは微細気泡散気管9の長手方向の長さ当りの合計スリット長が9〜20m/mであり、支持管の内側に供給された気体が、複数の孔から支持管と弾性シートの間隙に流入し、弾性シートの微細スリットが開くことにより、微細気泡が散気管外に発生する浸漬型膜分離装置13とする。【選択図】図1

Description

本発明は、活性汚泥を含む微生物含有液を、膜を用いて固液分離する浸漬型膜分離装置に関する。具体的には、下水等の汚水を、活性汚泥処理した後に膜分離処理する、いわゆる膜分離活性汚泥法を用いた廃水処理に用いられる浸漬型膜分離装置に関するものである。
近年、廃水処理方法として、膜分離活性汚泥法が注目されている。膜分離活性汚泥法には、膜分離装置を処理槽(曝気槽)内部に浸漬した浸漬型膜分離活性汚泥法と、膜分離装置を処理槽外部に設置し循環ポンプにより廃水を循環させる外部循環方式の膜分離活性汚泥法とがある。中でも、浸漬型膜分離活性汚泥法は、曝気エネルギーを酸素供給と膜面洗浄に兼用できるため、外部循環方式の膜分離活性汚泥法に比べて合計必要動力が少なく、最終沈澱池が不要であるため省スペースとなるので、膜価格の低下などと併せて、急速に普及してきている。
また、膜分離活性汚泥法に用いる散気装置として微細気泡散気管を使用した場合、槽内に設置した散気装置から発生する気泡が最大限有効に酸素供給と膜面洗浄に兼用できるため、曝気エネルギーが最小化できることから、微細気泡散気管を備えた膜分離装置が普及している。
しかしながら、一般に用いられている微細気泡散気管は、その構造上、散気エアを均一に発生させることができる長軸(長手)方向の長さに限界があり、一定長(約1000mm)以上の長さでは散気エアが均一に発生しないという問題点があった。このような問題を解決する手段として、散気管を直線上に並ぶように配列させ、対向する微細気泡散気管の先端同士を近接位置とし、散気管の先端位置が不揃いとなるように、長さの異なる微細気泡散気管を組み合わせて用いることにより、微細気泡が散気されないエリアを分散させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
国際公開第2008/139836号
特許文献1の手段は、膜分離装置全体での散気量のバラツキを軽減するものであるが、散気管を略直線上に2本配置しているため、少なくとも、両端に2つの気体供給管が必要になる。装置の大型化の観点からは、部品数が少ない方がコスト的にも望ましく、メンテナンスもしやすくなるため、一定長以上の微細気泡散気管を用いて、散気エアを均一に発生させることのできる浸漬型膜分離装置が望まれている。
そこで本発明は、散気エアを均一に発生可能な、一定長以上の微細気泡散気管を具備した浸漬型膜分離装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の構成を採用することによって上記目的が達成されることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(2)に記載する浸漬型膜分離装置に係わるものである。
(1)被処理液を貯留した処理槽内に浸漬設置される浸漬型膜分離装置であって、
平膜を分離膜として配設した分離膜エレメントの複数が膜面平行に並列で配置されてなる分離膜モジュールと、該分離膜モジュールの鉛直下方に設置され、1つの気体供給管に連接された複数の微細気泡散気管とを備え、該複数の微細気泡散気管が、前記分離膜エレメントの膜面に交差する方向に延びている浸漬型膜分離装置において、
前記微細気泡散気管は、少なくとも、周面に複数の孔が設けられた筒状の支持管と、微細スリットが形成された弾性シートとを有し、該弾性シートは前記支持管の外周を覆うように配置され、
前記支持管は長手方向の長さが1000mm以上であり、前記弾性シートに設けられた前記微細スリットは前記微細気泡散気管の長手方向の長さ当りの合計スリット長が9〜20m/mであり、
前記支持管の内側に供給された気体が、前記複数の孔から前記支持管と前記弾性シートの間隙に流入し、前記弾性シートの前記微細スリットが開くことにより、微細気泡が前記散気管外に発生することを特徴とする浸漬型膜分離装置。
(2)前記微細スリットは、前記微細気泡散気管の半円筒側に設けられ、前記微細スリットを設けた半円筒側を前記分離膜モジュールの鉛直方向の上向きまたは下向きとなるように前記微細気泡散気管を配置したことを特徴とする上記(1)に記載の浸漬型膜分離装置。
本発明の浸漬型膜分離装置によれば、一定長以上の微細気泡散気管でも散気エアを偏りなく均一に発生でき、下水処理等の分野において長期間に亘りろ過性能が低下せず、安定運転が可能である。微細気泡散気管の長尺化により、使用する散気管の本数が減り、微細気泡散気管そのもの、あるいは、弾性シート交換のメンテナンスの簡素化がはかられる。また、プラントに浸漬型膜分離装置を複数設置し廃水処理に使用する際に、エア供給配管の接続箇所を少なくすることができ、エア供給配管機器費の低減が可能になる。
本発明の一実施態様に係る浸漬型膜分離装置を備えた処理システムの概略斜視図である。 図1に示した膜分離モジュール内で2枚の隣接する膜エレメントを示す概略斜視図である。 図1に示した微細気泡散気装置の一実施形態を示す上面図である。 図3に示した微細気泡散気管の長手方向での縦断面図である。 図3に示した微細気泡散気管を側面から見た要部の拡大図である。 (a)は微細気泡散気管の散気エア量の強度分布測定の試験方法模式図であり、(b)は試験方法を説明する図である。 実施例1の微細気泡散気管の散気エア量の相対強度分布を示す図である。 比較例1の微細気泡散気管の散気エア量の相対強度分布を示す図である。
以下、本発明に係る浸漬型膜分離装置について図面を参照して詳細に説明する。
なお、本発明において、「上」、「下」は、本装置が設置された状態における方向をいう。
図1は本発明の一実施態様に係る浸漬型膜分離装置を備えた処理システムの概略斜視図である。
浸漬型膜分離活性汚泥法では、被処理液(例えば、活性汚泥を含む微生物含有液)を貯留する処理槽(微生物含有液収容槽)3内に浸漬型膜分離装置13を浸漬設置し、活性汚泥によって生物処理させた被処理液から活性汚泥を分離して処理水を得る。このような処理システムは、処理槽3と、該処理槽3に原水(被処理液としての廃水)を供給するための原水(廃水)供給ポンプ1及び原水供給管2と、生物処理された活性汚泥混合液を固液分離する浸漬型膜分離装置13と、該浸漬型膜分離装置13で固液分離された膜透過水(処理水)を吸引する吸引ポンプ6及び膜透過水配管7と、活性汚泥による好気処理を進行させるとともに、膜面の洗浄を行うための散気エア供給装置4及び散気エア配管(気体供給配管)5とで構成されている。
<処理槽>
処理槽3は、活性汚泥を貯え、原水と活性汚泥の混合液(微生物含有液)に浸漬型膜分離装置13を浸漬することができれば、その大きさや材質等は特に制限されるものではない。処理槽3の材質としては、例えば、コンクリート、繊維強化プラスチックなどが好ましく用いられる。また、処理槽3には、原水供給ポンプ1を備えた原水供給管2が接続されており、原水は原水供給ポンプ1に汲み上げられて処理槽3内に貯水される。
本発明において、処理槽3には、その前段に、嫌気槽、無酸素槽、好気槽などを別に設けて、原水中の有機物のほか、窒素・リンなどの栄養塩を除去できるプロセスにしてもよい。
また、処理槽3の槽内に、浸漬型膜分離装置13に具備されているものとは別の、補助散気管を設けてもよい。
<浸漬型膜分離装置>
浸漬型膜分離装置13は、上部側に分離膜モジュール8を備え、分離膜モジュール8の下方に微細気泡散気装置12を備えている。
分離膜モジュール8は、複数の平膜状ろ過膜(分離膜)81が上下方向に膜面平行となるように並列で配置されて構成されている。このろ過膜81は、平板状の分離膜を配置した分離膜エレメントであり、図2に示すように、例えば、樹脂や金属等で形成されたフレーム85の表裏両面に、シート状の分離膜を配設し、分離膜とフレーム85で囲まれた内部空間に連通する処理水出口83をフレーム上部に設けた構造の平板状ろ過膜81が用いられる。隣り合う平板状ろ過膜81の間には所定の間隔が空けられていて、この膜間空間Z内を、被処理液の上昇流、特に気泡と被処理液との混合液の上昇流が流れる。
分離膜モジュール8における設置面積当たりのろ過面積を増やすためには、平板状ろ過膜81どうしの間隔を狭くし、より多くの平板状ろ過膜81を配置する方が望ましい。しかし、膜間隔が狭すぎると平板状ろ過膜81の膜面に十分に微細気泡や気液混合流を作用させることができず、膜面洗浄が不十分となって逆にろ過性能を低下させてしまう。そこで、効率よくろ過を行うためには、膜間隔は1〜15mmであることが好ましく、さらには5〜10mmであることがより好ましい。
この平板状ろ過膜81は、分離膜の取り扱い性や物理的耐久性を向上させるために、上記したように、フレームや平板の表裏両面に分離膜を配置し、分離膜の外周部を接着や溶着固定した平膜エレメント構造をしている。このエレメント構造は特に限定されるものではなく、平板とろ過膜の間にろ過水流路材を挟んだ物でもよい。平膜エレメント構造は、膜面に平行な流速を与えた場合の剪断力による汚れの除去効果が高いことから、本発明に好適に用いられる。
分離膜モジュール8の鉛直方向の下側(以下、「鉛直下方」という)には、複数の微細気泡散気管9を備えた微細気泡散気装置12が配置されている。
図3は本発明で用いられる微細気泡散気装置12の一実施形態を示す上面図である。微細気泡散気装置12は、微細気泡を発生させることができる散気面を備えた散気装置である。微細気泡散気装置12の圧力損失は、高すぎると消費電力が増し、省エネルギー性、経済性を損ねることにつながるため、圧力損失が低い方が好ましい。
微細気泡散気装置12は複数の微細気泡散気管9を備え、微細気泡散気管9のそれぞれが、散気エア供給管10及び微細気泡散気管固定具11に、分岐管10a及び分岐固定具11aを介して連接されている。この散気エア供給管10及び微細気泡散気管固定具11は、分離膜モジュール8の鉛直下方部分を挟み対向するように配置されている。なお、複数の微細気泡散気管9は、分離膜モジュール8の分離膜エレメントの膜面に交差する方向に延びるように配置されている。
図4は本発明で用いられる微細気泡散気管9の長手方向での縦断面図、図5は本発明で用いられる微細気泡散気管9を側面から見た要部の拡大図である。微細気泡散気管9は、周面に貫通孔9eが複数個設けられた中心管(支持管)9dと弾性シート9aとで構成され、弾性シート9aは、中心管9dの外周全面を覆った状態でその長手方向両端部が環状留め具9bにより固定されている。弾性シート9aには、図5に示したように、散気面が伸縮により開閉するスリット9fが多数形成されている。
したがって、散気エア供給口9cから供給された空気は、貫通孔9eを通った後、中心管9dと弾性シート9aとの間に入り、すると、弾性シート9aが膨らみ、スリット9fが開くことにより、微細気泡が放出される構造となっている。また、空気供給が停止した時には弾性シート9aが収縮してスリット9fが閉じるので、微細気泡が放出されない時にスリット9fから、槽内の微生物含有液が微細気泡散気管9内に流入することがなく、膜ろ過運転を行う過程で微生物含有液中の汚泥によるスリット9fの閉塞や微細気泡散気管9内の汚れを防ぐことができる。
本発明の浸漬型膜分離装置において、中心管(支持管)9dの長手方向の長さLは1000mm以上である。中心管9dの長手方向の長さLは、プラントに浸漬型膜分離装置を複数設置し廃水処理に使用する際に、エア供給配管の接続箇所を少なくし、エア供給配管機器費の低減効果を持たせるために1000mm以上とされる。
弾性シート9aに設けられたスリット9fは、中心管9d、つまり微細気泡散気管の長手方向の長さ当りの合計スリット長が9〜20m/mである。
弾性シート9aの1つのスリット9fの長さは、小さすぎると気泡発生時の圧力損失が大きくなり気泡放出が非効率となるおそれがあるため、0.7mm以上の微細スリットであることが好ましく、1mm以上であることがより好ましい。また、スリット9fの長さが大きすぎると、弾性シート9aの収縮時に微生物含有液が微細気泡散気管9内に流入し、目詰まりが進行する可能性が高まるため、1つのスリット9fの長さは、20mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。また、酸素溶解効率を高めるためには、3mm以下がさらに好ましい。
このスリット9fを所望の間隔をあけて直線状に設けたスリット列を略等間隔に設けることにより、スリット加工が施された弾性シート9aで覆われた微細気泡散気管9とすることができる。
ここで、微細気泡散気管9の長手方向の長さ当りの合計スリット長とは、微細気泡散気管9の長手方向の単位長さ当りの弾性シート9aに設けられたスリットの外表面で計測される長さの総和を指し、例えば、微細気泡散気管9の100mm当りに2mmのスリットが500個設けられていた場合は、2×500/100=10mm/mm(m/m)となる。
微細気泡散気管9の長手方向の長さ当りの合計スリット長は、大きすぎると微細気泡散気管9の長さ方向あたりの散気エア量の強度分布が不均一化する傾向が高くなり、また、小さすぎると圧力損失が大きくなるため、9〜20m/mとするものであり、9〜16m/mがより好ましい。
微細気泡散気管9の単位長さ当りの合計スリット長は、均一散気の観点から揃えるほうが良く、全体を平均のプラス、マイナス15%以内に、より好ましくは5%以内に揃えるほうがよい。
弾性シート9aへのスリット9fの加工パターンについては、弾性シート9aの強度、耐久性が保たれるパターンであれば特に限定されるものではないが、例えば、2mmのスリット9fを2mmの間隔をあけて1直線状に弾性シート9aに切れ込みを入れる、などの方法が考えられる。加工の容易性からは、図5に示したように、円筒状の弾性シート9aの半円筒側にのみ切り込みを入れる方法を特に好適な形態として例示することができる。
円筒状の半円筒側にのみ切り込みの入った弾性シート9aを用いた場合、スリット9fが設けられた半円筒側の半面は、鉛直方向の上向き、または、下向き、に配向させるのが好ましい。スリット9fが設けられた半円筒側の半面を上向き、つまり分離膜モジュール8に対向するように配向させる方が、微細気泡を平膜状ろ過膜81の膜面に万遍なく供給できる点で好ましいが、処理廃水や処理条件により、活性汚泥の微細気泡散気管9への堆積が認められる場合には、スリット9fが設けられた半円筒側の半面を下向きに配向させる方が、微細気泡の放出部位に堆積した汚泥の弾性シート9aへの乾燥固着による散気機能低下防止できる点で好ましい。
中心管9dへの貫通孔の設け方については、長さ方向に万遍なく空気を弾性シート9aに供給できる構造であれば特に限定されない。
弾性シート9aの材質については特に限定されず、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、シリコンゴム、ウレタンゴムなどの合成ゴムや、その他の弾性材を適宜、廃水の種類に応じて選択して使用することができる。通常の下水、および、多くの産業廃水処理用途では、エチレンプロピレンジエンゴムは実績、耐薬品性に優れるので好ましい。
環状留め具9b、散気エア供給口9cおよび中心管9dの材質としては、散気による振動などの負荷によって破損しない剛性を持つ材質であれば特に限定されるものではない。例えば、ステンレスなどの金属類、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの樹脂、繊維強化樹脂(FRP)などの複合材料、その他の材質などを好ましく使用することができる。
また、散気エア供給管10、微細気泡散気管固定具11、分岐管10a及び分岐固定具11aの材質としては、散気による振動などの負荷によって破損しない剛性を持つ材質であれば特に限定されるものではない。例えば、ステンレスなどの金属類などを好ましく使用することができる。
<散気エア供給装置>
微細気泡散気装置12の散気エア供給管10には、図1に示したように、散気エア配管5を介して散気エア供給装置4が接続されている。
散気エア供給装置4は、圧縮空気を送風する装置のことであり、一般にはブロア、コンプレッサ等が用いられる。送風された空気は微細気泡散気装置12から槽内に微細気泡として送出され、この微細気泡により、膜分離装置の分離膜表面の洗浄が行なわれるとともに、生物処理(好気処理)に必要な酸素が液中に供給される。
<吸引ポンプ及び膜透過水配管>
また、浸漬型膜分離装置13には吸引ポンプ6を備えた膜透過水配管7が設けられ、膜透過水配管7は処理水出口83に接続されている。吸引ポンプ6は、膜透過水配管7内の膜透過水を吸引するポンプであり、このポンプによる吸引力によって、浸漬型膜分離装置13による膜ろ過固液分離を行うために必要な駆動力が与えられ、水の流れが生じる。ポンプは所望の流量を脈動等の流量変化が少なく吸引できるものであればよい。
以下、本発明の浸漬型膜分離装置を備えた処理システムにより原水(被処理水)を処理する方法について説明する。
膜分離活性汚泥法における一般的な原水の流れとして、下水処理場等に流れてきた原水は、原水供給ポンプ1により汲み上げられ、原水供給管2を通り、処理槽3内に排出され、微生物含有液により生物処理される。その後、吸引ポンプ6による吸引圧で分離膜ユニット8により固液分離された後、膜透過水として膜透過水配管7を通り、系外に排出される。その間、散気エア供給装置4より生成された散気エアは散気エア配管5を通り、分離膜モジュール8の下部に配置された微細気泡散気管9より吐出され、分離膜の洗浄と活性汚泥の酸素源として供給される。
以下に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
<試験例1>
(実施例1)
周面に20個の孔(直径:8mm)が設けられた円筒状の中心管(外径60mm、長さ1454mm)の外周に、2mmのスリットを2mmの間隔で直線状に設けたスリット加工が略等間隔に26列設けられた弾性シートを被覆し、両端部を環状留め具により固定して微細気泡散気管を作製した。
微細気泡散気管の外径は65mm、長さは1452mmであった。また、弾性シートのスリット加工は円筒の外周面の半面に設けられ、微細気泡散気管の単位長さ当りの合計スリット長は13m/mであった。
弾性シート9aの材質はエチレンプロピレンジエンゴム、中心管9dの材質はポリ塩化ビニル、分岐管10a、環状留め具9b、及び散気エア供給口9cの材質としてはステンレスを使用した。
得られた微細気泡散気管9を、図6(a)に示すように、水の入った水槽15(水深1m70cm)に、スリットを設けた半円筒側が分離膜モジュールに対抗するように上向きに浸漬した。その後、図示しない散気エア供給装置を用いて、散気エア供給口9cからエア(空気)を供給し、散気エア量を12NL/min/ELで散気した。この時の、散気エア供給口9cからの所定距離における分離膜モジュール8の上端付近の散気エア量を、メスシリンダー14(直径約10cm)を用い、定量的に測定した。
具体的には、図6(b)に示すように、水の入ったメスシリンダー14を逆さにしてメスシリンダー14の先端部が水面に漬かるように設置し、散気開始からメスシリンダー14中の水が全て排出され、エアが溜まるまでの時間を測定した。メスシリンダー14は、散気エア供給口9cから15cm、45cm、75cm、105cmおよび135cmの位置に設置して測定を行い、それぞれのエア置換時間から、各位置における散気エア流量を算出し、代表的エア流量に対する相対値を算出して散気エア量の相対強度を求めた。試験は5回繰り返して行った。結果を図7に示す。
図7の結果から、散気管の単位長さ当りの合計スリット長が13m/mとした実施例1は、散気エアが顕著に均一化しており、微細気泡散気管9の中央付近と両端付近との間の散気エアの偏りがほぼ見られないことがわかった。
実施例1の微細気泡散気管が微生物含有液中での運転にどの様に影響するのか確認するため、実施例1の微細気泡散気管9を具備する浸漬型膜分離装置13を、原水及び微生物含有液で満たされた処理槽3に浸漬させ、生物処理が行われた微生物含有液を吸引ポンプ6で吸引し、圧力計16、ろ過流量計17が図1のような配置になるようにしてろ過水を通過させ、処理槽3内の原水のろ過を行った。なお、この間散気エア供給装置4により散気エア配管5を通し、微細気泡散気管9から散気エアを吐出し、分離膜モジュール8のエアスクラビングを行った。
具体的には、活性汚泥濃度(MLSS)が6000〜8000mg/L程度の原水が入っている槽内の微生物含有溶液を、総膜面積90mの分離膜ユニット8を介し、吸引ポンプ6で9分間吸引後、1分間停止し、トータルとして36m/day(0.4m/m/d)のろ過水を製造し、更にその間10NL/min/ELの散気エア量で運転した。
その結果、約4ヶ月間経過後でも差圧の上昇がほとんどなく、連続運転が可能であった。
また、ここで、浸漬型膜分離装置13を引き上げ、分離膜への汚泥ケーク付着状況を確認したところ、分離膜ユニット8両端付近の分離膜の汚泥ケーク形成はほとんど見られなかった。
(比較例1)
2mmのスリット9fを2mmの間隔で直線状に設けたスリット加工が円筒の外周にそってほぼ等間隔に60列設けられた弾性シート(散気管の単位長さ当りの合計スリット長が30m/m)を用いた以外は、実施例1と同様にして微細気泡散気管を作製した。
実施例1と同様の方法で散気エア量の相対強度を測定した。なお、メスシリンダー14は、散気エア供給口9cから10cm、20cm、40cm、60cm、80cm、100cm、120cmおよび140cmの位置に設置した。試験は10回繰り返して行った。結果を図8に示す。
図8の結果から、比較例1では、微細気泡散気管9の中央付近と両端付近との間に散気エアの偏りがあることが確認された。
比較例1の微細気泡散気管が微生物含有液中での実際の運転にどの様に影響するのか確認するため、比較例1の微細気泡散気管を具備する浸漬型膜分離装置を用い、実施例1と同様の方法により微生物含有液中でろ過を行った。
その結果、約3ヶ月経過時点で運転で差圧が急上昇し、連続運転が困難となった。
ここで浸漬型膜分離装置13を引き上げ、分離膜への汚泥ケーク付着状況を確認したところ、分離膜ユニット8両端付近の分離膜に大きな汚泥ケークの形成が見られた。
これらは、微細気泡散気管9から吐出された散気エアから生じる旋回流が中央に偏るため、分離膜ユニット8両端の分離膜が効率よく洗浄されず、洗浄効果の比較的高い中央付近の分離膜への負担が増大していることが原因であると推測された。
<試験例2>
(微細気泡散気管A〜Fの作製)
2mmのスリットを2mmの間隔で直線状に設けたスリット加工が円筒の外周にそってほぼ等間隔に60列設けられるように設計した弾性シートを準備し、一部の列のスリットを接着剤にて固着、閉止させ、14列、18列、32列、40列、50列分のスリットからしかエアが散気されず、散気管の単位長さ当りの合計スリット長がそれぞれ、7、9、16、20、25m/mとなるように調整した。得られた弾性シートをそれぞれ、周面に20個の孔(直径:8mm)が設けられた円筒状の中心管(外径60mm、長さ1454mm)の外周に被覆し、両端部を環状留め具により固定して微細気泡散気管A〜Eを作製した。また、スリットを接着剤にて固着せず、散気管の単位長さ当りの合計スリット長が30m/mである微細気泡散気管Fを作製した。
(散気エア量およびエア供給圧の測定)
得られた微細気泡散気管A〜Fについて、実施例1と同様の方法で、散気エア供給口から15cm、45cm、75cm、105cmおよび135cmの5つの位置における散気エア量を測定した。表1に、各位置の散気エア量を散気管あたりの平均値で割って規格化した散気エア量の標準偏差、及び、エア供給圧の測定結果を示す。
Figure 2015110195
散気管の単位長さ当りの合計スリット長が7m/mである微細気泡散気管Aは、散気エアの偏りはほとんど見られなかったが、エア供給圧力が他の散気管に比べて顕著に高く、消費エネルギーの面で課題が顕在化することが確認された。他方で、散気管の単位長さ当りの合計スリット長が25m/m以上の微細気泡散気管E,Fでは、散気エア量にバラツキが多く存在することが確認された。
これらに対して、散気管の単位長さ当りの合計スリット長が9〜20m/mの微細気泡散気管B〜Dでは、一定長以上の長さでも、圧力損失を低く保ちつつ散気エアを偏りなく均一に発生できることが確認された。
本発明の浸漬型膜分離装置は、下水処理等の分野において長期間にわたりろ過性能が低下せず、安定運転可能な浸漬型膜分離装置として好適に利用することができる。
1:原水(廃水)供給ポンプ
2:原水供給管
3:処理槽(微生物含有液収容槽)
4:散気エア供給装置
5:散気エア配管
6:吸引ポンプ
7:膜透過水配管
8:分離膜モジュール
9:微細気泡散気管
9a:弾性シート
9b:環状留め具
9c:散気エア供給口(ニップル)
9d:中心管(支持管)
9e:貫通孔
9f:スリット
10:散気エア供給管(気体供給配管)
10a:分岐管
11:微細気泡散気管固定具
11a:分岐固定具
12:微細気泡散気装置
13:浸漬型膜分離装置
14:メスシリンダー
15:水槽
16:圧力計
17:ろ過流量計
81:ろ過膜
83:処理水出口

Claims (2)

  1. 被処理液を貯留した処理槽内に浸漬設置される浸漬型膜分離装置であって、
    平膜を分離膜として配設した分離膜エレメントの複数が膜面平行に並列で配置されてなる分離膜モジュールと、該分離膜モジュールの鉛直下方に設置され、1つの気体供給管に連接された複数の微細気泡散気管とを備え、該複数の微細気泡散気管が、前記分離膜エレメントの膜面に交差する方向に延びている浸漬型膜分離装置において、
    前記微細気泡散気管は、少なくとも、周面に複数の孔が設けられた筒状の支持管と、微細スリットが形成された弾性シートとを有し、該弾性シートは前記支持管の外周を覆うように配置され、
    前記支持管は長手方向の長さが1000mm以上であり、前記弾性シートに設けられた前記微細スリットは前記微細気泡散気管の長手方向の長さ当りの合計スリット長が9〜20m/mであり、
    前記支持管の内側に供給された気体が、前記複数の孔から前記支持管と前記弾性シートの間隙に流入し、前記弾性シートの前記微細スリットが開くことにより、微細気泡が前記散気管外に発生することを特徴とする浸漬型膜分離装置。
  2. 前記微細スリットは、前記微細気泡散気管の半円筒側に設けられ、前記微細スリットを設けた半円筒側を前記分離膜モジュールの鉛直方向の上向きまたは下向きとなるように前記微細気泡散気管を配置したことを特徴とする請求項1に記載の浸漬型膜分離装置。
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