JP2015104373A - [NiFe]−ヒドロゲナーゼの発現系 - Google Patents

[NiFe]−ヒドロゲナーゼの発現系 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の課題は、[NiFe]−ヒドロゲナーゼを十分な活性を有する形態で、簡易で大量に製造でき、さらには多数のアミノ酸置換体のライブラリを構築することが容易な発現システムを提供することである。【解決手段】 本発明は、ゲノム中もしくは天然株が有するプラスミド中の[NiFe]−ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群において、[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子が欠損している宿主菌、および、前記ヒドロゲナーゼ遺伝子を有するベクターを含む、[NiFe]−ヒドロゲナーゼの発現システムおよび該発現システムを用いた[NiFe]−ヒドロゲナーゼの製造方法などに関する。【選択図】 図3

Description

本発明は、[NiFe]−ヒドロゲナーゼの発現システムに関し、特に、活性を有する[NiFe]−ヒドロゲナーゼを大量に製造するための発現システムに関する。
水素分子は化石燃料に代わるクリーンな次世代のエネルギーキャリアとして注目されていることから、水素分子の生成能と分解能を有するヒドロゲナーゼもまた大きな注目を集めている。特に、ヒドロゲナーゼの水素分子分解能は、燃料電池の白金電極の代替や、燃料電池の安全性を確保するための水素センサーにも応用できる。このような応用例の1つとして、遺伝子操作によりギ酸デヒドロゲナーゼおよびヒドロゲナーゼの酵素群を高発現させた微生物を用いて水素を供給する燃料電池などが検討されている(特許文献1:特許第3764862号公報)。
ヒドロゲナーゼは、フェレドキシンなどの電子伝達蛋白質やNADHなどの電子供与分子から電子を受け取り、プロトンを還元して水素分子を生成する反応(2H+2e→H)と、水素分子をプロトンと電子に分解し(H→2H+e)、電子(還元力)を電子伝達蛋白質やNADに渡す反応を触媒する酵素である。ヒドロゲナーゼは、触媒中心である金属イオン錯体の違いによって、概ね、(1)2つの鉄イオンからなる二核錯体を有する[FeFe]−ヒドロゲナーゼ、(2)ニッケルと鉄イオンのヘテロ二核錯体を有する[NiFe]−ヒドロゲナーゼ、(3)鉄含有補助因子を含む[Fe]−ヒドロゲナーゼの3つに分類することができる。
[FeFe]−ヒドロゲナーゼの主な生理的役割は、生体内の余剰電子を水素分子として放出することであり、触媒中心である鉄硫黄クラスター[4Fe−4S]は電子伝達蛋白質から鉄二核錯体への電子伝達を仲介する役割を担っている。これまで、[FeFe]−ヒドロゲナーゼを藍藻類(特許文献2:特開平11−253166号公報)や緑藻(特許文献3:特表2008−531055号公報)において発現させる試みがなされてきたが、[FeFe]−ヒドロゲナーゼは酸素分子と直ちに反応し、不可逆的に不活化されるため、実用性に乏しいものであった。
[NiFe]−ヒドロゲナーゼは、生理的役割として、主に水素分子の取り込みを行っており、4次構造としては、触媒中心であるニッケル−鉄錯体を有するラージサブユニットと、電子伝達ユニットである3つの鉄硫黄クラスター([4Fe−4S]もしくは[3Fe−4S])を持つスモールサブユニットからなるヘテロダイマーを基本構造とする。また一方で、膜結合ドメインやNAD還元機能を有するジアホラーゼドメインなどを有するマルチドメインを形成しているヒドロゲナーゼも知られている。一般に[NiFe]−ヒドロゲナーゼは、[FeFe]−ヒドロゲナーゼと比較して酸素分子に対する耐性は高いとされ、酸素分子と反応して活性を失っても、還元的雰囲気下で再活化される例が報告されている。
[NiFe]−ヒドロゲナーゼを発現させる試みも数多く報告されている。
特許文献4(特表2010−535471号公報)および非特許文献1(Roussetら(1998))は、硫酸還元菌由来の[NiFe]−ヒドロゲナーゼの宿主ベクター系に関する文献であるが、これらの文献においては、硫酸還元菌由来の[NiFe]ヒドロゲナーゼ遺伝子をベクターに挿入し、硫酸還元菌のヒドロゲナーゼ欠失株に導入することで、組換え[NiFe]ヒドロゲナーゼ遺伝子を発現させたとされている。これらの発現系において、宿主として用いられる硫酸還元菌は嫌気性細菌であるため培養が容易ではなく、増殖が遅いため、実用化することは相当困難である。
非特許文献2(Kimら(2010))および非特許文献3(Kimら(2011))は、リコンビナント蛋白質の発現にもっともよく使用されている大腸菌(Escherichia coli)BL21株を宿主とした[NiFe]−ヒドロゲナーゼ発現系を報告している。大腸菌由来の[NiFe]−ヒドロゲナーゼ(hydrogenase-1)遺伝子を用いた場合(非特許文献2)およびHydrogenovibrio marinus由来の[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子を用いた場合(非特許文献3)のいずれもリコンビナント[NiFe]−ヒドロゲナーゼの精製を行うことができたが、その水素発生における比活性は極めて低いものであった。
非特許文献4(Yonemotoら(2013))は、Alteromonas macleodii由来[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子や翻訳後修飾関連遺伝子を有するプラスミド(〜20kbp)を大腸菌内に導入し、活性型ヒドロゲナーゼを発現させることを報告している。同文献の発現系においては、導入するプラスミドのサイズが大きく、形質転換効率が低いなどの問題が生じる虞があり、簡易に用い得る発現システムとはいえない。
非特許文献5(Sunら(2010))は、大腸菌MW1001株を宿主として、高熱菌であるPyrococcus furiosus由来NAD還元[NiFe]−ヒドロゲナーゼの異種発現について報告している。同報告では、ヒドロゲナーゼ遺伝子と翻訳後修飾に必要な多数の遺伝子を5つのプラスミドに分乗させて、それぞれ大腸菌に導入している。また、非特許文献6(Schiffelsら(2013))は、大腸菌BL21(DE3)株を宿主として、Ralstonia eutropha(R. eutropha)由来NAD還元[NiFe]−ヒドロゲナーゼの異種発現について報告している。同報告では、NADP依存型[NiFe]−ヒドロゲナーゼを構成する5つのサブユニットをコードする遺伝子を挿入したプラスミドと、翻訳後修飾に必要な多数の遺伝子を挿入したプラスミドを、一つの細胞に導入している。これらの非特許文献において構築された共発現系は、構築した複数のプラスミドを菌体に導入する必要性や、プラスミドの脱落の問題などがあり、必ずしも簡便な安定的手段とはいえない。
非特許文献7(Schubertら(2007))は、Ralstonia eutropha由来の膜結合型[NiFe]ヒドロゲナーゼ遺伝子群を組み込んだベクターをRalstonia eutrophaのヒドロゲナーゼ遺伝子欠失株に導入することで、組換え[NiFe]ヒドロゲナーゼ遺伝子を発現させたことが報告されている。同文献の発現システムにおいて導入するプラスミドのサイズは、極めて大きく、形質転換効率が低いなどの問題が生じる虞があり、簡易に用い得る発現システムとはいえない。
近年、最も精力的に研究されている水素細菌は、前記非特許文献6および7においても用いられているRalstonia eutrophaである。Ralstonia eutrophaは、それぞれ生理学的役割も4次元構造も異なる3種類の[NiFe]−ヒドロゲナーゼ((1)NAD還元ヒドロゲナーゼ(SH)、(2)膜結合型ヒドロゲナーゼ(MBH)、(3)水素センサーヒドロゲナーゼ(RH))が存在している。これらのヒドロゲナーゼは、450kbpのメガプラスミドpHG1にコードされている。
NAD還元ヒドロゲナーゼ(SH)は細胞質に局在し、ヒドロゲナーゼサブユニットであるHoxYおよびHoxHと、NAD還元(ジアフォラーゼ活性)サブユニットであるHoxF、HoxUおよびHoxIから形成されている。SHは、NADHを必要とするバイオプロセスにおいて、水素分子によるNADH再生系触媒や、水素センサーへの応用が期待されている。
膜結合型ヒドロゲナーゼ(MBH)は、ヒドロゲナーゼサブユニットであるHoxKおよびHoxGと、キノン還元能を有する膜結合サブユニットであるHoxZから成る。HoxZを除いた可溶性MBHは、PSIや光触媒、電極と組み合わせた水素生産や、燃料電池への応用が期待されている。
水素分子センシングを担う水素センサーヒドロゲナーゼ(RH)は、ヒドロゲナーゼサブユニットであるHoxBおよびHoxCと、キナーゼサブユニットであるHoxJから成る。RHは、水素センサーへの応用が期待されている。それぞれ、比較的高い酸素耐性(高い再活性化速度)を有しているものの、酸素分子存在下では活性が大きく低下することが知られている。
特許第3764862号公報 特開平11−253166号公報 特表2008−531055号公報 特表2010−535471号公報
本発明者らは、上記課題を解決するため、研究を重ねる中で、従来のヒドロゲナーゼ発現系において、相同組み換え法によって宿主を改変する方法(図1(a))では、変異体の作製や単離に長時間がかかる上に、多数の変異体を同時に調製することができないこと、ヒドロゲナーゼ遺伝子をクローニングしたプラスミドを宿主に導入する方法(図1(b))では、プラスミドのサイズが大きいため(巨大プラスミド)、宿主への変異導入が困難で、形質転換の効率も低く、発現量が低いという問題に直面した。また、酸素耐性の改善などを目的として、[NiFe]−ヒドロゲナーゼのアミノ酸置換を行うことが考えられるところ、これまで適切な宿主ベクター系が構築されていないことや、[NiFe]−ヒドロゲナーゼが典型的には図2に示すような遺伝子群によって発現し、特有の複雑な翻訳後修飾を経て活性型となることが十分な活性を有する[NiFe]−ヒドロゲナーゼやそのアミノ酸置換体が実現できないことの大きな原因であることに着目し、さらに研究を進めた。
本発明者らは、[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子を有するプラスミドを[NiFe]−ヒドロゲナーゼ欠損宿主に導入し、宿主側のアクセサリー遺伝子とプラスミドの[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子の転写量を調節することによって(図3)、実用に耐えうる十分な活性を有する[NiFe]−ヒドロゲナーゼを大量に製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明の課題は、[NiFe]−ヒドロゲナーゼを十分な活性を有する形態で、簡易で大量に製造でき、さらには多数のアミノ酸置換体のライブラリを構築することが容易な発現システムを提供することである。
すなわち本発明は、以下に関する。
[1] ゲノム中もしくは天然株が有するプラスミド中の[NiFe]−ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群において、[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子の全部または一部が欠損している宿主菌、および、前記欠損した[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子を有するベクターを含む、[NiFe]−ヒドロゲナーゼの発現システム。
[2] [NiFe]−ヒドロゲナーゼが、膜結合型ヒドロゲナーゼ(MBH)である、前記[1]に記載の発現システム。
[3] [NiFe]−ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群が、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来である、前記[1]または[2]に記載の発現システム。
[4] 宿主菌が、ラルストニア・ユートロファである、前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の発現システム。
[5] 宿主菌の、hoxK、hoxGおよびhoxZからなる[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子の全部または一部が欠損している、前記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の発現システム。
[6] 宿主菌のhoxKおよびhoxGが欠損している、前記[5]に記載の発現システム。
[7] 宿主菌が、[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターを2つ有する、前記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の発現システム。
[8] [NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターが、R. eutropha由来のヒドロゲナーゼSHプロモーター(天然型)(配列番号1に記載の塩基配列の195番目〜262目番)である、前記[7]に記載の発現システム。
[9] ベクターのプロモーターが、R. eutropha由来のヒドロゲナーゼSHプロモーター(天然型)(配列番号1に記載の塩基配列の195番目〜262目番)、改変SHプロモーター1(配列番号10に記載の塩基配列の4897番目〜4964番目)、改変SHプロモーター7(配列番号11に記載の塩基配列の4897番目〜4964番目)、改変SHプロモーター8(配列番号12に記載の塩基配列の4897番目〜4964番目)または改変SHプロモーター9(配列番号13に記載の塩基配列の4897番目〜4964番目)である、前記[8]に記載の発現システム。
[10] ベクターの[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子のmRNAの転写量と宿主菌の[NiFe]−ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群のmRNAの転写量との比が、4:1〜1:15である、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の発現システム。
[11] ベクターの[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子のmRNAの転写量と宿主菌の[NiFe]−ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群のmRNAの転写量との比が、1:2〜1:3である、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の発現システム。
[12] 宿主菌の16srRNAの転写量を100としたときに、ベクターの[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子のmRNAの転写量、および宿主菌の[NiFe]−ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群のmRNAの転写量がともに0.5以上である、[10]または[11]に記載の発現システム。
[13] ベクターが、pBHR−MBHst(配列番号6)、プラスミドpBHR−MBHst−1(配列番号10)、pBHR−MBHst−7(配列番号11)、pBHR−MBHst−8(配列番号12)またはpBHR−MBHst−9(配列番号13)である、前記[1]〜[11]のいずれか一項に記載の発現システム。
[14] ゲノム中の[NiFe]−ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群において、hoxKおよびhoxGが欠損しているラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)。
[15] pBHR−MBHst(配列番号6)、プラスミドpBHR−MBHst−1(配列番号10)、pBHR−MBHst−7(配列番号11)、pBHR−MBHst−8(配列番号12)またはpBHR−MBHst−9(配列番号13)である発現ベクター。
[16] 前記[1]〜[12]のいずれか一項に記載の発現システムを用いた、[NiFe]−ヒドロゲナーゼの製造方法。
[17] [NiFe]−ヒドロゲナーゼの製造方法であって、
(1)ゲノム中の[NiFe]−ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群において、hoxK、hoxGおよびhoxZからなる[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子の全部または一部が欠損しているラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)を調製する工程、
(2)前記欠損した[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子を有するベクターを調製する工程、
を含み、前記(1)で調製したラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)に、前記(2)で調製したベクターを導入した場合に、ベクターのmRNAの転写量と宿主菌の遺伝子群のmRNAの転写量との比が、4:1〜1:15となるように、宿主菌のプロモーターおよび/またはベクターのプロモーターが改変されていることを特徴とする、前記製造方法。
本発明の[NiFe]−ヒドロゲナーゼの発現システムによれば、十分な比活性有する[NiFe]−ヒドロゲナーゼが、短期間で大量に得ることができる。とくに、宿主に導入するプラスミドのサイズを小さくすることができるため、電気穿孔法などによる形質転換効率が高く、簡便かつ短期間に発現システムを構築し、プラスミドの脱落の問題などが生じ難く、安定的に発現システムを維持することができる。また、遺伝子操作が容易であり、例えば、ランダムライブラリなどの多数のアミノ酸置換体のライブラリを構築することが容易にできる。かかるライブラリなどを用いることによって、有用な[NiFe]−ヒドロゲナーゼ変異体の探索などが迅速に行うことができる。
図1(a)は、従来の相同組み換えによるヒドロゲナーゼ発現系を示す概念図である。図1(b)は、従来の大型広宿主域ベクターによる宿主ベクター系によるヒドロゲナーゼ発現系を示す概念図である。 図2は、[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子群を示す模式図である。 図3は、本発明の[NiFe]−ヒドロゲナーゼ発現システムの一態様を示す概念図である。 図4は、プラスミドベクターpBHR1(MoBiTec社(MoBiTec GmbH))のベクターマップを示した図である。 図5は、本発明の一態様である変異SHプロモーターの塩基配列のアライメントである。上から順に、R. eutropha由来のヒドロゲナーゼSHプロモーター(天然型)(配列番号1に記載の塩基配列の195番目〜262目番)、改変SHプロモーター1(配列番号10に記載の塩基配列の4897番目〜4964番目)、改変SHプロモーター7(配列番号11に記載の塩基配列の4897番目〜4964番目)、改変SHプロモーター8(配列番号12に記載の塩基配列の4897番目〜4964番目)、改変SHプロモーター9(配列番号13に記載の塩基配列の4897番目〜4964番目)である。 図6は、本発明のプラスミド(pBHR−MBHst、pBHR−MBHst−7、pBHR−MBHst−8、pBHR−MBHst−9)と宿主菌株(HMU1、HMU2、HMU3)を組み合わせた発現系の一部に関し、大気下でのFNG(−)培地の培地におけるヒドロゲナーゼ活性を吸光度変化速度で表したグラフである。 図7は、本発明のプラスミド(pBHR−MBHst、pBHR−MBHst−7、pBHR−MBHst−8、pBHR−MBHst−9)と宿主菌株(HMU1、HMU2、HMU3)を組み合わせた発現系の一部に関し、水素:酸素:二酸化炭素=8:1:1の混合気体下でのFN(−)培地におけるヒドロゲナーゼ活性を吸光度変化速度で表したグラフである。 図8は、本発明のプラスミド(pBHR−MBHst、pBHR−MBHst−7、pBHR−MBHst−8、pBHR−MBHst−9)と宿主菌株(HMU1、HMU2、HMU3)を組み合わせた発現系の一部に関し、活性染色したNative−PAGEの電気泳動図である。 図9は、本発明のプラスミド(pBHR−MBHst、pBHR−MBHst−7、pBHR−MBHst−8、pBHR−MBHst−9)と宿主菌株(HMU1、HMU2、HMU3)を組み合わせた発現系の一部に関し、大気下でのFNG(−)培地の培地における、hoxKおよびhoxMの転写量相対値(16rsRNAの転写量を100とした値)を示すグラフである。なお、グラフ中の、DSHは、可溶性ヒドロゲナーゼSH遺伝子の破壊株を示す。 図10は、本発明のプラスミド(pBHR−MBHst、pBHR−MBHst−7、pBHR−MBHst−8、pBHR−MBHst−9)と宿主菌株(HMU1、HMU2、HMU3)を組み合わせた発現系の一部に関し、水素:酸素:二酸化炭素=8:1:1の混合気体下でのFN(−)培地におけるにおける、hoxKおよびhoxMの転写量相対値(16rsRNAの転写量を100とした値)を示すグラフである。なお、グラフ中の、DSHは、可溶性ヒドロゲナーゼSH遺伝子の破壊株を示す。
本発明の[NiFe]−ヒドロゲナーゼの発現システムは、ゲノム中もしくは天然株が有するプラスミド中の[NiFe]−ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群において、[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子の全部または一部が欠損している宿主菌、および、前記欠損した[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子を有するベクターを含む。[NiFe]−ヒドロゲナーゼとしては、特に限定されず、NAD還元ヒドロゲナーゼ(SH)、膜結合型ヒドロゲナーゼ(membrane-bound hydrogenase:MBH)、水素センサーヒドロゲナーゼ(RH)が挙げられるが、エネルギー効率がよく、水素生産や燃料電池への応用が容易であるとの観点から、膜結合型ヒドロゲナーゼ(MBH)が好ましい。
本発明に用いることができる宿主菌は、特に限定されないが、蛋白質の発現に汎用され、培養技術や精製技術が確立されているものが好適である。このような宿主菌としては、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ロドコッカス(Rhodococcus)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ラクトバシラス属 (Lactobacillus)、シアノバクテリア(Cyanobacteria)などが挙げられるが、増殖性が高く、取扱いが容易であって、大量に発現することができる大腸菌およびラルストニア・ユートロファが好ましく、ヒドロゲナーゼ成熟の観点からは、ラルストニア・ユートロファが特に好ましい。
本発明に係る[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子群(gene cluster)としては、ゲノム中もしくは天然株が有するプラスミド中に存在し得る。いずれのヒドロゲナーゼ遺伝子群においても、大別して、[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子(構造蛋白質をコードする遺伝子)、ヒドロゲナーゼの翻訳後修飾に関連する遺伝子、触媒中心の合成や挿入に関連する遺伝子、ヒドロゲナーゼ遺伝子の発現制御に関連する遺伝子などが存在する。本発明に係る[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子群は、典型的には、図2に示す構造を有する。
本発明に係る[NiFe]−ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群の由来は、典型的には発現に用いる宿主菌に由来するが、例えば、外来の遺伝子群を宿主菌に導入したものを用いることも可能である。ラルストニア・ユートロファ由来であることが好ましい。
本発明の宿主においては、ゲノム中および/または天然株が有するプラスミド中に存在する[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子群のうち、少なくとも1つの[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子群の[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子が欠損している。プラスミドの脱落防止などの観点から、ゲノム中の[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子群の[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子を欠損させるのが好ましい。[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子の欠損している場所は、特に限定されるものではないが、hoxK、hoxGおよびhoxZからなる[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子の全部または一部を欠損させるのが好ましい。ここで「欠損」とは、例えば、当該遺伝子の全部または一部を欠失させることによって、当該遺伝子がコードするポリペプチドの機能を失わせることをいう。本発明において、宿主の欠損する領域は、hoxK、hoxGおよびhoxZの全てであってもよいが、得られるヒドロゲナーゼの酸素耐性や活性の強さの観点から、hoxKおよびhoxGが欠損していることが好ましい。
本発明の宿主菌において、[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子群(gene cluster)のプロモーターは、適宜、転写量を調節するために調製され得る。例えば、[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子群の野生型のプロモーターを2つまたは3つ以上組み合わせて用いること、すなわち、元来有していた1つのプロモーターに1つまたは2つ以上のプロモーターを付加することによって、または外来のプロモーターを組み込むことによって転写量を調節することができる。また、該野生型のプロモーターの塩基配列において、1つまたは2つ以上の塩基が欠失、置換、付加されることによって、プロモーターとしての機能を損なうことなく、転写量を調節することができる。プロモーターの由来は、[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子群の転写量を調節できるものであれば、特に限定されず、宿主由来のプロモーターに限らず、宿主に由来しない外来のプロモーターであってもよい。
本発明の宿主菌において用いることができる[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターは、具体的には、例えば、R. eutropha由来のヒドロゲナーゼSHプロモーター(天然型)(配列番号1に記載の塩基配列の195番目〜262目番)である。
ベクターのプロモーターもまた、宿主菌において用いることができる[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターと同様に、ベクターの転写量を調節できるものであれば、特に限定されないが、例えば、R. eutropha由来のヒドロゲナーゼSHプロモーター(天然型)(配列番号1に記載の塩基配列の195番目〜262目番)である。さらに、かかるSHプロモーターを改変した、改変SHプロモーター1(配列番号10に記載の塩基配列の4897番目〜4964番目)、改変SHプロモーター7(配列番号11に記載の塩基配列の4897番目〜4964番目)、改変SHプロモーター8(配列番号12に記載の塩基配列の4897番目〜4964番目)または改変SHプロモーター9(配列番号13に記載の塩基配列の4897番目〜4964番目)であってもよい。
本発明の発現システムにおいて、宿主菌の[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子群の転写量は、ベクターの転写量と概ね同等であるか、やや多い方が好ましい傾向にある。したがって、ベクターの転写量と宿主菌の遺伝子群の転写量との比は、典型的には、4:1〜1:15であってもよく、好ましくは、4:1〜1:5であり、特に好ましくは、1:2〜1:3である。ベクターの転写量が多いと触媒中心であるニッケル−鉄錯体が適切に高次構造に取り込まれない傾向がある。
また、上記の比率において、16rsRNAを100としたときに、ベクター側の転写量は、0.5以上であり、好ましくは、収量の観点から、3以上であるが、上限は細胞生育阻害の観点から、20である。なお、ベクター側の転写量は、hoxKなどのベクター上の遺伝子のmRNAの発現量を測定することで決定することができる。また、宿主側の転写量は、0.5以上であり、好ましくは、収量の観点から、5以上であるが、上限は、細胞生育阻害の観点から20である。なお、宿主側の転写量は、hoxMなどの宿主上の遺伝子のmRNAの発現量を測定することで決定することができる。
本発明の発現システムに用いるのに好適なベクターは、pBHR−MBHst(配列番号6)、プラスミドpBHR−MBHst−1(配列番号10)、pBHR−MBHst−7(配列番号11)、pBHR−MBHst−8(配列番号12)またはpBHR−MBHst−9(配列番号13)などであり、特に好ましくは、FNG(-)培地を用いた大気下での培養においては、pBHR−MBHst−9(配列番号13)であり、FN(−)培地を用いた水素:酸素:二酸化炭素(8:1:1)混合気体雰囲気下での培養においては、pBHR−MBHst(配列番号6)である。
また本発明は、前記の発現システムに用いることができる、ゲノム中の[NiFe]−ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群において、hoxKおよびhoxGが欠損しているラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)、並びに、pBHR−MBHst(配列番号6)、プラスミドpBHR−MBHst−1(配列番号10)、pBHR−MBHst−7(配列番号11)、pBHR−MBHst−8(配列番号12)またはpBHR−MBHst−9(配列番号13)である発現ベクターを提供する。
さらに本発明は、前記の発現システムを用いた、[NiFe]−ヒドロゲナーゼの製造方法を提供する。
さらにまた本発明は、[NiFe]−ヒドロゲナーゼの製造方法であって、
(1)ゲノム中の[NiFe]−ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群において、hoxK、hoxGおよびhoxZからなる[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子の全部または一部が欠損しているラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)を調製する工程、
(2)前記欠損した[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子を有するベクターを調製する工程、
を含み、前記(1)で調製したラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)に、前記(2)で調製したベクターを導入した場合に、ベクターの転写量と宿主菌の遺伝子群の転写量との比が、4:1〜1:15となるように、宿主菌のプロモーターおよび/またはベクターのプロモーターが改変されていることを特徴とする、前記製造方法を提供する。
本発明は、一態様において、[NiFe]−ヒドロゲナーゼを製造するための、ゲノム中もしくは天然株が有するプラスミド中の[NiFe]−ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群において、[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子の全部または一部が欠損している宿主菌、および、前記欠損した[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子を有するベクターを含む、[NiFe]ヒドロゲナーゼの発現キットを提供する。当該キットには、[NiFe]−ヒドロゲナーゼを製造するための使用説明書を同梱することができる。
本発明は、一態様において、宿主菌を培養する培地を選択することによって、発現システムの効率化を行うことができる。培地は、宿主菌を培養できるものから選択し得るが、例えば、LB、SOC、FN(+)、FN(−)、FNG(+)およびFNG(−)などを用いることができる。ここで培養は、例えば、大気下、水素:酸素:二酸化炭素=8:1:1の混合気体下などで行うことができる。特に好ましい培養条件は、ベクターの転写量と宿主菌の遺伝子群の転写量との比が好適な値になることで決定され得る。
また、本発明の一態様において、例えば、アミノ酸置換体などの各種変異体を含むヒドロゲナーゼライブラリーの作成に使用することができる。
以下、本発明について、さらに詳細に実施例を用いて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.プラスミドコンストラクションの作製
(a)MBH遺伝子導入用ベクターの作製
pBHR1は、MoBiTec社(MoBiTec GmbH)から購入した。pBHR1のマップを図4に示す。pBHR1へのMBH遺伝子とプロモーターの組み込みは、以下のとおり行った。
まず、Ralstonia eutropha(R. eutropha)SHプロモーター領域をコードする遺伝子断片は、R. eutrophaから抽出したpHG1を鋳型とし、SH_promoter_Draプライマー(配列番号24)およびSH_promoter_Ncoプライマー(配列番号25)を用いたPCRによって増幅し、制限酵素DraIおよびNcoIで切断した(断片1、配列番号1)。続いて、DraIおよびNcoIで切断したpBHR1を調製し、DNAリガーゼを用いて、前記断片1と連結することで、プラスミドpBHR−SHpro(配列番号2)を得た。
R. eutropha MBH遺伝子(hoxKおよびhoxG)を、MBH_Nco_forプライマー(配列番号26)およびMBH_BstB_rvプライマー(配列番号27)を用いてpHG1から増幅し、制限酵素NcoIで切断し、リン酸化反応を行った(断片2、配列番号3)。また、pBHR−SHproを鋳型として、pBHR4080_rvプライマー(配列番号28)およびSH-promter_Ncoプライマー(配列番号29)を用いてインバースPCRを行い、制限酵素NcoIで切断し、その後リン酸化反応を行った(断片3、配列番号4)。断片2と断片3は、DNAリガーゼを用いて連結して、プラスミドpBHR−MBH(配列番号5)を得た。
pBHR−MBH上のhoxKのC末端に、ストレプタグ(Strep(II)-tag)(Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys:配列番号48)を付加するために、hoxG_stプライマー(配列番号30)およびhoxK_st_rvプライマー(配列番号31)でインバースPCRを行い、リン酸化反応を行った後に連結し、pBHR−MBHst(配列番号6)を完成させた。
ランダム変異を導入したSHプロモーターは、SH_promoter_Draプライマー(配列番号24)およびSH_pro_random_rvプライマー(配列番号32)を用いて、pBHR−MBHstから増幅した断片4(配列番号7)と、SH_pro_10プライマー(配列番号33)およびSH_promoter_Ncoプライマー(配列番号25)を用いてpBHR−MBHstから増幅した断片5(配列番号8)を、プライマーレスPCRで連結して作製した。ランダム変異導入SHプロモーター断片(配列番号9)は、DraIおよびNcoIで切断後、同じ制限酵素で切断したpBHR−MBHstに挿入した。その結果、プラスミドpBHR−MBHst−1(配列番号10)、pBHR−MBHst−7(配列番号11)、pBHR−MBHst−8(配列番号12)、pBHR−MBHst−9(配列番号13)を得た。
各プラスミドのプロモーター領域における変異は、図5に示すとおりである。
2.宿主相同組換え用ベクターの作製
相同組み換え用自殺ベクターpRLMUは、pRL271(GeneBank ACCESSION:L05081、米国、ミシガン州立大学Wolk教授から譲渡を受けた)のエリスロマイシン耐性遺伝子およびクロラムフェニコール耐性遺伝子を、テトラサイリン耐性遺伝子に交換することで作製した。
hoxK−hoxG遺伝子破壊用自殺ベクターpRLMU01は、以下のように作製した。
まず、pHG_hoxK_pRLプライマー(配列番号34)およびpHG_hoxK_Zrvプライマー(配列番号35)を用いて、hoxK配列の一部(断片6、配列番号14)をpHG1から増幅した。また、pHG_hoxZ_Kプライマー(配列番号36)およびpHG_hoxL_pRL_rvプライマー(配列番号37)を用いて、hoxZを含む配列(断片7、配列番号15)をpHG1から増幅した。断片6および断片7は、SacIおよびPstIで処理したpRLMUと混合して、In-fusion kit(タカラバイオ株式会社)を用いて連結することで、pRLMU01(配列番号16)を得た。
hoxK−hoxG遺伝子破壊およびSHプロモーター導入用自殺ベクターpRLMU02は、以下のように作製した。
pHG_hoxK_pRLプライマー(配列番号34)およびpHG_hoxK_SHrvプライマー(配列番号38)を用いて、pHG1からhoxK配列の一部(断片8、配列番号17)を増幅した。pHG_pSH_Kプライマー(配列番号39)およびpHG_SHpro_Zrvプライマー(配列番号40)を用いて、pHG1からSHプロモーター配列を含む配列(断片9、配列番号18)を増幅した。pHG_hoxZ_SHプライマー(配列番号41)およびpHG_hoxL_pRL_rvプライマー(配列番号37)を用いて、pHG1からhoxZを含む配列(断片10、配列番号19)を増幅した。断片8および断片9、断片10は、SacIおよびPstIで処理したpRLMUと混合して、In-fusion kit(タカラバイオ株式会社)を用いて連結することで、pRLMU02(配列番号20)を得た。
hoxK−hoxG−hoxZ遺伝子破壊およびSHプロモーター導入用自殺ベクターpRLMU03は、以下のように作製した。
pHG_hoxK_pRLプライマー(配列番号34)およびpHG_hoxK_SHrvプライマー(配列番号38)を用いて、pHG1から断片8(hoxK配列の一部、配列番号17)を増幅した。pHG_pSH_Kプライマー(配列番号39)およびpHG_SHpro_Mrvプライマー(配列番号42)を用いて、pHG1からSHプロモーター配列を含む配列(断片11、配列番号21)を増幅した。pHG_hoxM_SHプライマー(配列番号43)およびpHG_hoxL_pRL_rvプライマー(配列番号37)を用いて、hoxZの下流に位置するhoxMを含む配列(断片12、配列番号22)を増幅した。断片8および断片11、断片12は、SacIおよびPstIで処理したpRLMUと混合して、In-fusion kit(タカラバイオ株式会社)を用いて連結することで、pRLMU03を得た(配列番号23)。
配列番号1〜23に示す塩基配列の主な特徴について以下に示す。
[配列番号1](pHG1からのSHプロモーター)1番目〜6番目:DraI認識部位/195番目〜262番目:R. eutropha由来のヒドロゲナーゼSHプロモーター(天然型)/280番目〜285番目:NcoI認識部位。
[配列番号2](pBHR−SHpro)603番目〜887番目:配列番号1と同じ塩基配列。
[配列番号3](pHG1からのhoxK+hoxG)1番目〜1083番目:hoxK/1122番目〜2996番目:hoxG/2997番目〜3002番目:BspT認識部位。
[配列番号4](pBHR−SHproからのインバースPCR)1番目〜16番目:pBHR4080_rvプライマー/4703番目〜4708番目:DraI認識部位/4897番目〜4964番目:R. eutropha由来のヒドロゲナーゼSHプロモーター(天然型)/4982番目〜4987番目:NcoI認識部位。
[配列番号5](pBHR−MBH)4703番目〜4708番目:DraI認識部位/4897番目〜4964番目:R. eutropha由来のヒドロゲナーゼSHプロモーター(天然型)/4985番目〜6067番目:hoxK/6106番目〜7980番目:hoxG。
[配列番号6](pBHR−MBHst)4703番目〜4708番目:DraI認識部位/4897番目〜4964番目:R. eutropha由来のヒドロゲナーゼSHプロモーター(天然型)/4985番目〜6100番目:hoxK/6065番目〜6097番目:ストレプタグ/6146番目〜8020番目:hoxG。
[配列番号7](pBHR−MBHstからの変異SHプロモーター)4番目〜9番目:DraI認識部位/198番目〜236番目:変異SHプロモーター/200番目(変異):c→h/203番目(変異):a→w/207番目(変異):g→v/208番目(変異):g→v/219番目(変異):g→v/223番目(変異):t→n。
[配列番号8](pBHR−MBHstからの変異SHプロモーター)1番目〜42番目:変異SHプロモーター/60番目〜65番目:NcoI認識部位。
[配列番号9](pBHR−MBHstからの変異SHプロモーター)1番目〜6番目:DraI認識部位/195番目〜262番目:変異SHプロモーター/197番目(変異):c→h/200番目(変異):a→w/204番目(変異):g→v/205番目(変異):g→v/216番目(変異):g→v/220番目(変異):t→n/280番目〜285番目:NcoI認識部位。
[配列番号10](pBHR−MBHst−1)4703番目〜4708番目:DraI認識部位/4897番目〜4964番目:改変SHプロモーター1/4906番目(変異):g→a/4918番目(変異):g→c/4922番目(変異):t→c/4936番目(変異):g→a/4959番目(変異):c→t/4985番目〜6100番目:hoxK/6065番目〜6097番目:ストレプタグ/6146番目〜8020番目:hoxG。
なお、各塩基を示す記号は、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)に従った。例えば、wはアデニンまたはチミンを、rはアデニンまたはグアニンを、mはアデニンまたはシトシンを、kはチミンまたはグアニンを、yはチミンまたはシトシンを、sはグアニンまたはシトシンを、hはアデニン、シトシンンまたはチミンを、bはグアニン、シトシンまたはチミンを、vはアデニン、グアニンまたはシトシンを、dはアデニン、グアニンまたはチミンを、nはアデニン、グアニン、シトシンまたはチミンをそれぞれ表す。
[配列番号11](pBHR−MBHst−7)4703番目〜4708番目:DraI認識部位/4897番目〜4964番目:改変SHプロモーター7/4907番目(変異):g→a/4918番目(変異):g→a/4922番目(変異):t→c/4985番目〜6100番目:hoxK/6065番目〜6097番目:ストレプタグ/6146番目〜8020番目:hoxG。
[配列番号12](pBHR−MBHst−8)4703番目〜4708番目:DraI認識部位/4897番目〜4964番目:改変SHプロモーター8/4902番目(変異):a→t/4907番目(変異):g→c/4922番目(変異):t→c/4936番目(変異):g→a/4985番目〜6100番目:hoxK/6065番目〜6097番目:ストレプタグ/6146番目〜8020番目:hoxG。
[配列番号13](pBHR−MBHst−9)4703番目〜4708番目:DraI認識部位/4897番目〜4964番目:改変SHプロモーター9/4906番目(変異):c→g/4907番目(変異):c→g/4918番目(変異):g→a/4922番目(変異):t→c/4936番目(変異):g→a/4985番目〜6100番目:hoxK/6065番目〜6097番目:ストレプタグ/6146番目〜8020番目:hoxG。
[配列番号14](pHG1からのhoxKの一部)1番目〜44番目:pHG_hoxK_pRLプライマー/21番目〜566番目:hoxKの一部/548番目〜573番目:pHG_hoxK_Zrvプライマー。
[配列番号15](pHG1からのhoxZ)1番目〜26番目:pHG_hoxZ_Kプライマー/77番目〜811番目:hoxZ/1201番目〜1809番目:hoxM/1828番目〜1865番目:pHG_hoxL_pRL_rvプライマー。
[配列番号16](pRLMU−01)1番目〜41番目:pHG_hoxK_pRLプライマー/21番目〜566番目:hoxKの一部/559番目〜573番目:in fusionサイト/635番目〜1369番目:hoxZ/1759番目〜2367番目:hoxM/2386番目〜2423番目:pHG_hoxL_pRL_rvプライマー。
[配列番号17](pHG1からのhoxKの一部)1番目〜44番目:pHG_hoxK_pRLプライマー/21番目〜566番目:hoxKの一部/548番目〜574番目:pHG_hoxK_SHrvプライマー。
[配列番号18](pHG1からのSHプロモーター)1番目〜26番目:pHG_pSH_Kプライマー/223番目〜290番目:R. eutropha由来のヒドロゲナーゼSHプロモーター(天然型)/294番目〜315番目:pHG_SHpro_Zrvプライマー。
[配列番号19](pHG1からのhoxZ)1番目〜41番目:pHG_hoxZ_SHプライマー/77番目〜811番目:hoxZ/1201番目〜1809番目:hoxM/1828番目〜1865番目:pHG_hoxL_pRL_rvプライマー。
[配列番号20](pRLMU−02)1番目〜44番目:pHG_hoxK_pRLプライマー/21番目〜566番目:hoxKの一部/559番目〜574番目:in fusionサイト/781番目〜848番目:R. eutropha由来のヒドロゲナーゼSHプロモーター(天然型)/859番目〜874番目:in fusionサイト/936番目〜1670番目:hoxZ/2060番目〜2668番目:hoxM/2687番目〜2724番目:pHG_hoxL_pRL_rvプライマー。
[配列番号21](pHG1からのSHプロモーター)1番目〜26番目:pHG_pSH_Kプライマー/29番目〜34番目:DraI認識部位/223番目〜290番目:R. eutropha由来のヒドロゲナーゼSHプロモーター(天然型)/294番目〜321番目:pHG_SHpro_Mrvプライマー。
[配列番号22](pHG1からのhoxZの一部)1番目〜26番目:pHG_hoxM_SHプライマー/5番目〜613番目:hoxM/632番目〜669番目:pHG_hoxL_pRL_rvプライマー。
[配列番号23](pRLMU−03)1番目〜44番目:pHG_hoxK_pRLプライマー/21番目〜566番目:hoxKの一部/559番目〜574番目:in fusionサイト/781番目〜848番目:R. eutropha由来のヒドロゲナーゼSHプロモーター(天然型)/859番目〜874番目:in fusionサイト/868番目〜1476番目:hoxM/1495番目〜1532番目:pHG_hoxL_pRL_rvプライマー。
なお、pRLMU01、pRLMU02およびpRLMU03の作製に用いた各プライマーの塩基配列は、次表のとおりである。
3.培地の調製
LB寒天培地は、LB培地(ナカライテスク株式会社)12.5g、寒天末(ナカライテスク株式会社)7.5g、イオン交換水500mlを混合し、オートクレーブ後、シャーレに分注して、固化させるという操作によって調製した。
LB培地(液体)は、LB培地(ナカライテスク株式会社)20gとイオン交換水1000mlを混合し、オートクレーブすることで作製した。
SOC培地(液体)は、Bacto Tryptone 20g、Yeast Extract 5g、5M NaCl 2ml、2M KCl 1.25mlおよびイオン交換水990mlを混合し、オートクレーブ後、さらに2M Mg solution(1M MgSO・7HO+1M MgCl・6HO)を10mlおよび2Mグルコース溶液10mlを加えて、調製した。
FN(+)、FN(−)、FNG(+)、およびFNG(−)の調製には、以下のストック液を用いた。
・10x H16 buffer(pH7):NaHPO・12HO(ナカライテスク株式会社)90g、KHPO(ナカライテスク株式会社)15gをイオン交換水に溶解し、pHを7に調節した後に、イオン交換水を加えて容量を1000mlに合わせた。
・MgSO・7HO stock:MgSO・7HO(ナカライテスク株式会社)20gをイオン交換水100mlに溶解させた後に、ポアサイズ0.2μmのフィルターに通した。
・FeCl・6HO stock:FeCl・6HO(ナカライテスク株式会社)0.5gをイオン交換水100mlに溶解させた後に、ポアサイズ0.2μmのフィルターに通した。
・NHCl stock:NHCl(ナカライテスク株式会社)20gをイオン交換水100mlに溶解させた後に、ポアサイズ0.2μmのフィルターに通した。
・CaCl stock:CaCl(ナカライテスク株式会社)1gをイオン交換水100mlに溶解させた後に、ポアサイズ0.2μmのフィルターに通した。
・NiCl・6HO stock:NiCl・6HO(ナカライテスク株式会社)23.77gをイオン交換水100mlに溶解させた後に、ポアサイズ0.2μmのフィルターに通した。
FN(+)は、10x H16 buffer 50ml、MgSO・7HO stock 0.5ml、FeCl・6HO stock 0.5ml、NHCl stock 5ml、CaCl stock 0.5ml、NiCl・6HO stock 0.4mlを混合後、イオン交換水を加えて容量を250mlに合わせてオートクレーブした後に、ポアサイズ0.2μmのフィルターに通した40%Fructose(ナカライテスク株式会社)5mlを添加して、調製した。
FN(−)は、40%Fructoseを添加しない以外は、FN(+)と同様に作製した。
FNG(+)は、40%Fructose 5mlを添加する代わりに、40%Fructose 2.5mlと40%Glycerol(ナカライテスク株式会社)2.5mlを添加する以外は、FN(+)と同様に作製した。
FNG(−)は、40%Fructose 5mlを添加する代わりに、40%Glycerol 5mlを添加する以外は、FN(+)と同様に作製した。
4.R. eutropha MBH遺伝子破壊株の作製
MBHの構造遺伝子であるhoxK遺伝子とhoxG遺伝子を破壊したR. eutropha(HMU1株)を作製するために、hoxK−hoxG遺伝子破壊用自殺ベクターpRLMU01を以下のように、HF574株に導入した。
まず、大腸菌S17−1株(ATCC47055)をpRLMU01で形質転換した大腸菌S17−1株を、15μg/mlのテトラサイクリンを含んだLB培地で一晩37℃で培養した。また、HF574株をNB培地で一晩37℃で培養した。それぞれを回収した後、FN(+)で洗浄し、混合後、LB寒天培地にスポットして、一晩培養した。その後、混合菌体を寒天培地上からかきとり、FN(+)液体培地に懸濁し、15μg/mlテトラサイクリンを含んだFN(+)寒天培地に播種した。2日間、37℃で培養後、出現したコロニーを15%スクロース入りのLB寒天培地にさらに植菌した。約2日間37℃で培養後、出現したいくつかのコロニーの遺伝子解析の結果、設計とおりの配列を有することが確認できたクローンをHMU1株とした。
なお、R. eutropha SH遺伝子破壊株HF574(掲載論文: J BiolInorg Chem (2002) 7,897-908)およびR. eutrophaへの接合によるプラスミド導入に用いた大腸菌S17株(掲載論文: J BiolInorg Chem (2002) 7,897-908)、American Type Culture Collection (ATCC):47055)は、ドイツ・フンボルト大学Friedrich教授から譲渡を受けた。SH遺伝子破壊株HF574は、膜結合型ヒドロゲナーゼ(MBH)を有していることからこれをポジティブコントロール(DSH)として使用した。
pRLMU01に代えてpRLMU02を用いた以外は、HMU1株の作製と同様に、hoxK遺伝子とhoxG遺伝子を破壊し、SHプロモーターを付加したR. eutropha(HMU2株)を作製し、単離した。
pRLMU01に代えてpRLMU03を用いた以外は、HMU1株の作製と同様に、hoxK、hoxGおよびhoxZ遺伝子を破壊し、SHプロモーターを付加したR. eutropha(HMU3株)を作製し、単離した。
作製したR. eutropha MBH遺伝子破壊株HMU1〜3株は、次表のとおりである。
5.pBR−MBHstによるR. eutropha MBH遺伝子破壊株の形質転換
R. eutropha MBH遺伝子破壊株(HMU1〜3株)のエレクトロコンピテントセルを以下のように作製した。
まず、3mlのFNG(+)培地にHMU1〜3株を植菌し、37℃で培養した。12時間後、2mlの培養液を48mlの新しいFNG(+)培地に加えてさらに、30℃で培養した。2時間後、4℃で遠心分離を行うことで菌体を回収し、よく冷やした滅菌済0.3Mスクロースでよく洗浄した。最終的に、600nmのODが5になるように、よく冷やした滅菌済0.3Mスクロースで希釈し、分注後、使用するまで−80℃で保存した。
R. eutropha MBH遺伝子破壊株(HMU1〜3株)のエレクトロコンピテントセルは、氷上で融解した後に、プラスミド溶液(100μg/ml以上、1μl)を加えて、2500Vの電圧で電気パルスを加え、直ちにSOC培地に懸濁し、30℃で1時間インキュベートし、200μg/mlカナマイシンを含んだFN(+)寒天培地に播種した。その結果、約2日間37℃で培養することで、形質転換体を得た。
6.形質転換体の培養
形質転換体は、まず50mlの200μg/mlカナマイシンを含んだFNG(+)培地に植菌し、37℃で大気下で培養した。続いて、それぞれをFNG(−)培地もしくはFN(−)培地で培地交換し、600nmのODが3になるように、濃度を調節した。FNG(−)培地については、大気条件下もしくは水素:酸素:二酸化炭素=8:1:1の混合気体下で30℃で培養を行った。FN(−)培地については、水素:酸素:二酸化炭素=8:1:1の混合気体下で30℃で培養を行った。それぞれ、600nmのODが約9に達した時点で、菌体を回収した。
7.転写量の定量
ヒドロゲナーゼ構造遺伝子(hoxK)とヒドロゲナーゼアクセサリー遺伝子(hoxM)の転写量は、菌体から抽出したRNAサンプルを逆転写することで調製したcDNAを鋳型としたリアルタイムPCRによって、定量した。
菌体からRNA抽出は、以下のように作製した試薬を用いて行った。
・変性バッファー:146.5mlイオン交換水に、125gグアニジンチオシアネート、8.8ml 0.75Mクエン酸ナトリウム(pH7.0)、13.2ml 10%サルコシル(sarcosyl)を加え、60℃に温めて溶解させて調製した。
・トリゾール溶液:10ml 変性バッファー、0.07ml 2−メルカプトエタノール、1ml 2M酢酸ナトリウム、10ml水飽和フェノールを混合して、調製した。
菌体からRNA抽出は、以下のような手順で行った。
まず、菌体サンプル(スパシュラ小一杯)を、1mlトリゾール溶液でよく懸濁した。続いて、100μlクロロホルム/イソアミルアルコール49:1混合液を加えてよく懸濁し、氷上で15分間静置した。4℃、15000rpmで15分間遠心分離を行った後に、上層の水層を新しい1.5mlチューブに回収した。水層に等量のイソプロパノール約500μlを加え、室温で10分静置した。4℃、15000rpmで20分間遠心分離を行った後に、上清を捨て、沈殿物に500μl 75%エタノールを加えて、ボルテックスを行った。4℃ 15000rpmで10分間遠心分離を行った後に、上清を捨て、5〜10分間自然乾燥させた。沈殿物を50μl DEPC処理水を加えて溶解させて、使用時まで−80℃で保存した。
RNAサンプルの逆転写反応は、ReverTra Ace(東洋紡株式会社)のを用いて行った。
リアルタイムPCRは、反応試薬にTHUNDERBIRD Probe qPCR Mix(東洋紡株式会社)を用い、リアルタイムPCR装置にThermal Cycler Dice Real Time System(タカラバイオ株式会社)を用いて行った。hoxK増幅用プライマーは、pHG_hoxK_RT_PCR_F3 (CCATTATCTCCTGGGGTTCC(配列番号44))およびpHG_hoxK_RT_PCR_R3(CCTTGATAATCGGCTTGTCG(配列番号45))、hoxM増幅用プライマーは、pHG_hoxM_RT_PCR_F1(CAGGTATGCCTGGTCGACGG(配列番号46))およびpHG_hoxM_RT_PCR_R1(GGCCATAGTCGATCGCATCG(配列番号47))を用いた。
8.ヒドロゲナーゼ活性測定
ヒドロゲナーゼ活性は、細胞破砕液中のヒドロゲナーゼ活性による水素依存的ベンジルビオローゲン還元速度、またはNative−PAGEで分離した細胞破砕液の活性染色により評価した。活性染色は、目視により優れた方から◎、○、△、×の4段階で評価した。なお、−は、測定未実施を表す。
ベンジルビオローゲン還元測定は、以下のとおり行った。
菌体ペレット40mgを1ml Tris−HCL(pH7.6)に懸濁し、MISONIX社(Misonix, Inc.)の超音波破砕機Microson XL2000を用いて、12Wで40秒間細胞を破壊した。その一方で、吸光度測定用セルに、2mlの反応液(50mM Tris−HCl(pH7.6)、1.5mMベンジルビオローゲン)を入れ、水素ガスを20分間以上バブリングし、そこに10μlの細胞破砕液を投入し、UV-1800 UV SPECTROPHOTOMETER(株式会社島津製作所)で、604nm波長で吸光度変化を測定した。
Native−PAGEと活性染色は、以下のとおり行った。
Native−PAGEゲルは、4.5mlイオン交換水、3.8ml 30%Acrylamide(ナカライテスク株式会社)、2.8ml 1.5M Tris−HCl(pH8.8)、0.11ml 1%TritonX−100を混合し、テトラメチルエチレンジアミンと過硫酸アンモニウムで重合を開始させて作製した。泳動バッファーは、3gトリスヒドロキシメチルアミノメタン、14.4gグリシン、1ml TritonX−100をイオン交換水に溶解させ、pHを8.3に調節後、容量を1Lに合わせて、調製した。電気泳動は、ゲル一枚につき20mAの定電流で、4℃のコールドルーム内で行った。泳動後は、ゲルを活性染色液(50mM Tris−HCl(pH7.6)、2mMベンジルビオローゲン、2mMニトロブルーテトラゾリウム(NiroBlue tetrazolium)、0.1%TritonX−100)に浸して、水素ガス雰囲気下に数時間置くことで、ヒドロゲナーゼの活性によるニトロブルーテトラゾリウムの還元と色素沈着によって形成されたバンドを写真撮影した。
9.活性評価および転写量比較
<活性評価>
プラスミド(pBHR−MBHst、pBHR−MBHst−7、pBHR−MBHst−8、pBHR−MBHst−9)と宿主(HMU1、HMU2、HMU3)を組み合わせた発現系において、3種類の培養条件(大気下でのFNG(−)培地、水素:酸素:二酸化炭素=8:1:1の混合気体下でのFN(−)培地におけるヒドロゲナーゼ活性を比較した。
大気下でのFNG(−)培地を用いた培養では、HMU1とpBHR−MBHst−9、HMU2とpBHR−MBHst、およびHMU3とpBHR−MBHstの組み合わせにおいて、有意なヒドロゲナーゼ活性が観測された(図6)。
また、水素:酸素:二酸化炭素=8:1:1の混合気体下でのFNG(−)培地を用いた培養では、HMU1とpBHR−MBHst、HMU2とpBHR−MBHst、およびHMU3とpBHR−MBHstの組み合わせにおいて、有意なヒドロゲナーゼ活性が観測された。
また、水素:酸素:二酸化炭素=8:1:1の混合気体下でのFN(−)培地を用いた培養では、HMU1とpBHR−MBHst、およびHMU2とpBHR−MBHstの組み合わせにおいて、有意なヒドロゲナーゼ活性が観測された(図7)。
上記ベンジルビオローゲン還元測定を行った後、さらにいくつかは、Native−PAGE後の活性染色(図8)をおこなった。HMU1とpBHR−MBHst−9、HMU2とpBHR−MBHstの組み合わせを、大気下でFNG(−)培地を用いて培養した場合、並びに、HMU1とpBHR−MBHst、HMU2とpBHR−MBHstの組み合わせを水素:酸素:二酸化炭素=8:1:1の混合気体下でFN(−)培地を用いて培養した場合に、有意なヒドロゲナーゼ活性が観測された。
Native−PAGEゲルの活性染色によるヒドロゲナーゼ活性評価では、HMU3株を用いた場合、pBHR−MBHstとの組み合わせを大気下でFNG(−)培地を用いて培養した場合においてのみ、わずかな活性が観察された。HMU3株は、R. eutropha MBHの膜結合ドメインであるHoxZ蛋白質を欠如しているために、蛋白質の安定性が低下し、電気泳動の間に変性したと考えられる。
<転写量比較>
リアルタイムPCRによるプラスミド由来ヒドロゲナーゼ構造遺伝子(hoxK)と、ヒドロゲナーゼアクセサリー遺伝子の一つであり宿主pHG1由来のhoxMの転写量比較を図10〜12に示す。それぞれの値は、16rsRNAの転写量を100とした場合の相対量をあらわす。
培養条件、活性染色の結果、および転写量の結果をまとめると、次表のとおりであった。なお、転写量は、mRNAのコピー数を指しており、宿主菌の16srRNAを100としたときの値を示している。
活性評価の結果と合わせて考察すると、ヒドロゲナーゼ構造遺伝子(hoxK)とアクセサリー遺伝子の転写量(hoxM)の比率を適切に調節することが、十分な活性を有するヒドロゲナーゼ発現につながることが明らかとなった。つまり、ヒドロゲナーゼ構造遺伝子ばかりが発現すると、発現したヒドロゲナーゼは未成熟なままであり、十分な活性を有さないこととなる。これに対し、アクセサリー遺伝子の転写量も適切に調節することで、十分な活性を有するヒドロゲナーゼを大量に得ることができる。
[NiFe]−ヒドロゲナーゼ、とくに膜結合型ヒドロゲナーゼ(MBH)は、PSIや光触媒、電極と組み合わせた水素生産や、燃料電池への応用が期待されているものの、ランダムライブラリ作製可能な宿主ベクター系による発現系がこれまで報告されていなかった。本発明によると、宿主として、SHとMBH遺伝子を破壊したR. eutrophaを用い、ベクターとして、MBH遺伝子(hoxKおよびhoxG)を挿入したプラスミドpBHR1に用いることで、初めてランダムライブラリ作製可能な発現系を構築できる。pBHR1は、比較的小型な広宿主域ベクター(〜5kbp)であり、MBH遺伝子を含めても8kbpというサイズであるために、遺伝子操作が容易である。また、電気穿孔法によって効率的な形質転換が可能であるために。このことから、ランダムライブラリ作製期間を2〜3日程度に大きく短縮することができる。よって、本発明によって、ヒドロゲナーゼの水素生産技術や燃料電池への応用研究を大きく前進させることができる。

Claims (17)

  1. ゲノム中もしくは天然株が有するプラスミド中の[NiFe]−ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群において、[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子の全部または一部が欠損している宿主菌、および、前記欠損した[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子を有するベクターを含む、[NiFe]−ヒドロゲナーゼの発現システム。
  2. [NiFe]−ヒドロゲナーゼが、膜結合型ヒドロゲナーゼ(MBH)である、請求項1に記載の発現システム。
  3. [NiFe]−ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群が、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来である、請求項1または2に記載の発現システム。
  4. 宿主菌が、ラルストニア・ユートロファである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発現システム。
  5. 宿主菌の、hoxK、hoxGおよびhoxZからなる[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子の全部または一部が欠損している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発現システム。
  6. 宿主菌のhoxKおよびhoxGが欠損している、請求項5に記載の発現システム。
  7. 宿主菌が、[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターを2つ有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発現システム。
  8. [NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターが、R. eutropha由来のヒドロゲナーゼSHプロモーター(天然型)(配列番号1に記載の塩基配列の195番目〜262目番)である、請求項7に記載の発現システム。
  9. ベクターのプロモーターが、R. eutropha由来のヒドロゲナーゼSHプロモーター(天然型)(配列番号1に記載の塩基配列の195番目〜262目番)、改変SHプロモーター1(配列番号10に記載の塩基配列の4897番目〜4964番目)、改変SHプロモーター7(配列番号11に記載の塩基配列の4897番目〜4964番目)、改変SHプロモーター8(配列番号12に記載の塩基配列の4897番目〜4964番目)または改変SHプロモーター9(配列番号13に記載の塩基配列の4897番目〜4964番目)である、請求項8に記載の発現システム。
  10. ベクターの[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子のmRNAの転写量と宿主菌の[NiFe]−ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群のmRNAの転写量との比が、4:1〜1:15である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の発現システム。
  11. ベクターの[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子のmRNAの転写量と宿主菌の[NiFe]−ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群のmRNAの転写量との比が、1:2〜1:3である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の発現システム。
  12. 宿主菌の16srRNAの転写量を100としたときに、ベクターの[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子のmRNAの転写量、および宿主菌の[NiFe]−ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群のmRNAの転写量がともに0.5以上である、請求項10または11に記載の発現システム。
  13. ベクターが、pBHR−MBHst(配列番号6)、プラスミドpBHR−MBHst−1(配列番号10)、pBHR−MBHst−7(配列番号11)、pBHR−MBHst−8(配列番号12)またはpBHR−MBHst−9(配列番号13)である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の発現システム。
  14. ゲノム中の[NiFe]−ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群において、hoxKおよびhoxGが欠損しているラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)。
  15. pBHR−MBHst(配列番号6)、プラスミドpBHR−MBHst−1(配列番号10)、pBHR−MBHst−7(配列番号11)、pBHR−MBHst−8(配列番号12)またはpBHR−MBHst−9(配列番号13)である発現ベクター。
  16. 請求項1〜13のいずれか一項に記載の発現システムを用いた、[NiFe]−ヒドロゲナーゼの製造方法。
  17. [NiFe]−ヒドロゲナーゼの製造方法であって、
    (1)ゲノム中の[NiFe]−ヒドロゲナーゼを発現するための遺伝子群において、hoxK、hoxGおよびhoxZからなる[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子の全部または一部が欠損しているラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)を調製する工程、
    (2)前記欠損した[NiFe]−ヒドロゲナーゼ遺伝子を有するベクターを調製する工程、
    を含み、前記(1)で調製したラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)に、前記(2)で調製したベクターを導入した場合に、ベクターのmRNAの転写量と宿主菌の遺伝子群のmRNAの転写量との比が、4:1〜1:15となるように、宿主菌のプロモーターおよび/またはベクターのプロモーターを改変されていることを特徴とする、前記製造方法。
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