JP2015103861A - 歪補償装置、増幅装置及び無線通信装置 - Google Patents

歪補償装置、増幅装置及び無線通信装置 Download PDF

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Abstract

【課題】より低コスト化が可能となる歪補償装置、増幅装置及び無線通信装置を提供する。【解決手段】 歪補償装置14は、信号xを増幅する増幅器2の歪補償を行う歪補償部3と、増幅器2が出力する出力信号yをAD変換して歪補償部3に与えるAD変換器11と、を備えている。AD変換器11は、増幅器2に与えられる信号をDA変換するDA変換器4のサンプリングレートよりも低い低サンプリングレートで、出力信号yをAD変換する。歪補償部3は、信号xと、低サンプリングレートでAD変換された出力信号yとに基づいて歪補償を行う。【選択図】図1

Description

本発明は、歪補償装置、増幅装置、及び無線通信装置に関するものである。
近年、携帯電話等に用いられる無線通信システムにおいては、LTE(Long Term Evolution)等の高速かつ広帯域な通信方式が普及しつつある(例えば、特許文献1参照)。
特開2010−219818
上記LTEでは、システムの利用帯域が最大で20MHz程度であったが、LTEの後継システムであるLTE−A(Advanced)では、システムの利用帯域が100MHz程度にまで拡張されることが予定されている。
このため、上記無線通信システムに用いられる基地局装置の増幅装置においても、広帯域化に対応する必要があり、広帯域化に伴う部品コストの増加が懸念される。
その一方、上記LTE−Aでは、通信容量の増加を目的としてスモールセルが積極的に導入されるため、このスモールセルに対応した小型基地局装置に用いる増幅装置として、低コストな増幅装置が求められている。
上記スモールセルに対応した小型基地局装置用の増幅装置では、LTE−Aの採用による広帯域化によって部品コストの増加が懸念されているにも関わらず、さらなる低コスト化が求められているという問題を有している。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、より低コスト化が可能な増幅装置及び無線通信装置を提供することを目的とする。
本発明に係る歪補償装置は、入力信号を増幅する増幅器の歪補償を行う歪補償部と、前記増幅器が出力する出力信号をAD変換して前記歪補償部に与えるAD変換器と、を備え、前記AD変換器は、前記増幅器に与えられる信号をDA変換する際のサンプリングレートよりも低い低サンプリングレートで、前記出力信号をAD変換し、前記歪補償部は、前記入力信号と、前記低サンプリングレートでAD変換された前記出力信号とに基づいて歪補償を行う。
また、本発明に係る増幅装置は、増幅器と、上記歪補償装置と、を備えている。
また、本発明に係る無線通信装置は、上記増幅装置を通信信号の増幅のために備えている。
本発明の歪補償装置、増幅装置及び無線通信装置によれば、より低コスト化が可能となる。
実施形態に係る増幅装置を備えた無線通信装置の要部を示すブロック図である。 第1実施形態に係る遅延処理部が行う遅延調整処理の手順を示すフローチャートである。 第1実施形態の遅延処理部が動作を開始した直後から遅延誤差推定値を反復して演算した場合についてシミュレーションを行い、得られた結果の一例を示したグラフである。 第2実施形態に係る遅延処理部が行う遅延調整を行う処理の手順を示すフローチャートである。 図4中、遅延調整処理の手順を示すフローチャートである。 第2実施形態の遅延処理部が遅延調整処理を行った場合についてシミュレーションを行い、得られた結果の一例を示したグラフである。 第2実施形態の変形例に係る無線通信装置の要部を示すブロック図である。 他の実施形態に係る増幅装置によって増幅したOFDM信号の周波数スペクトルの一例を示す図である。 第1実施形態に係る増幅装置によって増幅したOFDM信号の周波数スペクトルの一例を示す図である。 第2実施形態に係る増幅装置によって増幅したOFDM信号の周波数スペクトルの一例を示す図である。
[本願発明の実施形態の説明]
無線通信システムの無線通信装置等に用いられる増幅装置は、一般に、デジタル信号処理によって増幅器の歪補償を行う歪補償装置を備えている。この歪補償装置は、増幅器が出力したアナログの出力信号を帰還信号として取得するため、アナログの出力信号をデジタルの信号に変換するAD変換器を備えている。このAD変換器は、変換する出力信号の帯域幅が大きくなれば、それに応じてよりサンプリングレートの高いものを用いなければならず、無線信号の広帯域化によってAD変換器のコストが増加する可能性がある。
本願発明者は、この点に着目して本願発明を完成させた。
まず最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本発明の一実施形態である歪補償装置は、入力信号を増幅する増幅器の歪補償を行う歪補償部と、前記増幅器が出力する出力信号をAD変換して前記歪補償部に与えるAD変換器と、を備え、前記AD変換器は、前記増幅器に与えられる信号をDA変換する際のサンプリングレートよりも低い低サンプリングレートで、前記出力信号をAD変換し、前記歪補償部は、前記入力信号と、前記低サンプリングレートでAD変換された前記出力信号とに基づいて歪補償を行う。
上記のように構成された歪補償装置によれば、AD変換器が、増幅器に与えられる信号をDA変換する際のサンプリングレートよりも低い低サンプリングレートで、出力信号をAD変換し、歪補償部は、入力信号と、低サンプリングレートでAD変換された出力信号とに基づいて歪補償を行うので、広帯域の信号を処理する場合にも、その広帯域の信号に応じてより高いサンプリングレートのAD変換器を用いる必要がないので、低コスト化が可能となる。
(2)出力信号のサンプル数は、低サンプリングレートでAD変換されることで、DA変換する際のサンプリングレートと同じサンプリングレートでAD変換する場合よりも相対的に少ない場合がある。このため、前記歪補償部は、前記入力信号と、前記低サンプリングレートでAD変換された前記出力信号とに基づいて前記増幅器のモデルを推定し、このモデルに基づいて歪補償を行うことが好ましい。
この場合、出力信号が低サンプリングレートであるとしても、その分観測期間を延ばすことにより、精度を低下させることなく歪補償を行うことができる。
(3)上記歪補償装置が、前記増幅器と前記AD変換器との間に接続されているフィルタをさらに備えている場合には、前記フィルタの通過帯域幅が、前記入力信号の周波数帯域幅以上に設定されていることが好ましい。
この場合、フィルタの通過帯域幅は、AD変換器のサンプリングレートである低サンプリングレートよりも大きくなるため、出力信号の内、低サンプリングレートによって取得される帯域の信号成分だけでなくその信号成分の周辺帯域の信号も折り返し成分としてAD変換器に与えられる。これによって、AD変換器は、低サンプリングレートによって取得される帯域の信号成分の他、その信号成分の周辺帯域の信号も折り返し成分として取得することができる。
これにより、出力信号に生じる歪によって発生する信号成分であって、出力信号の隣接帯域に現れる信号成分の情報を失うことなく取得することができるため、精度を低下させることなく歪補償を行うことができる。
(4)上記歪補償装置において、前記低サンプリングレートでAD変換された前記出力信号のタイミングと、前記入力信号のタイミングとの間に生じる遅延誤差を、前記低サンプリングレートに対応する周期の長さよりも小さい期間の単位で推定し補正する遅延処理部をさらに備えていることが好ましい。
この場合、出力信号を低サンプリングレートでAD変換したにも関わらず、低サンプリングレートに対応する周期の長さよりも小さい期間の単位で遅延誤差を推定することができるので、低サンプリングレートに対応する周期の長さよりも細かい精度で、より精度よく遅延誤差を補正することができる。
(5)また、上記歪補償装置において、前記遅延処理部は、前記遅延誤差の推定値を、互いに異なる複数の所定期間ごとに求め、前記複数の所定期間ごとの各遅延誤差の推定値から求められる代表値を、前記遅延誤差の推定値として求めてもよい。
この場合、遅延誤差の真値は、経時的に大きく変動しないので、複数の所定期間ごとの各遅延誤差の推定値にばらつきが生じたとしても、各遅延誤差の推定値から代表値を求めれば、AD変換器のサンプリングレートに対応する周期の長さよりも小さい期間の単位で遅延誤差の推定値を求めることができ、この結果、より精度よく遅延誤差を求めることができる。
(6)(7)上記歪補償装置において、前記遅延処理部は、前記遅延誤差を所定の単位時間ずつ変化させるとともに、前記遅延誤差を前記所定の単位時間ずつ変化させる毎に、前記遅延誤差を変化させた後の前記出力信号と、前記入力信号との間の残差を求め、前記所定の単位時間ずつ変化させた各遅延誤差の中から、前記残差の大きさに基づいて、前記遅延誤差の推定値を決定してもよい。
この場合、単位時間の単位で遅延誤差の推定値を求めることができる。
このため、前記所定の単位時間は、前記低サンプリングレートに対応する周期の長さよりも短い時間であることが好ましい。
これにより、低サンプリングレートに対応する周期の長さよりも小さい期間の単位で遅延誤差の推定値を求めることができ、より精度よく遅延誤差の推定値を求めることができる。
(8)遅延処理部は、デジタル処理によって、出力信号のタイミングと、入力信号のタイミングとの間の遅延誤差を変化させることもできるが、前記AD変換器に与えられる動作クロックの位相を調整することによって、前記出力信号のタイミングを調整し、前記遅延誤差を変化させることもできる。
この場合、遅延処理部は、アナログ処理によって、出力信号のタイミングと、入力信号のタイミングとの間の遅延誤差を変化させることができ、遅延処理部の負荷を軽減することとができる。
(9)また、上記歪補償装置において、歪補償部が歪補償を行う際に生じる遅延があると、遅延処理部が求める、出力信号のタイミングと、入力信号のタイミングとの間に生じる遅延誤差の推定値の精度が低下するおそれが生じる。
このため、前記歪補償部は、前記入力信号に対して歪補償を行った補償信号を前記増幅器に与えるように構成され、前記遅延処理部は、前記入力信号のタイミングと、前記補償信号のタイミングとの間に生じる遅延誤差を補正することが好ましい。
この場合、遅延処理部は、入力信号のタイミングと、補償信号のタイミングとの間に生じる遅延誤差を補正することができる。これにより、歪補償の際に生じる遅延が、出力信号のタイミングと、入力信号のタイミングとの間に生じる遅延誤差の推定値の精度に与える影響を抑制することができる。
(10)上記歪補償装置において、前記低サンプリングレートは、入力信号の周波数帯域幅よりも低く設定されていてもよく、この場合、低サンプリングレートをより低い値に設定することができ、低コスト化により有利である。
(11)上記歪補償装置において、前記フィルタの通過帯域幅は、前記増幅器が前記入力信号を増幅したことによって前記出力信号に生じる歪成分の周波数帯域幅以上に設定されていてもよく、この場合、出力信号に生じる歪によって発生する信号成分であって、出力信号の隣接帯域に現れる信号成分の情報をより効果的に取得することができる。
(12)また、本発明の一実施形態である増幅装置は、増幅器と、上記(1)に記載の歪補償装置と、を備えている。
(13)また、本発明の他の実施形態である無線通信装置は、上記(12)に記載の増幅装置を通信信号の増幅のために備えている。
上記構成の増幅装置及び無線通信装置によれば、歪補償装置において、広帯域の信号を処理する場合にも、その広帯域の信号に応じてより高いサンプリングレートのAD変換器を用いる必要がないので、低コスト化が可能となる。
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
〔1. 無線通信装置の要部構成〕
図1は、実施形態に係る増幅装置を備えた無線通信装置の要部を示すブロック図である。図中、無線通信装置は、無線信号として送信される送信信号の増幅を行うための増幅装置1を備えている。なお、この増幅装置1は、受信信号の増幅に用いても良い。
増幅装置1は、高出力増幅器(HPA、以下、単に増幅器ともいう)2と、歪補償部3とを備えている。
歪補償部3は、デジタル信号として与えられる送信信号である信号xに対して、デジタル信号処理による歪補償処理を行う機能を有している。歪補償部3は、歪補償処理によって、補償信号uを出力する。
歪補償部3と、増幅器2の信号入力端との間には、デジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換器(DAC)4と、アップコンバータ5とが接続されている。
歪補償部3が出力する補償信号uは、DAC4に与えられることでアナログ信号に変換され、さらに、アップコンバータ5によって発振器6が生成する無線周波数のローカル信号が乗算されることにより無線周波数にアップコンバートされた後、増幅器2に与えられる。
増幅器2は、入力される補償信号uを増幅する。増幅器2の信号出力端には、アンテナ7が接続されており、増幅器2が出力する出力信号yは、無線送信信号としてアンテナ7から放射される。
増幅器2の信号出力端と、歪補償部3との間には、増幅器2が出力する出力信号yを得るためのカプラ8と、ダウンコンバータ9と、フィルタ部10と、AD変換器11とが接続されている。
カプラ8から得られる増幅器2の出力信号yは、ダウンコンバータ9に与えられる。
出力信号yは、ダウンコンバータ9によって発振器6が生成するベースバンドの周波数のローカル信号が乗算されることによりベースバンド周波数にダウンコンバートされた後、フィルタ部10を介してAD変換器(ADC)11に与えられる。
ADC11は、DAC4が補償信号uをアナログ信号に変換する際のサンプリングレートよりも低いサンプリングレートである低サンプリングレートで、出力信号yをデジタル信号に変換する。
本実施形態において、増幅器2が増幅する信号xの周波数帯域幅が100MHzであるとすると、例えば、DAC4のサンプリングレートは、614.4MHzに設定される。よって、ADC11のサンプリングレートである低サンプリングレートは、614.4MHzより低い周波数に設定される。
なお、信号xの主信号成分の周波数帯域幅は20MHzである。
さらに、低サンプリングレートは、信号xの周波数帯域幅よりも低く設定されていることが好ましい。
信号xの周波数帯域幅が100MHzである場合、ADC11のサンプリングレートである低サンプリングレートとして、例えば、15.36MHzに設定することができる。
またここで、デジタル信号としての信号x、及び出力信号yは、所定のサンプリングレートによって離散化されたサンプルデータによって構成される信号である。
よって、デジタル信号に変換される出力信号yは、614.4MHzより低い周波数である低サンプリングレートによって離散化されたサンプル列によって構成される。
ADC11の前段に設けられているフィルタ部10は、ローパスフィルタであり、通過帯域幅が信号xの周波数帯域幅以上に設定されている。なお、本実施形態のフィルタ部10の通過帯域幅は、信号xの周波数帯域幅の約6倍に設定されており、信号xの5次歪まで通過可能に設定されている。
上記DAC4、アップコンバータ5、発振器6、増幅器2、アンテナ7、カプラ8、ダウンコンバータ9、フィルタ部10、及びADC11は、デジタル信号である補償信号uを受け付けてアナログ信号に変換した後、必要なアナログ信号処理を行うアナログ処理部12に含まれている。
歪補償部3は、デジタル信号である補償信号uをアナログ処理部12に対して与えるデジタル処理部13に含まれている。
歪補償部3には、増幅器2により増幅される入力信号としての信号xと、ADC11がデジタル信号に変換した出力信号yとが与えられる。歪補償部3は、これら各信号に基づいて歪補償を行う。
〔2. 歪補償装置について〕
歪補償部3は、カプラ8から得られた出力信号yをフィルタ部10やADC11等を介して帰還信号として受け付け、この出力信号yと、信号xとに基づいて増幅器2のモデルを推定し、デジタル信号処理によって推定したモデルに基づいて増幅器2の歪補償を行う。
つまり、本実施形態において、歪補償部3と、フィルタ部10と、ADC11とは、出力信号yを帰還信号として受け付けて信号xの歪補償を行う歪補償装置14を構成している。
歪補償部3は、信号xに対して前置歪補償(Predistortion)処理を行う補償処理部20と、増幅器2のモデルにおける係数(歪補償係数)を演算する係数演算部21と、入出力信号についての遅延誤差を補正するための処理を行う遅延処理部22と、係数演算部21に与えられる信号xの信号タイミングを調整して遅延調整を行う調整部23とを備えている。
補償処理部20は、与えられる信号xに対して歪補償を行った補償信号uを表すモデルを用いて前置歪補償処理を行う。
具体的に、補償処理部20は、例えば、下記式(1)に示すモデルを用いて、信号x[n]から補償信号u[n]を求めることで前置歪補償処理を行う。なお、nは、所定のサンプリングレートで離散化されたデジタル信号である信号xを構成するサンプル列の順序を示す番号である。
上記式(1)は、Hammersteinモデルと呼ばれるアンプモデルを一般化したものであり、メモリ多項式型モデルとも呼ばれる。
上記式(1)中、hk,lは、補償信号u[n]の特性を定めるために必要な係数(DPD係数)であり、下記式(2)のように表される。
本実施形態の補償処理部20は、信号x[n]と、上記DPD係数とを式(1)に示すモデルに適用して補償信号u[n]を求める。
上記DPD係数は、係数演算部21から与えられる。
補償処理部20は、係数演算部21からDPD係数が与えられると、上記モデルにおけるDPD係数を、係数演算部21から与えられた新たなDPD係数に更新し、補償信号u[n]を求める。
なお、本実施形態では、アンプモデルとして、Hammersteinモデルを用いた例を示したが、他のモデル、例えば、Wienerモデル、又はWiener−Hammersteinモデルを用いることもできる。
係数演算部21は、DPD係数を演算する機能と、演算したDPD係数を補償処理部20に与えてDPD係数を更新させる機能を有している。
係数演算部21には、ADC11によってデジタル信号に変換された出力信号yと、調整部23を介して与えられる信号xとが与えられる。
係数演算部21は、下記式(3)に示すように、信号xと、出力信号yとの間の残差Resを求める。
残差Res = y − x ・・・(3)
なお、信号yは、DAC4のサンプリングレートよりも低い低サンプリングレートでAD変換されているので、例えば、ADC11のサンプリングレート(低サンプリングレート)が、信号xのサンプリングレートよりも低い場合、信号xを構成しているサンプル列の内、時間軸上で対応する出力信号yのサンプルが存在しないサンプルが存在する可能性がある。本実施形態の係数演算部21は、信号xのサンプル列の内、時間軸上で対応する出力信号yのサンプルが存在しないサンプルについては残差を求めず、互いに対応するサンプルが存在する場合に残差Resを求めるように構成されている。
係数演算部21は、前回演算したDPD係数を参照しつつ、残差Resの2乗平均を最小としうる新たなDPD係数、つまり信号xと出力信号yとの間の歪をできるだけ補償し得るDPD係数を回帰的に求める。
このように、本実施形態では、増幅器2に増幅される入力信号としての信号xと、増幅器2が出力する出力信号yとからDPD係数を求めることで、上述の歪補償のためのモデルを推定する、いわゆる直接学習法を採用している。
上記構成の歪補償装置14では、ADC11が、低サンプリングレートで出力信号yをAD変換し、歪補償部3は、一般的に低サンプリングレートよりも高いサンプリングレートでサンプリングされている信号xと、低サンプリングレートでAD変換された出力信号yとに基づいて歪補償を行うので、広帯域の信号を処理する場合にも、その広帯域の信号に応じてより高いサンプリングレートのADC11を用いる必要がないので、低コスト化が可能となる。
なお、上述したように、低サンプリングレートは、信号xの周波数帯域幅よりも低く設定されていてもよく、この場合、低サンプリングレートをより低い値に設定することができ、低コスト化により有利である。
出力信号yのサンプル数は、低サンプリングレートでAD変換されることで、DA変換する際のサンプリングレートと同じサンプリングレートでAD変換する場合よりも相対的に少ない場合がある。この点、本実施形態では、直接学習法を採用しているので、出力信号が低サンプリングレートであるとしても、その分観測期間を延ばすことにより、精度を低下させることなく歪補償を行うことができる。
さらに、本実施形態では、増幅器2とADC11との間に接続されているフィルタ部10の通過帯域幅が、信号xの周波数帯域幅以下に設定されている。
この場合、フィルタ部10の通過帯域幅は、ADC11のサンプリングレートよりも大きくなるため、出力信号yの内、低サンプリングレートによって取得される帯域の信号成分だけでなくその信号成分の周辺帯域の信号も折り返し成分としてADC11に与えられる。これによって、ADC11は、低サンプリングレートによって取得される帯域の信号成分の他、その信号成分の周辺帯域の信号も折り返し成分として取得することができる。
これにより、出力信号に生じる歪によって発生する信号成分であって、出力信号の隣接帯域に現れる信号成分の情報を失うことなく取得することができるため、精度を低下させることなく歪補償を行うことができる。
なお、本実施形態のフィルタ部10の通過帯域幅は、上述のように、信号xの周波数帯域幅の約6倍に設定されており、信号xの5次歪まで通過可能に設定されている。
このように、フィルタ部10の通過帯域幅は、増幅器2が信号xを増幅したことによって出力信号yに生じる歪成分(5次歪)の周波数帯域幅以上に設定されていてもよく、この場合、出力信号yに生じる歪によって発生する信号成分であって、出力信号yの隣接帯域に現れる信号成分の情報をより効果的に取得することができる。
調整部23は、係数演算部21に与えられる信号xのタイミングを調整する機能を有している。調整部23は、遅延処理部22から与えられる遅延誤差の推定値に関する情報に基づいて信号xのタイミングを調整する。
係数演算部21に与えられる信号xと、出力信号yとは、互いに対応するサンプル同士で処理されるように、両信号のタイミングをできるだけ一致させて係数演算部21に与える必要がある。互いに対応するサンプル同士で演算しなければ正確なDPD係数を求めることができないからである。
出力信号yは、アナログ処理部12のフィルタ部10やADC11を通過して係数演算部21に到達する。よって、出力信号yは、信号xよりも、遅延して係数演算部21に到達する。
このため、調整部23は、補償処理部20の前段から信号xを取得し、取得した信号xのタイミングを調整することによって、係数演算部21に与えられたときにおける、出力信号yのタイミングと、信号xのタイミングとの間に生じる遅延誤差が解消されるように補正する。
ここで、一般に、歪補償を行う際の増幅される入力信号と、帰還信号との遅延誤差は、周波数帯域幅が100MHzの信号であれば、1.6ns(614.4MHz)程度の範囲に収まる精度となるように補正する必要があり、このように遅延を補正することによって、歪補償処理において必要な精度を維持することができる。なお、入力信号と、帰還信号との遅延誤差は、両信号の相関値に基づいて求められる。
帰還信号(増幅器の出力信号)が、増幅器により増幅される入力信号をDA変換する際のサンプリングレートと同じサンプリングレートでAD変換される場合、入力信号のタイミングと、帰還信号のタイミングとの遅延誤差については、高い精度で推定し補正することができる。入力信号をDA変換する際のサンプリングレートが、遅延誤差を精度よく補正し得る程度の周波数(例えば、信号の周波数帯域幅の5〜6倍程度)に設定され、遅延誤差も同程度の精度で推定できるからである。
しかし、本実施形態の歪補償装置14(歪補償部3)では、低サンプリングレートでAD変換された出力信号yと、一般的には低サンプリングレートよりも高いサンプリングレートでサンプリングされている信号xとを用いて歪補償処理を行うため、信号xのタイミングと、出力信号yのタイミングとの間の遅延誤差を推定し補正しようとすると、低サンプリングレートに対応する周期の長さよりも細かい精度では遅延誤差を推定し補正できないおそれがある。
例えば、信号xの周波数帯域幅が100MHzであるとすると、DAC4のサンプリングレートは、600MHz程度に設定される。すると、ADC11は600MHzよりも低い低サンプリングレートに設定されるので、信号xのタイミングと、出力信号yのタイミングとの間に生じる遅延誤差を、サンプリングレートが600MHzの周期の長さの単位では推定することができない。
この点、本実施形態の遅延処理部22は、低サンプリングレートでAD変換された出力信号yのタイミングと、信号xのタイミングとの間に生じる遅延誤差の推定値を、低サンプリングレートに対応する周期の長さよりも小さい期間の単位で求めて補正することができる。
つまり、出力信号yを低サンプリングレートでAD変換したにも関わらず、低サンプリングレートに対応する周期の長さよりも小さい期間の単位で遅延誤差の推定値を求めることができるので、低サンプリングレートに対応する周期の長さよりも細かい精度で、より精度よく遅延誤差を補正することができる。
この結果、歪補償処理において必要な精度を維持することができる。
以下、遅延処理部22について説明する。
〔3. 第1実施形態に係る遅延処理部について〕
遅延処理部22は、歪補償部3に与えられる出力信号yと、信号xとの間の遅延誤差の推定値を求める機能を有している。また、遅延処理部22は、求めた遅延誤差を、遅延誤差に関する情報として調整部23に与え、当該調整部23に信号xのタイミングを調整させる。このように、遅延処理部22は、遅延誤差の推定値を求め、出力信号yのタイミングと、信号xのタイミングとの間の遅延誤差が解消されるように補正する遅延調整処理を行う。
また、遅延処理部22は、係数演算部21を制御し、補償処理部20におけるDPD係数の更新を制御する機能を有している。遅延処理部22は、遅延調整処理を行う上で必要に応じて、係数演算部21にDPD係数の出力を中止させて、補償処理部20におけるDPD係数の更新を中止させたり、係数演算部21にDPD係数の出力を実行させて、補償処理部20におけるDPD係数の更新を実行させたりすることができる。
遅延処理部22には、補償処理部20の前段部分から取得された信号xと、ADC11からの出力信号yとが与えられる。また、遅延処理部22には、補償処理部20の後段部分から取得された補償信号uも与えられる。
遅延処理部22は、当該遅延処理部22に与えられる出力信号yと、信号xとに基づいて、出力信号yのタイミングと、入力信号xのタイミングとの間の遅延誤差の推定値(出力信号yの遅延誤差の推定値)を演算する第1遅延誤差推定部22aを備えている。
また、遅延処理部22は、信号xと、補償信号uとに基づいて、補償処理部20が行う前置歪補償処理に起因する入力信号xのタイミングと、補償信号uのタイミングとの間の遅延誤差の推定値(DPDの遅延誤差の推定値)を演算する第2遅延誤差推定部22bを備えている。
図2は、第1実施形態に係る遅延処理部22が行う遅延調整処理の手順を示すフローチャートである。この図2に示すフローチャートは、無線通信装置(歪補償装置14)を起動し、遅延処理部22が動作を開始した直後からの手順を示している。
まず、遅延処理部22は、動作を開始すると、処理の反復回数を示す反復回数Iを「1」に設定する(ステップS101)。なお、反復回数Iは、後述するように、処理のループを終えるごとに「1」ずつ加算されるため、無線通信装置(歪補償部3)を起動してからの経過時間を示している。
次いで、遅延処理部22は、信号x及び出力信号yを取得する(ステップS102)。このとき、遅延処理部22は、信号x及び出力信号yを取得するために設定された所定期間としての取得期間に含まれる信号x及び出力信号yそれぞれのサンプル列を取得する。
次いで遅延処理部22は、信号x及び出力信号yに対してアップサンプリング処理を行う(ステップS103)。信号x及び出力信号yは、後述するように、互いに相関値を求め遅延誤差の推定値を求めるために用いられる。このため、より精度よく相関値を求めることができるように、信号x及び出力信号yに対して、DAC4のサンプリングレート以上のサンプリングレートとなるようにアップサンプリング処理を行う。
なお、アップサンプリング処理の倍率は、例えば、100倍程度に設定することができる。ADC11のサンプリングレート(低サンプリングレート)が、15.36MHzである場合、出力信号yは、サンプリングレートが約1.6GHzにアップサンプリングされる。
信号x及び出力信号yに対してアップサンプリング処理を行った後、遅延処理部22は、出力信号yのタイミングと、入力信号xのタイミングとの間の遅延誤差推定値Δτを求めるための演算を、第1遅延誤差推定部22aに実行させる。
第1遅延誤差推定部22aは、ステップS102で取得された出力信号yと、信号xとの間の相関値を求め、この相関値に基づいて、出力信号yのタイミングと、入力信号xのタイミングとの間の遅延誤差の推定値を演算により求める(ステップS104)。
出力信号yと、信号xとの間の相関値は、例えば、下記式(4)のように表される。
相関値R(τ) = x(t−τ) × y(t) ・・・(4)
上記式(4)中、tは時間、τは遅延誤差(遅延量)、x(t−τ)は、x(t−τ)の複素共役を示している。
第1遅延誤差推定部22aは、上記式(4)に基づいて、相関値R(τ)を求め、下記式(5)に示すように、上記相関値R(τ)が最大となるτを、出力信号yの遅延誤差推定値Δτ(I)として求める。
出力信号yの遅延誤差推定値Δτ(I) = argmax|R(τ)|
・・・(5)
上記式(5)中、Δτ(I)は、反復回数Iのときの取得期間で取得した出力信号yの遅延誤差の推定値を示している。
次いで、遅延処理部22は、反復回数Iが、予め設定された設定回数W以上であるか否かを判断する(ステップS105)。
反復回数Iが設定回数W以上でないと判断すると、遅延処理部22は、反復回数Iに「1」を加え(ステップS106)、ステップS102に戻り、前回信号を取得した取得期間とは異なる取得期間の信号x及び出力信号yを取得して、再度、出力信号yの遅延誤差推定値Δτ(I)を求める(ステップS102〜S104)。
遅延処理部22は、反復回数Iが設定回数Wに達するまで、ステップS102〜S104を繰り返すことで、出力信号yの遅延誤差推定値Δτ(I)を、互いに異なる複数の取得期間ごとに求める。
一方、ステップS105において、反復回数Iが設定回数W以上であると判断すると、遅延処理部22は、さらに、反復回数Iが設定回数Wであるか否かを判断する(ステップS107)。
反復回数Iが設定回数Wであると判断すると、遅延処理部22は、下記式(6)に基づいて、現状の出力信号yの遅延誤差推定値Δτを求める。遅延処理部22は、式(6)に示すように、反復回数Iが「1」から設定回数Wに至るまでに求めた、各反復回数Iごとの出力信号yの遅延誤差推定値Δτ(I)(I=1,2,3・・・W)の平均値を求めることによって、現状の出力信号yの遅延誤差推定値Δτを求める(ステップS108)。
現状の出力信号yの遅延誤差推定値Δτ
= (Δτ(1)+Δτ(2)+Δτ(3)+ ・・・
+Δτ(W)) / W ・・・(6)
次いで、遅延処理部22は、補償処理部20による処理によって生じる遅延誤差の推定値を、第2遅延誤差推定部22bに求めさせる(ステップS109)。
第2遅延誤差推定部22bは、信号xと、補償信号uとの間の相関値を求め、この相関値に基づいて、入力信号xのタイミングと、補償信号uのタイミングとの間の遅延誤差推定値Δiを求める。第2遅延誤差推定部22bは、相関値を求めて、DPDの遅延誤差推定値Δiを求める。なお、相関値、及び相関値に基づくDPDの遅延誤差推定値の演算は、上記式(4)及び式(5)に示す演算と同様である。
さらに、遅延処理部22は、下記式(7)に示すように、第2遅延誤差推定部22bが求めたDPDの遅延誤差推定値Δiを、現状の出力信号yの遅延誤差推定値Δτに加算(減算)し、調整部23に調整させるべき遅延誤差推定値Δτを求める(ステップS110)。
遅延誤差推定値Δτ = Δτ−(K × Δi) ・・・(7)
このとき、遅延処理部22は、DPDの遅延誤差推定値Δiに対して、補正係数Kを乗じて加算する。この補正係数Kは、DPDの遅延に対する補正の度合を定める係数であり、出力信号yの遅延に対するDPDの遅延の影響が、できるだけ低減することができる値に設定される。具体的には、補正係数Kは、「0」以上、「1」以下の値に設定される。
次いで、遅延処理部22は、求めた遅延誤差推定値Δτを示す情報を調整部23に与えて、調整部23に信号xのタイミングを調整させる(ステップS111)。
調整部23は、与えられる遅延誤差推定値Δτを示す情報に基づいて信号xのタイミングを調整し、係数演算部21における、出力信号yのタイミングと、信号xのタイミングとの間に生じる遅延誤差が解消されるように補正する。
これによって、補償処理部20による前置歪補償処理において必要な精度を維持できる程度に、係数演算部21における、出力信号yのタイミングと、信号xのタイミングとの間に生じる遅延誤差を補正することができる。
調整部23に信号xのタイミングを調整させた遅延処理部22は、係数演算部21にDPD係数の演算を開始させるとともに、補償処理部20のDPD係数の更新を開始させる(ステップS112)。これによって、補償処理部20による前置歪補償処理が開始される。
その後、遅延処理部22は、ステップS106に進み、反復回数Iに「1」を加えて(ステップS106)、ステップS102に戻り、再度、ステップS102〜105を経て、現状の反復回数Iで取得した出力信号yの遅延誤差推定値Δτ(I)を求め、ステップS107に進む。
反復回数Iが設定回数Wであると判断された以降は、反復回数Iは、設定回数Wより大きくなるので、遅延処理部22は、ステップS107において、反復回数Iが設定回数Wではないと判断する(ステップS107)。
この場合、遅延処理部22は、下記式(8)に基づいて、現状の出力信号yの遅延誤差推定値Δτを求める(ステップS113)。
現状の出力信号yの遅延誤差推定値Δτ
= β・ΔτI−1+(1−β)・argmax|R(τ)|
= β・ΔτI−1+(1−β)・Δτ(I) ・・・(8)
上記式(8)において、βは時定数である。遅延処理部22は、反復回数Iが設定回数W以上となった後は、反復するごとに得られる遅延誤差推定値Δτ(I)に時定数βを乗算した値を過去の遅延誤差推定値ΔτI−1に加算することで移動平均値を演算する。遅延処理部22は、この移動平均値を、現状の出力信号yの遅延誤差推定値Δτとして求める。なお、時定数βは、0以上でかつ1未満の数値に設定される。
この時定数βをできるだけ大きく設定すれば、式(8)中において、新たに加算される反復回数Iの遅延誤差推定値Δτ(I)が、現状の出力信号yの遅延誤差推定値Δτに生じる変動を抑制でき、安定した遅延誤差推定値Δτを得ることができる。
例えば、設定回数Wを「100」に設定したとすると、時定数βは、「0.999」に設定される。
その後、遅延処理部22は、ステップS109に進み、上記と同様の処理を行うことで、式(7)で表される、調整部23に調整させるべき遅延誤差推定値Δτを求め、調整部23に信号xのタイミングを調整させる。
以上のように、遅延処理部22は、遅延調整処理を行うことによって、補償処理部20による前置歪補償処理において必要な精度を維持できる程度に、係数演算部21における、出力信号yのタイミングと、信号xのタイミングとの間に生じる遅延誤差の推定値を精度よく求めることができ、精度よく遅延誤差を補正することができる。
本実施形態では、遅延処理部22は、低サンプリングレートでAD変換された出力信号yのタイミングと、信号xのタイミングとの間の遅延誤差推定値Δτ(I)を、互いに異なる複数の取得期間ごとに求め、複数の取得期間ごとの各遅延誤差推定値Δτ(I)から求められる平均値を、低サンプリングレートでAD変換された出力信号yのタイミングと、信号xのタイミングとの間の遅延誤差推定値Δτとして求める。
ここで、出力信号yのタイミングと、信号xのタイミングとの間の遅延誤差の真値は、経時的に大きく変動しないので、複数の取得期間ごとの各遅延誤差推定値Δτ(I)の値にばらつきが生じたとしても、各遅延誤差推定値Δτ(I)の値から平均値、又は移動平均値を求めることで、ADC11のサンプリングレートに対応する周期の長さよりも小さい期間の単位で遅延誤差の推定値を求めることができ、この結果、より精度よく遅延誤差の推定値を求めることができる。
このように、出力信号yを低サンプリングレートでAD変換したにも関わらず、低サンプリングレートに対応する周期の長さよりも小さい期間の単位で遅延誤差を求めることができるので、低サンプリングレートに対応する周期の長さよりも細かい精度で、より精度よく遅延誤差を補正することができる。
この結果、歪補償処理において必要な精度を維持することができる。
また、補償処理部20が行う前置歪補償処理に生じる遅延があると、遅延誤差推定値Δτの精度が低下するおそれがある。
この点、本実施形態では、調整部23に調整させるべき遅延誤差推定値Δτは、現状の出力信号yの遅延誤差推定値Δτに加えて、DPDの遅延誤差推定値Δiも加算されて求められるので、遅延処理部22は、DPDの遅延誤差推定値Δiについても補正することができる。これにより、前置歪補償処理の際に生じる遅延が、出力信号yのタイミングと、信号xのタイミングとの間に生じる遅延誤差の精度に与える影響を抑制することができる。
本実施形態において、遅延処理部22が動作を開始してから反復回数Iが設定回数W未満の範囲では、前置歪補償処理は実行されず、反復回数Iが設定回数W以上となることで、前置歪補償処理が開始される。
これは、反復回数Iが設定回数Wに到達したときに求められる、上記式(6)に基づいて得られる遅延誤差推定値Δτが、その後ステップS113及び式(8)にて求められる移動平均値の初期値として用いられるためである。
本実施形態では、移動平均値の初期値を求めた後に、DPD係数の更新を開始し前置歪補償処理を開始する。
仮に、移動平均値の初期値を求めることなく、DPD係数の更新を開始すると、遅延誤差推定値Δτは、大きく変動することによって誤差を含んでしまい、このような誤差を含んだ遅延誤差推定値Δτによって、DPD係数を演算すれば、誤ったDPD係数を演算し、前置歪補償処理が正常に行うことができないおそれがある。
この点、本実施形態では、遅延処理部22が動作を開始してから反復回数Iが設定回数Wまでの間については、前置歪補償処理を実行せずに移動平均値の初期値を求め、その後、前置歪補償処理の実行を開始する。つまり、遅延処理部22は、前置歪補償処理の開始前に、ステップS108及び式(6)に基づいて移動平均値の初期値を求めるので、誤ったDPD係数を求めるのを抑制し、適切に前置歪補償処理を行うことができる。
また、設定回数Wは、移動平均値の初期値を安定的に求めるためのウエイトであり、安定した初期値(式(6)に基づいて得られる遅延誤差Δτ)が得られる値に設定される。
図3は、本実施形態の遅延処理部22が動作を開始した直後から遅延誤差推定値を反復して演算した場合についてシミュレーションを行い、得られた結果の一例を示したグラフである。図中、横軸は反復回数I、縦軸は遅延誤差を示している。
図中、破線は、出力信号yの遅延誤差の真値を示している。また、一点鎖線で示す「従来のサンプリングによって求めた遅延誤差推定値」は、DAC4と同じサンプリングレートでサンプリングされた出力信号yを用いて求めた、出力信号yの遅延誤差の推定値を示している。
また、図3の例では、設定回数Wを「100」に設定した結果を示しており、反復回数Iが「100」までの範囲では、上記式(5)により求められる、取得期間ごとの出力信号yの遅延誤差推定値Δτ(I)を示しており、反復回数Iが「100」以上の範囲では、上記式(8)により移動平均として求められる、出力信号yの遅延誤差推定値Δτを示している。
図3に示すように、本実施形態によって求めた遅延誤差推定値は、反復回数Iが「100」までの範囲における、各取得期間ごとの遅延誤差推定値Δτ(I)にはばらつきがみられるが、反復回数Iが「100」以上の範囲でみられる、これらの平均値及びその後に求められる移動平均値は、従来のサンプリングによって求めた場合の遅延誤差推定値と比較して、大きな差異はなく、精度よく遅延誤差を推定できることが確認できる。
上記第1実施形態では、複数の取得期間ごとの各遅延誤差推定値Δτ(I)から求められる代表値として、各遅延誤差推定値Δτ(I)の平均値、又は移動平均値を求めた場合を示したが、例えば、各遅延誤差推定値Δτ(I)のメジアンを代表値とすることもできる。
また、上記第1実施形態では、移動平均値の初期値としての各遅延誤差推定値Δτ(I)の平均値を求めた後は、継続的に移動平均値を求めたが、例えば、移動平均を求めることなく、そのまま、各遅延誤差推定値Δτ(I)全ての平均値を継続的に求めるようにしてもよい。
〔4. 第2実施形態に係る遅延処理部について〕
図4は、第2実施形態に係る遅延処理部22が行う遅延調整を行う処理の手順を示すフローチャートである。
本実施形態の遅延処理部22と、第1実施形態に係る遅延処理部22との相違点は、以下の通りである。すなわち、第1実施形態に係る遅延処理部22では、複数の取得期間ごとに、信号xのタイミングと、出力信号yのタイミングとの間の遅延誤差推定値を演算し、その遅延誤差推定値を平均化した値を用いて遅延調整処理を行う場合を例示した。
これに対し、第2実施形態に係る遅延処理部22では、係数演算部21に与えられる信号xのタイミングを少しずつずらして調整し、その調整ごとに信号xと出力信号yとの残差Resを係数演算部21に演算させ、この残差Resに基づいて遅延誤差の推定値を求める点において、第1実施形態と相違している。以下、本実施形態と、第1実施形態との間で相違する点について説明するが、その他の点については、第1実施形態と同様である。
本実施形態において、遅延処理部22は、まず、無線通信装置(歪補償装置14)が起動直後であるか否かを判断する(ステップS301)。
起動直後であると判断する場合、遅延処理部22は、DPD係数の更新を開始させる前に、遅延調整処理を実行する(ステップS302)。
図5は、図4中、遅延調整処理の手順を示すフローチャートである。
まず、遅延処理部22は、ステップS401において、信号x及び出力信号yを取得する(ステップS400)。遅延処理部22は、信号x及び出力信号yを取得するために設定された所定期間としての取得期間に含まれる信号x及び出力信号yそれぞれのデータ列を取得する。
次いで、遅延処理部22は、信号x及び出力信号yに対してアップサンプリング処理を行う(ステップS401)。信号x及び出力信号yは、後述するように、互いに相関値を求め遅延誤差の推定値を求めるために用いられる。このため、相関値を求めることができるように、信号x及び出力信号yに対して、アップサンプリング処理を行う。なお、ここで行う相関値による遅延誤差の推定は、信号xの周波数帯域幅と同程度の周波数のサンプリングレートに対応する周期長さ単位で定まる精度で行い、概略の遅延誤差推定値を求める。よって、ステップS401でのアップサンプリング処理は、信号x及び出力信号yが、信号xの周波数帯域幅と同程度の周波数のサンプリングレートとなるような倍率で行われる。
例えば、ADC11のサンプリングレート(低サンプリングレート)が15.36MHzである場合、アップサンプリング処理の倍率は、数倍〜100倍程度に設定される。
次いで、遅延処理部22は、出力信号yのタイミングと、入力信号xのタイミングとの間の遅延誤差の推定値(出力信号yの遅延誤差の推定値)を求めるための演算を、第1遅延誤差推定部22aに実行させる。
第1遅延誤差推定部22aは、ステップS401で取得された出力信号yと、信号xとの間の相関値を求め、この相関値に基づいて、出力信号yの遅延誤差推定値を演算により求める(ステップS402)。
なお、相関値、及び相関値に基づく遅延誤差推定値の演算は、上記式(4)及び式(5)に示す演算と同様である。
ここでは、第1遅延誤差推定部22aは、信号xの周波数帯域幅と同程度の周波数のサンプリングレートとされた出力信号y及び信号xを用いて遅延誤差の推定値を求める。このため、ステップS402において求められる出力信号yの遅延誤差は、信号xの周波数帯域幅と同程度の周波数のサンプリングレートに対応する周期の長さ単位で定まる精度で求められるため、遅延誤差を補正するために必要な精度よりも低い精度となるが、この遅延誤差の推定値を求めることによって、その低い精度の中で、遅延誤差の真値が含まれる数値範囲を明らかにすることができる。
次いで、遅延処理部22は、求めた出力信号yの遅延誤差の推定値に基づいて、出力信号yを基準とした信号xの遅延誤差値Tの初期値を設定し、調整部23に、遅延誤差値Tに基づいた遅延調整を行わせる(ステップS403)。
なお、このとき、遅延処理部22は、遅延誤差の推定値において明らかとなる遅延誤差の真値が含まれる数値範囲の中で、出力信号yに対して最も少ない遅延誤差となるように、遅延誤差値Tを設定する。
その理由は、後述するように、遅延誤差値Tを加算値ΔTずつ序々に増加させることで、遅延誤差値Tが真値に近づくように調整するからである。
比較的低い精度で遅延誤差を補正した後、遅延処理部22は、係数演算部21に、信号x及び出力信号yを取得させる(ステップS404)。係数演算部21は、ステップS403において行われた遅延誤差の補正が反映された信号を取得する。
次いで、係数演算部21は、ステップS404で取得した信号xに対してダウンサンプリング処理を行う(ステップS405)。この信号xに対するダウンサンプリング処理は、低サンプリングレートの出力信号yとの間で残差Resを求めるために行われる。
このため、係数演算部21は、信号xのサンプリングレートが、より低サンプリングレートに近い値となるようにダウンサンプリング処理を行う。ダウンサンプリング処理の倍率は、例えば、数分の1倍〜数10分の1倍程度に設定することができる。
信号xに対してダウンサンプリング処理を行った後、係数演算部21は、上記式(3)に示す、出力信号yと、信号xとの間の残差Resを求める(ステップS406)。
係数演算部21は、残差Resを求めると、求めた残差Resを遅延処理部22に与える。
遅延処理部22は、残差Resが与えられると、この残差Res、又は、過去に与えられた残差Resの中において、極小値(最小値)となる残差Resの有無を判断する(ステップS407)。
極小値となる残差Resが無いと判断すると、遅延処理部22は、遅延誤差値Tに所定の単位時間としての加算値ΔTを加算し(ステップS409)、再度、調整部23に、遅延誤差値Tに基づいた遅延調整を行わせ(ステップS410)、ステップS404に戻る。
遅延処理部22は、ステップS407において、極小値となる残差Resがあると判断するまでステップS404〜S409を繰り返し実行する。
遅延処理部22が極小値となる残差Resがあると判断するためには、以下の方法を採用することができる。すなわち、遅延誤差値Tを変化させる範囲を、遅延誤差の真値が含まれていると特定された数値範囲全域に設定し、前記数値範囲内に亘って残差Resを演算し、その後残差Resの最小値を極小値として求める。
また他の方法として、ある初期値から順に遅延誤差値Tを変化させつつ残差Resを求め、各残差Res同士の変位から極小点が推定されたときに、その推定された極小点に極小値となる残差Resがあると判断することもできる。
遅延誤差値Tに基づいて遅延調整される信号xは、遅延誤差値Tに加算値ΔTが加算されることによって、加算値ΔTずつ遅延する。よって、出力信号yの遅延誤差は、加算値ΔTずつ変化(増加)する。
よって、遅延処理部22は、ステップS404〜S409を繰り返し実行することで、出力信号yの遅延誤差を、加算値ΔTずつ変化(増加)させるとともに(ステップS408,S409)、出力信号yの遅延誤差を、加算値ΔTずつ変化させる毎に、出力信号yの遅延誤差を変化させた後の出力信号yと、信号xを取得し(ステップS404)、出力信号yと、信号xとの間の残差Resを求める(ステップS406)。
遅延処理部22は、ステップS407において、ステップS404〜S409を繰り返し実行し、極小値となる残差Resがあると判断した場合、残差Resが極小値となる遅延誤差値Tを特定する(ステップS411)。残差Resが極小値となる場合、出力信号yと、信号xとが繰り返し演算した遅延誤差値Tの中で最も一致しているといえる。よって、そのときの(残差Resを極小値とする)遅延誤差値Tを、現状の出力信号yの遅延誤差推定値として特定する。
次いで、遅延処理部22は、補償処理部20による処理によって生じるDPDの遅延誤差推定値Δiを、第2遅延誤差推定部22bに求めさせる(ステップS412)。なお、DPDの遅延誤差推定値Δiの演算は、第1実施形態と同様の方法で行う。
次いで、遅延処理部22は、下記式(9)に示すように、第2遅延誤差推定部22bが求めたDPDの遅延誤差推定値Δiを、残差Resを極小値とする遅延誤差値Tに加算(減算)し、調整部23に調整させるべき遅延誤差推定値Δτを求める(ステップS413)。
遅延誤差Δτ = T−(K × Δi) ・・・(9)
なお、式(9)中、補正係数Kは、DPDの遅延に対する補正の度合を定める係数であり、第1実施形態にて説明した通りである。
遅延処理部22は、求めた遅延誤差推定値Δτを示す情報を調整部23に与えて、調整部23に信号xのタイミングを調整させる(ステップS414)。
調整部23は、与えられる遅延誤差推定値Δτを示す情報に基づいて信号xのタイミングを調整し、係数演算部21における、出力信号yのタイミングと、信号xのタイミングとの間に生じる遅延誤差が解消されるように補正する。
以上のようにして、遅延処理部22は、遅延調整処理を終える。
このように、本実施形態では、出力信号yの遅延誤差を加算値ΔTずつ変化させるとともに、出力信号yの遅延誤差を加算値ΔTずつ変化させる毎に、出力信号yの遅延誤差を変化させた後の出力信号yと、信号xとの間の残差Resを求め、加算値ΔTずつ変化させた各遅延誤差(遅延誤差値T)の中から、残差Resの大きさに基づいて、現状の出力信号yの遅延誤差推定値を決定する。
上記実施形態では、加算値ΔTずつ変化させた各遅延誤差値Tの中から、残差Resが極小値となるときの遅延誤差値Tを、出力信号yの遅延誤差推定値として求める。
この場合、加算値ΔTの単位で遅延誤差推定値を求めることができる。
このため、加算値ΔTは、低サンプリングレートに対応する周期の長さよりも短い時間に設定される。
これにより、低サンプリングレートに対応する周期の長さよりも小さい期間の単位で出力信号yの遅延誤差推定値を求めることができ、より精度よく遅延誤差を求めることができる。
また、より好ましくは、加算値ΔTは、DAC4のサンプリングレートに対応する周期の長さよりも短い時間に設定される。この場合、さらに小さい期間の単位で出力信号yの遅延誤差推定値を求めることができ、より精度よく遅延誤差を求めることができる。
図6は、本実施形態の遅延処理部22が遅延調整処理を行った場合についてシミュレーションを行い、得られた結果の一例を示したグラフである。図中、横軸は反復回数、縦軸は、残差Resを電力として示した値を示している。
図中、薄い色の線図は、信号x同士を所定の遅延誤差をもって互いに遅延させて本実施形態による遅延調整処理を行った場合に得られる残差電力を示しており、濃い色の線図は、前記所定の遅延誤差とした出力信号yと信号xについて本実施形態によって得た残差電力を示している。
また、各線図は、信号xの周波数帯域幅と同じ周波数のサンプリングレートの信号における2サンプル分(±1サンプル分)の期間内で求めた残差電力を示している。
各線図には、図中、残差電力(残差Res)の演算に対応して、残差電力の低数値側に向く鋭いピークが多数見られる。各ピークの低数値側の値は、遅延処理部22が演算した残差電力(残差Res)を示している。
残差電力の演算は、反復するごとに加算値ΔTずつ遅延誤差を変化させるので、遅延誤差をより遅延させる方向に変化させていったときに真値が存在する場合、図6に示すように、残差電力は反復回数が増加するに従って序々に低下し、遅延誤差(遅延誤差値T)が真値となる付近で極小値となる。極小値を過ぎると残差電力は、再度増加していく。
薄い色の線図は、信号x同士の間で得た残差電力であるため、残差電力が極小値となるタイミングが遅延誤差の真値である。
本実施形態による残差電力の極小値は、真値に対して僅かにずれてはいるが、大きくずれることはなく、精度よく遅延誤差を推定できることが確認できる。
遅延調整処理を終えると、遅延処理部22は、図4中、ステップS303に進み、係数演算部21にDPD係数の演算を開始させるとともに、補償処理部20のDPD係数の更新を開始させる(ステップS303)。これによって、補償処理部20による前置歪補償処理が開始され、処理を終える。
ステップS301において起動直後でないと判断すると、遅延処理部22は、前回遅延調整処理を実行してから所定期間が経過しているか否かを判断する(ステップS304)。
前回遅延調整処理を実行してから所定期間が経過していると判断する場合、遅延処理部22は、補償処理部20のDPD係数の更新を停止させ(ステップS305)、ステップS302に進んで、遅延調整処理を実行する(ステップS302)。その後、遅延処理部22は、DPD係数の更新を開始させ(ステップS303)、処理を終える。
一方、前回遅延調整処理を実行してから所定期間が経過していないと判断する場合、遅延処理部22は、処理を終える。
このように遅延処理部22は、所定期間が経過する毎に遅延調整処理を行うように構成されている。
出力信号yのタイミングと、信号xのタイミングとの遅延誤差は、経時的変化が小さいが、変化しないわけではないため、ある程度の頻度で調整する必要がある。
このため、本実施形態の遅延処理部22は、所定期間が経過する毎に遅延調整処理を行う。これによって、長期間に亘って、精度よく遅延誤差を補正することができる。なお、所定期間としては、例えば、1〜2日程度に設定される。
また、遅延処理部22は、DPD係数の更新を停止させた後、遅延調整処理を実行する。
つまり、遅延処理部22は、DPD係数の更新を実行している間には、遅延調整処理を実行せず、DPD係数の更新を停止している間に遅延調整処理を実行する。
仮に、DPD係数の更新を停止することなく遅延調整処理を実行すると、遅延処理部22は、遅延誤差を加算値ΔTずつ変化させるので、遅延誤差に誤差が含まれることとなり、誤ったDPD係数を演算し、前置歪補償処理が正常に行うことができないおそれがある。
この点、本実施形態では、遅延処理部22は、DPD係数の更新を実行している間には、遅延調整処理を実行せず、DPD係数の更新を停止している間に遅延調整処理を実行するので、誤ったDPD係数を求めるのを抑制し、適切に前置歪補償処理を行うことができる。
上記実施形態では、遅延処理部22は、デジタル処理によって、出力信号yのタイミングと、信号xのタイミングとの間の遅延誤差を変化させ調整した場合を示したが、例えば、アナログ処理部12側で、出力信号yのタイミングを調整することにより、遅延誤差値Tに加算値ΔTを加算して遅延誤差を変化させつつ残差Resを求め、遅延誤差の推定値を求めることができる。
図7は、第2実施形態の変形例に係る無線通信装置の要部を示すブロック図である。
図7に示す無線通信装置が備える歪補償装置14は、ADC11に与えられる動作クロックの位相を調整するための調整部30を備えている点において、第2実施形態の無線通信装置と相違する。
この調整部30は、遅延処理部22による制御によって、ADC11に与えられる動作クロックの位相を任意に調整する機能を有している。
遅延処理部22は、調整部30を制御することにより、ADC11の動作クロックの位相を調整し、ADC11からAD変換されて出力される出力信号yのタイミングを調整することができる。
これにより遅延処理部22は、出力信号yのタイミングと、信号xのタイミングとの間の遅延誤差を変化させることができる。
従って、図7に示す歪補償装置14においても、図4及び図5に示した遅延調整処理を実行することができる。
この場合、遅延処理部22は、アナログ処理によって遅延誤差を変化させることができるので、遅延処理部22の負荷を軽減することができる。
〔5. 歪補償の評価について〕
本発明者は、本実施形態の歪補償装置14による歪補償精度が、従来の歪補償装置と比較して遜色がないことを確認するために、本実施形態の歪補償装置14を備えた増幅装置による信号の入出力特性について検証し評価した。以下、その評価結果について説明する。
評価試験としては、上記第1実施形態に係る増幅装置、及び、上記第2実施形態に係る増幅装置を用いて周波数帯域幅100MHzのOFDM信号を増幅したときの入出力信号の態様をコンピュータを用いたシミュレーションによって求め、歪補償精度について評価した。
また、第1及び第2実施形態の他、他の実施形態として、図1に示す第1実施形態に係る増幅装置が備える遅延処理部22が一般的な方法で遅延誤差の推定及び補正を行うように構成された装置についても評価した。なお、上記一般的な方法としては、低サンプリングレートの出力信号yと、信号xとの間で相関値を求め、この相関値に基づいて得られた遅延誤差の推定値をそのまま用いて遅延誤差の補正を行った。
なお、各増幅装置において、信号xとしては、周波数帯域幅100MHzのOFDM信号を用い、DAC4のサンプリングレートを614.4MHz、ADC11のサンプリングレート(低サンプリングレート)を15.36MHzとした。また、フィルタ部10の通過帯域幅は、約600MHzとした。
図8は、他の実施形態に係る増幅装置によって増幅したOFDM信号の周波数スペクトルの一例を示す図である。
図中、「オリジナルの信号」とは、入力信号(信号x)であり、入力信号の周波数スペクトルを示している。
また、図中、「従来の歪補償処理による出力信号」とは、DAC4と同じサンプリングレートでサンプリングされた出力信号yを用いて出力信号yの遅延誤差推定値を求め、この遅延誤差推定値に基づいて遅延補正を行い歪補償処理を行った場合の出力信号であり、この出力信号の周波数スペクトルを示している。
「歪補償なし」とは、歪補償処理なしで入力信号を増幅したときの出力信号であり、この出力信号の周波数スペクトルを示している。
「他の実施形態による出力信号」とは、上記他の実施形態の増幅装置によって歪補償処理を行った出力信号であり、この出力信号の周波数スペクトルを示している。
図に示すように、他の実施形態による出力信号は、歪補償処理なしの出力信号と比較して、信号帯域の隣接チャネルにおける漏洩電力が改善されていることが判る。
但し、他の実施形態による出力信号は、オリジナルの信号や、従来の歪補償処理による出力信号と比較すると、中心周波数から離れるに従って信号品質が悪化する傾向が見られる。
図9は、第1実施形態に係る増幅装置によって増幅したOFDM信号の周波数スペクトルの一例を示す図であり、図10は、第2実施形態に係る増幅装置によって増幅したOFDM信号の周波数スペクトルの一例を示す図である。
第1及び第2実施形態による出力信号においても、歪補償処理なしの出力信号と比較して、信号帯域の隣接チャネルにおける漏洩電力が改善されていることが判る。
また、第1及び第2実施形態による出力信号は、オリジナルの信号や、従来の歪補償処理による出力信号と比較しても、ほぼ遜色ない信号品質が得られていることが判る。
以上、上記評価試験によれば、本実施形態の増幅装置は、十分な歪補償精度を有していることを確認することができた。
〔6. その他〕
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記各実施形態では、歪補償装置14の歪補償部3が遅延処理部22を備えている場合を例示したが、この遅延処理部22は必ず備えている必要はなく、一般的な方法、例えば、低サンプリングレートの出力信号yと、信号xとの間で相関値を求め、この相関値に基づいて得られた遅延誤差の推定値をそのまま用いて遅延誤差の補正を行ってもよい。
また、上記各実施形態の歪補償装置14は、増幅器2に増幅される信号xと、増幅器2が出力する出力信号yとからDPD係数を求めることで、上述の歪補償のためのモデルを推定する、いわゆる直接学習法を採用しているが、補償処理部20からの補償信号uと、出力信号yとから逆モデルを推定して信号xに反映させる間接学習法を採用してもよい。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 増幅装置
2 増幅器
3 歪補償部
4 DA変換器
5 アップコンバータ
6 発振器
7 アンテナ
8 カプラ
9 ダウンコンバータ
10 フィルタ部
11 AD変換器
12 アナログ処理部
13 デジタル処理部
14 歪補償装置
20 補償処理部
21 係数演算部
22 遅延処理部
22a 第1遅延誤差推定部
22b 第2遅延誤差推定部
23 調整部
30 調整部

Claims (13)

  1. 入力信号を増幅する増幅器の歪補償を行う歪補償部と、
    前記増幅器が出力する出力信号をAD変換して前記歪補償部に与えるAD変換器と、を備え、
    前記AD変換器は、前記増幅器に与えられる信号をDA変換する際のサンプリングレートよりも低い低サンプリングレートで、前記出力信号をAD変換し、
    前記歪補償部は、前記入力信号と、前記低サンプリングレートでAD変換された前記出力信号とに基づいて歪補償を行う歪補償装置。
  2. 前記歪補償部は、前記入力信号と、前記低サンプリングレートでAD変換された前記出力信号とに基づいて前記増幅器のモデルを推定し、このモデルに基づいて歪補償を行う請求項1に記載の歪補償装置。
  3. 前記増幅器と前記AD変換器との間に接続されているフィルタをさらに備え、
    前記フィルタの通過帯域幅が、前記入力信号の周波数帯域幅以上に設定されている請求項1又は請求項2に記載の歪補償装置。
  4. 前記低サンプリングレートでAD変換された前記出力信号のタイミングと、前記入力信号のタイミングとの間に生じる遅延誤差を、前記低サンプリングレートに対応する周期の長さよりも小さい期間の単位で推定し補正する遅延処理部をさらに備えている請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の歪補償装置。
  5. 前記遅延処理部は、前記遅延誤差の推定値を、互いに異なる複数の所定期間ごとに求め、前記複数の所定期間ごとの各遅延誤差の推定値から求められる代表値を、前記遅延誤差の推定値として求める請求項4に記載の歪補償装置。
  6. 前記遅延処理部は、前記遅延誤差を所定の単位時間ずつ変化させるとともに、前記遅延誤差を前記所定の単位時間ずつ変化させる毎に、前記遅延誤差を変化させた後の前記出力信号と、前記入力信号との間の残差を求め、前記所定の単位時間ずつ変化させた各遅延誤差の中から、前記残差の大きさに基づいて、前記遅延誤差の推定値を決定する請求項4に記載の歪補償装置。
  7. 前記所定の単位時間は、前記低サンプリングレートに対応する周期の長さよりも短い時間である請求項6に記載の歪補償装置。
  8. 前記遅延処理部は、前記AD変換器に与えられる動作クロックの位相を調整することによって、前記出力信号のタイミングを調整し、前記遅延誤差を変化させる請求項6に記載の歪補償装置。
  9. 前記歪補償部は、前記入力信号に対して歪補償を行った補償信号を前記増幅器に与えるように構成され、
    前記遅延処理部は、前記入力信号のタイミングと、前記補償信号のタイミングとの間に生じる遅延誤差を補正する請求項4に記載の歪補償装置。
  10. 前記低サンプリングレートは、信号xの周波数帯域幅よりも低く設定されている請求項1に記載の歪補償装置。
  11. 前記フィルタの通過帯域幅は、前記増幅器が前記入力信号を増幅したことによって前記出力信号に生じる歪成分の周波数帯域幅以上に設定されている請求項3に記載の歪補償装置。
  12. 増幅器と、請求項1に記載の歪補償装置と、を備えている増幅装置。
  13. 請求項12に記載の増幅装置を通信信号の増幅のために備えている無線通信装置。
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