そこで、本発明は上記の問題点に鑑み、接着剤を塗布することによって合成樹脂製の接続管と接続するための差口を有する合成樹脂製の管継手に関し、接続管の内径のバラツキによって接続管の内壁と管継手の差口外周部との間の間隙に変化(大小)が生じた場合でも、接続管と容易に接続することができ、それでいて接続部との間で高い接合強度と高いシール性を得ることができる管継手を提供することを目的とする。
本発明者等は、接着剤を塗布することよって合成樹脂管製の接続管と接続するための差口を有する合成樹脂製の管継手の構造について鋭意検討を重ねた結果、差口外周部に設けたテーパー面の裏側(内側)にスロット状の切り込みを設け、テーパー面が形成されたテーパー部を差口外周部によって片持ちに支持された構造とすることにより、テーパー部が差口の径方向へ容易に変形できるようになる結果、接続管との接続を容易にしながら、接続部との間で高い接合強度と高いシール性が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
具体的には、本発明の管継手は、合成樹脂製の接続管の中へ挿入接続するための差口を有する合成樹脂製の管継手であって、差口は、内周面と、差口の外周部に形成され且つ差口の前方から後方に向けて連続的に拡径されたテーパー面を有するテーパー部と、そしてテーパー面と内周面との間に形成され且つテーパー部の後端で外部へ開口された筒状のスロットを備えており、そしてテーパー部は、テーパー面の裏側(内側)にスロットが形成されることにより、差口の外周部へ片持ちに支持されているという特徴を有する。
本発明の管継手は、差口の外周部に、差口の前方から後方に向けて連続的に拡径されたテーパー面が形成されたテーパー部を備えている。このため、テーパー面は管継手の差口が合成樹脂製の接続管の中へスムーズに挿入されるようにガイドする機能を発揮する他、接続管の内壁へ圧接されることにより、接続管の内壁との間の高い接合強度およびシール性を達成するためにも機能する。
特に本発明の管継手は、テーパー面と差口内周面との間に、テーパー部の後端で外部へ開口された筒状のスロットを設けることにより、テーパー部を差口の外周部によって片持ちに支持する構造としたので、テーパー部は差口の径方向へ容易に変形することができる。このため、テーパー部は、接続管の内径に多少の製作誤差が含まれている場合においても、接続管の内壁から反力を受けることによって接続管の内壁の形状に適合し、実質的に接続管の内径誤差を吸収するように変形する。この結果、本発明の管継手は、接続管との接続を容易にしながら、接続管との間の高い接合強度と高いシール性を達成することができる。
本発明の管継手において、接続管の内壁に対するテーパー部の追従性を向上させるためには、テーパー面の裏側(内側)に形成されたスロットの隙間高さを、テーパー部の前方から後方へ向けて連続的に拡大したり、及び/又はテーパー部分の断面の厚みを、テーパー部の前方(付け根)から後方(自由端)へ向けて連続的に薄肉化することが有効である。
本発明の管継手において、スロットの隙間高さを差口の前方から後方へ向けて連続的に拡大すると、スロットの隙間高さをテーパー部の撓みによる可動域(軌跡)と略一致させることができるので、スロットから不必要な空間を排除することができ、その結果、スロットの不必要となった空間を有効利用することによって、スロット周辺部のコンパクト化や厚肉化による強度アップを図ることができるという利益がある。
また、本発明の管継手において、テーパー部の断面の厚みをテーパー部の前方(付け根)から後方(自由端)へ向けて連続的に薄肉化すると、差口の外周部に片持ちに支持されたテーパー部は、テーパー部の付け根付近の強度アップが図られ、そしてテーパー部の付け根から自由端へ向かうほど断面の厚みが薄くなることによって、より一層撓み易くなるという性質が与えられる。このため、例えば管継手のテーパー部後端の外径と接続管の内径との重なり代が小さい場合でも、テーパー部の後端(自由端)付近は接続管の内壁に適合するように十分に撓むことができるので、接続管の内壁との間の接着強度やシール性をより一層向上させるという利益がある。
なお、本発明において、差口は、上述したようなテーパー部を複数個備えていてもよい。片持ちに支持されたテーパー部を差口の外周部へ複数個設けると、テーパー部と接続管の内壁との接触箇所が複数個形成される結果、管継手と接続管との間の接合強度及び気密性がより一層強化される。
本発明の管継手では、テーパー部に形成されたテーパー面は、差口が接続管の中へスムーズに挿入されるようにガイドする機能も発揮するため、テーパー面の先端は接続管の内径より小さな外径を有し、且つテーパー面の後端は接続管の内径より大きな外径を有していることが好ましい。換言すれば、本発明による管継手は接続管の内径に対応して選択され、具体的には、接続すべき接続管の内径がテーパー面先端の外径とテーパー面後端の外径との間の径となるように選択される。さらに好ましくは、本発明の管継手は、テーパー面先端の外径とテーパー面後端の外径との中間の径(テーパー面先端の外径とテーパー面後端の外径との和を2で除した値)を目安として、この中間の径が接続管の内径に最も近くなるように選択される。
もし、テーパー部先端の外径が接続管の内径と同一又はそれ以上であると、挿入後、差口のテーパー部が接続管の内壁へ強力に圧接されることにより高い気密性を得られることが期待されるが、実際には、例えば塩化ビニル樹脂等からなる合成樹脂製の接続管は硬質であるため、専用の機械を用いて接続管を拡径したり又は接続部を加熱して軟化などさせない限り、管継手を接続管と簡単に挿入接続することができなくなる。
一方、テーパー部後端の外径が接続管の内径と同一またはそれ以下であると、挿入後、差口のテーパー面と接続管の内壁との間に隙間が生じるので、該隙間に多量の接着剤を充填することにより高い接続強度を得られることが期待される。しかしながら、実際には、接続時にテーパー面による差口の挿入ガイド機能が十分に機能しなくなる。このため、管継手と接続管との間でガタ付きや偏りを生じて両者を精度良く接続することが困難となり、その結果、接合部の強度やシール性、水密性が低下したり、管継手の抜けを防止できなくなるという不都合を生じることとなる。
実際の施工現場では、通常、接続される合成樹脂製の接続管の外径、内径及び許容誤差などは、規格化された製品の呼び径を知ることによって把握することができる。したがって、接続すべき合成樹脂管の呼び径を調べたり又は実際の接続管の外径、内径を測定することにより、これに適合したテーパー部を有する本発明の管継手を選択することができる。
また、塩化ビニル樹脂やABS樹脂などの合成樹脂からなる管継手や接続管は、表面に接着剤が塗布されると約0.1mmの深さの溶解した膨潤層が形成される。このため、管継手の差口の外周部に設けられたテーパー部は、差口が接続管の中へ挿入接続されると、接続管の内壁との接触によって内壁の形状に適合するように変形すると共に、テーパー部の一部は接続管の内壁と共に膨潤溶解して密着し、さらに膨潤溶解しなかった残りのテーパー部は、膨潤溶解した接続管の内壁内へ食い込むように機能する。
このため、本発明の管継手は、差口の外周部に片持ちに支持されたテーパー部の変形効果と、TS工法による管継手のテーパー面及び接続管の内壁面の膨潤溶解効果が相俟って、接続部の極めて高い接合強度と高いシール性を実現する。特に本発明の管継手のテーパー部後端は、差口を接続管の中へ挿入した時、接続管の内壁との接触によって、接着剤の塗布によって膨潤した接続管の内壁の中へ食い込むように変形するので、管継手の差口が挿入方向へ移動するのを許容するが、差口が抜け方向へ移動するのを阻止するという効果を発揮する。
このように、本発明の管継手と接続管との間の高強度、高シール、高気密な接続効果および強力な抜け止め効果は、接続時、接着剤が塗布された管継手の差口のテーパー部及び/又は接続管の内壁が溶解膨潤することによっても相乗的に高められるので、管継手および接続管の材質は、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂など、接着剤の塗布により接合が可能であり且つ接着剤の塗布により表面層の一部が溶解して膨潤する合成樹脂であれば、特に限定されることなく使用することができる。
また、差口の外周部によって片持ちに支持されたテーパー部は、差口を備えた管継手であれば特に限定されることなく他のタイプの管継手にも適用することができるので、本発明の管継手は、短管、長管、スピゴット管、エルボ管又はチーズ管などのあらゆる形状の管継手に適用することができる。さらに、本発明の管継手では、テーパー部を設けた差口は管継手の入口又は出口のいずれか一方、又は入口及び出口の両方に設けられていてもよい。
本発明の管継手では、差口は、テーパー部の後方にテーパー部の後端の外径よりも小さな外周径を有する環状のネック部を備えることができる。
管継手の差口のテーパー部の後方にネック部を設けると、接続管の端面が接続管の管軸に対して斜めに切断されているような場合においても、接続時、管継手は接続管の端面を差口のネック部の中まで受け入れることができるので、接続管は管継手差口のテーパー部の全部を覆い、テーパー部(特に後端)が接続管の端面から外部へはみ出してしまうリスクを低減する。このため、本発明において、テーパー部の後方にネック部を有する管継手を用いると、接続時、殆どのケースにおいて差口に設けたテーパー部の全部が接続管によって覆われるので、該管継手は、接続管との間でより一層強化されたシール性や水密性、そして接続強度を得ることができるようになる。
なお、環状のネック部は、斜めに切断された接続管の端面をネック部の中まで受け入れるためにある程度の幅(管軸方向の長さ)を有することが必要とされるが、実際の施行現場での切断精度を考慮すると、例えば呼び径が200以下の接続管であれば、ネック部の幅が20mm程度設けられていれば、殆どのケースにおいてテーパー部の全部を接続管によって覆わせることができるようになる。
さらに、環状のネック部は、ネック部の外周径がテーパー部の後端の外径よりも小さいので、接続管が管継手の管軸に対して斜め方向に挿入されても、接続管の端面をネック部の中で首を振らせる(管継手の管軸から偏心させる)ように受け入れることができる。このため、差口にネック部を有する管継手は、接続管が管継手の管軸に対して屈曲するように接続されるのを許容することができる。
また、環状のネック部は、テーパー部の後方に隣接して設けられるので、接続管を挿入時、テーパー部によって掻き取られた接続管内壁の接着剤や膨潤層を溜め込むために機能する。このため、ネック部は、過剰な接着剤や膨潤溶解した樹脂が接続管の中から外部へ滲み出るのを防止すると共に、掻き取られた接着剤や膨潤層をネック部の中で硬化させることにより、管継手と接続管との間の接着強度およびシール性をさらに強化するためにも貢献する。
また、環状のネック部の外周径がテーパー部の後端の外径よりも小さいが、接続管の内径と略同じ大きさである場合、ネック部は、接続管が管継手の管軸に対して屈曲するように接続されるのを困難にするが、ネック部の外周面が接続管の内壁と当接することにより接合部のガタ付を無くすると共に、管継手と接続管との間の接続強度およびシール性をさらに向上させるためにも機能する。また、何らかの要因で管継手と接続管との接合部に回転モーメントが生じたような場合でも、ネック部の外周面は接続管の先端部を直接に支持しているので、テーパー部が接続管の内壁から直接受ける荷重を低減するためにも機能する。
なお、環状のネック部は、テーパー部の後方に隣接して少なくとも1つ配置されていればよく、ネック部の外周径がテーパー部の後端の外径よりも小さければ、異なる外周径を有するネック部を1つの差口外周部に複数段に分けて配設してもよい。また、1つの差口が複数個のテーパー部を有している場合は、複数個のネック部をそれぞれのテーパー部毎に別けて、各テーパー部の後方に隣接させて配置してもよい。
本発明の管継手では、差口は、差口の根元端に接続管の端面と当接させるために差口の中心軸(実質的に管継手の管軸と同じ)に対して略直交した当接面を備えていることが好ましい。
差口の根元端に当接面を設けると、当接面は、接続管を接続する時、接続管の端面を当接させることによりストッパーとして機能すると共に、当接面が接続管の端面と接着剤を介在させて接合される場合は、管継手と接続管との間の水密性をさらに向上させるために機能する。
さらに、上記の当接面は、接続後、接続管の内側に溜まった接着剤の乾燥を促進させるために、差口の径方向に延びた溝部を1又は2以上有していてもよい。
差口の当接面に溝部を設けると、接続後、接続管の内部に溜まった接着剤や膨潤溶解した樹脂を溝部を通して外部空気と接触させることができるので、接着剤や溶解した樹脂の乾燥が促進される。当接面に配置される溝部の形状や数、配置は特に限定されないが、接続管の内部に溜まった接着剤や溶解した樹脂をできるだけ迅速且つ均一に乾燥させるためには、複数の溝部を差口の中心軸に対し放射方向に配置するのが好ましい。
本発明では、管継手をテーパー部を含む差口本体部と、差口本体部以外の部分を含んだ管継手本体部とからなる少なくとも2以上の部品へ分割することができる。この場合、テーパー面の裏側(内側)に配設されるスロットは、差口本体部を管継手本体部の先端部へ組み付けることにより、テーパー部の内周面と管継手本体部の先端部の外周面との間の隙間によって形成させることができる。
金型を用いた樹脂成形において、円錐形のテーパー面の裏側(内側)にスロット状の切り込みを設け、そして差口の外周部に片持ちに支持されたテーパー部を一体的に成形することは極めて困難であり、またそのための金型構造も極めて複雑となるので製造コストも増大するという問題がある。このため、本発明では、管継手を少なくとも、テーパー部を含む差口本体部と、それ以外の部分からなる管継手本体部とへ分割することにより上記の問題を解決した。
すなわち、本発明において管継手を上述のように2以上の部品へ分割すると、スロットは、差口本体部を管継手本体部へ組み付けた時、テーパー部の内周面と管継手本体部の先端部の外周面との間の隙間によって形成されるので、樹脂成形において、テーパー面の裏側(内側)にスロット状の切り込みを一体的に成形する必要性がなくなる。このため、本発明の管継手は、簡単な構造の金型を用いて、テーパー部を有する差口本体部とそれ以外の部分からなる管継手本体部とを別々に成形することができるようになり、差口本体部を管継手本体部へ組み付けるプロセスが必要となるものの、全体としては大幅なコストダウンを図ることができるようになる。
管継手を、テーパー部を有する差口本体部とそれ以外の部分からなる管継手本体部とへ分割した場合、差口本体部のテーパー部の内周面には、差口本体部を管継手本体部へ組み付ける時、管継手本体部の先端部を差口本体部の内側の接続位置へ案内するために、テーパー部の後方から前方に向けて連続的に縮径された案内面を設けることが好ましい。
差口本体部のテーパー部の内周面に案内面を設けると、管継手本体部への差口本体部の組み付けを容易化することができる。案内面は、管継手本体部を装着する時、管継手本体部の先端部を案内するために差口本体部の後方から前方に向けて連続的に縮径されていればよく、例えば逆テーパーを付けられたすり鉢状の形状を有していることが好ましい。
また、管継手を、テーパー部を有する差口本体部とそれ以外の部分からなる管継手本体部とへ分割した場合、管継手本体部には、差口本体部を組み付ける時、差口本体部を固定するための係止手段を設けることが好ましい。
管継手本体部に係止手段を設けると、接着剤等を用いることなく差口本体部を管継手本体部へ確実且つ堅固に固定することができるので、差口本体部を管継手本体部へ組み付けるプロセスが簡素化され、管継手の製造時間および製造コストが削減される。係止手段は、差口本体部を継手本体部へ係止できるものであれば特に限定されることなく公知の係止手段を利用することができ、例えばフックとフックを引っ掛けるための凹部の組み合わせや、雌ネジ雄ネジの組み合わせなどを用いることができる。
本発明の管継手では、差口がテーパー部を複数個備えている場合、差口本体部をテーパー部毎に分割することによって、差口本体部を、テーパー部を含んだ複数の差口本体部から構成することができる。
この場合、差口本体部の先端部は、差口本体部の先端部へ追加の差口本体部を組み付けることにより、テーパー部の内周面との間の隙間によってスロットを形成することができる外周面を備えていることが好ましい。
すなわち、差口本体部の先端部へ、該差口本体部と略同形状の追加の差口本体部を組み付ける場合、テーパー面の裏側(内側)に形成されるスロットは、追加の差口本体部のテーパー部内周面と差口本体部の先端部外周面との間の隙間によって形成される。また追加の差口本体部の先端部へ、該追加の差口本体部と略同形状の他の追加の差口本体部をさらに組み付ける場合、テーパー面の裏側(内側)に形成されるスロットは、他の追加の差口本体部のテーパー部内周面と追加の差口本体部の先端部外周面との間の隙間によって形成される。
このように本発明の管継手は、テーパー部毎に分割された差口本体部を他の差口本体部の先端部へ継ぎ足すことにより、複数のテーパー部を備えているが、テーパー部毎に分割された差口本体部を有する差口を構成することができる。この結果、本発明の管継手は、差口に複数個のテーパー部を備えている場合においても、各テーパー部のスロットが各テーパー部の内周面と各差口本体部の先端部外周面との間の隙間によって形成されるので、樹脂成形においても簡単な構造の金型を用いて、テーパー部を有する差口本体部毎に成形することができるようになり、大幅なコストダウンを図ることができるようになる。
また、差口本体部をテーパー部毎に分割した場合、差口本体部には、追加の差口本体部を差口本体部へ組み付ける時、追加の差口本体部を固定するための係止手段を設けてもよい。
差口本体部に係止手段を設けると、接着剤等を用いることなく追加の差口本体部を差口本体部へ確実且つ堅固に固定することができるので、追加の差口本体部を差口本体部へ継ぎ足すプロセスが簡素化され、管継手の製造時間および製造コストが削減される。係止手段は、追加の差口本体部を差口本体部へ係止できるものであれば特に限定されることなく公知の係止手段を利用することができ、例えばフックとフックを引っ掛けるための凹部の組み合わせや、雌ネジ雄ネジの組み合わせなどを用いることができる。
本発明の合成樹脂製の管継手によれば、接続管の内径のバラツキによって接続管の内壁と管継手の差口外周部との間の間隙に変化(大小)が生じた場合でも、差口外周部に設けたテーパー面の裏側(内側)にスロット状の切り込みを設け、テーパー面が形成されたテーパー部を差口外周部によって片持ちに支持された構造とすることにより、テーパー部が差口の径方向へ容易に変形できるようになる結果、接続管との接続を容易にしながら、接続部との間で高い接合強度と高いシール性を得ることができる。
本発明の管継手は、TS工法により、管継手差口のテーパー部の一部が接続管の内壁と共に膨潤溶解して密着し、さらに膨潤溶解しなかった残りのテーパー部は膨潤溶解した接続管の内周面内へ食い込むので、接合部の接続強度及びシール性をより一層高めると共に、管継手の差口が挿入方向へ移動するのを許容するが、差口が抜け方向へ移動するのを阻止するという効果を奏する。
本発明では、差口のテーパー面の先端が接続管の内径より小さな外径を有し、且つテーパー面の後端が接続管の内径より大きな外径を有している管継手を選択すると、テーパー面は、管継手の差口を接続管の中へスムーズに挿入するようにガイドするためにも機能する。
本発明の管継手は、管継手の差口のテーパー部の後方に環状のネック部を設けると、接続時、管継手が接続管の端面を差口のネック部の中まで受け入れることにより、接続管が管継手差口のテーパー部の全部を覆うので、接続管との間でより一層強化されたシール性や水密性、そして接続強度を得ることができるようになる。また、環状のネック部は、ネック部の外周径がテーパー部の後端の外径よりも小さいので、接続管の端面をネック部の中で首を振らせる(管継手の管軸から偏心させる)ことにより、接続管が管継手の管軸に対して屈曲するように接続されるのを許容する。
本発明の管継手は、管継手を、テーパー部を含む差口本体部とそれ以外の部分からなる管継手本体部とへ分割し、スロットはテーパー部の内周面と管継手本体部の先端部の外周面との間の隙間によって形成されるようにすると、樹脂成形において、テーパー面の裏側(内側)にスロット状の切り込みを一体的に成形する必要性がなくなり、簡単な構造の金型を用いて差口本体部と管継手本体部とを別々に成形することができるようになる。
本発明の管継手は、差口に複数個のテーパー部を設けることができ、その場合、テーパー部と接続管の内壁との接触箇所が複数個形成されるので、管継手と接続管との間の接合強度及び気密性がより一層強化される。
以下、本発明の一実施形態に係る合成樹脂製の管継手について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
図1には、差口3の外周部30に設けたテーパー面50の裏側(内部側)にスロット状の切り込み6を設けることにより、片持ちに支持されたテーパー部5を差口3に有する本発明の一実施形態に係る管継手1の概要図及び一部断面図が示されている。図2には、接続管2と挿入接合された図1に示される管継手1と接続管2の概要図及び一部断面図が示されている。
図1及び2を参照して説明すると、本実施形態の管継手1は、合成樹脂製の接続管2の中へ挿入接続するための差口3を有する合成樹脂製の管継手1であって、差口3は、内周面4と、差口3の外周部30に形成され且つ差口3の前方から後方に向けて連続的に拡径されたテーパー面50を有するテーパー部5と、そしてテーパー面50と内周面4との間に形成され且つテーパー部5の後端52で外部へ開口された筒状のスロット6を備えている。そしてテーパー部5は、テーパー面50の裏側(内部側)にスロット6が形成されることにより、差口3の外周部30へ片持ちに支持されている。
本実施例の管継手1は、差口3の外周部30に、差口3の前方から後方に向けて連続的に拡径されたテーパー面50が形成されたテーパー部5を備えている。このため、テーパー面50は、管継手1の差口3が合成樹脂製の接続管2の中へスムーズに挿入されるようにガイドする機能を発揮する他、接続管2の内壁20へ圧接されることにより、接続管2の内壁20との間の高い接合強度およびシール性を達成するためにも機能する。
特に本実施形態の管継手1は、テーパー面50と差口内周面4との間に、テーパー部5の後端52で外部へ開口された筒状のスロット6を設けることにより、テーパー部5を差口外周部30によって片持ちに支持する構造としたので、テーパー部5は差口3の径方向へ容易に変形することができる。このため、テーパー部5は、接続管2の内径に多少の製作誤差が含まれている場合においても、接続管2の内壁20から反力を受けることによって接続管2の内壁20の形状に適合し、実質的に接続管2の内径誤差を吸収するように変形する。この結果、本実施形態の管継手1は、接続管2との接続を容易にしながら、接続管2との間の高い接合強度と高いシール性を達成することができる。
図2を参照して理解されるように、本実施形態の管継手1では、テーパー部5に形成されたテーパー面50は、差口3が接続管2の中へスムーズに挿入されるようにガイドする機能も発揮するため、テーパー面50の先端51は接続管2の内径より小さな外径を有し、且つテーパー面50の後端52は接続管2の内径より大きな外径を有している。すなわち、本実施形態の管継手1は接続管2の内径に対応して選択され、具体的には、接続すべき接続管2の内径がテーパー面先端51の外径d1とテーパー面後端52の外径d2との間の径となるように選択される(図1)。例えば本実施形態の管継手1は、テーパー面先端51の外径d1とテーパー面後端52の外径d2との中間の径(テーパー面先端51の外径d1とテーパー面後端52の外径d2との和を2で除した値)を目安として、この中間の径が接続管2の内径に最も近くなるように選択される。
実際の施工現場では、通常、接続される合成樹脂製の接続管2の外径、内径及び許容誤差などは、規格化された製品の呼び径を知ることによって把握することができる。したがって、接続すべき合成樹脂管の呼び径を調べたり又は実際の接続管2の外径、内径を測定することにより、これに適合したテーパー部5を有する本実施形態の管継手1を選択することができる。
また、塩化ビニル樹脂やABS樹脂などの合成樹脂からなる管継手1や接続管2は、表面に接着剤が塗布されると約0.1mmの深さの溶解した膨潤層が形成される。このため、管継手1の差口外周部30に設けられたテーパー部5は、差口3が接続管2の中へ挿入接続されると、接続管2の内壁20との接触によって内壁20の形状に適合するように変形すると共に、テーパー部5の一部は接続管2の内壁20と共に膨潤溶解して密着し、さらに膨潤溶解しなかった残りのテーパー部5は、膨潤溶解した接続管2内壁20内へ食い込むように機能する。
このため、本実施形態の管継手1は、差口3の外周部30に片持ちに支持されたテーパー部5の変形効果と、TS工法による管継手1のテーパー面50及び接続管2の内壁面20の膨潤溶解効果が相俟って、接続部の極めて高い接合強度と高いシール性を実現する。特に本実施形態の管継手1のテーパー部後端52は、差口3を接続管2の中へ挿入した時、接続管2の内壁20との接触によって、接着剤の塗布によって膨潤した接続管2の内壁20の中へ食い込むように変形するので、管継手1の差口3が挿入方向へ移動するのを許容するが、差口3が抜け方向へ移動するのを阻止するという効果を発揮する。
このように、本実施形態の管継手1と接続管2との間の高強度、高シール、高気密な接続効果および強力な抜け止め効果は、接続時、接着剤が塗布された管継手差口3のテーパー部5及び/又は接続管2の内壁20が溶解膨潤することによっても相乗的に高められるので、管継手1および接続管2の材質は、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂など、接着剤の塗布により接合が可能であり且つ接着剤の塗布により表面層の一部が溶解して膨潤する合成樹脂であれば、特に限定されることなく使用することができる。
本実施形態の管継手1は、差口3は、テーパー部5の後方にテーパー部5の後端52の外径d2よりも小さな外周径d3を有する環状のネック部31を備えている(図1)。
管継手1の差口3のテーパー部5の後方にネック部31を設けると、接続管2の端面21(図2)が接続管2の管軸10に対して斜めに切断されているような場合においても、接続時、管継手1は接続管2の端面21を差口5のネック部31の中まで受け入れることができるので、接続管2は管継手差口3のテーパー部5の全部を覆い、テーパー部5(特に後端52)が接続管2の端面21から外部へはみ出してしまうリスクを低減する。このため、本実施形態の管継手1は、接続時、殆どのケースにおいて差口3に設けたテーパー部5の全部が接続管2によって覆われるので、該管継手1は、接続管2との間でより一層強化されたシール性や水密性、そして接続強度を得ることができるようになる。
なお、環状のネック部31は、斜めに切断された接続管2の端面21をネック部31の中まで受け入れるためにある程度の幅(管軸方向の長さ)を有することが必要とされるが、実際の施行現場での切断精度を考慮すると、例えば呼び径が200以下の接続管2であれば、ネック部31の幅が20mm程度設けられていれば、殆どのケースにおいてテーパー部5の全部を接続管2によって覆わせることができるようになる。
さらに、本実施形態の環状のネック部31は、ネック部31の外周径d3がテーパー部後端52の外径d2よりも小さいので、接続管2が管継手1の管軸10に対して斜め方向に挿入されても、接続管2の端面21をネック部31の中で首を振らせる(管継手1の管軸10から偏心させる)ように受け入れることができる。このため、差口3にネック部31を有する本実施形態の管継手1は、接続管2が管継手1の管軸10に対して屈曲するように接続されるのを許容することができる。
また、環状のネック部31は、テーパー部5の後方に隣接して設けられるので、接続管2を挿入時、テーパー部5によって掻き取られた接続管内壁20の接着剤や膨潤層を溜め込むために機能する。このため、ネック部31は、過剰な接着剤や膨潤溶解した樹脂が接続管2の中から外部へ滲み出るのを防止すると共に、掻き取られた接着剤や膨潤層をネック部31の中で硬化させることにより、管継手1と接続管2との間の接着強度およびシール性をさらに強化するためにも貢献する。
また、図示しないが、環状のネック部31の外周径d3がテーパー部後端52の外径d2よりも小さいが、接続管2の内径と略同じ大きさである場合、ネック部31は、接続管2が管継手1の管軸10に対して屈曲するように接続されるのを困難にするが、ネック部31の外周面が接続管2の内壁20と当接することにより接合部のガタ付を無くすると共に、管継手1と接続管2との間の接続強度およびシール性をさらに向上させるためにも機能する。また、何らかの要因で管継手1と接続管2との接合部に回転モーメントが生じたような場合でも、ネック部31の外周面は接続管2の先端部を直接に支持しているので、テーパー部5が接続管2の内壁20から直接受ける荷重を低減するためにも機能する。
なお、環状のネック部31は、テーパー部5の後方に隣接して少なくとも1つ配置されていればよく、ネック部31の外周径d3がテーパー部後端52の外径d2よりも小さければ、異なる外周径d3を有するネック部31を1つの差口外周部30に複数段に分けて配設してもよい。また、後述する図3,7,8に示されているように、1つの差口が複数個のテーパー部を有している場合は、ネック部をそれぞれのテーパー部毎に別けて、各テーパー部の後方に隣接させて配置してもよい。
本実施形態の管継手1では、差口3は、差口3の根元端に接続管2の端面21と当接させるために差口3の中心軸10(管継手の管軸10と同じ)に対して略直交した当接面32を備えている。
差口3の根元端に当接面32を設けると、当接面32は、接続管2を接続する時、接続管2の端面21を当接させることによりストッパーとして機能すると共に、当接面32が接続管2の端面21と接着剤を介在させて接合される場合は、管継手1と接続管2との間の水密性をさらに向上させるために機能する。
さらに、本実施形態の当接面32は、接続後、接続管2の内側に溜まった接着剤の乾燥を促進させるために、差口3の径方向に延びており且つ差口3の中心軸10を中心として周方向に90°ずつ離れたU字型の溝部33を4つ有している(図1,2)。
差口3の当接面32に溝部33を設けると、接続後、接続管2の内部に溜まった接着剤や膨潤溶解した樹脂を溝部33を通して外部空気と接触させることができるので、接着剤や溶解した樹脂の乾燥が促進される。当接面32に配置される溝部33の形状や数、配置は特に限定されないが、接続管2の内部に溜まった接着剤や溶解した樹脂をできるだけ迅速且つ均一に乾燥させるためには、本実施形態のように複数の溝部33を差口3の中心軸10に対し放射方向に複数個配置するのが好ましい。
図3には、図1及び2に示された管継手1の変形例であって、片持ちに支持されたテーパー部5aが管継手1aの差口外周部30aに2つ配設されたタイプの本発明の一実施形態に係る管継手1aの概要図及び一部断面図が示されている。
図3を参照して理解されるように、本実施形態の管継手1aは、差口3aの外周部30aに2つのテーパー部5a,5a’を有しており、そして各テーパー部5a,5a’は、各テーパー面50a,50a’の裏側(テーパー面50aと差口内周面4aとの間,テーパー面50a’と差口内周面4aとの間)に筒状のスロット6a,6a’を備えることにより差口3aの外周部30aに片持ちに支持されている。このため、本実施形態の管継手1aは、テーパー部5a,5a’の柔軟性に富んだ変形効果によって図1に示された管継手1と同じ効果を奏することができると共に、テーパー部5a,5a’と接続管2の内壁20(図示せず)との接触箇所が複数個形成される結果、管継手1aと接続管2との間の接合強度及び気密性がより一層強化される。
また、本実施形態の管継手1aは、図1に示された管継手1と同様に、差口3aの各テーパー部5a,5a’の後方に各テーパー部5a,5a’の後端の外径よりも小さな外周径を有する環状のネック部31a,31a’を備えており、さらに差口3aの根元端には、接続管2の端面21(図示せず)と当接させるために差口3aの中心軸10a(管継手の管軸10aと同じ)に対して略直交した当接面32aを備えている。環状のネック部31a,31a’および当接面32aを有することによって得られる効果は、上述した図1に示された管継手1の場合と同じであるので、ここではその説明を省略する。
図4には、図1に示された管継手1の変形例であって、管継手1bがテーパー部5bを含む差口本体部11bと、差口本体部11b以外の部分を含んだ管継手本体部12bとからなる2以上の部品へ分割された本発明の一実施形態に係る管継手1bの概要図及び一部断面図が示されている。すわなち、図4に示される管継手1bは、管継手本体部12bの先端部120bの前方にテーパー部5bを有する差口本体部11bが継ぎ足されている。
このタイプの管継手1bの場合、テーパー面50bの裏側(テーパー面50bと差口内周面4bとの間)に配設されるスロット6bは、差口本体部11bを管継手本体部12bの先端部120bへ組み付けることにより、テーパー部5bの内周面53bと管継手本体部12bの先端部外周面121bとの間の隙間によって形成される。したがって、本実施形態の管継手1bは、管継手1bがテーパー部5bを含む差口本体部11bと、差口本体部11b以外の部分を含んだ管継手本体部12bとへ分割されている以外、基本的に図1に示された管継手1と同じ構造を有しているので、図1に示された管継手1と同じ効果を奏することができる。
本実施形態の管継手1bように2以上の部品へ分割すると、スロット6bは、差口本体部11bを管継手本体部12bへ組み付けた時、テーパー部5bの内周面53bと管継手本体部12bの先端部外周面121bとの間の隙間によって形成されるので、樹脂成形において、テーパー面50bの裏側(内部側)にスロット状の切り込みを一体的に成形する必要性がなくなる。このため、本実施形態の管継手1bは、簡単な構造の金型を用いて、テーパー部5bを有する差口本体部11bとそれ以外の部分からなる管継手本体部12bとを別々に成形することができるようになり、差口本体部11bを管継手本体部12bへ組み付けるプロセスが必要となるものの、全体としては大幅なコストダウンを図ることができるようになる。
本実施形態の管継手1bでは、差口本体部11bのテーパー部5bの内周面53bには、差口本体部11bを管継手本体部12bへ組み付ける時、管継手本体部12bの先端部120bを差口本体部11bの内側の接続位置へ案内するために、テーパー部5bの後方から前方に向けて連続的に縮径された案内面54bが設けられている。
差口本体部11bのテーパー部5bの内周面53bに案内面54bを設けると、管継手本体部12bへの差口本体部11bの組み付けを容易化することができる。案内面54bは、管継手本体部12bを装着する時、管継手本体部12bの先端部120bを案内するために差口本体部11bの後方から前方に向けて連続的に縮径されていればよく、本実施形態では逆テーパーを付けられたすり鉢状の形状を有している。
また、本実施形態の管継手1bでは、管継手本体部12bには、差口本体部11bを管継手本体部12bへ組み付ける時、差口本体部11bを固定するための係止手段122bが設けられている。
管継手本体部12bに係止手段122bを設けると、接着剤等を用いることなく差口本体部11bを管継手本体部12bへ確実且つ堅固に固定することができるので、差口本体部11bを管継手本体部12bへ組み付けるプロセスが簡素化され、管継手1bの製造時間および製造コストが削減される。係止手段122bは、差口本体部11bを継手本体部12bへ係止できるものであれば特に限定されることなく公知の係止手段を利用することができ、本実施形態ではフックとフックを引っ掛けるための凹部の組み合わせが用いられている。
また、本実施形態の管継手1bは、図1に示された管継手1と同様に、差口3bのテーパー部5bの後方にテーパー部5bの後端の外径よりも小さな外周径を有する環状のネック部31bと、差口3bの根元端に接続管2の端面21(図示せず)と当接させるために差口3bの中心軸10b(管継手の管軸10bと同じ)に対して略直交した当接面32b及び当接面32b上の溝部33bを備えている。環状のネック部31bおよび当接面32b、溝部33bを有することによって得られる効果は、上述した図1に示された管継手1の場合と同じであるので、ここではその説明を省略する。
図5には、管継手1cが、テーパー部5cを含む差口本体部11cと、差口本体部11c以外の部分を含んだ管継手本体部12cとからなる2以上の部品へ分割された、図4に示されている管継手1bとは異なるタイプの本発明の一実施形態に係る管継手1cの概要図及び一部断面図が示されている。図5に示される管継手1cは、テーパー部5cを有する差口本体部11cが前方へ長く延びた管継手本体部12cの先端部外周面121c上に外嵌めされているタイプの管継手1cである。
このタイプの管継手1cの場合、テーパー面50cの裏側(テーパー面50cと差口内周面4cとの間)に配設されるスロット6cは、差口本体部11cを管継手本体部12cの先端部120cへ挿入し外嵌めすることによって、テーパー部5cの内周面53cと管継手本体部12cの先端部外周面121cとの間の隙間によって形成される。
このように本実施形態の管継手1cは、管継手1cがテーパー部5cを含む差口本体部11cと、差口本体部11c以外の部分を含んだ管継手本体部12cとへ分割されている以外、基本的に図1に示された管継手1と同じ構造を有しているので、図1に示された管継手1と同じ効果を奏することができる。また、本実施形態の管継手1cは図4に示された管継手1bと異なり、差口本体部11cの形状を極めて単純化することができ且つ管継手本体部12cの管軸10cに対する差口本体部11cの芯出し(芯合わせ)も容易となるので、管継手1cの組み立てが極めて容易となるという利益がある。
さらに、本実施形態の管継手1cは、図1に示された管継手1と同様に、差口3cのテーパー部5cの後方にテーパー部5cの後端の外径よりも小さな外周径を有する環状のネック部31cと、差口3cの根元端に接続管2の端面21(図示せず)と当接させるために差口3cの中心軸10c(管継手の管軸10cと同じ)に対して略直交した当接面32cを備えている。環状のネック部31cおよび当接面32cを有することによって得られる効果は、上述した図1に示された管継手1の場合と同じであるので、ここではその説明を省略する。
図6には、図4に示された管継手1bの変形例であって、テーパー部5dの厚みがテーパー部5dの前方から後方に向けて連続的に薄肉化され、且つテーパー面50dの裏側(内部側)に形成されたスロット6dの隙間高さhがテーパー部5dの前方から後方へ向けて連続的に拡大されており、そしてテーパー部5dを有する差口本体部11dとそれ以外の継手本体部12dとに分割された本発明の一実施形態に係る管継手1dの概要図及び一部断面図が示されている。
このタイプの管継手1dの場合、テーパー面50dの裏側(テーパー面50dと差口内周面4dとの間)に配設されるスロット6dは、差口本体部11dを管継手本体部12dの先端部120dへ組み付けることによって、テーパー部5dの内周面53dと管継手本体部先端部120dの外周面121dとの間の隙間によって形成される。
したがって、本実施形態の管継手1dは、管継手1dがテーパー部5dを含む差口本体部11dと、差口本体部11d以外の部分を含んだ管継手本体部12dとへ分割されている以外、基本的に図1に示された管継手1と同じ構造を有しているので、図1に示された管継手1と同じ効果を奏することができる。
本実施形態の管継手1dでは、テーパー部5dの断面の厚みがテーパー部5dの前方(付け根)から後方(自由端)へ向けて連続的に薄肉化されているので、差口3dの外周部30dに片持ちに支持されたテーパー部5dは、テーパー部5dの付け根付近の強度アップが図られ、そしてテーパー部5dの付け根から自由端へ向かうほど断面の厚みが薄くなることによって、より一層撓み易くなるという性質が与えられる。このため、例えば管継手1dのテーパー部後端52dの外径と接続管2の内径(図示せず)との重なり代が小さい場合でも、テーパー部の後端(自由端)52d付近は接続管2の内壁20に適合するように十分に撓むことができるので、接続管2の内壁20との間の接着強度やシール性をより一層向上させるという利益がある。
また、本実施形態の管継手1dにおいて、スロット6dの隙間高さhを差口3dの前方から後方へ向けて連続的に拡大すると、スロット6dの隙間高さhをテーパー部5dの撓みによる可動域(軌跡)と略一致させることができるので、スロット6dから不必要な空間を排除することができ、その結果、スロット6dの不必要となった空間を有効利用することによって、スロット6d周辺部のコンパクト化や厚肉化による強度アップを図ることができるという利益がある。なお、テーパー面の裏側(内部側)において差口の前方から後方へ向けて連続的に拡大されているスロットは、図1〜9に示されたすべての実施形態の管継手1,1a〜1gで採用されている。
さらに、本実施形態の管継手1dは、図1に示された管継手1と同様に、差口3dのテーパー部5dの後方にテーパー部5dの後端52dの外径よりも小さな外周径を有する環状のネック部31dと、差口3dの根元端に接続管2の端面21(図示せず)と当接させるために差口3dの中心軸10d(管継手の管軸10dと同じ)に対して略直交した当接面32dを備えている。環状のネック部31dおよび当接面32dを有することによって得られる効果は、上述した図1に示された管継手1の場合と同じであるので、ここではその説明を省略する。
また、本実施形態の管継手本体部12dは、差口本体部11dを固定するために、フックとフックを引っ掛けるための凹部の組み合わせからなる係止手段122dを備えている。差口本体部11dに係止手段122dを設けると、接着剤等を用いることなく差口本体部11dを管継手本体部12dへ確実且つ堅固に固定することができるので、差口本体部11dを管継手本体部12dへ組み付けるプロセスが簡素化され、管継手1dの製造時間および製造コストが削減される。
図7には、図4に示された管継手1bの変形例であって、片持ちに支持されたテーパー部5e,5e’が管継手1eの差口外周部30eに2つ配設されており、そして差口本体部11e,11e’がテーパー部5e,5e’毎に分割された本発明の一実施形態に係る管継手1eの概要図及び一部断面図が示されている。本実施形態の管継手1eは、図7を参照して理解されるように、差口3eが各テーパー部5e,5e’別に差口本体部11eと追加の差口本体部11e’とへ分割されており、さらに追加の差口本体部11e’の先端には、差口3eの先端形状を整えるための差口リング13eが取り付けられている。
本実施形態の管継手1eでは、管継手本体部12eの先端部120eに差口本体部11e及び/又は追加の差口本体部11e’を必要数継ぎ足すことができるように、差口本体部11eおよび追加の差口本体部11e’は互いに同一の形状を有しており、そして差口本体部11eの先端部110eおよび差口本体部11e’の先端部110e’は、それぞれ管継手本体部12eの先端部120eと同一の形状に成形されている。
このため、管継手本体部12eの先端部120eへ、差口本体部11eを組み付けると、差口本体部11eのテーパー面50eの裏側(テーパー面50eと差口内周面4eとの間)に形成されるスロット6eは、差口本体部11eのテーパー部内周面53eと管継手本体部12eの先端部外周面121eとの間の隙間によって形成される。
また、差口本体部11eの先端部110eへ、該差口本体部11eと同じ形状の追加の差口本体部11e’を組み付けると、追加の差口本体部11e’のテーパー面50e’の裏側(テーパー面50e’と差口内周面4eとの間)に形成されるスロット6e’は、追加の差口本体部11e’のテーパー部内周面53e’と差口本体部11eの先端部外周面111eとの間の隙間によって形成される。さらに追加の差口本体部11e’の先端部110e’へ、該追加の差口本体部11e’と同じ形状を有する他の追加の差口本体部(図示せず)を組み付けると、他の追加の差口本体部のテーパー部内周面と追加の差口本体部11e’の先端部外周面111e’との間の隙間によって他のテーパー面の裏側(内部側)に他のスロットを形成することもできる。
このように本実施形態の管継手1eは、テーパー部5e,5e’の柔軟性に富んだ変形効果によって図4に示された管継手1bと同じ効果を奏することができると共に、テーパー部5e,5e’と接続管2の内壁20(図示せず)との接触箇所が複数個形成される結果、管継手1eと接続管2との間の接合強度及び気密性がより一層強化される。
また、本実施形態の管継手1eは、差口3eが複数のテーパー部5e,5e’を備えている場合においても、差口3eを、テーパー部5e,5e’毎に分離された比較的簡単な形状を有する差口本体部11e,11e’へ分割することができるので、樹脂成形においても簡単な構造の金型を用いて、テーパー部5e,5e’を有する差口本体部11e,11e’毎に成形することができるようになり、大幅なコストダウンを図ることができるようになる。また、本実施形態の差口本体部11eおよび追加の差口本体部11e’はいずれも同一形状であるので、1つの金型を用いて製作することができるというメリットがある。
さらに、本実施形態の管継手1eは、図1に示された管継手1と同様に、差口3eの各テーパー部5e,5e’の後方に各テーパー部5e,5e’の後端の外径よりも小さな外周径を有する環状のネック部31e,31e’を備えており、さらに差口3eの根元端には、接続管2の端面21(図示せず)と当接させるために差口3eの中心軸10e(管継手の管軸10eと同じ)に対して略直交した当接面32eを備えている。環状のネック部31e,31e’および当接面32eを有することによって得られる効果は、上述した図1に示された管継手1の場合と同じであるので、ここではその説明を省略する。
また、本実施形態の管継手1eでは、差口本体部11eおよび追加の差口本体部11e’のテーパー部5e,5e’の内周面53e,53e’に、テーパー部5e,5e’の後方から前方に向けて連続的に縮径された案内面54e,54e’を備えており、そして管継手本体部12eおよび差口本体部11e,11e’は、他の差口本体部又は差口リング13eを固定するために、フックとフックを引っ掛けるための凹部の組み合わせからなる係止手段122e,112e,112e’を備えている。案内面54e,54e’および係止手段122e,112e,112e’を有することによって得られる効果は、上述した図4に示された管継手1bの場合と同じであるので、ここではその説明を省略する。
図8には、片持ちに支持されたテーパー部5f,5f’が管継手1fの差口外周部30fに2つ配設されており、そして差口本体部11f,11f’がテーパー部5f,5f’毎に分割された、図7に示されている管継手1eとは異なるタイプの本発明の一実施形態に係る管継手1fの概要図及び一部断面図が示されている。
本実施形態の管継手1fは、図8を参照して理解されるように、差口3fが各テーパー部5f,5f’別に差口本体部11fと追加の差口本体部11f’とへ分割されており、そしてテーパー部5fを有する差口本体部11fとテーパー部5f’を有する差口本体部11f’とが、前方へ長く延びた管継手本体部12fの先端部外周面121f上に外嵌めされている。また、本実施形態の管継手本体部12fの先端部外周121f上には、差口本体部11fと追加の差口本体部11f’を位置決めするための環状のスペーサ7fと追加の環状のスペーサ7f’が外嵌めされており、さらに管継手本体部12fの先端には、差口3fの先端形状を整えるための差口リング13fが取り付けられている。
すなわち、本実施形態の管継手1fでは、スペーサ7f、差口本体部11f、追加のスペーサ7f’、追加の差口本体部11f’、差口リング13の部品が、差口3fのネック部31fの段差から先端へ向けて前記の順番で管継手本体部12fの先端部外周面121f上に外嵌めされている。
また、本実施形態の管継手1fでは、管継手本体部12fの先端部外周面121f上に差口本体部11f及び追加の差口本体部11f’と、スペーサ7f及び追加のスペーサ7f’を必要数継ぎ足すことができるように、差口本体部11fと追加の差口本体部11f’、およびスペーサ7fと追加のスペーサ7f’とはそれぞれに同一の形状に成形されている。
このため、管継手本体部12fの先端部外周面121f上に、スペーサ7fと差口本体部11fを挿入し外嵌めすると、差口本体部11fのテーパー面50fの裏側(テーパー面50fと差口内周面4fとの間)に形成されるスロット6fは、差口本体部11fのテーパー部内周面53fとスペーサ7fの外周面70fとの間の隙間によって形成される。
また、管継手本体部12fの先端部外周面121f上に、追加のスペーサ7f’と追加の差口本体部11f’を挿入し外嵌めすると、追加の差口本体部11f’のテーパー面50f’の裏側(テーパー面50f’と差口内周面4fとの間)に形成されるスロット6f’は、追加の差口本体部11f’のテーパー部内周面53f’と追加のスペーサ7f’の外周面70f’との間の隙間によって形成される。
さらに、管継手本体部12fの先端部120fが前方へ十分に長く延ばされている場合、追加の差口本体部11f’の先端へ、追加のスペーサf’と同じ形状を有する他の追加のスペーサ(図示せず)および追加の差口本体部11f’と同じ形状を有する他の追加の差口本体部(図示せず)を挿入し外嵌めすると、他の追加の差口本体部のテーパー部内周面と他の追加のスペーサの外周面との間の隙間によって他の追加の差口本体部のテーパー面の裏側(内部側)に他の追加のスロットを形成することもできる。なお、この場合、継手本体部12fの先端部120fが長過ぎて余る場合は、先端部120fに差口リング13fを取り付ける長さを残して切断すればよい。
このように本実施形態の管継手1fは、テーパー部5fを有する差口本体部11fとテーパー部5f’を有する差口本体部11f’とが、前方へ長く延びた管継手本体部12fの先端部外周面121f上に外嵌めされている以外、基本的に図7に示された管継手1eと同じ構造を有しているので、図7に示された管継手1eと同じ効果を奏することができる。
また、本実施形態の管継手1fは、図7に示された管継手1eと異なり、差口本体部11f,11f’やスペーサ7f,7f’の形状を極めて単純化することができ且つ管継手本体部12fの管軸10fに対する差口本体部11f,11f’やスペーサ7f,7f’の芯出し(芯合わせ)も容易となるので、管継手1fの組み立てが極めて容易となるという利益がある。さらに本実施形態の管継手1fでは、環状のスペーサ7f,7f’の長さを変えることにより、差口3fの外周部30fに片持ちに支持された各テーパー部5f,5f’の間隔及び取り付け位置を容易に変更できるという利点がある。
本実施形態の管継手1fは、図1に示された管継手1と同様に、差口3fの各テーパー部5f,5f’の後方に各テーパー部5f,5f’の後端の外径よりも小さな外周径を有する環状のネック部31f,31f’を備えており、さらに差口3fの根元端には、接続管2の端面21(図示せず)と当接させるために差口3fの中心軸10f(管継手の管軸10fと同じ)に対して略直交した当接面32fを備えている。環状のネック部31f,31f’および当接面32fを有することによって得られる効果は、上述した図1に示された管継手1の場合と同じであるので、ここではその説明を省略する。
図9には、図4に示された管継手1bの変形例であって、テーパー部6g,6g’を有する差口3g,3g’を入口14gと出口15gに備えており、そして差口3g,3g’は、それぞれにテーパー部6gを有する差口本体部11gおよびテーパー部6g’を有する差口本体部11g’と、それら以外の継手本体部12gとに分割された本発明の一実施形態に係る管継手1gの概要図及び断面図が示されている。
本実施形態の管継手1gは、テーパー部6g,6g’を有する差口3g,3g’を入口14gと出口15gに備えている以外、基本的に図4に示された管継手1bと同じ構造を有しているので、図4に示された管継手1bと同じ効果を奏することができる。
本発明の管継手は、片持ちに支持されたテーパー部を差口に備えた管継手であれば特に限定されることなく他のタイプの管継手にも適用することができるので、上述した本実施形態の管継手1,1a〜1fには、図9に示されているように、片持ちに支持されたテーパー部を備えた差口を入口14g及び出口15gの両方に設けられたタイプの管継手も含まれ、また短管、長管、スピゴット管、エルボ管又はチーズ管などのあらゆる形状の管継手も含まれる。