JP2015098577A - 電気絶縁用ポリフェニレンスルフィドフィルム - Google Patents

電気絶縁用ポリフェニレンスルフィドフィルム Download PDF

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昌平 吉田
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葉子 若原
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Abstract

【課題】耐電圧性に優れた電気絶縁用の薄膜ポリフェニレンスルフィドフィルムを提供すること。
【解決手段】
灰分が10〜50質量%の範囲にあり、比重が0.5〜1.2の範囲にある二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムであって、フィルム中にボイドを有し、フィルムの断面構造が下記(1)〜(3)を満たすことを特徴とする。
(1)ボイドの最大厚みが0.2〜3μm
(2)ボイド厚みの標準偏差が0〜0.7μm
(3)厚み方向のボイド数が10〜60個/20μm
【選択図】なし

Description

本発明は、電気絶縁用のポリフェニレンスルフィドフィルムに関する。
近年、電気機器の高機能化、高性能化、大容量化に伴い、絶縁システムの信頼性向上が期待されている。特に、次世代自動車と呼ばれるHV(ハイブリッド車)、EV(電気自動車)などに搭載される車載モーターは、高出力ゆえに発熱量が大きく、絶縁材料には高い耐熱性や耐加水分解性が要求されている。そのため、耐熱性、耐加水分解性に優れ、耐薬品性、電気特性、機械特性、取扱い性などの各特性をバランスよく兼ね備えたポリフェニレンスルフィド(以下、PPSということがある)フィルムが絶縁材料として注目を集めている(特許文献1)。
一方、各種電気機器の小型化が進む中、フィルム絶縁材料にも薄膜化の要求が高まっている。しかしながら、フィルムの薄膜化は耐電圧性の低下を伴うため、フィルム厚みが薄い場合には十分な耐電圧性を担保できなくなる場合があった。本発明において、耐電圧性とは、絶縁破壊電圧の高さ、すなわち、絶縁体に電圧を印加して徐々に印加電圧を昇圧した場合に、急激に大きい電流が流れ始める電圧の高さによって評価される特性のことであり、絶縁破壊電圧が高いフィルムほど、耐電圧性が高く、絶縁材としての信頼性が高いフィルムといえる。また、絶縁破壊発生の前段階では漏れ電流とよばれる部分的な漏電が発生する電圧領域が存在し、その漏電の開始電圧は部分放電開始電圧とよばれて絶縁破壊電圧と同様に絶縁性の指標として用いられている。しかし、部分放電開始電圧と絶縁破壊電圧との間には必ずしも綺麗な相関がなく、部分放電開始電圧が改善する場合であっても絶縁破壊電圧が改善しない場合が存在する。その理由は、絶縁破壊の発生原因が、漏れ電流により発生するジュール熱だけでなく、加えた電界によって注入された電子が引き起こす電子なだれや、絶縁体内部の不純物・空孔などへの電界集中によって引き起こされる構造的な破壊など、多岐にわたるためである。
これまで、フィルム絶縁材の漏れ電流低減の手法として、発泡によりフィルム内部に多くのボイド(気泡)を形成させる方法(特許文献2)や、非相溶な有機粒子をフィルム中に添加して延伸製膜し、添加粒子の周囲にボイドを形成させる方法(特許文献3)などが知られているが、いずれのフィルムも漏れ電流の低減には一定の改善効果を示したものの、絶縁破壊電圧については改善がみられない場合があった。
特開2011−140150号公報 特開平9−100363号公報 特開2012−212785号公報
本発明の目的は、薄膜ながらに耐電圧性(絶縁破壊電圧)の高い電気絶縁用のポリフェニレンスルフィドフィルムを提供することにある。
本発明のポリフェニレンスルフィドフィルムは、上記課題を解決するために次のような構成を有する。すなわち、灰分が10〜50質量%の範囲にあり、比重が0.5〜1.2の範囲にある二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムであって、フィルム中にボイドを有し、フィルムの断面構造が下記(1)〜(3)を満たすことを特徴とする。
(1)ボイドの最大厚みが0.2〜3μm
(2)ボイド厚みの標準偏差が0〜0.7μm
(3)厚み方向のボイド数が10〜60個/20μm
本発明によれば、薄膜ながらに耐電圧性(絶縁破壊電圧)の高い電気絶縁用のポリフェニレンスルフィドフィルムを得ることができる。
ボイド厚み最大値、ボイド厚み標準偏差、厚み方向ボイド数の測定方法に関する説明の概略図である。 スリット台の上面図。
本発明者らは、前記課題、つまり、薄膜ながらに絶縁破壊電圧の高い電気絶縁用ポリフェニレンスルフィドフィルムについて鋭意検討した結果、無機粒子を含有させて延伸によってボイドを形成したPPSフィルムにおいて、形成されるボイドの形状や頻度、形状のバラツキ等を厳密に制御することによって、耐電圧性の高い二軸配向PPSフィルムが得られることを見出したものである。
以下、本発明について説明する。
本発明において、二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムとは、ポリフェニレンスルフィドを主成分とする樹脂組成物を、溶融成形してシート状とし、二軸延伸、熱処理してなるフィルムである。
本発明において、ポリフェニレンスルフィドを主成分とする樹脂組成物(以下、PPS樹脂組成物ということがある)とは、ポリフェニレンスルフィドを50質量%以上、好ましくは55質量%以上含む組成物をいう。PPSの含有量が50質量%未満では、PPSフィルムの特長である耐熱性、寸法安定性、機械的特性等を損なう場合がある。該組成物の溶融粘度としては、温度310℃、剪断速度1,000(1/sec)のもとで、100〜2,000Pa・sの範囲であることが繊維やフィルムの成形性の観点から好ましく、さらに好ましくは200〜1,000Pa・sの範囲である。
本発明において、ポリフェニレンスルフィドとは、繰り返し単位の70モル%以上(好ましくは85モル%以上)が下記構造式で示されるp−フェニレンスルフィド単位からなる重合体をいう。係る成分が70モル%未満ではポリマーの結晶性、熱転移温度等が低くなりPPSの特長である耐熱性、寸法安定性、機械的特性等を損なう場合がある。繰り返し単位の30モル%未満、好ましくは20モル%未満であれば共重合可能なスルフィド結合を含有する単位が含まれていても差し支えない。
Figure 2015098577
PPSの分子量は、重量平均分子量が7,500〜500,000の範囲であることが安定な製膜を行う上で好ましく、10,000〜100,000がより好ましい。
本発明のPPSフィルムは、ボイド厚みの最大値(ボイドの最大厚み)が0.2μm以上、3μm以下であることが重要であり、より好ましくは0.2μm以上、1μm以下である。ボイド厚みとは、フィルムを厚み方向にミクロトームで切断して断面を作製し、その断面を走査型電子顕微鏡で観察した場合に、黒い空洞として観察されるボイド部分のフィルム厚み方向の最大長さに対応する値であり、コントラストを利用した画像解析によって算出することができる。ボイド厚みの最大値は、サンプル中から無作為に選出して観察した合計500枚の断面観察画像にて観察された全ボイドのボイド厚みを求め、その最大値をボイド厚みの最大値とした。
ボイドの最大厚みが3μmを超える場合には、厚みが3μmを超えるボイド部位に電圧が集中して絶縁破壊の端緒となり、耐電圧性が向上するという本発明の効果が得られない場合がある。ボイドの最大厚みが0.1μmを下回る場合には、二軸延伸によるフィルム面方向へのボイドの拡大が十分に起きず、ボイドが絶縁層として機能しない場合がある。
ボイドの最大厚みを0.2μm以上、3μm以下とするためには、ボイドを形成させる核剤として無機粒子をフィルム中に添加することが好ましく、さらに、添加する無機粒子は、湿式の粒度分布測定装置を用いて水を分散溶媒として用いて測定される粒度分布において、3μmを超えるサイズの粒子の数の割合が4%以下であるものが好ましい。本発明のPPSフィルムは、ボイド厚みの標準偏差が0μm以上、0.7μm以下であることが重要であり、より好ましくは0μm以上、0.5μm以下である。ボイド厚みの標準偏差とは、前記のボイドの最大厚みと同様にサンプル中から無作為に選出して観察した合計500枚の断面観察画像にて観察された全ボイドのボイド厚みを求め、それらの標準偏差を表計算ソフトを用いて算出したものである。標準偏差が0.7μmを超えると、ボイドのサイズのバラツキが大きいことによって電圧の局在化が発生し、耐電圧性が向上するという本発明の効果が阻害される場合がある。
ボイド厚みの標準偏差を0μm以上、0.7μm以下とするためには、3μmを超えるサイズの粒子の数の割合が4%以下であり、かつ、数平均粒子径が0.1〜2μmの範囲である無機粒子をフィルムに添加し、さらに、粒子をPPS樹脂中に混練する際には、二軸押出機を用いて高い剪断応力で混練し、フィルムを延伸して製膜する際には、延伸速度を100〜1000%/sの範囲とすることが好ましい。
本発明のポリフェニレンスルフィドフィルムは、厚み方向のボイド数が10個/20μm以上、60個/20μm以下であることが重要であり、より好ましくは15個/20μm以上、60個/20μm以下である。厚み方向のボイド数は、前記のボイドの最大厚みと同様に断面の電子顕微鏡観察を行い、画像解析によりボイド数を算出する。ボイド数が10個/20μm未満の場合、絶縁層として機能するボイドの厚み方向の重なり(層数)が少ないために、耐電圧性が向上するという本発明の効果が得られない場合がある。
厚み方向のボイド数を10個/20μm以上、60個/20μm以下とするためには、数平均粒子径が0.1〜2μmの範囲である無機粒子を、フィルム中に10〜50質量%の濃度で添加することが好ましい。本発明に用いられるPPSフィルムは、PPS樹脂組成物中に添加した無機粒子を核として、延伸製膜によって核の周辺にボイドを形成させるという技術的特徴を有するものであることから、延伸フィルムであることが重要である。また、PPSフィルムの特長である高い機械強度、加工性、耐熱性などを十分に発揮するために、一軸配向フィルムではなく、二軸配向フィルムであることが重要である。
延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に長手方向と直交する方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と長手方向と直交する方向とを同時に延伸する方法)、またはそれらを組み合わせた方法を用いることができる。延伸倍率は、長手方向、長手方向と直交する方向ともに3.4〜4.5倍であることが好ましく、より好ましくは3.7〜4.4倍である。延伸倍率が3.4倍未満の場合、延伸後に熱処理される際にフィルムの平面性が著しく悪化する場合や、ボイドの形成が不十分となる場合がある。延伸倍率が4.5倍を超えると、延伸製膜の際に破れが多発して製膜安定性が悪化する場合がある。延伸速度は、ボイドの厚みムラを低減するために、少なくとも長手方向あるいは長手方向と直交する方向のいずれか一方の延伸速度が100〜1000%/sの範囲であることが好ましく、より好ましくは200〜900%/sである。
本発明のPPSフィルムは、JISK7250に従って測定される灰分が10質量%以上、50質量%未満であることが重要であり、より好ましくは15質量%以上、40質量%未満である。灰分が10質量%未満の場合、十分な数のボイドが形成されないために印加した電圧が限られたボイドに集中し、絶縁破壊電圧が低下する場合がある。灰分が50質量%を超えると、フィルムの引裂抵抗が著しく低下し、延伸途中に破断が生じるなどして安定した連続製膜ができなくなる場合がある。また、灰分が増加してボイドの体積が増加するに従い、フィルムの弾力が小さくなり、取扱い性が低下する場合がある。
本発明のPPSフィルムは、前述の灰分の比誘電率が1以上、2以下であることが耐電圧性を向上させるために好ましい。灰分の比誘電率は、灰分を粉末状に細かく粉砕し、インピーダンスアナライザーを用いて測定することができる。
本発明のPPSフィルムは、JISK7112に従って測定される比重が0.5以上、1.2以下であることが重要であり、より好ましくは0.5以上、1.0以下である。比重が0.5未満の場合、ボイドの体積が大きすぎることでフィルムの引裂抵抗が著しく低下し、延伸途中に破断が生じるなどして安定した連続製膜ができなくなる場合がある。
比重が1.2を超えると、ボイドの数や体積が小さいためにボイド形成による耐電圧性向上の効果が得られなくなる場合がある。
本発明の二軸配向PPSフィルムの厚みは、30〜100μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは40〜80μmの範囲である。厚みをかかる範囲内とすることで、小型化が要求されるモーター絶縁の用途において絶縁材としての取扱い性を低下させることなく絶縁材の省スペース化が実現でき、コイルの高占積率化によるモーターの高出力化に貢献することができる。厚みが30μm未満では、剛性が小さくなるため、モーターの間隙などに挿入する際にフィルムが容易に座屈する場合がある。厚みが100μmを超えると、絶縁材料の薄膜化により省スペース化するという目的が達成できなくなる。二軸配向PPSフィルムの厚みは、製膜する際のエクストルーダの吐出量や、延伸倍率を変化させることによって、調整することができる。吐出量が小さくなるほど、また、延伸倍率が大きくなるほど、フィルムの厚みは薄くなる。
本発明のPPSフィルムは、前述の灰分量を満たすことが好ましいが、さらに、少なくとも片面の最表層に灰分が1質量%未満のPPS層が積層されていることが表面からの無機粒子の脱落を抑制するために好ましく、さらには両面の最表層に灰分が1質量%未満のPPS層が積層されていることが、延伸製膜時の延伸性を改善するために好ましい。フィルムが該積層構成である場合、ミクロトームで切削した断面を走査型電子顕微鏡で観察することで界面位置を割り出すことができ、積層比率は断面の拡大画像を撮影し、イメージアナライザーを用いて各層の厚みを測定することで求めることができる。灰分が1質量%未満のPPS層の積層比率は、フィルム全体厚みの20%未満であることが、耐電圧性が向上するという本発明の効果を阻害しないために好ましい。最表層に積層したPPS層の灰分は、収束イオンビーム切削によって積層部分のサンプルを切り出した後、該サンプルについて灰分測定を行うことで求めることができる。
本発明のPPS樹脂組成物は、無機粒子を10質量%以上、50%質量未満の範囲で含有することが延伸によってフィルム中にボイドを形成するために好ましく、より好ましくは15質量%以上、40質量%未満である。無機粒子は例えば、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、アルミナ、カオリン、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、酸化亜鉛、金属などがあげられるが、特に、比誘電率が1〜2の範囲にある粒子がフィルムの耐電圧性を向上させるために好ましく、炭酸カルシウムが好適に用いられる。これらの粒子は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されても良い。PPS樹脂中に添加する粒子のサイズは、湿式の粒度分布測定装置を用いて水を分散溶媒として用いて測定される粒度分布において、3μmを超えるサイズの粒子の割合が4%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以下である。3μmを超えるサイズの粒子が4%より多く含まれる場合、均一で厚みの小さいボイドが形成できなくなる場合がある。また、粒度分布と同じ測定方法によって得られる粒子の数平均粒子径は、0.1〜2μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.5μmである。粒子の一次粒子の形状は特に制限されず、球状、直方体状、立方体状、不定形状などの粒子を用いることができる。
無機粒子をPPS樹脂中に混練する場合、分散不良を低減させる観点から高い剪断応力で混練可能な二軸押出機を用いるのが好ましく、安定した混練を行うために真空ベント機能を有するものが好ましい。スクリューの(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率は、押出機内での滞留時間を制御し、粒子を良好に分散させるために20〜60の範囲であることが好ましく、より好ましくは30〜50の範囲である。押出機のスクリュー回転数は100〜600回転/分とすることが分散性向上のために好ましく、より好ましくは200〜500回転/分である。混練温度は、原料として用いるPPS樹脂の融点をTmとした場合、吐出ポリマーの温度がTm+20℃〜Tm+60℃となるように設定することが、樹脂の粘度を制御して高い剪断応力を付与するために好ましい。吐出ポリマーの温度は押出機の口金直下で接触式の温度計を用いて測定することができる。混練の際、樹脂中への無機粒子の分散性を高める目的で、表面を脂肪酸や界面活性剤、カップリング剤などで処理した無機粒子を用いてもよい。
本発明の二軸配向PPSフィルムの製造方法について、一例を説明するが、本発明はかかる例に限定して解釈されるものではない。
(1)ポリフェニレンスルフィドの重合方法
硫化ナトリウムとジクロロベンゼンをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で、高温高圧下で反応させる。必要に応じて、トリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることも可能である。重合度調整剤として苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し230〜280℃で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルタで濾過後、粒状ポリマーを得る。アミド系極性溶媒を加えて30〜100℃の温度で攪拌処理して洗浄し、イオン交換水にて30〜80℃で数回洗浄し、酢酸カルシウムなどの金属塩水溶液で数回洗浄した後、乾燥してPPS粉粒体を得る。原料のジクロロベンゼンはp−ジクロロベンゼンを70モル%以上含むことが好ましいが、ポリフェニレンスルフィドの融点を調整するために、30モル%未満、好ましくは15モル%未満であればm−ジクロロベンゼンなどのように共重合可能なスルフィド結合を含有する単位が含まれていても差し支えない。
(2)PPS樹脂組成物の製造
上述のようにして得られたPPS粉粒体と、3μmを超えるサイズの粒子の数の割合が4%以下、数平均粒子径が、0.1〜2μmの炭酸カルシウム粒子とを炭酸カルシウムの添加量が10質量%以上50質量%未満となるように調整し、別々のフィーダーを用いて250〜350℃に設定した真空ベント付の二軸押出機に供給し、100〜600回転/分のスクリュー回転数にて溶融混練を行う。混練後は径が2〜5mmの口金穴からストランド形状に押し出し、カッターで切断してペレット化する。該ペレットは、灰分が10質量%以上50質量%未満である。
(3)二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造
上述のようにして得られたPPS樹脂組成物のペレットを減圧下で乾燥した後、押出機の溶融部が250〜350℃の温度、好ましくは270〜340℃に加熱された押出機に投入する。続いてTダイ型口金から吐出させ、20〜70℃の冷却ドラム上に静電荷を印加させながら密着急冷固化させ、未延伸シートを得る。次に、この未延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向させる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に長手方向と直交する方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と長手方向と直交する方向とを同時に延伸する方法)、またはそれらを組み合わせた方法を用いることができるが、延伸速度を高くしやすくボイド厚みのムラを低減しやすいことから逐次二軸延伸がより好ましく、ここでは逐次二軸延伸法を用いた例で説明する。
未延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムを加熱ロール群で加熱した後、長手方向に3.4〜4.5倍、好ましくは3.7〜4.4倍に1段もしくは2段以上の多段で延伸する。延伸温度は70〜130℃が好ましく、より好ましくは80〜110℃である。その後20〜50℃の冷却ロール群で冷却する。延伸速度は、ボイドの厚みムラを低減するために、100〜1000%/sの範囲であることが好ましく、より好ましくは200〜900%/sである。
長手方向と直交する方向の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。長手方向に延伸した後のフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、長手方向と直交する方向の延伸を行う。延伸温度は70〜130℃が好ましく、より好ましくは80〜110℃である。延伸倍率は3.4〜4.5倍、好ましくは3.7〜4.4倍の範囲である。
次に、この二軸延伸フィルムを緊張下で熱処理する。熱処理温度は160〜280℃の範囲が好ましく、1段もしくは2段以上の多段で行う。この際、該熱処理温度で長手方向と直交する方向に0〜10%の範囲で弛緩処理することが熱的寸法安定性の点で好ましい。2段の熱処理を行う場合、1段目の熱処理温度を160〜220℃の範囲とし、2段目の熱処理温度を230〜280℃の範囲で1段目の温度よりも高い温度とすることが、フィルムの平面性向上や安定した製膜のために好ましい。熱処理後はフィルムを室温まで冷却する。
物性値の測定方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
(1)樹脂の融点
JIS K7121−1987に準じ、示差走査熱量計としてセイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて測定した。試料3mgをアルミニウム製受皿上で室温から340℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、そのとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度を融点(℃)とした。
(2)フィルムの厚み
先端が平坦なダイヤルゲージ厚み計(ミツトヨ社製)を用いて面内を20点測定し、平均値を求めて厚み(μm)とした。
(3)灰分
JISK7250に基づき、るつぼに0.5cm×0.2cmの大きさに切り出した試料を入れ、マッフル炉(ヤマト科学社製)にて灰化温度850℃で灰化させ、灰分(%)を算出した。試料量は残存灰分の質量が100〜200mgの範囲となるように調整した。
(4)比重
フィルムを5cm×5cmの大きさに切り出し、JISK7112に基づいて電子比重計SD−120L(ミラージュ貿易社製)を用いて測定した。なお、測定試料は10個用意し、それぞれを測定した値の平均値をもって該フィルムの比重とした。
(5)ボイド厚み最大値、ボイド厚み標準偏差、厚み方向ボイド数
まず、1m×1mサイズのフィルムサンプルを用意し、該サンプルの全体から3mm×10mmサイズの長方形の小片サンプルを無作為に定めた向きで50個切り出した。次に、各小片サンプルを面方向に対して垂直な向き(厚み方向)にミクロトームで切断して断面を作製し、その断面を走査型電子顕微鏡JSM−6700F(日本電子社製)で観察し、無作為に定めた10箇所について2000倍に拡大観察した画像を得た。各小片サンプルについて同じ作業を行い、計500枚の画像(コントラストは自動調整、スケールバーなどの表示のない観察部のみの画像)を得た。次に、得られた500枚の画像を、画像解析ソフトImage−ProPLUS Version4.5.0.24(日本ローパー社製)を用いてそれぞれ解析した。解析方法は、まずフィルタ(メディアン)処理をカーネルサイズ3×3のもとで3回実施してノイズを除去し、次にコントラスト調整でコントラストを70に変更し、ついで空間較正および輝度較正(自由曲線)を実施した。次にラインプロファイル機能を用いて、フィルム面方向に垂直な長さ20μmラインについて、図1に示す通り、ライン上の輝度プロファイルを得た。((輝度の最大値)÷3)の値を閾値として設定し、図1中に斜線で示した部位、すなわち、閾値以下の輝度となる谷部分(複数存在する場合がある)をそれぞれボイドとみなし、順番にボイド1、ボイド2、ボイド3、・・・ボイドn(nは整数であり、厚み方向ボイド数を表す)とした。続いて、輝度プロファイルのグラフと閾値のラインの接点を結ぶ谷幅をボイドの厚みとして定義し、各ボイドのボイド厚みd〜dを求めた。500枚の電子顕微鏡画像から得たラインプロファイル上のすべてのボイドのうち、厚みが最大となるものをボイド厚みの最大値とした。
ボイド厚みの標準偏差は、500枚の電子顕微鏡画像から得たラインプロファイル上のすべてのボイドの厚みデータを元データとし、表計算ソフトMicrosoftExcel2010のSTDEV関数を用いて算出した。
厚み方向のボイド数は、500枚の電子顕微鏡画像から得たラインプロファイルについて厚み方向のボイド数を表すnの値を求め、それらの数平均値を用いた。
フィルムが複数層の積層構成からなる場合であっても、上記と同様の方法にてボイドを定義し、ボイド数を求めることができる。
(6)比誘電率
灰分測定と同条件で灰化した場合に残存する無機成分を1g用意し、粉末状に細かく粉砕したうえで液体用セル(12964A型5mL液体測定セル)に入れ、これを電極ではさみ、インピーダンスアナライザー1260型(ソーラトロン社製)を用いてAC1MHzで測定した。
(7)絶縁破壊電圧
JIS C2151に準じ、交流絶縁破壊試験器(春日電機株式会社製、AC30kV)を用いて測定した。試験片のサイズは25cm×25cmの正方形とし、23℃、65%RHの環境下で調湿したものを用い、周波数60Hz、昇圧速度1000V/secで測定した。用いた電極の形状は、台座となる下電極がφ75mm、高さ15mmの円柱形であり、上電極がφ25mm、高さ25mmの円柱形である。いずれの電極も、試験片を挟む側の面はR3mmで面取りされたものを用いた。測定は各フィルムにつき10回ずつ測定し、その平均値を絶縁破壊電圧とした。
(8)耐電圧性向上率
本発明において、耐電圧性とは、前記の通り絶縁破壊電圧によって表されるものである。絶縁破壊電圧はフィルムの厚みに大きく依存することから、厚みの異なるPPSフィルムのそれぞれについて耐電圧性向上率、すなわち、耐電圧性が従来品と比べて向上したか否かを評価するために、従来品について耐電圧性と厚みの関係を表す検量線を作成した。
本発明では、下記の条件で製膜された90個のPPSフィルムを従来品と定義し、これらのフィルムについて絶縁破壊電圧および厚みを測定し、全データをもとに厚み(μm)をX軸、絶縁破壊電圧(kV)をY軸とした散布図のグラフを作成して、その散布図から得られる線形近似曲線を検量線として耐電圧性向上率を算出した。具体的な耐電圧性向上率の算出方法は次の通りである。
(a)二軸配向PPSフィルム(従来品)の作製−1
オートクレーブに、47%水硫化ナトリウム9.44kg(80モル)、96%水酸化ナトリウム3.43kg(82.4モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)13.0kg(131モル)、酢酸ナトリウム2.86kg(34.9モル)、及びイオン交換水12kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら235℃まで3時間かけて徐々に加熱し、水17.0kgおよびNMP0.3kg(3.23モル)を留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。次に、主要モノマーとしてp−ジクロロベンゼン(p−DCB)11.5kg(78.4モル)、副成分モノマーとして1,2,4−トリクロロベンゼン 0.007kg(0.04モル)、を加え、NMP22.2kg(223モル)を追添加して反応容器を窒素ガス下に密封し、400rpmで撹拌しながら、200℃から270℃まで0.6℃/分の速度で昇温した。270℃で30分経過後、水1.11kg(61.6モル)を10分かけて系内に注入し、270℃で更に反応を100分間継続した。その後、水1.60kg(88.8モル)を系内に再度注入し、240℃まで冷却した後、210℃まで0.4℃/分の速度で冷却し、その後室温近傍まで急冷した。内容物を取り出し、32リットルのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別した。得られた粒子を再度38リットルのNMPにより85℃で洗浄した。その後67リットルの温水で5回洗浄、濾別し、0.05質量%酢酸カルシウム水溶液70,000gで5回洗浄、濾別した。得られた粒子を60℃で熱風乾燥し、120℃で20時間減圧乾燥することによって白色のポリフェニレンスルフィド樹脂の粉粒体を得た。得られたPPS樹脂の粉粒体は、融点が280℃であった。
次に上記のPPS粉粒体を320℃に設定した単軸押出機にて溶融混練してストランド形状に押し出し、カッターで切断してペレット化した。次に、該ペレットを180℃の温度で3時間、真空乾燥した後、320℃に加熱したエクストルーダに供給し、Tダイ型口金から吐出させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着急冷固化させ、未延伸のPPSシートを得た。次いで、得られた未延伸シートを、表面温度95℃の複数の加熱ロールに接触走行させ、加熱ロールの次に設けられた周速の異なる30℃の冷却ロールとの間で長手方向に3.6倍延伸した。このようにして得られた1軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と直交する方向に100℃の温度で3.6倍に延伸し、続いて温度200℃で1段目熱処理を行い、続いて265℃で2段目熱処理を行い、引き続き、260℃の弛緩処理ゾーンで横方向に5%弛緩処理を行った後、室温まで冷却し、ついでフィルムエッジを除去することで、厚み50μmの二軸配向PPSフィルムを得た。
(b)二軸配向PPSフィルム(従来品)の作製−2
上記(a)の製膜過程において、エクストルーダのスクリュー回転数を調整して口金から吐出させる樹脂の量を調整することにより、厚みが異なる種々の二軸配向PPSフィルムを得た。具体的には延伸後の厚みがそれぞれ20μm、30μm、40μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μmとなるように吐出量を調整し、全部で8種類の二軸配向PPSフィルムを得た。
(c)二軸配向PPSフィルム(従来品)の作製−3
上記(a)、(b)の厚みの異なる二軸配向PPSフィルムについて、製膜過程において延伸倍率を変更することにより、延伸倍率の異なる種々の二軸配向PPSフィルムを得た。具体的には、延伸倍率(長手方向×長手方向と直交する方向)を、それぞれ3.3倍×3.3倍、3.4倍×3.4倍、3.5倍×3.5倍、3.7倍×3.7倍、3.8倍×3.8倍、3.9倍×3.9倍、4.0倍×4.0倍、4.1倍×4.1倍、4.2倍×4.2倍となるよう変更し、全部で81種類の二軸配向PPSフィルムを得た。
(d)検量線の作成
上記(a)、(b)、(c)で作製した全90個の二軸配向PPSフィルムについて、厚みと絶縁破壊電圧をそれぞれ測定し、表計算ソフトMicrosoftExcel2010を用いて、横軸(x軸)を厚み(μm)縦軸(y軸)を絶縁破壊電圧(kV)とする散布図を作成し、作製したグラフについて線形近似の近似曲線を求めた。得られた検量線を表す式は、
y=0.17x+1.03
であった。
(e)耐電圧性向上率の算出
上記(d)で得た検量線の式のxに、耐電圧性向上率を求めたいフィルムの厚み(μm)を代入してyを求め、そのyの値を該フィルムの推定絶縁破壊電圧(kV)とした。次に実際に該フィルムについて絶縁破壊電圧(kV)を測定し、下記式に基いて耐電圧性向上率を算出した。
[耐電圧性向上率(%)]={[絶縁破壊電圧(kV)]/[推定絶縁破壊電圧(kV)]−1}×100
(9)取扱い性
スリット間隙の調節が可能なコの字型のスリット台(コの字の一辺が4mm、スリット深さは50mm、図2)を作製し、全てのスリット間隙が一律で積層体厚みの1.2倍の間隙(ただし、120μmを上限とし、それ以上は広げない)となるように調整した後、コの字型に折り曲げ成型した積層体を約20mm挿入する際の状態から下記の通り取扱い性を判定した。スリット台の素材は珪素鋼であり、表面粗度(SRa)は2μmであった。コの字型の折り曲げ加工は、モーター加工機(小田原エンジニアリング社製)を用いて行い、具体的には、12mm×80mmの長方形に打ち抜いた後に、短辺側を4mm間隔で三つ折りした。打ち抜きから折り曲げまでの加工を連続で行って100個の試験片を作製し、以下の取り扱い性を評価した。
取扱い性
A:挿入性に問題なく、容易に挿入できる。
B:フィルムが座屈して挿入が困難である、
または打ち抜きの際にフィルムが裂ける場合がある。
C:挿入時にフィルムが引っ掛かる。
(10)製膜安定性
二軸延伸製膜時の製膜安定性は、合計時間24時間にわたり連続製膜実験を行い、延伸工程でのフィルム破れの発生頻度によって以下の通り判定した。
A:フィルム破れが1回も発生しない。
B:フィルム破れが1〜5回発生。
C:フィルム破れが6回以上発生。
(11)粒子脱落
テープ走行性試験機TBT−300D/H型((株)横浜システム研究所製)を使用し、幅1/2インチのテープ状にスリットしたフィルムを、23℃、65%RH雰囲気にて、入側張力500g、巻き付け角60度で直径10mmのステンレス製丸棒(表面粗さがRaで50nm、Rtで2500nmのもの)に接触させ、走行速度500m/分にて50回走行させた後、ステンレス製丸棒を目視で観察し、次の基準で判定した。なお、評価は各フィルムの表裏について個別に行い、表裏のうちで粉の付着幅が小さかった面の判定を該フィルムの最終判定とした。
粒子脱落
A:丸棒上に粉の付着がみられない。
B:丸棒上の一部に粉の付着がみられるが、付着幅がフィルムと接触していた幅の50%未満。
C:丸棒上に粉の付着がみられ、付着幅がフィルムと接触していた幅の50%以上。
(参考例1)PPS樹脂(PPS−1)の作製
オートクレーブに、47%水硫化ナトリウム9.44kg(80モル)、96%水酸化ナトリウム3.43kg(82.4モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)13.0kg(131モル)、酢酸ナトリウム2.86kg(34.9モル)、及びイオン交換水12kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら235℃まで3時間かけて徐々に加熱し、水17.0kgおよびNMP0.3kg(3.23モル)を留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。次に、主要モノマーとしてp−ジクロロベンゼン(p−DCB)11.5kg(78.4モル)、副成分モノマーとして1,2,4−トリクロロベンゼン 0.007kg(0.04モル)、を加え、NMP22.2kg(223モル)を追添加して反応容器を窒素ガス下に密封し、400rpmで撹拌しながら、200℃から270℃まで0.6℃/分の速度で昇温した。270℃で30分経過後、水1.11kg(61.6モル)を10分かけて系内に注入し、270℃で更に反応を100分間継続した。その後、水1.60kg(88.8モル)を系内に再度注入し、240℃まで冷却した後、210℃まで0.4℃/分の速度で冷却し、その後室温近傍まで急冷した。内容物を取り出し、32リットルのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別した。得られた粒子を再度38リットルのNMPにより85℃で洗浄した。その後67リットルの温水で5回洗浄、濾別し、0.05質量%酢酸カルシウム水溶液70,000gで5回洗浄、濾別した。得られた粒子を60℃で熱風乾燥し、120℃で20時間減圧乾燥することによって白色のポリフェニレンスルフィド樹脂の粉粒体を得た。得られたPPS樹脂の粉粒体は、融点が280℃であった。
(参考例2)メタ共重合PPS(PPS−2)の作製
主要モノマーとして70.6モルのp−ジクロベンゼン、副成分モノマーとして7.8モルのm−ジクロロベンゼン、および0.04モルの1,2,4−トリクロルベンゼンを用いたこと以外は、上記参考例1と同様にしてメタ共重合PPS樹脂の粉粒体を作製した。得られたPPS樹脂の粉粒体は、融点が255℃であった。該粉粒体を320℃に設定した単軸押出機にて溶融混練してストランド形状に押し出し、カッターで切断してペレット化した。
(実施例1)
参考例1で作製したPPS−1の粉粒体と、数平均粒子径が1.2μmで3μmを超える粒子の割合が3%の不定形の炭酸カルシウム粒子とを、真空ベント付の二軸押出機([スクリュー軸長さ/スクリュー軸径]の比率は45)に炭酸カルシウムの割合が20質量%となるように供給し、スクリューの回転数が300回転、吐出ポリマーの温度が320℃になるようにして混練し、径が4mmの口金からストランド形状に押し出してカッターで切断し、PPS樹脂組成物のペレットを得た。
次に該ペレットを180℃の温度で3時間、真空乾燥した後、320℃に加熱したエクストルーダに供給し、Tダイ型口金から吐出させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着急冷固化させ、未延伸のPPSシートを得た。次いで、得られた未延伸シートを、表面温度95℃の複数の加熱ロールに接触走行させ、加熱ロールの次に設けられた周速の異なる30℃の冷却ロールとの間で300%/sの速度で長手方向に3.6倍延伸した。このようにして得られた1軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と直交する方向に100℃の温度で8%/sの速度で3.6倍に延伸し、続いて温度200℃で1段目熱処理を行い、続いて265℃で2段目熱処理を行い、引き続き、260℃の弛緩処理ゾーンで横方向に5%弛緩処理を行った後、室温まで冷却し、ついでフィルムエッジを除去することで、厚み50μmの二軸配向PPSフィルムを得た。
(実施例2)
二軸配向PPSフィルムを作製する際、延伸倍率を長手方向に4.0倍、長手方向と直交する方向に4.0倍とした以外は、実施例1と同様にして、厚み40μmの二軸配向PPSフィルムを得た。
(実施例3)
炭酸カルシウム粒子の添加量を13質量%となるように変更した以外は、実施例1と同様にして厚み50μmの二軸配向PPSフィルムを得た。
(実施例4)
炭酸カルシウム粒子の添加量を42質量%となるように変更した以外は、実施例1と同様にして厚み50μmの二軸配向PPSフィルムを得た。
(実施例5)
エクストルーダの吐出量を調整し、フィルムの最終厚みが90μmとなるようにした以外は、実施例1と同様にして、厚み90μmの二軸配向PPSフィルムを得た。
(実施例6)
エクストルーダの吐出量を調整し、フィルムの最終厚みが35μmとなるようにした以外は、実施例1と同様にして、厚み35μmの二軸配向PPSフィルムを得た。
(実施例7)
エクストルーダの吐出量を調整し、フィルムの最終厚みが110μmとなるようにした以外は、実施例1と同様にして、厚み110μmの二軸配向PPSフィルムを得た。
(実施例8)
参考例2で作製したPPS−2のペレットと実施例1のPPS樹脂組成物とを、それぞれ180℃の温度で3時間、真空乾燥した後、2台のエクストルーダに別々に供給し、溶融状態で口金上部にある積層装置で3層(積層順はPPS−2/PPS樹脂組成物/PPS−2、積層比は1:7:1)になるように導き、続いてTダイ型口金から吐出させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着急冷固化させて、未延伸3層積層シートを得た後、実施例1と同様の手法で延伸を行い、厚み50μmの二軸配向PPSフィルムを得た。得られた二軸配向PPSフィルムは、断面を走査型電子顕微鏡で観察した場合に3層構成からなり、そのうち両表層の灰分が0.35質量%、フィルム全体の灰分は16質量%であった。
(実施例9)
添加する粒子として、炭酸カルシウムの代わりに数平均粒子径が1.0μmで3μmを超える粒子の割合が2%の球状のシリカ粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして厚み50μmの二軸配向PPSフィルムを得た。
(実施例10)
添加する粒子として、数平均粒子径が0.5μmで3μmを超える粒子の割合が1%の立方体状の炭酸カルシウムを用いた以外は、実施例1と同様にして厚み50μmの二軸配向PPSフィルムを得た。
(実施例11)
製膜の際、長手方向の延伸速度を8%/sとした以外は、実施例1と同様にして、厚み50μmの二軸配向PPSフィルムを得た。
(実施例12)
二軸配向PPSフィルムを作製する際、延伸倍率を長手方向に4.3倍、長手方向と直交する方向に4.3倍とした以外は、実施例1と同様にして、厚み35μmの二軸配向PPSフィルムを得た。
(実施例13)
二軸配向PPSフィルムを作製する際、延伸倍率を長手方向に4.3倍、長手方向と直交する方向に4.3倍とした以外は、実施例8と同様にして、厚み35μmの3層構成からなる二軸配向PPSフィルムを得た。
(実施例14)
積層構成を2層(積層順はPPS−2/PPS樹脂組成物、積層比は1:8)として製膜した以外は、実施例13と同様にして、厚み35μmの2層構成からなる二軸配向PPSフィルムを得た。
(比較例1)
炭酸カルシウムを添加せずにPPSの粉粒体のみからペレットを作製し、それを原料にして製膜した以外は、実施例1と同様にして厚み50μmの二軸配向PPSフィルムを得た。
(比較例2)
炭酸カルシウム粒子の添加量を5質量%となるように変更した以外は、実施例1と同様にして厚み50μmの二軸配向PPSフィルムを得た。
(比較例3)
炭酸カルシウム粒子の添加量を60質量%となるように変更した以外は、実施例1と同様にして二軸延伸を試みたが、延伸製膜途中に破れが多発し、安定な連続製膜が困難であった。わずかに採取したサンプルの比重および粒子脱落を評価したところ、比重は0.4であり、粒子脱落の判定はCであった。
(比較例4)
添加する粒子として、数平均粒子径が1.2μmで3μmを超える粒子の割合が15%の不定形の炭酸カルシウムを用いた以外は、実施例1と同様にして厚み50μmの二軸配向PPSフィルムを得た。
(比較例5)
実施例1で、炭酸カルシウムを20重量%添加する代わりに、融点235℃のポリメチルペンテンを5重量%添加してPPS樹脂組成物を作製した以外は、実施例1と同様にして厚み50μmの二軸配向PPSフィルムを得た。
(比較例6)
添加する粒子として、炭酸カルシウムの代わりに数平均粒子径が0.05μmで3μmを超える粒子の割合が0%の不定形の酸化チタン粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして厚み50μmの二軸配向PPSフィルムを得た。
Figure 2015098577
本発明の二軸配向PPSフィルムは、モーター、コンデンサー、変圧器、ケーブル、高電圧伝送トランス等に用いられる電気絶縁材として利用可能である。
1 スリット間隙
2 4mm

Claims (6)

  1. 灰分が10〜50質量%の範囲にあり、比重が0.5〜1.2の範囲にある二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムであって、フィルム中にボイドを有し、フィルムの断面構造が下記(1)〜(3)を満たすことを特徴とする電気絶縁用二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム。
    (1)ボイドの最大厚みが0.2〜3μm
    (2)ボイド厚みの標準偏差が0〜0.7μm
    (3)厚み方向のボイド数が10〜60個/20μm
  2. 灰分の比誘電率が1〜2の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の電気絶縁用二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム。
  3. 少なくとも片面に灰分が1質量%未満のポリフェニレンスルフィド層が積層されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電気絶縁用二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム。
  4. 両面に灰分が1質量%未満のポリフェニレンスルフィド層が積層されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電気絶縁用二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム。
  5. 厚みが20〜100μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電気絶縁用二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム。
  6. 車載モーターの絶縁材として用いられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電気絶縁用二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム。
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