JP2015100919A - 液滴吐出ヘッドの製造方法、液滴吐出ヘッド及び画像形成装置 - Google Patents

液滴吐出ヘッドの製造方法、液滴吐出ヘッド及び画像形成装置 Download PDF

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圭史 三輪
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孝和 木平
Takakazu Kihira
孝和 木平
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Abstract

【課題】 製造コストのアップを抑えつつ、実使用時の不安定な液滴吐出状態の期間を短縮することができる。
【解決手段】液体を吐出するノズル41に連通する圧力発生室31が形成される流路形成基板20の一方の面上に振動板21を形成し、かつその振動板上に下電極膜22aと圧電体層22bと上電極膜22cとからなる圧電素子22を形成する。圧電素子22を封止する保護基板10を圧電素子22の設置側に設け、圧電素子22の流路形成基板20の形成側と反対側に圧力発生室31を形成する。その後、圧力発生室側を圧電素子22の存在する空間に対し負圧にした状態で、圧電素子22に分極用の電圧を印加する。
【選択図】図10

Description

本発明は、液滴を吐出するノズルと連通する圧力発生室内に供給された液体を圧電素子によって加圧することによりノズルから液滴を吐出させる液滴吐出ヘッドの製造方法、その製造方法によって製造された液滴吐出ヘッド、及び、その液滴吐出ヘッドを備えた画像形成装置に関するものである。
この種の液滴吐出ヘッドでは、圧電素子に所定の駆動電圧が印加されることにより、圧力発生室の壁の一部を形成する振動板を変形させるように圧電素子が振動し、その振動板の変形により液室内の液体が加圧され、ノズルから液滴を吐出させる。
上記圧電素子を構成する圧電体の結晶は、その圧電体の作製直後の状態では分極の向きがランダムな状態となっている。その後、圧電体に電圧を印加することで、圧電体の結晶は分極の向きが揃ったドメインの集合体となってくる。この圧電体の結晶における分極の向きは、下電極と圧電体と上電極とからなる圧電素子の分極特性、及びその圧電素子を用いた液滴吐出ヘッドの液滴吐出特性の安定化のため、液滴吐出ヘッドの使用開始時から揃っていることが好ましい。そこで、従来、液滴吐出ヘッドの使用開始前、具体的には液滴吐出ヘッドの製造工程において、圧電体の分極の向きを揃える分極処理を行う方法が提案されている。
特許文献1の液滴吐出ヘッドの製造方法では、液室形成基板上に振動板を形成するとともに振動板上に圧電素子を形成し、圧力発生室を液室形成基板に形成した後に、圧電素子に分極用の電圧を印加している。
本願発明者らは、研究開発時において上記特許文献1の液滴吐出ヘッドの製造方法のように圧電素子に分極用の電圧を印加した後の振動板の変位の様子を観察してみたところ、実使用時の初期段階で、振動板が圧力発生室の空間の中心に向かって徐々に撓み、安定した撓み位置に落ち着き、液滴吐出が安定する現象を見つけた。この現象により、実使用時の初期段階では、安定した撓み位置に落ち着くまで振動板の変位幅が変って液滴吐出特性が安定しなかった。通常、製造工程において液滴吐出の伴わない仮の駆動電圧を印加し、振動板の撓みを安定した撓み位置に落ち着かせて、実使用時の初期段階での液滴吐出を安定させていた。これでは、製造工程全体の製造時間が長くなってしまい、製造コストのアップに繋がっていたという問題点があった。
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、製造コストのアップを抑えつつ、実使用時の不安定な液滴吐出状態の期間を短縮できる液滴吐出ヘッドの製造方法、液滴吐出ヘッド及び画像形成装置を提供することである。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、液体を吐出するノズルに連通する圧力発生室が形成される流路形成基板の一方の面上に振動板を形成し、かつ該振動板上に下電極と圧電体と上電極とからなる圧電素子を形成する第1工程と、前記圧電素子を封止する保護基板を前記圧電素子の設置側に設ける第2工程と、前記圧電素子の前記流路形成基板の形成側と反対側に前記圧力発生室を形成する第3工程と、前記圧電素子に分極用の電圧を印加する第4工程とを有する液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記第4工程では、前記圧力発生室側を前記圧電素子の存在する空間に対し負圧にした状態で、前記圧電素子に分極用の電圧を印加することを特徴とするものである。
本発明によれば、製造コストのアップを抑えつつ、実使用時の不安定な液滴吐出状態の期間を短縮できるという特有な効果が得られる。
本実施形態のインクジェット記録装置の構成を示す斜視図である。 本実施形態のインクジェット記録装置の機構部の側面図である。 本実施形態の液滴吐出ヘッドの構成を説明する分解斜視図である。 液滴吐出ヘッドの平面図である。 図4のX−X’線断面図である。 図4のY−Y’線断面図である。 (a)〜(c)は本実施形態に係る液滴吐出ヘッドの製造工程断面図である。 (a)、(b)は本実施形態に係る液滴吐出ヘッドの製造工程断面図である。 (a)、(b)は本実施形態に係る液滴吐出ヘッドの製造工程断面図である。 (a)は第1実施例の圧力発生室の減圧構成を説明する長手方向からの断面図、(b)は短手方向からの断面図である。 時間−振動板撓み量の変化を示す特性図である。 振動板振動回数−滴速度変化率の変化を示す特性図である。 (a)は第2実施例の圧力発生室の減圧構成を説明する長手方向からの断面図、(b)は短手方向からの断面図である。 (a)は第3実施例の圧力発生室の減圧構成を説明する長手方向からの断面図、(b)は短手方向からの断面図である。 第4実施例の圧力発生室の減圧構成を説明する長手方向からの断面図である。
以下、本発明に係る液滴吐出ヘッドを搭載したインクジェット記録装置の構成について図面を参照して説明する。図1は本実施形態のインクジェット記録装置の構成を示す斜視図、図2は本実施形態のインクジェット記録装置の機構部の側面図である。
図1及び図2に示す本実施形態のインクジェット記録装置100は、装置本体の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ101を備えている。そして、そのキャリッジ101に搭載した本実施形態の液滴吐出ヘッド1及び液滴吐出ヘッド1に対してインクを供給するインクカートリッジ102等で構成される印字機構部103等を収納する。そして、装置本体の下方部には、前方側から多数枚の記録紙Pを積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい)104を抜き差し自在に装着されている。また、記録紙Pを手差しで給紙するために開かれる手差しトレイ105を有する。給紙カセット104あるいは手差しトレイ105から給送される記録紙Pを取り込み、印字機構部103によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ106に排紙する。
印字機構部103は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド107と従ガイドロッド108とでキャリッジ101を主走査方向に摺動自在に保持している。このキャリッジ101にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する液滴吐出ヘッド1を複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と直交する副走査方向に配列する。そして、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。また、キャリッジ101には液滴吐出ヘッド1に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ102を交換可能に装着している。
インクカートリッジ102は上方に大気と連通する大気口、下方には液滴吐出ヘッド1へインクを供給する供給口が設けられている。内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力により液滴吐出ヘッド1へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、各色毎に液滴吐出ヘッド1を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個の液滴吐出ヘッドでもよい。
ここで、キャリッジ101は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド107に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド108に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ101を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ109aで回転駆動される駆動プーリ110と従動プーリ111との間にタイミングベルト112を張装している。このタイミングベルト112をキャリッジ101に固定し、主走査モータ109aの正逆回転によりキャリッジ101が往復に走査される。
一方、給紙カセット104にセットした記録紙Pを液滴吐出ヘッド1の下方側に搬送するために、給紙ローラ113、フリクションパッド114、ガイド部材115、搬送ローラ116、搬送コロ117及び先端コロ118を有している。給紙ローラ113及びフリクションパッド114は、給紙カセット104から記録紙Pを分離給装する。ガイド部材115は記録紙Pを案内するガイド部材である。搬送ローラ116は、給紙された記録紙Pを反転させて搬送する搬送ローラである。先端コロ118は、搬送ローラ116の周面に押し付けられる搬送コロ117及び搬送ローラ116からの記録紙Pの送り出し角度を規定するコロである。搬送ローラ116は副走査モータ109bによってギヤ列を介して回転駆動される。
そして、キャリッジ101の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ116から送り出された記録紙Pを液滴吐出ヘッド1の下方側で案内するため用紙ガイド部材である印写受け部材119を設けている。この印写受け部材119の用紙搬送方向の下流側には、記録紙Pを排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ120と拍車121を設けている。さらに、記録紙Pを排紙トレイ106に送り出す排紙ローラ123と拍車124と、排紙経路を形成するガイド部材125、126とを配設している。
このインクジェット記録装置100で記録時には、キャリッジ101を移動させながら画像信号に応じて液滴吐出ヘッド1を駆動することにより、停止している記録紙Pにインクを吐出して1行分を記録し、その後、記録紙Pを所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または記録紙Pの後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ記録紙Pを排紙する。
また、キャリッジ101の移動方向に向かって右端側の記録領域を外れた位置には、液滴吐出ヘッド1の吐出不良を回復するための回復装置127を配置している。回復装置127はそれぞれ図示していないキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ101は印字待機中にはこの回復装置127側に移動されてキャッピング手段で液滴吐出ヘッド1をキャッピングして吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
更に、吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で液滴吐出ヘッド1の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出す。吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
次に、液滴吐出ヘッドの構成について図面を参照して説明する。図3、図4、図5及び図6は本実施形態の液滴吐出ヘッドの構成を説明する図である。図3は分解斜視図であり、図4は液滴吐出ヘッドの平面図である。図3及び図4は液滴吐出ヘッドの構成を分かり易くするため透明状態で図示している。また、図5は図4のX−X’線断面図であり、図6は図4のY−Y’線断面図である。図3〜図6に示す液滴吐出ヘッド1は、保護基板10、流路形成基板20及びノズル板40を含んで構成されている。また、各種保持部材やドライバIC等も含んで構成されている。そして、保護基板10には、流路形成基板20と熱膨張係数が大きく異なることのなく、かつ加工し易い材料を用いることが好ましい。本実施形態では、面方位<100>の単結晶シリコン基板を用いた。保護基板10では、後述する圧電素子22の振動動作を妨げないための凹部11、液供給路12等を、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)をプラズマ源とするシリコン深堀用エッチャーによるドライエッチングによって形成した。流路形成基板20上に形成された振動板21上には、空隙である圧力発生室31に対応させて、下電極膜22a、圧電体層22b及び上電極膜22cからなる圧電素子22を形成した。流路形成基板20では、シリコン単結晶基板からなり、その保護基板側の面には厚さ2.2[μm]程度の振動板21を形成した。
振動板21は、シリコン酸化膜、ポリシリコン及びシリコン窒化膜の積層膜からなっている。このような異なる膜を積層することにより、応力及び剛性の調整を行い、しかもクラック発生を防止している。圧電素子22の側面を覆うように厚さ1[μm]程度の絶縁膜23を形成し、圧電素子22の吸湿防止及び引き出し配線24と下電極膜22aの電気的な短絡を防止している。絶縁膜23では、圧電素子22の上面で側面に近い部分以外は除去され、圧電素子22の変位を妨げないようにしている。また、絶縁膜23では、下電極膜22a及び上電極膜22cのそれぞれの接続部に対応した個所に接続孔25が開孔されている。そして、接続孔25を介して下電極膜22aと引き出し配線24とが接続され、接続孔25を介して上電極膜2cと引き出し配線24とが接続されている。その引き出し配線24は、外部との電気的な接続部である電極端子26まで延設されている。なお、引き出し配線24と電極端子26とは同一材料で一体的に形成されている。電極端子26には、ドライバIC(不図示)がワイヤーボンドやFPC(Flexible printed circuits)を介して、またはフリップチップ実装により直接接続されている。引き出し配線24の保護のため、引き出し配線24を覆うように厚さ0.8[μm]程度のパッシベーション膜27が形成されている。このパッシベーション膜27では、外部との接続のため、電極端子26の端部が露出している。パッシベーション膜27では、圧電素子22の一部の上にも成膜されるが、絶縁膜23と同様に圧電素子22の上面でかつ側面に近い部分以外は除去され、圧電素子22の変位を妨げないようになっている。
振動板21には、貫通孔28が形成され、保護基板10に形成されたリザーバー(不図示)と流路形成基板20に形成された液供給部32が連通されている。下電極膜22aは、例えば、厚さ約0.1[μm]の白金(Pt)、イリジウム(Ir)等の金属材料、SROやLNO等の酸化物導電材料、あるいは金属材料と酸化物導電材料の双方を積層した膜からなり、スパッタリング法等で形成される。また、圧電体層22bは、例えば、厚さ1.0〜2.0[μm]程度のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)をゾルゲル法にて形成されている。上電極膜22cは、厚さ0.05〜0.1[μm]の下電極層22aと同様の材料及び構成からなり、スパッタリング法等で形成される。これらの厚みは、使用する材料やアクチュエータの仕様等により適宜調整することが望ましい。そして、下電極膜22a、圧電体層22b、上電極膜22cからなる圧電素子22には、後述するように、製造工程中で実使用時よりも高電圧を印加することで圧電体層22bの分極方向を揃えるエージング処理(分極処理)が行われる。
また、絶縁膜23には、水分の透過、吸収の少なく電気的絶縁性に優れた、約0.1[μm]のアルミナ(Al)上に、成膜レートが大きく、かつ電気的絶縁性に優れた、厚さ1[μm]程度のシリコン酸化膜を積層したものを用いた。そして、絶縁膜23上には、引き出し配線24が形成されている。引き出し配線24には、加工し易く、しかも電気伝導性に優れたAl系合金を用い、厚さは3.0[μm]程度とした。絶縁膜23及び上電極膜22cとの界面には、密着層として0.05〜0.1[μm]のTiNを形成している。保護基板10と流路形成基板20とは、接着剤42により貼り合わせている。なお、ヘッドの製造時においては、保護基板10に穴が開けられており、後述する製造工程後(エージング後)にその穴を接着剤等で封止する。従って、製造後、圧電素子22は、保護基板10に形成された凹部11内に、気密封止されることになる。この凹部11の開口断面形状は、圧電素子22の平面形状に略同一であることが好ましい。これにより、圧電素子22の全体に略均一に圧力が加わり、一部の部分に偏ることなく、圧力発生室の空間の中心に向かって圧電素子22の狙いの形状で撓ませることができる。ノズル板40には、公知のごとく、例えば、ステンレス、シリコン単結晶基板、ガラスセラミックス等を使用することができる。本実施形態においては、厚さが30[μm]のステンレスにプレス加工にてノズル41を開口し、液の出口側の面に撥液膜としてフッ素系の樹脂を蒸着にて成膜している。また、流路形成基板20とノズル板40とは、接着剤(不図示)にて貼り合わせている。
次に、本実施形態に係る液滴吐出ヘッドの製造工程について説明する。
図7(a)〜(c)、図8(a)、(b)、図9(a)、(b)は、本実施形態に係る液滴吐出ヘッドの製造工程断面図である。
はじめに、図7(a)に示すように、流路形成基板20上に振動板21となる積層膜を熱酸化、LP−CVD法により成膜する。その後、下電極膜をスパッタ、圧電体層をゾルゲル法、上電極膜をスパッタで成膜する。その後、フォトリソ・エッチングを行い、圧電素子22を形成する。
次に、図7(b)に示すように、圧電素子22を形成した流路形成基板20上に、絶縁膜23である、約0.1[μm]のアルミナ(Al)と1[μm]程度のシリコン酸化膜を成膜する。ALD(Atomic Layer Deposition)法にてアルミナ膜を成膜し、PE−CVD(Plasma-enhanced chemical vapor deposition)法にて、シリコン酸化膜を成膜する。そして、フォトリソ・エッチングプロセスにより、接続孔25及び振動板21の貫通孔28が形成される部分の絶縁膜23にエッチング開口する。具体的には、開口マスクによりレジストパターンを形成し、酸化膜ドライエッチャーにて、CF+CFを反応ガスとしたRIEにて酸化膜をエッチングし、続いて、Clを反応ガスとした、別のエッチャーにてアルミナをエッチングした。
次に、図7(c)に示すように、引き出し配線24及び密着層であるTiNとAl系合金をスパッタ法にて成膜する。配線材料の層を成膜した後、フォトリソ・エッチングにてパターニングし、引き出し配線24を形成する。
次に、図8(a)に示すように、引き出し配線24を保護するため、シリコン窒化膜であるパッシベーション膜27を厚さ0.8[μm]程度成膜する。そして、フォトリソ・エッチングを行い、電極端子部のパッシベーション膜、圧電素子22の上部のパッシベーション膜及び絶縁膜23のシリコン酸化膜部分、貫通孔28が形成される部分のパッシベーション膜及び振動板21の一部をエッチングして、貫通孔28を形成する。これらは、CF+CFを反応ガスとしたRIEで容易に行われる。
次に、図8(b)に示すように、フォトリソ・エッチングにて、振動板21の貫通孔28を開口する。これは、CF+CFを反応ガスとしたRIEで容易に行われる。図9(a)に示すように、保護基板10と流路形成基板20とを接着剤42で接合する。そして、図示していないが、吐出特性を向上するため、流路形成基板20を研磨により薄板化する。なお、薄板化の効果として、次工程でのエッチング時間の短縮、寸法の高精度化にも寄与している。次に、図9(b)に示すように、保護基板10、流路形成基板20及びノズル板40の全体を機械的に補強するためにサポート基板(不図示)を保護基板10の圧力発生室側と反対側の端部に接着する。その後、フォトリソ・エッチングにより、圧力発生室31、液供給部32及び流体抵抗部33からなる流路を形成する。ここでのエッチングは、ICPをプラズマ源とし、シリコン深堀エッチャーを用いたドライエッチングにて行った。吐出液による流路壁面(シリコン)の腐蝕を防ぐため、五酸化タンタルである接液膜をスパッタ法あるいは上記ALD法にて成膜した。最後に、後述する方法で圧電素子22に分極工程を施した後、保護基板10と流路形成基板20にノズル板40を接合して液滴吐出ヘッドが完成する。
以下、上記実施形態の液滴吐出ヘッドの製造工程における分極工程の一実施例(以下、本実施例を「第1実施例」という。)について説明する。
図10(a)は、第1実施例の圧力発生室の減圧構成を説明する長手方向からの断面図、図10(b)は短手方向からの断面図である。図10(a)、(b)に示すように、ウエハ又は液滴吐出ヘッド単体を圧力チャンバー50内に入れ、雰囲気を10.0[kPa]に減圧した。この減圧した状態で、圧電素子22に分極用の電圧を印加する。保護基板10で封止された空間の振動板21及び圧電素子22は、図10に示すように、大気圧時に比べて圧力発生室31側により大きく撓んだ状態で駆動される。減圧状態での分極工程では、圧電素子22が分極の進展で変形し、その変形により圧電素子直下部分の振動板が圧電素子の変形に合うように変形し、さらに圧電素子直下部分以外の振動板の塑性変形が促進されている。エージング用の電圧は、0〜30[V]、1[kHz]の矩形波で120分行った。このとき、15分毎に振動板の撓み量測定を行った。この測定結果は図11に示す。実施例1では、エージング処理工程後、液滴吐出可能となるように液滴吐出ヘッドを組み付けた後に液滴吐出を1.0E10回行い、滴速度の初期段階からの変化率を測定した。この測定結果は図12に示す。実施例2では、エージング時間を60分にすること以外は、実施例1と同様の素子を作成し、同様の測定を行った。
これに対し、比較例1では、圧力チャンバー50内の圧力を大気圧にした大気圧状態においてエージング処理を行うこと以外は、実施例1と同様の圧電素子を作成し、振動板の撓み量測定を行った。比較例2では、比較例1においてエージング時間を60分にすること以外は、比較例1と同様の圧電素子を作成し、振動板の撓み量測定を行った。
ここで、図11において、振動板の撓み量の負極性は、振動板が圧力発生室の空間側に変位していることを示している。図11の測定結果からわかるように、振動板の撓み量は、加圧した実施例1、2の方が60分で−0.20[μm]の安定した撓み位置に落ち着いている。その後ほとんど撓み量に変化は無い。これに対し、比較例1、2においては、60分で撓み量は−0.17[μm]程度であり、120分で−0.20[μm]の安定した撓み位置に落ち着いた。このように、実施例1、2と比較例1、2とにおいて、安定した撓み位置に落ち着く時間に差が出ている。実施例1、2が、比較例1、2より早く安定した位置に落ち着いた。また、図12の測定結果からわかるように、滴速度の1.0E10回駆動後の初期からの変化率に関しては、実施例1が最も変化が少なく約2[%]、実施例2及び比較例1が約3[%]で、実施例2は時間が半分ながら同等の変化量になっており、比較例2が最も変化が大きく、約5[%]変化した。この測定結果から、少なくとも、実施例1及び実施例2が、比較例1、2に比して、安定した液滴吐出を行うことができたことがわかる。
次に、上記実施形態の液滴吐出ヘッドの製造工程における分極工程の更に他の実施例(以下、本実施例を「第2実施例」という。)について説明する。
図13(a)は、第2実施例の圧力発生室の減圧構成を説明する長手方向からの断面図、図13(b)は短手方向からの断面図である。図13(a)、(b)に示すように、ウエハ又は液滴吐出ヘッド単体を第1シールド部材51及び第2シールド部材52で挟持するとともに、部材同士の間隙を第1封止部材53及び第2封止部材54で塞ぎ液供給路12、圧力発生室31及び液供給部32等の流路を外部から遮蔽している。第2封止部材54の一部には、減圧孔55が開口され、その減圧孔55に減圧手段(不図示)が連通されている。減圧手段を駆動させることで上記流路を減圧し、減圧した状態で圧電素子22に分極用の電圧を印加する。振動板21は、図13(b)中の破線で示すように、大気圧時に比べて圧力発生室31側により大きく撓む。
次に、上記実施形態の液滴吐出ヘッドの製造工程における分極工程の更に他の実施例(以下、本実施例を「第3実施例」という。)について説明する。
図14(a)は、第3実施例の圧力発生室の減圧構成を説明する長手方向からの断面図、図14(b)は短手方向からの断面図である。図14(a)、(b)に示すように、ウエハ又は液滴吐出ヘッド単体では、上述した図9(b)の工程で、貫通孔28を開口させる前段階で、圧力発生室31を第2シールド部材52で覆うとともに、部材同士の間隙を第2封止部材54で外部から遮蔽している。第2封止部材54の減圧孔55に減圧手段(不図示)が連通されている。その減圧手段を駆動させることで圧力発生室31を減圧し、減圧した状態で圧電素子22に分極用の電圧を印加する。振動板21は、図14(b)中の破線で示すように、大気圧時に比べて圧力発生室31側により大きく撓む。エージング後に、図9(b)に示すように、フォトリソ・エッチングにより、液供給部32及び流体抵抗部33からなる流路を形成し、貫通孔28を開口させた。ここでのエッチングは、ICPをプラズマ源とし、シリコン深堀エッチャーを用いたドライエッチングにて行った。
次に、上記実施形態の液滴吐出ヘッドの製造工程における分極工程の更に他の実施例(以下、本実施例を「第4実施例」という。)について説明する。
図15は、第4実施例の圧力発生室の減圧構成を説明する長手方向からの断面図である。図14に示すように、ウエハ又は液滴吐出ヘッド単体では、上述した図9(b)の工程で、貫通孔28を開口させた後で、液供給路12の開口部を封止膜61で塞ぐ。これにより、液供給路12、圧力発生室31及び液供給部32を第2シールド部材52で覆うとともに、部材同士の間隙を第2封止部材54で外部から遮蔽している。第2封止部材54の減圧孔55に減圧手段(不図示)が連通されている。その減圧手段を駆動させることで圧力発生室31を減圧し、減圧した状態で圧電素子22に分極用の電圧を印加する。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
液体を吐出するノズル41に連通する圧力発生室31が形成される流路形成基板20の一方の面上に振動板21を形成し、かつその振動板上に下電極膜22aと圧電体層22bと上電極膜22cとからなる圧電素子22を形成する第1工程と、圧電素子22を封止する保護基板10を圧電素子22の設置側に設ける第2工程と、圧電素子22の流路形成基板20の形成側と反対側に圧力発生室31を形成する第3工程と、圧電素子22に分極用の電圧を印加する第4工程とを有する液滴吐出ヘッドの製造方法において、第4工程では、圧力発生室側を圧電素子22の存在する空間に対し負圧にした状態で、圧電素子22に分極用の電圧を印加する。
これによれば、上記実施形態について説明したように、本願発明者らは、上述した実験により、圧力発生室31の空間の中心に向けて圧電素子22を強制的に撓ませて分極工程を行うことで、圧電素子22を圧力発生室31の空間における所望の位置に変位させることができることを見出した。そこで、本発明においては、上記第4工程にて、圧力発生室側を圧電素子22の存在する空間に対し負圧にした状態することで、振動板21を圧力発生室31の空間の中心に向けて変形させた。この状態で、圧電素子22に分極用の電圧を印加した。この結果、上述した実験結果により、振動板21が安定した撓み位置に近い位置に変位することがわかった。これにより、液滴吐出の伴わない仮の駆動電圧を印加して振動板21の撓みを安定した撓み位置に落ち着かせる時間を短縮でき、製造工程全体の製造時間を短縮できた。よって、製造コストのアップを抑えつつ、実使用時の不安定な液滴吐出状態の期間を短縮できる。
(態様2)
(態様1)において、第4工程は、圧力チャンバー50内に第2工程での中間体を装填して行われる。これによれば、上記実施形態について説明したように、振動板全体を略均一に圧力発生室側に引っ張ることができる。よって、振動板は一部に偏って撓むことなく、圧力発生室側の空間の中心に向かって振動板の狙いの形状で撓ませることができる。
(態様3)
(態様1)において、第4工程は、第2工程での中間体における圧力発生室31を少なくとも含む空間を遮蔽するとともに該遮蔽空間を減圧して行われる。これによれば、上記実施形態について説明したように、第2工程での中間体を別装置に移動させずに密閉性を確保できことで、製造コストのアップを抑えることができる。
(態様4)
(態様1)〜(態様3)のいずれかの液滴吐出ヘッドの製造方法によって製造された。これによれば、上記実施形態について説明したように、生産性を上げられ、液滴吐出ヘッドの低コスト化を図ることができる。
(態様5)
記録ヘッドで記録液剤を媒体に吐出して画像形成を行う画像形成装置において、記録ヘッドヘッドとして、(態様4)の液滴吐出ヘッド用いた。これによれば、上記実施形態について説明したように、振動板を安定した撓み位置に早く変位でき、不安定な液滴吐出状態の期間を短縮できるので画質の信頼性を高めることができる。
10 保護基板
11 凹部
12 液供給路
20 流路形成基板
21 振動板
22 圧電素子
22a 下電極膜
22b 圧電体層
22c 上電極膜
23 絶縁膜
24 引き出し配線
25 接続孔
26 電極端子
27 パッシベーション膜
28 貫通孔
31 圧力発生室
32 液供給部
33 流体抵抗部
40 ノズル板
41 ノズル
42 接着剤
50 圧力チャンバー
51 第1シールド部材
52 第2シールド部材
53 第1封止部材
54 第2封止部材
55 減圧孔
61 封止膜
特開2008−188922号公報

Claims (5)

  1. 液体を吐出するノズルに連通する圧力発生室が形成される流路形成基板の一方の面上に振動板を形成し、かつ該振動板上に下電極と圧電体と上電極とからなる圧電素子を形成する第1工程と、前記圧電素子を封止する保護基板を前記圧電素子の設置側に設ける第2工程と、前記圧電素子の前記流路形成基板の形成側と反対側に前記圧力発生室を形成する第3工程と、前記圧電素子に分極用の電圧を印加する第4工程とを有する液滴吐出ヘッドの製造方法において、
    前記第4工程では、前記圧力発生室側を前記圧電素子の存在する空間に対し負圧にした状態で、前記圧電素子に分極用の電圧を印加することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  2. 請求項1記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、
    前記第4工程は、圧力チャンバー内に前記第2工程での中間体を装填して行われることを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  3. 請求項1記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、
    前記第4工程は、前記第2工程での中間体における前記圧力発生室を少なくとも含む空間を遮蔽するとともに該遮蔽空間を減圧して行われることを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法によって製造されたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  5. 記録ヘッドで記録液剤を媒体に吐出して画像形成を行う画像形成装置において、
    前記記録ヘッドとして、請求項4記載の液滴吐出ヘッド用いたことを特徴とする画像形成装置。
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