JP2015101205A - ハイブリッド車両 - Google Patents
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Abstract
【課題】発進時に最適な変速段を選択して、一方に偏ったクラッチの過熱を未然に防止して、耐久性を向上させるハイブリッド車両を提供する。【解決手段】DCT60は、ECU10で選択された第1速の変速段および、第2速の変速段にそれぞれ対応する第1クラッチおよび第2クラッチを交互に断接する。ECU10は、第1クラッチの温度に基づいて算出される、第1クラッチを半係合状態とした場合のクラッチ耐熱温度条件下で許容される第1速最大発進トルクより、第2クラッチの温度に基づいて算出される、第2クラッチを半係合状態とした場合のクラッチ耐熱温度条件下で許容される第2速最大発進トルクが大きい場合は、第2速の変速段を選択する。【選択図】図1
Description
この発明は、ハイブリッド車両に関し、特に変速装置の耐久性を向上させたハイブリッド車両に関する。
近年、変速時における機械的動力の伝達の途切れをなくすために、奇数段の変速段を形成するための第1の変速機構の第1入力軸と内燃機関の出力軸(以下、エンジン出力軸とも称す)とを係合可能な第1クラッチと、偶数段の変速段を形成するための第2の変速機構の第2入力軸(以下、第2入力軸とも称す)と機関出力軸とを係合可能な第2クラッチとを備え、これら2つのクラッチを選択的につなぎ替えることで変速を行う、いわゆるデュアルクラッチ式変速機が知られている。
特許文献1(特開2012−166574号公報)には、上述のようなデュアルクラッチ式変速機において、一方の変速機構の入力軸(奇数段軸)に結合する電動モータを更に備えたハイブリッド車両が開示されている。このようなデュアルクラッチ式変速機においては、構造上、電動モータが結合されている第1入力軸にモータ回転駆動力が付与されて、発進時の走行トルクを増大させている。
しかしながら、ハイブリッド車両は、発進時、発進トルクを確保しやすいように最も高い変速比の第1速の変速段が形成されて、かつモータ回転駆動力を付加できる第1入力軸側の回転駆動力を伝達する経路が比較的多く使用される。
このため、第1入力軸に対応する第1クラッチは、登坂路で、低速高負荷状態が連続したり、あるいは渋滞中で坂道発進が繰返された場合、温度が上昇して過熱状態となるおそれがあった。
そこで、本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、発進時に最適な変速段を選択して、一方に偏ったクラッチの過熱を未然に防止できる、耐久性を向上させることができるハイブリッド車両を提供することである。
本発明によるハイブリッド車両は、エンジン出力軸を回転駆動させるエンジンと、バッテリからの電力の供給でモータ出力軸を回転駆動するモータと、エンジン出力軸とモータ出力軸とに接続されて、入力された回転駆動力を複数の変速段のうちの選択された変速段を介して駆動出力軸から出力する変速機と、変速機による変速段の切換えを制御する制御部とを備える。変速機は、モータ出力軸を直結し、駆動出力軸との間に少なくとも第1速変速段を形成可能な奇数段の変速段を選択するための第1入力軸と、駆動出力軸との間に少なくとも第2速変速段を形成可能な偶数段の変速段を選択するための第2入力軸とを含む。また、変速機は、選択された変速段に応じて第1および第2のクラッチのいずれか一方を係合する一方で、他方の係合を解除することにより、エンジン出力軸に対して、第1入力軸または第2入力軸を選択的に断接する。制御部は、車両発進時に、第1クラッチの温度に基づいて算出された最大の発進トルクに、モータ出力軸から第1入力軸に入力するモータトルクを加えた第1速最大発進トルクと、少なくとも第2クラッチの温度に基づいて算出された最大の発進トルクを含む第2速最大発進トルクとの大きさを比較して、駆動出力軸から大きな発進トルクを出力できる第1速変速段または第2速変速段のうちの一方の変速段を選択する。
好ましくは、第2速最大発進トルクには、モータ出力軸から第2入力軸に入力するモータトルクで得られる発進トルクを含む。
本発明によれば、制御部は、第1速または第2速の変速段のうち、いずれか一方を選択して発進する際、温度条件に基づいて算出された発進トルクの大きさを比較して、大きな発進トルクを出力できる変速段を選択する。このため、通常状態では、比較的高い変速比で大きな回転トルクを出力でき、かつモータからもトルクが加えられる第1速変速段が選択された発進が行なわれる。
また、温度条件で第1クラッチが過熱状態となるおそれがある場合、制御部は、第2クラッチを係合させて第2速変速段による発進を行なわせる。このため、第1クラッチが選択された場合と比較して大きな発進トルクを出力させることができる。
本発明のハイブリッド車両によれば、発進時に温度条件から最適な変速段が選択されるため、例えば、低速高負荷状態で走行しても、一方のクラッチに偏って過熱状態となることを未然に回避出来、クラッチの耐久性を向上させることができる。
以下において、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
図1は、本発明の実施の形態に従うハイブリッド車両100の概略的な構成図である。
この実施の形態のハイブリッド車両100は、電子制御ユニット(以下、ECUとも称す)10と、エンジン20と、電力に応じて回転駆動すると共に回生電力を発電可能なモータ30と、モータ30の回転駆動力または回生電力を制御するためのモータ制御ユニット(以下、PCUとも称す)40と、モータ30に電力を供給するバッテリ50と、デュアルクラッチ式変速機(以下、DCTとも称す)60とを備える。ECU10は、ハイブリッド車両100の各構成要素の動作を制御する。
この実施の形態のハイブリッド車両100は、電子制御ユニット(以下、ECUとも称す)10と、エンジン20と、電力に応じて回転駆動すると共に回生電力を発電可能なモータ30と、モータ30の回転駆動力または回生電力を制御するためのモータ制御ユニット(以下、PCUとも称す)40と、モータ30に電力を供給するバッテリ50と、デュアルクラッチ式変速機(以下、DCTとも称す)60とを備える。ECU10は、ハイブリッド車両100の各構成要素の動作を制御する。
エンジン20には、回転駆動するエンジン出力軸25が設けられている。このエンジン出力軸25とモータ30のモータ出力軸35とには、DCT60が接続されている。また、DCT60には、複数の変速段G1〜G7が設けられている。ECU10は、DCT60における変速段G1〜G7の切換制御を行なう。
ECU10は、これらの変速段G1〜G7から、適切な変速比のいずれか一つの変速段を選択する。そして、DCT60は、ECU10により変速段G1〜G7から選択されたいずれか一つの変速段を介してエンジン出力軸25とモータ出力軸35とから入力された回転駆動力を走行駆動力として出力する。走行駆動力は、DCT60からディファレンシャル機構70を介して左右のドライブシャフト80L、80Rから駆動輪90L、90Rに伝達される。
図2は、図1のハイブリッド車両100の変速制御装置で、代表的なデュアルクラッチ式変速機のスケルトン図である。なお、基本的な構成は上述した特開2012−166574号公報とほぼ同様であるため、要部以外の詳細な説明は繰返さない。
DCT60は、前進7速、後進1速の並行軸方式であり、かつ、2つの乾式の第1クラッチC1,第2クラッチC2を備えるツインクラッチ式変速機である。
このDCT60は、多軸(ここでは6軸)構造により構成されていて、奇数段の変速段を設ける第1変速機構の第1入力軸IMSと、第1入力軸IMSの外筒を形成する外側入力軸OMSと、これらの第1入力軸IMS、外側入力軸OMSと平行に配置されて、第1入力軸IMSの変速段とは異なるギヤ比で偶数段の変速段を設ける第2変速機構の第2入力軸SSとを備える。
このうち、第1入力軸IMSは、モータ30のモータ出力軸35と一体となって回転可能となるように直結されている。また、第1入力軸IMSは、第1クラッチC1の係合または係合解除により、エンジン20のエンジン出力軸25に対しても断接可能に構成されている。
さらに、第1入力軸IMSの外側に位置する外側入力軸OMSには、アイドルシャフトIDSの伝達ギヤを介して、第2入力軸SSが常時噛合(図示せず)されていて、回転駆動力が第2クラッチC2から伝達されるように構成されている。また、アイドルシャフトIDSの回転駆動力は、リバースシャフトRVSに後進ギヤが結合されて形成される後進変速段GRから、リバースシャフトRVSに伝達されて、後進時の走行に用いられるとともに、このリバースシャフトRVSに連結されたオイルポンプOPの駆動力として用いることができる。
このDCT60には、これらの第1入力軸IMS、第2入力軸SSなどに対して軸方向を並行とするカウンタシャフトCSが設けられている。カウンタシャフトCSは、DCT60の駆動出力軸に相当して図1に示すディファレンシャル機構70に連結されている。
また、第1入力軸IMSには、奇数段用の第1クラッチC1が連結されている。第1入力軸IMSの軸延設方向で第1クラッチC1,第2クラッチC2の反対側の端縁部(モータ出力軸35の基端部)には、プラネタリギヤ機構110のリングギヤ115が固設されている。このリングギヤ115は、モータ30の径方向内側に位置する。そして、プラネタリギヤ機構110は、モータ出力軸35延設方向に沿ってモータ30と重複する位置まで、内挿されている。
さらに、このプラネタリギヤ機構110には、外側入力軸OMSの先端部にキャリヤ113が固設されている。キャリヤ113は、複数のプラネタリギヤ112をそれぞれ回動自在に軸支している。
プラネタリギヤ112は、リングギヤ115の内周面に形成された内歯とそれぞれ噛合わされるとともに、第1入力軸IMSのモータ30側の端部に固設されるサンギヤ111にもそれぞれ噛合わせられている。
また、リングギヤ115には、1速シンクロメッシュ機構114が設けられている。1速シンクロメッシュ機構114は、リングギヤ115の回転を規制して、変速段の選択時には、リングギヤ115を回転不能とすることができるように構成されている。
次に、この実施の形態の変速機構の構成について説明する。
変速機構は、第1変速ギヤ機構と第2変速ギヤ機構とを有している。
変速機構は、第1変速ギヤ機構と第2変速ギヤ機構とを有している。
まず、第1変速ギヤ機構について詳述する。第1入力軸IMSの外周には、図中左側から順に、第1速の変速段G1となるプラネタリギヤ機構110のキャリヤ113と、第3速の変速段G3となる駆動ギヤ131と、第7速の変速段G7となる駆動ギヤ171と、第5速の変速段G5となる駆動ギヤ151とが第1入力軸IMSに対して回転可能に軸支されて、第1変速ギヤ機構が構成されている。
このうち、駆動ギヤ131はプラネタリギヤ機構110のキャリヤ113に外側入力軸OMSを介して連結されている。第1入力軸IMS上には、3速の駆動ギヤ131と7速の駆動ギヤ171との間に3−7速シンクロメッシュ機構134が軸方向にスライド可能に設けられ、かつ、5速の駆動ギヤ151に対応して5速シンクロメッシュ機構152が軸方向にスライド可能に設けられている。
そして、所望の変速段G3,G5,G7に対応するシンクロメッシュ機構をスライドさせて、いずれかの変速段の駆動ギヤ131,151,171を選択的に第1入力軸IMSの外周面と同期させて接続させる。これにより所望の奇数段の変速段G3,G5,G7が形成される。
これらの第1入力軸IMSに関連する駆動ギヤ131,151,171は、シンクロメッシュ機構によって同期されてカウンタシャフトCS上に設けられた対応する従動ギヤ51,53,52に噛合わせられる。このような同期された状態で、第1クラッチC1が係合される。
第1クラッチC1の係合により、エンジン20のエンジン出力軸25は、第1クラッチC1を介して第1入力軸IMSに接続される。
この第1変速機構では、いずれかの奇数段の変速段G3,G5,G7の選択により、第1入力軸IMSが、カウンタシャフトCSに接続される。よって、エンジン20またはモータ30の回転駆動力はカウンタシャフトCSからディファレンシャル機構70を介して、左右のドライブシャフト80L,80Rから駆動輪90L,90Rに伝達される。そして、選択されたいずれかの変速段G3,G5,G7の変速比に応じて、駆動輪90L,90Rを所望の回転速度で回転させることができる。
次に、第2変速ギヤ機構について詳述する。第2入力軸SSの外周には、第2変速ギヤ機構を構成する第2速の変速段G2の駆動ギヤ142、第6速の変速段G6の駆動ギヤ146と、第4速の変速段G4の駆動ギヤ144とが相対的に回転可能となるように軸支されて、図中において左側から順に配置されている。
更に、第2入力軸SS上には、2速の駆動ギヤ142と6速の駆動ギヤ146との間で2−6速シンクロメッシュ機構183が軸方向にスライド可能に設けられている。また、4速の駆動ギヤ144に対応して4速シンクロメッシュ機構184が軸方向に沿ってスライド可能に設けられている。
そして、所望の偶数の変速段G2,G4,G6に対応するシンクロメッシュ機構183またはシンクロメッシュ機構184を第2入力軸SSの軸方向に沿ってスライドさせて、いずれかの変速段G2,G4,G6の駆動ギヤ142,144,146を選択的に第2入力軸SSの外周面と同期させて結合する。これにより所望の偶数段の変速段G2,G4,G6が形成される。
これらの第2入力軸SSに関連する駆動ギヤ142,144,146は、シンクロメッシュ機構によって同期されてカウンタシャフトCS上に設けられた対応する従動ギヤ51,53,52に噛合わせられる。このように駆動ギヤ142,144,146は、同期により第2入力軸SSに対して結合された状態で、第2クラッチC2が係合される。
第2クラッチC2の係合により、エンジン20のエンジン出力軸25は、第2クラッチC2を介して第2入力軸SSに接続される。第2速の変速段G2が選択された場合、第1クラッチC1の係合は解除される。また、カウンタシャフトCSへ駆動ギヤ131を介してモータ回転駆動力を伝達する経路は、プラネタリギヤ機構110の制御により、モータ駆動力を伝達できなくすることができる。
この第2変速機構では、いずれかの偶数段の変速段G2,G4,G6の選択により、第2入力軸SSが、カウンタシャフトCSに接続される。よって、エンジン20の回転駆動力はカウンタシャフトCSからディファレンシャル機構70を介して、左右のドライブシャフト80L,80Rから駆動輪90L,90Rに伝達される。そして、選択されたいずれかの変速段G2,G4,G6の変速比に応じて、駆動輪90L,90Rを所望の回転速度で回転させることができる。
このように第1変速機構、第2変速機構では、ECU10からの変速段切換要求に応じて、第1入力軸IMSにより形成される第1速または、第2入力軸SSにより形成される第2速の変速段が選択的に切換えられて、対応する第1クラッチC1または第2クラッチC2が選択的に断接される。
次に、これらの変速機構の動作に基づいて、DCT60による変速段G1〜G7の切換え制御について説明する。まず、このDCT60に用いられるシンクロメッシュ機構の動作のうち、前進段の第1速G1の動作について簡単に説明する。
第1速を変速段として選択する場合、1速シンクロメッシュ機構114によりプラネタリギヤ機構110のリングギヤ115の回転が規制される。リングギヤ115がロックされるとキャリヤ113は、モータ30のモータ出力軸35の回転数よりも減速された低速段のギヤ比で回転されて、前進時の第1速の変速段G1が形成される。
そして、この第1速の変速段G1が形成されると、キャリヤ113と一体に回転する外側入力軸OMSの回転駆動力が駆動ギヤ131,従動ギヤ51を介してカウンタシャフトCSに伝達されることにより、駆動輪90L,90Rを第1速の変速段G1の変速比で回転させることができる。
また、後進時、リングギヤ115は、当該1速シンクロメッシュ機構114によって回転不能にロックされ、かつリバースシャフトRVSに後進変速段GRを介して第1入力軸IMSが接続される。これにより、駆動輪90L,90Rに対して、前進時とは逆回転の回転駆動力が伝達されて、ハイブリッド車両100を後進方向へ走行可能とすることができる。
なお、DCT60において、奇数の変速段G1,G3,G5,G7と、偶数の変速段G2,G4,G6との間で変速段を一速上げる(シフトアップ)する場合または、変速段を一速下げる(シフトダウン)場合などでは、ECU10によって変速段の切換え要求がDCT60に出力される。
このとき、DTC60は、エンジン出力軸25と、第1入力軸IMSまたは第2入力軸SSとの断接を選択的に行なう。ECU10が変速段の切換制御をDTC60に行なわせる場合は、同時にDCT60に設けられた各変速段のシンクロメッシュ機構134,152またはシンクロメッシュ機構183,184が用いられて同期制御が行なわれる。
同期制御された各変速段に対応する第1クラッチC1,または第2クラッチC2は、エンジン出力軸25と、第1入力軸IMSまたは第2入力軸SSとの断接を選択的に行なう切換制御が行なわれる際、動力伝達の途切れ(トルク抜け)が抑制された円滑なシフトチェンジ(シフトアップまたはシフトダウン)を行なうことができる。
DCT60の同期制御では、入力側の変速段G1,G3,G5,G7を形成する駆動ギヤ131,151,171が係合される際、変速段G2,G4,G6を形成する駆動ギヤ142,144,146が係合を解除される。
また、入力側の変速段G2,G4,G6を形成する駆動ギヤ142,144,146が係合される際、変速段をG1,G3,G5,G7を形成する駆動ギヤ131,151,171が係合を解除される。
このようにDCT60では、選択的に第1入力軸IMSと第2入力軸SSとがカウンタシャフトCSに連結される。そして、ECU10で選択された変速段G1,G3,G5,G7または変速段G2,G4,G6のいずれかを介して、第1入力軸IMSと第2入力軸SSとが選択的にトルク伝達可能にカウンタシャフトCSに接続される。
カウンタシャフトCSに接続されたいずれか一方の第1入力軸IMSまたは第2入力軸SSに対応する第1クラッチC1、または第2クラッチC2は、係合されて回転駆動力をカウンタシャフトCSに伝達することができる。
DCT60は、エンジン20の回転駆動力またはモータ30の回転駆動力を、各変速段G1〜G7を形成する所望の変速比でカウンタシャフトCSに伝達させることができる。
しかしながら、このような従来のデュアルクラッチ式変速機を備えたハイブリッド車両100では、走行が開始される際、発進トルクを確保しやすいように前進段のうち、最も高い変速比の変速段G1が第1入力軸IMSとカウンタシャフトCSとの間に形成されて、回転駆動力が伝達される。このため、エンジン20の回転駆動力は、DCT60の第1の変速段G1に対応する第1クラッチC1のみにより第1入力軸IMSに伝達されて、第2クラッチC2は使用されない。
また、バッテリ50のSOCからECU10により算出される出力可能な大きさのモータ30によるアシスト力は、DCT60の構成上、モータ出力軸35に直結された第1入力軸IMSから回転駆動力の伝達経路に入力されている。以上のような複数の理由から、第1入力軸IMS側の回転駆動力を伝達する経路の中でも、第1の変速段G1を用いた伝達経路が比較的多く使用される。
ハイブリッド車両100の発進時、第1の変速段G1に対応する第1クラッチC1は、半係合状態を経て係合状態に移行される。半係合状態におけるエンジン回転数をアイドリング状態よりも高く設定することで充分な発進トルクを出力できる状態となる。しかしながら、走行発進時に第1クラッチC1が半係合状態のままで低速高負荷状態が連続すると第1クラッチC1に摩擦熱が生じる。
このため、第1クラッチC1は、登坂路で、低速高負荷状態が連続したり、あるいは渋滞中で坂道発進が繰返された場合、温度が上昇して過熱状態となるおそれがある。このように、過熱状態となった第1クラッチC1は、焼きつきを起こしたり、あるいは故障して次回の発進時や走行に影響を及ぼす可能性があった。
そこで本発明の実施の形態のハイブリッド車両100では、低速高負荷状態が連続しても、発進トルクの確保を考慮しつつ、第1クラッチC1の温度上昇を抑制できるように、車両発進時における変速段の選択制御を実行する。
次に、この実施の形態のハイブリッド車両100のDCT60の変速段制御のうち、発進時の変速段の選択を行なう処理について説明する。
図3は、本実施の形態に従うハイブリッド車両100の変速制御を説明するフローチャートである。実施の形態のハイブリッド車両100のECU10では、DCT60の変速制御が行なわれる。このうち、通常の変速制御をメインルーチンとすると、この図3のフローチャートは、発進時に変速段を選択するために行なわれるサブルーチンに相当している。
このハイブリッド車両100では、図示しないメインルーチンに従ってECU10により変速制御の処理が開始されると、発進に用いる変速段の選択要求でECU10は、この図3に示す選択処理をスタートさせる。まずECU10は、ステップS10でハイブリッド車両100が停車状態からの発進であるか否かを判定する。
ECU10はステップS10では、図示しない車速センサなどからの検出信号で停車状態からの発進であると判定されると(ステップS10でYES)、次のステップS20に処理を進める。また、停車状態からの発進でないときには(ステップS10でNO)、当該処理を終了して(エンド)、メインルーチンで行なわれる通常の変速制御の処理に移行する。
ECU10は、ステップS20で第1クラッチC1の温度と、第2クラッチC2の温度とを求める。この実施の形態では、第1クラッチC1の温度と、第2クラッチC2の温度とが車両状態から推定されて、第1クラッチC1の推定温度と、第2クラッチC2の推定温度として算出される。
たとえば第1クラッチC1の推定温度および第2クラッチC2の推定温度の各々は、前回係合時の状況(エンジン回転数/回転トルク/係合時間/半係合時間)と、停車状態など係合状態から開放された後の経過時間などを車両状態を示すパラメータとして求められることができる。そして、予め上記のようなパラメータの組み合わせなどから温度が設定されて、ECU10に設けられた図示しないメモリ装置に記憶されたマップまたは数式などにより算出される。そして、第1クラッチC1の推定温度と、第2クラッチC2の推定温度とに基づいて、後述する変速段を選択する際の最大発進トルクが算出される。推定温度の算出は、公知の算出式を用いることが可能である。このため、それらの詳細な説明は省略する。
第1クラッチC1の温度と、第2クラッチC2の温度とについては、温度センサなどを第1クラッチC1または、第2クラッチC2に設けて発進時の実温度を検出してもよい。すなわち、第1クラッチC1の温度または第2クラッチC2の温度は、任意の測定ないし推定方法によって求めることができる。
また、推定方法も上述した推定方法に限らず、発進時の第1クラッチC1の温度と、第2クラッチC2の温度とが得られれば、どのような手段や算出式で温度を推定してもよい。
ECU10は、ステップS30では、ECU10によって、算出された第1クラッチC1の推定温度が予め設定された所定値以上になっているか否かが判定される。
ステップS30で、第1クラッチC1の推定温度が予め設定された所定値以上になっている場合(ステップS30でYES)には、次のステップS40にECU10は処理を進める。また、ステップS30で第1クラッチC1の推定温度が予め設定された所定値以上になっていない場合(ステップS30でNO)には、発進時に第1クラッチC1を使用した第1速の変速段G1で走行を開始しても、第1クラッチC1が過熱状態となるおそれが少なく、熱条件として問題がない。このため、ECU10は、ステップS60に変速制御を進めて、第1速の変速段G1を用いて第1クラッチC1を係合させてハイブリッド車両100を発進させる(ステップS60)。
ステップS40では、ECU10で坂道発進繰返しモードの演算が行なわれる。
ECU10は、第1クラッチC1を用いた第1速の変速段G1で発進する場合と比較して、大きな発進トルクを第2クラッチC2の第2速の変速段G2からの発進で出力可能な場合は、第2速の変速段G2を選択して第2クラッチC2を用いた発進を行なわせる。
ECU10は、第1クラッチC1を用いた第1速の変速段G1で発進する場合と比較して、大きな発進トルクを第2クラッチC2の第2速の変速段G2からの発進で出力可能な場合は、第2速の変速段G2を選択して第2クラッチC2を用いた発進を行なわせる。
このため、坂道発進繰返しモードでは、まず、比較に用いるためのトルク値が算出される。ここでは、ECU10により第1速最大発進トルクT1と、第2速最大発進トルクT2と、モータ30の最大発進モータトルクTMとが算出される。
さらに詳しくは、バッテリ50のSOCから発進時のモータ30の最大発進モータトルクTMが算出される(処理α)と共に、C1クラッチ温度推定で決まる発進時(半クラッチ状態、半係合状態とも称す)の許容エンジン回転から第1速最大発進トルクT1が算出される(処理β)。
さらに、C2クラッチ温度推定で決まる発進時(半クラッチ状態、半係合状態とも称す)の許容エンジン回転から第2速最大発進トルクT2が算出される(処理γ)。
ここで、まず、第1,第2速最大発進トルクT1,T2の算出方法について詳述する。第1速の変速段G1に対応する第1クラッチC1を半係合状態として、発進させる際、第1クラッチC1の推定温度条件下で許容される範囲内の最大エンジン回転数がまず求められる。第1クラッチC1、第2クラッチC2が同じ半係合状態では、回転数が高いほど摩擦熱が多く発生して過熱すると考えられる。
この熱限界を示す最大エンジン回転数は、第1速の変速段を選択する際、第1クラッチC1に低速高負荷状態が連続して加わっても、第1クラッチC1の温度の上昇が抑制されて、限界温度まで過熱状態とならない回転数である。
この最大エンジン回転数に基づいてたとえば、他の引数として、第1クラッチC1,第2クラッチC2の負荷トルク、推定温度、半係合度合などを考慮したマップまたは数式が設定されて予め図示しないメモリ装置に記憶されていてもよい。この場合、最大エンジン回転数から各第1クラッチC1,第2クラッチC2の最大発進トルクを算出可能となる。
この実施の形態の坂道発進繰返しモードでは、メモリ装置から、予め設定されたマップまたは数式が呼び出されて、最大エンジン回転数から第1クラッチC1の第1速最大発進トルクT1が算出される。第1速最大発進トルクT1の算出では、最大エンジン回転数を求める際に第1速の変速段G1のギヤ比も考慮されて、第2速と比較してエンジン回転数が高回転で、同じ車速となることが条件として考慮されていてもよい。
また、第2速の変速段G2に対応する第2クラッチC2を半係合状態として、発進させる際、第2クラッチC2の推定温度条件下で許容される範囲内の最大エンジン回転数を求める。次に、この最大エンジン回転数から第2速最大発進トルクT2を算出する。
第2速最大発進トルクT2の算出では、第1速に比して低いエンジン回転数で所望の駆動輪90L,90Rの回転数を得られる第2速の変速段G2のギヤ比も考慮される。
これにより、第1速の変速段G1と同速度を低エンジン回転数で得られる第2速の変速段G2を使用して、半クラッチ状態で生じる摩擦熱を、回転速度を遅くすることにより減少させることができる。
ステップS50に処理が進むと、ECU10は、第1クラッチC1推定温度に基づいて半クラッチ時の許容エンジン回転数から第1速最大発進トルクT1を算出する。発進時のモータ30の最大発進モータトルクTMとこの第1速最大発進トルクT1との和により1速で、カウンタシャフトCSから出力可能な合算値(T1+TM)が求められる。
そして、ECU10は、この合算値(T1+TM)を、ステップS40で算出した第2速最大発進トルク(T2)の値との比較に基づいて選択を行ない、変速機構で大きな発進トルクが得られる第1速の変速段G1または、第2速の変速段G2のうち一方に切換えを行なう。
合算値(T1+TM)が第2クラッチC2の第2速最大発進トルク(T2)よりも大きな場合は、第1クラッチC1の温度に関する条件が第2クラッチC2の温度に関する条件よりも有利であるとECU10は判定(ステップS50でYES)して、ステップS60に処理を進める。
ステップS60では、ECU10によりDCT60の第1速の変速段G1が選択されて、第1クラッチC1を使用した発進が行なわれる。ハイブリッド車両100の発進時、ECU10は一旦、第1クラッチC1を半係合状態として走行を開始させる。エンジン20の回転駆動力が一定値以上の回転トルクを出力可能となると、ECU10は、第1クラッチC1を半係合状態から係合状態に移行させて走行を継続する。
ECU10によりDCT60の第1速の変速段G1が選択された場合、モータ30の回転駆動力が第1入力軸IMSに入力してDCT60のカウンタシャフトCSからディファレンシャル機構70および左右のドライブシャフト80L,80Rを介して、左右の駆動輪90L,90Rに伝達される。この変速段G1のように、奇数段の変速段G1,G3,G5,G7のいずれかが選択された場合には、第1入力軸IMSにモータ出力軸35が直結されているモータ30の回転駆動力は、各変速段G1,G3,G5,G7を介して伝達されるエンジン20の回転駆動力とともに、左右の駆動輪90L,90Rに伝達されて合算値(T1+TM)となる回転駆動トルクが、第1速の最大発進トルクとなって回転駆動させることができる。
また、ステップS50で第2クラッチC2の第2速最大発進トルク(T2)が第1速最大発進トルク(合算値(T1+TM))よりも大きい場合は、第1クラッチC1の温度に関する条件よりも、第2クラッチC2の温度に関する条件の方が有利であるとECU10は判定(ステップS50でNO)して、ステップS70に処理を進める。
すなわち、クラッチ耐熱温度条件で、許容されるエンジン回転数から得られる第2速最大発進トルク(T2+TM)が比較される第1最大発進トルク(T1+TM)よりも大きい場合は、第2の変速段G2が選択されてECU10は、ステップS70に処理を進める。このような状態では、ドライバビリティ、クラッチの熱損失などの面で発進時に第2速の変速段G2を選択した方が有利であることがある。
ステップS70では、ECU10によりDCT60の第2速の変速段G2が選択されて、第2クラッチC2を使用した発進が行なわれる。ECU10は、発進時に一旦、第2クラッチC2を半係合状態として走行を開始させる。
これにより、エンジン20の回転駆動力が半係合状態の第2クラッチC2、第2速の変速段G2を使用したDCT60のカウンタシャフトCSからディファレンシャル機構70および左右のドライブシャフト80L,80Rを介して、左右の駆動輪90L,90Rに伝達されてハイブリッド車両100を発進させることができる。
ハイブリッド車両100は、発進により、エンジン20の回転駆動力が一定値以上となり、所望の回転トルクが出力可能となると、ECU10は、第2クラッチC2を半係合状態から係合状態に移行させて走行を継続させる。
発進時の走行に使用する変速段の選択後、走行継続中のハイブリッド車両100では、ECU10により、図3に示す発進時の変速段の選択処理を終了(エンド)させて通常の変速制御(図示しないメインルーチン)に処理が戻される。
このように構成された実施の形態のハイブリッド車両100の変速制御装置では、坂道が続くような低速高負荷状態で連続して走行を行なった後、一旦停車した状態から発進する際、前回の走行で温度が上昇したと推定される第1クラッチC1を用いることなく、第2速の変速段G2に対応する第2クラッチC2を半係合させた状態から再発進させることができる。
たとえば、選択された第2速の変速段G2を用いて第2クラッチC2を係合させて発進した方が有利であることがある。このような場合、通常選択される第1速の変速段G1ではなく、第2速の変速段G2が選択されてハイブリッド車両100を発進させる。
このため、登坂路で渋滞中など、坂道発進が繰返される低速高負荷状態であっても過熱状態にある第1クラッチC1を用いることなく、エンジン20の回転駆動力を第2クラッチC2を介して、左右の駆動輪90L,90Rに伝達することができる。よってハイブリッド車両100は、繰返して坂道発進が行なわれても、第2速G2の第2クラッチC2を用いることで、さらなる第1クラッチC1の温度の上昇を抑制して、再発進可能である。
また、発進時、半クラッチ状態で第1クラッチC1に加えられるエンジン回転数と比較して、同じ車速で走行する場合の第2クラッチC2に加えられるエンジン回転数を、比較的、低回転域で用いることが出来る。このようにエンジン回転数が低い状態で走行可能であると、半クラッチ状態の第2クラッチC2は、摩擦により生じる発熱量を減少させて、さらに第2クラッチC2の過熱を抑制することができる。
[変形例]
上記実施の形態では、エンジン20のみで発進トルクが確保されるものとして、車両発進時における変速段を選択する制御について説明した。
上記実施の形態では、エンジン20のみで発進トルクが確保されるものとして、車両発進時における変速段を選択する制御について説明した。
しかしながら、下記のようにプラネタリギヤ機構110を制御することにより、第2速G2の選択時においても、モータ30の出力を伝達することが可能である。
この場合には、第2速選択時にも、エンジン20およびモータ30の両者によって発進トルクを確保することができる。
以下では、変形例として、第2速が選択された状態で、モータ30によるトルクアシストが可能である場合、第1クラッチC1、第2クラッチC2の何れか一方が車両発進時に選択される制御について説明する。
発進時、ECU10により、変速段として第2速G2が選択されて、第2クラッチC2を接続する際、図2に示す第2入力軸SS上の2−6速シンクロメッシュ機構183は、軸方向にスライドされて、2速の駆動ギヤ142を第2入力軸SSの外周面に同期させながら、第2入力軸SSに結合される。
駆動ギヤ142が第2入力軸SSに結合された状態で、第2クラッチC2が接続されると、エンジン20の回転駆動力は、外側入力軸OMSからアイドルシャフトIDSを介して、第2入力軸SSに伝達されて、当該駆動ギヤ142と噛合う従動ギヤ51を介してカウンタシャフトCSに伝達される。
また、ECU10は、プラネタリギヤ機構110の1速シンクロメッシュ機構114を動作させて、リングギヤ115の回転を規制する。これにより、キャリヤ113は、サンギヤ111の周囲で回転して、外側入力軸OMSに連結された駆動ギヤ131を回転させる。このとき駆動ギヤ131の回転速度は、モータ30のモータ出力軸35の回転速度よりも所定の変速比で減速された回転速度となる。これにより、モータ30の回転駆動力は当該駆動ギヤ131と噛合う従動ギヤ51を介してカウンタシャフトCSに伝達される。
すなわち、上記2速の駆動ギヤ142と当該駆動ギヤ131とは、従動ギヤ51を介して、同じカウンタシャフトCSに接続される。カウンタシャフトCSは、伝達されたエンジン20の回転駆動力とモータ30の回転駆動力とを協調させて、最大発進トルクを出力することができる。カウンタシャフトCSは、最大発進トルクを出力して図1に示すディファレンシャル機構70を介して、左右のドライブシャフト80L,80Rに設けられた駆動輪90L,90Rを回転させる。
このように、第2速G2を選択した状態で、第2クラッチC2を接続させるとともに、1速シンクロメッシュ機構114でリングギヤ115の回転を規制すると、エンジン20とモータ30との両方の回転駆動力を用いて、ハイブリッド車両100を走行させることができる。
図4は、この発明の実施の形態の変形例に従うハイブリッド車両100の変速制御を説明するフローチャートである。この図4と実施の形態の図3とを比較して、図4に示したフローチャートでは、図3に示したフローチャートにおけるステップS40およびステップS50に代えて、ステップS140およびステップS150が実行される。なお、その他のステップS10〜ステップS30、ステップS60、ステップS70における処理は、図3のフローチャートと同様である。このため、同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
この変形例では、ステップS140で、バッテリ50のSOCから発進時のモータ30の最大発進モータトルクTM1が算出される(処理α1)。最大発進モータトルクTM1は、第1速の変速段G1が選択された状態でカウンタシャフトCSから出力される最大の回転駆動トルクに相当する。
これとともに、第2速の変速段G2に対応する第2クラッチC2側に、変速機構の変速段が切換えられた状態で、バッテリ50のSOCから発進時のモータ30から出力されるモータトルクで得られる最大発進モータトルクTM2が算出される(処理α2)。最大発進モータトルクTM2は、第2速の変速段G2が選択された状態でカウンタシャフトCSから出力される最大の回転駆動トルクに相当する。
ステップS150に処理が進むと、ECU10は、第1クラッチC1推定温度に基づいて算出された(ステップS140の処理β)半クラッチ時の許容エンジン回転数から得られる第1速最大発進トルクT1と、当該最大発進モータトルクTM1とを合算する。
さらに、ステップS150で、ECU10は、第2クラッチC2推定温度に基づいて算出された(ステップS140の処理γ)半クラッチ時の許容エンジン回転数から得られる第2速最大発進トルクT2と、当該最大発進モータトルクTM2とを合算する。
そして、ECU10は、この合算値(T1+TM1)と合算値(T2+TM2)との比較に基づいて変速段の選択を行なう。変速機構は、大きな発進トルクが得られる第1速の変速段G1または、第2速の変速段G2のうち一方への切換えを行なう。
ステップS150で、合算値(T1+TM1)が合算値(T2+TM2)よりも大きな場合は、ECU10は、第1速の変速段G1を用いる判定(ステップS150でYES)を行ない、ステップS60に処理を進める。
この変形例では、実施の形態に加えてさらに、第2速最大発進トルク合算値((T2+TM2))には、モータ30の得られる最大発進モータトルクTM2が加えられている。これにより、合算値(T2+TM2)が合算値(T1+TM1)よりも大きな場合は、ECU10は、第2速の変速段G2を用いる判定(ステップS150でNO)を行ない、ステップS70に処理を進める。
このため、ステップS70では、選択された第2速の変速段G2により、モータ30のアシストトルクにより増大された発進トルクが駆動輪に伝達されて、ハイブリッド車両100をさらに容易に発進させることができる。
なお、この変形例のように、バッテリ50のSOCから発進時のモータ30の最大発進モータトルクTM1,TM2を算出して、変速段の選択(たとえばステップS150)に用いるものでは、第1速の変速段G1と第2速の変速段G2との変速比の差が少ない場合、最大発進モータトルクTM1,TM2を大きさの比較対象から除外(省略)することもできる。
この場合、ステップS150における変速段G1,G2の選択では、実質上、半クラッチ時の許容エンジン回転数から求められた第1速,第2速最大発進トルクT1,T2の大きさ(T1>T2)のみが比較される。
上述してきたように、この実施の形態のハイブリッド車両100によれば、低速高負荷状態が連続しても、第2速の変速段G2に対応する第2クラッチC2を用いて、少ない発熱で発進させることができ、第1クラッチC1の温度の上昇を抑制することができる。
この実施の形態の車両として、DCT60に1つのモータ30を用いた変速装置を示して説明してきたが、特にこれに限らず、2つまたはそれ以上のモータジェネレータを用いて構成されていてもよい。
また、モータ30の種類も駆動用のモータ、発電用のジェネレータなどを一体に、または個別に設けるなど、モータの形状、数量、配置および材質が実施の形態のDCT60に限定されるものではない。
最後に、本発明の実施の形態のハイブリッド車両100について総括する。図1を参照して、実施の形態のハイブリッド車両100は、エンジン出力軸25を回転駆動させるエンジン20と、バッテリ50からの電力の供給でモータ出力軸35を回転駆動するモータ30と、エンジン出力軸25とモータ出力軸35とに接続されて、入力された回転駆動力を複数の変速段のうちの選択された変速段を介してカウンタシャフトCSから出力するDCT90と、DCT60により第1の変速段〜第7の変速段G1〜G7を選択させて切換制御を行なうECU10とを備える。
図2を参照して、DCT60は、モータ出力軸35を直結し、カウンタシャフトCSとの間に少なくとも第1速の変速段G1を形成可能な奇数段の変速段を選択するための第1入力軸IMSと、カウンタシャフトCSとの間に少なくとも第2速の変速段G2を形成可能な偶数段の変速段を選択するための第2入力軸SSと、エンジン出力軸25と第1入力軸とIMSの間を断接させる第1クラッチC1と、エンジン出力軸25と第2入力軸SSとの間を断接させる第2クラッチC2とを含む。また、DCT60は、選択された変速段に応じて第1および第2のクラッチC1,C2のいずれか一方を係合する一方で、他方の係合を解除することにより、エンジン出力軸25に対して、第1入力軸IMSまたは第2入力軸SSを選択的に断接する。これにより、エンジン出力軸25に対して、第1入力軸IMSまたは第2入力軸SSを選択的に断接する。
図3を参照してECUは、車両発進時に、第1クラッチC1の温度に基づいて算出された第1速最大発進トルクT1に、モータ出力軸から第1入力軸に入力する最大発進モータトルクTMを加えた第1速最大発進トルク(T1+TM)と、少なくとも第2クラッチC2の温度に基づいて算出された最大の発進トルクを含む第2速最大発進トルクT2との大きさを比較して、カウンタシャフトCSから大きな発進トルクを出力できる第1速の変速段G1または第2速の変速段G2のうちの一方の変速段を選択する。
さらに、好ましくは、合算値の算出に用いる最大発進モータトルクTMを算出する。最大発進モータトルクTMは、バッテリ50のSOCに基づいて、モータ30からカウンタシャフトCSに出力可能な値が用いられる。そして、発進時、第1速最大発進トルクT1に最大発進モータトルクTMが含まれるように合算した値(T1+TM)として、第1速最大発進トルクT1をモータアシストしているトルクとして比較に用いる。比較に基づいて、第2速最大発進トルクT2が合算値(T1+TM)よりも大きい場合は、第2速の変速段G2が選択される。
このため、発進時に第2速の変速段を選択することにより発進トルクを第1クラッチC1選択時に比して、大きく得られる。よって、良好なドライバビリティ、クラッチの熱損失などの面で有利なものとなる。しかも、第1クラッチC1の過熱が未然に回避されて耐久性を向上させることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 ECU、20 エンジン、25 エンジン出力軸、30 モータ、35 モータ出力軸、40 PCU、50 バッテリ、60 DCT、70 ディファレンシャル機構、80L,80R ドライブシャフト、90L,90R 駆動輪、100 ハイブリッド車両、110 プラネタリギヤ機構、111 サンギヤ、112 プラネタリギヤ、113 キャリヤ、114,134,152,183,184 シンクロメッシュ機構、115 リングギヤ、131,142,144,146,151,171 駆動ギヤ、C1 第1クラッチ、C2 第2クラッチ、CS カウンタシャフト、IDS アイドルシャフト、OMS 外側入力軸、OP オイルポンプ、RG 後進変速段、RVS リバースシャフト、SS 第2入力軸。
Claims (1)
- エンジン出力軸を回転駆動させるエンジンと、
バッテリからの電力の供給でモータ出力軸を回転駆動するモータと、
前記エンジン出力軸とモータ出力軸とに接続されて、入力された回転駆動力を複数の変速段のうちの選択された変速段を介して駆動出力軸から出力する変速機と、
前記変速機による変速段の切換えを制御する制御部とを備え、
前記変速機は、
前記モータ出力軸を直結し、前記駆動出力軸との間に少なくとも第1速変速段を形成可能な奇数段の変速段を選択するための第1入力軸と、
前記駆動出力軸との間に少なくとも第2速変速段を形成可能な偶数段の変速段を選択するための第2入力軸と、
前記エンジン出力軸と前記第1入力軸との間を断接させる第1クラッチと、
前記エンジン出力軸と前記第2入力軸との間を断接させる第2クラッチと、
前記選択された変速段に応じて前記第1および第2のクラッチのいずれか一方を係合する一方で、他方の係合を解除することにより、前記エンジン出力軸に対して、前記第1入力軸または前記第2入力軸を選択的に断接する変速機構とを含み、
前記制御部は、車両発進時に、前記第1クラッチの温度に基づいて算出された最大の発進トルクに、前記モータ出力軸から前記第1入力軸に入力するモータトルクを加えた第1速最大発進トルクと、少なくとも前記第2クラッチの温度に基づいて算出された最大の発進トルクを含む第2速最大発進トルクとの大きさを比較して、前記駆動出力軸から大きな発進トルクを出力できる前記第1速変速段または第2速変速段のうちの一方の変速段を選択する、ハイブリッド車両。
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- 2013-11-25 JP JP2013243048A patent/JP2015101205A/ja active Pending
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